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平成25年度アジア産業基盤強化等事業 (アジア地域における鉄鋼産業基盤戦略調査) 報告書 平成26年2月 JFEテクノリサーチ株式会社 P.54P.66 は企業情報のため非公開

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平成25年度アジア産業基盤強化等事業

(アジア地域における鉄鋼産業基盤戦略調査)

報告書

平成26年2月

JFEテクノリサーチ株式会社

P.54~P.66 は企業情報のため非公開

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目 次

1.事業目的 ············································································································· 1

2.事業内容 ············································································································· 2

2.1 調査事項と調査方法·························································································· 2

2.2 基本データ及び各国の鉄鋼政策の取組み、各国主要鉄鋼需要産業の状況、鋼材輸入動向4

2.2.1 6 カ国のマクロ指標 ··················································································· 4

2.2.2 鉄鋼需要と各国主要鉄鋼需要産業の状況 ························································· 6

2.2.3 各国の鉄鋼生産量・輸出入・政策・生産体制・設備投資動向 ·····························15

2.2.4 調査対象地域の鋼材輸入動向 ·······································································43

2.3 現地政府及び現地企業・団体へのヒアリング調査 ···················································52

2.3.1 現地ヒアリング調査概要 ·············································································52

2.3.1 現地ヒアリング調査詳細 ·············································································56

2.4 各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略················································67

2.4.1 対象国別、企業別市場戦略 ··········································································67

2.4.2 サプライ・チェーン ···················································································73

2.4.3 企業競争力 ·······························································································83

2.5 各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略を踏まえた技術協力の実態調査 ··· 120

2.5.1 調査方法 ································································································ 120

2.5.2 調査結果 ································································································ 121

2.5.3 調査対象地域への進出企業・受入企業の市場戦略 ·········································· 129

2.5.4 対象国における有名大学とその冶金学科の有無 ············································· 132

2.6 国内ヒアリング調査······················································································· 135

2.6.1 国内ヒアリング調査概要 ··········································································· 135

2.6.2 国内ヒアリング調査詳細 ··········································································· 138

2.7 我が国鉄鋼業における技術協力の実績······························································· 156

2.8 各国における具体的な支援策、求められる人材育成の整理(SWOT 分析) ············· 163

2.9 我が国の実行可能な人材育成方策の具体案の提示(ロードマップ含む) ················· 168

2.9.1 対象国に共通の人材育成方策の具体的な提言 ················································ 168

2.9.2 対象国の状況に合わせた、人材育成支援方策の具体的な提言 ··························· 169

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1.事業目的

アジア各国においては、自動車産業をはじめとする鉄鋼ユーザー産業の進出増加に伴い、鉄鋼

需要も増加しつつある中、我が国鉄鋼産業の高い技術力への理解と普及を促進することが必要な

状況。これまでも我が国鉄鋼業界は、ASEAN主要国と鉄鋼対話等を通じて各国との関係を構築し

てきたところ、多くの国から日本の高い技術、環境対応技術の協力について強い要望が寄せられ

ている。中国、韓国、欧州等の鉄鋼供給国の市場参入も進む中、我が国技術の普及は喫緊の課題

となっている。

アジア諸国において自動車産業をはじめとする鉄鋼ユーザー産業への日本製高級鋼材を安定的

に供給するため、相手国政府に対して日本の高い技術力の紹介を行い、日本製高級鋼材とその他

の各国からの製品との差別化についての理解促進に努めることで、我が国鉄鋼企業の現地シェア

獲得を支援することが必要である。

本調査事業では、ASEAN各国やインドにおける我が国鉄鋼製品にかかる技術のニーズにつ

いて、各国の鉄鋼企業が経営戦略の中で技術協力を戦略的にどのように位置づけ、対応している

かを調査することにより、効果的な技術協力・人材育成の手法を調査し、今後実施する研修等の

他の協力ツールに反映させることを目的とする。

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2.事業内容

2.1 調査事項と調査方法

(1)ASEAN、インドにおける鉄鋼業人材育成のニーズ調査

調査事項:基本データ(各国の鋼材需要及び見込み、主要貿易国、生産・輸出実績・見込み等)

及び各国の鉄鋼政策の取り組み、各国主要鉄鋼需要産業の状況、鋼材輸入動向、各国の技術協力

の活用の実態、人材育成上の問題点・課題について調査した。

調査方法:国内文献調査を行いつつ、特に実効性の高い国を絞り込み、現地政府へのヒアリン

グ調査を実施した。

(2)各国企業の調査対象地域への市場戦略を踏まえた技術協力の実態調査

調査事項:各鉄鋼供給国・企業のASEAN等地域への市場戦略(企業競争力、今後の進出予

定、得意鋼種等)及びそれを踏まえた技術協力戦略、成功事例について調査を実施した。

調査方法:調査に当たっては、文献調査及び国内有識者、関係企業、団体へのヒアリングを実

施。また、上記(1)の現地政府へのヒアリング調査に併せて鉄鋼企業・団体へのヒアリングを実

施した。

(3)我が国鉄鋼技術を用いた技術協力に関する支援策に関する調査

調査事項:上記(1)、(2)を踏まえて、我が国鉄鋼業におけるこれまでの技術協力の実績及

び今後実行可能な技術協力を調査し、効果的な支援策を整理する。

調査方法:国内鉄鋼企業及び鉄鋼輸出関連団体等へのヒアリング調査を実施した。

(4)生産国・消費国双方の産業にとってメリットのある技術協力等の具体案の提示

調査事項:上記(1)~(3)までの調査をとりまとめ、各国における効果的な支援策、求め

られる人材育成を整理し、我が国の実行可能な人材育成方策についてロードマップの作成を含む

具体的な提言を行った。

(5)平成 25 年度アジア地域における鉄鋼産業基盤戦略調査委員会の設置及び運営

アジア地域に関し専門的知識を有する国内有識者、団体関係者を委員とした委員会を設置し、

各鉄鋼供給国・企業の調査対象地域への市場戦略、技術協力の実態について委員より意見を聴取

するため「平成 25 年度アジア地域における鉄鋼産業基盤戦略調査委員会」(以下「委員会」という。)

を設置した。

委員会の構成は表 2.1.1 に示す通りである。また委員会を下記の表 2.1.2 に示す日程、内容にて

開催した。

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表 2.1.1 委員会委員名簿(敬称略)

1.委員(五十音順)

氏名 所属 備考

安倍 誠 日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センター

主任調査研究員

韓国

岩佐 博之 共英製鋼株式会社海外事業部次長 普電工推薦

川端 望 東北大学大学院経済学研究科教授 アジア全般

佐藤 創 日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター南

アジア研究グループグループ長代理

インド、マレーシ

萩生田 茂 一般社団法人日本鉄鋼連盟国際協力・調査本部海外調査

グループリーダー

鉄鋼連盟推薦

(五十音順)

2.アドバイザー

氏名 所属 備考

黒坂 慶樹 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券シニアアナリスト 財務分析

表 2.1.2 委員会開催日程、内容

委員会 開催日程 主要な議題

第 1 回

委員会

2013 年 11 月 28 日(木)

①調査対象国のデータおよび技術協力、人材交流・育成に

関する調査データの提示と調査内容に関る修正・補足ディ

スカッション

②調査方法・内容の確認

③国内有識者、関係企業、団体へのヒアリング項目の整理

④現地政府、現地進出海外企業ヒアリング項目の整理

第 2 回

委員会

2014 年 1 月 14 日(火)

①現地ヒアリング内容の報告および前回委員会での指摘

に対する調査内容修正・補足に関する報告

②技術協力、人材交流・育成に関するロードマップ等の提

言内容のまとめ

③各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略(企

業競争力)

第 3 回

委員会

2014 年 2 月 12 日(水)

①国内ヒアリング内容の報告および前回委員会での指摘

に対する調査内容修正・補足に関する報告

②技術協力、人材交流・育成に関するロードマップ等の提

言内容のまとめ

③企業競争力

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2.2 基本データ及び各国の鉄鋼政策の取組み、各国主要鉄鋼需要産業の状況、鋼材輸入動向

2.2.1 6カ国のマクロ指標

(1)GDP

図 2-2-1 に、過去 10 年の実質 GDP 成長率を示す。リーマンショックの影響により、2008、2009

年に大幅低下し、2010 年に急回復、2011 年にその反動で再低下(タイは大洪水の影響もあり大

幅低下)したことは各国共通で、この期間は特殊と言えるので、2003~2007 年、および 2012 年

の実績値が今後の中長期趨勢を考える場合に参考になると考えられる。2003~2007 年はインド

およびベトナムの成長率が非常に高くおむね 7~9%台となっていたが、両国の成長率は 2012 年

低下し、インドは 4.0%、ベトナムは 5.0%となっている。他の4カ国は、2003~2007 年は 5.0%

程度で、2012 年も 6.0%程度と安定している。

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

実質

GD

P成

長率

(%

インド

タイ

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ベトナム

出所:IMF

図 2-2-1 実質 GDP 成長率実績(過去 10 年)

表 2-2-1 に名目 GDP、表2に一人当たり GDP を示す。GDP 規模では、人口の多いインドが別

格で、次いで ASEAN の中では人口 大のインドネシアとなっている。一人当たりではマレーシ

アが多く、1 万ドルを超え(2012 年)、タイ、インドネシアがそれに次いでいる。

表 2-2-1 名目 GDP

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

インド 591.0 689.0 806.8 909.5 1,160.1 1,275.7 1,259.1 1,614.8 1,838.2 1,824.8

タイ 142.6 161.3 176.4 207.1 247.0 272.6 263.7 318.9 345.7 365.6

マレーシア 110.2 124.8 143.5 162.7 193.6 231.1 202.3 246.8 287.9 303.5

インドネシア 234.8 257.0 285.8 364.4 432.2 510.8 538.8 709.5 846.2 878.2

フィリピン 83.9 91.4 103.1 122.2 149.4 173.6 168.5 199.6 224.8 250.4

ベトナム 39.6 45.5 52.9 60.9 71.1 90.3 93.2 103.6 122.7 138.1

出所:IMF

(単位:10億ドル)

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表 2-2-2 一人当たり名目 GDP

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

インド 549 630 727 808 1,016 1,102 1,072 1,356 1,523 1,492

タイ 2,261 2,603 2,825 3,296 3,918 4,300 4,151 4,992 5,395 5,678

マレーシア 4,352 4,816 5,421 6,066 7,122 8,390 7,203 8,634 9,941 10,304

インドネシア 1,091 1,178 1,291 1,623 1,898 2,211 2,300 2,986 3,511 3,592

フィリピン 1,025 1,093 1,209 1,405 1,684 1,918 1,851 2,155 2,386 2,614

ベトナム 489 554 637 724 835 1,048 1,068 1,174 1,374 1,528

出所:IMF

(単位:ドル/人)

表 2-2-3 に、IMF による 2013 年~2018 年の実質 GDP 成長率予想を示す。2014 年以降につい

ては、内需の比重が大きいインド、インドネシアで6%台と高めで、マレーシア、フィリピン、

ベトナムで5%台、タイで4%台となっている。

表 2-2-3 実質 GDP 成長率 IMF 予想(2013 年 10 月時点) (単位:%)

2012年実績

2003~2012年平均

2013年 2014 2015 2016 2017 2018

インド 4.0 7.7 5.7 6.2 6.6 6.9 6.9 7.0タイ 6.4 4.3 5.9 4.2 4.0 4.5 4.7 4.7マレーシア 5.6 5.1 5.1 5.2 5.2 5.2 5.2 5.2インドネシア 6.2 5.7 6.3 6.4 6.4 6.5 6.5 6.5フィリピン 6.6 5.2 6.0 5.5 5.3 5.4 5.5 5.5ベトナム 5.0 7.0 5.2 5.2 5.3 5.4 5.5 5.5

出所:IMF

(2)人口

表 2-2-4 に6カ国の人口状況をまとめた。タイ以外は、今後の総人口の伸び率は高く、それ以

上に生産年齢人口の伸び率が高い。タイは人口、生産年齢人口共に伸びが鈍化し、2020 年時点の

65 歳以上人口の割合も 12%と、高齢化社会に足を踏み入れている。

表 2-2-4 6カ国および中国(参考)の人口

(単位:千人)

2012年実績

2020年予想

2012~2020年平均増加率

2012年実績

2020年予想

2012~2020年平均増加率

総人口に占める割合(2012年)

総人口に占める割合(2020年)

2020年予想

総人口に占める割合(2020年)

インド 1,205,074 1,326,093 1.2% 785,224 888,173 1.6% 65% 67% 89,058 7%

タイ 67,091 69,558 0.5% 47,648 48,318 0.2% 71% 69% 8,660 12%

マレーシア 29,180 32,652 1.4% 19,122 21,649 1.6% 66% 66% 2,251 7%

インドネシア 248,645 267,026 0.9% 165,579 182,408 1.2% 67% 68% 20,881 8%

フィリピン 103,775 119,329 1.8% 63,634 75,203 2.1% 61% 63% 6,406 5%

ベトナム 91,519 98,721 1.0% 63,712 69,573 1.1% 70% 70% 6,825 7%

参考:中国 1,343,240 1,384,545 0.4% 987,778 977,641 -0.1% 74% 71% 172,057 12%

出所:U,S.Census Bureau推定値を基に作成

総人口 生産年齢人口(15~64才) 高齢者(65歳以上)

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2.2.2 鉄鋼需要と各国主要鉄鋼需要産業の状況

(1)鉄鋼消費量

図 2-2-2 に過去 10 年の鉄鋼見掛消費量(粗鋼換算)実績を示す。インドの量が大きく、ASEAN

5カ国の動きが分かりにくいので、図 2-2-3 に ASEAN のみを別に示した。

表 2-2-5に過去 10年の鉄鋼見掛消費年平均増加率および一人当たり消費量を示した。おおむね、

GDP 成長率より鉄鋼消費量増加のほうが大きく、特にインドネシアとベトナムでは大きかった。

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

鉄鋼

消費

量(千

t) インド

タイ

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ベトナム

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-2 鉄鋼見掛消費量(粗鋼換算)の推移

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

鉄鋼

消費

量(千

t)

タイ

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ベトナム

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-3 ASEAN5カ国の鉄鋼見掛消費量(粗鋼換算)の推移

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表 2-2-5 鉄鋼見掛消費量と一人当たり鉄鋼消費量の実績

2003年(千t)

2012年(千t)

年平均増加率(2003~2012年)

2003年(kg/人)

2012年(kg/人)

年平均増加率(2003~2012年)

インド 34,179 77,039 9% 30.9 61.2 8%

タイ 11,896 19,047 5% 182.0 272.5 5%

マレーシア 6,693 10,374 5% 267.1 353.8 3%

インドネシア 5,064 15,006 13% 22.8 61.3 12%

フィリピン 4,521 6,986 5% 54.9 72.4 3%

ベトナム 5,181 12,740 11% 63.7 142.0 9%

鉄鋼見掛消費量(粗鋼換算) 一人当たり鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

(2)鉄鋼需要先

表 2-2-6 に各国の鋼材の部門別消費割合を占めす。建設部門の割合が高いのは6カ国共通であ

る。自動車部門の割合はタイ、マレーシア、インドネシアで高い。その他の特徴としては、タイ

で家電、機械など製造業の割合が 10 年前より高くなっている。マレーシアでは石油・ガス開発部

門向けが、ベトナムでは石油・ガス開発および造船部門向けの割合が比較的高い。

表 2-2-6 鋼材の部門別消費割合推計(2012 年)(構成比:%)

インド タイ マレーシア インドネシア ベトナム フィリピン

建設 44 54 38 61 65 75

自動車 5 16 14 19 3 n/a

家電・電子 1 12 6 5 n/a 2

重電機・産業機械 7 13 2 7 3 n/a

石油・ガス開発 3 2 29 n/a 10 n/a

造船 1 n/a 1 n/a 15 3

容器 n/a n/a 3 n/a n/a 4

その他 39 3 7 8 4 21

合 計 100 100 100 100 100 100

出所:日本鉄鋼連盟

以下に、各需要部門別の動向をまとめた。

(3)建設業

表 2-2-7 に示すように、6カ国の建設投資額は各国とも過去 10 年、年平均 2 桁の高い伸び率を

示している。この内容は下述のようなインフラ投資が主である。インフラ投資については以下に

各国の動向を記すが、各国でニーズは強く、今後も伸びていくことが予想される。特にインドで

は多額の政府予算が組まれている。

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表 2-2-7 建設投資額(実績)

(単位:億米ドル)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 年平均伸び率

インド 338 507 620 711 947 1,043 1,045 1,290 1,437 20%

タイ 42 49 57 65 76 80 76 91 94 11%

マレーシア 41 42 43 45 55 63 66 80 93 11%

インドネシア 146 169 201 274 334 433 534 727 863 25%

フィリピン 42 46 49 60 79 95 97 122 125 15%

ベトナム 24 28 34 40 49 59 65 75 79 16%

出所:国連National Accounts Main Aggregates Database「Value Added by Economic Activity, at current prices (US Dollars)より建設部門抜粋

インドでは、今後の経済発展にとっての大きなボトルネックのひとつはインフラと言われ、近

年、政府はインフラ整備に重点的に取り組んでおり、民間企業も積極的に参画、同国内のインフ

ラ投資は急増している。政府の5カ年計画におけるインフラ投資予算額は、下表のように第 10

次→11 次→12 次と倍増を続けており、第 12 次では 51 兆ルピー(約1兆ドル)で、単純計算で

は 2,000 億ドル/年となり、これだけで 2011 年の建設投資額全額を上回る。第 12 次では、重要

分野は発電、鉄道、都市開発、港湾・空港他多岐にわたるが、具体的には電力容量の大幅な増加、

高速道路 6 路線の建設、主要都市間の貨物鉄道建設と沿線周辺における工業団地の建設等のプロ

ジェクトが挙げられている。

表 2-2-8 インドの5カ年計画におけるインフラ投資額

第10次5カ年計画(2002年4月~

   2007年3月)

第11次5カ年計画(2007年4月~

   2012年3月)

第12次5カ年計画(2012年4月~

   2017年3月)

予算額 8.7兆ルピー 20.6兆ルピー 51兆ルピー

対前回5カ年計画比 2.4倍 2.5倍

(推定)実績額 9.2兆ルピー 20.5兆ルピー

タイは6カ国の中では、道路、港湾、電力などの基本的な産業インフラの整備が比較的進んで

おり、これが海外からの投資を引きつけ、タイの経済を支えてきた基盤ともなってきた。一方で

現行の産業インフラの限界も露呈しつつあり、特に鉄道網が産業インフラとしては脆弱であるた

め、多数の都市鉄道路線開発、既存線の複線化、高速鉄道設置などの計画が進められている。

マレーシアは、人口の8割が半島部に、その7割が都市に住んでおり、既に都市化率は高水準

にある。したがって、新興国にみられる都市化に伴う建設投資額大幅増は見込み難いものの、現

在、GDPの 3分の 1を占める首都クアラルンプール地域を対象とした「大クアラルンプール(KL)」

建設構想がある。同構想は、KL の公共交通機関の利便性を高め、世界的大都市として経済発展

の牽引役を担わせるものである。

インドネシアは、経済がジャワ島、特にジャカルタ一極集中型となっており、地方圏は総じて

未整備である。地方圏の都市の成長・発展に伴い、道路や港湾、電気や水道などインフラ整備が

次第に本格化すると見込まれる。

フィリピンでは、首都圏の交通渋滞や港湾・空港の混雑などのインフラの未整備や、供給不足

による高額な電力料金が外資誘致の長年の課題になっている。一方、政府の財政は厳しい状態に

ある。そのためアキノ政権では官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ整備事業を主要政

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策課題に掲げ、電力設備整備、高速道路や空港アクセス道路の連結・建設,軽量高架鉄道(LRT)

建設などのプロジェクトを進めている。

ベトナムでは、ベトナム戦争の戦災やその後の財政悪化などで、インフラの整備が遅れている。

ODA 等も通じ世界から援助を受けて急ピッチで整備を進めているものの、いまだ道路、鉄道、下

水道等産業発展のために必要な整備に行き届いていない。また、従来整備されてきたインフラに

関しても水害が多く災害防止のためにも強化、リニューアルが必要となっている。政府は現在、

2030 年までのインフラ開発完成の計画を段階的に実施している途上にある。

(4)自動車産業

図 2-2-4 に示すように、自動車生産量は過去 10 年、インド、タイ、インドネシアの生産増が顕

著で、マレーシア、フィリピン、ベトナムは横這い気味となっている。

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500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

4,000,000

4,500,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

自動

車生

産台

数(台

インド

タイ

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ベトナム

出所:Asean Automotive Federation、各国自動車工業会、フィリピンの 2003~2005 年はアイアールシー社によ

る推定値

図 2-2-4 自動車生産実績

インドの自動車生産台数は、リーマンショック時を含め、過去 10年連続して拡大しており、2003

年は生産台数世界第 14 位だったが、2011 年から第6位になっている。内需は年平均 15%増、輸

出はそれを上回る 25%で増えている。まだ所得水準が低いが、表9に示すように主要自動車メー

カーが積極的な生産能力増を計画している。これは、インド国内の膨大な人口と中間所得層の台

頭による内需増、アフリカなどへの輸出拠点としての役割を見込んで、低価格車を中心に生産増

を考えていると見られる。ただし、2012 年後半から 2013 年にかけて景気減速でインド国内自動

車市場が低迷しているため、生産調整や将来増産計画の見直しを行う自動車メーカーも一部出て

きている。

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表 2-2-9 主要自動車メーカーの生産能力増強計画

(単位:台)

2012年生産実績(A)

2012→2017年生産能力拡大計画(B)

増加率(B/A)

インド 4,144,427 +2,276,000 55%

タイ 2,453,717 +664,000 27%

マレーシア 569,620 +176,600 31%

インドネシア 1,065,557 +674,780 63%

フィリピン 75,413 +9,000 12%

ベトナム 73,673 +9,000 12%

出所:Asean Automotive Federation、各国自動車工業会、報道情報を基に作成

タイは、1997 年のアジア通貨危機を乗り越えて自動車産業が集結し、裾野産業も根付き、生産・

輸出拠点として確固たる地位を築いている(生産台数の 40~50%を輸出)。2003 年の生産台数世

界第 16 位から 2012 年は 10 位にまで上がった。日本や韓国、マレーシア等の経験から言うと、

一人当たり所得水準が 3,000~5,000 ドルに達すると、急速に乗用車の普及率が上昇する。タイは

この水準に達しており、今後の内需増も期待される。

マレーシアの自動車産業は、マハティール政権の国民車政策が成功し、急成長した。1985 年か

ら発売開始した国民車(Proton Saga)がモータリーゼーションを興して、周辺諸国より一足早く

乗用車市場を形成、自動車普及率は ASEAN で も高い水準に達している(2011 年の人口千人当

たり保有台数は 420 台)。既に一定水準に達したため、近年は、生産・販売台数は横ばい状態に

あり、今後の大きな伸びは予想し難い。

インドネシアは内需を中心に増えており、2003 年生産台数世界 25 位だったのが 2012 年は 17

位に上がっている。同国も一人当たり所得水準が 3,000 ドル台に達しており、普及率加速圏に入

っている。日系を中心とする自動車メーカーが、拡大する内需をとらえると共に輸出拠点として

の役割も念頭に置きながら積極的な生産能力拡大を計画している。

なお、表 2-2-10 に示すように生産台数に占める日系自動車メーカーのシェアはタイとインドネ

シアで 90%超となっている。

表 2-2-10 自動車生産実績中、日系自動車メーカーのシェア

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012インド 42% 41% 39% 37% 38% 37% 41% 39% 36% 38%タイ 92% 89% 90% 91% 92% 92% 95% 95% 94% 93%マレーシア 20% 23% 27% 29% 27% 31% 29% 29% 25% 30%インドネシア 96% 98% 98% 99% 99% 98% 99% 99% 98% 99%フィリピン(*) 79% 83% 82% 89% 83% 81% 81% 78% 75% 76%ベトナム(*) 59% 60% 57% 59% 46% 28% 37% 39% 37% 42%

(*)フィリピンとベトナムでは、日系メーカー生産台数は不明なので、参考として販売台数に占めるシェアを記載した。

出所:各種自動車調査会社の統計資料を基に作成

フィリピンとベトナムについては、所得水準がまだ足りていないこと、裾野産業集積が未熟で

あることなどから、今後 5~10 年では大きな伸びは予想し難い。

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(5)家電産業

家電のうちで代表的な、電気洗濯機と電気冷蔵庫について6カ国の生産台数推定実績を表

2-2-11~表2-2-12にまとめた。インド、タイ、インドネシアで堅調な伸びを続けている。タイで

は特に輸出比率が大きく、洗濯機、冷蔵庫ともに生産の70~80%を輸出している。ベトナムは過

去データが限られるが、 近になって内需を中心に急伸しているようである。

今後の見通しとしても、人口の伸びと生産ベースの状況を勘案すれば、インド、インドネシア

が内需中心に堅調な伸びを続け、タイは輸出を中心に堅調な伸びを続けると考えられる。ベトナ

ムについては、例えば下記(※)のように、 近、世界的大手家電メーカーが大規模な工場建設

を行っているため、生産増加が続く可能性がある。

※ベトナムの家電工場建設

・韓国の LG 電子は、海外で稼動させている家電工場(中国を含む)の中で 大規模になる工場

をハイフォンに 3 億ドルで建設する計画を 2013 年2月に発表した。早ければ 2014 年下期から稼

動する。冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどの生活家電が生産される。輸出用ではなく、ベトナム市

場の潜在力の大きさを考慮してのことだという。

・パナソニックは 2013 年 3 月、ベトナムに新たに洗濯機の工場と研究開発の拠点を開設した。

全自動洗濯機を年間 80 万台生産でき、ベトナム国内向けと周辺の東南アジアの国々向けに、半分

ずつの割合で出荷する。

表2-2-11 電気洗濯機の生産台数推定実績(単位:千台)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 20112003年→11年年平均増加率

(*)

インド 1,438 1,589 1,731 n.a. 2,169 2,345 2,963 2,936 2,995 10%

タイ 3,271 4,043 4,306 5,257 5,640 4,088 4,911 5,574 5,872 8%

マレーシア 420 331 346 n.a. n.a. 145 394 337 312 -4%

インドネシア 227 88 n.a. 201 288 299 585 656 729 16%

フィリピン 612 672 787 806 876 828 784 818 645 1%

ベトナム n.a. n.a. n.a. 247 222 171 341 582 n.a. 24%(*)ベトナムはデータのある2006年から2010年まで

出所:(社)日本電機工業会「白物家電7品目の世界需要調査」を基に推定

表 2-2-12 電気冷蔵庫の生産台数推定実績(単位:千台)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 20112003年→11年年平均増加率

(*)

インド 3,715 4,360 5,319 n.a. 7,406 7,620 9,578 10,574 7,738 10%

タイ 3,447 3,912 4,582 4,681 6,257 5,677 5,322 6,289 6,505 8%

マレーシア 187 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 429 422 11%

インドネシア 1,730 1,965 1,960 2,117 2,283 2,369 2,657 3,534 2,857 6%

フィリピン 284 266 n.a. 538 477 437 404 407 301 1%

ベトナム n.a. n.a. n.a. 490 499 504 418 911 n.a. 17%

(*)ベトナムはデータのある2006年から2010年まで 出所:(社)日本電機工業会「白物家電7品目の世界需要調査」を基に推定

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(6)石油・ガス開発

図 2-2-5~図 2-2-6 に各国の原油および天然ガスの過去 10 年の生産量実績を示す。原油、天然

ガス共にインドとタイでは生産量が増加傾向にあるが、鉄鋼需要先として石油・ガス開発部門が

比較的大きな割合を占めるマレーシア、インドネシア、ベトナムでは、原油・ガス生産の伸びが

鈍化しており、横這いか減少となっている。

マレーシアでは、石油精製プラントのメンテナンスに伴う稼働率の低下および国営石油会社

Petronas が長期的に原油生産を維持するための油田管理計画を実行していることにより、原油生

産量は横這いもしくは減少傾向にある。天然ガスも、開発の容易なガス田数は減少しており、既

発見の未開発案件は、開発が難しく高コストのガス田が中心である。そのため、原油・ガス生産

は中期的には大幅な伸びは期待し難い。

インドネシアも近年、石油産業への投資不足で生産量が伸び悩み、2004 年から輸入超過となり、

2009 年には OPEC への加盟を停止した。代わって、天然ガスは輸出余力があり、今後は海底ガ

ス田由来の天然ガスが中心となっていくとみられるが、採掘コスト、メンテナンスコストが高く、

安定供給には不安がある。

ベトナムでは、かつて原油生産の7割を占めていた 大の Bach Ho 油田(1986 年商業生産開

始)が、2002 年に日量 26 万バレルのピーク生産を達成した後、衰退期に入った。このため同国

の原油生産は 2004 年をピークに減少傾向にある。

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1,400

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

原油

生産

量(1,0

00バ

レル

/日

インド

タイ

マレーシア

インドネシア

ベトナム

出所:BP

図 2-2-5 原油生産量

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0.0

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80.0

90.0

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

天然

ガス

生産

量(10億

㎥)

インド

タイ

マレーシア

インドネシア

ベトナム

出所:BP

図 2-2-6 天然ガス生産量

(7)造船

6カ国の中で、造船業が比較的盛んなのはフィリピンとベトナムである。両国とも 2007 年か

ら 2011 年にかけて、世界全体の船舶竣工量増と歩調を合わせて、竣工量を増やした(図 2-2-7)。

しかし世界全体の新船発注量は 2007 年をピークに低下し続けており、その結果として両国の竣

工量も 2012 年は大幅に下落した。世界全体の船舶発注量が縮小している中で、日中韓の3大造

船国が受注獲得にしのぎを削っており、中国や韓国は採算を度外視した安値受注も行っている。

こうした中、建造技術力、必要部品・鋼材の国内調達力、で大幅に劣る両国の建造量が反転して

大きく増えていくことは当面予想し難い。

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2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

船舶

竣工

量(1,000GT)

インド

タイ

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ベトナム

出所:IHS (旧 Lloyd's Register); World Shipbuilding Statistics

図 2-2-7 船舶竣工量実績

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(8)総括

以上から、対象国の 2020 年頃までの主要鉄鋼需要産業の見通しは、概ね、表 2-2-13 のように

まとめることができると考えられる。

表 2-2-13 6カ国の鉄鋼需要部門別見通し(中期;2020 年頃まで)

◎強 ○堅調 △弱

建設 自動車 家電 造船 石油・ガス

タイ ○ (インフラ投資) ○ (輸出・内需) ○ (輸出) - -

インドネシア ○ ( 〃 ) ◎ (内需) ○ (内需) - △

ベトナム ○ ( 〃 ) △ ◎ (内需・輸出) △ △

マレーシア ○ ( 〃 ) ○ (内需) ○ (内需) - △

フィリピン ○ ( 〃 ) △ △ △ △

インド ◎ (インフラ投資) ◎ (内需・輸出) ○ (内需) - -

※「強」とみた主たる根拠は以下

建設/インド: 表 2-2-8

自動車/インドネシア、インド: 表 2-2-9

家電/ベトナム: 表 2-2-11~表 2-2-12、※ベトナムの家電工場建設

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2.2.3 各国の鉄鋼生産量・輸出入・政策・生産体制・設備投資動向

(1)タイ

■生産・自給率・輸入動向

図 2-2-8 にタイの粗鋼生産量と自給率の推移を示す。自給率は 30%前後だったが、近年下落傾

向にある。鉄鋼消費量が伸びている一方で、輸入依存が増えている。

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4,000

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2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

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40%

45%

自給

率 粗鋼消費量 (*)

粗鋼生産量自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-8 タイの粗鋼生産量と自給率

表 2-2-14 にまとめたように鋼材の輸入依存度はどの鋼種でも高く(条鋼は比較的低い)、しか

も年々増加傾向にある。表 15 に示すように、国内生産設備の稼働率は低いことから、量的には国

内生産能力に余裕がある。それにもかかわらず、輸入依存度が増えているのは、輸入品のほうが

割安か高品質であるためと見られる。

表 2-2-14 タイの鋼種別輸入依存度(輸入量/鋼種別見掛消費量)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

鋼塊・半製品 55% 53% 53% 44% 31% 41% 52% 51% 46% 56%

条鋼 17% 15% 17% 22% 24% 25% 21% 30% 33% 38%

厚中板・熱延鋼板 46% 45% 46% 43% 50% 56% 39% 46% 51% 61%

冷延鋼板 26% 27% 37% 34% 34% 41% 37% 37% 40% 39%

亜鉛メッキ鋼板 64% 67% 78% 78% 83% 85% 78% 89% 90% 91%

ブリキ 29% 29% 25% 26% 37% 38% 40% 49% 50% 52%

その他表面処理鋼板 40% 48% 52% 50% 53% 63% 54% 60% 75% 72%

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

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表 2-2-15 タイの鉄鋼国内生産能力と稼働率

生産能力(2012年) 生産量(2012年) 稼働率

半製品 8,510 3,328 39%

条鋼 13,540 3,762 28%

厚板 2,600 389 15%

熱延鋼板  8,420 2,569 31%

冷延鋼板 3,900 1,755 45%

亜鉛メッキ鋼板 1,605 224 14%

ブリキ 700 174 25%

(単位:千t)

なお、輸入相手国は図 2-2-9 のようになっており、半製品はロシアなどから、条鋼は中国など

から、熱延、冷延、亜鉛メッキ鋼板は日本などから、主に輸入している。

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

図 2-2-9 輸入相手国とそのシェア

■生産体制と鉄鋼政策

タイには、多くの新興国にあるような国営製鉄所がなく、すべて民間資本である。電炉もしく

は高炉・熱延・冷延・表面処理の全段階を垂直統合した企業は存在しておらず、電炉・熱延ミル

が1社(G Steel(傘下 GJ Steel を含む))、冷延と表面処理を統合した企業が1社(BlueScope

Steel)あるほかは、すべていずれかの段階のみを担う単純企業である。すなわち、一貫生産のメ

リットを十分に活かした生産システムは存在していない一方で、各工程にそれなりの能力を持っ

た企業が存在するという特徴がある。

2008 年にタイ政府は、同国南部への高炉一貫製鉄所(700 万トン)建設のフィジビリティ・ス

タディ(FS)を開始した。自動車や家電業界を向け先とする薄板を中心とした高級品生産工場と

して、内需だけでなく輸出も狙う予定とされていた。この製鉄所には既に、JFE スチール、新日

鉄(当時)、ArcelorMittal、宝鋼が、文書で関心を政府に対し表明したが、その後、具体化して

いない。

表 2-2-16 に粗鋼・半製品の生産能力・主要メーカーを示す。粗鋼生産はほとんど電炉による。

上述のように半製品生産設備の稼働率が低く、輸入依存度が高いのは、老朽設備が多いこと、生

産コストが高いため、輸入したほうが安上がりのためと言われている。

【2004年】

中国12%

日本33%

その他32%

ロシア15% EU

5%

韓国3%

(輸入合計12,084千t) 【2012年】

韓国11%

EU9%

ロシア13%

その他14%

日本34%

中国19%

 (輸入合計15,373千t)

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表 2-2-16 粗鋼・半製品生産能力(能力 1,000 千t以上のメーカーのみ個別名記載)(2012 年)

会社名粗鋼

(転炉)粗鋼

(電炉)スラブ ビレット ブルーム

Tata Steel (インド系) 500 1,480 1,480

G Steel (GJ Steel含む;華人系) 3,300 3,300

Siam Yamato Steel (大和工業64.18%出資) 1,330 1,350

その他10社 (地元民間ミル) 2,380 2,380

合計 500 8,490 3,300 5,210 0

(単位:千t/年)

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Capacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

表 2-2-17 にタイの条鋼圧延能力を示す。棒鋼メーカーの数は多く、10 年前に比べると、棒鋼

生産能力は3倍程度に増えている。条鋼生産能力合計は現在の条鋼見掛消費量の約3倍もある。

10 年ほど前、アジア通貨危機からの回復過程で、大手条鋼メーカー5社の合併などが画策された

が、結局実現せず、整理・統合は進まなかった。一方で、大量に輸出できるほどコスト・品質上

の競争力も有していないようである。このため、条鋼メーカーの操業率は低いままである。

表 2-2-17 条鋼生産能力(能力 1,000 千t以上のみ個別名記載)(2012 年)

棒鋼 線材 形鋼

Tata Steel (インド系) 1,100 780

Sahaviriya Group (華人系) 1,700 800 700

Siam Yamato Steel (日系) 1,100

Bankok Steel Industry Public 1,000

Bangsaphan 1,000

Sahaviriya Steel Bars 1,000

その他17社 3,880 480 0

合計 9,680 2,060 1,800

能力(千t/年)

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Capacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

表 2-2-18 に鋼板メーカーをまとめた。厚板メーカーは現在3社、熱延メーカーは2社ある。1994

年に稼動した東南アジア 大の熱延メーカーSahaviriya Steel Industries(SSI)は、輸入スラブ

から熱延コイルを製造している。ロシアなどから主に輸入しているが、低品質のため、低・中級

の熱延製品あるいは冷延用の母材しかできない。日本製の高品質なスラブ輸入は、2003 年に SSI

が起こした反ダンピング訴訟で日本側との関係がそこねられたため、停止している。そのため SSI

は、輸入スラブに頼らない体制整備を図り、何度か上工程工場を設立しようとしたが、頓挫して

きた。2011 年に英 Teesside 製鉄所買収に成功し、ようやく自前でスラブを生産できるようにな

った。もうひとつの熱延メーカーG Steel は技術的に SSI 以上の品質の熱延コイルを生産できて

いない。

一方で、タイの製造業では日系企業のシェアが高く(例:表 2-2-10)、これら日系ユーザーは、

日本製を基準とした高級鋼板を必要としている。これに応えるため、日本の鉄鋼メーカーが、輸

出に加え、これまでは合弁の形で、 近は 100%出資(後述)の形で、冷延や表面処理鋼板を現

地生産するようになっている。

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18

ほかに、冷延メーカーとしては東南アジア 大のステンレス冷延メーカーThainox があり、韓

国 POSCO が出資している。POSCO は Thainox の全株買収を計画しているが、まだ実現してい

ない。鋼管メーカーは小規模メーカーが 20 社近くあり、推定生産能力合計は約 212 万トンであ

る。

表 2-2-18 主要鋼板メーカー(2012 年)(能力単位:千t)

会社名 能力 備考

厚 板 Sahaviriya Group(Sahaviriya Plate Mill)

LPN Plate Mill

Canadoil (タイの鋼管継手大手)(住金 5,000 万ドル出資)

1,000

400

1,200

2012 年稼働

合計 2,600

Sahaviriya Group

(Sahaviriya Steel Industries (SSI))

(Bangsaphan Barmill)

G Steel (GJ Steel 含む)

4,400

720

3,300

熱 延

鋼 板

合計 8,420

Sahaviriya Group

(The Cold Rolled Steel Sheet (TCR)) (JFE36.04%出資)

The Siam United Steel (SUS) (新日鉄住金 54.7%出資)

BlueScope Steel (豪系)

POSCO Thainox Stainless (POSCO15.4%出資)

1,000

1,000

400

300

ステンレス

冷 延

鋼 板

合計 2,700

G Steel

BlueScope Steel (豪系)

Thai Coated Steel Sheet (TCS) (JFE 81.4%出資)

Siam Tinplate (新日鉄住金 15.6%出資)

Thai Tinplate Manufacturing (JFE8%出資)

Bangkok Steel Industry Public

Ratchasima Steel Products

Thailand Iron Works

The Sangkai Thai

400

465

180

260

440

400

160

120

150

亜鉛めっき 400

亜鉛めっき 375

亜鉛めっき 180

ブリキ 260

ブリキ 440

亜鉛めっき 300

亜鉛めっき 160

亜鉛めっき 90

亜鉛めっき 100

表 面

処 理

鋼 板

合計 2,575

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

■鉄鋼設備投資計画

表 2-2-19 に具対化している主な投資計画を示す。

表 2-2-19 設備投資計画

企業名 場所 設備概要(年産能力) 稼働予定 備考

JFE Steel Galvanizing

(Thailand)

Rayong 溶融亜鉛めっき

(400 千t/年)

2013 年4月

稼働済み

JFE スチール 100%出資

Nippon Steel & Sumikin

Galvanizing Thailand Rayong

溶融亜鉛めっき

(360 千t/年)

2013 年 10 月

稼働済み 新日鉄住金 100%出資

Thai Steel Profile Rayong 棒鋼(400 千t/年)

2013 年

稼働予定

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19

(2)インドネシア

■生産動向・自給率・輸入依存度

図 2-2-10 に粗鋼生産量と自給率の推移を示す。鉄鋼消費量は増え続けているのに対し、生産量

は横這いもしくは減少気味であり、国内生産が需要に追いついておらず、自給率が低下しており、

表 21 に示すようにどの鋼種でも輸入依存度が上昇している。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

自給

率 粗鋼消費量 (*)

粗鋼生産量自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-10 粗鋼生産量と自給率

表 2-2-20 鋼種別生産量

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

銑鉄・DRI・HBI 1,171 1,436 1,268 1,200 1,321 1,209 1,119 1,274 1,228 524

鋼塊・半製品(ビレット、スラブ) 2,042 3,682 3,675 3,759 4,016 3,915 3,501 3,664 3,621 2,254

軌条・同付属品 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

鋼矢板 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

形鋼 242 356 512 455 461 466 466 471 473 433

棒鋼 970 1,068 1,602 1,366 1,382 1,398 1,397 1,142 1,414 1,474

線材 578 680 602 834 920 839 800 922 932 809

厚中板 610 605 701 835 730 839 787 821 811 806

熱延鋼板 1,318 1,529 1,441 1,659 1,818 1,660 1,642 1,586 1,818 1,896

冷延鋼板 698 823 782 802 847 803 788 798 798 858

電磁鋼板 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

亜鉛メッキ鋼板 460 492 375 412 460 337 315 326 311 331

ブリキ 90 84 75 88 100 113 85 111 100 115

その他表面処理鋼板 228 154 140 147 146 130 124 125 174 185

鋼管 436 460 690 779 643 637 641 670 642 687

その他鋼材 301 317 257 235 275 260 245 253 234 250

(単位:1,000t)

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

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20

表 2-2-21 鋼種別輸入依存度

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

銑鉄・DRI・HBI 23% 23% 26% 25% 39% 32% 28% 16% 18% 57%

鋼塊・半製品(ビレット・スラブ) 41% 32% 32% 34% 32% 40% 37% 40% 41% 63%

条鋼 16% 20% 21% 18% 20% 28% 20% 28% 31% 39%

厚中板 14% 26% 32% 30% 40% 62% 42% 51% 63% 57%

熱延鋼板 38% 42% 48% 42% 44% 48% 33% 39% 48% 49%

冷延鋼板 43% 45% 52% 46% 49% 59% 50% 61% 66% 64%

電磁鋼板 100% 102% 102% 100% 100% 102% 103% 102% 100% 100%

亜鉛メッキ鋼板 17% 22% 23% 21% 24% 44% 32% 46% 53% 53%

ブリキ 44% 60% 65% 53% 55% 55% 54% 50% 57% 50%

その他表面処理鋼板 26% 42% 42% 42% 55% 63% 62% 70% 69% 73%

鋼管 44% 41% 48% 38% 45% 64% 56% 78% 81% 87%

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

図 2-2-11 に輸入相手国を示す。現在、中国からは主に条鋼や厚中板を、日本からは主に鋼板類

(厚板、熱延、冷延、電磁鋼板、亜鉛メッキ)を輸入している。

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

図 2-2-11 鉄鋼輸入相手国

■生産体制と鉄鋼政策

1971 年、100%政府出資の Krakatau Steel が設立され、同社が主体となって、1965 年に中断

されていた Cilegon 製鉄所の建設を再開した。同社を中心に鉄鋼一貫生産体制確立、輸入代替に

よる国産化が進められる一方、70 年代に多くの国内外民間企業も鉄鋼業に参入した。これは、ス

ハルト政権が 60 年代末から為替や貿易規制の自由化、国内投資法の制定などを矢継ぎ早に実施し、

70 年代初頭までに民間企業が工業投資を行う環境が整備されたためである。70 年代に川下の条

鋼生産が拡大、80 年代に川中・川上工程、鋼板生産へと拡大していった。この結果、90 年代前

半には、インドネシアは ASEAN 大の鉄鋼生産国となった。1998 年にスハルト政権が崩壊し、

ポスト・スハルト期の経済政策は、国家主導の産業育成策が後退し、経済自由化を通じた産業競

争力強化という考え方が主流になった。2000 年以降、関税率低下を背景にインド、中国、ロシア

などから安価な鉄鋼製品が流入し始めたが、これに対しては、時限的な関税引き下げや反ダンピ

ング関税措置の発動を再々行い、保護的措置をとった。ただし、基本政策は自由化にあった。

【2003年】

日本18%

EU25%

その他30%

シンンガポール

3%

台湾6%

中国8%

韓国10%

(輸入合計5,870千t) 【2012年】

その他8%

シンガポール4%

韓国14%ロシア

15%

ウクライナ8%

台湾6%

マレーシア6%

中国20%

日本19%

(輸入合計12,667千t)

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21

現在のインドネシア鉄鋼業は、Krakatau Steel のほか、多くの条鋼ミニミル、表面処理鋼板メ

ーカー、鋼管メーカーから構成されている。

表 2-2-22 粗鋼・半製品・条鋼の生産能力(2012 年)

粗鋼(電炉) スラブ ビレット ブルーム 棒鋼 線材 形鋼

Krakatau Steel (Cilegon) 2,900 3,400 675 450Ispat Indo 700 700 200 500 120Jakarta Carkratunggal Steel Mills 360 360 360Jakarta Steel Megah Utama 240 240 140Growth Steel 250 250 200Hanil Steel (Sidoarjo) 250 250 320Asian Profile Indosteel(Surabaya) 48 50 100Budidharma Jakarta 150 150 190Gunung Steel (Sakti Medan 他) 120 120 300 125 300Inter World Group (Tangerang) 150 150 300Inti General Yaja (Semarang) 100 1,000 150Jatim Taman Steel 132 132 260Pulogadung Steel (Jakarta) 60 60 60The Master Steel (Ms Jakarta) 200 500 500Toyogiri Iron & Steel (Bekasi) 120 120 120その他 580 150合計 5,780 3,400 4,257 0 3,780 1,125 570

条鋼半製品会社名(製鉄所)

(単位:千t/年)

表 2-2-23 鋼板・鋼管生産能力(2012 年) (単位:千t/年)

会社名(製鉄所) 能力 備考

Krakatau Steel (Cilegon) 2,400

Gunung Steel (Gunung Raja Paksi) 950 厚板450、熱延コイル500

Gunawan Steel 350 厚板

Jaya Pari 100 厚板

Tandes Surabaya 60 厚板

合計 3,860 内、厚板960

Krakatau Steel (Cilegon) 700

Essar Global 400

Jindal Stainless(Gresik) 60 ステンレス

合計 1,160

表面処理 PT Latinusa (*1) (Jakarta) 160 ブリキ

鋼板 BlueScope Steel Indonesia 425 溶融亜鉛めっき(265)

Essar Global 150 亜鉛めっき(150)

Fumira (Jakarta, Semarang) 210 亜鉛めっき(210)

Kerismas Witkco Makmur (Jakarta) 86 亜鉛めっき(36)

その他 182 亜鉛めっき(182)

合計 1,213 亜鉛めっき(843)

Bakrie Pipe (Dekasi Barat) 450

Bumi Kaya  (Jakarta) 75

Indonesia Nippon Steel Pipe (Bukit Indah) (*2) 24

KHI Pipe(Krakatau Steel傘下;Cilegon) 370

SEAPI (Desa Sumur) 200

SPINDO (Surabaya) 120

その他 1,690

合計 2,929

(*1) 2009年末までKrakatau Steel 子会社(*2) 新日鉄住金がタイ子会社経由で69.6%出資

熱延鋼板・厚板

冷延鋼板

鋼 管

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22

※Krakatau Steel の課題

ビレット、条鋼は、多くの地場電炉メーカーが生産しているが、スラブ、熱延、冷延鋼板では

Krakatau Steel の占める割合が大きい。しかし、生産能力の割に市場シェアが低く、インドネシ

アとしては輸入依存を招いている。

表 2-2-24 インドネシアにおける Krakatau Steel (KS)の存在度

KS(千t)

インドネシア全体

KSへの集中度

KS(千t)

稼働率(%)

スラブ 3,400 3,400 100% 700 23% 28%

熱延鋼板(厚板除く) 2,400 2,900 83% 1,836 77% 50%

冷延鋼板 700 1,160 60% 536 76% 24%

年産能力(2012年) 生産実績(2012年) 推定市場シェア(2012年)

(生産量/見掛消費)

原因としては、Krakatau Steel の以下のような歴史に根ざす経営体質に課題があるためと考え

られている。

①生産コスト高

設立時に、天然ガスによる直接還元法が選択されたが、現在では、天然ガスの需給逼迫と価格

高騰によりエネルギーコスト面の優位性が失われている。また、1959 年当時の立地選択と空間設

計が現在まで生き残っており、そこから生じる生産・物流・インフラ面の非効率性を改善できて

いない。これらのため、生産コストが割高で、国内生産という優位性があるにもかかわらず、製

品価格が輸入品より割高となっている。

②納期・品質の不安定性

原料の輸入スラブやペレットを長期契約で調達していないことなどから、製品の生産スケジュ

ールと品質が不安定になっている。そのため、需要先から不評をかこっている。また、そうした

納期や品質の不安定性に対する改善や改革意識が、下記③のような理由から、薄い。

③投資力不足と政府による保護施策

Krakatau Steel は、1975 年のプルタミナ危機と、1990 年の冷延ミル買い取りよって巨額の負

債を負い、その影響で長年累積損失が解消されなかった。この長期の累積損失により、投資のた

めの資金に制約があったと共に、政府の同社に対する保護措置を常態化させ、それが保護を前提

とした同社の甘い経営体質を生むこととなったと見られる。

上記の Krakatau Steel の体質問題は、なかなか解消されなかった。しかし、2010 年に長年の

懸案だった IPO(新規株式公開)を実施し、その前年にはブリキ生産子会社 PT Latinusa も IPO

を実施して切り離し経営を独立化させている。また、既存製鉄所に高炉を新設し、2013 年に稼働

させる予定である。さらに、韓国 POSCO と合弁で高炉一貫製鉄所を新設する話がまとまり、2011

年に着工し、2013 年末には稼働予定である。この合弁は、ハード面で好影響があるだけでなく、

例えば、POSCO が現地採用職員に対して、技術や QSS(Quick Six Sigma:POSCO 型の問題解

決方法)教育を実施するなど、ソフト面での好影響も期待される。

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23

■鉄鋼設備投資計画

現時点の主な設備投資計画を表 25 にまとめた。Krakatau POSCO の高炉一貫製鉄所(第 1 期

300 万トン)、厚板ミルは近々に稼働予定である。稼働すれば、インドネシア初の高炉となる。ま

た、かつて Krakatau に続いて熱延ミルを稼働させた地元資本 Gunung Group も、スラブ生産設

備を既に SMS Siemag に発注したとの情報がある。これらにより、スラブ、厚板の輸入代替が進

むことが予想される。インドネシアの自動車生産増に対応するべく、韓国、日本ミルが自動車用

鋼板生産設備の新設計画を発表している。

表 2-2-25 鉄鋼設備計画

企業名 設備内容 生産能力 (千t/年) 稼働予定 備考

高炉 1,200 2014年

熱延ミル 1,000 2015年

3,000(第1期) 2013年末

3,000(第2期) 未定

厚板 1,500 2013年末

熱延ミル 2,000? 未定

Gunung Group 高炉・転炉・スラブ連鋳機 高炉2,000、スラブ1,200 2015年

PT Krakatau Osaka Steel 中小形形鋼・鉄筋棒鋼 未発表 未発表 *2

Gumnawan Dianjaya Steel 厚板 1,000 2015年

韓POSCO 自動車用亜鉛メッキライン 400 2015年 *3

JFE Steel Galvanizing Indonesea自動車用溶融亜鉛メッキライン(CGL)

400 2016年 *4

Krakatau Nippon Steel Sumikin 自動車用鋼板 未発表 未発表 *5

(*1) 生産したスラブのうち、150万tは厚板向け、100万tはKrakatau向け、50万tはPOSCO海外法人もしくは東南アジア向け。(*2) 大阪製鉄51%、Krakatau Steel49%出資で、合弁設立を検討する旨、2012年12月発表。(*3) Krakatau POSCOの近郊に新規立地と予想されている。(*4) JFEスチール100%出資。(*5) 新日鉄住金51%、Krakatau Steel49%出資で、合弁設立を検討する旨、2012年12月発表。

印Essar Global 冷延ミル拡張 現行400→700へ2014年?

(2013年着工予定)

Krakatau Steel

Krakatau POSCO

高炉・転炉・スラブ連鋳機 *1

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24

(3)ベトナム

■生産動向・自給率・輸入依存度

粗鋼生産量は消費量増以上に伸びており、自給率が上がっている。国内でのビレット生産が伸

びていることによる(図 2-2-12、表 2-2-26)。

鋼種別には、特に冷延鋼板の生産が増え、輸入依存度が減少し続けている(表 2-2-26、表 2-2-27)。

2005 年に国営 Vietnam Steel 傘下の Phu My Flat Steel Sheet がベトナム 初の冷延ミル(40

万トン)を稼働させ、その後、2009 年に韓国 POSCO がオートバイや建材向け需要に対応するた

め、120 万トン冷延ミルを Vung Tau に完成させたので、一気に冷延能力が増大した。表面処理

鋼板の生産も増えている。ベトナムには熱延、厚板生産設備がないので、これらは全面的に輸入

に頼っている。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

自給

粗鋼消費量(*)

粗鋼生産量

自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-12 粗鋼生産量と自給率

表 2-2-26 鋼種別生産量

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年平均増加率*

銑鉄・DRI・HBI 200 186 202 211 170 255 275 500 600 n.a. 15%

鋼塊・半製品(ビレットのみ) 544 689 889 1,869 2,024 2,250 2,700 4,314 4,900 5,298 29%

形鋼 103 198 253 243 136 82 189 43 35 30 -13%

棒鋼 1,419 1,687 2,073 2,289 2,859 2,898 3,495 4,665 4,428 3,975 12%

線材 868 879 938 936 960 887 1,039 950 1,007 1,044 2%

厚中板・熱延鋼板 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -

冷延鋼板 0 0 80 215 392 432 631 1,720 1,473 1,747 55%

電磁鋼板 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -

表面処理鋼板 46 400 450 600 723 904 979 1,196 1,479 1,642 49%

鋼管 40 450 450 460 528 550 568 674 731 775 39%(*) 銑鉄・DRI・HBIは、2003~2011年の平均、冷延鋼板は2005~2012年の平均、他は2003~2012年の平均出所:東南アジア鉄鋼協会(SEAISI)データを基に作成

(単位:1,000t)

表 2-2-27 鋼種別輸入依存度(輸入量/鋼種別見掛生産量)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

鋼塊・半製品(ビレットのみ) 76% 77% 71% 49% 52% 55% 47% 30% 15% 9%

条鋼 6% 9% 3% 11% 17% 17% 15% 12% 13% 14%

厚中板・熱延鋼板 100% 100% 100% 100% 100% 123% 102% 118% 123% 101%

冷延鋼板 100% 100% 91% 76% 72% 74% 65% 16% 22% 36%

電磁鋼板 100% 100% n.a n.a n.a n.a n.a n.a n.a n.a

表面処理鋼板 n.a. 27% 25% 20% 31% 26% 31% 29% 23% 32%

鋼管 n.a. 14% 17% 18% 25% 14% 11% 15% 9% 15%

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25

■生産体制と鉄鋼政策

1994 年に、国営 Vietnam Steel が、多くの鉄鋼企業、組織を統合して組成された。同社は鉄鋼

生産に加え、鉄鉱石・石炭等の原料開発も行う。企業活動だけでなく、ベトナムの鉄鋼政策立案

にもかかわり、1990 年代後半には「Master Plan on Vietnam Steel Industry Development to

2010」策定に深く関与した(同マスタープランは 2001 年に首相承認が得られた)。2000 年代に

は、ベトナム経済活況を背景に、内外民間資本による鉄鋼生産設備の新設・拡張が行われ、現在

も続いている。現時点では、スラブ、ブルーム、熱延、厚板の生産設備がいまだない一方で、ビ

レット、条鋼、冷延、表面処理鋼板、鋼管では多くの企業が存在し、鉄鋼需要急増にもかかわら

ず、生産余力はある(2012、13 年の需要鈍化状況下では能力過剰とも言える状態にある)。

表 2-2-28 粗鋼・半製品・条鋼生産能力

会社名(製鉄所)

(転炉) (電炉) スラブ ビレット ブルーム 棒鋼 線材 形鋼

Vietnam Steel (Danang Steel) 1,500 1,500 150 150

〃    (Southern Steel) 500 500 400

〃 (TISCO LuuXa Steelmaking) 500 250 760 150 50

〃 (TISCO Thai Nguyen) 300 300 300 200

Hai Phong Steel(Hai Phong Steel) 240 200 250

Hoa Phat Group(Hanoi Plant) 200 200

〃    (Hai Duoung) 350 300 600 500 100

Hung Yen Steel(Hung Yen) 200

Song Da (Hai Phong) 400

ShengLi Vietnam(Thai Binh) 500 500 300 300

SSE Steel (Hanoi) 700 350

ThepViet (Pomina Steel) 500 500 850 250

  〃      (Phu My) 1,000 1,000 500

Van Loi (Van Loi Steel) 250 500 600 180

Viet Y (Hai Phong) 400

Dinh Vu Steel (Dinh Vu Steel) 200 200

Vietnam Italy Steel Joint Stock 200 200

Vina Kyoei Steel (*1) 150 150

Kyoei Steel Vietnam (*2) 300

Maruichi Sun Steel Joint Stock (SUNSCO) (*3) 300

POSCO-Vietnam (VPS) (POSCO35%出資) 100 100

Natsteel Vina (印Tata Steel傘下) 40 120

その他 655 75 300

合計 1,400 6,490 0 7,760 0 5,495 1,875 500

半製品

(*1) 共栄製鋼 45%、Vietnam Steel 40%、三井物産9%、伊藤忠丸紅鉄鋼6%出資。(*2) 共栄製鋼60%、伊藤忠丸紅鉄鋼20%、メタルワン20%出資により、北部の地場鉄筋棒鋼メーカーの圧延ラインを2012年取得。線材も生産。(*3) 丸一鋼管69.35%、JFEスチール8%出資。Sun Steel Joint Stockを2011年より改名。

(単位:千t/年)粗鋼 条鋼

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

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表 2-2-29 鋼板・鋼管生産能力

(単位:千t/年)会社名(製鉄所) 能力 備考

Vietnam Steel (Phu My Flat Steel Sheet) 400

POSCO-Vietnam (VSC-POSCO Vung Tau Plant) 1,200 POSCO85%、新日鉄15%出資

Hoa Sen Group (Hoa Sen Steel) 380 2011年、180→380千t

LiLAMA Hanoi Joint Stock Company(Lilama) 180

Maruichi Sun Steel Joint Stock 200

Tong Nat (Phu My) 200 2009年12月稼働

POSCO Vietnam Stainless Steel 230 ステンレス冷延

合計 2,790

表面 Vietnam Steel  (Southern Steel) 150 亜鉛メッキ150

処理 BlueScope Steel (Phu My) 175 亜鉛メッキ125

鋼板 Hoa Sen Group (Hoa Sen Steel) 850 亜鉛メッキ550

LiLAMA Hanoi Joint Stock Company (Lilama) 110 亜鉛メッキ60

Perusahaan Sadue Timah Malaysia

(Perstima Vietnam) 100 ブリキ100

Phuoc Khanh Trading and Manufacturing 150 亜鉛メッキ100

Posvina (POSCO50%、Vietnam Steel50%出資) 60 亜鉛メッキ40

Maruichi Sun Steel Joint Stock 260 亜鉛メッキ200

Vingal Industries 40 亜鉛メッキ 40

Fujiton Color Coating Steel Joint Stock (*1) 60 2011年設立

その他 2,227 亜鉛メッキ2,154

内、亜鉛メッキ3,419

   ブリキ100、カラー鋼板663

Hoa Phat Group (Hanoi Plant) 150

J-Spiral Steel Pipe (旧Jeong An Vina) 50 2010年に日本メーカーが買収 (*2)

SeAH Steel (Dong Nai) 180

Sujia Pipe (Ho Chi Minh) 60

Maruichi Sun Steel Joint Stock 320

Nippon Steel & Sumikin Pipe Vietnam 60

その他 1,295

合計 2,115

(*1) 日鉄住金鋼板25%、伊藤忠丸紅鉄鋼25%、地元民間50%出資(*2) JFEスチール35%、丸一鋼管35%、豊田通商30%出資

冷延鋼板

合計 4,182

鋼管

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

■鉄鋼設備投資計画

近の設備投資および計画をみると、ビレットについては外資および地元資本双方による能力

拡張が続いている。熱延ミルがベトナムで初めて、台湾資本により建設中である。冷延について

は 2013 年 10 月に台湾・日本資本による大型設備 CSVC(120 万トン)が竣工しており、各種表

面処理鋼板を製造する予定となっている。

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表 2-2-30 ベトナムの 近の設備投資および計画

企業名(場所) 設備概要(年産能力:千 t) 備考

Formosa Ha Tinh Steel Mill

( 台 湾 ・ 台 塑 集 団 Formosa Plastics

Group 85%出資)

(Vung Ang Industrial Zone, Ha Tinh 省)

高炉一貫製鉄所

(第 1 期 7,000、第 2 期 8,000)

高炉、転炉、熱延ミル、線材ミル

建設中

第1期:2015 年稼働予定

第 2 期:2020 年稼働目標

台湾・Formosa Heavy Industries

(Vung Ang Industrial Zone,

Ha Tinh Province)

連鋳機

スラブ(2,700)

ビレット(1,200)

ブルーム(1,500)

建設中:2015 年稼働予定

Vietnam Steel/Kunming (Lao Kai)

Vitnam Steel と中国の昆明鋼鉄の合弁

高炉・転炉・ビレット(500) 建設中:2013 年稼働予定

POSCO Specialty Steel (Phu My) 電炉・ビレット・形鋼/棒鋼

(1,000)

(内、大型形鋼 700、棒鋼 300)

建設中:2014 年稼働予定

(2010 年着工)

Kyoei Steel Vietnam (Ninh Binh) 電炉・ビレット・棒鋼(500) 建設中:2014 年稼働予定

(2012 年着工)

Vina Kyoei Steel (Ba Ria Vung Tau) 電炉・ビレット・棒鋼/線材

(1,000)

建設中:2014 年稼働予定

(2012 年着工)

Nhgi Son Iron and Steel (Thanh Hoa) 電炉・ビレット(1,000) 建設中:2013 年稼働予定

Vietnam-China Mineral Resources 電炉(1,000) 2015 年稼働予定

Hoa Sen (Phu My) 冷延コイル(200) 2013 年稼働予定

CSVC

( China Steel Sumikin Vietnam Joint

Stock;中鋼住金ベトナム) (*)

(My Xuan)

冷延(1,200)

最終製品予定は

溶融亜鉛メッキ(30)

電磁鋼板(20)

酸洗・塗油鋼板(20)

外販冷延コイル(50)

2013 年 10 月正式竣工

(2011 年9月着工)

Vietnam Steel 熱延ミル(2,000) 2012 年稼働予定だったが、

政府命令により停止

聚亨企業/燁聯鋼鉄

→E-United/JFE Steel

(Dung Quat Industrial Zone, Quang Ngai

Province)

高炉一貫製鉄所(5,000) 検討中

印 Tata Steel (65%)/

Vietnam Steel (30%)/

Vietnam Cement Industries (5%)

(Ha Tinh 省)

高炉一貫製鉄所(4,500) 投資許可待ち?

(*) 中国鋼鉄 51%、住友金属工業 30%、住友商事5%出資の合弁企業

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(4)マレーシア

■生産動向・自給率・輸入依存度

図 2-2-13 に粗鋼生産量と自給率の推移を示す。生産量は概ね消費量の増減に沿って増減してい

るが、自給率は 70%台だったのが 60%台に若干低下している。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

自給

率 粗鋼消費量 (*)

粗鋼生産量自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-13 粗鋼生産量と自給率

表 2-2-31 にまとめたように鋼材の輸入依存度は条鋼以外、高い。表 2-2-32 に示すように、稼

働率は低いことから、量的には国内生産能力に余裕がある。それにもかかわらず、輸入依存度が

高いことは品質などの面で課題があるためと推測される。

表 2-2-31 鋼種別輸入依存度(輸入量/鋼種別見掛消費量)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

条鋼 13% 17% 21% 18% 22% 18% 19% 25% 25% 29%

厚中板 64% 35% 54% 65% 114% 65% 59% 65% 68% 75%

熱延鋼板 40% 39% 47% 40% 36% 40% 45% 50% 42% 50%

冷延鋼板 61% 63% 70% 59% 61% 49% 61% 63% 57% 56%

電磁鋼板 100% 103% 101% 101% 105% 101% 106% 111% 117% 111%

亜鉛メッキ鋼板 42% 66% 67% 74% 61% 57% 46% 52% 48% 53%

ブリキ 36% 31% 27% 37% 53% 37% 37% 46% 46% 61%

その他表面処理鋼板 42% 49% 33% 25% 28% 51% 36% 45% 45% 52%

鋼管 104% 165% 173% 241% 116% 80% 340% 74% 115% 112%

出所:東南アジア協会データを基に作成

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表 2-2-32 国内生産能力と稼働率

生産能力(2012年) 生産量(2012年) 稼働率

条鋼 8,650 3,769 44%

厚板 850 152 18%

熱延鋼板 (*) 3,200 1,033 32%

冷延鋼板 (*) 2,670 859 32%

亜鉛メッキ鋼板 1,710 541 32%

ブリキ 260 119 46%

その他表面処理鋼板 530 225 42%

鋼管 1,480 688 46%

(*) 生産能力に占めるMegasteelの割合は、熱延100%、冷延54%

(単位:千t)

■生産体制と鉄鋼政策

マレーシアの鉄鋼生産は、表面処理と鋼管以外は、大手メーカー(グループ)による寡占もし

くは独占体制となっている。

粗鋼生産は現在、すべて電炉による。粗鋼、半成品、条鋼の生産能力は下表 2-2-33 に示すよう

な6社(グループ)による寡占体制となっている。

厚板メーカーは2社、熱延は1社独占である。1999 年 3 月、初の国産化プロジェクト Megasteel

が稼動を開始し、マレーシアで初めて熱延鋼板が生産できるようになった。現在も同社がマレー

シア唯一の熱延鋼板生産会社である。冷延鋼板は、従前は、Ornasteel(1994 年参入、2000 年よ

り中国鋼鉄傘下)と Cold Rolling Industry(1990 年参入、当初は日本も出資。2003 年より

Melawar Industriai Group(MIG)100%子会社となり、Mycllon Steel CRC に改名)の 2 社しか

なかったが、その後、2004 年に Megasteel が、2006 年に地場華人系の Yung Kong Galvanising

Industries が冷延ミルを新たに稼働させた。これらにより、年産能力は大幅に増えた。

表面処理鋼板メーカーも下表にまとめた。ブリキメーカーは 1 社である。マレーシアには日本

や韓国の家電メーカーが工場を持ち、大量の電気亜鉛めっき鋼板を消費しているが、国産品の品

質が悪いので輸入していた。これに注目し、日韓の鉄鋼メーカーが現地電気亜鉛めっきメーカー

を傘下に置くようになった。2007年にはPOSCOがMegs Industriesの過半数持ち分を取得、2009

年には新日鉄が E-Galv Steel Industries に出資をしている。

表 2-2-33 マレーシアの粗鋼・半成品・条鋼生産能力

会社名 粗鋼(電炉) スラブ ビレット ブルーム 条鋼

Ann Joo Resources 910 600 910 1,045

Kinsteel 1,950 1,960 500 1,950

Lion Group 4,000 2,000 2,550 2,524

Malaysia Steel Works 550 550 350

Malaysia Perwaja 1,400 750 1,150

Southern Steel 2,000 1,500 1,200

その他 30 431

合計 10,810 2,600 8,300 500 8,650

(単位:千t/年)

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

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表 2-2-34 主要鋼板・鋼管メーカー

(単位:千t/年)

会社名(製鉄所) 能力 備考

Lion Group (Megasteel Banting)

〃 (Lion Plate Kemaman)

Ji Kang Dimensi Sdh Bhd (Ji Kang Dimensi)

3,200

200

650

厚板

厚板

熱延鋼板

合計 4,050

Lion Group (Megasteel Banting)

中国鋼鉄 (CSC Ornasteel)

Melawar Industrial Group

Yung Kong Galvanising Industries

Acerinox (Bahru Stainless)

1,450

580

260

200

180

2011 年稼働

冷延鋼板

合計 2,670

BlueScope Steel (BlueScope Steel Kapar)

中国鋼鉄 (CSC Ornasteel)

Nippon EGalv Steel (Prai)(*1)

Federal Iron Works (Federal Iron)

Malaysia Galvanised Iron Works

Perusahaan Sadur Timah Malaysia

POSCO/Megs Industries (*2)

Progress Steel Galvanising

Yung Kong Galvanising Industries

その他

250

360

150

280

225

260

120

400

330

125

亜鉛めっき(175)

亜鉛めっき(240)

電気亜鉛めっき(150)

亜鉛めっき(200)

亜鉛めっき(150)

ブリキ

電気亜鉛めっき(120)

亜鉛めっき (400)

溶融亜鉛めっき(250)

亜鉛めっき (25)

表面処理

鋼板

合計 2,500 亜鉛めっき(1,710)

カラー鋼板(530)

ブリキ(260)

鋼管 Alpine Pipe

Petropipe (旧 Prestar Pipe)

その他

550

375

555

合計 (*3) 1,480

(*1)旧 E-Galv Steel Industries(2006 年設立、2009 年商業生産開始)。2009 年に新日鉄および阪和興業が

同社議決権の 10%、15%を取得して以降、Nippon EGalv Steel に名称変更。2011 年現在、新日

鉄が同社株の 50.1%を保有。

(*2)2007 年に POSCO が Megs Industries の持ち分 60%を買収。

(*3)東南アジア鉄鋼協会のデータでは、鋼管合計生産能力はもっと多く、2,300 千tとなっている。

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を基に作成

マレーシアは、関税その他の政策により国内鉄鋼業の保護政策を続けてきた。 近になって自

由化を進めているが、まだ保護的措置(特に川上の Megasteel に対して)は残っている。国内唯

一の熱延メーカーである Megasteel の製品を使わざるを得ない冷延メーカーやユーザーからは不

満の声がしばしば聞かれる。価格面のみならず、Megasteel がしばしば起こす製品納入遅れや品

質のばらつきに関する不満も聞かれる。

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■鉄鋼設備投資計画

現時点で具対化している設備投資としては下表がある。Eastern Steel は、マレーシア鋼管メー

カーHiap Teck が 51%、中国の首鋼集団が 45%出資した合弁企業で、完成・稼働すればマレーシ

ア初の高炉法によるスラブ製鉄所となる。首鋼集団が設備および技術を提供する。生産したスラ

ブは自社で厚板や各種鋼板生産に使用するほか、マレーシア国内のリローラー、インドネシア、

タイに供給する予定という。

表 2-2-35 設備投資計画

会社名(製鉄所) 設備内容(年産能力:千t) 稼働予定年 備考

Eastern Steel

(Terenggnu 州 Kemaman)

高炉・転炉(700)

スラブ(第1期 700)

スラブ(第2期 800)

2013

2014

2012 年着工済み

Malaysia Steel Works 棒鋼(200) 2015 2013 年計画発表

Acerinox (Bahru) (*) ステンレス冷延(180→400)

ステンレス冷延(400→600)

2013

未定

13年5月稼働済み

(*) スペイン Acerinox67%、日新製鋼 30%、メタルワン 3%出資

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(5)フィリピン

■生産動向・自給率・輸入依存度

図 2-2-14 に粗鋼生産量と自給率の推移を示す。鉄鋼消費量がそれほど伸びていない中、ビレッ

トの生産量が増えているため、自給率は上昇している。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

自給

率 粗鋼消費量 (*)

粗鋼生産量自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

図 2-2-14 粗鋼生産量と自給率

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

表 2-2-36 のように、鉄鋼の輸入依存度は、条鋼、その他表面処理鋼板以外、非常に高い。厚板、

熱延、冷延、ブリキは後述のように、生産設備が存在し、一時期は稼働したものの、現在は稼働

していないようで、100%輸入依存となっている。図 2-2-15 に示すように、中国や韓国からの輸

入が多くなっている。

表 2-2-36 鋼種別輸入依存度(輸入量/鋼種別見掛消費量)

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

銑鉄・DRI・HBI - 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

鋼塊・半製品(ビレット・スラブ) 74% 71% 70% 67% 65% 61% 59% 53% 49% 51%

条鋼 19% 27% 23% 27% 32% 26% 20% 23% 22% 22%

厚中板 - 100% 100% 100% 100% 98% 100% 100% 100% 100%

熱延鋼板 100% 100% 100% 63% 60% 65% 76% 111% 100% 100%

冷延鋼板 62% 75% 68% 61% 60% 63% 74% 107% 100% 100%

電磁鋼板 - 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

亜鉛メッキ鋼板 0% 24% 38% 42% 39% 41% 35% 64% 70% 86%

ブリキ 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

その他表面処理鋼板 26% 7% 19% 13% 21% 29% 25% 33% 41% 31%

鋼管 18% 39% 71% 77% 78% 47% 64% 79% 68% 57%

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

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33

■鉄鋼設備投資計画

出所:東南アジア鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook」各年を基に作成

図 2-2-15 鉄鋼輸入相手国

■生産体制と鉄鋼政策

フィリピンの鉄鋼生産は今日まで、政策的に一貫製鉄所が造られることもなく、上工程である

製鋼はスクラップをベースにした電炉操業に限られ、下工程では輸入されたスラブ、ビレット、

および熱延鋼板等の原板を加工する単圧メーカー、亜鉛メッキ業者、および鋼管を製造する加工

メーカーを中心に発展してきた。

1980 年代に、熱延、冷延、メッキなどの設備を有していた National Steel が政府の管理する企

業となったが、1994 年に民営化され、その後、経営悪化のため、操業休止や再開を繰り返してい

る。同社は現在、名称が Global Steel Philippines (GSPI) となり、フィリピン唯一の厚板、熱延、

ブリキ生産設備および冷延設備を有しているが、 近は稼働していないようである。2013 年3月

に、インドの冷延・亜鉛メッキ鋼板メーカーUttam Galva Steels の共同オーナーである Miglani

ファミリーが GSPI を買収するための話し合いに入ったとの報道があったが、その後の進展は不

明である。

フィリピンの大部分の工場設備、技術ともに旧式のままであり、過去 10 年間生産能力はあまり

変わっていない。唯一、鉄筋棒鋼生産 大手の SteelAsia Manufacturing が生産能力を拡大して

いる(10 年前の棒鋼生産能力 40 万トンが、2012 年時点で 130 万トン)。

【2005年】

韓国6%

中国20%

ロシア31%

マレーシア2%

ベトナム0%

台湾6%

日本14%

その他21%

(輸入合計3,0766千t) 【2012年】

その他3%

日本15%

台湾7%

ベトナム5%

マレーシア3%

ロシア7%

中国36%

韓国24%

(輸入合計4,684千t)

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34

表 2-2-37 粗鋼・半製品生産能力

会社名(製鉄所) 粗鋼(電炉) スラブ ビレット ブルームTKC;Treasure Steel Works (Iligan) 400 400

Cathay Metal 300 300

SteelAsia Manufacturing 300 300

Armco-Marsteel Alloy (Taguig) (160)*

Armstrong Industries (Caloocan) (160)*

Milwaukee Industries (Pampanga) (160)* 180

Metro Concast Steel (Manila) n.a.

Apollo Steel Mill (Manila) n.a.

Midland Steel (Globe Manila) n.a.

SKK Steel (Manila) n.a.

Elegant Chemical Alloy (Manila) n.a.

合計 (1,480)* 0 1,180 0

(*) 3社の電炉能力がそれぞれ160千tというのは古いデータで、最近の状況は確認できない。現在、個別に確認できるのが1,000千t。古い未確認の3社分を足すと、合計1,480千tとなる。

(単位:千t/年)

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を

基に作成

表 2-2-38 条鋼生産能力

棒鋼 線材 形鋼Cathay Metal 420 300

Capitol Steel 180

Cebu Steel 180 60

Ferro Steel 100

Filipio Meals 120

Maxima Steel 60

Pag-Asa Steel Works 200 100

SteelAsia Manufacturing

 (旧Bacnotan Steel Industries)

その他 670 100

合計 3,230 560 420 (*)

(*) メーカーごとの生産能力は不明だが、東南アジア鉄鋼協会データによると、7社、合計420千トンとなっている。

会社名能力(千t/年)

1,300

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を

基に作成

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35

表 2-2-39 鋼板・鋼管生産能力

会社名(製鉄所) 能力(千t/年) 備考

厚板 Global Steel Philippines 800

熱延鋼板 Global Steel Philippines 1,200

Global Steel Philippines 1,000

Philisteel Holdings 300

合計 1,300

表面処理 Global Steel Philippines 150 ブリキ

鋼板 Philisteel Holdings 390 内、亜鉛メッキ340千t

Cebu Steel 90 内、亜鉛メッキ60千t

Chuayuco Steel 90 内、亜鉛メッキ60千t

Puyat Steel 336 内、亜鉛メッキ300千t

Sonic Steel 450 内、亜鉛メッキ450千t

Union Galvasteel 100 内、亜鉛メッキ60千t

亜鉛メッキ1,270千t、

ブリキ150千t、

カラー鋼板186千t

Mayer Steel Pipe 120 ERW (84)、HSAW (36)

Little Giant Steel Pipe 180

Mega Steel Pipe 20 大径管等

Supreme Steel Pipe 48

International Pipe Industries 40 大径管等

その他 226

合計 634

鋼管

冷延鋼板

合計 1,606

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社 HP、報道情報を

基に作成

■鉄鋼設備投資計画と今後の見通し

フィリピン政府は 2010 年に一貫製鉄所の建設を検討した。しかし、現時点では本件に関する

大きな進展は聞こえてこない。民間の TKC Steel がフィリピン初の高炉を建設中で、当初は 2011

年稼働となっていたが、遅れている。 新情報(同社 2013 年 4 月アニュアルレポート)では、

2013 年以内に稼働予定となっている。 表 2-2-40 設備投資計画

会社名(製鉄所) 設備 (年産能力:千t) 稼働予定年 備考

TKC Steel 高炉 (250) 2013 建設中

SteelAsia Manufacturing 棒鋼 (400) 2013 建設中。当初予定は 2011 年稼働。

〃 鉄筋棒鋼(600) 2015 計画

Pag-Asa Steel Works 棒鋼(450) 2014 上工程への進出も検討中。

今のところ、建設用条鋼の生産能力増強以外は、川上・川下とも大きな設備投資が具体化して

おらず、古い生産設備・技術が大半を占めたままである。ビレットや鋼板類の輸入依存が変わる

要素が見つからない。逆に、自由貿易体制が ASEAN 域内外で進行しており、FTA により主要輸

入相手国である中国・韓国からの鉄鋼輸入に対する関税がゼロとなっている現状では、さらに輸

入依存度が高まる可能性がある。フィリピン政府も、あまり積極的な鉄鋼業保護施策はとってい

ない。需要面からも、建設業が中心であり、当面、フィリピンの鉄鋼業は現状の延長で、建設向

け条鋼(特に鉄筋棒鋼)や屋根材となる溶融亜鉛めっき鋼板、塗装鋼板、建設用杭や水道管用の

鋼管中心の発展を続けることが予想される。

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36

(6)インド

■生産動向・自給率

図 2-2-16 に粗鋼生産量と自給率の推移を示す。生産量は鉄鋼消費量(粗鋼換算)の増に沿った

形で増えており、自給率ほぼ 100%である。粗鋼生産量の 2003~2012 年の間の年平均増加率は

約 10%だった。鉄鋼輸出・輸入量はどちらも生産量の 10%~20%程度の間で推移してきており、

それほど比重は大きくない(2013 年はルピー安の影響で若干輸出増加傾向にある)。

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

2003年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

粗鋼

消費

・生

産量

(千

t)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

自給

率 粗鋼消費量

粗鋼生産量自給率

(*)粗鋼換算鉄鋼消費量

出所:世界鉄鋼協会「Steel Statistical Yearbook 2013」

図 2-2-16 粗鋼生産量と自給率

図 2-2-17 に鋼種別生産量を示す。10 年前と比べると、生産量はどの鋼種でも増えているが、

特に棒鋼や亜鉛メッキ・カラー鋼板の生産が増え、全体に占める割合が増している。

出所:Spark Steel & Economy Research Center 「Steel Scenario Yearbook」

図 2-2-17 鋼種別生産割合(外販分のみ)

線材14%厚中板

7%

熱延鋼板(母材含む)

31%

ブリキ0%

電磁鋼板0%

亜鉛メッキ・カラー鋼板

0%

冷延鋼板(母材含む)

17%

軌条・同付属品3%

形鋼9%

棒鋼19%

【2003年度】 (生産量合計33,000千t)

線材17%

厚中板7%

棒鋼26%

形鋼7%

軌条・同付属品1%

冷延鋼板(母材含む)

10%

亜鉛メッキ・カラー鋼板

9%

電磁鋼板0%

ブリキ0%

熱延鋼板(母材含む)

22%

【2011年度】 (生産量合計67,039千t)

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■鉄鋼政策と生産体制

1945年の独立後、インド政府は鉄鋼を経済開発の中核製品と位置づけて5カ年計画を逐次実行、

1950~60 年代に鉄鋼生産能力は飛躍的に高まった。この間、ドイツ、旧ソ連、イギリスの援助で、

4つの一貫製鉄所を設立、1978 年にこれら国有製鉄所の持ち株会社としてインド鉄鋼公社(Sail)

設立した。国有製鉄所強化とともに保護関税の設定、鉄鋼価格および流通の統制を行って国内鉄

鋼業の保護・発展を図った。一方、1970 年代初めから 80 年代初めにかけて、地方の深刻な需給

ギャップを解消するために電炉ミニミルの建設を奨励、民間の電炉ミニミルが多数誕生した。

しかし、景気後退期にあっても保護政策により確実な収益を保証したことから、鉄鋼業の効率

性は著しく減退、設備投資や技術開発は遅れた。政府介入方式では顕在化してきた国内の鉄鋼不

足に対処するには不十分であるという機運が高まる中、1991 年に誕生したラオ政権では、国内景

気を刺激するための大幅な規制緩和や外国資本の積極的導入という経済自由化政策に転換した。

1992年1月より鉄鋼価格統制廃止並びに輸入関税の大幅な引き下げを実施した。経済改革により、

自動車、家電を始めとする需要産業の活動が強力に刺激され、国内鉄鋼需要が急速に拡大すると

ともに、鉄鋼生産能力も、新興鉄鋼メーカーを含む電炉メーカー、リロールメーカーなどを中心

に大きく伸びた。

2000 年頃には、経済改革後計画された新規設備が稼動開始し設備能力が過剰になってきたこと、

一方で『BRICS』として取り上げられ、インドの鉄鋼業も有望国の基幹産業として将来に向かっ

ての拡大を期待されるようになったことから、鉄鋼業発展の方向性を提示する指針を整備する必

要性が出てきた。政府は 2005 年、インド鉄鋼業の自律的発展と国際競争力強化の方向性を打ち

出した『国家鉄鋼政策(National Steel Policy-2005)』を策定した。これが鉄鋼省による 2020 年

までの鉄鋼産業の公式な長期マスタープランとしては現在も有効となっている。同政策では、表

2-2-41 の生産・輸出目標を実現するために、原料採掘・輸入、インフラ整備、制度整備など必要事

項を多方面から検討し、比較的詳細にそれらの目標を記述している。

表 2-2-41 国家鉄鋼政策(2005 年策定)の目標

生産量 輸入量 輸出量 消費量

2019年度 110 6 26 90

2004年度 38 2 4 36

年平均増加率 7.30% 7.10% 13.30% 6.90%

(単位:100万t)

2000 年代、国営鉄鋼メーカー(Sail と RINL)は投資計画について自立的意思決定権限が制

限されており、政治の介入に加え、多重に及ぶ裁可を得なければならないなど、企業活動の自由

裁量権が欠如している一方で、Tata Steel を筆頭に民営メーカーは新規設備投資や技術導入に積

極的で、かつそれが可能な経営体制となっていることから、これらを中心にインドの鉄鋼生産量

は大きく伸びた。

近のまとまった将来見通しとしては、2012 年 10 月ニューデリーで行われた世界鉄鋼協会の

会議で発表された『India Steel Vision 2020 report』がある。同ビジョンは、INSDAG(Institute

for Steel Development and Growth;鉄鋼省と大手鉄鋼メーカーにより設立された非営利組織で、

インド国内の鉄鋼使用拡大奨励を行う)の事務局長および Tata Steel の戦略・計画主任により発

表された。同ビジョンでは、2020 年度まで GDP が安定的に年8%成長すると前提し、2020 年度

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には鋼材需要 1 億 5,500 万トン、同 1 人あたり鋼材消費量 115kg/人(2011 年度実績 58kg の約 2

倍)、粗鋼生産能力 2 億 200 万トン(2011 年度の 8,900 万トンから 227%増)と予想しており、

原料事情などを考慮した保守的な見通しでも粗鋼生産能力 1 億 7,700 万 t としている。2013 年7

月にはシン首相が、経済成長年率8~9%を達成するために製造業テコ入れが必要とし、鉄鋼生

産能力を 2025 年までに 3 億トンとする目標も打ち出している。

表 2-2-42 India Steel Vision 2020:インドの部門別鋼材需要

年平均成長率 年平均成長率

(2002~2012) (2012~2021)

量 (構成比) 量 (構成比)

建設・インフラ 45 63% 95 61% 9.60% 8.5~9.5%

エンジニアリング 16 22% 33 21% 8.40% 7.5~8.5%

自動車 7 10% 20 13% 14.40% 11.5~12.5%

包装 2 3% 3 2% 7.30% 7.0~7.6%

他 1 2% 4 3% 8.20% 8.5~9.2%

合計 71 100% 155 100% 9.10%

2011年度需要実績

(100万t)

2020年度需要予想

(100万t)

表 2-2-43 India Steel Vision 2020:インドの粗鋼生産能力

(単位:100万t)

2011年度実績 2016年度予想 2020年度予想

合計生産能力 89 144 202

拡張種類別増加量(対2011年度) +55 +113

   既存ミル拡張 26 31

    新規立地 29 82

立地場所別生産能力

   東部・中部 51 93 139

   南部 23 34 43

   西部 15 17 20

電炉・高炉別生産能力

   電炉 49 69 81

   高炉 40 75 121

以下の表 2-2-44~表 2-2-46 に現在の主なメーカー別鉄鋼生産能力をまとめた。

インド鉄鋼業は慣例的に、以下の3群に大別される。

・「Main Producers」(先発の大手一貫メーカー:Sail、RINL の国営2社と民営の Tata Steel)

・「Major Producers」(新興大手メーカー:民営の Essar、Ispat、JSW、 近はさらに Jindal

Steel & Power(JSPL)も含める。なお、Ispat は 2010 年から JSW 傘下に入った。)

・「その他メーカー」(民営の小規模メーカー群)

下表では、Main Producers と Major Producers を『大手メーカー』としてまとめた。『その他

メーカー』は条鋼の生産量実績で約7割を占め(10 年前の約6割から増)、概して古い設備と技

術を使用しているが、小口の顧客に柔軟に対応できるため、それぞれの地方市場に根付いて存続

している。インドでは輸送交通網が整備されていないことなどから、鋼材市場が地方ごとに分断

されていることが背景にある。鋼板の生産量実績は、大手メーカーが全体の約8割を占める(10

年前の9割以上より減)上)。『その他メーカー』の中では、純粋な小規模メーカーだけでなく、

Bhushan Steel、Bhushan Power & Steel、Welspun Corp. Ltd.といった、「準大手」とも言える

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39

メーカーが台頭している。

表 2-2-44 インドの粗鋼・半製品生産能力

会社名粗鋼

(転炉)粗鋼

(電炉)粗鋼

(平炉)粗鋼計

スラブ ビレット ブルーム

Sail 14,500 1,650 500 16,650 10,000 2,750 3,870

Tata Steel 6,800 2,500 9,300 4,000 3,130

JSW Steel (Ispatを除く) 11,000 864 11,864 7,400 1,700 600

JSW Ispat Steel 3,300 3,300 3,000

Essar 11,500 11,500 6,500

RINL (Vizag) 2,700 2,700 800 2,700

Jindal Steel & Power 10,500 10,500 7,000 1,000 750

(大手メーカー計) 35,000 30,314 500 65,814 37,900 9,380 7,920

Bhushan Steel 5,000 5,000 5,000

Bhushan Power & Steel 3,000 3,000 2,400 1,000

Neelachal Ispat 1,100 1,100 1,100

AARTI 250 500 750 800

Adhunik 780 780 750

Jai Balaji Industries 900 900 900

Jindal Stainless 720 720 720

Loyds Steel 1,000 1,000 1,200

Monnet Ispat 900 900 500

Rathi Steel & Power 500 500

Ramsarup 700 700 700

SKS Ispat & Power 350 350

Maithan Ispat 250 250 300

Welspun Power & Steel 1,500 1,500 1,500

その他 1,310 3,607 610 5,527 440 7,375 530

合 計 37,410 48,671 2,710 88,791 87,060 32,185 16,370(大手メーカーシェア) 94% 62% 18% 74% 44% 29% 48%出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社HP、報道情報を基に作成

(単位:千t)

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表 2-2-45 インドの条鋼生産能力

会社名 棒鋼 線材 形鋼 計

Sail 1,050 1,550 1,540 4,140

Tata Steel 1,125 905 0 2,030

JSW Steel (Ispatを除く) 900 1,000 0 1,900

JSW Ispat Steel 0 0 0 0

Essar 0 0 0 0

RINL (Vizag) 1,150 800 800 2,750

Jindal Steel & Power 1,400 600 1,200 3,200

(大手メーカー計) 5,625 4,855 3,540 14,020

Bhushan Steel 0

Bhushan Power & Steel 650 350 1,000

Nellachal Ispat 300 700 1,000

AARTI 150 150 300

Adhunik 750 600 1,350

Jai Balaji Industries 125 125 250

Monnet Ispat 150 500 650

SKS Ispat & Power 234 125 359

Kamdhenu Ispat 1,900 1,900

その他 16,730 7,002 5,780 29,512

合計 26,380 14,016 9,945 50,341

(大手メーカーシェア) 21% 35% 36% 28%出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社HP、報道情報を基に作成

(単位:千t)

表 2-2-46 インドの鋼板・鋼管生産能力

会社名(製鉄所) 厚中板 熱延鋼板 冷延鋼板 ブリキ 亜鉛メッキ カラー鋼板 鋼管

Sail 2,490 7,610 2,520 85 560

Tata Steel (Jamshedupur) 5,900 2,000 400

Tata Tinplate 120 380

JSW Steel (Ispatを除く) 8,500 1,900 2,100 235

JSW Ispat Steel 3,000 600 655 110

Essar 1,500 8,100 2,000 1,000 550 595

RINL (Vizag) 700

Jindal Steel & Power 2,750

(大手メーカー計) 6,740 33,110 9,140 465 4,715 895 1,295

Bhushan Steel 5,000 900 465 80

Bhushan Power & Steel 2,500 700 500

Jindal SAW 1,800

Jindal Stainless 2,320 400

GPT 450 180

KR Steel Union 120 150 50

Loyds Steel 1,000 400 250 100

Man Industries 1,000

Metalman Industries 300 300 120 120 80

Namco Industries 1,200

PSL 2,075

Ruchi 975 650 205

Surana Industries 60 1,300

Swastil Pipes 3,000

Uttama Galva 1,000 750 90

Welspun Corp. Ltd. 750 750 3,000

その他 100 400 1,570 558 650 5,793

合計 9,090 45,380 15,835 795 8,008 1,970 19,443

(大手メーカーシェア) 74% 73% 58% 58% 59% 45% 7%

出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社HP、報道情報を基に作成

(単位:千t)

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■鉄鋼設備投資計画

大手、準大手民営ミルだけでなく、 近は国営 Sail、RINL も積極的な拡張を行っている。た

だし、インドでは、土地や鉄鉱石確保、建設認可が、住民の抵抗や政府の行政手続きの問題でス

ムーズに進まないケースが多く、計画がすべて実現するとは限らない。

外資による大型案件としては、韓国 POSCO による Odisha 州 1,200 万トン高炉一貫製鉄所建

設が障害に直面しながらも進められている。ArcelorMittal は Odisa 州(1,200 万トン)、Jharkand

州(1,200 万トン)、Karnataka 州(600 万トン)の3つの高炉一貫製鉄所建設計画を有していた

が、2013 年7月に Odisha 州案件からは撤退を表明、他の2件も進展がはかばかしくないと明か

している。

表 2-2-47 主な鉄鋼設備新設・拡張計画(2013~2017 年稼働予定分)

高炉 転炉 電炉 条鋼 厚板 熱延鋼板 冷延鋼板亜鉛メッキカラー鋼鈑

鋼管

Sail 2,500 19,400 4,550 1,000 2,500 1,300 800

Tata Steel 11,500 5,500 600

JSW Steel 4,500 500 4,500 3,900 400

Essar 500 500

RINL (Vizag) 4,000

Jindal Steel & Power 11,000 19,500 11,000 1,300

(大手メーカー計) 2,500 46,400 19,500 16,050 1,000 16,500 6,300 1,700 1,300

Bhushan Steel 2,500 500 350

Bhushan Power & Steel 1,300 500 300

Sesa Goa 1,500

Shyam Steel 1,100

Welspun Maxsteel 1,500

POSCO(韓国) 12,000 12,000 3,000 1,800 450

その他 870 4,170 2,769 650 40 100 175

合計 16,670 63,900 24,770 18,819 1,650 19,540 9,100 2,900 1,475出所:Metal Bulletin「Steelmaking Cappacity & Capex Study 2012Q4」、各社HP、報道情報を基に作成

(単位:千t)

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(7)総括 (1)から(6)の内容を各国横断的に下表 2-2-48~表 2-2-50 に要約した。

表 2-2-48 生産量と自給・輸入傾向 粗鋼生産伸び率

(2003~12 年) 自給・輸入傾向

タイ 年平均△1% 条鋼以外、輸入依存度高く、かつ上昇傾向。 インドネシア 年平均 1% 輸入依存度高く、かつ上昇傾向。

ベトナム 年平均 29% 厚板と熱延は 100%輸入。それ以外は比較的自給率高い。

マレーシア 年平均 4% 条鋼以外、輸入依存度高い。

フィリピン 年平均 11% 条鋼とその他表面処理鋼板以外、輸入依存度非常に高い。

インド 年平均 10% 需要増にマッチして生産増。輸入依存度低。 ※輸出状況については、各国とも少ないので本概要版では省略した。

表 2-2-49 近年の鉄鋼政策 タイ 初の高炉一貫製鉄所の FS 実施。世界的大手ミルから関心表明文書を得たが、目

立った進捗なし。 インドネシア 自由化を基本に適宜保護的措置。国営 Krakatau Steel の経営に課題。 ベトナム 国営 Vietnam Steel を軸に政策策定。 マレーシア 従来の保護政策を緩和する方向。ただし唯一の熱延メーカーMegasteel に対する

保護的措置継続。 フィリピン 鉄鋼業に対する特別な政策が見られない。 インド 中長期の全体的ガイドライン・目標を提示(2005 年鉄鋼政策、2012 年発表 Vision

2020 など)。 近、国営鉄鋼メーカー(Sail、RINL)の能力拡大に積極的。

表 2-2-50 近年の鉄鋼生産体制と設備投資計画 タイ すべて民営ミル。条鋼生産能力はやや過剰。価格、品質に課題があり、輸入依存

度高い。 設備投資計画は具体的なものは圧延のみ(日系が輸出に代わり現地生産へ)。

インドネシア どの工程でも相当数の民営メーカー存在(内外資本)。 国営 Krakatau と韓国 POSCO の合弁高炉一貫製鉄所建設が注目される。

ベトナム スラブ、ブルーム、熱延、厚板の生産設備がいまだにない。 条鋼、冷延、表面処理鋼板、鋼管では多くのメーカーがあり、能力過剰気味。 各工程で大きな設備計画あり。

マレーシア 表面処理鋼板と鋼管以外は大手メーカーによる寡占・独占体制。 初の高炉法によるスラブ製鉄所を建設中。

フィリピン 同国唯一の厚板、熱延、ブリキメーカーGlobal Steel Philippines が稼働してい

ない。それ以外の鋼種では、中小規模ミルが散在。 唯一、棒鋼メーカーSteelAsia Manufacturing の能力拡大を継続している。

インド 国営2社のほか、多くの民営ミルが存在。準大手・小規模ミルが条鋼の約7割、

鋼板の約3割を生産。 国営、民営大手、準大手ともに積極的な能力拡張計画多数。新規立地については

土地取得、鉄鉱石原料確保、建設認可手続き遅延に課題。

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43

2.2.4 調査対象地域の鋼材輸入動向

以下に、タイ、インドネシア、マレーシアの鋼材輸入元および主要輸入元国別の輸入品種構成

を、2007 年と 2012 年を比較しながらまとめた。

(1)タイ

輸入元は日本が 1 位(シェア 2007 年 41%、2012 年 33%)、中国が 2 位(2007 年 22%、2012

年 19%)であることは変わりないが、EU およびロシア・ウクライナからの半製品輸入が増えて

いるのが目立つ(EU のシェア 2007 年 3%が 2012 年は 9%、ロシア・ウクライナのシェア 2007

年 9%が 2012 年は 14%)。EU からの増は、タイの熱延メーカーSahaviriya Steel Industries (SSI)

がイギリスでスラブ製鉄所を買収し、2011 年より生産、輸入し始めたためである。

表 2-2-51 タイの鋼材輸入元と主要輸入品種

輸入元 主要輸入品種

日本 熱延、亜鉛メッキ鋼板で変わらず。

中国 以前は半製品だったが、現在は条鋼、合金鋼板。

韓国 各種鋼板で変わらず。

台湾 以前より条鋼の割合が減り、熱延の割合が増。

オーストラリア 熱延薄板類で変わらず。

EU 半製品が増(上述)。

露・ウクライナ 鋼塊・半製品で変わらず。輸入量が増。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

露・ウクライナ

EU

オーストラリア

台湾

韓国

中国

日本

図 2-2-18 タイの鋼材輸入元

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44

図 2-2-19 日本からの輸入品種 図 2-2-20 中国からの輸入品種

図 2-2-21 韓国からの輸入品種 図 2-2-22 台湾からの輸入品種

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

半製品減:ロシア産が代替。

条鋼増:タイ国内需要増加分のほとんどを、

安い中国製条鋼が埋めた。

合金鋼板増:少量のボロン添加材について中

国で輸出税割り戻しが行われるた

め、価格優位性があって輸入された

と推定される。

熱延:2007 年 1,752 千 t中、酸洗 676 千 t

:2012 年 1,902 千 t 中、酸洗 983 千t

熱延:2007 年 186 千 t 中、酸洗 89千 t

:2012 年 323 千 t 中、酸洗 203 千t

熱延:2012 年 188 千 t 中、酸洗 28 千t

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45

図 2-2-23 オーストラリアからの輸入品種 図 2-2-24 EU からの輸入品種

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

熱延薄板類

鋼塊・半製品

図 2-2-25 ロシア・ウクライナからの輸入品種

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

Sahaviriya Steel Industries (SSI)がイギ

リスでスラブ製鉄所を買収し、2011 年より

生産、輸入し始めたため、スラブ輸入急増。

2007 年~2012 年で、ロシアからのスラブ輸入 30

万t、ビレット輸入 80 万t増。

国内鋼材生産量が横這いであるのに対し、国内

半製品生産量は減少しているので、コスト、品

質で優るロシア産品が代替したと考えられる。

また、中国からの輸入半製品も代替したと見ら

れる。

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46

(2)インドネシア

2007 年時点では中国のシェアが 31%で 1 位だったが、その後、日韓からの各種鋼板およびロ

シア・ウクライナからの半製品の輸入増加幅が大きく、ロシア・ウクライナのシェアが 1 位(2007

年 19%で 2 位が 2012 年は 24%で 1 位)に、日本のシェアが 2 位(2007 年 16%で 3 位が 2012

年は 20%で 2 位)に、韓国のシェアが増(2007 年 6%で 4 位が 2012 年は 14%で 4 位)となっ

た。

表 2-2-52 インドネシアの鋼材輸入元と主要輸入品種

輸入元 主要輸入品種

日本 各種鋼板。

中国 以前は半製品だったが、現在は条鋼。

韓国 各種鋼板。冷延の割合が減り、熱延が増。

台湾 各種鋼板。

オーストラリア 半製品の割合が減り、条鋼が増。

EU 鋼管の割合が増。

露・ウクライナ 半製品。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

露・ウクライナ

EU

オーストラリア

台湾

韓国

中国

日本

図 2-2-26 インドネシアの鋼材輸入元

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47

図 2-2-27 日本からの輸入品種 図 2-2-28 中国からの輸入品種

図 2-2-29 韓国からの輸入品種 図 2-2-30 台湾からの輸入品種

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

条鋼増:2007 年 353 千 t→2012 年 1,020 千 t

国内需要増加分のほとんどを供給。

鋼管増:2007 年 134 千 t→2012 年 451 千t

国内需要増加分の約半分を供給。

熱延:2007 年 228 千 t 中、酸洗 137 千 t

:2012 年 534 千 t 中、酸洗 242 千t

鋼管:2007 年 29 千t→2012 年 327 千t

国内需要増加分の約半分を供給。

熱延:2012 年 781 千 t 中、酸洗 92 千t

冷延、表面処理の国内生産が横這いで

あることからも、ほとんどが一般材と

しての用途と推定される。

熱延:2007 年 158 千 t 中、酸洗 31千 t

:2012 年 226 千 t 中、酸洗 63 千t

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48

図 2-2-31 オーストラリアからの輸入品種 図 2-2-32 EU からの輸入品種

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

厚中板

鋼塊・半製品

図 2-2-33 ロシア・ウクライナからの輸入品種

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

半製品増:2007 年~2012 年、ロシアからのスラブ輸

入が約 100 万 t、ビレット輸入が約 40 万 t 増。その

分、国内のスラブ、ビレット生産量は減。一方、条

鋼、厚板、熱延の国内生産量は横這い。したがって、

ロシア製半製品がコスト・品質面で国産品より優る

ため、国産品を代替したものと考えられる。

また、2012 年は Krakatau Steel の DRI がガス不安

定のため止まったので、不足となったスラブを輸入

したことも一因(2012 年のロシアからのスラブ輸入

量は前年比 71%増(54 万 t 増))。

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49

(3)マレーシア

輸入元としては、日本が 1 位で中国が 2 位だったのが、2012 年になって中国からの条鋼を中心

とした輸入が大幅に増え、中国が 1 位、日本が 2 位となった。

表 2-2-53 マレーシアの鋼材輸入元と主要輸入品種

輸入元 主要輸入品種

日本 以前は亜鉛メッキ、鋼管。現在はやや熱延の割合が増。

中国 以前は半製品と条鋼だったが、条鋼が大幅に増。

韓国 条鋼の割合が減り、熱延が増。

台湾 各種鋼板で変わらず。

オーストラリア 冷延の割合が減り、鋼塊・半製品が増。

EU 全般に減少。

露・ウクライナ 厚中板の割合が減り、鋼塊・半製品が増。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

露・ウクライナ

EU

オーストラリア

台湾

韓国

中国

日本

図 2-2-34 マレーシアの鋼材輸入元

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50

図 2-2-35 日本からの輸入品種 図 2-2-36 中国からの輸入品種

図 2-2-37 韓国からの輸入品種 図 2-2-38 台湾からの輸入品種

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

条鋼減:安い中国品が代替。

熱延:2007 年 152 千 t 中、酸洗 57千 t

:2012 年 262 千 t 中、酸洗 31 千t

亜 鉛 メ ッ キ 減 : 2008 年 に POSCO が

POSCO-Malaysia(EGL180 千t)を子会

社化し、現地家電メーカー等に直接供

給。

条鋼減:安い中国品が代替。

熱延:2012 年 89 千 t 中、酸洗 40 千t

冷延増:2007 年 118 千 t→2012 年 286 千t

2008 年に POSCO-Malaysia(EGL180 千t)

を子会社化し、POSCO が原板供給。

熱延:2007 年 421 千 t 中、酸洗 20千 t

:2012 年 380 千 t 中、酸洗 27 千t

条鋼:2007 年 474 千 t→2012 年 703 千 t

マレーシア国内条鋼需要増加

(2007年 3,939千t→2012年 4,937千 t)

の一部を供給。

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51

図 2-2-39 オーストラリアからの輸入品種 図 2-2-40 EU からの輸入品種

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(千

t)

その他

厚中板

鋼塊・半製品

図 2-2-41 ロシア・ウクライナからの輸入品種

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2007年 2012年

鋼材

輸入

量(

千t)

その他

鋼管

合金鋼鋼板類

亜鉛メッキ鋼板

冷延鋼板類

熱延薄板類

厚中板

条鋼

鋼塊・半製品

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52

2.3 現地政府及び現地企業・団体へのヒアリング調査

2.3.1 現地ヒアリング調査概要

(1)出張日時:平成 24 年 12 月 16 日(月)~平成 24 年 12 月 21 日(土)

(2)訪問先:マレーシア・クアランプールならびにベトナム・ハノイ

(3)出張者:JFE テクノリサーチ(株):杉田進一、飯野吉嗣

(4)出張スケジュール

日時 訪問先など 応対者(敬称略)

12 月 16 日(月) 移動:成田 → クアランプール

10:00~11:00:

SEAISI

Tan Ah Yong;; Secretary General,

Arief Tyaslaksono; Senior Technical

Manager

12:00~13:15:

Alpine Pipe Manufacturing SDN

BHD

Ng Kian Hin; MISF Council

Member, Sr. Business Dev Manager

Robert Goh Vun Vhun;Factory

Manager,

Ir.Loke Kok Yeong;;P. Emg Mech,

Senior Engineering Manager

14:00~15:00:

SUMIPUTEH Steel Center SDN

BHD

塩沢幸夫;Managing Director

12 月 17 日(火)

16:45~17:45:

JETRO Kuala Lumpur 竹廣克;Senior Director

10:00~11:00:

マ レ ー シ ア 政 府 、 Ministry of

International Trade and Industry

See Chee Kong;Pembantu Am

Pejabat, Director, General Office

Assistant

Zarina Hassan;Assistant Director

14:00~15:00:

Mycron Steel Crc SDN. BHD

Kevin Kok;Vice President,

Commercial

12 月 18 日(水)

移動:クアランプール → ハノイ

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53

9:00~10:15:

ベトナム政府;Department of Heavy

Industry, Ministry of Industry and

Trade

Bui Quang Chuyen;Deputy Director

General,

Tran Van Long;Expert

Do Nam Binh;Officer、

通訳:Vu Thi Hong Minh;Misaka

Communications Translation

Services, 名古屋大学法学博士

1045~11:45:

Hanoi University of Science and

Technology

Bui Anh Hoa;Associate Prof. Dr.

Vice Dean, School of Materials

Science and Engineering, Head,

Department of Iron and Steelmaking

12 月 19 日(木)

14:00~15:00:

Vietnam Steel Corporation

Tran Tat Thang;Vice President,

Dinh Van Tam;Director,

Department of Technology and

Labor Safely

10:00~12:00:

資料整理、ヒアリング準備

14:00~15:00:

JETRO, Hanoi Representative Office

細野次郎;海外投資/経済連携促進アド

バイザー(元住友金属)、

大橋伸二郎;Deputy Director,

平野雄二;Deputy Director

12 月 20 日(金)

移動;ハノイ → 成田

12 月 21 日(土) 早朝成田到着

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67

2.4 各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略

2.4.1 対象国別、企業別市場戦略

各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略として、表 2-4-1 は、対象国への進出企業(日

本以外、対象国別)に整理したもの、表 2-4-2 は、対象国への進出企業(日本、対象国別)に整

理したもの、表 2-4-3 は、対象国への進出企業(日本以外、企業別)に整理したもの、表 2-4-4

は、対象国への進出企業(日本、企業別)に整理したもの、を示す。

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68

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69

表 2-4-1 対象国への進出企業(日本以外、対象国別)

国名 企業名

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

POSCO-Thainox Public Company Ltd. 単圧 ステンレス冷延 300 操業中 2007年(資本参加) 3192億1200万ウォン

新CGL工場 単圧 表面処理 400 計画中 2015/10-12稼働予定

東部製鉄 Thai Dongbu Steel 単圧 表面処理 カラー 80 操業中 2013/6 100万ドル

WSP WSP Pipe Co.,Ltd. (Thailand) 単圧 鋼管 200 操業中 2010/12

宝鋼集団 Baoli Steel Tube(Thailand) Co.,Ltd. 単圧 鋼管 200 操業中 2013/2一部試験稼働

インド Tata Steel Tata Steel Thailand  ※傘下の3社含む 電炉一貫 条鋼 1880 操業中 2006年(買収)

オーストラリア BlueScope NS BlueScope Steel Thailand Ltd. 単圧 表面処理冷延 400、CG 375、カラー 90

操業中 1995年(設立)

Krakatau POSCO 高炉一貫 スラブ、厚板、熱延 1期 3000、2期 3000 建設中 2013/12 一部稼働開始9427億1900万ウォン投資額:60億ドル

人材育成

新CGL工場 単圧 表面処理 400 計画中

中 国 武漢鋼鉄集団鄂城鋼鉄 Gunung Garudaとの合弁 単圧 条鋼 1期 500、2期 500 計画中 2013~14年稼働計画

ESSAR Essar Indonesia 単圧 冷延、表面処理冷延 400(700に増強中)、CG 150

操業中 1997年

MASPION STAINLESS STEEL 単圧 ステンレス冷延 150 操業中 2004/7(買収)

Antam Jindal Stainless Indonesia 製鋼のみ ステンレス製鋼 250 操業中 2009年 投資額:7億ドル

SAIL 新製鉄所 製鉄所 3000 計画中

オーストラリア BlueScope PT NS Bluescope Steel Indonesia 単圧 表面処理 CG 265、カラー 160 操業中 1995/10(設立)

POSVINA Co.,Ltd 単圧 表面処理 40 操業中 1994年

VSC-POSCO Steel Corp (VPS) 単圧 条鋼 250 操業中 1995年(設立) 5612万ドル

POSCO-Vietnam Co.,Ltd 単圧 冷延 冷延 1200 操業中 2009/10 330億2700万ウォン

POSCO Vietnam Stainless Steel (POSCO VST) 単圧 ステンレス冷延 235 操業中 2009/10(買収) 528億2400万ウォン

POSCO SS-Vina 電炉一貫 条鋼 1000 建設中 2014/7 予定 1527億6100万ウォン

POSCO-Vinashin 製鋼一貫計画中

(頓挫か)Vietnam Steel Pipe Co.,Ltd. (VINAPIPE) 単圧 鋼管 30 操業中 1994/10

SeAH Steel Vina Corp (SSVC) 単圧 鋼管 150 操業中 1998年 1174万7470ドル

中 国 武漢鋼鉄集団昆明鋼鉄 Sino-Vietnam Mining and Metallurgical 高炉一貫 条鋼 500 建設中 2013年予定 投資額:1.52億ドル

CHINA STEEL SUMIKIN VIETNAM JOINT STOCK COMPANY (CSVC)

単圧冷延、表面処理、電磁鋼

1200(CG 300、電磁200)

操業中 2013/11営業運転開始5億7400万ドル投資額:11億5000万ドル

Formosa Ha Tinh steel mill 高炉一貫 ビレット、熱延、線材1期 ビレット 7500、2期7500

建設中 2015/5 予定35億ドル投資額:99億ドル

台塑集団(Formosa) Formosa Ha Tinh steel mill 高炉一貫 ビレット、熱延、線材1期 ビレット 7500、2期7500

建設中 2015/5 予定35億ドル投資額:99億ドル

義聯集団(E-United) Guang Lian Steel Vietnam 高炉一貫 熱延 5000 計画中 投資額:45億ドル

マレーシア Perstima Perstima Vietnam 単圧 表面処理 100 操業中 2003年(設立) 投資額:約2380万ドル

インド Tata Steel Natsteelvina 単圧 条鋼 160 操業中 2004年(買収) 50億ドル

オーストラリア BlueScope NS BlueScope Steel Vietnam Limited 単圧 表面処理 CG 125、カラー 50 操業中 2005/11

韓 国 POSCO POSCO-Malaysia 単圧 表面処理 EG 180 操業中 2008/1(買収) 215億9700万ウォン

済南鋼鉄 Ji Kang Dimensi 単圧 厚板 700 操業中 1996/9

首鋼集団 Eastern Steel 高炉-製鋼 スラブ 1期 700、2期 800 建設中 2014/ⅠQ投資額:1期 5億8000万ドル

2期 3億3800万ドル

宝鋼集団 Amsteel Mills 電炉一貫 条鋼 2000 買収協議中

台 湾 中国鋼鉄 CSC Steel Holdings 単圧 冷延、表面処理580(CG 240、カラー120)

操業中 2000/12

スペイン Acerinox Bahru Stainless Sdn.Bhd. 電炉一貫 ステンレス冷延製鋼 1000、冷延 600(現在:冷延 400)

操業中 2011/12 投資額:15億ドル

オーストラリア BlueScope NS Bluescope Steel Malaysia Sdn Bhd 単圧 表面処理 250 操業中

フィリピン インド Global Steel Holding Global Steel Philippines Inc. 単圧厚板、熱延、冷延、表面処理

2000 休止中? 2004/9(買収)

Posco Electrical Steel India Private Limited (POSCO-ESI) 単圧 電磁鋼 300 操業中 2013/12384億8300万ウォン投資額:1億4000万ドル

Posco Maharashtra Steel 単圧 冷延、表面処理 冷延 1800、CG 450 CGL操業中 2012/51881億9100万ウォン投資額:5億4700万ウォン

Steel Authority of India Ltd(SAIL)との合弁 製銑一貫 電磁鋼(予定) 計画中

Uttam Galvaとの合弁 製銑一貫 3000 計画中 投資額:30億ドル

POSCO-India (Odisha州のプロジェクト) 高炉一貫 厚板、熱延 12000 計画中 2018年初頭稼働予定 投資額:120億ドル

現代ハイスコ Automotive Steel Pipe India Private Limited 単圧 鋼管 48 操業中 2013/710億ルピー投資額:20億ルピー

台 湾 中国鋼鉄 China Steel Corporation India 単圧 電磁鋼 200 操業中 2013/10 投資額:6658万ドル

Uttam Galva Steels Ltd(UGSL) 単圧 冷延、表面処理冷延 1800、CG 750、カラー 90)

操業中 2009年(資本参加)

新製鉄所 2件 高炉一貫 熱延 12000+6000 計画中 120億ドル+65億ドル

ブラジル Gerdau Kalyani Gerdau Steels Ltd 高炉一貫 条鋼 840 操業中 2013/2

オーストラリア BlueScope Tata BlueScope Steel 単圧 表面処理 CG 250、カラー 150 操業中 2012/3 投資額:1億9400万ドル

中 国

インド

韓 国

SeAH Steel

POSCO

台 湾

ルクセンブルク

対象国企業名 分類

マレーシア

インド

韓 国

タ イ

韓 国

対象国鉄鋼供給国企業

ArcelorMittal

POSCO

中国鋼鉄

POSCO

Jindal Stainless

POSCO

ベトナム

技術協力の内容生産能力

(1000t/年)状況 操業開始年等製品

中 国

インドネシア

韓 国

資本金・投資額

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70

表 2-4-2 対象国への進出企業(日本、対象国別)

対象国鉄鋼供給国

企業名対象国企業名 分類 製品

生産能力(1000t/年)

状況 操業開始年等 資本金・投資額 技術協力の内容

Thai Steel Pipe Industry Co.,Ltd. (TSP) 単圧 鋼管 84 操業中 1965/1 3億6580万バーツ

Siam Tinplate Co.,Ltd. (STP) 単圧 表面処理 ブリキTFS 270 操業中 1992/2 8億バーツ

Siam Nippon Steel Pipe Co.,Ltd. (SNP) 単圧 鋼管 71 操業中 1996/1 7億8300万バーツ

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

NS BlueScope Steel Thailand Ltd. 単圧 表面処理冷延 300、CG 375、カラー 90

操業中 2013/3(資本参加)

NIPPON STEEL & SUMIKIN GALVANIZING (THAILAND) CO.,LTD 単圧 表面処理 CG 360 操業中 2013/108800万ドル投資額:3億ドル

Canadoil Group Ltd.の新厚板ミル建設 単圧 厚板 1200 建設中 2013年 投資額:6億ドル

Thai Tinplate Manufacturing Co.,Ltd. (TTP) 単圧 表面処理 ブリキ 552 操業中 1958年(設立)

Thai Coated Steel Sheet Co.,Ltd. (TCS) 単圧 表面処理 操業中 1994/4 22億バーツ

Thai Cold Rolled Steel Sheet Public Co.,Ltd. (TCR) 単圧 冷延 操業中 1997/6 58億8665万バーツ 自動車向け冷延コイル技術

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

JFE Steel Galvanizing (Thailand) Ltd. (JSG) 単圧 表面処理 CG 400 操業中 2013/4 投資額:約3億ドル

Kobe CH Wire (Thailand) Co.,Ltd. 単圧 条鋼 操業中 1998/2

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

Mahajak Kyodo Co.,Ltd. 単圧 条鋼 操業中 2002/2(資本参加)

大和工業 Siam Yamato Steel Co.,Ltd. 電炉一貫 条鋼 操業中 1992/4(設立)

PT. Indonesia Nippon Steel Pipe (INP) 単圧 鋼管 42 操業中 2007/1 1160万ドル

PT. Pelat Timah Nusantara (Latinusa) 単圧 表面処理 ブリキ 160 操業中 2009/11(資本参加) 2億5230万ルピア

PT NS Bluescope Steel Indonesia 単圧 表面処理 CG 265、カラー 160 操業中 2013/3(資本参加)

PT.Krakatau Nippon Steel Sumikin 単圧 自動車用鋼板 検討中 検討中

P.T. SERMANI INDONESIA 単圧 表面処理 CG 24 操業中 1969年(設立)

JFE Steel Galvanizing Indonesia 単圧 表面処理 CG 400 建設中 2016/3稼働予定 投資額:3億ドル

大阪製鉄 PT Krakatau Osaka Steel 単圧 条鋼 検討中

丸一鋼管 PT. Indonesia Steel Tube Works 単圧 鋼管 操業中 1972年

Vietnam Steel Products, Ltd. (VSP) 単圧 鋼管 48 操業中 1997/11 728億9800万ドン

POSCO-Vietnam Co.,Ltd 単圧 冷延 1200 操業中 2009/1(資本参加) 330億2700万ウォン

Nippon Steel & Sumikin Pipe Vietnam Co.,Lted. (NPV) 単圧 鋼管 60 操業中 2011/5 1500万ドル

Fujiton Color Coating Steel Joint Stock Company 単圧 表面処理 カラー 60 操業中 2012/6 870万ドル

NS BlueScope Steel Vietnam Limited 単圧 表面処理 CG 120、カラー 50 操業中 2013/6(資本参加)

CHINA STEEL SUMIKIN VIETNAM JOINT STOCK COMPANY (CSVC) 単圧冷延、表面処理、電磁鋼

1200(CG 300、電磁200)

操業中 2013/11営業運転開始5億7400万ドル投資額:11億5000万ドル

Maruichi Sun Steel Joint Stock Company (SUNSCO) 単圧 冷延、表面処理、鋼管 操業中 2010/2(資本参加)

J-Spiral Steel Pipe Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2010/11(買収) 買収額:180億ウォン

Vina Kyoei Steel Ltd. 電炉一貫 条鋼 1000 操業中 1994/1(設立) 2000万ドル ネジ節鉄筋技術の移譲等

Kyoei Steel Vietnam Company Limired 電炉一貫 条鋼 800 操業中 2012/3 3240万ドル

Maruichi Sun Steel Joint Stock Company (SUNSCO) 単圧 冷延、表面処理、鋼管 操業中 2006/11(資本参加)

Maruichi Sun Steel(Hanoi)Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2008/11(設立)

J-Spiral Steel Pipe Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2010/11(資本参加)

住友商事 Southen Steel Sheet Co., Ltd. 単圧 表面処理 CG 100、カラー 70 操業中 1995年

Nippon EGalv Steel Sdn. Bhd. 単圧 表面処理 EG 150 操業中 2009/2 3300万リンギット

Yung Kong Galvanising Inds (YKGI) 単圧 冷延、表面処理冷延 250、酸洗 300、CG 150、カラー 90

操業中 2010年(資本参加) 3億円強出資

NS Bluescope Steel Malaysia Sdn Bhd 単圧 表面処理 160 操業中 2013/6(資本参加)

Perusahaan Sadur Timah Malaysia Bhd. (PERSTIMA) 単圧 表面処理 操業中 2002/12(資本参加)

Mycron Steel Berhad 単圧 冷延 操業中 2010/2(資本参加) 自動車用冷延鋼板技術

日新製鋼 Bahru Stainless Sdn.Bhd. 電炉一貫 ステンレス冷延製鋼 1000、冷延 600(現在:冷延 400)

操業中 2011/12 投資額:15億ドル

フィリピン JFEスチール Philippine Sinter Corporation (PSC) 焼結 操業中 1977年

SMI Amtek Crankshaft Private Limited 単圧 交通産機品 220万本/年 操業中 2010/4 15億4000万ルピー

NIPPON STEEL PIPE INDIA PRIVATE LIMITED (NPI) 単圧 鋼管 24 操業中 2012/112億3000万ルピー投資額:15億ルピー

Bhushan Steel Ltd (BSL)(Odisha州のプロジェクト) 高炉一貫 冷延、表面処理 操業中 2012/3 OEM供給開始 技術援助とOEM供給

AUTOMOTIVE STEEL PIPE INDIA PRIVATE LIMITED 単圧 鋼管 48 操業中 2013/610億ルピー投資額:20億ルピー

JAMSHEDPUR CONTINUOUS ANNEALING & PROCESSINGCOMPANY PRIVATE LIMITED

単圧 冷延 CAPL 600 建設中 2014/1 稼働予定 87億ルピー 自動車用冷延鋼板の製造技術

JFEスチール JSW Steel Limited一貫(高炉、直接還元)

条鋼、熱延、冷延、表面処理

操業中 2010年(資本参加)自動車用高級外板と無方向性電磁鋼板の製造技術

神戸製鋼 SAIL-Kobe Iron India Private Limited 直接還元のみ 建設中 2015年稼働予定 工場建設・操業技術

日新製鋼 ANS STEEl TUBES LIMITED 単圧 鋼管 30 操業中 2007/8(設立) 投資額:約12億円

丸一鋼管 MARUICHI KUMA STEEL TUBE PRIVATE LIMITED 単圧 鋼管 240 操業中 2009/12(資本参加)

山陽特殊製鋼 Mahindra Sanyo Special Steel Pvt.Ltd. 特殊鋼電炉一貫 特殊鋼製品 計画中 2012/9(合弁契約) 1億ルピー 電炉からの特殊鋼棒鋼製造技術

三井物産 Indian Steel Corp (ISC) 単圧 冷延、表面処理 操業中 2005/11(資本参加)

JFEスチール

タ イ

新日鉄住金

丸一鋼管

共英製鋼

神戸製鋼

新日鉄住金

インドネシア

JFEスチール

インド

新日鉄住金

JFEスチール

新日鉄住金

新日鉄住金

JFEスチールマレーシア

ベトナム

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71

表 2-4-3 対象国への進出企業(日本以外、企業別)

国名 企業名 対象国 企業名 分類 製品生産能力

(1000t/年)状況 操業開始年等 資本金・投資額 技術協力の内容

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

POSCO-Thainox Public Company Ltd. 単圧 ステンレス冷延 300 操業中 2007年(資本参加) 3192億1200万ウォン

新CGL工場 単圧 表面処理 400 計画中 2015/10-12稼働予定

Krakatau POSCO 高炉一貫 スラブ、厚板、熱延 1期 3000、2期 3000 建設中 2013/12 一部稼働開始9427億1900万ウォン投資額:60億ドル

人材育成

新CGL工場 単圧 表面処理 400 計画中

POSVINA Co.,Ltd 単圧 表面処理 40 操業中 1994年

VSC-POSCO Steel Corp (VPS) 単圧 条鋼 250 操業中 1995年(設立) 5612万ドル

POSCO-Vietnam Co.,Ltd 単圧 冷延 冷延 1200 操業中 2009/10 330億2700万ウォン

POSCO Vietnam Stainless Steel (POSCO VST) 単圧 ステンレス冷延 235 操業中 2009/10(買収) 528億2400万ウォン

POSCO SS-Vina 電炉一貫 条鋼 1000 建設中 2014/7 予定 1527億6100万ウォン

POSCO-Vinashin 製鋼一貫計画中(頓挫か)

マレーシア POSCO-Malaysia 単圧 表面処理 EG 180 操業中 2008/1(買収) 215億9700万ウォン

Posco Electrical Steel India Private Limited (POSCO-ESI) 単圧 電磁鋼 300 操業中 2013/12384億8300万ウォン投資額:1億4000万ドル

Posco Maharashtra Steel 単圧 冷延、表面処理 冷延 1800、CG 450 CGL操業中 2012/51881億9100万ウォン投資額:5億4700万ウォン

POSCO-India (Odisha州のプロジェクト) 高炉一貫 厚板、熱延 12000 計画中 2018年初頭稼働予定 投資額:120億ドル

Uttam Galvaとの合弁 製銑一貫 3000 計画中 投資額:30億ドル

Steel Authority of India Ltd(SAIL)との合弁 製銑一貫 電磁鋼(予定) 計画中

現代ハイスコ インド Automotive Steel Pipe India Private Limited 単圧 鋼管 48 操業中 2013/710億ルピー投資額:20億ルピー

東部製鉄 タ イ Thai Dongbu Steel 単圧 表面処理 カラー 80 操業中 2013/6 100万ドル

Vietnam Steel Pipe Co.,Ltd. (VINAPIPE) 単圧 鋼管 30 操業中 1994/10

SeAH Steel Vina Corp (SSVC) 単圧 鋼管 150 操業中 1998年 1174万7470ドル

タ イ Baoli Steel Tube(Thailand) Co.,Ltd. 単圧 鋼管 200 操業中 2013/2一部試験稼働

マレーシア Amsteel Mills 電炉一貫 条鋼 2000 買収協議中

武漢鋼鉄集団鄂城鋼鉄 インドネシア Gunung Garudaとの合弁 単圧 条鋼 1期 500、2期 500 計画中 2013~14年稼働計画

武漢鋼鉄集団昆明鋼鉄 ベトナム Sino-Vietnam Mining and Metallurgical 高炉一貫 条鋼 500 建設中 2013年予定 投資額:1.52億ドル

首鋼集団 マレーシア Eastern Steel 高炉-製鋼 スラブ 1期 700、2期 800 建設中 2014/ⅠQ投資額:1期 5億8000万ドル

2期 3億3800万ドル済南鋼鉄 マレーシア Ji Kang Dimensi 単圧 厚板 700 操業中 1996/9

WSP タ イ WSP Pipe Co.,Ltd. (Thailand) 単圧 鋼管 200 操業中 2010/12

CHINA STEEL SUMIKIN VIETNAM JOINT STOCK COMPANY (CSVC)

単圧冷延、表面処理、電磁鋼

1200(CG 300、電磁200)

操業中 2013/11営業運転開始5億7400万ドル投資額:11億5000万ドル

Formosa Ha Tinh steel mill 高炉一貫 ビレット、熱延、線材1期 ビレット 7500、2期7500

建設中 2015/5 予定35億ドル投資額:99億ドル

マレーシア CSC Steel Holdings 単圧 冷延、表面処理580(CG 240、カラー120)

操業中 2000/12

インド China Steel Corporation India 単圧 電磁鋼 200 操業中 2013/10 投資額:6658万ドル

台塑集団(Formosa) ベトナム Formosa Ha Tinh steel mill 高炉一貫 ビレット、熱延、線材1期 ビレット 7500、2期7500

建設中 2015/5 予定35億ドル投資額:99億ドル

義聯集団(E-United) ベトナム Guang Lian Steel Vietnam 高炉一貫 熱延 5000 計画中 投資額:45億ドル

マレーシア Perstima ベトナム Perstima Vietnam 単圧 表面処理 100 操業中 2003年(設立) 投資額:約2380万ドル

タ イ Tata Steel Thailand  ※傘下の3社含む 電炉一貫 条鋼 1880 操業中 2006年(買収)

ベトナム Natsteelvina 単圧 条鋼 160 操業中 2004年(買収) 50億ドル

SAIL インドネシア 新製鉄所 製鉄所 3000 計画中

ESSAR インドネシア Essar Indonesia 単圧 冷延、表面処理冷延 400(700に増強中)、CG 150

操業中 1997年

MASPION STAINLESS STEEL 単圧 ステンレス冷延 150 操業中 2004/7(買収)

Antam Jindal Stainless Indonesia 製鋼のみ ステンレス製鋼 250 操業中 2009年 投資額:7億ドル

Global Steel Holding フィリピン Global Steel Philippines Inc. 単圧厚板、熱延、冷延、表面処理

2000 休止中? 2004/9(買収)

スペイン Acerinox マレーシア Bahru Stainless Sdn.Bhd. 電炉一貫 ステンレス冷延製鋼 1000、冷延 600(現在:冷延 400)

操業中 2011/12 投資額:15億ドル

Uttam Galva Steels Ltd(UGSL) 単圧 冷延、表面処理冷延 1800、CG 750、カラー 90)

操業中 2009年(資本参加)

新製鉄所 2件 高炉一貫 熱延 12000+6000 計画中 120億ドル+65億ドル

ブラジル Gerdau インド Kalyani Gerdau Steels Ltd 高炉一貫 条鋼 840 操業中 2013/2

タ イ NS BlueScope Steel Thailand Ltd. 単圧 表面処理冷延 400、CG 375、カラー 90

操業中 1995年(設立)

インドネシア PT NS Bluescope Steel Indonesia 単圧 表面処理 CG 265、カラー 160 操業中 1995/10(設立)

ベトナム NS BlueScope Steel Vietnam Limited 単圧 表面処理 CG 125、カラー 50 操業中 2005/11

マレーシア NS Bluescope Steel Malaysia Sdn Bhd 単圧 表面処理 250 操業中

インド Tata BlueScope Steel 単圧 表面処理 CG 250、カラー 150 操業中 2012/3 投資額:1億9400万ドル

韓 国

ベトナム

インドネシア

インドArcelorMittal

Tata Steel

Jindal Stainless

中国鋼鉄

オーストラリア BlueScope

インド

中 国

台 湾

ルクセンブルク

進出先企業鉄鋼供給国企業

宝鋼集団

SeAH Steel

ベトナム

インド

ベトナム

タ イ

インドネシア

POSCO

Page 63: P.54 P - 経済産業省のWEBサイト(METI/経済産業省)¹³成25年度アジア産業基盤強化等事業 (アジア地域における鉄鋼産業基盤戦略調査)

72

表 2-4-4 対象国への進出企業(日本、企業別)

対象国 企業名 分類 製品生産能力

(1000t/年)状況 操業開始年等 資本金・投資額 技術協力の内容

Thai Steel Pipe Industry Co.,Ltd. (TSP) 単圧 鋼管 84 操業中 1965/1 3億6580万バーツ

Siam Tinplate Co.,Ltd. (STP) 単圧 表面処理 ブリキTFS 270 操業中 1992/2 8億バーツ

Siam Nippon Steel Pipe Co.,Ltd. (SNP) 単圧 鋼管 71 操業中 1996/1 7億8300万バーツ

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

NS BlueScope Steel Thailand Ltd. 単圧 表面処理冷延 300、CG 375、カラー 90

操業中 2013/3(資本参加)

NIPPON STEEL & SUMIKIN GALVANIZING (THAILAND) CO.,LTD (NSGT) 単圧 表面処理 CG 360 操業中 2013/108800万ドル投資額:3億ドル

Canadoil Group Ltd.の新厚板ミル建設 単圧 厚板 1200 建設中 2013年 投資額:6億ドル 厚板の技術支援

PT. Indonesia Nippon Steel Pipe (INP) 単圧 鋼管 42 操業中 2007/1 1160万ドル

PT. Pelat Timah Nusantara (Latinusa) 単圧 表面処理 ブリキ 160 操業中 2009/11(資本参加) 2億5230万ルピア

PT NS Bluescope Steel Indonesia 単圧 表面処理 CG 265、カラー 160 操業中 2013/3(資本参加)

PT.Krakatau Nippon Steel Sumikin 単圧 自動車用鋼板 検討中 検討中

Vietnam Steel Products, Ltd. (VSP) 単圧 鋼管 48 操業中 1997/11 728億9800万ドン

POSCO-Vietnam Co.,Ltd 単圧 冷延 1200 操業中 2009/1(資本参加) 330億2700万ウォン

Nippon Steel & Sumikin Pipe Vietnam Co.,Lted. (NPV) 単圧 鋼管 60 操業中 2011/5 1500万ドル

Fujiton Color Coating Steel Joint Stock Company 単圧 表面処理 カラー 60 操業中 2012/6 870万ドル

NS BlueScope Steel Vietnam Limited 単圧 表面処理 CG 120、カラー 50 操業中 2013/6(資本参加)

CHINA STEEL SUMIKIN VIETNAM JOINT STOCK COMPANY (CSVC) 単圧冷延、表面処理、電磁鋼

1200(CG 300、電磁 20 操業中 2013/11営業運転開始5億7400万ドル投資額:11億5000万ドル

Nippon EGalv Steel Sdn. Bhd. 単圧 表面処理 EG 150 操業中 2009/2 3300万リンギット

Yung Kong Galvanising Inds (YKGI) 単圧 冷延、表面処理冷延 250、酸洗 300、CG 150、カラー 90

操業中 2010年(資本参加) 3億円強出資

NS Bluescope Steel Malaysia Sdn Bhd 単圧 表面処理 160 操業中 2013/6(資本参加)

SMI Amtek Crankshaft Private Limited 単圧 交通産機品 220万本/年 操業中 2010/4 15億4000万ルピー

NIPPON STEEL PIPE INDIA PRIVATE LIMITED (NPI) 単圧 鋼管 24 操業中 2012/112億3000万ルピー投資額:15億ルピー

Bhushan Steel Ltd (BSL)(Odisha州のプロジェクト) 高炉一貫 冷延、表面処理 操業中 2012/3 OEM供給開始 技術援助とOEM供給

AUTOMOTIVE STEEL PIPE INDIA PRIVATE LIMITED 単圧 鋼管 48 操業中 2013/710億ルピー投資額:20億ルピー

JAMSHEDPUR CONTINUOUS ANNEALING & PROCESSINGCOMPANY PRIVATE LIMITED

単圧 冷延 CAPL 600 建設中 2014/1 稼働予定 87億ルピー 自動車用冷延鋼板の製造技術

Thai Tinplate Manufacturing Co.,Ltd. (TTP) 単圧 表面処理 ブリキ 552 操業中 1958年(設立)

Thai Coated Steel Sheet Co.,Ltd. (TCS) 単圧 表面処理 操業中 1994/4 22億バーツ

Thai Cold Rolled Steel Sheet Public Co.,Ltd. (TCR) 単圧 冷延 操業中 1997/6 58億8665万バーツ 自動車向け冷延コイル技術

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

JFE Steel Galvanizing (Thailand) Ltd. (JSG) 単圧 表面処理 CG 400 操業中 2013/4 投資額:約3億ドル

P.T. SERMANI INDONESIA 単圧 表面処理 CG 24 操業中 1969年(設立)

JFE Steel Galvanizing Indonesia 単圧 表面処理 CG 400 建設中 2016/3稼働予定 投資額:3億ドル

Maruichi Sun Steel Joint Stock Company (SUNSCO) 単圧 冷延、表面処理、鋼管 操業中 2010/2(資本参加)

J-Spiral Steel Pipe Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2010/11(買収) 買収額:180億ウォン

Perusahaan Sadur Timah Malaysia Bhd. (PERSTIMA) 単圧 表面処理 操業中 2002/12(資本参加)

Mycron Steel Berhad 単圧 冷延 操業中 2010/2(資本参加) 自動車用冷延鋼板技術

フィリピン Philippine Sinter Corporation (PSC) 焼結 操業中 1977年

インド JSW Steel Limited一貫(高炉、直接還元)

条鋼、熱延、冷延、表面処理

操業中 2010年(資本参加)自動車用高級外板と無方向性電磁鋼板の製造技術

Kobe CH Wire (Thailand) Co.,Ltd. 単圧 条鋼 操業中 1998/2

The Siam United Steel (1995) Co.,Ltd. (SUS) 単圧 冷延 1000 操業中 1998/11 90億バーツ

Mahajak Kyodo Co.,Ltd. 単圧 条鋼 操業中 2002/2(資本参加)

インド SAIL-Kobe Iron India Private Limited 直接還元のみ 建設中 2015年稼働予定 工場建設・操業技術

マレーシア Bahru Stainless Sdn.Bhd. 電炉一貫 ステンレス冷延製鋼 1000、冷延 600(現在:冷延 400)

操業中 2011/12 投資額:15億ドル

インド ANS STEEl TUBES LIMITED 単圧 鋼管 30 操業中 2007/8(設立) 投資額:約12億円

Vina Kyoei Steel Ltd. 電炉一貫 条鋼 1000 操業中 1994/1(設立) 2000万ドル ネジ節鉄筋技術の移譲等

Kyoei Steel Vietnam Company Limired 電炉一貫 条鋼 800 操業中 2012/3 3240万ドル

大阪製鉄 インドネシア PT Krakatau Osaka Steel 単圧 条鋼 検討中

大和工業 タ イ Siam Yamato Steel Co.,Ltd. 電炉一貫 条鋼 操業中 1992/4(設立)

インドネシア PT. Indonesia Steel Tube Works 単圧 鋼管 操業中 1972年

Maruichi Sun Steel Joint Stock Company (SUNSCO) 単圧 冷延、表面処理、鋼管 操業中 2006/11(資本参加)

Maruichi Sun Steel(Hanoi)Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2008/11(設立)

J-Spiral Steel Pipe Co.,Ltd. 単圧 鋼管 操業中 2010/11(資本参加)

インド MARUICHI KUMA STEEL TUBE PRIVATE LIMITED 単圧 鋼管 240 操業中 2009/12(資本参加)

山陽特殊製鋼 インド Mahindra Sanyo Special Steel Pvt.Ltd. 特殊鋼電炉一貫 特殊鋼製品 計画中 2012/9(合弁契約) 1億ルピー 電炉からの特殊鋼棒鋼製造技術

住友商事 ベトナム Southen Steel Sheet Co., Ltd. 単圧 表面処理 CG 100、カラー 70 操業中 1995年

三井物産 インド Indian Steel Corp (ISC) 単圧 冷延、表面処理 操業中 2005/11(資本参加)

JFEスチール

ベトナム

鉄鋼供給国企業名

新日鉄住金

共英製鋼

タ イ

タ イ

丸一鋼管

ベトナム

インドネシア

進出先企業

インドネシア

神戸製鋼

日新製鋼

タ イ

ベトナム

マレーシア

ベトナム

マレーシア

インド

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73

2.4.2 サプライ・チェーン

(1)鋼材物流拠点の数・分布

2013 年 9 月現在(2013 年以降の計画含む)で、調査対象国において合弁、出資、買収等で鉄

鋼供給国が関係する主なコイルセンター、鋼材供給センターの数は、タイ、インドで 25 拠点を超

え、次いで、インドネシア、ベトナム、マレーシアで 12~14 拠点、フィリピンでは 5 拠点とな

っている(図 2-4-1(a))。これを進出国別にみると、日本が も多く(75 拠点、77%)、次いで韓

国(18 拠点、18%)であり、ロシア、中国、シンガポールが各 1 拠点である。

2009 年以降で増加した拠点数(図 2-4-1(c))は、2008 年以前の拠点数(図 2-4-1(b))に比べ

て、インドで 4.2 倍、次いでタイが 2.1 倍、インドネシアが 1.8 倍、ベトナム、マレーシアが 40-60%

増えた。一方フィリピンはゼロであった。

0

5

10

15

20

25

30

35

タイ

イン

ドネシ

ベトナ

マレ

ーシ

フィリ

ピン

イン

鋼材

物流

拠点

インドベトナムシンガポール中国ロシア韓国日本

2013/9現在

(a) 2013 年 9 月現在

0

5

10

15

20

25

30

35

タイ

イン

ドネ

シア

ベトナ

マレ

ーシ

フィリ

ピン

イン

鋼材

物流

拠点

インドベトナムシンガポール中国ロシア韓国日本

2008年以前

0

5

10

15

20

25

30

35

タイ

イン

ドネシ

ベトナ

マレ

ーシ

フィリ

ピン

イン

鋼材

物流

拠点

インドベトナムシンガポール中国ロシア韓国日本

2009年以降(-2013/9)

(b) 2008 年以前の拠点数 (c) 2009 年以降の増加分

図 2-4-1 調査対象国において鉄鋼供給国が関係する(合弁、出資、買収等)

主なコイル・鋼材供給拠点数(2013 年以降計画含む)

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74

図 2-4-2 に、国内の州/県/地域単位でのセンターの所在地と拠点数を示す。また、表 2-5-5~

表 2-5-7 に対象国別のコイル・鋼材供給センターの一覧を示す。

これから、拠点は、インドでは全土に、ベトナムでは南北に分散傾向し、またその他の国では、

一箇所に集中傾向であることが伺える。

ベトナム

タイ

フィリピン

インドネシア

インド

Andhra Pradesh

Tamil Nadu

Maharashtra

Gujarat

RajasthanUttar Pradesh

Haryana New Delhi

ロシア

インド

シンガポール

ベトナム

韓国

日本

Banten

Ayudhaya ,Pathum Thani ,

Bangkok,Samut Prakarn ,

Prachin Buri

Chonburi , Rayong

ManilaCavite

Selangor

Johor

Penang

Bac Ninh,Hai Phong

Binh Duong,Dong Nai

West Java

マレーシア

日本

日本以外

(凡例)

10 1

0

10

2

0

3

0

721

3

13

1

12

43

12

3

4

1

3

1

43

11

2

9

2

1 1

(数字は拠点数)

1ベトナム

タイ

フィリピン

インドネシア

インド

Andhra Pradesh

Tamil Nadu

Maharashtra

Gujarat

RajasthanUttar Pradesh

Haryana New Delhi

ロシア

インド

シンガポール

ベトナム

韓国

日本

ロシア

インド

シンガポール

ベトナム

韓国

日本

Banten

Ayudhaya ,Pathum Thani ,

Bangkok,Samut Prakarn ,

Prachin Buri

Chonburi , Rayong

ManilaCavite

Selangor

Johor

Penang

Bac Ninh,Hai Phong

Binh Duong,Dong Nai

West Java

マレーシア

日本

日本以外

(凡例)

10

10 1

01

0

10

10

2

0

2

0

3

0

3

0

721

3

1

3

13

1

3

1

12

12

43

43

12

3

4

1

3

1

43

43

11

2

9

2

1 11 1

(数字は拠点数)

1

図 2-4-2 調査対象国で鉄鋼供給国が関係する主なコイル・鋼材供給センターの所在地分布

備考:中国の設立したインド1拠点含め、所在地不明の拠点は、図中に記載せず。

:対象国を含まない共同出資する物流拠点企業の国籍は、出資比率の大きい企業の国籍とし

た。また、折半で日本との共同出資の場合、相手企業の国籍として、整理した。

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75

表 2-4-5 東南アジア・インドの鋼材物流拠点一覧(日本以外の進出)

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表 2-4-6 東南アジア・インドの鋼材物流拠点一覧(日本からの進出)

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表 2-4-7 東南アジア・インドの鋼材物流拠点一覧(日本からの進出)

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78

(2)2009 年以降の鋼材物流拠点の動向

調査対象国で鉄鋼供給国が合弁、出資、買収等で関係(計画含む)する拠点の累積推移を見

ると、インド、タイ、インドネシアで多い(図 2-4-3(a))。進出国別では、日本除けば、韓国が目

立つ(図 2-4-3(b))。

なお、2008 年以前については詳細情報不足のため、2009 年を基準に拠点数を累積した。

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

インド

フィリピン

マレーシア

ベトナム

インドネシア

タイ

以降

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

インドベトナムロシアシンガポール中国韓国 日本

以降

(a) 調査対象国別 (b) 進出国別

図 2-4-3 調査対象国において鉄鋼供給国が関係する主なコイル・鋼材供給拠点数

の累積推移(2009 年を基準に拠点数を累積)

【備考:横軸年は、実績・計画含む設立/稼動年を示す。不明な場合、情報入手年とした。

:累積数が (a)より(b)で多い理由は、国籍の異なる企業が共同出資した例があるため。】

(3)取扱う鋼種

2012 年以降では、自動車用鋼板等の表面処理鋼板、電磁鋼・ステンレス鋼等の特殊鋼、および

条鋼・建材の伸びが目立つ(図 2-4-4(c))。これらの鋼種の占める割合は、タイ、インドネシア、

マレーシア、インドにおいて高く、8 割を超える(図 2-4-5(c))。

韓国企業は、表面処理鋼板と特殊鋼板が主で、日本企業はほとんどの鋼種を取り扱っている。

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79

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

以降

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

以降

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

以降

図 2-4-4 鉄鋼供給国が関係するコイル・鋼材供給センターの取扱う品種・鋼種・用途の変化

【備考:横軸年は、実績・計画含む設立/稼動年を示す。不明な場合、情報入手年とした。

:累積数が図 18 と異なる理由は、鋼種情報なしの場合カウントしない、あるいは取り扱う

鋼種が多い場合や国籍の異なる企業が共同出資している場合複数カウントしているた

め。】

(a) 韓国企業

(b) 日本企業

(c)供給国全体

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80

0

5

10

15

20

25

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

2009年1月~2013年9月合計

0

5

10

15

20

25

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

2009年1月~2013年9月合計

0

5

10

15

20

25

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

その他(厚板・鋼管等)

条鋼・建材等

その他特殊鋼材

特殊鋼板(電磁鋼・ステンレス等)

その他薄板

表面処理鋼板(自動車・家電)

2009年1月~2013年9月合計

図 2-4-5 鉄鋼供給国が関係するコイル・鋼材供給センターの取扱う品種・鋼種

(調査対象国別)

【備考:横軸年は、実績・計画含む設立/稼動年を示す。不明な場合、情報入手年とした。

:前出図と異なる理由は、鋼種情報なしの場合カウントしない、あるいは取り扱う鋼種が

多い場合や国籍の異なる企業が共同出資している場合複数カウントしているため。】

(a) 韓国企業

(b) 日本企業

(c)供給国全体

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81

(4)経営の形態

図 2-4-6(c)に示すように、2013 年 9 月時点(2013 年以降予定含む)で、合弁、資本提携/出

資、業務提携による経営が約 6 割を占め、現地の設備増強(生産増強/機能強化)および新規

市場開拓・進出がそれぞれ約 2 割、買収・子会社化が 3%となっている。

2011 年と 2012 年の比較では、合弁、資本提携/出資、業務提携による経営は、 約 2 倍に増

加している。

日本以外の海外からの進出企業で も多い韓国 POSCO は、自社直営が主であるとされる。1

1 辺成祐・李昌玟:東京大学ものづくり経営研究センター, MMRC DISCUSSION PAPER SERIES,

No.432, “Virtual or Vertical? Achieving Integrated Global Supply Chains: Comparison and Analysis of

Virtual Integration and Vertical Integration in Japanese and Korean Steel Industry”, March 2013

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82

0

5

10

15

20

25

30

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

新規市場開拓/進出

生産増強/機能強化

買収/子会社化

業務提携

資本提携/出資

合弁

2009年1月~2013年9月合計

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

新規市場開拓・進出

生産増強・機能強化

買収・子会社化

業務提携

資本提携・出資

合弁

以降

0

5

10

15

20

25

30

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

新規市場開拓/進出

生産増強/機能強化

買収/子会社化

業務提携

資本提携/出資

合弁

2009年1月~2013年9月合計

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

新規市場開拓・進出

生産増強・機能強化

買収・子会社化

業務提携

資本提携・出資

合弁

以降

0

5

10

15

20

25

30

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

拠点

新規市場開拓/進出

生産増強/機能強化

買収/子会社化

業務提携

資本提携/出資

合弁

2009年1月~2013年9月合計

0

10

20

30

40

50

60

70

2009 2010 2011 2012 2013

累積

拠点

新規市場開拓・進出

生産増強・機能強化

買収・子会社化

業務提携

資本提携・出資

合弁

以降

(1) 調査対象国別 (2) 経営形態別トレンド

図 2-4-6 調査対象国に進出したコイル・鋼材供給センターの経営形態

【備考: 出資情報記載ない場合、「新市場開拓・進出」、あるいは「生産増強・機能強化」に分類

した。

:累積数が前出図と異なる理由は、経営形態の情報なしの場合カウントしない、あるいは国

籍の異なる企業が共同出資している場合複数カウントしているため。】

(a) 韓国企業

(b) 日本企業

(c)供給国全体

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83

2.4.3 企業競争力

(1)大手ミルの財務内容要約・比較(2012 年度末)

表 2-4-8 に、東アジアの大手ミル5社の 2012 年度末の財務内容を要約・比較した。

表 2-4-8 東アジア大手ミル5社の財務要約(各社連結ベース)(2012 年度末)

(単位:100万米ドル)

台湾

POSCO 現代製鉄 宝山鋼鉄 武漢鋼鉄 中国鋼鉄 ArcelorMittal 新日鉄住金 JFE-H

P/L項目

 売上 59,382 13,207 30,375 14,553 12,370 84,213 46,602 33,856

 営業利益 3,197 814 761 191 277 3,721 213 423

 税引後純利益 2,299 744 1,651 33 200 -3,352 -1,322 420

B/S項目

 手元資金(*1) 6,174 907 1,419 256 1,145 4,402 1,034 686

 総資産(期末) 74,004 21,428 34,064 15,689 21,317 113,998 75,260 43,604

 有利子負債(期末) 23,313 9,653 7,932 5,639 8,890 26,319 26,962 16,947

 自己資本(期末) 36,835 9,178 17,701 5,659 9,590 47,016 25,415 16,546

C/F項目

 営業キャッシュフロー 6,834 2,024 3,528 613 2,172 5,340 3,326 3,047

収益性指標

 営業利益率(*2) 5.4% 6.2% 2.5% 1.3% 2.2% 4.4% 0.5% 1.3%

 ROE (*3) 6.2% 8.1% 9.3% 0.6% 2.1% -7.1% -5.2% 2.5%

安全性指標

 D/Eレシオ(*4) 63% 105% 45% 100% 93% 56% 106% 102%

 自己資本比率(*5) 50% 43% 52% 36% 45% 41% 34% 38%

 債務償還年数 (*6) 3.4 4.8 2.2 9.2 4.1 4.9 8.1 5.6

 DEBIT/EBITDA (*7) 4.0 5.2 2.6 5.0 6.9 3.2 6.2 5.8

Moody's 最新格付け(年/月) Baa2 (13/11) Baa3(13/7) A3(13/11) n.a. n.a. Ba1(12/11) A3 (13/11) Baa1(13/7)

出所:各社公表財務諸表(連結、国際会計基準ベース)、投資家向け資料を基に作成(ドル換算レートは年度末)

(*1) 期末現預金、短期投資

(*2) 営業利益/売上

(*3) 税引後純利益/自己資本(期末)

(*4) 有利子負債/自己資本

(*5) 自己資本(期末)/総資産(期末)

(*6) 有利子負債/営業キャッシュフロー

(*7) 有利子負債/利払い前・税引き前・償却前利益

韓国 中国 参考主要財務項目・指標

以下に5社各社の企業競争力にかかわる 新動向をまとめた。公表情報が多い企業については

より詳しい記述となっている。

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(2)POSCO の 新動向

表 2-4-9 POSCO の 2013 年財務内容

(単位:100万米ドル)

主要財務項目・指標 新日鉄住金

2012年通年 2013年1Q2013年2Q(4-6月期)

2013年3Q2013年通年速報値(*1)

2013年通年

P/L項目

 売上 59,382 13,812 14,780 14,351 58,543 50,862

 営業利益 3,197 679 855 599 2,838 2,941

 税引後純利益(*1) 2,299 263 237 537 1,283 2,091

B/S項目

 手元資金 6,174 5,898 5,988 3,837 6,800 n.a.

 総資産(期末) 74,004 77,912 79,289 78,942 79,998 67,382

 有利子負債(期末) 23,313 25,120 26,102 24,289 24,862 n.a.

 自己資本(期末) 36,835 37,479 38,726 39,633 39,827 24,811

収益性指標

 営業利益率(*2) 5.4% 4.9% 5.8% 4.2% 4.8% 5.8%

 ROE (*3) 6.2% 4.1% 4.9% 4.4% 3.2% 8.4%

安全性指標

 D/Eレシオ(*4) 63% 67% 67% 61% 62%

 自己資本比率(*4) 50% 48% 49% 50% 50%

 DEBIT/EBITDA (*5) 4.0 4.4 4.7 4.7

Moody's 格付け(年/月) Baa1 Baa2 (13/11) A3 (13/11)

(*1) 2013年通年値は速報値のため多少正確性を欠く。例えばPOSCOの純利益は少数株主持分利益を含まず。

(*2) 通年もしくは各四半期ごとの営業利益/売上

(*3) 税引後純利益/自己資本(期末)。分子は、各四半期については過去1年間実績合計(LTM)ベース

(*4) 分子・分母ともに年度末もしくは各四半期末。

(*5) 有利子負債/利払い前・税引き前・償却前利益。分子は、各四半期は過去1年間実績合計(LTM)ベース

POSCO

出所:2012年、2013年各四半期は公表連結財務諸表を、2013年通年は会社発表資料を、基に作成。(ドル換算レートは2012年は年末、2013年各四半期と通年は2013年末レートで一律換算)

POSCO は近年、営業利益率悪化、負債増加傾向にあったが、過去の高収益によるストックに

より、2012 年末時点ではまだ、手元資金量、各種安全性指標(D/E レシオ、自己資本比率など)

は他の大手ミルに比べ余力があった(表 2-4-8)。また、2013 年で国内外の大型設備投資(インド

以外)が一段落することで、年間 1,000~2,000 百万ドルの資本支出減となる。

しかし、2013 年に入っても収益悪化が続いており、2013 年通年で、前年より売上げ、営業利

益、純利益、営業利益率、ROE いずれも悪化した(表 2-4-9)。2013 年の収益悪化の主因は、韓

国内の需要軟調と中国の過剰供給による鉄鋼価格下落とされている(POSCO 本体の普通鋼平均

販売価格は 2012 年比 12%下落)。POSCO を取り巻く収益環境は、以下のように、非常に厳しい

要素が多いため、今後については、さらなる収益悪化の可能性がある。

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85

①収益性:営業利益率

②収益性:ROE

③安全性:D/Eレシオ

④安全性:DEBIT/EBITDA

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

2009年 2010 2011 2012 2013通年

RO

E

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

2009年 2010 2011 2012 2013通年

D/Eレ

シオ

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

2009年 2010 2011 2012 2013通年

営業

利益

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

2009年 2010 2011 2012 2013 3Q

DEB

IT/EB

ITD

A

図 2-4-7 POSCO の財務指標推移

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86

POSCO を取り巻く経営環境

<国内市場>

■現代製鉄・現代ハイスコとの競合激化

◎現代製鉄・現代ハイスコの生産量増により、熱延、冷延鋼板市場での POSCO の独占的価格支

配力が低下。

・従来は POSCO が鋼材価格を「通達」で値上げできたが、現代を意識しながら顧客と「交渉」

して値決めする状態になっていると報じられている。

・現代製鉄:2010 年に第 1、第 2 高炉(各 400 万t)、2013 年 8 月に第 3 高炉稼働(400 万t)。

・現代ハイスコ:2013 年に唐津・第2冷延ミル(150 万t)稼働により、冷延生産能力が 450 万

tから 600 万tに増。

・現代自動車と現代ハイスコが 2013 年 12 月に統合。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2009年 2010 2011 2012

千t

韓国の見掛消費量

現代製鉄の販売量

POSCOの国内販売量

図 2-4-8 熱延鋼板の韓国市場(ステンレス除く)

・図 2-4-8 に示すように、2009 年から 2012 年にかけて、韓国の熱延鋼板見掛消費量が 32%増の

中、現代製鉄の販売量は約 3 倍、POSCO は横這いから低下気味となっている。(POSCO は 2012

年より熱延鋼板の国内販売量を明らかにしていない)。加えて現代製鉄は 2013 年に熱延生産能力

を 230 万t増やしている。

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87

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2009年 2010 2011 2012

千t

韓国の見掛消費量

現代ハイスコの販売量

POSCOの国内販売量

図 2-4-9 冷延鋼板の韓国市場(ステンレス除く)

・図 2-4-9 に示すように、2009 年から 2012 年にかけて、韓国の冷延鋼板見掛消費量が 31%増の

中、現代ハイスコの冷延販売量は約 34%増、POSCO は 2009 年から 2011 年にかけて 19%増に

とどまっている(POSCO は 2012 年より冷延鋼板の国内販売量を明らかにしていない)。現代ハ

イスコはさらに 2013 年、唐津・第2冷延ミルを完成させ、冷延生産能力を 150 万t増やした。

・報道情報によると、現代自動車は現在、自動車用鋼板の約 40%を現代ハイスコから入れている

が、唐津・第2冷延ミルがフル操業に近づけば、この比率は 60%まで上昇するという(SBB

2013/10/18 報道)

図 2-4-10 POSCO の販売品種構成

■POSCO の国内生産能力増

◎光陽第4熱延ミル(330 万トン、2014 年稼働予定)が収益増にかなり寄与すると考えられてい

たが、 新情報によると、同ミルは 2014 年後半稼働予定で、主に海外の冷延、CGL 工場(*)

に供給を行い、利益貢献は限られるという(2014/1/28、2013 年通年業績報告会での CEO 発言)。

(*)インドの冷延、中国の CGL、メキシコの CGL

厚板12%

熱延製品26%

冷延製品38%

線材7%

その他(半製品等)

6%ステンレス鋼8%

電磁鋼板3%

【2007年:鉄鋼売上計 32,110千t】

厚板14%

線材5%

熱延製品28%冷延製品

40%

電磁鋼板4%

ステンレス鋼9%

【2012年:鉄鋼売上計 29,983千t】

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88

■韓国内の建設市場

図 2-4-11、図 2-4-12 はそれぞれ、2012 年1月~2013 年 12 月までの韓国内の建設受注高の前

年同月比及び建設完工高の前年同月比を示す。これらのデータは韓国統計庁 HP の統計データに

基づいて算出した。

【韓国統計庁 URL】

http://kosis.kr/eng/database/database_001000.jsp?listid=H&subtitle=Construction/Housing/Land これによれば、2013 年 12 月で受注高が回復しているが、2013 年は前年に比して 9 月までは前

年同月比減の状態であった。ただし、完工高は上下はあるがほぼ横ばい。

また、韓国内で建設景気が不況との報道がある(東洋経済日報 2014.1.24 他)

韓国の建設市場(2012.1~2013.12)〈建設受注高前年同月比)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

2013

.1月

2013

.2月

2013

.3月

2013

.4月

2013

.5月

2013

.6月

2013

.7月

2013

.8月

2013

.9月

2013

.10月

2013

.11月

2013

.12月

前年

同月

図 2-4-11 韓国内の建設市場(建設受注高)

韓国の建設市場(2012.1~2013.12)(建設完工高前年同月比)

0.95

1

1.05

1.1

1.15

1.2

2013

.1月

2013

.2月

2013

.3月

2013

.4月

2013

.5月

2013

.6月

2013

.7月

2013

.8月

2013

.9月

2013

.10月

2013

.11月

2013

.12月

前年

同月

図 2-4-12 韓国内の建設市場(建設完工高)

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89

<輸出市場>

■輸出先のダンピング税(AD)賦課状況

これまで中国製に対して多かったが、 近、韓国製、POSCO 製の鉄鋼製品に対する AD が決定

もしくは調査中となっているのが目立つ。

表 2-4-10 2013 年に決定もしくは調査中の AD

提訴国 提訴品種 調査開始AD決定年月

現状AD税率

(対POSCO)AD税率

(他の韓国ミル)

タイ 亜鉛メッキ 2011年7月 2013年1月 2.51~15.40% 0~22.55%

熱延コイル 2012年 2013年8月 13.58% 13.96~58.85%

インドネシア 冷延コイル 2011年6月 2013年3月 10.90% 5.9~11.0%

マレーシア ブリキ 2013年2月 調査中

台湾 ステンレス冷延 2013年2月 2013年11月 26.53% 26.53~37.65%

オーストラリア亜鉛メッキ 2012年9月 調査中

アメリカ 方向性電磁鋼板 2013年9月 調査中

無方向性電磁鋼板 2013年9月 調査中

OCTG 2013年7月 調査中

メキシコ 冷延コイル 2013年6月 60.40%

ブラジル ステンレス冷延 2012年4月 調査中

無方向性電磁鋼板 2012年4月 調査中

厚中板 2012年5月 調査中

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90

■韓国ウォン高

◎日本円に対しては 2012 年初めから 2013 年初めにかけて約 50%高くなっており、東南アジア

や日本市場での日本製鋼材との価格競争力が大幅に劣化している。

・2013 年の鋼材輸出量実績は1%減にとどまったものの、採算は悪化し、売るほどに赤字状態と

報じられている。

図 2-4-13 韓国ウォンの対日本円レート推移(2009 年~2013 年末)

図 2-4-14 韓国ウォンの対米ドルレート推移(2009 年~2013 年末)

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91

<海外生産>

■海外生産子会社の経営難

表 2-4-11 連結対象海外子会社(2012 年 157 社)の業績 2012年損益

(100万ウォン)2012年損益

(100万米ドル)2011年損益

(100万ウォン)所在国 業種

稼働年(設立年)

Zhangjiagang Pohang Stainless Steel -79,016 -74 4,444 中国 ステンレス製造・販売 (1997年)

Qingdao Pohang Stainless Steel -17,445 -16 -3,110 中国 ステンレス製造・販売 2004年

Guangdong Pohang Coated Steel -20,980 -20 -7,849 中国 メッキ鋼板製造・販売 1997年

Dalian POSCO-Steel -9,958 -9 -8,711 中国 亜鉛メッキ・カラー鋼板の製造・販売 (1995年)

POSCO-Thainox Public Company Ltd. -5,532 -5 -22,466 タイ ステンレス冷延製造・販売 1993年

POSCO-VST -30,977 -29 -10,669 ベトナム ステンレス冷延製造・販売 2009年

POSCO-Vietnam -46,619 -44 -46,976 ベトナム 冷延鋼板製造・販売 2009年

PT Krakatau POSCO -29,063 -27 -2,835 インドネシア スラブ・厚板の製造・販売 2013年

POSCO-Malaysia 1,529 1 -4,114 マレーシア 電気メッキ鋼板の製造・販売 2006年

POSCO-India Private -768 -1 -1,034 インド 一貫製鉄所建設に向けた会社 (2005年)

POSCO Mahashtra Steel -41,512 -39 2,036 インド亜鉛メッキ、冷延鋼板等の製造・販売(自動車、家電、建設向け)

2012年

POSCO ASSAN TST STEEL Industry 1,072 1 1,724 トルコ ステンレス製造・販売2013年

(2011年)

POSCO-Mexico -12,354 -12 -43,298 メキシコ 自動車用鋼板の製造・販売 2009年

小計 (鉄鋼製品の製造・販売会社) -291,623 -272 -142,858

その他の海外子会社:計 -42,137 -39 440,052

合計 -333,760 -312 297,194 出所:連結財務諸表

◎鉄鋼製品製造子会社のほとんどが赤字となっている。

・POSCO は、韓国内での鋼材需要鈍化を予想して、海外で生産拠点を設立する戦略をとってき

た。また、海外子会社は、高くても韓国の製鉄所から母材を供給する方針をとっているため、赤

字になる可能性が高いものの、一方で、韓国の製鉄所で稼働率が上がることなどによる利益を考

えてきた。

・しかし、進出先現地で現地の他社との競合が厳しく、また想定したほど需要が伸びていない。

メキシコの場合は、韓国から輸出する母材の価格が安すぎるとして 60.40%もの AD 税が課せら

れる想定外の事態もおきた。

・POSCO の海外事業が成功していない理由は、韓国内での独占時代の感覚が抜けないまま事業

計画を組み、マーケティングや現地での競合他社の分析が不十分なためとも報道されている。

・ステンレス企業については、中国のステンレス過剰能力の影響が当面、大きく改善する見込み

がないので、赤字は継続もしくは悪化の可能性がある。

・印 POSCO Mahashtra Steel については、稼働したばかりという事情を考慮する必要はある。

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92

■インドネシア高炉合弁(PT Krakatau POSCO)の見通し

・当初計画では、第1期としてスラブを 300 万トン生産し、半分は外販、残り 150 万トンを新設

する厚板ミルへ供給し厚板を生産することになっていた。

◎ 新情報では、既にインドネシアでスラブ 150 万t、厚板 60 万tの販売先を確保した(日経

速報、2013/12/25)。

・このうち、少なくともスラブ 100 万tは Krakatau Steel への供給と推定される。

・この他に、東国製鋼(韓国)とスラブ供給契約 30 万 t を結んだとの報道情報がある。

◎Krakatau 向けスラブはこれまで同社がロシアから輸入してきたスラブの代替となるため、価

格もロシア材より大幅に高く設定することは難しいと予想されることから、利益率はそれほど高

くないと予想される。

・厚板生産能力は 150 万t、実際の生産は 110~150 万tになると推定される。販売先が確保さ

れたという 60 万t(ひも付き)を除いた 50~90 万t分は、稼働率確保のため、スポットで売り

さばくと予想される。しかし、紐が付かないスポットになると価格リスクが発生する。また、商

社経由の安売りが行われることが一時的にあるが、POSCO の場合、それが恒常化するリスクが

ある。

・見通しとしては、資本回収に 40~50 年程度かかると推定される。本プロジェクトがリーマン

ショック前に立てた計画であること、 初は、POSCO が扱いなれたオーストラリア産原料炭を

使い、安いインドネシア産の原料炭切り替えるのは、1、2年後となると予想されることから、

当面は赤字となると予想される。

・なお、2013 年 12 月 23 日の火入れ後、出銑孔まわりの鉄皮に亀裂発生のトラブルが生じた。

これにより、高炉の正常操業は1カ月は遅れると予想された。

・2014 年 1 月 22 日に、厚板を 50 トン初出荷したと報じられている。地元流通筋の PT Sapta

Sumber Lancar と PT Intisumber Bajasakti に均等に向けられた。(SBB 2014/1/30)

・火入れ後のトラブルのため、PT Krakatau POSCO の 2014 年の利益は予定より若干低下する

(2014/1/28、2013 年業績報告会での CEO 発言)。

■インド高炉一貫製鉄所の見通し

・2014 年 1 月 16 日にインドを国賓訪問した朴槿惠(パク・クネ)大統領とシン・インド首相の首

脳会談を機に、インド政府が製鉄所建設に向けてさまざまな支援を行うことで合意した。

◎大統領訪問に先立ち、1 月 8 日に、印環境省により「環境クリアランス」が再有効とされた(2007

年 7 月に有効とされたものの 2012 年 7 月にいったん失効していた)。これにより、一歩前進と報

じられている。しかし、環境クリアランスは、製鉄所、港湾、鉱山について出される必要がある

はずだが、「今回再有効とされたのは製鉄所部分のみであり、港湾部分はペンディング(Times of

India 1/10 など)」で、鉱山部分は不明である。

・環境クリアランスとは別に必要となる「森林クリアランス」については、国家環境審判所

(National Green Tribunal)が 2014 年 1 月、Odisha 州が 終的に判断すべきで、これを POSCO

に与えない限り、建設用地の森林伐採をおこなってはならない、との命令を下した。

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93

◎POSCO は、鉄鉱山権益を確保できるかを注視しており、急がずに、インド市場環境を十分に

考慮しながら進めるとしており、着工のタイミングは現時点で予想しがたいと述べている。(CEO

による投資家向け業績報告会での発言、2013/7/25 および 2014/1/28)

・地元観測筋や POSCO 幹部の見方として、稼働は早くても 2018 年との報道がある(SBB 1/13、

zeenews.india.com/1/10 など)。

※今回の環境クリアランス再有効決定の問題点

・製鉄所の環境クリアランスが港湾と切り離されたことは、プロジェクトのすべての構成要素に

対してひとつの環境クリアランスが要求されるという環境裁判所の 2012 年 3 月 30 日の命令に合

致していない。

・再有効となった環境クリアランスは、当初生産能力 400 万トンで、さらに 400 万トン追加が予

定されている一貫製鉄所(計 800 万トン)に対してだが、2007 年 7 月の環境クリアランスは

終的に1,200万トンとなる予定の400万トン工場に対するものだった。環境影響アセスメントは、

400 万トン分についてしか行われていない。新たな影響アセスメントと公聴会なしにプロジェク

トを再有効とすることは、違反行為になりうる。

(India Times 1/13)

※POSCO が既に投じた可能性のある資金

・州政府と MOU を結んだ 2005 年に 5,130 万ドルを投じたとの報道情報あり。

・クリアランスをとるために境界壁を建設との報道情報。

・第1期に必要な土地 2,700 エーカーのうち、1,700 エーカーは州政府から POSCO に既にひき

わたされたとの報道情報あり(zeenews.india.com/ 1/10 など)。これが正しいとすれば、その土

地代(推定)。

・プロジェクト反対派に村を追い出された賛成派の人々に対する生活費(報道情報)

※国連専門家パネルによる 2013 年 10 月の勧告

・2,2000 人余りの住民が強制的に立ち退きさせられ、生活の糧すら 失っているという、2013 年

7 月に国連に提出された人権団体(ニューヨーク大学ロースクール にベースのある団体)の申立

てに基づき、国連が調査し、出した勧告。

・国連のプレスリリースによれば、人権上の懸念をインド政府、韓国政府、POSCO に訴えて、

人権を尊重するよう努力を促すもの。

・法的拘束力は不明。

・公有地の森林に居住する人々の権利は、「不法居住者」にすぎないので 追い払っても問題ない

というのが州政府、POSCO の基本的な理解。彼らは代々ここに暮らしてきた人々で、その権利

が現行の法システムのなかで保護されていないのは州政府側の 怠慢にすぎず、彼らには生存権、

居住権などがあるとするのが、国連、住民側。中央政府はそのバランスを取ろうとしてきたと考

えられる。

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94

<訴訟>

◎新日鉄住金が方向性電磁鋼板の製造・販売の禁止と損害賠償の請求などを求めて訴えを起こし

ている。損害賠償請求額は約 10 億ドル。

POSCO の鉄鋼製品売上げに占める電磁鋼板の割合が 4%あることを考えると、影響は大きいと考

えられる。しかし、POSCO は引き当てをとっていない。

<非鉄鋼事業>

◎連結子会社の大宇インターナショナルによるミャンマーでの天然ガス開発による収益としては、

2014 年約 140 億ドル、2015 年以降は年間約 300 億ドル(税引き前利益)が予想されている。

(2014/1/24、POSCO の鄭 CEO の投資家向け 2013 年度業績説明会での発言)

・英米系アナリスト、格付け機関は、これを POSCO の今後の大きな収益源のひとつと位置づけ

ている。

・一方で、米国シェールガス革命で世界的にガス価格が低下したことから投資回収できるか疑問

だという報道もある(2014 年 1 月、日本版エコノミスト)。

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95

■格付け機関 Moody’s による評価

Moody’s は DEBIT/EBITDA レシオを重視しており、下図のようになっている。

2.0

2.6

3.6

4.2

4.9

4.4

4.0

3.5

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年6月末 2013年予想 2014年予想(a) 2014年予想(b)

DEB

IT/EB

ITD

A

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年11月A1 A2 A3 Baa1 Baa2

2014 年予想(a)は、負債削減努力を行わなかった場合 2014 年予想(b)は、負債を 38 億ドル削減した場合

(*)Moody’s は独自の「調整後」DEBIT/EBITDA を算定しているため、表 2-4-8、2-4-9 の

DEBIT/EBITDA とは値が若干異なる。

図 2-4-15 Moody’s 算定による POSCO の DEBIT/EBITDA レシオ(*)と格付けの推移 Moody’s による 2013 年 11 月の POSCO 格下げ理由と見通しのレポート要約

ただし、同レポートで以下のようにも述べている。

①負債水準が高くなっており、DEBIT/EBITDA レシオが悪化している。同レシオを 3.5 ま

で下げるには約38億ドルの負債削減が必要だが、2014年までに達成するのは難しいだろう。

②アジアにおける鉄鋼過剰供給とそれによる鉄鋼価格低下があと 1 年から 1 年半は続くた

め、POSCO の鉄鋼業からの収益、利益率回復は遅れるだろう。

③韓国内と海外での投資は過去5年の平均 80 億ドル/年よりは減るだろうが、2014~2015

年は依然として 50 億ドル程度の投資を続けると見られる。営業キャッシュフローは 2014~

2015 年約 60 億ドルと予想され、投資にまわり負債削減にあまりまわらないだろう。

④財務内容は以前より悪化しているが、アジアの同業他社より良い。新日鉄住金の財務指標

に基づく格付けは Baa3 で POSCO の Baa2 より1段階下である。ただし、今後、円安と日

本国内需回復で業績改善することを考慮して1段階上げ、さらに日本独自のメインバンク制

と政府のサポートを考慮して2段階上げ、実際の格付けは POSCO より2段階上の A3 とし

ている。

⑤韓国内とインドネシアでの鉄鋼生産能力増は収益向上に貢献するだろう。

⑥非鉄鋼事業、特に傘下の大宇インターナショナルによる天然ガス開発、は今後 2 年で収益

向上に大きく貢献するだろう。

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96

表 2-4-12 POSCO の財務に影響する主要事項と Mood’s の織り込み状況

影響事項

Moody’s 格付け

への織り込み状

■現代製鉄との競合激化

・現代製鉄の生産能力、2013 年に熱延 230 万 t、厚板 150 万 t

・現代自動車、現代重工グループ向け鋼板提供で競合激化

ネガティブ要素

で織り込み

韓 国 内

市場

■POSCO の韓国内生産能力増

・2014 年、Finex200 万t、熱延ミル 330 万 t 稼働予定

ポジティブ要素

で織り込み

■円安による日本ミルとの競争激化 ネガティブ要素

で織り込み

輸出

市場

■輸出先のダンピング税(AD)賦課(対 POSCO もしくは韓国

製品)

・タイ、亜鉛メッキと亜鉛・アルミニウムメッキ鋼板に 2.5%

(13 年 1 月)

・インドネシア、冷延コイルに 10.9%(13 年 3 月)(日本製も

対象)

・メキシコ、冷延コイルに 60.4%(13 年 6 月)

・タイ、熱延コイルに 13.58%(13 年 8 月)

・台湾、ステンレス冷延に 26.53%(13 年 11 月)

反映せず

■インドネシア高炉合弁(Krakatau POSCO)稼働

・第 1 期、スラブ 300 万 t 生産予定、内 150 万 t は新厚板ミル

ポジティブ要素

で織り込み

■インド高炉一貫製鉄所建設計画

・Odisa 州(当初計画 1,200 万 t)は縮小して継続

・Karnataka 州(600 万 t)は中止(13 年 7 月)

反映せず

海外

生産

■ベトナム・ステンレス工場(POSCO-VST、23 万t)の経営

問題

反映せず

訴訟 ■新日鉄住金による電磁鋼板訴訟

・方向性電磁鋼板の製造・販売の禁止と損害賠償の請求など

反映せず

非 鉄 鋼

事業

■大宇インターナショナルによるガス開発など ポジティブ要素

とみている

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97

■POSCO の負債調達先

POSCO 本体の借入先は、表 2-4-13 のように、短期は英米系銀行から、長期は韓国内銀行から

となっている。

表 2-4-13 POSCO(単独ベース)の負債調達先(2012 年度末)(*1)

借入先 (100万ドル)

短期借入金 米Bank of America 107

米JP Morgan 70

ドイツ銀行 125

DBS(旧シンガポール開発銀行) 113

英RBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド) 87

計 502

長期借入金 ウリィ銀行(韓国Woori Bank) 108

Korea National Oil 13

Korea Eximbank(Export-Import Bank of Korea) 694

仏NATIXIS (*2) 3

(内、満期1年以内) -29

計 789

社債 国内債 3,353

他社株転換社債(EB債) 3,465

第9回サムライ私募債 (*3) 582

(内、満期1年以内) -1,199

計 6,201

(*1)連結財務諸表には借入先詳細が記載されていないため、単独財務諸表より抜粋。

(*2)フランスの銀行。全額、韓国開発銀行が借入れ保証。

(*3)2006年発行。全額2013年6月満期。

出所:POSCO ”Separate Financial Statements”

報道情報によると、韓国系銀行は韓国メーカーの海外生産拠点設立の資金需要に応える体力が

乏しく、一方で欧州系銀行が欧州債務危機の影響で韓国向け融資を絞っているため、代わって邦

銀が近年、融資を拡大しているという。借入れ総額は不明だが、POSCO が支払保証を提供して

いる子会社と保証金額を表 2-4-14 にまとめた。

【参考報道情報:インドネシア一貫製鉄所建設と邦銀の関与】

ポスコによるインドネシアの巨大製鉄所建設は、韓国政府が資金を全面保証してインドネシア

政府も税制優遇で応える大事業だが、民間融資団は邦銀主導。三井住友、三菱東京 UFJ 両銀行の

各1億 7,000 万ドルを筆頭に邦銀が民間融資の半分を拠出する。(2012/7/24 日本経済新聞より)

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98

表 2-4-14 POSCO 本体が直接支払保証を行っている子会社

2009年末 2013年9月末

中国 POSCO (Guangdong) Automotive Steel 三菱東京UFJ USD 24

三井住友 USD 35

ANZ (豪) USD 10

BOA (米) USD 50

ING (蘭) USD 23

Siam Commercial Bank (タイ) USD 35

DBS(シンガポール) USD 35

Zhangjiagang Pohang Stainless Steel 三菱東京UFJ USD 30

みずほ USD 80

Credit Agicole (仏) USD 50

BX Steel Posco Cold Rolled Sheet 中国銀行 USD 1

中国銀行、他 USD 13

〃 元 (*2) 35

ベトナム POSCO-VST みずほ USD 20

ANZ (豪) USD 25

HSBC(英) USD 20

POSCO-Vietnam 韓国輸出入銀行 JPY 48 0

韓国輸出入銀行 USD 200 196

インドネシア PT.KRKATAU POSCO 三菱東京UFJ USD 119

三井住友 USD 119

みずほ USD 105

東京スター USD 21

(小計) USD 364

韓国輸出入銀行 USD 490

ANZ (豪) USD 52

BOA (米) USD 35

Credit Suisse (スイス) USD 91

HSBC(英) USD 91

Siam Commercial Bank (タイ) USD 86

インド POSCO Maharashtra Steel Pvt. 韓国輸出入銀行 USD 193

Citi (米) USD 60

DBS(シンガポール) USD 100

HSBC(英) USD 80

ING (蘭) USD 30

Standard Chartered (英) USD 40

Siam Commercial Bank (タイ) USD 33

韓国産業銀行 USD 30

POSCO Electrical Steel India Private ING (蘭)、他 USD 84

香港 POSCO Investment 三菱東京UFJ USD 42 30

三井住友 USD 30

韓国産業銀行 USD 70

BOA (米) USD 45

ING (蘭) USD 30

Siam Commercial Bank (タイ) USD 45

JP Morgan USD 50

中国銀行 元 35

HSBC(英) USD 346 50

  〃 元 63 -

  〃 MYR (*3) 28 -

トルコ POSCO ASSAN TST STEEL Industry 三井住友、他 USD 188

カザフスタン POSUK Titanium LLP 新韓銀行 USD 18

アメリカ United Spiral Pipe 新韓銀行 USD 24

メキシコ POSCO-Mexico みずほ USD 45

三井住友 USD 69

韓国産業銀行 USD 50

BOA (米) USD 40

HSBC(英) USD 40

ケイマン Zeus (Cayman) 債権者 JPY 527 257

(*1)金額単位は、USD:100万ドル、JPY:億円、MYR:1,000万リンギット、元:1,000万元とし、それ以下は切り捨てた。(*2)1元=約16.7円(*3)1MYR(マレーシア・リンギット)=約30円

出所:POSCO連結財務諸表

保証金額(単位:*1)被保証会社所在国

被保証会社 保証提供先 通貨

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99

表 2-4-15 POSCO の子会社が支払保証を行っている会社(多いので、邦銀関与分のみ)

2009年12月末

2013年9月末

大宇インターナショナル メキシコ Daewoo International Mexico 三井住友 USD - 55

ブラジル Brazil Sao Paulo Steel Processing Center 三井住友 USD - 20

POSCO JAPAN 日本 POSCO-JEPC(愛知県)(*2) みずほ等8行 JPY 21

POSCO-JKPC(福岡県)(*3) 肥後銀等3行(*3) JPY 29 11

POSCO-JOPC(大阪府)(*4) 紀陽銀等4行(*4) JPY 28 1.2

POSCO-JNPC(*5) みずほ等 JPY 33 -

POSCO-JYPC (*5) みずほ等 JPY 25 -

ゼネシス(Xenesys)(*6) あおぞら銀行 JPY - 0.7

POSCOICT(旧ポスデータ)(*7) みずほ JPY 1 -

出所:POSCO連結財務諸表

(*1)金額単位は、USD:100万ドル、JPY:億円とし、それ以下は切り捨て。(*2) 鋼材の加工・保管・販売。(*3) 鋼材の加工・保管・販売。2009年末の保証提供先は、みずほ銀行等。(*4) 鋼材の加工・保管・販売。2009年末の保証提供先は、みずほ銀行等。(*5) 両社が2011年に合併してPOSCO-JEPCとなった。(*6) 温度差発電システムの開発。本社:東京都中央区銀座、研究・開発センター・工場:伊万里(佐賀県伊万里市)。(*7) ITサービス。本社:韓国ソウル。支払い保証を行っていた2009年当時は日本にも拠点があったと推測される。

通貨

保証金額(単位:*1)

保証会社被保証会社

所在国被保証会社 保証提供先

【参考報道情報(要約):韓国輸出入銀行の関与】

・POSCO は 2011 年にインドネシアの一貫製鉄所事業あたって資金調達という大きな課題に直面

した。グローバルな金融危機とヨーロッパの財政危機によって国際金融市場が梗塞したためであ

る。このとき解決者として登場したのが韓国輸出入銀行であった。同行は、単一プロジェクトと

しては史上 大規模である 12 億ドルを支援すると同時に、日系銀行等7社の外国系金融会社のオ

ーダーメード型協力融資を斡旋して POSCO の資金問題を解決した。国策銀行である輸出入銀行

は近年、投資銀行業務を大幅に強化している。韓国内企業が国外の大型プロジェクトを推進する

際に、単に資金を支援する受動的な役割から脱皮して、金融の斡旋、自身の役割を拡大しながら

外国系の大型金融会社が独占していた投資銀行市場に挑戦状を出している。輸出入銀行のプロジ

ェクトファイナンシング方式の輸出金融支援の実績は、2009 年の3件(計8億 7,100 万ドル)か

ら 2010 年は6件(24 億 8,400 万ドル)、2011 年には8件(32 億 8,500 万ドル)(上記 POSCO

のインドネシア案件含む)に急増している。(2012/3/28 韓国・毎日経済より)

・韓国輸出入銀行は、POSCO と三星物産が関与するオーストラリアのロイヒル(Roy Hill)鉄鉱石

鉱山開発事業に貸付5億5千万ドル、対外債務保証4億5千万ドル等、計 10 億ドル(約1兆ウォ

ン)規模のプロジェクトファイナンス(PF)金融を提供すると、2013年 12月 16日に明らかにした。

このプロジェクトには、輸銀を始めとして、政策金融機関協議会の一員である貿易保険公社と

US-EXIM(米国輸出入銀行)、JBIC(日本国際協力銀行)、NEXI(日本貿易保険公社)が共同して金融

を提供するものと明らかにされた。ロイヒル鉄鉱石鉱山開発事業は、西オーストラリアのピルバ

ラ(Pilbara)地域で鉱山開発に加え、鉄道と港湾等の専用インフラを建設し、年間5千 500 万トン

の鉄鉱石を生産する総事業費 120 億ドル規模の大型資源開発事業である。POSCO は事業主とし

て持分投資と鉄鉱石の長期購買を担当し、三星物産が工事関連設計、資材調達、施工までの全過

程を受注する。(2013/12/16 韓国・聨合インフォメクスより)

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100

(3)現代製鉄の 新動向

現代製鉄が2014年2月7日に2013年業績を発表した。非連結ベースでしか発表していないが、

連結ベースの数値に近いので、2012 年値(連結ベース)と比較できるよう下表にまとめた。

表 2-4-16 現代製鉄の 2013 年財務内容(2013 年値は非連結ベース)

(単位:100万米ドル)

主要財務項目・指標

2012年通年 2013年通年2013年

(対2012年)増減

P/L項目

 売上 13,207 12,138 -8%

 営業利益 814 679 -17%

 税引後純利益 744 646 -13%

B/S項目

 手元資金 907 807 -11%

 総資産(期末) 21,428 27,405 28%

 有利子負債(期末) 9,653 12,030 25%

 自己資本(期末) 9,178 12,453 36%

収益性指標

 営業利益率 6.2% 5.6% -9%

 ROE (*1) 8.1% 5.2% -36%

安全性指標

 D/Eレシオ(*2) 105% 97% -8%

 自己資本比率(*3) 43% 45% 6%

 DEBIT/EBITDA (*4) 5.2

Moody's 格付け(年/月) Baa3(13/7) Baa3(14/1)

鋼材販売量(千t) 16,341 16,417 0.5%

鋼材輸出比率 25% 20%

(*1) 税引後純利益/自己資本(期末)

(*2) 有利子負債(期末)/自己資本(期末)

(*3) 自己資本(期末)/総資産(期末)

(*4) 有利子負債/利払い前・税引き前・償却前利益

現代製鉄

出所:2012年は公表連結財務諸表を基に、2013年は2014年2月7日発表を基に作成。(ドル換算レートは2012年、2013年、各年末)

2013 年は P/L 項目(売上、営業利益、税引後利益)、営業利益率いずれも減少した。鋼材販売

量は微増、同輸出比率は低下していることから、韓国内鋼材販売価格下落が、P/L 項目と営業利

益率減少の主因と考えられる。

2013 年第4四半期に約 28 億ドルの増資を行ったようで、2013 年度末時点の資本金額がかなり

増えている。この結果、D/E レシオ、自己資本比率は若干好転、ROE は悪化している。

Moody’s は、2013 年収益悪化は既に織り込み済みとして、格付けは変更しなかった(2014/2/10)

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101

しかし、2013 年を各四半期ごとにみると、図 2-4-16、図 2-4-17 に示すように、第4四半期に

売上額、鋼材販売量、営業利益額、営業利益率ともにかなり増えている。営業利益額は 2012 年

第4四半期に比べると 68%増だった。これは、2013 年に 9 月に完成稼働した第3高炉の影響で

あり、販売増加分の大部分が現代グループに向けられたと見られる。

2014 年には第3高炉がフル操業することから、2014 年の鋼材販売量は 2013 年比 20%増、売

上額 27%増の強気の見通しを出している(2014/2/7、業績発表・見通し資料)。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

2013年1Q 2013年2Q 2013年3Q 2013年4Q

売上

額(10億

ウォ

ン)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

鋼材

販売

量(千

t)

売上額

鋼材販売量

出所:現代製鉄 2014 年 2 月 7 日業績発表

図 2-4-16 現代製鉄の 2013 年各四半期の売上・鋼材販売量(非連結ベース)

0

50

100

150

200

250

300

2013年1Q 2013年2Q 2013年3Q 2013年4Q

営業

利益

額(10億

ウォ

ン)

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

営業

利益

営業利益

営業利益率

出所:現代製鉄 2014 年 2 月 7 日業績発表

図 2-4-17 現代製鉄の 2013 年各四半期の営業利益・営業利益率(非連結ベース)

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102

①収益性:営業利益率

②収益性:ROE

③安全性:D/Eレシオ

④安全性:DEBIT/EBITDA

0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%

10.0%12.0%14.0%16.0%18.0%20.0%

2009年 2010 2011 2012 2013

RO

E

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

2009年 2010 2011 2012 2013

D/E

レシ

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

2009年 2010 2011 2012 2013営

業利

益率

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

2009年 2010年 2011年 2012年

DEB

IT/EB

ITD

A

図 2-4-18 現代製鉄の 近の財務指標推移

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103

現代製鉄の 2009 年以降の財務指標を見ると、図 2-4-18 のように、収益性指標は悪化傾向にあ

る。これは、国内鉄鋼需要部門の不振および中国鉄鋼市場の過剰供給による、鉄鋼価格下落が主

因とされている。しかし、安全性指標はそれほど悪化していない。

唐津一貫製鉄所の各設備完成に伴い、同社の販売鋼種構成は大幅に変わった。図 2-4-19 に示す

ように、従来は条鋼(鉄筋棒鋼、形鋼)の割合が多かったが、現在では、鋼板(熱延コイル、厚

板)が過半を占めている。さらに図 2-4-20 に示すように自動車向け(=現代自動車グループ向け)

鋼材販売量の割合が増えている。

2012 年 12 月に自動車用冷延メーカーの現代ハイスコと合併したことにより、今後は、熱延を

冷延加工したものを現代製鉄が直接現代自動車グループに販売することになる。同じ現代グルー

プであるため、利益率が安定的化すると見込まれる。

出所:現代自動車「アニュアルレポート」

図 2-4-19 現代製鉄の販売鋼種構成

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2009年 2010 2011 2012 2013

鋼材

販売

量(千

t)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

自動

車用

の割

鋼材販売量

内、自動車用

自動車用の割合

出所:現代自動車「アニュアルレポート」、2014 年 2 月 7 日業績発表資料

図 2-4-20 現代製鉄の鋼材総販売量と自動車向け販売量の推移

鉄筋棒鋼34%

形鋼33%

厚板0%

熱延コイル26%

その他7%

【2007年:鋼材売上計 11,246千t】

形鋼20%

鉄筋棒鋼19%

厚板8%

熱延コイル46%

その他7%

【2012年:鋼材売上計 16,341千t】

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104

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

2009年 2010 2011 2012

鋼材

調達

量(千

t)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

現代

製鉄

+ハ

イス

コの

占有

その他

現代製鉄+現代ハイスコ

現代製鉄+ハイスコの占有率

出所:現代製鉄「アニュアルレポート」

図 2-4-21 現代自動車グループの鋼材調達先

■設備投資

現代製鉄はこれまで韓国・唐津の一貫製鉄所建設に多額の投資を行ってきた(表 2-4-17 参照)。

これが 2013 年の第3高炉完成で一段落するので、資本支出、借入れの減が予想され、安全性指

標は今後好転する可能性がある。

現代製鉄は、これまでのところ、唐津一貫製鉄所を中心とした韓国内の生産設備への投資を重

点的におこなっているため、東南アジア、インドなど他国への資本支出は行っていない。2013 年

末時点で具体的な計画もない。

表 2-4-17 現代製鉄の 近の資本支出額と主要建設設備

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年(実績速報) 2014年(予定)

資本支出額(10億ウォン) 2,624 1,734 1,801 2,660 1,913 1,148

資本支出額(100万ドル) 2,247 1,523 1,562 2,483 1,812 1,087

主要建設設備 厚板ミル新規完成 第1、第2高炉完成 第3高炉建設開始 第3高炉完成 特殊鋼生産設備建設開始

 (すべて韓国・唐津) 熱延ミル増設完成 (棒鋼60万t、線材40万t)

出所:現代自動車「アニュアルレポート」、2014 年 2 月 7 日業績発表資料

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105

■借入先

表 2-4-18 現代製鉄の負債調達先(2012 年末時点)

種類 借入先 (100万ドル)

短期借入金 輸入目的短期ローン 国民銀行 (*) など 1,821

売掛債権担保ローン 米Citibankなど 40

ブリッジローン 三菱東京UFJ銀行など 162

オペレーティングローン 三菱東京UFJ銀行など 37

計 2,060

長期借入金 シンジケートローン 韓国開発銀行など 2,482

輸出信用機関(Export Credit Agency)ローン 仏ソシエテ・ジェネラルなど 1,338

ABS(資産担保証券)借入金(Loan collateralized by Asset Backed Securities)

韓国産業銀行など 187

(内、満期1年以内) -892

計 3,114

社債 無担保公募債(満期:2013~2019年) 3,581

(*) Kookmin Bank; 韓国の最大手民間銀行

出所:現代製鉄「アニュアルレポート2012」

現代製鉄の借入れ調達先は、POSCO とは対照的に、韓国内銀行・市場からの調達が多い(表

2-4-18)。

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106

(4)宝山鋼鉄の 新動向

表 2-4-19 宝山鋼鉄(連結ベース)の財務状況

(単位:100万米ドル)

主要財務項目・指標

2012年通年2013年3Q(7-9月期)

P/L項目

 売上 30,375 7,626

 営業利益 761 197

 税引後純利益 1,651 155

B/S項目

 手元資金 1,419 2,445

 総資産(期末) 34,064 37,800

 有利子負債(期末) 7,932 8,969

 自己資本(期末) 17,701 18,104

収益性指標

 営業利益率(*1) 2.5% 2.6%

 ROE (*2) 9.3% 4.4%

安全性指標

 D/Eレシオ(*3) 45% 50%

 自己資本比率(*3) 52% 48%

 DEBIT/EBITDA (*4) 4.0 n.a

宝山鋼鉄

出所:公表連結財務諸表を基に作成。

(ドル換算レートは2012年は年度末、2013年各四半期は2013年末レートで換算)

(*1) 通年もしくは各四半期ごとの営業利益/売上

(*2) 税引後純利益/自己資本(期末)。分子は、四半期については過去1年間実績合計(LTM)ベース

(*3) 分子・分母ともに年度末もしくは各四半期末。

(*4) 有利子負債/利払い前・税引き前・償却前利益。

表 2-4-19 と図 2-4-22 に宝山鋼鉄の財務指標を示す。

利益率指標は悪化傾向が続いている。営業利益率は 2011、12 年と低下後、2013 年は横這い。

ROE は 2012 年度に比べるとかなり悪化している。2012 年度は、ステンレス事業部と特殊鋼事業

部を宝鋼集団に売却したことにより、約 1,600 百万ドルの営業外利益を得たという一過性の要因

が大きかった。2013 年度の数値が常態に近いと言える。

安全性指標の D/E レシオ、自己資本比率は若干悪化しているが、手元現金は厚くなっている。

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107

①収益性:営業利益率

②収益性:ROE

③安全性:D/Eレシオ

④安全性:自己資本比率

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

2009年 2010 2011 2012 2013 3Q

RO

E

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

2009年 2010 2011 2012 2013 3Q

D/E

レシ

オ0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

9.0%

2009年 2010 2011 2012 2013 3Q

営業

利益

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

2009年 2010 2011 2012 2013 3Q

DEB

IT/EB

ITD

A

図 2-4-22 宝山鋼鉄(連結ベース)の 近の財務指標

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108

表 2-4-20 宝山鋼鉄の競争力(SWOT 整理)

(*1)国内鋼板市場の過剰供給と利益率低下傾向

従来は、条鋼市場での過剰供給が著しく、それが中国ミル全体の利益率を押し下げてきたとさ

れていた。近年は、条鋼市場は安定してきた一方で、中央・地方政府が付加価値の高い鋼板の生

産能力増を奨励してきたことにより、鋼板市場での過剰供給とそれによる鋼板の利益率低下が目

立ってきたとの報道がある。

表 2-4-21 に中国の鋼種別生産能力とその増加率を示した。2012~2013 年の中国国内の条鋼・

鋼板それぞれのスプレッドは図 2-4-24、2-4-25 のようになっている。条鋼のスプレッドは 2012

年に下落したものの、2013 年は横這いか少し上昇傾向だった。一方、鋼板のスプレッドは、2012

年は乱高下があるものの概ね横這いだったが、2013 年は下落を続けた。

これより、宝鋼の強みと考えられていた品種構成(鋼板、特に冷延・表面処理主体)も絶対的

と言えなくなってきている。

Strength (強み) Weakness (弱み)

・中国の鋼板、高級鋼市場でリーダー

中国の自動車用鋼板市場でシェア

50%。

高張力鋼などで技術開発先導。

・広範な販売先

自動車のほか、鉄道、石油化学、航空、

宇宙、機械、電子、エネルギーなど広範

な顧客を有する。

・強い国内販売ネットワーク

宝鋼集団傘下に多くの流通企業を有す

る。

・中国鋼板市場の過剰供給と利益率低下(*1)

・環境対策コスト上昇(*2)

・海外生産拠点の経営力未知数

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・中国自動車市場で高級車の割合増加予想

2013 年~2016 年に 80%増加予想

高張力鋼の使用増につながる

・戦略的合意

国家開発銀行と生産能力拡張のための

資金調達枠 200 億ドル確保(2015 年ま

で)合意(2012 年 8 月)

長城汽車(中国民間自動車メーカー 大

手)と新規事業開発鋼材の評価を行う共

同研究所設立(2013 年 9 月)

・湛江製鉄所プロジェクト開始(2013 年)

(*3)

・中国経済成長率の鈍化

・中国自動車市場の伸び鈍化

2013 年は販売台数が前年比 14%増、

2014 年は同 8~10%の増の予想(中国自動

車工業会)

・鞍鋼が神戸製鋼所と自動車用高張力鋼製造の

合弁会社設立へ(2013 年合意、16 年稼働予

定)

・湛江製鉄所プロジェクトの財務負担(*3)

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109

表 2-4-21 中国の鋼種別生産能力

(単位:千トン)

2008年 2009 2010 20112008→2011年

増加率

条鋼 319,100 369,450 301,814 496,650 56%

厚中板 67,680 75,170 93,310 92,580 37%

熱延 208,800 233,000 270,250 272,960 31%

冷延 97,540 112,350 143,600 161,820 66%

亜鉛メッキ鋼板 24,990 27,110 30,860 40,160 61%

出所:中国鋼鉄統計

図 2-4-23 宝鋼の販売鋼種構成

表 2-4-22 宝山鋼鉄の鋼種別粗利率

2007年 2012年冷延 22.35% 11.20%熱延 23.96% 8.80%厚板 33.44% -11.60%ステンレス -5.78% -1.20%特殊鋼 -1.85% -6.10%その他 20.93% 3.20%合計 16.91% 6.60%

出所:アニュアルレポート

熱延鋼板40%

冷延・表面処理鋼板

34%

その他4%ステンレス

4%

鋼管6%

ビレット3%

鉄筋棒鋼0% 線材

3%

厚板6%

【2007年:鋼材売上計 22,880千t】

鉄筋棒鋼2%

ビレット4%

線材2%

厚板8%

ステンレス3%

鋼管6%

その他1%

熱延鋼板27%

冷延・表面処理鋼板47%

【2012年:鋼材売上計 23,955千t】

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110

(縦軸:米ドル/トン) 出所:Steel Business Briefing

図 2-4-24 中国:条鋼スプレッド(条鋼価格-主原料価格)(2012 年 2 月~2014 年 1 月)

(縦軸:米ドル/トン) 出所:Steel Business Briefing

図 2-4-25 中国:鋼板スプレッド(鋼板価格-主原料価格)(2012 年 2 月~2014 年 1 月)

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111

(*2)環境コスト

中国鋼鉄工業協会(CISA)事務局長の発言によると、大手鉄鋼メーカーには、公害削減目標達

成のため、膨大なコストが、すでに発生しており、「宝鋼の廃棄物処理コストは、トン当たり 140

元(23 ドル/トン)を上回っている。今後も増加が避けられない。」(2013 年 12 月発言)

(*3)湛江製鉄所建設

一大生産拠点として、中国南部市場および東南アジア市場の需要に応え、宝鋼の収益に貢献す

ることが期待される。

投資額は当初予定約 700 億元を、その後、既存設備を移設するなどの方策を打ち出して削減し、

415 億元(約 6,856 百万ドル)まで減らしている。それでも、現在の手元流動性や負債額に比べ

ると非常に大きな投資負担となる。

表 2-4-23 湛江製鉄所の建設内容予定

■宝山鋼鉄の負債調達先と邦銀の関与

表 2-4-24 宝山鋼鉄の借入(2012 年末)

借入先 借入れ開始日 返済期日借入額

(100万ドル単位に換算)

短期借入金 不明 4,267

長期借入金 三井住友銀行 2012/8/24 2014/2/14 50

J.P. Morgan Chase (米) 2012/8/24 2014/2/14 50

中国建設銀行(*) 2011/5/20 2014/4/18 54

    〃 2011/4/26 2014/3/25 48

    〃 2011/6/20 2014/5/19 17

その他(内訳不明) 215

合計 434

社債 2008/6/20 2014/6/20 1,484

2012/5/4 2015/5/4 79

合計 1,563

(*)中国四大商業銀行のひとつ

出所:宝山鋼鉄「アニュアルレポート2012」

短期借入金が多いのが特徴的である。2011、2012 年は、長期借入金・社債合計額より多かっ

た。長期借入金も、借入期間が比較的短い。

稼働予定:2016 年 9 月

主要設備:高炉2基、スラブ連鋳機3基、熱延ミル1基、冷延ミル1基

年産能力:銑鉄 823 万 t、粗鋼 892.8 万 t、スラブ 874.9 万t、鋼材 689 万t

主販売先:中国南部の自動車、家電産業。東南アジア輸出拠点となる可能性もあり。

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112

※参考:宝鋼集団の新6カ年計画(2013~2018 年)

グローバル化の推進

新の 2013 年 Fact Book では、「成長可能性は、中国より他の新興国にシフトする」と記した上

で、初めて、「現在、ゼロである海外生産拠点の設立を積極的に図る」と明記している。

宝鋼の海外における資本出資は、表 2-4-25 のように、実現したものは資源獲得関係が主で、生産

拠点は、タイの鋼管1社のみである。今後は、上記のような戦略に沿って海外生産拠点設立をよ

り積極的に狙うことが予想される。財務的には、安全性指標や手元現金量などこれまでは余力が

あったが、湛江一貫製鉄所建設負担が大きいため、当面は、大型生産拠点設立は難しいのではな

いかと考えられる。また、同製鉄所が東南アジア向け輸出拠点となる場合、東南アジアでの生産

拠点設立はさらに考えにくい。

表 2-4-25 宝鋼の海外投資動向

年 国 内容

2008年 タイ タイ政府による高炉一貫製鉄所建設案に参画の名乗り。現在、進展なし。

2009年 オーストラリア 鉄鉱石・原料炭採掘会社Aquilaの株式15%を2.86億豪ドルで取得。

2009年 ブラジル ブラジルValeとの合弁スラブ製鉄所建設案、取り消し。世界金融危機による減産が影響。

2011年 カナダ資源会社Noront Resourcesの株式9.9%を1,740万加ドルで取得。ステンレス原料のクロム鉱確保。

2011年 マレーシアマレーシア最大の企業集団Lion Group傘下の条鋼電炉メーカーAmsteel Mills(200万トン/年)の株式取得で協議に入ったと報じられた。

2012年 オーストラリア鉄鉱石採掘合弁プロジェクトIron Bridge(埋蔵量52億トン)に12%出資。2015年生産開始予定。

2012年 タイ

継目無鋼管メーカーBaoli Steel Tube (Thailand)を設立(生産能力20万トン/年)。浙江省の軸受鋼管メーカーZhejiang Jianli(浙江健力)との合弁。2013年生産開始。当初はアメリカに建設する計画だったが、環境許可をとれなかったため、タイに設立。

前期 6 カ年計画の拡張路線を撤回

・高付加価値鋼の安定的生産に重点シフト

<グローバル化>

・電磁鋼板と冷延薄板での海外新規マーケット開拓を狙う

・6 年後の売上比率:国内 8、海外 2 目指す

・米国企業とのパートナーシップ締結による自動車用鋼材市場開拓

<アルミへの進出>

・自動車用アルミ板プロジェクトを計画

・中国アルミ業(チャイナルコ)傘下の西南アルミ業と提携の可能性を検討

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113

(5)武漢鋼鉄

武鋼の 近の財務指標を見ると、図 2-4-26 のように、収益性指標は悪化傾向にある。これは、

中国内鉄鋼市場の過剰供給、需要鈍化、それらに伴う鉄鋼価格下落が原因である。宝鋼に比べ、

より悪化しているのは、武鋼の鋼材生産品種構成において、条鋼や厚中板の割合が大きいことに

よると考えられる(図 2-4-27)。安全性指標はそれほど悪化していない。ただし、地元報道情報に

よると、武鋼は近年、多額の政府補助金を受け取っており、2012 年はそれが3億 4,500 万元だっ

たという。ドル換算では約 5,500 万ドルになる。2012 年の武鋼の純利益は 3,300 万ドルだったか

ら、政府補助金がなければ赤字だったことになる。

武鋼は投資家向け公表資料が乏しいため、戦略スタンスは不明な点が多い。武鋼の海外におけ

る資本出資は、表 2-4-27 のように、資源獲得関係が主で、現在でも、原料自給率を 100%に近づ

けるべく、資源獲得に力点を置き続けている(武鋼の鉄鉱石自給率は 2009 年時点で 20%未満と

低かった)。2011 年には海外鉱産資源事業部を設立して、資源戦略を加速すると発表している。

2013 年末の報道情報によると、2016~2018 年に鉄鉱石 100%自給を達成する目標だという。

一方で、生産拠点建設計画は、鉄鉱石権益がらみでブラジル EBX 社との間で話が持ち上がった

合弁高炉一貫製鉄所(500 万トン)とインドネシアの合弁条鋼ミル(50~100 万トン)のみで、

これらも、前者は 2012 年以降棚上げ状態、後者も進捗が明らかでない。

財務的には、安全性指標や手元現金量などをみると、余力があるとは言い難い。2013 年に建設

を再開した国内の大プロジェクト防城港製鉄所(粗鋼 920 万トン、投資予定額 640 億元)の建設

にあたっても、資金捻出が苦しく、集団内で鉄鉱石資産を現金化するなどの必要があると言われ

ている。また、防城港製鉄所は中国南部の広西チワン族自治区に位置し、中国南部の自動車・白

物家電産業向け鋼材を生産する計画だが、宝鋼の湛江プロジェクトと同様に、東南アジア向け輸

出拠点となる可能性も考えられ、この場合、なおさら、東南アジア現地での生産拠点設立可能性

は当面なくなる。なお、防城港プロジェクトの今後の日程など詳細は明らかでないが、2015 年に

冷延設備が他の主要設備に先行して稼働予定となっている。

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114

①収益性:営業利益率

②収益性:ROE

③安全性:D/Eレシオ

④安全性:DEBIT/EBITDA

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

2009年 2010年 2011年 2012年

RO

E

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

2009年 2010年 2011年 2012年

D/Eレ

シオ

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

2009年 2010年 2011年 2012年

営業

利益

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

2009年 2010年 2011年 2012年

DEB

IT/EB

ITD

A

図 2-4-26 武漢鋼鉄の 近の財務指標推移(連結ベース)

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115

(*)売上げ構成は公表されていないため、中国鋼鉄工業年鑑の生産品種構成を基に作成

図 2-4-27 武鋼の生産鋼種構成(*)

表 2-4-26 武鋼の 近の海外投資

年 国 内容

2008年 オーストラリア 豪Iron Clad Mining社と折半出資で鉄鉱石開発合弁プロジェクト(400万トン)設立。

2008年 〃オーストラリアの鉄鉱石探査会社Centrex Metalsの株式15%を970万豪ドルで取得。同社が南オーストラリアで行っている磁鉄鉱開発プロジェクトに1.8億豪ドルを出資することで合意。

2009年 〃豪Western Plains Resourcesと折半出資で鉄鉱石開発プロジェクト(潜在資源量10億トン超)を行うことで合意。しかし同年、豪当局より反対され棚上げに。

〃 ブラジル

伯EBXと、EBX傘下の鉄鉱石採掘企業MMX(埋蔵量30億トン)に投資する契約締結。MMXの株21.52%を約4億ドルで取得。約6億トン分の権益獲得。同時に、ブラジルに一貫製鉄所(500万トン)をEBXと合弁で設立する計画が明らかにされた。

2010年 マダガスカル Soalara(ソアララ)鉄鉱山(埋蔵量8億トン超)の開発権を取得。

〃 モザンビーク Zambeze石炭鉱株40%を8億ドルで取得。

〃 リベリア鉄鉱山開発権取得(埋蔵量は13億~41億トンと報道により大幅に異なる)。2013年、第1期工事完了で、最初の鉄鉱石精鉱を開始。2014年、第2期工事開始。2017年完了で、鉄鉱石生産能力1,000万t/年になる予定。

2011年 カナダ1.2億加ドルを投じて、加ADI社の株式19.9%と、同社のLac Otelnuk鉄鉱石プロジェクトの60%持ち分を取得。

〃 インドネシア集団傘下の鄂城鋼鉄が、インドネシアGunung Garudaと合弁条鋼ミル建設(50~100万トン、2013~2014年操業予定)を検討していると報じられた。しかし、その後の進捗は不明。

2012年 ブラジル 2009年に発表したブラジル合弁一貫製鉄所計画の棚上げを2012年11月発表。

条鋼15%

厚中板19%

熱延鋼板27%

冷延・表面処理鋼板

39%

【2007年:鋼材生産計 10,563千t】

厚中板13%

条鋼12%

熱延鋼板35%

冷延・表面処理鋼板40%

【2011年:鋼材生産計 16,649千t】

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116

(6)中国鋼鉄

中国鋼鉄の 近の財務指標を見ると、図 2-4-28 のように、収益性指標はかなり悪化している。

これは、台湾国内市場の鉄鋼需要鈍化、主要輸出先である中国鉄鋼市場の過剰供給、需要鈍化、

これらに伴う鉄鋼価格下落が原因である。安全性指標も悪化している。

中国鋼鉄の販売鋼種構成は図 2-4-29 のように、熱延、冷延鋼板が主となっている。売り上げの

うち、輸出比率が 20~30%と比較的高く、かつ徐々に上昇傾向にある(図 2-4-30)。

海外での生産拠点確保も、東南アジアおよびインドで徐々に進めている(表 2-4-28)。2000 年

にマレーシアの2社を買収した後、しばらく動きがなかったが、2008 年にベトナムに住友金属工

業(当時)と合弁で鋼板ミル(CSVC)設立を決定、同ミルは 2013 年に完工して 11 月に営業生

産を開始した。また、同じくベトナムで、台湾プラスチックが進めている高炉一貫製鉄所建設に

も5%出資している。台湾プラスチックは出資以上に、製鉄所の経営管理および社員教育につい

て中国鋼鉄の協力を期待していると言われている。さらにインドでは電磁鋼ミルがまもなく稼働

予定(当初計画では 2013 年中だったが、2014 年に延期)、さらに同ミルと同じ敷地に 120 万ト

ン冷延・亜鉛メッキラインを建設することを検討中である。中国鋼鉄は 近の投資家向け資料

(Operation Report)で、今後、「鉄鋼需要成長が期待されるアジア新興国での投資を優先する」

と述べている。現状、収益性および安全性指標が示すように、財務余力が十分とは言えないが、

台湾国内の鉄鋼需要の今後の伸びが期待しがたいところから、徐々に輸出および海外生産拠点設

立を増やしていくと予想される。

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117

①収益性:営業利益率

②収益性:ROE

③安全性:D/Eレシオ

④安全性:DEBIT/EBITDA

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

2009年 2010年 2011年 2012年

RO

E

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2009年 2010年 2011年 2012年

D/Eレ

シオ

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

2009年 2010年 2011年 2012年

営業

利益

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

2009年 2010年 2011年 2012年

DEB

IT/EB

ITD

A

図 2-4-28 中国鋼鉄の 近の財務指標の推移(連結ベース)

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118

表× 中国鋼鉄の海外生産拠点設立

図 2-4-29 中国鋼鉄の販売鋼種構成

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012

販売

量(千

t)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

輸出

割合

(%)

国内販売量

輸出量

輸出割合

図 2-4-30 中国鋼鉄の鉄鋼販売量と輸出割合の推移

図 2-4-31 中国鋼鉄の輸出相手先

熱延鋼板43%

冷延・表面処理鋼板

28%

半製品0%

棒鋼6%

線材12%

厚板11%

【2007年:鋼材生産計 10,429千t】

棒鋼7%

半製品2%

線材14%

厚板11%

熱延鋼板28%

冷延・表面処理鋼板38%

【2012年:鋼材売上計 8,790千t】

マレーシア16%

ベトナム2%

その他11%

中国(香港含む)35%

日本30%

タイ3%

インドネシア3%

【2007年:輸出鉄鋼計 2,582千t】

日本22%

中国(香港含む)25%

タイ10%

インドネシア9%

ブラジル4%

メキシコ7%

その他14%

マレーシア5%

ベトナム4%

【2012年:輸出鉄鋼計 3,030千t】

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119

表 2-4-27 中国鋼鉄の海外生産拠点設立

国 現地企業名 分類 製品生産能力(千t/年)

操業開始年等資本金(投資額)

出資比率

China Steel Sumikin VietnamJoint Stock Company(CSVC)

単圧冷延、表面処理、電磁鋼

12002013/11営業生産開始

5億7400万ドル 51%(*1)

Formosa Ha Tinh steel mill 高炉一貫 熱延、線材第1期 7500第2期 7500

第1期2015/5稼働予定

35億ドル5%(*2)

CSC Steel Holdings 単圧 冷延 580 2000年買収 45%

Group Steel Corp. (M) 単圧 表面処理 2000年買収 45%

China Steel Corporation India 単圧 電磁鋼 2002011/11設立2014年稼働予定

(投資額6658万ドル)

75%

   〃 単圧冷延、亜鉛メッキ

1200 検討中

ベトナム

マレーシア

インド

(*1) 5億7,400万ドル中、51%を中国鋼鉄が、30%を新日鉄住金が、5%を住友商事が出資。(*2) 35億ドル中、95%を台湾の企業グループである台塑集団(Formosa Plastic Group)が出資。

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120

2.5 各鉄鋼供給国・企業の ASEAN 等地域への市場戦略を踏まえた技術協力の実態調査

2.5.1 調査方法

①情報入手先:

1) 新聞;鉄鋼新聞、日刊工業新聞、日刊産業新聞、東洋経済新聞、中国鉄鋼新聞

2) 雑誌;Steel Business Briefing , Metal Bulletin, India Times, The Economics Times 等

3) Web 情報

4) 文献検索;検索サイトは J-Dream-III を使用

・キーワード:

1. 調査対象国:タイ インドネシア ベトナム マレーシア フィリピン インド

2. 分野・プロセス:鉄鋼 高炉 製鋼 製銑 圧延 熱延 冷延 表面処理 電磁

ステンレス 条鋼 形鋼 線材 棒鋼 鋼管 大学

3. 技術協力の形態:技術開発 技術協力 技術支援 技術供与 技術援助 技術指導 技

術研修 技術セミナー 技術者育成 技術育成 技術交流 技術教育

技術者教育 技術提携 技術戦略 商品開発 研究開発 共同研究 協

同研究 研究支援 研究援助 研究指導 設備投資

4. 人材育成: 人材育成 人材教育 能力向上 能力開発 人事交流

5. その他 :覚書 契約 合意 MOU MOA 提携 合弁 買収 子会社化 投

資 戦略

②検索式:1*2、1*2*(3+4) 、あるいは 1*2*(3+4+5)

③調査対象期間:2009 年 1 月~2013 年 9 月

検索の結果ヒットした、新聞・雑誌・Web 情報(293 件)、文献数(10 件)をもとに、先ず

市場戦略を踏まえた技術協力の実態調査の基礎データとなる情報の件数を整理した。その結果

をもとに、調査対象国への進出企業の戦略(目的)、および受入れ企業の市場戦略を整理した。

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121

2.5.2 調査結果

(1) 調査対象国別の技術情報件数

横軸を調査対象国として、情報件数を、下記①~④を凡例として、図 2.5.1~図 2.5.4 に整理し

た。

なお、下記の理由により、整理の仕方によっては縦軸の総件数が一致しない場合がある。

1)層別したすべての凡例情報が、記事によっては記載されていない。

2)記事に複数の凡例情報の記載がある。

例えば、技術協力の分類で、「合弁」、「技術提携」なる情報がある場合、1 件の記事で

2つの情報を考慮し、また、鋼種の分類で、「電磁鋼」、「自動車用鋼板」、「条鋼」なる情

報あれば、3つとも考慮して整理。

①対象国への鉄鋼供給国 → 図 2-5-1:

記事件数は、日本(184 件、63%)、韓国(78 件、27%)の企業に関する記事情報がほとん

どで、次いで中国(20 件、7%)、台湾(18 件、6%)であった。

対象国では、インドが 119 件(41%)と も多く、次いでベトナム(68 件、23%)、タイ

(58 件、20%)、インドネシア(51 件、17%)、マレーシア(34 件、12%)の順で、フィリピ

ン(4 件、1%)が も件数が少なかった。

②技術協力の形態 → 図 2-5-2:

1) 「技術協力」; 表記が、「提携、供与、支援、協力、援助」は同類とした。

「合弁」、「資本提携・出資」、「買収・子会社化」は、同類として整理。

2) 「人材育成」 ;「人材育成」、「人材交流」、「教育」、「研修・セミナー」は同類とし整理。

技術指導」も「人材育成」に含めて整理した。

3) その他;「新規市場開拓・進出」、「共同研究・開発」、「相互協力」、「業務提携」、

「生産増強・機能強化・建設」、「エンジニアリング」は、個別に分類した。

人材育成/交流/教育

研修/セミナー

技術指導

合弁

資本提携/出資

買収/子会社化

新規市場開拓/進出

技術提携

技術供与

技術支援

技術協力

技術援助

共同研究/開発

相互協力

業務提携/販売含

生産増強/機能強化/建設

エンジニアリング

「技術協力」関連は 150 件(51%)と多く、対象国別ではインド(56 件、「技術協力」の

37%)、ベトナム(同 29 件、19%)、タイ(25 件、17%)で多い。

「人材育成」関連は 19 件(6%)と少なく、その中でインド 7 件、ベトナム 6 件であった。

なお、対象国、あるいは鉄鋼供給国のどちらが主体的にアプローチしたかの整理は、記事

内容から判断不明のため、実施しなかった。

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122

③分野・プロセス→ 図 2-5-3:

1) 上工程;「原料(処理)」、「製銑」、「新鉄源」、「製鋼・鋳造」、「予備処理・二次精錬」

2)下工程 ;「熱延」、「厚板」、「冷延」、「表面処理」

3) 二次加工;「造管」、「製缶」、「加工」

4) 流通 ;「物流・流通・コイルセンター」、に層別した。

原料

製銑

新鉄源

製鋼/鋳造

予備処理/二次精錬

熱延

厚板

冷延

表面処理

造管

製缶

加工

物流/流通/コイルセンタ

全体的に、上工程よりも、下工程、二次加工、流通での技術協力関連情報が多い。

④品種・鋼種・用途→ 図 2-5-4:

21 に層別した。

自動車用鋼板

自動車用高級鋼板

その他表面処理鋼板

鋼管 厚板

熱延板

薄板

電磁鋼(無方向性)

電磁鋼(方向性)

ステ

ンレス鋼

軸受鋼/ベアリング

ばね

缶 溶接材

ワイヤー

ロープ

構造用鋼/建材

条鋼/形鋼/棒鋼/棒鋼等

その他特殊鋼

半製品(鋳片)

原料(還元鉄/鉱石等)

添加合金

自動車用鋼等の表面処理鋼板や特殊鋼、条鋼・建材での技術協力関連情報は、インド、タイ、

マレーシアで多い。

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123

0

20

40

60

80

100

120

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

件数

ロシア

アメリカ

スイス

ニュージーランド

オーストリア

スペイン

イタリア

イギリス

ドイツ

ルクセンブルク

欧州

ブラジル

オーストラリア

カナダ

シンガポール

台湾

中国

韓国

日本

2009年1月~2013年9月

鉄鋼供給国

図 2-5-1 調査対象国に進出した鉄鋼供給国

0

20

40

60

80

100

120

タイ

イン

ドネ

シア

ベトナ

マレ

ーシ

フィリ

ピン

イン

件数

エンジニアリング

生産増強/機能強化/建設

業務提携(販売含)

相互協力

共同研究/開発

技術援助

技術協力

技術支援

技術供与

技術提携

新規市場開拓/進出

買収/子会社化

資本提携/出資

合弁

技術指導

研修/セミナー

人材育成/交流/教育

2009年1月~2013年9月

技術協力の形態

図 2-5-2 調査対象国別に分類した鉄鋼供給国の技術協力の形態の件数

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30

40

50

60

70

80

90

100

タイ

イン

ドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

件数

物流/流通/コイルセンタ

加工

製缶

造管

冷延

表面処理

厚板

熱延

予備処理/二次精錬

製鋼/鋳造

新鉄源

製銑

原料

2009年1月~2013年9月

分野・プロセス

図 2-5-3 調査対象国別に分類した鉄鋼供給国の技術協力の分野別件数

0

20

40

60

80

100

120

タイ

インドネ

シア

ベトナ

マレー

シア

フィリ

ピン

インド

件数

添加合金

原料(還元鉄/鉱石等)

半製品(鋳片)

条鋼/形鋼/棒鋼/棒鋼等

構造用鋼/建材

鋼管

厚板

ワイヤーロープ

溶接材

ばね

軸受鋼/ベアリング

その他特殊鋼

ステンレス鋼

電磁鋼(方向性)

電磁鋼(無方向性)

熱延板

薄板

その他表面処理鋼板

自動車用高級鋼板

自動車用鋼板

2009年1月~2013年9月

品種・鋼種・用途

図 2-5-4 調査対象国別に分類した技術協力の対象となった鋼材品種・鋼種・用途別件数

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125

(2) 技術情報件数の推移

「(1)調査対象国別の情報件数」で使用した同じ情報をもとに、その暦年変化を図 2-5-5 に示す。

また、図 2-5-6~図 2-5-9 に、図 2-5-1~図 2-5-4 の横軸を暦年に置き換えた図を示す。

0

20

40

60

80

100

120

2009 2010 2011 2012 2013

件数

インド

フィリピンマレーシア

ベトナム

インドネシアタイ

9月迄

図 2-5-5 調査対象国別の技術協力関連情報件数の推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2009 2010 2011 2012 2013

件数

ロシア

アメリカ

スイス

ニュージーランド

オーストリア

スペイン

イタリア

イギリス

ドイツ

ルクセンブルク

欧州

ブラジル

オーストラリア

カナダ

シンガポール

台湾

中国

韓国

日本

鉄鋼供給国

9月迄

図 2-5-6 調査対象国へ技術協力した関係国別情報件数の推移

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126

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2009 2010 2011 2012 2013

件数

エンジニアリング

生産増強・機能強化・建設

業務提携

相互協力

共同研究・開発

技術援助

技術協力

技術支援

技術供与

技術提携

新規市場開拓・進出

買収・子会社化

資本提携・出資

合弁

技術指導

研修・セミナー

人材育成・交流・教育

技術協力の形態

9月迄

図 2-5-7 調査対象国への技術協力の形態別情報件数の推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2009 2010 2011 2012 2013

件数

物流・流通・コイルセンタ

加工

製缶

造管

表面処理

冷延

厚板

熱延

予備処理・二次精錬

製鋼・鋳造

新鉄源

製銑

原料

分野・プロセス

9月迄 図 2-5-8 調査対象国への技術協力の分野別情報件数の推移

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127

0

10

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50

60

70

80

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2009 2010 2011 2012 2013

件数

添加合金原料(還元鉄・鉱石等)半製品(鋳片)条鋼・形鋼・棒鋼・棒鋼等缶鋼管・パイプライン構造用鋼・建材厚板ワイヤーロープ溶接材ばね軸受鋼・ベアリングその他特殊鋼ステンレス鋼電磁鋼(方向性)電磁鋼(無方向性)熱延板薄板その他表面処理鋼板自動車用高級鋼板自動車用鋼板

品種・鋼種・用途

9月迄

図 2-5-9 調査対象国への技術協力の分野別情報件数の推移

(3)鉄鋼供給国別、技術協力の形態別、分野・プロセス別、品種・鋼種・用途別の情報件数

図 2-5-10~図 2-5-13 に、図 2-5-1~図 2-5-4 の横軸を凡例に置き換えた図(凡例は対象国)

を示す。

これらの図より、技術協力の情報件数の多いのは、以下の通り。

1) 鉄鋼供給国; 日本、韓国、中国、台湾、ドイツ

2) 技術協力の形態;合弁(「合弁」、「資本提携・出資」、「買収・子会社化」)、

生産性向上(「生産増強・機能強化・建設」)に関するもの。

3) 分野・プロセス;上工程では、製鋼、製銑、原料

下工程では、冷延、表面処理、造管

製鉄所外では、「加工」、「物流・流通・コイルセンター」

であり基本的に製品に近い分野で多い。

4) 品種・鋼種・用途; 製品としては自動車用鋼板を含む表面処理鋼板、ステンレス鋼、

鋼管、電磁鋼が多く、半製品では条鋼や鋳片、原料では還元鉄・鉱石・ペ

レット等や添加合金の情報件数が多い。

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0

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100

120

140

160

180

200

日本

韓国

中国

台湾

シンガ

ポー

ルカナ

オー

ストラ

リア

ブラジ

ル欧

ルクセ

ンブ

ルク

ドイツ

イギ

リス

イタリア

スペ

イン

オー

ストリ

ニュー

ジー

ランド

スイス

アメリ

ロシ

件数

インド

フィリピン

マレーシアベトナム

インドネシア

タイ

2009年1月~2013年9月鉄鋼供給国

図 2-5-10 技術協力関連情報の鉄鋼供給国別件数

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

人材

育成

/交流

/教育

研修

/セミナ

技術

指導

合弁

資本

提携

/出資

買収

/子会

社化

新規

市場

開拓

/進出

技術

提携

技術

供与

技術

支援

技術

協力

技術

援助

共同

研究

/開発

相互

協力

業務

提携

(販売

含)

生産

増強

/機能

強化

/建設

エンジニア

リング

件数

インドフィリピンマレーシアベトナムインドネシアタイ

2009年1月~2013年9月技術協力の形態

図 2-5-11 技術協力関連情報の技術協力形態別件数

0

10

20

30

40

50

60

原料

製銑

新鉄

製鋼

/鋳造

予備

処理

/二次

精錬

熱延

厚板

冷延

表面

処理

造管

製缶

加工

物流

/流通

/コイル

センタ

件数

インドフィリピンマレーシアベトナムインドネシアタイ

2009年1月~2013年9月分野・プロセス

図 2-5-12 技術協力関連情報の協力分野別件数

0

10

20

30

40

50

60

自動

車用

鋼板

自動

車用

高級

鋼板

その

他表

面処

理鋼

板鋼

管厚

熱延

板薄

電磁

鋼(無

方向

性)

電磁

鋼(方

向性

ステ

ンレス

軸受

鋼/ベ

アリン

グば

ね 缶

溶接

ワイヤ

ーロ

ープ

構造

用鋼

/建材

条鋼

/形鋼

/棒鋼

/棒鋼

その

他特

殊鋼

半製

品(鋳

片)

原料

(還元

鉄/鉱

石等

添加

合金

件数

インドフィリピンマレーシアベトナムインドネシアタイ

2009年1月~2013年9月品種・鋼種・用途

図 2-5-13 技術協力関連情報の鋼材品種・鋼種・用途別件数

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129

2.5.3 調査対象地域への進出企業・受入企業の市場戦略

調査対象地域へ進出する企業、および調査対象地域側での受入れ企業の市場戦略を、2-5-2 項の

記事情報から抽出し、整理した。

(1) 進出企業の市場戦略

市場戦略が記載されている記事 209 件を対象に、表 2-5-1 に示すように 22 のキーワードで分類

し、図 2-5-14 に整理した。記事情報内容によっては、キーワードを複数選択した。

表 2-5-1 進出企業の市場戦略目的の分類

No. 市場戦略のキーワード No. 市場戦略のキーワード

1) 進出した国での需要捕捉 12) 会社のプレゼンスを高める2) 進出した自国企業への材料供給 13) コスト低減(物流/原料/輸出)3) 需要・顧客の開拓・足掛り 14) 材料の安定供給( 2)を除く)4) 事業拡大・強化 15) 企業の海外移転への対応5) 海外拠点の確保・強化 16) サプライチェーン強化・整備6) 安定輸出先確保 17) 将来の人材確保7) 品質向上・高級化 18) 納期・デリバリー対応8) 関係強化 19) 資源確保9) 東南アジア・世界需要への対応 20) 国内市場激化回避

10) 輸入代替・現地生産 21) 進出国での過当競争回避11) 受注活動強化 22) 反ダンピング税,相殺関税回避

も多いのは、1)「進出した国での需要捕捉」で 30%を占め、次いで 2)「進出した自国企業へ

の材料供給」(10%)、3)「需要・顧客の開拓・足掛り」(9%)、4)「事業の拡大・強化」(6%)とな

り、1)~4)合計で全体の 50%を超える。各件数は日本が海外よりも多い(約 2 倍)が、比率は、

日本、海外ともほぼ同じである。

市場戦略のキーワードから、日本、海外とも、主に 2 つの進出目的が推察された。

① 今後需要が期待される対象国での需要捕捉やその足掛りのため、技術協力・合弁・出資を

通じて、海外進出の拠点確保・強化を推し進める。これにより、対象国企業との関係強化

や会社のプレゼンスを高め、事業拡大を期待する。

② 国内需要の低迷への対策として、海外進出・移転した自国企業への安定した材料供給・輸

出先確保を期待する。

日本の企業になく、日本以外の企業が挙げた進出目的としては、「資源確保」(中国)、「反ダン

ピング税・相殺関税回避」(中国)、「国内市場激化回避」(韓国)、「進出国での過当競争回避」(韓

国;合弁目的)(各 1~2 件)があった。

逆に、日本企業のみが挙げた進出目的は、「納期・デリバリー対応」(3 件)であった。

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130

進出した国での需要捕捉

進出した自国企業への材料供給(A)

需要・顧客の開拓・足掛り

事業の拡大・強化

安定輸出先確保

海外拠点の確保・強化

品質向上・高級化

東南アジア・世界需要への対応

関係強化

輸入代替・現地生産

コスト低減(物流/原料/輸出)

会社のプレゼンスを高める

受注活動強化

材料の安定供給(Aを除く)

サプライチェーン強化・整備

企業の海外移転への対応

納期・デリバリー対応

将来の人材確保

資源確保

反ダンピング税,相殺関税回避

進出国での過当競争回避

国内市場激化回避

0 10 20 30 40 50

日本

韓国

中国

台湾

シンガポール

オーストラリア

ブラジル

ドイツ

イギリス

イタリア

タイ

インド

日本

日本以外

(N=213)

進出した国での需要捕捉

進出した自国企業への材料供給(A)

需要・顧客の開拓・足掛り

事業の拡大・強化

安定輸出先確保

海外拠点の確保・強化

品質向上・高級化

東南アジア・世界需要への対応

関係強化

輸入代替・現地生産

コスト低減(物流/原料/輸出)

会社のプレゼンスを高める

受注活動強化

材料の安定供給(Aを除く)

サプライチェーン強化・整備

企業の海外移転への対応

納期・デリバリー対応

将来の人材確保

資源確保

反ダンピング税,相殺関税回避

進出国での過当競争回避

国内市場激化回避

0 10 20 30 40 50

日本

韓国

中国

台湾

シンガポール

オーストラリア

ブラジル

ドイツ

イギリス

イタリア

タイ

インド

0 10 20 30 40 50

日本

韓国

中国

台湾

シンガポール

オーストラリア

ブラジル

ドイツ

イギリス

イタリア

タイ

インド

日本

日本以外

日本

日本以外

(N=213)

図 2-5-14 調査対象国へ進出した企業の市場戦略(国籍別)

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131

(2)受入れ企業の市場戦略

調査対象国の進出国との合弁・技術協力に対する戦略(目的・期待)が記載されている記事 53

件を対象に、表 2-5-2 に示す 9 つのキーワードで分類し、図 2-5-15 に整理した。

表 2-5-2 受入れ企業の市場戦略目的の分類

No. 市場戦略のキーワード

1) 高品質/高級化対応2) 材料・原料の安定調達3) 近代化・環境対策4) 技術獲得5) コスト削減・競争力強化6) 輸入依存低減7) 販売網獲得8) 人材育成9) 生産性向上・強化

受入側の戦略として も多いのは、1)高品質・高級化対応(36%)で、2 番目に 2)材料・原料の安

定調達(17%)であった。これら 2 つで 5 割を超え、次いで、3)近代化・環境対策(11%)、4)技術獲

得(9%)、5)コスト削減・競争力強化(8%)、6)輸入依存低減(6%)等が挙げられた。

これらキーワードから、受入側では、将来、高級鋼を自前で製造したいニーズが高いことが推察

された。

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

人材育成(n=2, 3.7%)

生産性向上・強化(n=2, 3.7%)

輸入依存低減(n=3, 5.6%)

販売網獲得(n=3, 5.6%)

コスト削減・競争力強化(n=4, 7.5%)

技術獲得(n=5, 9.4%)

近代化・環境対策(n=6, 11.3%)

材料・原料の安定調達(n=9, 16.9%)

高品質/高級化対応(n=19, 35.8%)

インド

マレーシア

ベトナム

インドネシア

タイ

(N=53)

図 2-5-15 調査対象国での技術協力受入れ企業側の市場戦略別分類

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132

2.5.4 対象国における有名大学とその冶金学科の有無

人材育成上の問題点・課題を探るためのベースとして、対象国における有名大学(ここでは、

Ranking の上位の大学のこと)とその冶金学科の有無を整理した。大学ランキングとして もス

タンダードな「QS World University Rankings」の 2013 年版にランキングされている大学を表

2-5-3 に記す。順位は、総合部門での順位と Engineering and Technology 部門の順位である(空

欄はランク外)とし、冶金学科の有無は、各大学のホームページから調べた。また、各大学の概

要と、製鉄会社大手役員の輩出の有無を表 2-5-4 にまとめた。ベトナムはランク内に入る大学が

ないため、国内で上位と思われる 2 校を参考として紹介する。

表 2-5-3 アジアランキング ランクイン大学リスト

日本語表記 英語表記

マヒドン大学 Mahidol University 42チュラーロンコーン大学 Chulalongkorn University 48 33 ○チェンマイ大学 Chiang Mai University 98タンマサート大学 Thammasat University 107 71ソンクラー ナカリン大学 Prince of Songkla University 146モンクット王工科大学 トンブリ校 King Mongkut's University of Technology,Thonburi 58カセサート大学 Kasetsart University 79インドネシア大学 Universitas Indonesia 64 ○バンドン工科大学 Institut Teknologi Bandung 129 67 ○ガジャ・マダ大学 Gadjah Mada University 133アイルランガ大学 Universitas Airlangga 145ベトナム国家大学ハノイ校 Vietnam National University,Hanoiベトナム国家大学ホーチミン市校 Vietnam National University,Hochimine Cityマラヤ大学 Universiti Malaya 33 47マレーシア国民大学 Universiti kebangsaan Malaysia 57 65マレーシア科学大学 Universiti Sains Malaysia 61 43マレーシア工科大学 Universiti Teknologi Malaysia 68 54マレーシア プトラ大学 Universiti Putra Malaysia 72 60フィリピン国立大学 University of the Philippines 67 ○アテネオ・デ・マニラ大学 Ateneo de Manila University 109サント・トーマス大学 University of Santo Tomas 150インド工科大学 デリー Indian Institute of Technology Delhi 38 13インド工科大学 ボンベイ Indian Institute of Technology Bombay 39 14 ○インド工科大学 マドラス Indian Institute of Technology Madras 49 16 ○インド工科大学 カンプール Indian Institute of Technology Kanpur 51 24インド工科大学 カラグプル Indian Institute of Technology Kharagpur 58 29 ○インド工科大学 ルールキー Indian Institute of Technology Roorkee 66 34 ○デリー大学 University of Delhi 80 80インド工科大学 グワーハーティー Indian Institute of Technology Guwahati 89 59インド理科大学院 Indian Institute of Science 27東京大学 (世界32位) 9 5京都大学 (世界35位) 10 9東北大学 (世界75位) 17 21

備考)「QS World University Rankings」:ロンドンに本社を置く高等教育関連情報会社Quacquarelli Symonds Ltd.が毎年発表。

(参考)

総合部門順位

Engineeringand

Technology部門順位

冶金学科の有無

インド

タイ

インドネシア

マレーシア

大 学 名国 名

フィリピン

ベトナム

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

タイ インドネシア ベトナム マレーシア フィリピン インド

ランクイン大学数

そのうち冶金学科を持つ大学数

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表 2-5-4 アジアランキング ランクイン大学の概要

国 名 大 学 名 所在地 概要・特色等

マヒドン大学Mahidol University (MU)

Bangkok

1888年にシリラート病院に作られたタイで初めての医学学校が前身。1943年にUniversity of Medical Sciencesとして再構成された。学部生1万5500人、院生8300人。

チュラーロンコーン大学Chulalongkorn University

Bagkok

タイ王国において も古い歴史をもつ、権威ある総合大学。18の学部と多数の研究施設がある。学部生2万4851人、院生1万1889人。Tata Steel Thailandに5名、Sahaviriya Steelに1名、G Steel Groupに1名、理工系出身役員あり。

チエンマイ大学Chiang Mai University

Chiang Mai

地方にある大学の中では も有名な大学で、国内屈指の高等教育機関として高い評価を受けている。19 facultyと 1 college がある。学生3万5281人。

タンマサート大学Thammasat University

Bangkok

チュラーロンコーン大学に次ぐ歴史を有する。法学系の大学として設立したが、1980年代以降、国内の経済発展による人材不足から、理系のコースも設置するようになった。学部生+修士課程院生2万5369人、博士課程院生7736人。

プリンス・オブ・ソンクラー大学Prince of Songkla University

Hat Yai,Songkhla

タイ南部に5つのキャンパスをもつ国立の総合大学。国内屈指の規模と水準。学部生2万9000、院生5000人。

モンクット王工科大学 トンブリ校King Mongkut's University ofTechnology,Thonburi

Bangkok

1960年にThonburi Technical Collegeとして発足し、1971年にThonburiTechnical Institute、North Bangkok Technical Instituteと合体した。技術者、技術インストラクター、技術科学者の養成を目的としている。

カセサート大学Kasetsart University

Bang Khen,Bangkok

タイで3番目に古い大学で 初の農業大学だが、現在は医学部以外のほとんどの学部がある国立総合大学。タイ国内でもっとも規模の大きい大学の一つ。学部生4万7000人、院生1万2000人。

インドネシア大学Universitas Indonesia

Depok,West Java

12の学部を持つ総合大学。1954年スラバヤにあった学部はアイルランガ大学になり、1955年にマカッサルにあった学部はハサヌディン大学になり、1959年にバンドンにあった学部はバンドン技術大学に改組された。学生4万7357人。Krakatau Steelに理工系出身役員1名。

バンドン工科大学Institut Teknologi Bandung

Bandung

理工系の国立大学。前身は、1920年設立の「バンドン工業高等学校」。インドネシア初の技術系高等教育機関で、1945年に「インドネシア大学の工学部」としてと組織および名称を変更、1959年に「バンドン工科大学」となった。今日、インドネシアにおける も優れた理工系大学と評価されるようになっている。数学・自然科学部、産業工学(工業技術学部)、土木建築学部、鉱産学部、芸術デザイン学部の5学部がある。学部生1万3403人、院生4057人。Krakatau Steelに理工系出身役員2名。

ガジャ・マダ大学Gadjah Mada University

Yogyakarta

1949年に設置されたインドネシアのジョグジャカルタにある国立大学。18の学部を持つ総合大学。学部生3万638人、院生7600 人。

アイルランガ大学Universitas Airlangga

Surabaya,East Java

インドネシア国立大学のもと分校(医学部と歯科学部のみ)。1954年に5学部(医学、歯学、法学、文学、教育学)で設立された。学部生1万9376人、院生2343人。

ベトナム国家大学ハノイ校Vietnam National University, Hanoi

Hanoi

自然科学大学は、1904年にインドシナ大学として開学、1946年には科学大学として独立したが、1956年にハノイ総合大学の傘下となった。工科大学は2004年にが開設、情報通信技術・オートメーション工学・ナノテクノロジー・バイオテクノロジーの四分野を 優先教育分野としている。外国のパートナー大学の工学資格を取得できる国際教育プログラムを実施すると同時に、大手の団体や企業と提携し、研究者・学生向けの科学会議を開催している。

ベトナム国家大学ホーチミン市校Vietnam National University,Hochimine City

Hochimine

工科大学は、1957年設立のPhu Tho National Center of Technologyが前身。1973年にサイゴン工科大学と改名、南部ベトナムの工学系高等教育の中心となった。1975年にホーチミン市工科大学と改名し、1995年の大学統合でホーチミン市国家大学の傘下に入った。国際的な提携を積極的に進めている。自然科学大学は、1956年にサイゴン大学の理科学部として設置された。学生3万5391人

マラヤ大学Universiti Malaya

Kuala Lumpur

マレーシア随一の 高学府、1905年設立のキングエドワード7世医学カレッジが起源。学部生1万4000人、院生1万1000人。

マレーシア国民大学Universiti kebangsaan Malaysia

Bangi,Selangor

13 well-established faculties, 16 institutes and 18 centres。学部生1万9000人、院生1万3000人。

マレーシア科学大学Universiti Sains Malaysia

Penang

応用科学工学系、教養系、基礎科学系の合わせて23学部を持つ。「科学」「技術」「健康科学(含・医学)」の3つのキャンパスに分かれている。学部生2万人、院生6000人。

マレーシア(次ページ

に続く)

タイ

インドネシア

ベトナム

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国 名 大 学 名 所在地 概要・特色等

マレーシア工科大学Universiti Teknologi Malaysia

Skudai

マレーシアで も古い工学系大学(前身は1904年設立のKuala LumpurTechnical School)。学部生1万5000人、院生6000人。

マレーシア プトラ大学Universiti Putra Malaysia

農業学校として創立。その後さまざまな分野(特に工学分野)を拡充し、現在は16の学部/大学院と9つの研究所から構成される。学部生1万8000人、院生7000人。

フィリピン大学University of the Philippines

ディリマン校はQuezon City

フィリピンでトップの大学。7つの大学で構成され、キャンパスごとに学部が分かれている。工学部が有名なのはディリマン校。学部生4万2000人、院生1万人。

アテネオ・デ・マニラ大学Ateneo de Manila University

Quezon City

フィリピン第2位の大学。イエズス会によって創立されたカトリック系総合大学で、良家の子女が通う大学。学生数7000人。

サント・トーマス大学University of Santo Tomas

Manilaアジアで も古い総合大学で、単一キャンパスでは世界 大のカトリック大学。学部生3万1000人、院生1万1000人。

インド工科大学 デリーIndian Institute of Technology Delhi(IITD)

New Delhi,Delhi

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITDは5番目に設立されたインド工科大学。在籍する学生のほとんどがインド人で、外国人留学生は少数。学部生2900人、院生2700人。

インド工科大学 ボンベイIndian Institute of Technology Bombay(IITB)

Powai, Mumbai,Maharashtra

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITBは小規模に開設されたが、The Institute of Technology Act, 1961(工科大学法-1961)に基づいて設立された4つのインド工科大学の一校に改組された。学部生3000人、院生3100人。米MATERIALS SCI. AND TECHNOLOGY: METALLURGY GROUPとの共著論文あり。NatSteel(Tata)に理工系出身役員1名。

インド工科大学 マドラスIndian Institute of Technology Madras(IITM)

Tamil,Nadu

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITMはインド有数の自然科学系の高等教育機関。3番目のインド工科大学としてドイツの協力により設立された。IITDと較べて国際的に開かれた雰囲気が強い。学部生2900人、院生2500人。TATA STEELとの共著論文あり。Tata Steelに理工系出身役員1名。

インド工科大学 カンプールIndian Institute of Technology Kanpur(IITK)

Kanpur,Uttar Pradesh

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITKは4番目に設立されたインド工科大学。IITで 初にコンピューター学部を設けた。学部生2800人、院生2500人。

インド工科大学 カラグプルIndian Institute of TechnologyKharagpur (IITKGP)

Kharagpur,West Bengal

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITKGPは、インドにおけるMITをめざして 初に設立された。MaterialsScience Center は1970年にガラス、セラミックス、ポリマー、半導体、複合材・物質などの分野の研究を行うとして設立。学部生4500人、院生2500人。TATA STEELとの共著論文あり。Tata Steelに2名、JSPLに1名、理工系出身役員あり。

インド工科大学 ルールキーIndian Institute of Technology Roorkee(IITR)

Roorkee,Uttarakhand,India

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITRは、大英帝国の 初の工科大学として設立。1949年インド 初の工科大学に改組。1963年金属工学科設立。2001年 新のインド工科大学となった。学生4137人。Tata Steelに1名、JSPLに1名、理工系出身役員あり。

デリー大学University of Delhi

Delhi

幅広い分野の学部を持つインド 大の国立大学であり、インド国立大学システムの中核を担う大学。膨大な数のCollegeを傘下の持つため、学生数がきわめて多い。世界各国から主に国費留学生を受け入れている。学部生11万4494人、院生1万7941人。

インド工科大学 グワーハーティーIndian Institute of TechnologyGuwahati (IITG)

Guwahati,Assam

インド工科大学は、工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称。共通の入学試験を実施し、共通の入学手続を有する。IITGは6番目のインド工科大学。学部生2000人、院生1000人。

インド理科大学院Indian Institute of Science

Bangalore,Karnataka

J. N.Tata 氏の首唱とロンドン王立協会の助言により創立された。約40の系・研究センターにおいて2000人以上の研究者たちが先端科学技術研究について活発な研究を行っている。TATA STEELとの共著論文あり。

情報源)各大学ホームページ、大手製鉄会社ホームページ等

インド

マレーシア(続き)

フィリピン

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2.6 国内ヒアリング調査

2.6.1 国内ヒアリング調査概要

(1)ヒアリング日程

日時 訪問先 主なヒアリング項目

2013.12.13(金)

14:00-15:00

2014.1.10(金)

15:00-15:30

(一社)日本鉄鋼連盟 技術協力・人材育成の成功事例及び課題

今後実行可能な技術協力の提案

調査対象国の動向

2014.1.16(木)

11:00-12:00

(一社)日本自動車工業会 調査対象国の市場動向(鉄鋼需要産業の市

場動向の参考ヒアリング)

2014.1.17(金)

10:30-11:30

独立行政法人 国際協力機構 独自の人材育成プログラム

鉄鋼に係る人材育成の実績

2014.1.23(木)

17:00-18:00

三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券

株式会社

POSCO の調査対象国進出の動向

韓国金融市場

2014.1.28(火)

10:00-12:00

共英製鋼株式会社(大阪本社) 技術協力・人材育成の成功事例及び課題

今後実行可能な技術協力の提案

2014.1.29(水)

10:00-11:00

JFE スチール株式会社(東京) 技術協力・人材育成の成功事例及び課題

今後実行可能な技術協力の提案

2014.2.3(水)

14:00-15:00

独立行政法人日本貿易保険

(NEXI)

鉄鋼業に係る貿易保険の実績

2014.2.4(火)

13:30-15:00

丸一鋼管株式会社(大阪本社) 技術協力・人材育成の成功事例及び課題

今後実行可能な技術協力の提案

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(2)ヒアリング内容の要点

①企業の調査対象地域への市場戦略を踏まえた技術協力の実態調査

市場戦略

現行の統一企業法が施行される 2006 年 7 月以前、外資はベトナム国営会社との合併でしか進

出出来なかったので、Vina Kyoei Steel(VKS)社は VNSeel との合弁事業であるが、2012 年には

ベトナム北部の需要を取り込むべくローカルミルを買収し Kyoei Steel Vietnam (KSVC)社を設

立、現在は日本独資で経営している。(共英製鋼)

アジアへの進出の例として、自動車分野では、中国の CGL のほか、タイの CGL が昨年4月の

稼動以降順次量産を開始。インドでは、出資提携先の JSW スチールが新冷延、CGL を立ち上げ

ている。更にインドネシアの新 CGL が 16 年 3 月稼動を目指し昨年末に着工した。また、インフ

ラ分野では、ベトナムのスパイラル鋼管合弁などがある。今後も付加価値の高い分野で技術力に

裏打ちされた高級鋼材の拡販をはかり、インフラ分野も含めて、長期安定的な販売先の確保を進

める計画。(JFE スチール)

技術協力の実態調査

○共英のネジ鉄筋の技術を移転し、VKS で生産、販売している。ネジ鉄筋がベトナム建築で使わ

れる為に、まず共英ネジの規格認証を受ける必要があり、大学や品質の認証機関関係者と様々な

取り組みをした。例えば、ホーチミン工科大学でネジ鉄筋のセミナー、組み立て実演のデモンス

トレーション行った。ODA 案件であるホーチミン地下鉄工事においてベトナムで初めてネジ鉄筋

が採用された。(共英製鋼)

○ベトナムでは建物の構造の柱。鋼構造物に鉄を使うのは始まったばかり。コラムに関するセミ

ナーをハノイとホーチミンで実施した。2011 年にベトナムの建設省と IBST 建築研究所と共催で

実施。これはベトナムに対する協力であり、勉強会、これにより Sunsco の知名度も上げること

が出来た。建築となると、日本は JIS、建築基準法があるが、ベトナムでは規格がない。政府は

建築にからんで規格化するのが必要との自覚持っている。規格作りを手伝っているところ。(丸一

鋼管)

人材育成の実態調査

○JICA の鉄鋼に係る人材育成等に係るプロジェクトの実績として一番大きなものは「ベトナムで

のマスタープラン作成」(H10.3)。また、クリーナープロダクション(Cleaner Production)は日

本に研修生を呼んで研修するプロジェクトで、特定の国ではなくていくつかの国に対して実施し

ている。鉄鋼産業向けについてはアルゼンチンとインドネシアの例がある。品質管理の中で特に

環境に特化した生産システムに日本が長じていること、この分野なら Win-Win の関係が築けるこ

とにより、如何に廃棄物を出さないか、CO2 の削減等をテーマにしている。(JICA)

○VKS の新電炉操業の為、電炉、そのメンテナンス部門となるワーカーとスタッフを中心に 30

人の研修生を延べ 6 ヶ月間、共英の各工場で受け入れ研修させた。その内 1 ヶ月半は、日本語研

修の為、経産省人材育成支援事業の一つである HIDA 制度を利用。

(KSVC で出来るかは難しいかも)。HIDA(旧 ATOS)の適用枠の柔軟等を希望する。(共英製鋼)

○KSVC では優秀な学生を確保する為に、ニンビン省近隣出身のハノイ工科大学の学生をピック

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137

アップしてもらい、ピンポイントで同対象の学生に会社説明会を実施し、その中から更に優秀な

学生を獲得する為に、技術系、事務系それぞれ計 25 名を選抜して、インターンシップによる採用

活動を実施している。研修後その中から計 6 名を採用予定。(共英製鋼)

○共英の工場で 2 年程度、日本語研修と現場実習させて、KSVC に戻すことも検討中。(共英製鋼)

○海外の人の受入に、技能実習制度と出向契約とが有るが、日本の従業員と基本的に同じ給料と

する後者の出向を採用している。(丸一鋼管)

②我が国鉄鋼技術を用いた技術協力に関する支援策に関する調査

本項目に係るヒアリングについては、2.8 節に技術協力等の具体案の提示の中で記載した。

③調査対象国の鉄鋼需要産業の市場については、自動車については以下のようであった。(日本自

動車工業会)

・2012 年に日本の自動車会社(カウンターパートも含む)がアセアンで 3,740 千台生産し、右肩

上がりの状態。アセアン全体から 1,027 千台の輸出あり(輸出先の 36%はアセアン域内で、残り

64%は日本、中東、豪州など向け)。

・2012 年に 3,470 千台の自動車がアセアンで販売されたうち、2,920 千台(84%)は日本の自動車

会社が生産した。販売量は、タイが 1,271 千台でインドネシアは 1,049 千台。

・2012 年の日系メーカーの国内外の生産量をみると、海外生産は 15,825 千台、日本国内 9,943

千台。海外生産の内訳は、アジア 8.503 千台、EU1,484 千台、北米 4,254 千台、南米 1,235 千台、

オセアニア 101 千台、アフリカ 249 千台。

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2.6.2 国内ヒアリング調査詳細

ヒアリング結果(1)

訪問先 :日本鉄鋼連盟

訪問先住所:〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町 3-2-10(鉄鋼会館). 第 6 会議室

訪問日時:2013 年 12 月 13 日(金)14:00-15:00

面会者:国際協力・調査本部海外調査グループリーダー萩生田 茂氏(委員会委員)

(敬称略)国際協力・調査本部国際貿易・協力グループマネージャー 鈴木 卓也氏

(鈴木氏は、マレーシアにおける現地実態調査のため、2 回(6-8 月、10-12 月)長期出張。先

日帰国されたため面談)

訪問者:JFE テクノリサーチ杉田、稲田

訪問目的:海外出張(現地情報収集)および国内ヒアリング調査

(1)東南アジア諸国の各種鉄鋼団体とのネットワーク構築に向け、各団体の体制や人材等の実

態把握を行うため、現地鉄鋼団体(マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール、ベトナ

ム)をヒアリングした。

(2)東南アジア鉄鋼協会(SEAISI、事務局長は Tan Ah Yong 氏)は、人材開発や技術向上等

を通じ、東南アジアにおいて持続可能な鉄鋼業を樹立すべく 1971 年に設立された。当初、常

設委員会組織としては、技術委員会のみが存在したが、1992 年に環境委員会(現、環境・安全

委員会)、1993 年に統計委員会がそれぞれ新設された。

(3)更に、2011 年の SEAISI 理事会にて、ASEAN 鉄鋼連盟(AISIF)注 1との統合が承認され、

SEAISI の活動分野に通商・貿易が加わった。

(4)日本は、SEAISI の設立以来、長期にわたり支援を行ってきたが、東南アジアの鉄鋼業が

同協会を自主的に運営できるまでに成長・発展したとして、09 年末を以て、「SEAISI 加盟国」

から離脱した(但し、離脱後も、個別企業ベースで会員として参画するほか、鉄鋼連盟として

も、統計委員会への参加やセミナーへの講師派遣等、限定的な分野で協力を継続)。

(5)その後、日本の鉄鋼業とアジア諸国との交流強化について検討するにあたり、SEAISI と

の交流促進に向けたコンタクトを開始した(対象は、①通商、②省エネ・環境、③工業標準化

の三分野)。注 2

注 1:アセアン鉄鋼連盟(The ASEAN Iron and Steel Industry Federation (AISIF))はアセ

アン 6 カ国の商工会議所が中心となって 1977 年に設立。SEAISI との統合に伴い、SEAISI の

一組織である「通商関連組織(AISC)」に改組された。

注 2:日本鉄鋼連盟「平成25年度事業計画」によると、①「通商分野においては、通商情報

収集力の強化を図るため」、②「環境分野においては、日本鉄鋼業が進める地球規模での省エネ・

環境保全への貢献の一環として」、③「標準化分野においては、東南アジア各国の活動状況を把

握したうえで、今後の協力支援体制について議論を行う等、(中略)JIS 及び国際標準化について

の交流・連携を進める」ため、東南アジア鉄鋼協会(SEAISI)との交流促進を進めるとある。

以上

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139

国内ヒアリング結果(2)

訪問先: 独立行政法人 国際協力機構

訪問先住所:〒102-8012 東京都千代田区二番町 5-25 二番町センタービル 1 階会議室

訪問日時:2014 年 1 月 17 日(金)10:30-11:30

面会者:産業開発・公共政策部民間セクターグループ 産業・貿易第一課 木村明広様

(敬称略)国際協力専門員(民間セクター開発:投資・貿易・産業振興) 本間 徹様

訪問者:JFE テクノリサーチ杉田、稲田

訪問目的:JICA の鉄鋼に係る人材育成等に係るプロジェクトの実績に関するヒアリング調査

1.JICA と JETRO

・JICA は ODA を実施する機関であり、相手国の開発を助ける。そのやり方としては相手国政府

を通じて、その能力を上げていくとか、人材育成をするとか、制度・政策を作成、改訂するお手伝

いをする。つまり。相手国政府に寄り添って、それを受け止めながら政府の中に入って、日本の

意図を伝える。

・JETRO は日系企業の進出をサポートする。民間セクターの声として取りまとめて陳情等につ

なげる。

・実際は協力し合って実施している。

2.JICA の鉄鋼に係る人材育成等に係るプロジェクトの実績紹介

(1)ベトナムでのマスタープラン作成(これが一番大きなもの)

報告書 ヴィエトナム社会主義共和国鉄鋼産業振興マスタープラン調査 H10.3 新日本製鉄㈱

(2)中国「鉄鋼業環境保全技術向上プロジェクト」

中華人民共和国 鉄鋼業環境保護技術向上プロジェクト終了時評価調査報告書. 2007.4.によれば、

「特に熱効率の悪い鉄鋼業の環境保護の技術移転と同分野の人材育成、国内製鉄所への環境保護

技術の普及を目的として、2002 年 09 月 1 日~2007 年 8 月 31 日で実施されたプロジェクト」

(3)クリーナープロダクション(Cleaner Production)

日本に研修生を呼んで研修するプロジェクトで、特定の国ではなくていくつかの国に対して実

施している。鉄鋼産業向けについてはアルゼンチンとインドネシアの例がある。品質管理の中で

特に環境に特化した生産システムに日本が長じていること、この分野なら Win-Win の関係が築け

ることにより、如何に廃棄物を出さないか、CO2 の削減等をテーマにしている。

相手国での人材の集め方には 2 通りあって、①課題別研修:テーマを設けて広く募集する。②

国別研修:その国の条件に特化して counter part を使う。官の人材を育成することで先生を育て

て民間の人材育成に繋げる考え。

JICA は国内 15 箇所に研修生受入の拠点を有している(あらゆる分野を合わせて年間約 2 万人

受入)が、鉄鋼に関するものは北九州で新日鉄住金他の協力を得て行っているもの等がある。

報告書:JICA 九州事務所「平成 20 年度インドネシア 鉄鋼業におけるクリーナープロダクショ

ン」「平成 22 年度アルゼンチン 製鉄業におけるクリーナープロダクションプロジェクト」

(4)鉄鋼の周辺としての溶接にかかる実績

2008 年 7 月に発効した日インドネシア間の経済連携協定(EPA)において「製造業開発センター

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140

(MIDEC:Initiative for Manufacturing Industry Development Center)イニシアティブ」により

14 分野で製造業向けの協力を行うことを日本とインドネシア政府間で約束した。

経済産業省主導の製造業開発センター(MIDEC:マイデック)の産業協力 14 分野のうち、溶接、

金属加工(鋳造)などに関しては JICA が支援済み、または支援準備中である。

①「溶接技術向上プロジェクト 」協力期間 :2010 年 11 月 01 日 ~ 2012 年 09 月 22 日 実

施。日本溶接協会が行っていたのをインドネシアについては JICA が協力した。溶接協会の真の

目的は日本の溶接の検定、認定・認証制度を広めたいということ。本件は JFE-TEC からもイン

ドネシアに講師を派遣。

②2011 年 11 月に実施された MIDEC ハイレベルミーティングで「建機向け裾野産業を対象とし

た金属加工」に対する支援を要請された。なお、MIDEC には鉄鋼・非鉄金属分野(JICA 担当外)

もある。

3.アフリカとアジアでの方針

JICA のマスタープラン支援策は、アジアではトラディショナルな協力は卒業して、ビジネスと

して伸びている段階のアフリカへ動きつつある。アフリカの市場が日本を助けるとも言う人がい

る。ザンビア、エチオピアでは、産業政策・戦略つくりの支援を実施中。エチオピアでは鉄鋼・

金属加工分野の調査支援を行った。

一方でアジアでは官民一体となって進出していくのはむしろ大きくなっている。JICA では従来

からのインフラ整備とかに加え、日本の中小企業が展開するものの支援も始めている。また投資

環境の整備を行っている。その国のためということが第一義ではあるが、結果的に日本企業が出

て行く環境づくりをお手伝いする。具体的には、相手国行政官を人材育成したり、行政官を育成

して行政障壁バリアを低減する等により日本企業が出やすい環境を整える。

報告書:Basic Metal and Engineering Industries Firm-Level Study Results of parts

conducted by JICA/MPDC 5th High Level Forum on Industrial Development in Ethiopia

4.POSCO インドネシアの邦銀からの資金調達について情報あるか。

全く JICA は関わってなく、現地の新聞情報以上のことは存じていないとの回答だった。

以上

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141

国内ヒアリング結果(3)

訪問先: 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社

訪問先住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング

訪問日時:2014 年 1 月 23 日(木)17:00-18:00

面会者:エクイティリサーチ部エクイティリサーチ課黒坂慶樹シニアアナリスト(敬称略)

訪問者:JFE テクノリサーチ 杉田、吉田、白崎

訪問目的:POSCO についてのヒアリング

1.POSCO のインドネシア、ベトナム、ミャンマー進出についてヒアリングを行った

インドネシア高炉合弁

・厚板生産能力は 150 万t、実際の生産は 110~150 万tになると推定される(報道情報など)。

販売先が確保されたという 60 万t(ひも付き)を除いた 50~90 万t分は、稼働率確保のため、

何とかスポットで売りさばくと予想される。紐が付かないスポットになると価格リスクが発生す

る。また、商社経由の安売りが行われることが一時的にあるが、POSCO の場合、それが恒常化

するリスクがある。

・見通しとしては、資本回収に 40~50 年程度かかると推定される。本プロジェクトがリーマン

ショック前に立てた計画であること、 初は、POSCO が扱いなれたオーストラリア産原料炭を

使い、安いインドネシア産の原料炭切り替えるのは、1、2年後となると予想されることから、

当面は赤字となると予想される。

2.韓国金融市場についてのヒアリング

韓国輸出入銀行が従来はもっぱら社債だったのを邦銀から借り入れた。

・調達の多様化

・借入と社債とをバランスさせている

・第 3 者調達するときに銀行から安定して借りた方がよいという判断では

・邦銀にとっても政府に対して貸しているのと同じとしたらメリットある。

3.POSCO の海外子会社の損益についてのヒアリング

・タイを除いて全て赤字になっているのは韓国から母材を出しているのでロールマージンが取れ

ないから。

・インドの POSCO Maharashtra Steel については、自動車向けで儲かっても良いところだが、

稼動したばかりという事情を考慮する必要がある。

・ステンレス企業については、中国のステンレス過剰能力の影響が当面、大きく改善する見込み

がないので、赤字は継続もしくは悪化の可能性がある。

4.POSCO の輸出と国内市場についてのヒアリング

・輸出比率が下がっている。

・ざっくり、輸出が増えると hot 中心なのでマージンが取れなくなり収益が下がる。

以上

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142

国内ヒアリング結果(4)

訪問先: 共英製鋼株式会社

訪問先住所:〒530-0004 大阪市北区堂島浜 1-4-16 アクア堂島西館 18F

訪問日時:2014 年 1 月 28 日(火)10:00-12:00

面会者:生産企画部担当・生産企画部長兼開発センター長・ベトナム新ミル建設統括本部

(敬称略) 副本部長 平岩治雄取締役・執行役員

海外事業部 岩佐博之次長

訪問者:JFE テクノリサーチ 杉田

訪問目的:調査対象国(アセアン)での成功事例に関するヒアリング調査

1.海外進出企業の成功事例のヒアリング

(1)進出に当たっての考え方

共英製鋼は、需要が縮小する国内事業では再編の基軸カンパニーとなること、電炉及びガス化溶

融炉による医療、産業廃棄物の処理を中心とした環境リサイクル事業を拡張すること、海外事業

を更に伸ばしていくこと、この三つの柱を企業成長戦略として掲げている。

海外事業は、その進出に当たって、次のことを念頭においている。主力の鉄筋棒鋼は、現地生産

し、現地需要家へ販売する地産地消型の製品であり、その販売量がある一定規模あって、拡大が

期待できること、又共英の技術力とマネジメント力が活かせる様、出資形態は独資を理想として、

合弁の場合でも少なくとも経営権が取れるシェアを有することである。進出先は、日系ブランド

が通じる親日国であることが望ましく、現在は今後、インフラ整備が進み、需要拡大が期待出来

る親日アセアン諸国を中心に考えている。

1950 年代から国内の地方ミニミル構想と将来は日本と海外の規模が半々となるような企業体を

イメージし、1963 年の台湾への進出以降、韓国、フィリピン等への技術指導を継続し、1973 年

米国、1974 年インドネシア、1975 年にはナイジェリアに進出した。ベトナムとの関わりは 1975

年のローカルミルへの圧延設備の導入と技術指導が始まりで、外資開放間もない 1994 年に現在

の Vina Kyoei Steel(VKS)社を設立した。現行の統一企業法が施行される 2006 年 7 月以前、外資

はベトナム国営会社との合併でしか進出出来なかったので、VKS は VNSeel との合弁事業である

が、2012 年にはベトナム北部の需要を取り込むべくローカルミルを買収し Kyoei Steel

Vietnam(KSVC)社を設立、現在は日本独資で経営している。

(2)進出各国の工場の状況など

・VKS 社は、設計能力 24 万トン/年の圧延ミルのみでスタートし、順次生産能力を拡大、昨年能

力一杯となる 45 万トン/月まで生産販売した。利益も過去新記録を達成した。2014 年 10 月を稼

動予定として、現在 50 万トン製鋼と新圧延ミルを建設中。

・KSVC 社は、2013 年の販売量は約 20 万トンを達成し(北部ミルで 4 位のシェア)、2014 年は

現行能力一杯の 23 万トン/年を計画している。現行圧延ミルとは 10km 離れた Ninh Binh 省内の

工業団地に製鋼と圧延ミルの建設を計画していたが、需要停滞に鑑み、まず製鋼工場の建設に着

手することを決定し、現在新設備の導入を検討中。新圧延ミルは 1 年程度遅らせる見込み。(完成

後は南北で 150 万トン規模となり、国内の規模と匹敵することとなる。)

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(3)進出各国での成功事例ならびに成功理由

・リスクを取って市場形成の創世期に進出し、信頼出来る品質の製品供給と市場の状況にあった

価格政策などでローカルのディストリビュータ、需要家の信頼を得た。

・同じ値段なら VKS の製品が選好されるマーケットを作った。(その結果、高く売れる。)

・技術者は工場の地元、事務系スタッフはホーチミン中心に優秀な人材を確保した。

・日本語教育、技術者だけではなく事務系スタッフ含めた日本の事業所での研修制度の継続、分

かり易い公平な昇給、昇格制度など、給料だけではない魅力を高めて、VKS で働くことを誇りに

することで、ロイヤリティを高め、企業を支える人材を育てていった。

2.進出国での海外企業との競合状況~特に POSCO との関係など

○VKS とほぼ同じ時期に北部で事業展開していた POSCO が南部に進出し、今年 VKS とほぼ同

時期に 100 万トンの新製鋼/圧延ミルを稼動させる。南部は VNSteel グループと POMINA、VKS

の 3 つ巴から POSCO が参入して、より一層激しい競争が予想される。

○鉄筋はローカルディストリビュータへの店売り販売が主体となるので、板で進出していた

POSCO であるが輸出が主体なので、鉄筋や形鋼を拡販するにはローカルの問屋網を構築するに

は時間を要するものと考えている。

○南北共に懸念しているのは Formosa の動向。条鋼分野には出てこないと聞いているが、一部に

は線材設備を発注したとの情報もあり、国内市場で何を狙っているのか注目している。

3.進出国での技術協力の実態、実績

(1)政府などとの事例

(2)進出国同業他社との事例

(3)自社での実績、成功事例

○共英のネジ鉄筋の技術を移転し、VKS で生産、販売している。ネジ鉄筋がベトナム建築で使わ

れる為に、まず共英ネジの規格認証を受ける必要があり、大学や品質の認証機関関係者と様々な

取り組みをした。例えば、ホーチミン工科大学でネジ鉄筋のセミナー、組み立て実演のデモンス

トレーション行った。ODA 案件であるホーチミン地下鉄工事においてベトナムで初めてネジ鉄筋

が採用された。カプラーのローカル調達が今後のキー。(添付記事参照)

○その他、VKS ではアングル、不等辺平鋼等の生産を共英の技術指導によって、生産開始し、ベ

トナムだけでなくアセアン域内での日本他からの輸入代替となる需要開拓を展開している。

○近年、ベトナムでは加熱誘導炉(induction furnace)を用いて製造したビレット(BT)が多く流通

し、電炉 BT 対比、15~20 ドル安く買えるが、品質が悪く、操業トラブルや製品疵などの問題が

多々発生していた。そこで、本社の技術部隊とタイアップして、使える品質となるまでの操業指

導を行ない、KSVC の安価 BT 購入に寄与するサポートをしている。結果としてベトナムミルの

レベルアップにも寄与している。財務的な優位性を活用して、BT の有利購買に繋がる、囲い込み

戦略を実行中。

○VKS の新電炉操業の為、電炉、そのメンテナンス部門となるワーカーとスタッフを中心に 30

人の研修生を延べ 6 ヶ月間、共英の各工場で受け入れ研修させた。その内 1 ヶ月半は、日本語研

修の為、経産省人材育成支援事業の一つである HIDA 制度を利用させて頂いた。

(KSVC で出来るかは難しいかも)。HIDA(旧 ATOS)の制度拡大を希望する。

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○KSVC では優秀な学生を確保する為に、ニンビン省近隣出身のハノイ工科大学の学生をピック

アップしてもらい、ピンポイントで同対象の学生に会社説明会を実施し、その中から更に優秀な

学生を獲得する為に、技術系、事務系それぞれ計 25 名を選抜して、インターンシップによる採用

活動を実施している。研修後その中から計 6 名を採用予定。

○共英の工場で 2 年程度、日本語研修と現場実習させて、KSVC に戻すことも検討中。

5.今後日本政府あるいは関連団体・機関などに期待すること

6.今後のロードマップ作成内容についてのご意見聴取

(1)今後実施可能な技術協力、人材育成方法など

技術指導で困るのは、コミュニケーション。現場ワーカーでは日本も相手国も英語での会話も難

しい。従って、地道な取り組みになるが、現地の日本語学校、大都市だけでなく周辺地域への日

本語教育機会の拡大の支援をお願いしたい。日本の鉄鋼業に資するという観点で言えば、例えば、

日越英の鉄鋼専門用語の対訳辞典の作成、品質と安全に関する現地語と日本語での資料作成と配

布、大学などへの啓蒙講義の設置などを期待したい。

以上

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145

共英製鋼のベトナム子会社 Vina Kyoei Steel(VKS)で実施した、2011 年当時のネジ鉄筋のデモ

に関する記事

同ネジ鉄筋は、ベトナム国においてそれまで流通、使用されてきた、通常の鉄筋の端だけをネジ

節加工するタイプではなく、アズロールのネジ鉄筋そのものに、カプラーを用いてジョイントす

る、日本で当社グループが使用しているものをベトナム国の当局の認可を受けて、2013 年末初め

て、ベトナム HCMC 地下鉄(ODA 案件)で採用されたもの。

大学、設計会社、建設コンサルタント等への地道な啓蒙活動の積み重ねと並行して、このような

イベントによって、ネジ鉄筋の良さ(アドバンテージ)を PR する機会として開催したもの。

当時デモの概要は下記の通り

1.日時 2011 年 10 月 6 日 8:30-12:30

2.場所 ホーチミン工科大学

3.参加者 ゼネコン、コンサル、ディベロッパー、研究所など80人程度+ホーチミン

工科大学教授と学生 (総勢150人程度)

4.内容 ネジ鉄筋及び継手についてパワーポイントと映像を用いてプレゼンテーション

(説明で使用したパワーポイントは冊子以外に USB にデータを入れて参加者に

お土産として配布)

IBST Dr.Chu よりカプラーの規格とネジ鉄筋の優位性について説明。

子会社共英産業によるデモンストレーション

質疑応答

5.メディア.PR ローカルテレビ2局 ゴールデンタイムのニュースにてセミナーの様子を

放送。ローカル新聞4社明朝新聞でセミナー記事を掲載

ネットニュース各社(参考)

http://www.sggpnews.org.vn/Business/2011/10/97138/

以上

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146

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147

国内ヒアリング結果(5)

訪問先: JFE スチール株式会社

訪問先住所:〒100-0011 東京都千代田区内幸町 2-2-3 日比谷国際ビル

訪問日時:2014 年 1 月 29 日(水)10:00-11:00

訪問者:JFE テクノリサーチ 杉田、稲田

訪問目的:調査対象国(アセアン、インド)への技術協力などの成功事例ヒアリング調査

1.技術協力の実態調査

アセアンにつき、現時点では下工程(CGL)に進出している傾向にある。これは主に自動車メ

ーカーのニーズへの対応である。現地工場への技術協力として、主にエンジニアリングの提供、

ノーハウの提供、現地雇員の育成が行われ、日本と同等な品質水準の達成を目指す。

2.人材育成の実態調査

海外での事業運営は、現地用語のみならず、ローカル知識を駆使できる人材を確保する事が重

要。そのような視点に基づき、しかりとした採用(中途含む)、育成等の中長期計画を持つ事が好

ましい。また、現地・本社間のコミュニケーションも含み、双方が効率的に活動できる体制作り

も重要なファクターである。

3.各国の情報(調査対象国への進出の成功事例、今後実行可能な技術協力事項)

アジアへの進出の例として、自動車分野では、中国のCGLのほか、タイのCGLが昨年4月

の稼動以降順次量産を開始。 インドでは、出資提携先のJSWスチールが新冷延、CGLを立

ち上げている。 更にインドネシアの新CGLが 16 年 3 月稼動を目指し昨年末に着工した。 ま

た、インフラ分野では、ベトナムのスパイラル鋼管合弁などがある。 今後も付加価値の高い分

野で技術力に裏打ちされた高級鋼材の拡販をはかり、インフラ分野も含めて、長期安定的な販売

先の確保を進める計画。

以上

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国内ヒアリング結果(6)

訪問先: 独立行政法人日本貿易保険(Nippon Export and Investment Insurance)

訪問先住所:〒101-8359 東京都千代田区西神田 3-8-1 千代田ファーストビル東館 3 階

訪問日時:2014 年 2 月 3 日(月)14:00-15:00

面会者:営業第二部モニタリング・管理グループ(昨年 10 月に発足)

(敬称略)高橋透グループ長、前田智志主任、池田哲平主任 Tel: 03-3512-7402

訪問者:JFE テクノリサーチ杉田、稲田

訪問目的:NEXI の鉄鋼に係るプロジェクトの実績に関するヒアリング調査

1.NEXI の役割

独立行政法人日本貿易保険(英語表記:Nippon Export and Investment Insurance、略称:

NEXI)は、独立行政法人通則法及び貿易保険法に基づいて、2001 年(平成 13 年)4 月 1 日に設

立された経済産業省所管の独立行政法人。輸出入や海外投融資などの対外取引に伴う危険をてん

補する貿易保険を提供している。年間約 2 兆円、全体で 12 兆円になる。資本金 1,043 億円 、役

職員数 150 人(組織図参照)。訪問先は、営業第二部モニタリング・管理グループで、契約した案件

の管理を行う部署で、後述のベトナム・Vina Kyoei Steel 等鉄鋼案件について担当者にヒアリング

した。営業第二部には他に、石油・天然ガス Gr、電力・鉱物資源第一 Gr、電力・鉱物資源第二

Gr、インフラストラクチャーGr があり、鉄鋼業はインフラストラクチャーGr が所管する。NEXI

は、非公務員型独立行政法人として、リスク分析、貿易実務、国際金融ビジネス等に関する高度

な専門的知見を有する。

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<NEXI のスキーム>

本調査のような「アジア諸国の鉄鋼業進出」案件に適用できる保険は次のようなものがある。

(1)ローン保険(紐付き) バイヤーズクレジット Buyer’s Credit Insurance (B/C)

本邦企業の輸出契約等の決済資金のため、JBIC と市中銀行が協調融資の形態によりバイヤー、

またバイヤーの所在する国の外国銀行に対して資金を貸し付ける契約をいう。つまり、バイヤー

ズクレジットは、本邦銀行が、(輸出先)の輸入業者に貸して、日本製品を輸出する場合の保険。

比率は一般的に JBIC6 割、邦銀 4 割で、邦銀部分を NEXI が保険カバー。

(2)ローン保険(アンタイド:本邦からの輸出に結びつかない貸付金に対する保険(輸出アンタ

イド、いわゆる紐無し)海外事業資金貸付保険(Overseas Untied Loan Insurance)

・本邦からの輸出に結びつかない貸付金に対する保険(輸出アンタイド)

・資金使途は新規プロジェクトに限られる。

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(3)海外投資保険

本保険では、本邦企業が海外で行った投資(出資、権利等の取得)について外国政府による、

収用・権利侵害リスク、政策変更リスク、契約違反リスク、戦争リスク、天災等の不可抗力リス

ク、送金リスクといった非常危険による損失をてん補する。

カントリーリスクに応じて各国をA~Hにカテゴライズ。

海外投資保険の(カテゴリーA~H までのうち)、ベトナムは F ランク

前述組織図の審査部がカントリーレビューなどの各国情報を収集している。

保険を掛けるかどうかは個社の判断による。

2.アジア・インドの鉄鋼に係るプロジェクトの実績紹介

(1)ベトナム Vina Kyoei Steel での保険

ベトナムの製鉄会社である Vietnam Steel Corporation JSC(以下、「VSC」)と、共英製鋼株

式会社、三井物産株式会社、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社による合弁企業「Vina Kyoei Steel」は、ベ

トナム国内において建設用棒鋼材の製造・販売を手がけている。NEXI は、VKS に出資を行う本

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邦企業のうち三井物産株式会社による投融資について、出資に対して海外投資保険を、融資の保

証債務に対して海外事業資金貸付(保証債務)保険を付保している。海外事業資金貸付(保証債

務)保険は前述のスキームとは異なる特殊なケース。通常、公的金融機関及び民間銀行等をレン

ダーにするが、ここでは三井物産になる。

保険内容

(1)海外投資保険

被保険者 三井物産株式会社

保険価額 6.0 百万米ドル

保険責任期間 約 5 年

(2)海外事業資金貸付(保証債務)保険 保険種 海外事業資金貸付(保証債務)保険

被保険者 三井物産株式会社

保険価額 8.3 百万米ドル

保険責任期間 約 8.5 年

(出典:http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/004942.html )

(2)インド「JSW プロジェクト」JFE 商事

(2-1) インド向け冷間圧延設備輸出(貿易代金貸付保険の引受)

インド製鉄会社大手の JSW Steel Limited が行う第二冷間圧延工場を新設するにあたり、JFE

商事(株)からスチールプランテック(株)が製造・供給する連続焼鈍ライン1基及び溶融亜鉛

メッキライン 1 基を購入する案件の融資に対して、貿易代金貸付保険を引受した。

本件は、国際協力銀行及び株式会社みずほコーポレート銀行が融資するもので、NEXI はこのう

ち株式会社みずほコーポレート銀行の融資部分に対して貿易代金貸付保険を適用する。

保険内容

輸出者 JFE 商事

本邦金融機関 株式会社みずほコーポレート銀行

保険種 貿易代金貸付保険

填補範囲・付保率 非常危険 97.5%、信用危険 95%

保険責任期間 6.3 年

(出典:http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/004312.html

(2-2) インド向け冷間圧延設備輸出案件(貿易代金貸付保険の引受)

インドの製鉄会社大手の JSW Steel Ltd.が、同国カルナタカ州のヴィジャヤナガル製鉄所で第

二冷間圧延工場を建設するにあたり、JFE 商事株式会社より連続焼鈍設備及び関連技術サービス

を購入する案件の融資に対して、貿易代金貸付保険を引受した。

本件は、 株式会社みずほコーポレート銀行及び株式会社国際協力銀行(JBIC)がその購入資金を

融資し、NEXI はこのうち株式会社みずほコーポレート銀行の融資部分に対して貿易代金貸付保

険を適用します。

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152

保険内容

輸出者 JFE 商事株式会社

本邦金融機関 株式会社みずほコーポレート銀行

保険種 貿易代金貸付保険

填補範囲・付保率 非常危険 97.5%、信用危険 95%

保険責任期間 6.9 年

(出典:http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/004682.html

3.アジアでの鉄鋼業について認識

アジア(中国も含む)、南米の件数が多く、今後はアフリカだろう。

鉄鋼に関して、 近の例は、2013 年 6 月に、「大和工業株式会社が中東バーレーン国アルヒッ

ド産業地区において行う鉄鋼製品製造・販売会社設立に係る投資に対し、海外投資保険の引受」

案件など。

4.POSCO インドネシアの邦銀からの資金調達について情報あるか。

・民間邦銀が POSCO インドネシア(クラカタル)へ資金提供は、POSCO が債務保証している

ためと推測される。数年前は POSCO 格付けも高く、投資適格と考えて貸付したものではないか

以上

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153

国内ヒアリング結果(7)

訪問先: 丸一鋼管株式会社

訪問先住所:〒550-0014 大阪市西区北堀江 3 丁目 9 番 10 号役員会議室

訪問日時:2014 年 2 月 4 日(火)13:30-15:00

面会者 :鈴木博之代表取締役会長兼 CEO

(敬称略) 執行役員 藤 真治営業部長

執行役員 岡野洋一郎 MP 開発・ISO 室長

訪問者:JFE テクノリサーチ 杉田

訪問目的:調査対象国(アセアン、インド)への技術協力などの成功事例ヒアリング調査

入手資料:SUNSCO Maruichi Sun Steel Joint Stock Company

Maruichi KUMA Steel Tube Private Limited

PT Indonesia Steel Tube Works

1.ベトナム SUNSCO 社

・出資比率去年 8 月から変わっている(72.5%)、条鋼を去年設備止めて廃却した。

・資本参加(2006)してから台湾系がやっていた設備を更新・追加した。標準的なベトナムの会社

がどうなのか分らないが、当社の子会社としてあるべき思い切った増資・設備投資をしてきた。

設備、技術、運転資金、マネジメントも含めて日本から人を相当数出している。

・自前で従業員の教育をやってきた。出資後、日本に合計で30名近く呼んで当社の工場で研修

をやってきた

・H18(2006)-H20 は短期育成で、H20.4 以降オペレーター育成のために長期研修をやった。長い

ので 2 年やった。板、パイプ、圧延、メッキ、カラー鋼板等新しい設備の立ち上げに必要だった。

2.受入に 2 種類の方法がある(丸一では②を採用)

①研修制度(技能実習制度) 外務省が決めている制度で、受入機関が VISA 申請する。1 年目

は語学研修、1 年を過ぎると更に 2 年現場で働ける制度 外国人派遣の 1 種のやり方 派遣機関

が人を集める。 Cheap labor を使うやり方(出稼ぎ)帰ってからは自分で仕事探す要あり。

②出向契約 日本の従業員と基本的に同じ待遇をする差別しない。現地でまず日本語の研修をさ

せて優秀な人を選抜して来させる。自前で教育する。現地に戻れば給料は下がるが step up にな

り定着に繋がる。

○①に関しては日本で勉強した後に帰国して日系企業が現地で再雇用できるネットワークがある

とよい。それがあれば採用するときにそういう人を優先的に採用できる。

○海外の人を日本に受け入れる仕組みを作ってほしい。(例)ベトナムでクレーン操作の資格を持

っていても、日本では使えず、日本での資格を取得する必要がある。短期間のうちにこれを取る

のは難しく、例えばベトナム語で日本の資格を取れる等考慮してほしい。

3.技術協力の成功事例

建物の構造の柱。鋼構造物に鉄を使うのは始まったばかり。コラムに関するセミナーをハノイと

ホーチミンで実施した。需要開拓をする要あり、2011 年にベトナムの建設省と IBST 建築研究所

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154

と共催で実施。これはベトナムに対する協力であり、勉強会、これにより Sunsco の知名度も上

げることが出来た。

建築となると、日本は JIS、建築基準法があるが、ベトナムでは規格がない、安全性が怪しい。

ベトナム政府は建築にからんで規格化するのが必要との自覚持っている。規格作るのを手伝って

くれとの要求あり。規格作りを手伝っている。

○JIS 規格がそのままベトナムで使えるようになれば日本はビジネスがし易くなる。規格を抑え

ること重要。

○ベトナムにはかなりの ODA 資金が付いている。発注先はゼネコンで彼らに日本製品を使う

obligation がない。日系優先で無い。ODA に参加したゼネコンのみが益を得ている。

日本進出企業の製品を使う指導をして欲しい。

以上

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155

建設物における鋼構造に係る技術セミナー 2011 年 11 月 15 日 ハノイ

(Sunsco 社の案内より)

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156

2.7 我が国鉄鋼業における技術協力の実績

人材育成、技術協力に関する実績を、2009 年 1 月~2013 年 9 月の公表資料、および本事業で

実施したヒアリング結果を基づき、政府間レベル、個社・政府間レベル、個社間レベルに分けて

調査し、以下に整理した。

(1)人材育成支援(表 2-7-1)

①日本以外の政府機関・大学レベルでの支援

対象国への海外からの人材育成支援としては、ベトナムにおけるドイツ政府との連携による

ベトナム-ドイツ大学およびハノイ工科大学の設立が顕著な例として挙げられる。

②個社レベルによる政府機関・大学レベルでの支援

日本との連携によるものとしては、新日鉄によるベトナム政府などとの鋼矢板設計施工マニ

ュアルの作成、JFE スチールによる建設用鋼材の共同研究とセミナー、などが実施されている。

③個社間レベルによる支援

上記以外は、ほぼ個社間レベルでの人材支援であり、POSCO による学生への奨学生制

度、従業員を対象とした技術研修(ABB による SAIL4000 人の従業員への自動化技術研修、

Siemens による SAIL への自動化関連設備への技術研修、JFE スチールによる人事交流、

POSCO および Formosa の一貫製鉄所向けの従業員教育など)などである。

(2)技術協力

①日本以外の政府間レベル(表 2-7-2)

日本以外の鉄鋼供給国からの鉄鋼関係では下記のような内容のものが実施されている。

・中国政府の、中国企業のマレーシア進出支援

・インドとブラジルによる鉄鋼・鉱業部門での協力

・インド SAIL と韓国との貿易投資協力

・マレーシアと韓国との産業協力(含む鉄鋼)の MOU 締結(ヒアリング結果)

②日本政府間レベル(表 2-7-3-~表 2-7-6)

日本政府レベルでは、JICAなどの技術協力が実施されているが、鉄鋼製造技術などに関する

ものは少ない。

鉄鋼関係での技術協力では、2007年11月発効した日泰EPAにおいて合意された「日タイ鉄鋼

協力プログラム」に基づき、鉄鋼利用技術や環境・省エネ技術などの分野の技術協力が実施され

ているのが特徴的である。2

またこれ以外には、省エネルギー・環境技術に関するものが多く、至近では地球温暖化対策

(JCM:二国間クレジット制度)に関連して実施されているものが多い。

③官民合同レベル

・政府ならびに民間企業・団体とインド政府

日本とインドとの間で、政府ならびに民間企業(主要鉄鋼メーカー、エンジニアリング企業)・

2 (一社)日本鉄鋼連盟平成 24 年度事業報告書

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鉄鋼連盟合同での、「日印鉄鋼官民協力会合」3が、2011 年 11 月に設立され、以後 2014 年 2 月

までにニューデリー及び東京で 4 回の会合が行われている。

本会合は、インドと日本のエネルギー分野での情報共有を密にし、日本からインドへの省エネ

設備の技術移転を促進することを目的としており、インド鉄鋼業にふさわしい 19 の省エネ技術を

紹介した「技術カスタマイズドリスト」作成などの大きな成果を挙げている。

④日本の協会・団体レベル 2

(一社)日本鉄鋼連盟では、日本の鉄鋼業とアジア諸国との交流強化を図るべく、①通商、②

環境・省エネ、③工業標準化の3分野についてSEAISIとの交流促進に向けたコンタクトを開始

した。なお、これらとは別に、従前から、a)統計委員会への参加、b)巡回セミナーへの講師派

遣、c)研修プログラムの受入れの3事業については協力を継続実施しており、2013年において

は、このうち技術協力に該当するものとして、次の通り実施した。

・巡回セミナーへの講師派遣(2013年3月18~27日)

実施国:タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン

実施テーマ:「製鉄所操業の改善のための問題解決ツール」

・研修プログラムの受入れ(2013年10月21~25日、於日本)

実施テーマ:日本鉄鋼業のトレンド-応用・プロセス・資源・環境・省エネ・リサイ

クルの視点から

主な内容:上記テーマに関する講義ならびに製鉄所等の見学等

⑤個社間レベルなど(表 2-7-2)

個社レベル間では、海外、国内共に、進出先の企業との連携のための協力が中心に実施され

ている。

3 2014 年 2 月 4 日 日刊産業新聞

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表 2-7-1 調査対象国への人材育成支援

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表 2-7-1 調査対象国への人材育成支援(続き)

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表 2-7-2 調査対象国への技術協力

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表 2-7-2 調査対象国への技術協力(続き)

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表 2-7-3 独立行政法人 国際協力機構(JICA)の技術協力事案*

対象国 期限 技術協力事業名称タイ 2011/03 アセアン諸国における温暖化ガス削減に向けた省エネルギー第三国研修

2009/09 省エネルギー普及促進調査2012/03 コベネフィットアプローチ国別研修2009/12 省エネルギー促進マスタープラン調査2012/09 省エネルギー研修センター設立支援プロジェクト(ステージ1)2015/12 省エネルギー研修センター設立支援プロジェクト(ステージ2)

フィリピン 2012/03 省エネルギー計画調査2010/12 省エネルギー技術2014/03 インドにおける低炭素技術の適用促進に関する研究

*:技術協力が過去5年以内に終了・あるいは継続中の事案を対象に整理

インド

ベトナム

インドネシア

表 2-7-4 経済産業省の技術協力事案*

対象国 年度 技術協力事業名称

2011平成23年度経済連携促進のための産業高度化推進事業(タイ鉄鋼技術者技能向上支援事業)

2012平成24年度経済連携促進のための産業高度化推進事業(タイ鉄鋼技術者技能向上支援事業)

インドネシア 2010平成20年度経済連携促進のための産業高度化推進事業,鉄鋼分野におけるインドネシアへの連携協力(DIOS等)事業,実施報告書

2010 インド鉄鋼業コークス炉の省エネ技術普及等推進事業

2011平成23年度地球温暖化対策技術普及等推進事業インドにおけるCDQ等の省エネ設備の普及促進事業報告書

2012平成24年度地球温暖化対策技術普及等推進事業インド鉄鋼業における省エネ技術普及等のための政策提言等検討調査

2013平成25年度地球温暖化対策技術普及等推進事業インド鉄鋼業における省エネ技術普及等のための事業化に向けた計画等検討調査

*:平成22年度以降

タイ

インド

表 2-7-5 NEDO の技術協力事案*

表 2-7-6 日タイ経済連携協定(EPA)鉄鋼協力プログラムに基づく技術協力事業

対象国 年度 技術協力事業名称

2008①鋼構造建設セミナー(来日)、②電気炉環境・省エネ技術交流会(来日)、③蓄熱式バーナー研究調査(来日)、④タイ鉄鋼業消費エネルギー調査の評価

2009

①鋼構造建設セミナー(来日)、②電気炉環境・省エネ技術交流会(来日)、③環境・省エネ技術セミナー及び工場診断(蓄熱式バーナー中心、講師をタイに派遣)、④文献提供、⑤鉄骨造コスト優位性調査の評価報告書、⑥鉄鋼学園産業技術短大教材(42冊)タイ語翻訳権の供与、⑦タイ鉄鋼業のためのTPMセミナー(於バンコク)**注:⑦は経済産業省が実施

2010①鋼構造建設セミナー(来日)、②電気炉環境・省エネ技術交流会(来日)、③小型サイロ関連情報提供、④文献提供、⑤エコタウンに関するJETROバンコクからタイ鉄鋼協会への協力(助言)

2011①鋼構造建設セミナー(来日)、②汚染モニタリングと健康診断のセミナー及び工場見学(来日)、③文献提供、④タイ鉄鋼試験所の改善と標準化セミナー(於バンコク)**注:④は経済産業省が実施

2012①鋼構造建設セミナー(来日)、②二国間オフセット等に係るセミナー及び工場見学(来日)、③文献提供、④タイ鉄鋼試験所の改善と標準化セミナー(於バンコク)**注:④は経済産業省が実施

2013①鋼構造建設セミナー(来日)、②省エネ・環境対策セミナー及び工場見学(来日)、③文献提供、④タイ鉄鋼試験所の改善と標準化セミナー(於バンコク)**注:④は経済産業省が実施

タイ

対象国 年度 技術協力事業名称

2011インド共和国における鉄鋼焼結プロセス 温室効果ガス削減プロジェクトの案件組成調査

2011 インドJSWスチール社製鉄所における省エネルギー・プロジェクトの案件組成調査

2011インド・トルコにおける高炉ガス焚きガスタービン複合発電プロジェクトの案件組成調査

2012 インドJSWスチール社製鉄所における効率的な燃料利用技術案件の組成調査*:平成22年度以降

インド

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2.8 各国における具体的な支援策、求められる人材育成の整理(SWOT 分析)

各国における具体的な支援策、求められる人材育成の整理を行うために、各国別に SWOT 分析

を行った。以下に、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インドの順で示

す。

タイ

(*1) 自家用車を初めて購入した 21 歳以上のタイ人に対し、対象車種の自動車物品税を 大 10

万バーツまで全額還付するというもの。2011 年 9 月 16 日に導入され、2012 年末で還付申請が終

了した。申請台数は約 126 万台だった。この減税措置がなくなることにより、短期的には、反動

で自動車内需が減少することが予想される。

Strength (強み) Weakness (弱み)

・インフラが比較的整備されている

・鉄鋼需要産業とその裾野産業が集積

・生産コスト高

老朽設備多く、生産コストが高い

・条鋼過剰能力

棒鋼メーカー数が増えて過当競争傾向

・高級鋼板の供給能力不足

自動車・家電向けの高級鋼板の生産能力を

国内メーカーが有していない

母材の高品質熱延コイルを地元熱延メーカー

が生産できていない

輸入スラブへの依存度大

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・内需増

インフラ整備計画

自動車メーカー生産能力拡張計画

家電メーカーが輸出拠点として生産能力増

・スラブ生産能力獲得

地元 SSI が 2011 年に英 Teeside 製鉄所買収

によりスラブの自社生産可能に

・低インフレ率、低金利

・安価な輸入品の増

中国製条鋼のほうが国内製より安く、輸入

増加傾向

・政情不安継続

・初マイカー減税による自動車需要の反動(*1)

・労働市場逼迫、賃金上昇

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インドネシア

(*1)これは、日本から見た場合は今後の(懸念)になる可能性有り。

Strength (強み) Weakness (弱み)

・内需大きく、外需による変動の影響小 ・国営 Krakatau Steel の課題

生産コスト高、品質・納期の不安定性、

投資力不足

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・内需増

インフラ整備計画

自動車メーカーの大幅生産能力拡張計画

家電メーカーが内需向け生産能力増

・Krakatau POSCO 合弁高炉一貫製鉄所建設

スラブ、厚板の国内生産増、ならびに

Krakatau の体質への影響(*1)

・安価な輸入品の流入増

中国、ロシアなどからの輸入増

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ベトナム

(*1)ヒアリング結果より:

・ 有力大学としてハノイ工科大学(HUST)に冶金学科があり、他に精錬職業短大と精錬加工短

大の 2 校がある。

・ 学生数は、力仕事であることならびに賃金が相対的に高くないことから、減少傾向。HUST

の卒業生としては 100+20(マスターと PhD)。

・ 2010 年以前は欧州へ留学して冶金を学ぶ人材がいたが、2011 年以降は鉄鋼関係で留学する人

材は出ていない。

・ 新規に進出の外資系企業との人材の取り合いが出てきている。(ベトナム人は地場志向で、他

地域への赴任などは好まない。)

Strength (強み) Weakness (弱み)

・上工程能力不足

・内需は条鋼関係が中心

・条鋼、冷延、表面処理、鋼管では過剰能力

・技術者不足(*1)

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・内需増

インフラ未整備で、整備需要大

家電需要急増

家電メーカーの大型生産拠点新設

・冷延能力は 2009 年以降、一気に増

韓国 POSCO が 120 万トン冷延ミル完成

・外資による高炉一貫製鉄所建設

台湾プラスチックによる建設進行中

・インフレ体質

インフレ率が東南アジアの中では高水準

インフレ→賃金上昇→金融引き締め→インフ

レ率・成長率鈍化→金融緩和→インフレ

の循環が続いている

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マレーシア

(*1) 政府歳出が歳入を大きく上回った状態が長年続いており、2012 年の政府債務残高は GDP

の 55%にまで膨張し、東南アジアで 悪の水準となっている。

※ヒアリング結果からの日本からみた「機会」と「懸念」

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・MSI(Malaysia Steel Institute)設立による、技術

協力および人材育成などへの日本(JISF:(一

社)日本鉄鋼連盟など)からの貢献による日本

の地位・シェア向上

・技術者不足(冶金学科をもつ有力大学なし)

保護政策などによる、海外からの技術協

力・人材育成などに難関

・2013 年からのマレーシア政府の強制規格

(Megasteel 保護政策)導入による日本メーカ

への負担(製鉄所査察)

・POSCO によるコイル拡販戦略

・韓国との二国間産業協力 MOU 締結による、

POSCO などとの連携強化

Strength (強み) Weakness (弱み)

・大手メーカーによる寡占体制確立 ・地元唯一の熱延メーカーMegasteel 保護政策

同社製品の品質・納期・価格に国内ミル不満

・技術者不足(冶金学科をもつ有力大学なし)

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・内需増

インフラ投資計画

自動車メーカーの生産能力拡張計画

家電内需増

・貿易自由化政策推進

保護措置から自由化に移行中のため、輸入

品の脅威増へ

・財政悪化 (*1)

インフラ投資の重しに

・賃金水準上昇

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フィリピン

インド

Strength (強み) Weakness (弱み)

・大部分の設備は旧式のまま

・上工程能力不足

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・底堅い内需

インフラ投資、住宅建設需要

海外出稼ぎ労働者からの送金が堅調

・ASEAN 内外の貿易自由化

ASEAN 内外国からの輸入増へ

積極的保護施策なし

・建設以外の鉄鋼需要牽引産業が不足

Strength (強み) Weakness (弱み)

・大手国営・民営ミルの存在。積極拡大資金力

・低廉、豊富な労働力

・豊富な鉄鉱石

・住民運動による新規立地への抵抗

・行政手続き遅く、拡張・新規立地計画に障害

・インフラ(交通網、電力)不足

・低労働生産性

・借り入れ資金コスト高

Opportunity (機会) Threat (懸念)

・内需増

多額のインフラ投資計画予算

自動車メーカーの大幅生産能力拡張計画

中間所得層の台頭

・鉄鉱石確保が製鉄能力増加計画に追いつか

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2.9 我が国の実行可能な人材育成方策の具体案の提示(ロードマップ含む)

2.9.1 対象国に共通の人材育成方策の具体的な提言(委員会及び国内ヒアリングによる)

(1)各種基準類などの普及整備についての支援対策

①各種統計方法の整備、安全基準・環境基準を日本式にする。またそのやり方を対象国と一緒に

開発する等を行って日本の規格を普及していく。

②対象国における(製品)規格つくりのサポート、例えば JIS を対象国で普及させていく。

③②の方法としては、例えば日本の高付加価値製品の浸透(当該国では使ったことがないケース

が多い)をはかるべく、当該国にまずその有用性を PR すると同時に、その規格についても普及

を図っていく。

④さらに、②の方法としては、国の規格としては政府機関がその所管担当になっている。そこ

で、例えば JIS を対象国で普及させていくためには、担当の政府機関との直接の交流の中で進

めていくことが望ましく、そのために資金協力も含めた ODA を活用する。つまり、ODA によ

る事業で日本製品・日本規格を用いることで、現地業界に日本の製品・規格の理解・普及を図るこ

とが好ましい。

参考までに②の件について日本鉄鋼連盟にヒアリングした結果、以下のことが分った。

2012 年に、鉄鋼連盟として、東南アジア鉄鋼協会(SEAISI)との関係強化を進める検討がなされ、

承認された。この承認された活動には標準化活動が含まれている。

これを踏まえて、日本鉄鋼連盟標準化センター事務局は鉄鋼連盟から交流・支援強化の意志を示

して、東南アジアの友好国として助けになる強い関係を確立できるように、活動を開始させる目

的で SEAISI との打合せを行った。

その後、SEAISI との標準化・規格化に関する連携強化を目的に、SEAISI での技術委員会にお

いて鉄鋼の標準化に関して鉄鋼連盟からプレゼンテーションを行っている。つまり、②について

は既に鉄鋼連盟で活動が進んでいる。

以上のように②については既に鉄鋼連盟で進められている活動に相まって、多方面からのアプ

ローチとして上記③、④を進めていくことが望ましい。

(2)現地でのコミュニケーション能力向上支援対策

①現地での日本語教育充実の方策検討ならびに支援

技術指導で困るのは、コミュニケーション。現場ワーカーでは日本も相手国も英語での会

話も難しい。従って、地道な取り組みになるが、現地の日本語学校、大都市だけでなく周辺

地域への日本語教育機会の拡大の支援をお願いしたい。

②鉄鋼専門用語辞典(多言語での)などの編集・作成

日本の鉄鋼業に資するという観点から、例えば、日越英の鉄鋼専門用語の対訳辞典の作成、

品質と安全に関する現地語と日本語での資料作成と配布、大学などへの啓蒙講義の設置など

を期待したい。

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(3)日本企業雇用へのネットワークつくり支援対策

技能実習制度に基づき来日して日本で研修した後に、帰国して当該国にてうまく日本の進

出企業に雇用できるようなネットワークつくり。

(4)資格取得支援策の検討

対象国で資格(例えばクレーン資格)を既に所有している場合には、日本に来たとき、日

本での資格取得を支援・容易にするなどの規制緩和する仕組みつくり。一例として日本での

実地試験を免除できるとか、資格を行使する場所を限定する等。

2.9.2 対象国の状況に合わせた、人材育成支援方策の具体的な提言 (表 2-9-1)参照

対象国を下記の考えに従って、A~D に分類した。そして、各国の状況に合わせた人材育成支

援方策の具体的な提言を表 2-9-1 に示す。

A. 日本の進出度合いに合わせた人材育成支援 :タイ、ベトナム

B. これからの進出度合いに合わせた人材育成支援 :インドネシア

C. 対象国との連携強化を目指した人材育成支援 :マレーシア、フィリピン

D. 対象国の状況に合わせた人材育成・技術協力支援:インド

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表2-9-1 我が国の実行可能な人材育成支援方策の具体的な提言(含むロードマップ)

国名 2010 

2015 2020 2025 2030 人材育成目標

共通

Aタイ 「2012~2014年度 ・関連団体などとの連携強化タイ鉄鋼技術者技能  鉄鋼関連教育プログラム作成・支援 ・市場のニーズに合致した人材育成向上支援事業」 ・支援(技術者、管理職、周辺技術、

マーケテイング)・日本への研修生・留学生受け入れ

Aベトナム 現地採用人材確保に向けての人材育成支援 ・鉄鋼業界関連の人材確保支援・産官学連携による人材育成支援

大学冶金学科への奨学金制度設立 エンジニア育成支援等 ・国内教育機関の底上げ(特に冶金)・日本の大学(冶金学科など)への

留学生受け入れ

共同研究などによるセミナー実施(規格化、標準化、省エネ・環境)

・産官学連携による人材育成Bインドネシア 鉄鋼関連教育プログラム作成支援 ・市場のニーズに合致した人材育成

支援(技術者)共同研究などによるセミナー実施(規格化、標準化、省エネ・環境) ・国内教育機関の底上げ支援

(特に冶金)

Cマレーシア ・関連団体などとの連携強化・市場のニーズに合致した人材育成

支援(技術者)・国内教育機関の底上げ支援   

・大学での冶金学科設立支援 (冶金学科設立)・共同研究などによるセミナー実施(規格化、標準化、省エネ・環境)

Cフィリピン ・産官学連携による人材育成・国内教育機関の底上げ支援

(特に冶金)

・市場のニーズに合致した技術協力Dインド (技術者・管理職・周辺技術)

・国内教育機関の底上げ支援

共同研究などによるセミナー実施(規格化、標準化、省エネ・環境)

鉄鋼関連教育プログラム作成支援

2011~2013年度日印鉄鋼官民協力会合

(提携先会社との連携による教育プログラム)

日印鉄鋼官民協力会合の継続

日本への研修生、大学への留学生受け入れ

MSIとの連携

鉄鋼関連教育プログラム作成支援

日本の大学(冶金など)への留学生受け入れ

各種基準類などの普及整備、資格取得についての支援策

現地でのコミュニケーション能力向上、雇用ネットワーク作り支援

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