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医療現場における器械・器具の洗浄例
岸和田徳洲会病院 感染対策室 師長
雁野 征子
●はじめに
標準予防策の概念が浸透されてきている、さて自施設での
導入となると容易ではない。今回感染対策の集合教育から、
一次洗浄の処 理を発 生現場で 行うことの廃止に向けての第
一段 階として、従来の当院での一次洗浄の方法を若 干 変 更
して、酵素洗浄剤を使用した洗浄効果を述べる。また、従来の
方法を変えるにあたり洗浄効果の意義を理 解 できることが
重要と考え、集合教育を通して進めていった経過についても
述 べる。
一次処理の際、感染源対策を中心とした考え方から無
駄な消毒剤の使用もあったことが解ってきた。感染症患者に
使用した器具、器材を問わず、非感染症患者においても細
菌やウイルス等、病原性微生物の存在を疑うためでる。当初、
当院においても、これらの観 点 から、一 次処 理 工 程 の際、
消 毒 剤(グルコン酸クロルヘキシジン製 剤 )を優 先的に使用
していた。
●岸和田徳洲会病院での酵素洗浄剤の採用経緯と 使用状況
図1 酵素洗浄剤採用以前の洗浄方法 図2 酵素洗浄剤採用までの経過と準備
混合
浸漬 /ブラッシング洗浄
目視のみで汚れの残留試験は実施していなかった
平成12年5月~7月にかけて90分間 2回、合計180分間、感染管理の基礎講義開催→全看護職員 受講機会を設けて、 意識変革を図った
グルコン酸クロルヘキシジン製剤〔消毒剤〕で洗浄
一次処理工程における酵素洗浄剤の使用
当院では、血液等で汚染された使用済み鋼製器具、再利
用可能なプラスチック類等の医療器具の一次処 理には、細菌
やウイルス等の感染 防止の観点から、グルコン酸クロルヘキ
シジン製 剤を多用していた。また使用法は、これらの器具を
混合下で 洗 浄 する方 法を行っていた(図1)。
平成11年 10月に感 染 対 策の院内 講演会を開催し、医 療
器具の洗 浄方 法 の見 直しを開始した。平 成 1 2 年 1月より3メ
ーカーの製品の試 行を行うと同時に180分間の感染管理基
礎講義を開催し、一次処理工程における洗浄 の重要性を啓
発しながら全 看 護 職員の意 識 変 革を図り、平 成 1 2 年 8月よ
り酵素洗浄剤の採用を開始した。
現 在、一 般 病 棟、ICU、救急病棟を始め、全看護16ユ
ニット中、13ユニットで 使 用している(図2)(図3) 。
血液汚染 鋼製器具 プラスチック類 カップ類
しかし、細菌やウイルスの種類は多様であり、先の消毒剤の
みでこれら全ての細菌やウイルスに完全な殺菌効果を期待
する事は困難である。さらに、それらの存在環境は複数の有
機汚染物質に覆われている事から相乗的に消毒剤の効果は
大きく変動する可能性が 高く、アメリカ疾 病管理予防センター
(CDC)は“消毒の前処理工程”について「院内感染防止のた
めのガイドライン」に明記し、有機物の完全な除去を提言し
ている。
これらの要因を踏まえ、当院では一次処理の工程に関し、
有機物の完全な除去を徹底するため、効果的な酵素洗浄剤
の採用を検討した。
平成11年10月 感染対策の院内講演会開催
平成12年1月から医療器具の洗浄の見直し検討開始
3メーカーの製品の試行開始
平成12年8月 採用
一次処理工程における酵素洗浄剤の使用
●酵素洗浄剤の対象医療器具と使用方法
当院での対象医療器具は使用目的によって消毒・滅菌が
必要な器具を中心に再利用可能な器具としている(図4)。
また消毒・滅菌の必要はないが、洗浄時の飛散を少なくす
るために汚染の激しいガラス製品の吸引ボトルにも直接い
れて蓋部と共に浸漬後すすぎ保管している。
使用法は、各器材毎に浸漬洗浄を中心に行っている。
すなわち、各器材を水洗した後、計量希釈された洗浄液に
約10分浸漬し、その後、水洗~滅菌工程を経て、再生工程
を完了している(図5)(図6)。
図3 医療器具洗浄用 酵素洗浄剤の商品例と用途
図4 酵素洗浄剤での洗浄対象医療器具例
図5 酵素洗浄剤の使用方法(鋼製器具類)
市 販 品
●ENDOZAIME (ルーホフ社製)
●サイデザイム (J&J社製)
●ステリザイム (丸石製薬社製)
●アルベスト (アルボース社製)
●エス・クリーンEM (クリーンケミカル社製)
●ドクター2000 NT-1(コスモテック社製)
●55クリンキーパー (花王社製)
●バイオテクト55 (サクラ精機・花王社製)
洗 浄 用 途
医療器具・器械用洗浄剤
血液汚染器具、
鋼製器具、
内視鏡、
プラスチック類、
術衣、等
水洗
プラスチック類 鋼製器具類 吸引チューブ
水洗
浸 漬
中央材料室へ
吸引チューブ内に付着した“痰”も目視確認で 容易に遊離す
ることが 認 められた( 図7)。使 用 後、酵 素 洗 浄 剤 の 浸 漬
槽の中に入れ、その後すすぎ、硬くなったものを取り除き再
滅 菌して使 用している。当院では、一 般病棟は解放式気管
内吸引法が主である。消 毒 薬 に 浸漬して1 本 のチューブを
頻回に使用する方法をとっていたが、吸引の技術によっては
浸漬用消毒液の質が保たれにくい現状であった。この方法も
再利用であることは変わりない。
シングルユースを再滅菌して利用することは悩ましいことで
ある。しかし、水系の細菌感染の予防のために使用直前まで
乾燥状態で一回の吸引毎にチューブを交換するほうが、質は
保 証されていると考えている。
図7 酵素洗浄剤の使用方法(プラスチック類) 図8 酵素洗浄剤の洗浄力評価方法(従来法)
●酵素洗浄剤の洗浄力評価
洗浄力の評 価は、過 酸 化水素 反応 法(オキシドール=対
血 液 )と色素 染 色法(アミドブラック染 色= 対タンパク質)を
採 用してい た が(図8)、今 回、これらの測 定 法 に 加えて
ATPキット(=対 細 胞 数測 定 )を用いた(図9)。なお、本法
はヒト血液 に 換算し0.001%(10ppm)以下 の濃 度までを
測定することが 可能である。
プラスチック類、鋼製器具に対する洗浄では、一部の洗浄
剤では、ほぼ 測定限界付近まで洗浄できる事が認められた。
しかしながら、多くの酵素洗剤では、若干の汚れが残存し
ていることも認められ( 血液濃度換算0.003%=30ppm )、
製品間の違いによる洗浄力の差が、示唆された(図10)。
ATPキットを検討
血液 残留確認
1. オキシドール注入2. 無発泡を確認
長所:簡易短所:非定量的
タンパク質 残留確認アミドブラック染色
長所:簡易短所:感度低い/ 非定量的
図6 酵素洗浄剤の使用方法(プラスチック類)
水洗 滅菌
吸引チューブ
分解・水洗 浸漬
吸引チューブ
浸 漬
〔タン遊離〕
〔タン付着〕
図9 酵素洗浄剤の洗浄力評価方法
図10 酵素洗浄剤の洗浄力評価方法
一次処理工程における酵素洗浄剤の使用
消毒剤の有用性に期待する反面、乱用による特定細菌の残存
や耐性化の問題も懸念されていた。しかし、「清 潔」を求める
際の基 本 は 除染 から始まり、「洗 浄」はその第一 歩に 位 置
づけなければならない。
現在、各種の感染対策の院内講演会,感染管理基礎講義
を開催し、「洗浄」の重要性を啓発し、意識の改革も進行して
いる。酵素洗浄剤による浸漬洗浄は「清潔」の第一歩としての
礎として位置づけている。
●おわりに
院内での一次洗浄を余儀なくせざるを得ない現状では、酵
素洗浄剤は浸漬用具も簡単なものですみ、洗浄効果も高く、
洗浄剤としての適用用途が広く試用した製品の中では最も適
していた。
浸漬洗浄は飛散による職員の汚染暴露の機会を少なくし
洗浄工程の簡略化にもなっている。
従来、当院では、一次処理の際、感染防止の観点から、消毒
剤(グルコン酸クロルヘキシジン製剤)を優先的に使用しており、
血液濃度(ppm)=〔RLU値 +19.889/64411.411〕×10000
1.血液2. 細胞の混在する浸出液(物)3.細菌
微量:細胞数 測定器 洗浄力評価へ応用
原理:細胞内ATP量を光で測定
濃度 測定可能な“汚れ”検査線