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[ 貨物 ] 2016年4月22日 MSI Marine News 海上保険の総合情報サイト もぜひ、ご閲覧ください。(http://www.ms-ins.com/marine_navi/) 海上人命安全条約(SOLAS 条約)改正に伴う、国土交通省による 「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン」について 2016 年 4 月 1 日に「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン」(以下「国交省ガイ ドライン」といいます。)が国土交通省から発表されました。国交省ガイドラインは、「海上にお ける人命の安全のための国際条約」(以下「SOLAS 条約」といいます。) (注) の改正に伴い、4 月下旬公 布予定の「輸出コンテナの総重量の確定方法に関するルールを定める告示」(以下「国交省告示」と いいます。)の運用要領および事務手続きを示すものです。本稿では、荷主および貨物利用運送事業 者(フォワーダー)への影響を中心に、国交省ガイドラインの概要をご紹介します。 なお、執筆時現在、国交省ガイドラインは暫定版の位置づけですが、国交省告示の公布と同時に確 定版となる予定です。 (注)海上や港湾における安全確保等を目的とした多国間条約で、現在 160か国以上が批准しています。 1.国交省ガイドラインの概要 (1)策定の背景 SOLAS 条約では、これまでもコンテナ重量情報を海上運送人に提出することを荷送人に義務づけ ていましたが、重量情報の誤申告に起因すると推定されるコンテナ荷崩れ等の事故が散見されて います。このため、荷送人から海上運送人に提供されるコンテナ重量情報の正確性を期すべく、 コンテナ重量の具体的な計測方法をルール化する条約改正が行われ、2016 年 7 月1日に発効する こととなりました。SOLAS 条約を批准している日本では、条約改正内容を取り入れたルールを導 入するため、4 月下旬に国交省告示が公布される予定です。公布に先立ち、国交省告示が定める ルールの運用要領および事務手続きに関する国交省ガイドライン(暫定版)が発表されました。 (2)国交省告示で新たにルール化される事項 ①コンテナ重量情報の確定方法 荷送人は以下のいずれかの方法でコンテナ重量情報を計測・確定し、海上運送人に提供しなけ ればなりません(詳細は後記「2.コンテナ重量情報の確定方法」をご参照ください。)。 ア.方法 1・・・貨物の入ったコンテナの総重量を計測する方法 イ.方法 2・・・個々の貨物、梱包材等を計測し、空のコンテナ重量と合算して確定する方法 ②国土交通大臣への届出または登録 コンテナ重量情報の計測・確定を行う者(荷送人または検量事業者等) (注) は、届出または登録を しなければなりません。 ア.届出・・・自らコンテナ重量の計測・確定を行う荷送人の場合 イ.登録・・・荷送人から委託を受け、コンテナ重量の計測・確定を行う事業者の場合 (注)ISO9001 取得者または AEO 輸出者は申請手続きの簡素化が認められます(詳細は別紙をご参照ください。)。 (3)コンテナ総重量の確定に責任を負う者 ①荷送人 荷送人とは、実海上運送人との間で運送契約を締結し、船荷証券(Master B/L)または海上貨物 運送状(Master Sea Waybill)の荷送人(Shipper)欄に名前のある者をいいます。 ②運送人渡し(FCA)条件等による輸出の場合の取扱い FCA 条件等による輸出のため、売買契約上の荷受人(Consignee)が Master B/L 等の荷送人とな る場合、当該荷受人との契約または指示に基づき貨物を輸出する者(日本国内の個人または法 人であって実際に貨物を輸出する実荷主またはフォワーダー等)を荷送人とみなします。 ③商社またはフォワーダーを通じて貨物を輸出する実荷主等の取扱い 実荷主、製造者、生産者等の貨物の重量情報を有する関係者で、実海上運送人との間で運送契 約を締結しない者は荷送人には該当しません(=フォワーダーが、契約運送人となり船荷証券 (House B/L)等を発行する場合は、フォワーダーが荷送人となります。)。ただし、これらの者 はコンテナ総重量の確定に責任を負う荷送人である商社またはフォワーダー等に対して、パッ キングリスト等の船積関連書類により確実に貨物の重量情報を伝達することが求められます。 トピックス

年 月 日 MSI Marine News - 三井住友海上 ととなりました。SOLAS 条約を批准している日本では、条約改正内容を取り入れたルールを導 入するため、4

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[ 貨物 ] 2016年 4月 22日

MSI Marine News ● 海上保険の総合情報サイト もぜひ、ご閲覧ください。(http://www.ms-ins.com/marine_navi/)

海上人命安全条約(SOLAS 条約)改正に伴う、国土交通省による

「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン」について

2016年 4月 1日に「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン」(以下「国交省ガイ

ドライン」といいます。)が国土交通省から発表されました。国交省ガイドラインは、「海上にお

ける人命の安全のための国際条約」(以下「SOLAS条約」といいます。)(注)の改正に伴い、4月下旬公

布予定の「輸出コンテナの総重量の確定方法に関するルールを定める告示」(以下「国交省告示」と

いいます。)の運用要領および事務手続きを示すものです。本稿では、荷主および貨物利用運送事業

者(フォワーダー)への影響を中心に、国交省ガイドラインの概要をご紹介します。

なお、執筆時現在、国交省ガイドラインは暫定版の位置づけですが、国交省告示の公布と同時に確

定版となる予定です。 (注)海上や港湾における安全確保等を目的とした多国間条約で、現在 160か国以上が批准しています。

1.国交省ガイドラインの概要 (1)策定の背景

SOLAS 条約では、これまでもコンテナ重量情報を海上運送人に提出することを荷送人に義務づけ

ていましたが、重量情報の誤申告に起因すると推定されるコンテナ荷崩れ等の事故が散見されて

います。このため、荷送人から海上運送人に提供されるコンテナ重量情報の正確性を期すべく、

コンテナ重量の具体的な計測方法をルール化する条約改正が行われ、2016年 7月1日に発効する

こととなりました。SOLAS 条約を批准している日本では、条約改正内容を取り入れたルールを導

入するため、4 月下旬に国交省告示が公布される予定です。公布に先立ち、国交省告示が定める

ルールの運用要領および事務手続きに関する国交省ガイドライン(暫定版)が発表されました。

(2)国交省告示で新たにルール化される事項

①コンテナ重量情報の確定方法

荷送人は以下のいずれかの方法でコンテナ重量情報を計測・確定し、海上運送人に提供しなけ

ればなりません(詳細は後記「2.コンテナ重量情報の確定方法」をご参照ください。)。

ア.方法 1・・・貨物の入ったコンテナの総重量を計測する方法

イ.方法 2・・・個々の貨物、梱包材等を計測し、空のコンテナ重量と合算して確定する方法

②国土交通大臣への届出または登録

コンテナ重量情報の計測・確定を行う者(荷送人または検量事業者等)(注)は、届出または登録を

しなければなりません。

ア.届出・・・自らコンテナ重量の計測・確定を行う荷送人の場合

イ.登録・・・荷送人から委託を受け、コンテナ重量の計測・確定を行う事業者の場合 (注)ISO9001取得者または AEO輸出者は申請手続きの簡素化が認められます(詳細は別紙をご参照ください。)。

(3)コンテナ総重量の確定に責任を負う者

①荷送人

荷送人とは、実海上運送人との間で運送契約を締結し、船荷証券(Master B/L)または海上貨物

運送状(Master Sea Waybill)の荷送人(Shipper)欄に名前のある者をいいます。

②運送人渡し(FCA)条件等による輸出の場合の取扱い

FCA条件等による輸出のため、売買契約上の荷受人(Consignee)が Master B/L等の荷送人とな

る場合、当該荷受人との契約または指示に基づき貨物を輸出する者(日本国内の個人または法

人であって実際に貨物を輸出する実荷主またはフォワーダー等)を荷送人とみなします。

③商社またはフォワーダーを通じて貨物を輸出する実荷主等の取扱い

実荷主、製造者、生産者等の貨物の重量情報を有する関係者で、実海上運送人との間で運送契

約を締結しない者は荷送人には該当しません(=フォワーダーが、契約運送人となり船荷証券

(House B/L)等を発行する場合は、フォワーダーが荷送人となります。)。ただし、これらの者

はコンテナ総重量の確定に責任を負う荷送人である商社またはフォワーダー等に対して、パッ

キングリスト等の船積関連書類により確実に貨物の重量情報を伝達することが求められます。

トピックス

2.コンテナ重量情報の確定方法 方法 1・・・貨物の入ったコンテナの総重量を計測する方法

方法 2・・・個々の貨物、梱包材等を計測し、空のコンテナ重量と合算して確定する方法

出典:国土交通省「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン(仮)」

3.国交省ガイドラインの関係者と求められる対応

関係者 国交省ガイドラインにより求められる対応

(1)荷送人 ・コンテナ総重量に責任を負う。

・定められた方法によりコンテナ重量情報を確定することが求め

られ、自ら行う場合は国土交通大臣への届出が必要。

(2)FCA 条件等により

貨物を輸出する荷

主、フォワーダー

・コンテナ総重量に責任を負う(注)。 (注)本邦外の荷受人(日本国内に事務所を有する者を除く)が船社と運送契約を締結す

る運送人渡し(FCA)条件等であって、当該荷受人が Master B/Lの荷送人となる場合に

おいて、当該荷受人との契約または指示に基づきコンテナで貨物を輸出する場合。

・定められた方法によりコンテナ重量情報を確定することが求め

られ、自ら行う場合は国土交通大臣への届出が必要。

(3)荷送人とならない

実荷主、製造者、

生産者等

・実荷主、製造者、生産者等の貨物の重量情報を有する関係者は、

コンテナ総重量を確定させる責任を負う届出荷送人または荷送

人に代わりコンテナ総重量を確定する第三者に、船積関連書類

(パッキングリスト等)により貨物の重量情報を確実に伝達しな

ければならない。

(4)荷送人から委託を

受け、事業として

コンテナ重量情報

の確定を行う者

(以下「登録確定事

業者」)

・国土交通大臣の登録を受けなければならない(注)。 (注)従前よりコンテナ重量情報の確定を行っている以下の者についても、国土交通大臣

の登録を受けなければならない。

①港湾運送事業法によるコンテナ貨物の検量事業を行う者として国土交通大臣に許

可された者

②港湾運送事業法による一般港湾運送事業者の内、海貨事業を行うことができる者

として国土交通大臣に許可された者

③荷送人等との契約に基づき重量を確定する貨物利用運送事業法による貨物利用運

送事業を行う者として国土交通大臣の登録を受けた者または許可された者

(5)船社、コンテナヤ

ード責任者

・コンテナ総重量が確定されたものであることを確認するまでは、

当該コンテナを船積みしてはならない。

・コンテナに取り付けられた安全承認板の最大総重量を超える総

重量のコンテナを船積みしてはならない。

4.違反が発見された場合の取扱い 船舶航行上の危険防止のため、届出荷送人および登録確定事業者の重量確定の実施状況に関

する監査が国土交通省により実施されます。当該監査で不備が発見された場合、業務の改善、

是正または停止等の措置が行われることがあります。

対応 内容

(1)改善の要求 コンテナ総重量の確定が業務実施手順書に従って行われている

が、単純な人為的な誤りや、職員の教育・訓練等による業務の改

善が必要と考えられる事項を発見した場合は、被監査者に改善を

要求する。

(2)是正の要求 監査において、業務実施手順書の不備や、定められた業務の実施

手順がコンテナ総重量の確定に関する違反を引き起こす恐れがあ

ることが明確であり、業務実施手順書の変更等が必要なものを発

見した場合は、被監査者に是正を要求する。

是正を要求された被監査者は、是正し、監査員に是正が完了した

ことを報告し、確認を受けなければならない。

是正内容が不十分である場合または報告されない場合には、船舶

航行上の危険防止のため、国土交通大臣は是正のための指導とし

て必要な措置をとることができる。

(3)是正のための指導 国土交通大臣は、登録確定事業者にコンテナ総重量の確定に関す

る違反が見つかった場合には、是正のための指導を行う。

(4)届出の効力停止

もしくは

登録の取り消し

届出荷送人もしくは登録確定事業者に是正のための指導を行った

場合であって、指導を受けた者がそれに応じない場合、以下の対

応がとられる。

①届出荷送人

期間を定めてコンテナ総重量を確定しようとする業務の全部また

は一部の停止を命令することができる。

②登録確定事業者

登録の取消し、または期間を定めてコンテナ総重量を確定しよう

とする業務の全部または一部の停止を命令することができる(不

正な手段により登録および変更登録を受けた場合も同様。)。

<参考文献一覧>

国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk8_000011.html

国土交通省「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン(仮)」 以 上