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suzuhiro2010
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さいたま市における百日咳の流行(2010)
2010.5月~8月 さいたま市大宮区において
百日咳の流行を認めました。
その概要を報告します。
男性 31例 女性34例
内 MR2名 MS1名 CRC 2名
放射線技師1名 保育士 1名がおりました。
☆医療関係者は百日咳感染予防に関心を持つ必要があります。
百日咳の症例 30歳代女性
H22.6.初旬頃から、むせるような咳が出現し、
持続していました。体力の消耗もありました。
H22.6.下旬 当院受診。症状より、
百日咳を疑い、クラリス400mg 2Xにて、
14日間投与しました。
これにより、症状は消退しました。
東浜株320倍、山口株80倍陽性でした。
百日咳患者数の推移
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
男
女
☆ 当クリニックの月あたりの受診者総数は6月から8月まで、ほぼ同数で推移しました。百日咳患者が急増したことがわかります。
2010
0
2
4
6
8
10
12
10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代
男性
女性
百日咳患者 性別と年齢分布
☆ 男女ともは、20代から40代が多い傾向が認められました。
大宮区
見沼区
中央区
浦和区
その他の区
さいたま市外
の市
東京都
患者の居住地
☆ クリニックのある大宮区居住者が大半でした。
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
0 10 20 30 40
発病から当院受診までの期間(日)
日数
人数(
名)
☆流行期には、咳の持続が1週間未満でも百日咳を疑う必要があります。
0
2
4
6
8
10
12
14
16
東浜株
山口株
0
2
4
6
8
10
12
14
16
東浜株or山口株
東浜o山口株
抗体価
☆ 10倍以上が陽性ですが、シングル血清では、40倍以上が診断的価値が高いとされています。
☆総じて東浜株の方が、抗体価が高い
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
0 5 10 15 20 25 30 35
抗体価
受診するまでの症状持続期間(日)
抗体価(倍) 受診までの期間と抗体価
☆受診するまでの症状持続期間(日数)と抗体価には、有意な相関はみられませんでした。
成人の百日咳 診断
診断 長引く咳(7日以上)、咽頭痛等の上気道炎症状がある。息を吸い込むときの高音は通常は伴わない。
百日咳抗体価(細菌凝集法)
シングル血清(10歳以上)で40倍以上だと診断価値が高い。
ペア血清で、4倍以上の抗体価の上昇
百日咳抗体価(ELISA法)
ワクチン未接種者で、10EU/mL以上
百日咳菌の分離・同定が行われることもあるが
分離率が低い。
さいたま市感染症情報センター
☆ 発生の定点報告を行う医療機関は小児科です。成人例の報告は、すっぽり抜けています。
2010
感染症法における百日咳の取り扱い(2003年11月施行の感染症法改
正に伴い更新)
百日咳は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約3,000カ
所の小児科定点から毎週報告がなされている。
報告のための基準
○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、
かつ、以下の2 つの基準を全て満たすもの
1. 2 週間以上持続する咳嗽
2. 以下のいずれかの要件のうち少なくとも一つを満たすもの
・スタッカートやレプリーゼを伴う咳嗽発作
・新生児や乳児で、他に明らかな原因がない咳嗽後の嘔吐または
無呼吸発作
○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、
症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診
断によって当該疾患と診断されたもの
☆ 成人例には、この基準はあまり参考になりません。
百日咳が疑われるときの対応(当院)
百日咳抗体価を測定する。
クラリス400mg 2x 7日間投与
1週間後 再受診
症状と抗体価を確認して、クラリスをさらに
7日間投与する。
☆ クラリスの副作用は、ほとんどありませんでした。1名・下痢がありました。
☆IASRのサイトからの引用です。
百日咳に対するワクチン
第Ⅰ期初回接種 (日本の現行制度)
生後3か月~12か月にて三種混合ワクチン(DTaP)を3回接種。
第Ⅰ期初回接種を終了後、12-18か月後に第Ⅰ期追加接種として、三種混合ワクチン(DTaP)を1回接種する。(☆これだけです)
百日咳ワクチンによる免疫防御効果の持続は5~10年程度です。
成人では、ワクチンの効果は0になっています。
アメリカ合衆国では、思春期~成人における百日咳対策として、百日咳を含んだワクチンの追加接種が実施されています。
☆ 我が国でも、思春期以降の方に百日咳ワクチンを
接種することが早急に望まれます!
結論
1. 2010.6-8月 さいたま市大宮区において
成人に百日咳の流行が観察されました。
2. 流行期には、積極的に、百日咳抗体価を測定する必要があります。
3. マクロライド系の抗生物質を10-14日間服用する必要があります。
4. 小児科の定点観測(現行)では、成人の流行は、とらえることができません。
5. 思春期以降に対する百日咳ワクチンの接種が望まれます。