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PRESS RELEASE このたび MAKI Gallery では、田村琢郎の 弊社で初めてとなる個展「5W<1H」を開催 いたします。ペインティングと立体作品か ら構成される 50 点を超える新作を、表参道 ギャラリーにてご紹介いたします。 5W1H とは一般的に、W を頭文字とする 5 つの英単語である Who(だれが)、When (いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、 Why(なぜ)、そして How(どのように) を指し示す言葉で、あらゆる状況下で問わ れるベーシックかつ根本的な要素です。中 でも田村にとっては取り分け “How(どのよ うに)” が重要であり、この考えは彼の作品 制作へのアプローチにも結び付いています。 本展では “ 作品にどのように付加価値が与 えられるのか? ” という問いから生まれた 田村の新シリーズである「Sold Paintingを初披露します。展覧会やアートフェア で、売約された作品に付けられる赤いステッ カーは、恐らく最も単純明快な価値の指標 です。会場で複数の赤いステッカーが貼ら れている様子を見た人は誰でも、作家とそ の作品は大変価値があるに違いないと早々 に信じ込むでしょう。この現象に惹きつけ られた田村は、赤いステッカーが貼られた キャプション自体が、作品そのものよりも印象的なのではないかと考えます。田村は、架空の作家名と作品タ イトルを特徴としたキャプションから成るグリッドによってこの概念を追求し、鑑賞者にアート作品とその価 値を評価する方法について改めて思索することを促しています。 この新作に加えて田村は、今年の初めに MAKI Gallery 天王洲 I で開催したグループ展で発表した 2 つのシ リーズ、アスファルトペインティングと「Lovers」の更なる発展を提示しています。彼の「Lovers」シリーズは、 カーブミラーを構造的に組み替え、擬人化されたような佇まいを見せています。この鏡の彫刻は前回の展示で は自立していましたが、今回壁面へと移行し、ひとり物欲しそうな孤独な鏡は憧れを抱きながら恋人たちを見 つめています。 田村琢郎 作家名 5W<1H 展覧会名 2021109日(土)-1110日(水) 会期 MAKI Gallery / 表参道, 東京 会場 田村琢郎 5W<1H Takuro Tamura, Asphalt and Bouquet of Flowers in an Earthenware Vase, 2021, asphalt, MDF, UV print, FRP, thermoplastic road marking tape, aluminum frame, 182.8 x 123.7 x 3.0 cm

PR Takuro Tamura 5W

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Page 1: PR Takuro Tamura 5W

PRESS RELEASE

このたびMAKI Galleryでは、田村琢郎の弊社で初めてとなる個展「5W<1H」を開催いたします。ペインティングと立体作品から構成される 50点を超える新作を、表参道ギャラリーにてご紹介いたします。

5W1Hとは一般的に、Wを頭文字とする5つの英単語であるWho(だれが)、When

(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、そして How(どのように)を指し示す言葉で、あらゆる状況下で問われるベーシックかつ根本的な要素です。中でも田村にとっては取り分け “How(どのように)”が重要であり、この考えは彼の作品制作へのアプローチにも結び付いています。

本展では“作品にどのように付加価値が与えられるのか? ” という問いから生まれた田村の新シリーズである「Sold Painting」を初披露します。展覧会やアートフェアで、売約された作品に付けられる赤いステッカーは、恐らく最も単純明快な価値の指標です。会場で複数の赤いステッカーが貼られている様子を見た人は誰でも、作家とその作品は大変価値があるに違いないと早々に信じ込むでしょう。この現象に惹きつけられた田村は、赤いステッカーが貼られた

キャプション自体が、作品そのものよりも印象的なのではないかと考えます。田村は、架空の作家名と作品タイトルを特徴としたキャプションから成るグリッドによってこの概念を追求し、鑑賞者にアート作品とその価値を評価する方法について改めて思索することを促しています。

この新作に加えて田村は、今年の初めにMAKI Gallery 天王洲 Iで開催したグループ展で発表した 2つのシリーズ、アスファルトペインティングと「Lovers」の更なる発展を提示しています。彼の「Lovers」シリーズは、カーブミラーを構造的に組み替え、擬人化されたような佇まいを見せています。この鏡の彫刻は前回の展示では自立していましたが、今回壁面へと移行し、ひとり物欲しそうな孤独な鏡は憧れを抱きながら恋人たちを見つめています。

田村琢郎作家名

5W<1H展覧会名

2021年10月9日(土)-11月10日(水)会期

MAKI Gallery / 表参道, 東京会場

田村琢郎5W<1H

Takuro Tamura, Asphalt and Bouquet of Flowers in an Earthenware Vase, 2021, asphalt, MDF, UV print,

FRP, thermoplastic road marking tape, aluminum frame, 182.8 x 123.7 x 3.0 cm

Page 2: PR Takuro Tamura 5W

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道路標示を含む鋪装の一部を再現した田村のアスファルトペインティングは “私たちのインフラに不可欠であり、世界規模で広く認知されている道路をどのようにして芸術作品にできるか? ”という問いを投げかけています。各作品のタイトルにある座標が示すように作家自身が訪れた場所の道路を、実際に舗装で使われる材料を用いてすべての標示や擦り傷までも再現しています。また、田村はアスファルトを使用し続けていく中で、地面のその下について考えるようになりました。“もし道路が舗装されていなかったら、どんなに多くの植物が育っていただろうか? ”作家は 100年以上も前に作られたパブリックドメインの花の静物画や風景画を取り入れ始め、上からアスファルトを重ねました。そして自然による繫栄の可能性をさらけ出そうと、アスファルトを部分的に削り取っています。これら作品で田村は、俯瞰で見た道路と正面から見た風景という二つの視点を一つの絵画に組み込もうと試みています。「Street Flower Pot」シリーズでは、アスファルトのベッドから成長する造花を、落書きで埋め尽くされたプランターが支えている様子を表現し、アスファルトと自然の関係、そして持続性が時にどういった成果を収めるのかを探求しています。かつて田村はアスファルトに覆われているにもかかわらず、道路の小さな隙間から成長を続ける植物に驚かされました。同様に、落書きが路上で永続的に存在し、根絶させるための惜しみない努力に反しては粘り強く再び現れ、増殖していく様子を田村は観察しました。本作品を通して田村は、鑑賞者にこのような日常にある執拗や忍耐への気付きと祝福を促しています。

“How(どのように)”へと絶え間なく焦点を当てることで、田村はクリティカルな視点で自身の存在を考察し、結果として鑑賞者に周囲をよりよく見つめるよう働きかけています。“集団意識をどのように捉え、今の時代の価値観を作品へ組み込むことができるのか? ”田村の芸術実践はこのような問いに突き動かされ、この問題にかかわる田村独自の観察と解釈の領域を継続して広げています。ぜひこの機会に田村作品の過去最大級となるプレゼンテーションを会場にてお楽しみください。

田村琢郎は1989年大阪生まれ。2016年に京都芸術大学(旧、京都造形芸術大学)を卒業したのち、名和晃平率いるアーティスト集団SANDWICHでアシスタントをしながら制作を続けていました。バンクシーと名和晃平に影響を受けたという田村は、物事を俯瞰して捉え、もともとあった文脈から切り離して提示します。そうすることで物の在り方を見直し、そこに強いメッセージを加えていきます。たとえば「Lovers」のシリーズで作家は、カーブミラーをからませるというたったそれだけで、離れがたい恋人たちとして擬人化しています。田村は、それらを交差点という見慣れた場所(文脈)から切り離し、新たな存在意義を与えます。ミラーには相手のミラーが入れ子のように映り込み、カーブミラーは本来の役割である ‘死角からの危険を映すこと’ を完全に放棄しています。観る者はミラー部分がまるで顔として感じられる不思議さ、面白さを感じるのではないでしょうか。実はカーブミラーが交差点に存在していたときにも、すでに擬人的要素を内包していたことを田村は見抜き、作品として昇華させたのです。このように場所を置き替えたり、別の要素を取り込んだりすることで文脈の差し替えを行い、そこで見えてくる新しい意味、隠されてい

田村琢郎

Page 3: PR Takuro Tamura 5W

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*本企画に関するお問い合わせは下記までお願い致します。

〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前4-11-11 | tel: 03 6434 7705 | fax: 03 6434 7706www.MAKIGallery.com | [email protected]

MAKI Gallery / 表参道, 東京

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-11-11

Te l:03-6434-7705

Fax:03-6434-7706

E-mail: [email protected]

営業時間:11:30 - 19:00

定休日:日曜・月曜

た意味を取り出す田村琢郎。田村は個展やグループ展で作品を発表するほか、2019年にはスターバックス京都バルにて「Sphere asphalt φ1200」を、2020年にはシークエンス ミヤシタパーク4階のCAFE & LOUNGE

「VALLEY PARK STAND(ヴァリーパークスタンド)」にて「Lovers#4」を発表しています。

Takuro Tamura

35°33'16''N, 139°44'32''E

2021

Asphalt, FRP, thermoplastic road marking

tape, aluminum frame

194.6 x 162.6 x 3.0 cm

Takuro Tamura

Asphalt and View in the Bentheim Forest

2021

Asphalt, MDF, UV print, FRP, thermoplastic

road marking tape, aluminum frame

53.6 x 91.7 x 3.0 cm