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PLD 法によるペロブスカイト系鉄酸化物薄膜及び人工超格子の作製 Prepared of Perovskite Iron Based Oxide Thinfilms and Superlattices using PLD method 日本大学理工学部 電子情報工学科 (山本・岩田研究室) 8141 渡部 雄太 Department of Electronics & Computer Science, College of Science & Technology, Nihon University, B4, Yuta Watabe Abstract:パルスレーザー堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD)による薄膜及び人工超格子作製には、ターゲットの 良さが直に依存する。そのためペチーニ法を用いて SrFeO 3 (SFO), CaFeO 3 (CFO), BiFeO 3 (BFO)を作製し、ターゲット 作製条件最適化を探索した。また、ターゲットの作製方法による薄膜成長の変化を観察した。さらに、ペチーニ法 による CaFeO 3 ターゲットの作製最適条件を探索した後、BiFeO 3 /CaFeO 3 人工超格子の作製を行った。 SrFeO 3 のターゲット作製のための粉末作製の仮焼温度は、炭酸塩を完全に除去するために 750°C よりも高い温度 が必要である。CaFeO 3 72 時間仮焼を行うことで、粒径が 1[μm]付近に分布し、仮焼温度が 850°C 以上で炭酸塩の 除去を確認した。そのため、CaFeO 3 の作製最適条件は仮焼温度 850°C、仮焼時間 72 時間が最適条件である。 LFO 薄膜は、薄膜表面像から固相反応法にて作製したターゲットを用いた場合、 3 次元的成長をしている様子が観 察された。ペチーニ法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認した。ステップに沿っ た成長をしていると推測することができ、Layer-by-Layer 成長したと考えられ、ペチーニ法にてターゲット用粉末を 作製することが有効であると考える。 BiFeO 3 /CaFeO 3 人工超格子の作製を行った。X 線回折によりサテライトピーク、ラウエ振動を確認できた。バッフ ァー層として LaFeO 3 薄膜を STO 基板上に成膜した際の成長速度を基準とすることで、想定通りの膜厚を制御するこ とができた。BiFe 3 : 6.0%、CaFeO 3 : 0.9%の精度で膜厚の制御ができ、これからもペチーニ法によるターゲットを用 いることが有効であることが分かった。 1.背景 近年マルチフェロイック物質が注目を集めている。マ ルチフェロイック物質とは物質中の電子の持つスピン、 軌道、電荷、もしくは電気分極に関する自由度の複数が 同時に強的な秩序を示す物質群を指す。また、ほとんど の場合、これらの電子の自由度は、同時に格子の自由度 と結合している。端的に言うと強磁性、強誘電性、強弾 性などの性質を複数有する物質系である。マルチフェロ イック物質は、異なる秩序状態の相互作用により新奇な 応答現象が期待される。例えば、磁場による電気分極の 応答や電場による磁化の応答などである。強磁性と強誘 電性が共存する物質として TbMnO(3)BiMnO(3)などが ある。これらは新たな物質開拓や新たなセンサー・デバ イスへの応用など今後の展開が期待される 1この薄膜作製にはパルスレーザー堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD)を用いる。 PLD 法はレーザーを 1 秒間に 数回ターゲットに照射することで物質を蒸発させて基板 まで飛ばし、堆積させる事で薄膜とする方法である 2この PLD 法では薄膜の質はターゲットの良さに直に依存 している。そのため、質の良い専用ターゲットを作製す る必要がある。この質の良いターゲットというのは結晶 性が良く、粒径が小さいものである。 今まで PLD 法に用いる SrFeO 3 , BiFeO 3 , CaFeO 3 ターゲ ットを固相反応法にて作製を行っていたが SrFeO 3 , BiFeO 3 の粒子の粒径の大きさの均一性、粒径が大きく、 分解できない大きさの粒子で構成されたターゲットにな っていた。よって、別の方法によるターゲットの作製を 目指した。より粒子の粒径の大きさの均一性、粒径の小 さなターゲットを作製するため、固相反応法より原子レ ベルでの組成ができ、また粒径の均一性、粒径を小さく することに長けたペチーニ法によって作製を行った。 また、過去にペチーニ法により SrFeO 3 を作製した際は、 出発原料に炭酸ストロンチウム SrCO 3 を使用したが、電 気炉の温度を 900°C まで上昇させて仮焼を行っても、炭 酸塩が残留してしまった。これは炭酸ストロンチウムを 出発原料としていたためと考えられ、本実験では出発原 料を硝酸ストロンチウム Sr(NO 3 ) 2 として作製を行った。 同様に、BiFeO 3 , CaFeO 3 に関しても出発原料を、それぞ れ硝酸ビスマス Bi(NO 3 ) 3 , 硝酸カルシウム Ca(NO 3 ) 2 とし て作製を行った。 PLD 法に用いるターゲットの作製方法による変化を観 察するため、従来のターゲット作製方法である固相反応 法と、ペチーニ法で作製したそれぞれのターゲットを用 いて LaFeO 3 薄膜を作製した。 さらに、ペチーニ法による CaFeO 3 ターゲットの作製最 適条件を探索した後、BiFeO 3 /CaFeO 3 人工超格子の作製 を行った。 2.目的 ペチーニ法を用いて SrFeO 3 , BiFeO 3 , CaFeO 3 の粉末の 作製を行った。粒径は、粉末を電気炉で仮焼きする際の 温度に依存し、それが限りなく低い温度の時に目的とす る粉末が得られると考えている。しかし、温度を低くし すぎると結晶性が悪くなってしまう。そのため目標の試 料が得られる最低の温度条件を探索した。 従来のターゲット作製方法である固相反応法と、ペチ ーニ法で作製したそれぞれのターゲットを用いて LaFeO 3 薄膜を作製し、ターゲットの作製方法による薄膜 成長の変化の比較を行った。 また、固相反応法にて作製した BiFeO 3 ターゲットとペ チーニ法にて作製した CaFeO 3 を用いて、 BiFeO 3 5 層、 CaFeO 3 7 層堆積させたものを 1 サイクルとして、 14 イクル繰り返した[5uintcell-BiFeO 3 / 7uintcell-CaFeO 3 ] 14 格子を想定した人工超格子の作製を行った。 3.実験方法・条件 3.1 ターゲット用粉末作製 a.秤量 a-1 . SrFeO 3 硝酸ストロンチウム Sr(NO 3 ) 2 (PURITY:98.0[%], Lot: HLF7789 , 和光薬品)、硝酸鉄()九水和物 Fe(NO 3 ) 3 9H 2 O (純度:99.0[%] , code No 5-1300-5 , シグマアルド リッチジャパン株式会社)をそれぞれ純水で十分に溶 解させた後、それらをトールビーカに移して混合させ

Prepared of Perovskite Iron Based Oxide Thinfilms …yamanoya.ecs.cst.nihon-u.ac.jp/Thesis/渡部.pdfPLD法によるペロブスカイト系鉄酸化物薄膜及び人工超格子の作製

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  • PLD 法によるペロブスカイト系鉄酸化物薄膜及び人工超格子の作製 Prepared of Perovskite Iron Based Oxide Thinfilms and Superlattices using PLD method

    日本大学理工学部 電子情報工学科 (山本・岩田研究室)

    8141 渡部 雄太 Department of Electronics & Computer Science,

    College of Science & Technology, Nihon University, B4, Yuta Watabe

    Abstract:パルスレーザー堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD)による薄膜及び人工超格子作製には、ターゲットの良さが直に依存する。そのためペチーニ法を用いて SrFeO3(SFO), CaFeO3(CFO), BiFeO3 (BFO)を作製し、ターゲット作製条件最適化を探索した。また、ターゲットの作製方法による薄膜成長の変化を観察した。さらに、ペチーニ法による CaFeO3 ターゲットの作製最適条件を探索した後、BiFeO3 /CaFeO3 人工超格子の作製を行った。

    SrFeO3 のターゲット作製のための粉末作製の仮焼温度は、炭酸塩を完全に除去するために 750°C よりも高い温度が必要である。CaFeO3 は 72 時間仮焼を行うことで、粒径が 1[μm]付近に分布し、仮焼温度が 850°C 以上で炭酸塩の除去を確認した。そのため、CaFeO3 の作製最適条件は仮焼温度 850°C、仮焼時間 72 時間が最適条件である。

    LFO 薄膜は、薄膜表面像から固相反応法にて作製したターゲットを用いた場合、3 次元的成長をしている様子が観察された。ペチーニ法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認した。ステップに沿った成長をしていると推測することができ、Layer-by-Layer 成長したと考えられ、ペチーニ法にてターゲット用粉末を作製することが有効であると考える。

    BiFeO3/CaFeO3 人工超格子の作製を行った。X 線回折によりサテライトピーク、ラウエ振動を確認できた。バッファー層として LaFeO3 薄膜を STO 基板上に成膜した際の成長速度を基準とすることで、想定通りの膜厚を制御することができた。BiFe3 : 6.0%、CaFeO3 : 0.9%の精度で膜厚の制御ができ、これからもペチーニ法によるターゲットを用いることが有効であることが分かった。 1.背景 近年マルチフェロイック物質が注目を集めている。マルチフェロイック物質とは物質中の電子の持つスピン、軌道、電荷、もしくは電気分極に関する自由度の複数が同時に強的な秩序を示す物質群を指す。また、ほとんどの場合、これらの電子の自由度は、同時に格子の自由度と結合している。端的に言うと強磁性、強誘電性、強弾性などの性質を複数有する物質系である。マルチフェロイック物質は、異なる秩序状態の相互作用により新奇な応答現象が期待される。例えば、磁場による電気分極の応答や電場による磁化の応答などである。強磁性と強誘電性が共存する物質として TbMnO(3)、BiMnO(3)などがある。これらは新たな物質開拓や新たなセンサー・デバイスへの応用など今後の展開が期待される[1]。

    この薄膜作製にはパルスレーザー堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD)を用いる。PLD 法はレーザーを 1 秒間に数回ターゲットに照射することで物質を蒸発させて基板まで飛ばし、堆積させる事で薄膜とする方法である[2]。このPLD法では薄膜の質はターゲットの良さに直に依存している。そのため、質の良い専用ターゲットを作製する必要がある。この質の良いターゲットというのは結晶性が良く、粒径が小さいものである。

    今まで PLD 法に用いる SrFeO3, BiFeO3, CaFeO3 ターゲットを固相反応法にて作製を行っていたが SrFeO3, BiFeO3 の粒子の粒径の大きさの均一性、粒径が大きく、分解できない大きさの粒子で構成されたターゲットになっていた。よって、別の方法によるターゲットの作製を目指した。より粒子の粒径の大きさの均一性、粒径の小さなターゲットを作製するため、固相反応法より原子レベルでの組成ができ、また粒径の均一性、粒径を小さくすることに長けたペチーニ法によって作製を行った。

    また、過去にペチーニ法により SrFeO3を作製した際は、出発原料に炭酸ストロンチウム SrCO3を使用したが、電気炉の温度を 900°C まで上昇させて仮焼を行っても、炭酸塩が残留してしまった。これは炭酸ストロンチウムを出発原料としていたためと考えられ、本実験では出発原料を硝酸ストロンチウム Sr(NO3)2 として作製を行った。

    同様に、BiFeO3, CaFeO3 に関しても出発原料を、それぞれ硝酸ビスマス Bi(NO3)3, 硝酸カルシウム Ca(NO3)2として作製を行った。 PLD 法に用いるターゲットの作製方法による変化を観察するため、従来のターゲット作製方法である固相反応法と、ペチーニ法で作製したそれぞれのターゲットを用いて LaFeO3 薄膜を作製した。

    さらに、ペチーニ法による CaFeO3 ターゲットの作製最適条件を探索した後、BiFeO3 /CaFeO3 人工超格子の作製を行った。 2.目的 ペチーニ法を用いて SrFeO3, BiFeO3, CaFeO3 の粉末の作製を行った。粒径は、粉末を電気炉で仮焼きする際の温度に依存し、それが限りなく低い温度の時に目的とする粉末が得られると考えている。しかし、温度を低くしすぎると結晶性が悪くなってしまう。そのため目標の試料が得られる最低の温度条件を探索した。 従来のターゲット作製方法である固相反応法と、ペチーニ法で作製したそれぞれのターゲットを用いてLaFeO3 薄膜を作製し、ターゲットの作製方法による薄膜成長の変化の比較を行った。 また、固相反応法にて作製した BiFeO3 ターゲットとペチーニ法にて作製したCaFeO3 を用いて、BiFeO3 を5層、CaFeO3 を 7 層堆積させたものを 1 サイクルとして、14 サイクル繰り返した[5uintcell-BiFeO3 / 7uintcell-CaFeO3]14 超格子を想定した人工超格子の作製を行った。 3.実験方法・条件 3.1 ターゲット用粉末作製

    a.秤量 a-1 . SrFeO3 硝酸ストロンチウム Sr(NO3)2 (PURITY:98.0[%], Lot:

    HLF7789 , 和光薬品)、硝酸鉄(Ⅲ)九水和物 Fe(NO3)3・9H2O (純度:99.0[%] , code No 5-1300-5 , シグマアルドリッチジャパン株式会社)をそれぞれ純水で十分に溶解させた後、それらをトールビーカに移して混合させ

  • た。その後、クエン酸 C6H8O7 (Assay:min98.0[%], Lot:STP6631 , 和光薬品)を別のビーカで純水に溶解させたものとエチレングリコール C2H4(OH)2 (99.0[%] , Lot:EPP5039 , 和光薬品)を、それぞれ Sr: Fe: C6H8O7=1:1:2 を加えた後、Sr: Fe: C6H8O7 :C2H4(OH)2=1:1:2:4 の割合でトールビーカに投入し混合させた。

    a-2 . BiFeO3

    硝酸ビスマス Bi(NO3)3・5H2O (Purity:min.99.9[%] , Lot YCN7063 , 和光薬品)、硝酸鉄(Ⅲ)九水和物をそれぞれ純水で十分に溶解させた後、それらをトールビーカに移して混合させた。その後、クエン酸 C6H8O7 を別のビーカで純水に溶解させたものとエチレングリコールC2H4(OH)2 を、それぞれ Bi: Fe: C6H8O7=1:1:2 Bi: Fe: C6H8O7 :C2H4 (OH)2=1:1:2:4 の割合でトールビーカに投入し混合させた。

    a-3 . CaFeO3 硝酸カルシウム Ca(NO3)2・4H2O ( Assay:min.98.0[%],

    Lot STK3790 , 和光薬品)、硝酸鉄(Ⅲ)九水和物をそれぞれ純水で十分に溶解させた後、それらをトールビーカに移して混合させた。その後、クエン酸 C6H8O7 を別のビーカで純水に溶解させたものとエチレングリコールC2H4(OH)2 を、それぞれ Ca: Fe: C6H8O7=1:1:2 Ca: Fe: C6H8O7 :C2H4 (OH)2=1:1:2:4の割合でトールビーカに投入し混合させた。

    b. 加熱処理 混合させた溶液が入ったトールビーカをマントルヒ

    ーター(TYPE:GBR-30 , NO.H22MA24 , 100V , 600W , 大科電器株式会社)で加熱処理を行った。急激に温度を上げることによる熱衝撃によって、ビーカが破損しないように 20 分ごとに一メモリずつ(約 65°C)、最大450°C まで上昇させていき、水分が蒸発して無くなるまで加熱した。その後、送風して発火させて有機物を飛ばした。トールビーカを十分冷やした後、試料をメノウ乳鉢にて 1 時間粉砕し粉末にした。 c. 仮焼 1 回目

    作製した粉末をるつぼ(アルミナ丸こう鉢 SAM-999)に移し、電気炉を用いて仮焼を行った。このときの温度勾配の条件を表 1 , 2 に記す。さらにその後、仮焼した粉末をメノウ乳鉢にて 1 時間粉砕した。

    表 1 仮焼条件

    物質名 仮焼温度[°C]

    時間 [h]

    温度勾配[°C/min]

    雰囲気

    SrFeO3 BiFeO3 CaFeO3

    500

    24

    5

    大気中 600 700 800 900

    表 2 仮焼条件

    d. 仮焼 2 回目 3.1.c.にて作製した SrFeO3 の 800, 900°C、CaFeO3 の

    800, 850 , 900°C をそれぞれ同じ仮焼温度で、さらに仮焼時間を 48 時間増やして仮焼を行った。さらにその後、メノウ乳鉢にて粉末の粉砕を 2 時間行った。

    表 3 仮焼条件

    3.2LaFeO3/SrTiO3 薄膜の作製 3.2.1 STO 基板表面処理 本実験では STO(001)の 10mm×10mmの基板を用いた。STO 基板を 5mm×10mm にカットし、その後、アセトン5min、アセトン 15min、エタノール 5min 超音波洗浄を行った。これらのプロセスにおいて、その都度終了するごとに光学顕微鏡を用いて基板表面を観察し、付着物等の汚染の有無を慎重に確認した。次に、緩衝フッ酸溶液(BHF)を用いた表面のエッチング処理を行った。BHF 処理の前に、純水中において 30 分超音波洗浄を行った後、BHF(pH=5.0)にて 60sec 超音波洗浄を行った。BHF での洗浄処理後、アルミナ坩堝(新和科学株式会社:RESCO04 純度 99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用いて 920℃、6hアニールした。 3.2.2 成膜条件 成膜には PLD 法を用いた。使用レーザーは KrF エキシマレーザーを用いた。基板は基板ホルダーに Ag ペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲット‐基板間距離は 50mm とした。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは豊島製作所製 LaFeO3 ターゲットを用いた。また、プレアブレーションとして、10Hz、3 分間、ターゲット-基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 4 に示す。

    また、本実験では、ペチーニ法にて作製した LFO ターゲットと、固相反応法にて作製した LFO ターゲットそれぞれを用いた。ペチーニ法にて作製したターゲットは、ホットプレス法もしくは大気焼成法にて粉末を本焼したものをそれぞれ用意し、計 3 個の LFO ターゲットを使用した。

    表 4 成膜条件

    物質名 仮焼温度

    [°C]

    時間 温度勾配

    [°C/min] 雰囲気

    [h]

    SrFeO3 850 72 5 大気中

    CaFeO3 850 24 5 大気中

    物質名 仮焼温度

    [°C]

    時間 温度勾配

    [°C/min] 雰囲気

    [h]

    800 48

    SrFeO3

    850

    72 5 大気中

    900 48

    800 48

    CaFeO3

    850

    48 5 大気中

    900 48

    ターゲット LFO 基板温度[°C] 670 使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248 レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 3.0 雰囲気 O2

    圧力[Pa] 10 流量[ccm] 20

    成膜時間[min] 10

  • 3.3BiFeO3/CaFeO3//SrTiO3 人工超格子の作製 3.3.1 STO 基板表面処理 STO(001)の 10mm×10mm の基板を用いた。以下、3.2.1の基板表面処理と同様のプロセスを行った。 3.3.2 成膜条件 成膜には PLD 法を用いた。使用レーザーは KrF エキシマレーザーを用いた。基板は基板ホルダーに Ag ペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは豊島製作所製 BiFeO3(固相反応法)、CaFeO3(ペチーニ法)、LaFeO3(ペチーニ法)ターゲットを用いた。また、プレアブレーションとして、10Hz、3 分間、ターゲット-基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 5 に示す。

    表 5 成膜条件

    4.評価方法・条件 4.1X 線回折(X-ray diffraction : XRD) 4.1.1 評価方法 仮焼後の粉末を XRD で測定し、そのピークから SrFeO-

    3, BiFeO3, CaFeO3 が作製されているかの確認を行った。実験に用いたXRD(Rigaku社製RAD-C)は日本大学電子線照射利用施設物理実験 B 搭のものを使用した。 4.1.2 原理 図 4.1 に XRD の原理図を示す。X 線発生装置は固定で

    試料部が θ 動くと受光側が 2θ 動くようになっている。また、結晶に X 線を当てると、結晶中の各原子からの散乱X 線が加え合わされる。X 線が単色の場合、各原子による散乱 X 線が干渉し、特定の方向に強い回折 X 線を生ずる。 図 4.1 の様に、多数の格子面からの散乱 X 線の干渉原

    理(ブラッグの条件)を考える。第 1 面と第 2 面との間隔による行路差だけが問題となる。第 1 面と第 3 面その他の平行な面での干渉も同じように面間隔による行路差だけが問題となる。図 4.1 より、第 1 面と第 2 面の行路差は2dsinθ となり、波長の整数倍の時強め合う。

    2dsinθ=nλ (1) d:原子網面の間隔(格子面間隔)

    θ:ブラッグ角(Bragg Angle) 入射角=反射角=θ

    λ:CuKα 線の波長 n:反射次数(整数)

    X 線源は CuKα とし、波長は Kα1=1.54Å, Kα2=1.54Å, Kβ=1.39Åにて測定を行った。分光器(ゴニオメータ)の回転中心に取り付けた試料に X 線を入射させることによって、試料より X 線が回折してくる。その回折 X 線強度について、試料の回転に対応する変化を測定記録する。得られた図形のピーク強度や位置を知ることで、試料の定性分析を行う。

    図 4.1 ブラッグ回折条件

    表 6 XRD 測定条件 開始角度[deg]

    終了角度[deg]

    サンプリング幅

    スキャンスピード[deg/min]

    電圧[kV]

    電流[mA]

    10 90 0.02 4.00 50 100 4.1.3 粉末法 粉末状の結晶、あるいは多結晶体を試料として取り扱う X 線回折を粉末法(Powder method)と呼ぶ。 粉末試料に単色の細い X 線束を当てた場合、試料中のある結晶粒子で面間隔 d の格子面(h k l)が、入射 X 線に対して式(1)を満足する角 θ だけ傾いていたとすると、入射X 線はこの格子面によって回折される。このとき回折線の方向は、図 2 のように格子面と角 θ、入射 X 線の延長と角 2θ(回折角 diffraction angle)傾いている[3]。

    図 4.2 1 つの結晶による回折 4.1.4 使用方法

    使用法を以下の手順に記す。今回は電流 100mA、電圧50kV で測定を行った。 (1)X 線装置のホルダー3 番に標準サンプルがセッティングされていることを確認する。 (2)PC の電源を入れる。 (3)デスクトップ上の XG 操作を起動する。 (4)電源の項目をクリックし、XRD 装置を起動させる。 (5)X 線の項目をクリックし、X 線を起動させる。 (6)アブソーバをセッティングする。 (7)デスクトップ上の自動セッティングを起動させる。 (8)全ての項目にチェックをし、実行ボタンを押す (9)自動セッティング後、セッティング結果を印刷する。

    ターゲット LFO 基板温度[°C] 670 使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248 レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.5 雰囲気 O2

    圧力[Pa] 20 流量[ccm] 20

    第1面

    第2面

    第3面

    θ

    θ

    θ

    θ

    d

    入射X線 反射X線

    第1面

    第2面

    第3面

    θ

    θ

    θ

    θ

    d

    入射X線 反射X線

    第1面

    第2面

    第3面

    θ

    θ

    θ

    θ

    d

    入射X線 反射X線

    d:原子網面の間隔(格子面間隔)

    θ:ブラッグ角(Bragg Angle)θ=入射角=反射角

    λ:Cu-Kα線の波長n:反射次数(整数)

  • (10)デスクトップ上の標準測定を起動する。 (11)標準測定欄に電流、電圧、測定角度等の測定条件を入力する。 (12)測定実行ボタンをクリックし、測定する。 (13)測定終了後 XG 操作項目から電流、電圧値をそれぞれ最小値にセッティングし 20 分間待機する。 (14)X 線の項目を OFF にし、5 分間待機する。 (15)装置電源の項目を OFF にし、PC の電源を落とす。 4.2 レーザ回折式粒度分布測定 4.2.1 原理 図 4.3 にレーザ回折式粒度分布測定の原理図を示す。

    測定対象となる粒子群にレーザ光を照射すると、空間的に回折・散乱光の光強度分布パターンが生じる。このうち前方散乱光の光強度分布パターンは、レンズによって集光され、焦点距離の位置にある検出面にリング状の回折・散乱像を結ぶ。これを同心円状に検出素子を配置したリングセンサで検出をする。また、側方散乱光および後方散乱光は、側方散乱光センサおよび後方散乱光センサでそれぞれ検出する。各種検出素子を用いて光強度分布パターンを検出することで、光強度分布データが得られる。

    この光強度分布データは、粒子の大きさによって変化する。実際のサンプルには、大きさの異なる粒子が混在しているため、粒子群から生ずる光強度分布データは、それぞれの粒子からの回折・散乱光の重ね合わせとなる[4]。

    図 4.3 レーザ回折式粒度分布測定の原理図 5.結果 5.1 ターゲット用粉末作製 5.1.1XRD 測定結果

    作製した SrFeO3(仮焼温度:500~900°C,仮焼時間:24 時間), CaFeO3(仮焼温度:500~900°C,仮焼時間:24 時間), BiFeO3(仮焼温度: 500~900°C,仮焼時間:24 時間)の XRD測定結果を図 5.1 ~5.3 に示す。

    図 5.1 ~5.3 より、SrFeO3, CaFeO3 では、それぞれ焼成温度が低い場合、出発原料の成分が残留していることを確認した。SrFeO3では800°C以上、BiFeO3は500°C 以上、CaFeO3 は 850°C 以上で仮焼を行うことが必要であるとわかった。 また、SrFeO3 , CaFeO3 については電気炉の仮焼温度を 800°C , 850°C , 900°C として仮焼時間をそれぞれ 24時間行い、その後さらに 48 時間仮焼を追加した時のXRD 結果を図 5.4 , 5.5 に示す。

    図 5.4 よりそれぞれの仮焼温度で SrFeO2.86の粉末のピークが確認できた。しかし、SrFeO2.86以外にも 2Thetaが 26°付近で SrCO3 の粉末のピークも表れており、炭酸

    塩が残留していることがわかる。 図 5.5 よりそれぞれの仮焼温度で Ca2Fe2O5 の粉末のピークが確認できたが、800°C では Intensity(a.u.)が低く結晶性が良くない。また、SrFeO3 と同様に 2Theta が39°付近で CaCO3 の粉末のピークが表れており、炭酸塩の残留を確認できる。

    5.2 粒度分布測定結果 図 5.6 に SrFeO3(仮焼温度 800°C , 850°C , 900°C , 仮焼時間 24+48 時間)の粒度分布測定結果を、図 5.7 にCaFeO3(仮焼温度 800°C , 850°C , 900°C , 仮焼時間 24+48 時間)の粒度分布測定結果を示す。

    図 5.6 から仮焼時間を 24+48 時間としたとき、仮焼温度が 800°C の場合、粒径が 1[μm]付近をピークとして分布しており、850°C , 900°C では、粒径は 2~5[μm]付近がピークとなった分布となっている。これから、仮焼温度が高いほど粒成長をし、粒径が大きくなることを確認できた。また、仮焼時間が 24 時間の仮焼温度800°C の場合、粒径が 200[μm]付近をピークとした分布となっているが、1[μm]程度の粒径のものも確認できる。さらに 48 時間仮焼を行ったことで粒径が小さくなることが分かった。

    図 5.7 も同様に仮焼時間を 24+48 時間としたとき、仮焼温度が 800°C の場合、粒径が 1[μm]付近をピークとして分布しているが、850°C , 900°C では、粒径は0.5[μm]付近がピークとなった分布と、2~3[μm]付近がピークの分布の二つを確認できた。

    また、CaFeO3 も SrFeO3と同様に 24 時間仮焼後にさらに 48 時間仮焼を追加したことで粒径が小さくなった。

    5.2 LaFeO3/SrTiO3 薄膜の作製

    5.2.1 LFO/STO 薄膜の表面像 固相反応法にて作製したターゲットを使用して成膜

    を行った際の STO 基板の表面像、LFO 薄膜の表面像を図 5.8(a),(b)に示す。ペチーニ法、大気焼成法にて作製したターゲットを使用して成膜を行った際の STO基板の表面像、LFO 薄膜の表面像を図 5.9(a),(b)に示す。ペチーニ法、ホットプレス法にて作製したターゲットを使用して成膜を行った際の STO 基板の表面像、LFO 薄膜の表面像を図 5.10(a),(b)に示す。

    固相反応法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認できなかった。しかし、ペチーニ法にて作製したターゲットを用いた場合、STO 基板である(a), LFO 薄膜である(b)において、ステップ‐テラス構造を確認した。また、粒状成長していないことも確認した。

    5.2.2 LFO/STO 薄膜の XRD 像 図 5.11 に成膜した LFO 薄膜の XRD(θ-2θ)を示す。使用したターゲットは固相反応法にて作製したターゲットを使用した。図 5.12 に成膜した LFO 薄膜のXRD(θ-2θ)を示す。使用したターゲットはペチーニ法、大気焼成法にて作製したターゲットを使用した。図5.13 に成膜した LFO 薄膜の XRD(θ-2θ)を示す。使用したターゲットはペチーニ法、ホットプレス法にて作製したターゲットを使用した。図 5.11, 5.12, 5.13 それぞれで STO 基板のピークの低角側へそれぞれ LFO のピークを確認した。

    5.2.3 LFO/STO 薄膜の RHEED 振動

    図 5.14 にペチーニ法、大気焼成法にて作製したターゲットを使用した際に観察した RHEED 振動の結果を示す。図 5.15 にペチーニ法、ホットプレス法にて作製したターゲットを使用した際に観察した RHEED 振動

  • SrFeO2.86 SrCO3

    10 20 30 40 50 60 70 80 90

    Inte

    nsity

    (a.u

    .)

    2Theta(deg)図 5.1 仮焼後の SrFeO3 の XRD 測定結果(仮焼温度 500~900°C)

    500°C

    600°C

    700°C

    800°C

    900°C

    の結果を示す。いずれもレーザー強度 3.0J/cm2、酸素雰囲気中、内圧 10Pa で成膜した。大気焼成法で作製したターゲットを用いた場合は、RHEED 振動を確認することができなかった。

    図 5.14からはRHEED振動の波を 42個まで確認した。また、薄膜が一層形成されるまでの時間はおよそ 14.46秒であった。図 5.15 からは RHEED 振動の波を 43 個まで確認した。また、薄膜が一層形成されるまでの時間はおよそ 14.28 秒であった。

    5.3 BiFeO3/CaFeO3//SrTiO3 人工超格子の作製

    5.3.1 LaFeO3 薄膜の RHEED 振動 図 5.16 に LaFeO3 薄膜の RHEED 振動の図を示す。レ

    ーザー周波数は 2Hz にて行った。明瞭な RHEED 振動が確認でき Layer-by-Layer 成長していることがわかった。振動のピーク間隔を右縦軸に示す。図 5.16 より、薄膜成長時間が安定してきた 4 層目から 7 層目の成膜速度から、BiFeO3、CaFeO3 単層膜のそれぞれの成膜速度比を算出した。1 層あたり 22.42[sec]と見積もったので、44.84[pulses/units]であった。また、BiFeO3は超格子を作製した際の初期成長の 4 層までの成長速度より、26.34[pulses/units]、CaFeO3 に関しては、CaFeO3、LaFeO3それぞれの単層膜を作製した際の成長速度から、45.577[pulses/units]とした。いずれもレーザー周波数は4Hz にて行った。これらより成膜速度比を算出して、BiFeO3 は 5 層成膜するために 189[pulses]、CaFeO3 は 7層成膜するために 248[pulses]として[5uc-BiFeO3 / 7uc-CaFeO3]14 超格子の作製を行った。

    5.3.2 BiFeO3/CaFeO3 人工超格子の XRD 像 図 5.17 に成膜した BiFeO3/CaFeO3 人工超格子のXRD(θ-2θ)を示す。基板ピークの STO(001)面、STO(002)面周辺に超格子構造を示すサテライトピークを確認できた。図 5.18 に STO(001)周辺を拡大した図を示す。ラウエ振動が確認でき、図 5.17, 5.18 より超格子構造の界面が非常に平坦に形成されていることが分かる。図5.19 に XRD によるロッキングカーブ像を示す。ロッキングカーブの半値幅は 0.073°と、非常に結晶性が高いことが分かった。図 5.20 に BiFe3/CaFeO3 人工超格子の低角側での XRD 反射振動を示す。超格子を示す振動と、膜厚を示す周期を確認できる。

    10 20 30 40 50 60 70 80 90

    Inte

    nsity

    (a.u

    .)

    Ca2Fe2O5 CaCO3

    2Theta (deg) 図 5.2 仮焼後のCaFeO3のXRD測定結果(仮焼温度 500~900°C)

    900°C

    800°C

    700°C

    600°C

    500°C

    Bi(FeO3) Bi12(Bi0.5Fe0.5)O19.5

    10 20 30 40 50 60 70 80 90

    Inte

    nsity

    (a.u

    .)

    2Theta (deg)図 5.3 仮焼後の BiFeO3 の XRD 測定結果(仮焼温度 500~900°C)

    10 20 30 40 50 60 70 80 90

    Inte

    nsity

    (a.u

    .)

    2Theta (deg)

    900℃

    850℃

    800℃

    図 5.4 仮焼後の SrFeO3の XRD 測定結果(仮焼温度 800,850,900°C, 仮焼時間:24+48 時間)

    SrFeO2.86 SrFeO2.97 SrCO3

  • 図 5.9(a) STO 基板表面像 (2μm×2μm)

    0.0 1.57 [nm]

    図 5.9(b) ペチーニ法、 大気焼成法にて作製した ターゲットを用い、LFO を STO 基板上に成膜した際の 表面像(2μm×2μm)

    0.0 1.49 [nm]

    0.0 1.52 [nm] 0.0 3.95 [nm]

    図 5.8(a) STO 基板表面像 (2μm×2μm)

    図 5.8(b) 固相反応法にて 作製したターゲットを用い、 LFO を STO 基板上に成膜した 際の表面像(2μm×2μm)

    0.0 2.59 [nm]

    図 5.10(a) STO 基板表面像 (2μm×2μm)

    図 5.10(b) ペチーニ法、 ホットプレス法にて作製した ターゲットを用い、LFO を STO 基板上に成膜した際の 表面像(2μm×2μm)

    0.0 2.54 [nm]

    Ca2Fe2O5 CaCO3

    図 5.5 仮焼後の CaFeO3の XRD 測定結果(仮焼温度 800,850,900°C, 仮焼時間:24+48 時間)

    10 20 30 40 50 60 70 80 90

    2Theta (degs)

    900℃

    850℃

    800℃

    Inte

    nsity

    (a.u

    .)

    0.1 1 10 100 10000

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    SFO(仮焼温度800℃, 仮焼時間72h)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)

    時間(h)

    温度 (℃)

    0.1 1 10 100 1000 100000

    10

    20

    30

    40

    SFO (仮焼温度900℃)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)0.1 1 10 100 1000 10000

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)SFO (仮焼温度800℃)

    0.1 1 10 100 10000

    2

    4

    6

    8

    10

    SFO(仮焼温度850℃, 仮焼時間72h)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)0.1 1 10 100 1000

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    SFO (仮焼温度900℃, 仮焼時間72h)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)

    800 850 900

    24 + 48

    24

    図 5.6 仮焼後の SrFeO3の粒度分布測定結果

    0.1 1 10 100 10000

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    20

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)CFO(仮焼温度800℃, 仮焼時間72h)

    時間(h)

    温度 (℃) 800 850 900

    24

    0.1 1 10 100 10000

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    CFO(仮焼温度900℃, 仮焼時間72h)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)0.1 1 10 100 1000

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    CFO (仮焼温度850℃, 仮焼時間72h)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)

    0.01 0.1 1 10 100 10000

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)CFO(仮焼温度800℃)

    0.01 0.1 1 10 100 10000

    5

    10

    15

    CFO(仮焼温度850℃)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)0.01 0.1 1 10 100 10000

    2

    4

    6

    8

    10

    CFO(仮焼温度900℃)

    分布

    (%

    )

    粒径 (μm)

    24+ 48

    図 5.7 仮焼後の CaFeO3の粒度分布測定結果

  • 6.考察 6.1 ターゲット用粉末の作製

    図 5.1 より SrFeO3のターゲット作製のための粉末作製の仮焼温度は、炭酸塩を完全に飛ばすために 750°C よりも高い温度が必要である。図 5.2 より CaFeO3 の場合は仮焼温度 850°C よりも高くすることが最適な温度の条件となると考えられる。図 5.3 から、BiFeO3 では仮焼温度500°C 以上から目的とする Bi(FeO3)のピークがみられ、800°C 付近から Bi12(Bi0.5Fe0.5)O19.5のピークが表れるため、粒径を測定してから判断をする必要がある。また、SrFeO-3, CaFeO3 の粉末の場合、仮焼温度が目安となる温度より低いとき、SrCO3 が残留していることが確認できた。これはクエン酸 C6H8O7とエチレングリコール C2H4(OH)2の炭素 C が反応したために生成され、その成分が残留したものだと考えられる。

    SrFeO3 , CaFeO3 のどちらも仮焼温度が高いほど粒成長をし、粒径が 2~3[μm]程度大きくなることを確認できた。また、仮焼時間を増やすことで粒径が小さくなることが分かった。

    CaFeO3 の場合は仮焼温度を高くすることでピークが二つに分離してしまった。これは粒成長によって粒径が大きくなった粉末をメノウ乳鉢にて粉砕を行った際に、Ca と Fe の硬度の違いによるものから、粒径の大きさのピークが分離してしまったと考えられる。また、CaFeO3は 72 時間仮焼を行うことで、粒径が 1[μm]付近に分布しており、仮焼温度が 850°C 以上で炭酸塩の除去を確認した。そのため、CaFeO3 の作製最適条件は仮焼温度 850°C、仮焼時間 72 時間が最適条件である。 6.2 LaFeO3/SrTiO3 薄膜の作製

    図 5.8(a)(b)~5.10(a)(b)の薄膜表面像より、固相反応法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認できなかった。しかし、ペチーニ法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認した。これより、ステップに沿った成長をしていると推測することができ、Layer-by-Layer 成長したと考えられる。

    図 5.11~5.13 の XRD の結果からは LFO 薄膜のピークが低角側にシフトしている様子が確認できた。これはSTO と比較して格子定数の大きい LFO が STO からの基板ストレスが加わって LFO の格子が歪み、STO の格子状数と合わせるように面内方向へ縮み、それに従って面直方向は広がったためであると考えられる。

    図 5.14, 5.15 の RHEED 振動からペチーニ法、大気焼成

    10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120100

    101

    102

    103

    104

    105

    43

    2

    -1

    -4

    1

    -2

    -3

    +10

    0

    -2

    -1

    -3

    0 STO

    (004

    )

    STO

    (003

    )STO

    (002

    )

    Inte

    nsity

    (arb

    . uni

    ts)

    2q (degrees)

    STO

    (001

    )

    図 5.17 BiFeO3/CaFeO3人工超格子の XRD 像

    16 18 20 22 24 26 28 30 32

    102

    103

    104

    4

    3

    2

    -1

    -4

    1

    -2

    -3

    0

    Inte

    nsity

    (arb

    . uni

    ts)

    2q (degrees)

    STO

    (001

    )

    図 5.18 BiFeO3/CaFeO3人工超格子の XRD 像

    22.45 22.50 22.55 22.60 22.65 22.700

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    3000

    3500

    4000

    4500

    Inte

    nsity

    (arb

    . uni

    ts)

    q (degrees)

    FWHM=0.06883

    図5.19 BiFeO3/CaFeO3人工超格子のXRDによるロッキングカーブ像

    0 2 4 6 8 10100

    101

    102

    103

    104

    105

    106

    Inte

    nsity

    (arb

    . uni

    ts)

    2q (degrees)図 5.20 BiFeO3/CaFeO3人工超格子の低角側での

    XRD 反射振動像

  • 法にて作製したLFOターゲットを使用して成膜した際の膜厚はおよそ 16.80[nm]、ペチーニ法、ホットプレス法にて作製したLFOターゲットを使用して成膜した際の膜厚はおよそ 17.2[nm]であった。薄膜の層数はターゲットによらず変化しないことが分かった。 6.3 BiFeO3/CaFeO3 人工超格子の作製

    図 5.18 のサテライトピークの間隔から[5uc-BiFeO3 / 7uc-CaFeO3]格子の膜厚が 4.75 [nm]、0 次のピークから平均格子定数が 0.385 [nm]であると分かった。図 5.20 のXRD による低角側での X 線反射振動をフィッティングして計算をして見積もった膜厚は、それぞれ BiFe3 : 2.17[nm]、CaFeO3 : 2.56[nm]であり、BiFe3 : 5.32[units]、CaFeO3 : 6.94[units]であった。併せて 1 サイクルあたり4.73[nm]である。また、平均格子定数は 0.386[nm]であった。 図 5.18、図 5.20 から算出した膜厚、平均格子定数は、

    ほぼ一致した。想定した膜厚に対して、実際に積層させた膜厚はおよそ BiFe3 : 6.0%、CaFeO3 : 0.9%であり、非常に高い精度で成膜を行うことを確認した。

    7.まとめ

    ペチーニ法を用いて SrFeO3(SFO), CaFeO3(CFO), BiFeO3 (BFO)を作製した。SrFeO3 のターゲット作製のための粉末作製の仮焼温度は、炭酸塩を完全に飛ばすために 750°C よりも高い温度が必要である。BiFeO3 では仮焼温度 500°C 以上から目的とする Bi(FeO3)のピークがみられ、800°C 付近から Bi12(Bi0.5Fe0.5)O19.5のピークが表れるため、粒径を測定してから判断をする必要がある。CaFeO-3 の場合は仮焼温度 850°C よりも高くすることが最適な温度の条件となると考えられる。また、SrFeO3, CaFeO3の粉末の場合、仮焼温度が目安となる温度より低いとき、SrCO3 が残留していることが確認できた。これはクエン酸 C6H8O7とエチレングリコール C2H4(OH)2の炭素 Cが反応したために生成され、その成分が残留したものだと考えられる。SrFeO3 , CaFeO3 のどちらも仮焼温度が高いほど粒成長をし、粒径が大きくなることを確認できた。また、仮焼時間を増やすことで粒径が小さくなることが分かった。CaFeO3は 72時間仮焼を行うことで、粒径が 1[μm]付近に分布しており、仮焼温度が 850°C 以上で炭酸塩の除去を確認した。そのため、CaFeO3 の作製最適条件は仮焼温度 850°C、仮焼時間 72 時間が最適条件である。

    LFO 薄膜は、薄膜表面像から固相反応法にて作製したターゲットを用いた場合、3 次元的成長をしている様子が観察された。ペチーニ法にて作製したターゲットを用いた場合、ステップ‐テラス構造を確認した。これより、ステップに沿った成長をしていると推測することができ、Layer-by-Layer 成長したと考えられ、ペチーニ法にてターゲット用粉末を作製することが有効であると考える。

    BiFeO3/CaFeO3 人工超格子の作製を行った。X 線回折によりサテライトピーク、ラウエ振動を確認できた。バッファー層として LaFeO3 薄膜を STO 基板上に成膜した際の成長速度を基準とすることで、想定通りの膜厚を制御することができた。BiFe3 : 6.0%、CaFeO3 : 0.9%の精度で膜厚の制御ができ、これからもペチーニ法によるターゲットを用いることが有効であることが分かった。 8.参考文献 [1]マルチフェロイック酸化物の電子状態と秩序発現:小口 多美夫,広島大学大学院先端物質科学研究科広島大学先進機能物質研究センター [2]レーザーアブレーションとその応用,コロナ社,1999 年 [3]理学電気株式会社, X 線回折ガイドブック, 2003, p.19 [4]”http://www.shimadzu.co.jp/powder/lecture/index.html“ S

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