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TIMES-Japanモデル計算に基づく、 2050年超に向けたエネルギー技術展望 一般財団法人 エネルギー総合工学研究所 都筑 和泰

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TIMES-Japanモデル計算に基づく、2050年超に向けたエネルギー技術展望

一般財団法人 エネルギー総合工学研究所都筑 和泰

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発表内容

研究所の紹介・中長期ビジョンの位置づけ

中長期ビジョン検討の流れ

モデル計算の結果と解釈

2050年超に向けたメガトレンド

原子力の役割

まとめ

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研究所の紹介・中長期ビジョンの位置づけ

• 当研究所においては、産学官の連携の下、総合工学の視点に立脚した調査研究等を行ってきている

• 5年毎にエネルギー中長期ビジョンを策定してきている• 創立40周年ということもあり、当研究所の有するエネルギー環境シミュレーションモデルGRAPEやTIMES-Japanを用いた分析を行うとともに、エネルギー技術の現状と課題を整理し、有識者の意見を収集することで、2050年超に向けたエネルギー技術展望について幅広く検討を進めることとした

本成果については10月12日 当研究所のシンポジウムにて講演予定さらに、シンポジウムでの議論を踏まえて、後日エネルギー中長期ビジョンレポートを出版予定

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中長期ビジョン検討の流れ長期的な世界・日本の見通し長期エネルギー需給見通し低炭素エネルギーシステムパリ協定

文献調査技術ロードマップ技術シナリオ…

エネルギー技術の抽出, RD&Dの優先付け

GRAPE, TIMES-Japan

フェーズ 1将来エネルギーシステムの評価

フェーズ 2エネルギー技術シナリオの記述

仮定の精査

感度分析

定量化情報

中長期的なエネルギー技術の問題解決に向けた戦略的なプラットフォーム構築

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TIMES-Japanモデル概要

IEA実施協定(現在は技術協力プログラム)の一環として開発されたプラットフォーム入力条件の下で2050年までのエネルギーシステムコストを最小化するようにエネルギー需給構成を最適化

出典: (社)日本原子力産業会議 資料

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モデル分析における主要な前提条件

• CO2大幅削減(国内2015年比8割減)は前提条件とする。• 需要想定やコスト見通しはなるべく一般的な情報に準拠

– 最終需要:長期需給見通し など

– 化石燃料価格:International Energy Agency(IEA)など

– 再生可能のコストダウン:NEDO など

• 主に再生可能エネルギー、原子力について、制約条件を大きく変更し、エネルギーシステム全体への影響を評価– 再生可能 :高、中

– 原子力 :高、中、なし

• 二酸化炭素回収貯留(CCS)は国内のCO2排出量と比較して小規模ではあるが利用可能(5000万トン/年)

標準ケースは、再生可能エネルギーを高位導入し、原子力を26GW程度に維持(新設無し)するシナリオ

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主要な計算結果: 標準ケース (一次エネルギー・発電量)

• 2050年一次エネルギーでの再生可能エネ割合は約1/2、輸入水素も9%利用

• 2050年発電でのゼロエミッション発電割合は99%

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

TWh

発電量その他

水素

廃棄物・バイ

オマス地熱

水力

風力

太陽光

原子力

LNG火力

石炭火力

石油火力

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

PJ

一次エネルギー

その他

液体水素

再生可能

原子力

天然ガス

石炭・石炭製

品石油・石油製

7

主要な計算結果: 標準ケース (産業・民生エネルギー)

• 2050年産業最終消費での化石燃料割合は約6割弱 (素材産業および高温熱利用)

• 民生では電化傾向

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

PJ

民生部門最終消費

その他

ガス

石炭製品

石油製品

電力

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

PJ

産業部門最終消費

その他

ガス

石炭製品

石油製品

電力

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主要な計算結果: 標準ケース (運輸エネルギー・エネルギー起源CO2)

• 2050年運輸最終消費でのゼロエミッションキャリア割合は7割弱• 2050年CO2排出での産業割合高

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

PJ

運輸部門最終消費合成燃料

重油

軽油

ジェット燃料

ガソリン

LPG

都市ガス

水素

電力

(200)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

MtC

O2

CO2排出量

回収貯留

転換

運輸

民生

産業

発電

正味排出

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主要な計算結果: 感度分析

0

400

800

1200

発電量 (TWh)その他

水素

バイオマス

地熱

水力

風力

太陽光

原子力

LNG火力

石炭火力

石油火力

0500

10001500200025003000

標準

太陽

光・風力限定

原子力なし

太陽

光・風

力限

定・原子力

なし 原

子力分析

標準

太陽

光・風力限定

原子力なし

太陽

光・風

力限

定・原子力

なし 原

子力分析

2030 2050

運輸エネルギー最終消費 (PJ)

合成燃料

重油

軽油

ジェット燃料

ガソリン

水素

電力

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計算結果の解釈• 2050年のCO2排出枠は素材産業や運輸の一部など、化石燃料代替が難しい領域だけでいっぱいであり、それ以外は原則ゼロエミッション化することが必要となる。シナリオ依存が大きいのは以下の2部門※

– 発電部門の構成は技術想定に対する依存性が大きい。逆に幅広い選択肢があるともいえる。

• 再生可能の主力電源化は国の基本政策でもあり着実に進めるが、出力変動対策との見合いでどこまでいけるか不透明

• 原子力は、主に社会受容性の観点で、導入量が不透明• 上記が停滞する場合、TIMES-Japanでは電力の不足分は輸入水素による水素タービンを活用。これも不確実性が大きく、例えば以下の可能性もある。

– CCUSを活用した火力の積極的利用– 海洋、バイオマスを含む他の再生エネルギーの大規模利用

– 乗用車はEV化が最近の傾向ではあるが、輸入水素を大量に利用するという社会において、水素を直接利用するFCVという選択もあり得る。

※その他の部門は、原子力や再生可能の導入量に関わらず、想定されている低炭素化技術を最大限導入

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2050年超に向けたエネルギーシステムのメガトレンド

中長期エネルギービジョンの検討においては、モデル計算の結果に加えて、重要技術についての技術開発課題及びその対応の分析を実施。その結果を踏まえ、以下の3つのメガトレンドを提示。

• 再生可能エネルギー電力中心へ向かう中、一定規模を超えたときの蓄エネルギーを含むシステム構築のチャレンジ– 電力化・蓄エネルギーシステム

• 輸入水素を積極的に利用するシナリオでのコスト削減・サプライチェーン構築に向けたRD&Dチャレンジ– 水素活用エネルギーシステム

• 産業および大型運輸における化石燃料代替、発電も含む大規模CCUSに向けたチャレンジ– 炭素循環エネルギーシステム

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電力化・蓄エネルギーシステム 蓄エネルギー設備が、発電・送電・需要側に適切に配置され、それらを統合的に制御することで、電力のかなりの部分を変動性の再生可能エネルギーで供給する。

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水素活用エネルギーシステム 国内の変動性再生可能エネルギーの導入が、出力変動対策の観点で伸び悩む一方、国際的な水素供給・利用についての見通しが立てば、輸入水素を積極的に利用するシステムも考えられる。

出典:IAE CO2フリー水素普及シナリオ研究会

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炭素循環エネルギーシステム 海外で安くて豊富な水素が調達できるのであれば、水素として輸入・利用するより、現地で炭化水素燃料を生成して輸入した方が合理的な場合もあり得る。

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将来における原子力の位置づけ

• 原子力については、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、安全性を向上していくことが大前提。その上で将来の役割として以下が考えられる。1. 低炭素エネルギー源候補の中で、現時点で大規模導入が見通せ

るほぼ唯一といっていい技術であり、最低限、他がうまくいかない場合のバックアップ技術にはなる。

2. 原子力の発電量を下げて、代わりに他の限界削減費用の高い技術を利用すると、結果としてエネルギーコストの大幅増につながり得る。

3. 原子力はエネルギー供給の多様性の向上、準国産としての自給率の向上に着実に寄与。さらに、包蔵しているエネルギーが大きく、燃料供給途絶に強い。

4. 産業用の高温熱供給、遠隔地への熱電併給、外航船や砕氷船の動力など、化石燃料代替が難しいとされている領域への適用も視野。

継続した技術開発が必要

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エネルギーシステムコストの推移

0.8

0.85

0.9

0.95

1

1.05

1.1

2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

エネルギーシステムコスト指標 (2015年=1.0)

標準 太陽光・風力限定

原子力なし 太陽光・風力限定・原子力なし

原子力分析

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まとめ

• 2050年に2015年比8割減を実現しようとする場合、CO2排出は産業や運輸の一部でのみ許容され、他の部門は技術シナリオに関わらず、概ねゼロエミッション化する方向。

• TIME-Japanの結果を含め、CO2排出大幅削減に向けた当面の世界の関心事は以下の通り– 再生可能・蓄エネルギーシステムの構築– 飛行機・船等の高いエネルギー密度が必要な輸送機器への対応– 産業分野、特に素材産業への対応

• 当研究所では、3つのメガトレンドを提示しつつ、技術課題やその対応を整理。(10/12の当研究所シンポジウムで発表予定)

• 原子力も重要な技術オプションの一つ。安全性向上の取り組みを進めるとともに、将来を見据えた技術開発も重要。