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日皮会誌:90 C8), 727-731, 1980 C昭55) Purpura Pigmentosa Progressiva(Angiodermatitis) の臨床的研究 第II編 経過ならびに予後について 第1編にて示された臨床形態からみた皮疹の経過およ び予後について調査した. Angiodermatitisの予後についての報告は少なく,一 般に慢性に経過するとされている.自験例をみると,比 較的短期間で治癒する例や年余に渡る例などがあるが, 経過中に一つの臨床形態から別の臨床形態へ移行するこ とはみられず,再発例では,初めの皮疹と同様の臨床形 態として認められた.そして,びまん性型,環状皮疹型 の症例は治癒し,類円形斑状皮疹型では治癒例が多いの に比し,不規則斑状皮疹型では未治癒例が多い.これは 静脈瘤合併の有無とも関係すると考えられる.従って, Schamberg病とMajocchi病とは区別しておきたいと 考え,また,その経過にも若干の差があるものと思われ る. 第1編で触れた臨床形態からみたAngiodetmatitisの 経過ならびに予後について調査したので,その成績につ いて述べた. n 昭和50年6月末の段階で39例の症例を経験した.この うち,通院中の7例を除いた全症例にアンケート調査を 行い19例の回答を得た.(回収率59.3%),また,診療を 希望して来院した者や,電話連絡などによりその後の様 子の知れた者が5例あり,その時点で既に治癒と確認し 得ている症例が4例あることより,この調査で予後不明 北里大学医学部皮膚科学教室(主任 西山茂夫教授) Ryuzo Saito;Clinical Studieson Purpura Pigmen- tosa Progres3iva(Angiodermatitis).Part II. Clini- cal Course and Prognosis 昭和54年11月1日受理 別刷請求先;(〒228)相模原市北里1-15-1 北里大学医学部皮膚科学教室 図1 皮疹の経過 なものは4例のみであった.その後昭和51年6月末迄に 新たな症例が13例みられ,このものを含めて昭和51年6 月末に予後について再調査を行った.症例は総計52例で あるが,予後不明なものは4例にとどまった.従って, 以下の予後成績については,48症例についての結果を示 すこととする. 本症は出血斑が消極した後もしばらく色素沈着を認 め,その持続期間が比較的長い.治癒判定については, 肉眼的に点状出血や毛細血管拡張が消極し,色素沈着も

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日皮会誌:90 C8), 727-731, 1980 C昭55)

Purpura Pigmentosa Progressiva(Angiodermatitis)

          の臨床的研究

第II編 経過ならびに予後について

   斉 藤  隆 三

           要  旨

 第1編にて示された臨床形態からみた皮疹の経過およ

び予後について調査した.

 Angiodermatitisの予後についての報告は少なく,一

般に慢性に経過するとされている.自験例をみると,比

較的短期間で治癒する例や年余に渡る例などがあるが,

経過中に一つの臨床形態から別の臨床形態へ移行するこ

とはみられず,再発例では,初めの皮疹と同様の臨床形

態として認められた.そして,びまん性型,環状皮疹型

の症例は治癒し,類円形斑状皮疹型では治癒例が多いの

に比し,不規則斑状皮疹型では未治癒例が多い.これは

静脈瘤合併の有無とも関係すると考えられる.従って,

Schamberg病とMajocchi病とは区別しておきたいと

考え,また,その経過にも若干の差があるものと思われ

る.

          I 緒  言

 第1編で触れた臨床形態からみたAngiodetmatitisの

経過ならびに予後について調査したので,その成績につ

いて述べた.

          n 成  績

 昭和50年6月末の段階で39例の症例を経験した.この

うち,通院中の7例を除いた全症例にアンケート調査を

行い19例の回答を得た.(回収率59.3%),また,診療を

希望して来院した者や,電話連絡などによりその後の様

子の知れた者が5例あり,その時点で既に治癒と確認し

得ている症例が4例あることより,この調査で予後不明

北里大学医学部皮膚科学教室(主任 西山茂夫教授)

Ryuzo Saito;Clinical Studies on Purpura Pigmen-

 tosa Progres3iva(Angiodermatitis).Part II. Clini-

 cal Course and Prognosis

昭和54年11月1日受理

別刷請求先;(〒228)相模原市北里1-15-1

 北里大学医学部皮膚科学教室

         図1 皮疹の経過

なものは4例のみであった.その後昭和51年6月末迄に

新たな症例が13例みられ,このものを含めて昭和51年6

月末に予後について再調査を行った.症例は総計52例で

あるが,予後不明なものは4例にとどまった.従って,

以下の予後成績については,48症例についての結果を示

すこととする.

 本症は出血斑が消極した後もしばらく色素沈着を認

め,その持続期間が比較的長い.治癒判定については,

肉眼的に点状出血や毛細血管拡張が消極し,色素沈着も

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728 斉藤 隆三

認め得なくなったものを治癒とした.その後の再発の有

無については観察期間が短いため完全治癒とは言い難い

が,少なくとも観察期間中に再発を認めたもののみを再

発例とした.また,当初の個疹は消祖しても引き続き別

の部位に皮疹を新たに認めるものは未治癒例とした.

 昭和51年6月末での治癒症例は24例,未治癒症例20

例,再発例4例である.治癒例の平均罹患期間は8.7ヵ

月(2ヵ月~3年)であり,未治癒例の平均観察期間は

23.4ヵ月(3ヵ月~48ヵ月)である.再発例は,個疹の

軽快する迄の期間は2ヵ月が2例,約1年が2例であ

る.再発までの期間は6ヵ月~2年にわたる.

 これを臨床形態で分類してみると図1のようになる.

症例数が少ないが,びまん性型,環状皮疹型は全例が治

癒し,類円形斑状皮疹型も治癒例が多いのに比し,不規

則斑状皮疹型に未治癒例が多い,これを治癒例のみにつ

いて平均罹患期間をみると,環状皮疹型3ヵ月,点状出

血集族型3ヵ月,類円形斑状皮疹型7.3ヵ月,びまん性

型8.7ヵ月,不規則斑状皮疹型12.6ヵ月である.一方,

未治癒例は1年以上の長期間に及ぶもが大部分である.

 調査時の年齢と経過との関係をみると(表1),高年

齢者でも経過の短く治癒する例もあり,治癒例について

は年齢的な差は認め難い.しかし,未治癒例について

は,高年齢層が多く,このことは経過の長い症例が必然

的に高年齢まで続いているためであろう.

 次に,皮疹の分布と罹患期間との関係をみると(表

2),単発例は6例中5例が1年以内に治癒しているが,

下肢のみの例と,下肢以外の部位にも皮疹をみる例との

比較では,罹患期間に差が認められない.一方,治癒例

のみを取り出し,その平均罹患期間をみると,単発例,

片側例で短く,両側下肢のみのものが長い経過をとるよ

うに思われる.

 静脈瘤を伴う症例の経過についてみると,症例は15例

あり,治癒例6例,未治癒例9例で,再発例はなかっ

た,これを臨床形態で分類すると,類円形斑状皮疹型3

例(治癒例3例),不規則斑状皮疹型11例(治癒例3例,

未治癒例8例),点状出血集族型1例(未治癒例1例)で

あり,不規則斑状皮疹型が多くまた,未治癒例が多い.

なお,治癒例の平均罹患期間は4.6ヵ月であった.また,

皮疹の分布と経過との関係をみると(表3),両側下肢

に皮疹をみる例が多く,また,経過が3年以上に及ぶも

のが多い.

 臨床診断と経過について触れたい.ここでは,臨床

形態および病理組織学的所見とを合わせた症例39例の

表1 年齢と経過

レフ?

3ヵ月

3ヵ月 1

6ヵ月 ヅ11年

3年3年以上

10歳以下○

○●3

20歳代○○△

○●

30歳代○○ ○○ ○○

●○● ●● 11

40歳代○

●○△●● ●●●

50歳以上○○△ ○○○ ○○○ ○○△ ●●●

●●●●●

20

計 9 6 7 13 13 48

   (○治癒 ●未治癒 △再発で)

表2 皮疹の分布と経過

縦ズ 0 1

3ヵ月

3ヵ月 1

6ヵ月

6ヵ月 j

 1年

11年

3年3年以上

単  発○ ○○○ ○

●6

片側性○ ○

● ●4

両側下肢のみ

○○△ ○ ○●●

○○○○○△

●●●

●●●●●●

22

下肢十

他の部位○○○△

○○ ○○ ○△●●● ●●● 16

計 9 6 7 13 13 48

表3 静脈瘤を伴う症例の皮疹の分布と経過

水で3八

3ヵ月 1

6ヵ月

6ヵ月 1

 1年 ズ 3年以上

単  発○○

片側性○ ○

● ●4

両側下肢のみ

○○●

●●●●●

下肢十

他の部位 ●1

計 2 2 3 1 7 15

うち,経過の明らかな36例について検討した. 内訳は

Majocchi病13例Schamberg病12例Gougerot-Blum

病10例,その他1例("Itching purpura と思われる症例)

である,このうち治癒例では平均罹患期間をみると,

Gougerot-Blum病が最も短い経過をどり(8.1ヵ月),次

いでMajocchi病で(10.8ヵ月), Schamberg病は治癒

した症例が1例のみであるが,その経過は12ヵ月であっ

た.

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Purpura pigmentosa progressiva(Angioderm・this)の臨床的研究(l)

 なお,病理組織学検討を行っていない症例について

は,, Majocchi病51例, Scha・・ヽ:berg病8例が|ある.これ

らめ症例では治癒例はMajocchi病2例(平均3.5ヵ

月), Schamberg病7例(平均17.3ヵ月)で,この場合

もSchamberg病の経過が長いことが示された.

 また,経過観察中の皮疹の形態に動きがあるかどうか

をみると,一つの臨床形態から別の臨床形態へ移行する

ことはみられず,再発例では,再発時の皮疹は,初めの

皮疹と同様の臨床形態を示すことが知られた.

 治療については,諸種止血剤ないし血管強化剤を使

用,また抗炎症剤の投与も試みたが一定した成績は得ら

れず,わずかにステロイド軟膏の外用ないしODT療法

が効果をみるという印象にとどまった.また,静脈瘤の

ある症例には弾性包帯などによる下肢の圧迫が皮疹の消

祖によい影響を与えると思われる.

         m 文献的考察

 Angiodermatitisの予後に関しては,一般に慢性に経

過し,多少とも進行性であるとされている.報告例では

治療による効果なども記載されているが,本症には確実

に有効と思われる治療方法がなく,むしろ自然経過と考

えられるものが多い.疾患別に文献上記載された症例の

経過について触れてみたい.

  1) Scluui・berg病

 Schamberg"'の報告した症例では軽快したことが記載

されているが,慢性であることが特徴とされ25)ゆっく

り拡大しながら数年にわたり皮疹が存在し,それから自

然消祖に向うことがある.その経過はKierland"'は数

週から数年にわたるとし, Farrokhzadら12)によると,

25例の症例で平均4.5年間観察しているが,10年間皮疹

が存続した症例がある.軽快した15例では1ヵ月から12

年間(平均1.7年)であった.治癒例の報告としては,

血管強化剤i ACTH,雪状炭酸,ペニシリン療法,ビク

ミソCなどの治療例があるも,同様治療で軽快しない症

例の報告もみられ,この方は経過観察期間の長さによる

ものと考えられる.

  2) MajocchI病

 Scharaberg病と同様に慢性に経過し,数カ月から数

年にわたりゆっくり遠心性に拡大する.時に皮疹は消槌

するも,その近くに同様皮疹が置き換ってみられること

がある.本症では病巣感染との関連性が指摘されるもの

があり26)蓄膿症,慢性扁桃炎,う歯などの治療により

軽快せる症例や,ブ菌トキソイド注射による治療もみら

れ,完全治癒例や再発を繰り返す例などもみられる.

729

Farrokhzadらll)は,経過はSchamberg病より短いが,

その経過は症例により様々であるとしている.

  3)Gongerot・BI-:-:病

 Schamberg病より経過は短いとされるが, Ormsby"'

によると慢性で年余にわたるとしている. Farrokhzad

ら”)の35歳例は10ヵ月後に軽快,40歳例は1年後も病巣

を認めている. Combesら2s)は13ヵ月後も古い病巣は拡

大し,新しい紫斑病変が散在している症例を報告.本邦

では,斉藤ら24),小松3o)の第1例などで約半年後に軽快

した症例がみられ,また,マハルソールの注射後軽快し

た例もある.

 4) ItcU皿g parpui・a

 数「カ月にて自然治癒することが通常であるが,経過に

は変動があり,再発例もある.すなわち,症例により経

過は異るとされるが,Mostoら31)の症例は平均3~6ヵ

月であり, Farrokhzadら12)の11例は1~12ヵ月(平均

5.3ヵ月)で軽快,1例に4年後に再発をみている.野

原らs2)の症例は,ビタミソC,ルチンの投与で6ヵ月後

にはほとんど治癒,川崎ら3s)はEczematid-like purpura

の症例ではステロイド投与にて癈嫁感が軽減,その後ト

ラソサミソ投与で約2ヵ月後に軽快し,後にビタミン

C, K,ルチソに変更し,約1年後下腿に丘疹の発生を

みるも増悪傾向はないという.

 以上のようにSchamberg病, Majocchi病, Gougerot-

Blum病の順に経過は短くなり,一つの臨床形態から別

の臨床形態へ移行することなく経過する.

         IV 総括,考按

 Angiodermatitisは点状出血を主徴とし,慢性進行性

に経過し,後に色素沈着を伴う一群の疾患を指す.年齢

的には小児に少なく,下肢に病変を認めることから,下

肢の循環動態が問題とされよう.家族内発症例では素因

も考慮する必要があるかも知れない.

 下肢に必発することから静脈の循環障害を考える上で

静脈瘤との関連性が指摘されている.自験例では30.8%

の症例に静脈瘤が認められたが,いわゆるFうっ血性皮

膚炎」とは臨床像を異にし,また,病理組織学的にも異

なる組織反応を呈することより,真皮深層以下の太い静

脈の循環障害はAngiodermatitisには重要な要因となる

ことはないであろうと考える.微小循環の異常に関して

は,皮膚毛細顕微鏡による所見を考慮せねばならない.

 皮膚毛細顕微鏡による観察では, Davis">らによると,

初期には毛細管係蹄の頂部で静脈瘤様の拡張があり,モ

こから点状の出血を繰返し,後にヘモジデリソ沈着をみ

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730 斉藤 隆三

る,毛細血管の再生は観察されず,繰返し出血を来して

いる病巣部は終末毛細血管が失われ,真皮の萎縮をみる

に至る.また,血管内の連銭形成がみられるが,これの

程度と病変の活動度とは関連性はなかったという.同様

の所見は島野35)により報告されMa jocchi-Schamberg

病の皮疹部の血管像の特徴として,係蹄頂部のやや不揃

いな拡張,拡張した係蹄頂部からの乳頭輪に一致した円

形の境界鮮明な出血巣の存在,係蹄数の減少,古くなる

と,出血巣はヘモジデリソ沈着へと変ってゆくと述べて

おり,このことは,皮疹部のアルカリフォスファターゼ

染色で乳頭部毛細血管係蹄の延長,その上半分の拡張,

同部輪廓の不鮮明などとしても認められている.また,

西山36)も同染色で真皮上層での毛細血管の増加を観察し

ている.

 一般に血管炎による表皮の変化として,局所の貧血か

急速に起れば壊死を来すし,慢性に起れば萎縮を来す.

しかし, Angiodermatitisでは毛細血管の延長や屈曲を

み,表皮柵の延長を伴うことがある.このことから本法

では「うっ血」という要素が病因の一つとして考えられ

よう.

 臨床形態をみるに,従来言われているようにMajo-

cchi病とSchamberg病とは臨床的に近い関係にある

も,それぞれの典型例では臨床像を異にする.経過を観

察するに,類円形斑状皮疹と不規則斑状皮疹とでは異っ

た出来方をすると考えられ.相互の移行はないものと思

われる.これが原因を異にする別個の疾患とするか,あ

るいは表現型の違いにすぎないとするかは議論のあると

ころではあるが,原因の解明を見ない今日では両者を分

                         文

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  5)斉藤信也,加藤泰三,大角 毅,石橋正夫,照

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   計的観察.その4(1949-1953),西日皮膚, 36:

   35-48, 1974.

  6)斉藤信也,加藤泰三,大角 毅,石橋正夫,照

   井寿代:東北大学皮膚科新来患者5ヵ年間の統

   計的観察.その5(1954-1958),西日皮膚, 36:

   49-62, 1974.

けておきたい.

 臨床形態を前述の5つの型で分けて,その予後をみる

と,点状出血の集族する型,環状皮疹型,びまん性型な

どは症例数が少ないが皮疹は短期間に経過し治癒するも

のが多い.斑状皮疹のうち不規則斑状皮疹をとるものは

類円形皮疹を呈するものより治癒例が少なく,より長い

経過をとる.このことは,静脈瘤の存在などから,下肢

の静脈の循環障害が根底にあるものほど長い経過をとる

ことからも知れる.

          V 結  語

 1)皮疹の経過を観察すると,一つの臨床形態から他

の臨床形態へ移行する例はみられず,再発例では初めと

同じ臨床形態で再発をみることなどから,それぞれの臨

床形態は区別しておきたい,

 2)予後は根底にあると思われる静脈の循環障害の有

無で差がみられる.

 3)年齢的に高年齢者ほど経過の長い例が多いが,皮

疹出現以後の経過観察年限の長さにもよるものと思われ

る.

 4)単発例の予後は良い.

 5)臨床形態からみた皮疹の経過を観察するに,

Schamberg病とMajocchi病とは区別しておきたい.

 本論文の要旨の一部は,第75回日本皮膚科学会総会

 (昭和51年4月3日),ならびに,X International con-

gress of angiology (昭和51年8月31日)において口述し

た.

 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜った久木田

淳教授,西山茂夫教授に深く感謝いたします.

  7)斉藤信也,大角 毅,加藤泰三,照井寿代,五

   十嵐稔:東北大学皮膚科新来患者5ヵ年間の統

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Purpura pigmentosa progress!va (Angiodermatitis)の臨床的研究(Ⅱ)

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