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QR コードの調査・研究 浅山研究室 I00N005 天野誠二 I00N010 石丸政夫 I00N075 仲原丈二 1. はじめに 世界経済の普及により、様々な商品、製品が市場 に出てきた。商品等が多くなるにつれ、物、情報の 管理の重要性が不可欠になり、その中で POS シス テムの導入は、物や商品にバーコードを印字して自 動認識できるという優れたものであり、市場のニー ズに答えることもできた。しかし、物と情報の一体 化などといった様々なニーズがでてきた。そのため バーコードの高度化が進み二次元バーコードが考 え出された。 そこで、本研究では、高度化された二次元バーコ ードの一種類である QR コードについて調査・研究 を行った。 2. 一次元バーコードについて [1],[2] 図1:一次元バーコード 現在よく目にするバーコード(JAN コード)が、 一次元バーコードと呼ばれているものである。(図 1)バーコードとは、いくつもの長方形の黒い線(バ ー)と空白(スペース)でできている。各々の数や 太さを組み合わせることによって、情報を表現する ことができる。しかし、人間がバーの並びだけを見 て、その情報が何であるか理解することは難しいた め、バーコードのデータを文字、数字でバーコード 下部に表示している。この文字データを人間が読め るという意味で「ヒューマンリーダブル(human readable)」と名付けられている。 その後、バーコードによってデータを手で入力す る必要がなくなったため入力ミスが減り、 POS シス テムが普及し始めた。 POS とは、 Point of Sale の略 で販売時点情報管理のことである。 POS システムと は、データ入力をキーボードから手打ち入力するの ではなく、スキャニングによる自動読み取りシステ ムによって、その時点での商品の売り上げ、販売量 などの各情報をコンピュータが管理するシステム のことで、いわば総合経営管理システムである。自 動読み取り(自動認識)するためにバーコードが役 に立っている。 一次元バーコードにも様々な種類がある。血液バ ンク等で使用されている NW-7、統一商品コード ITF などがある。 2:様々な一次元バーコード 3. 二次元バーコードについて [4] 二次元バーコードは、垂直、水平方向(二次元方 向)にデータを持つので、二次元バーコードと呼ば れ、図 1 の一次元バーコードのデメリットが改善さ れたコードである。二次元方向でデータを表現する ので、多くのデータを収納することができる。デー タ容量も増えたことによってデータ復元が可能に なり、漢字・カナなどの文字表現も可能になった。 省スペース化の問題もバーの改良により解決した。 3.1 色々な種類の二次元バーコード [5] 二次元バーコードは、主にスタック式とマトリッ クス式の二種類からなっている。スタック式はデー

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Page 1: QRコードの調査・研究asayama/www/Rejume/2003/QR.pdfQRコードの調査・研究 浅山研究室 I00N005 天野誠二 I00N010 石丸政夫 I00N075 仲原丈二 1. はじめに

QR コードの調査・研究

浅山研究室

I00N005 天野誠二 I00N010 石丸政夫 I00N075 仲原丈二

1. はじめに 世界経済の普及により、様々な商品、製品が市場

に出てきた。商品等が多くなるにつれ、物、情報の

管理の重要性が不可欠になり、その中で POS シス

テムの導入は、物や商品にバーコードを印字して自

動認識できるという優れたものであり、市場のニー

ズに答えることもできた。しかし、物と情報の一体

化などといった様々なニーズがでてきた。そのため

バーコードの高度化が進み二次元バーコードが考

え出された。 そこで、本研究では、高度化された二次元バーコ

ードの一種類である QR コードについて調査・研究

を行った。 2. 一次元バーコードについて [1],[2]

図1:一次元バーコード

現在よく目にするバーコード(JAN コード)が、

一次元バーコードと呼ばれているものである。(図

1)バーコードとは、いくつもの長方形の黒い線(バ

ー)と空白(スペース)でできている。各々の数や

太さを組み合わせることによって、情報を表現する

ことができる。しかし、人間がバーの並びだけを見

て、その情報が何であるか理解することは難しいた

め、バーコードのデータを文字、数字でバーコード

下部に表示している。この文字データを人間が読め

るという意味で「ヒューマンリーダブル(human readable)」と名付けられている。 その後、バーコードによってデータを手で入力す

る必要がなくなったため入力ミスが減り、POS シス

テムが普及し始めた。POS とは、Point of Sale の略

で販売時点情報管理のことである。POS システムと

は、データ入力をキーボードから手打ち入力するの

ではなく、スキャニングによる自動読み取りシステ

ムによって、その時点での商品の売り上げ、販売量

などの各情報をコンピュータが管理するシステム

のことで、いわば総合経営管理システムである。自

動読み取り(自動認識)するためにバーコードが役

に立っている。 一次元バーコードにも様々な種類がある。血液バ

ンク等で使用されている NW-7、統一商品コード

ITF などがある。

図 2:様々な一次元バーコード

3. 二次元バーコードについて [4] 二次元バーコードは、垂直、水平方向(二次元方

向)にデータを持つので、二次元バーコードと呼ば

れ、図 1 の一次元バーコードのデメリットが改善さ

れたコードである。二次元方向でデータを表現する

ので、多くのデータを収納することができる。デー

タ容量も増えたことによってデータ復元が可能に

なり、漢字・カナなどの文字表現も可能になった。

省スペース化の問題もバーの改良により解決した。

3.1 色々な種類の二次元バーコード [5] 二次元バーコードは、主にスタック式とマトリッ

クス式の二種類からなっている。スタック式はデー

Page 2: QRコードの調査・研究asayama/www/Rejume/2003/QR.pdfQRコードの調査・研究 浅山研究室 I00N005 天野誠二 I00N010 石丸政夫 I00N075 仲原丈二 1. はじめに

タをバーで、マトリックス式のデータは白黒の正方

形のセルで表現されている。バーやセルが情報の基

本単位となっている。スタック式は一次元バーコー

ドが積み重なってできており、マトリックス式はセ

ル型の二次元バーコードである。スタック式、マト

リックス式の二次元バーコード一例を下記に示す。

図 3:スタック式(左)とマトリックス式(右)

4. QR コードについて [5] QR コード(Quick Response Code)とは、素

早い反応を意味する。この名前は高速読み取りを重

視したところからつけられた。QR コードは、漢字、

カナの文字表現を1文字13ビットで表現してい

るので、他の2次元バーコードに比べて多くの表現

ができる。また、2次元方向にデータをもつので省

スペースでの表現も可能になり、データの中にデー

タを復元させるコードも含まれているので、ある程

度データが汚れていても復元することが可能であ

る。このように優れた特徴をもつ QR コードは規格

化され国際的にも認められ始め、国内だけでなく、

海外での利用も見込まれている。 4.1 QR コードの構成 [5],[6],[7]

図4:QR コード構造図 QR コードは主に、データセルと機能セルで構成

されている。データセルは QR コードの中にあるデ

ータを表現するセルであり、データと誤り訂正符号

を合わせたものである。ビット列が 1 ビット 1 セル

の形で、ビットの値が1のとき、セルは黒(暗)、

0のとき、セルは白(明)で表現される。 4.2 機能セル 機能セルは、図4の切り出しシンボル、タイミン

グパターン、アライメントパターン、フォーマット

情報にあたるセル、すなわち、データセル以外のセ

ルのことを指し、QR コードの位置検出や、データ

セルの各セルを切り出す基準として使用される。 4.3 切り出しシンボル(図4,(1))

QR コードシンボルの中に三つあり L 字型で配置

され、QR コードの位置や方向を検出することがで

きる。切り出しシンボルを 360°どの方向からでも

読み取ることができるので、高速読み取りが可能で

ある。

図5:切り出しシンボルの方向性

位置を検出するとき、(a)(b)(c)のどの方向か

ら切り出しシンボルを通ったとしても、黒白黒白黒

の部分の幅の割合が1:1:3:1:1になる。こ

のため、QR コードの上下左右が回転していても、

3個の切り出しシンボルの位置は変わらず、回転し

た角度を認識できるので、どの方向からでも読み取

ることができる。

図6:切り出しシンボルの構造

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4.4 タイミングパターン (図 4 , (2)) タイミングパターンは点線状の白と黒のセルが

交互に配置され構成されており、L 字型の切り出し

シンボルの間の2箇所に配置されており、各データ

セルの中心座標を補正するために用いられる。

4.5 アライメントパターン (図 4 , (3)) アライメントパターンは図4(3)のように、QRコードでは右下に配置され、コードが歪んだりした

ときにコードの位置を合わせるために用いられる。 4.6 フォーマット情報 (図 4 , (4)) 図4(4)にあるように、切り出しシンボルの周

辺に配置され、デコードを行うときに始めにこのフ

ォーマット情報を読み出している。この中にはデー

タの誤り訂正レベルなどの情報が格納されている。 4.7 マージン (図 4 , (5)) 二次元コードの周りにはマージンを確保し、QRコードの場合はコードの周りに4セル分のマージ

ンを確保する必要がある。

図7:マージンについて

4.8 誤り訂正機能 (図 4 , (6)) 2次元バーコードの一つの特徴として、データ復

元機能がある。バーコードの一部が汚れたり、破損

しても、情報を修復し読み取ることができる。しか

し、汚れるのにも制限があり、QR コードの場合は

セル部分が30%以下の汚れ程度ならば、データが

読み取ることができるが、切り出しシンボルの部分

が汚れたり破損してしまえば、高速読み取りはおろ

か、データの復元にも至らない。 図8の①はデータセルを、②はアライメントパタ

ーンを、③は QR コードの一部を削ったものが示さ

れており、読み取りが可能であるかどうかが示され

ている。

図8:誤り訂正機能 5. QR コードと一次元バーコードの比較

[1],[3],[5] 一次元バーコードは、データ入力が簡単かつ読

み取る機器も入手が安易で、幅広い分野で使用され

ている等のメリットが挙げられる。しかし、表 1 を

見てもわかるように、一次元バーコードには文字表

現、情報容量に限度があり、暗号化ができないこと

やデータ復元ができない点などがデメリットとし

て挙げられる。このデメリットを改善点とし、新た

に、大容量の情報を持ち、データ復元が可能になっ

たバーコードが QR コードと言える。 表1:QR コードと一次元バーコードの比較表

Page 4: QRコードの調査・研究asayama/www/Rejume/2003/QR.pdfQRコードの調査・研究 浅山研究室 I00N005 天野誠二 I00N010 石丸政夫 I00N075 仲原丈二 1. はじめに

6. QR コードの作成、読み取り [8] 7. 結論 QR コードの構成、特徴を把握した上で、QR コ

ードの作成を行った。 二次元バーコード、特に QR コードを規格書等も

含めて調査、研究を行った。QR コードの性質、特

徴を理解し、web サイトで公開されている QR コー

ドのエンコードプログラムを参考に、QR コードの

作成を行い読み取ることもできた。

まず、web サイト内で有限会社 Psytec 社が公開

している QR コードのエンコードプログラムを参考

にして、英数字のみのデータが入るエンコードプロ

グラムに仕上げた。 QR コードは一次元バーコードよりもはるかに優

れた点を持ち、日本において現時点では普及の段階

にあるといえる。 最初に、英数字のデータを決定する。ここでは、情

報(データ)を“007”と入力した。データ入力後、

エンコードプログラムを実行させると、QR コード

の画像が出力される。出力された QR コードを携帯

電話(QR コードの読み取り機能を持つ機種)で読

み取ると、携帯電話の画面に認識データとして最初

に入力した数字のデータ“007”が表示される。以

上の実験でプログラムが正しく動作していること

が、確認できた。

8. 今後の課題 QR コードを作成するにあたり、今回はエンコー

ドプログラムのみを作成、実行したが、デコーダの

プログラムも作成することが必要であろう。 さらに社会全般の QR コードについて見解が変わ

ることを望んでいる。 データを QR コード化して、出力された QR コー

ドを携帯電話で読み取り、画面表示した流れ図が以

下のようになる。

参考文献 [1]2次元コードについて、QR コードの特徴、規

格化・標準化

http://www.denso-wave.com/qrcode/aboutqr.html [2]平本純也著 『バーコード・二次元コードの知識』 日本工業出版株式会社(2001) [3]バーコードと2次元コードの知識 http://www.phoenix-denshi.co.jp/page/series.html [4]バーコードの特徴と種類 http://www.metrologic.com/asia/jp/barcode/2-toku-syu.html [5]QRコードをつくってみる http://www.swetake.com/qr/qr1.html [6]2 次元コードの基礎知識 http://www.keyence.co.jp/barcode/2jigenbasic/chishiki4.html [7]標準化研究学会 『QR コードのおはなし』日本規格協会(2002) [8]Psytec

http://www.psytec.co.jp/図9:QR コード作成・読み取り過程