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Toray Industries, Inc. Integrated Annual Report 2020 39 Toray Industries, Inc. Integrated Annual Report 2020 38 樹脂事業 コンパウンド事業をさらに増強 樹脂事業では、非晶性のABS樹脂、結晶性のナ イロン、 PBTPPS、液晶ポリエステル(LCP)、 TI ポリマーを事業化しており、これら樹脂に炭素繊 維をブレンドしたトレカ樹脂も販売しています。ナ イロン、 PBTは多くの自動車部品に採用され、耐 熱性が高く高付加価値のPPSは金属部品を代替 する製品となっています。樹脂事業は、世界10 国に19の拠点を有し、主にアジア諸国でコンパウ ンド事業を中心に展開しています。 2014年度以 降、メキシコ、韓国、ハンガリーと生産拠点を拡充 し、昨年からはインドでのコンパウンド生産を開始 しました。“AP-G 2022”の期間中も各拠点をさら に拡充していく方針です。 xEV 5G用途が成長市場 自動車で、 2025年にはxEV (電動車)の生産割 合が全体の46% 2020年は9%)に達すると予測 されます。 xEVのパワーコントロールユニット等に PPSが、水素タンク部品にはナイロンが使用さ れています。加えて、運転支援技術の進化により センサー需要が拡大し、 PBT需要の高まりが期 待されます。また、日本でも5Gの商用サービスが 始まりましたが、対応スマートフォンや基地局向け に、通信ロスの少ない低誘電PBTや高耐熱PPS の伸びが期待されます。さらには、独自開発の LCPポリマーも高速伝送フレキシブル基盤用途と して需要拡大が見込まれます。 PPSでのNo.1堅持と 高機能ABS事業拡大 私たちは、世界唯一のPPSモノマー・ポリマー・コ ンパウンド一貫メーカーであり、 PPS コンパウンドの 世界販売シェアは27 %とNo.1 を誇っています。 PPS は、 xEV、車載電装部品、軽量化ニーズを背景に年 5 %の拡大が見込まれ、 AP-G 2022”期間中は、 素材力、原料一貫開発力、グローバル対応力を強 みとして、設計・加工法まで含めたトータルソリュー ション提案を行い、さらなる事業拡大を図ります。 加えて、私たちは透明ABSで世界シェア37%を 有しています。透明ABSを含む高機能ABSの世 界市場は年率5%の成長が見込まれ、マレーシア で生産能力増強を進めています。さらに、医療用 透明ABSや車両塗装用ABS、エンプラアロイ等 の拡大により、高機能ABS樹脂で、 No.1を目指し ています。 ケミカルリサイクルを推進 樹脂事業では、サステナブル社会への対応とし て、リサイクル材の活用と共に、元の製品と同等 のものとするケミカルリサイクルの技術開発を推 進し、リサイクルの高度化を図ります。中長期的に は、バイオマスプラスチックや生分解性・海中分解 性樹脂の開発も視野に入れています。 ケミカル事業 主原料事業を軸に展開 ケミカル事業は、繊維、樹脂、フィルムの主力製 品であるナイロン、ポリエステルの主原料事業を 軸に、その周辺で技術が活かせる事業を展開して います。大きくは3つの事業に分けられ、 「基礎原料 事業」は、カプロラクタム、テレフタル酸を扱ってい ます。「ファインケミカル事業」は、医農薬の原料や 微粒子、動物薬、溶剤・洗浄液のDMSO、シーリン グ材のチオコールなどがあります。「香料事業」は、 三井物産との合弁会社である曽田香料(株)の製 品が、コーヒー、柑橘系飲料等に使われています。 3Dプリンター、 農業、環境、動物薬等に注力 成長領域では、 3Dプリンターの造形素材に使 われるPPS微粒子を開発・上市しています。優れ た粉体特性、均一な粒度分布を有しており、自動 車、航空・宇宙用途等への適用が期待されます。 農薬原料「メタジクロロベンゼン」は、 PPS樹脂原 料の副生品を原料としており、コスト面に加え、安 全面・環境面でも比較優位な製法を有しており、 世界シェアNo.1を堅持します。また、ラクタムの副 生品であり、チッソ系の肥料として使われる硫安 を、農家の機械撒きに適した形状にすることで高 付加価値化を図ります。 環境関連では、高断熱の複層ガラスに使われ、 省エネに貢献するシーリング材のチオコール等の 拡大に注力します。さらに動物薬では、世界初の 猫インターフェロンや猫の腎機能低下抑制薬の 海外展開を加速します。 DAY One: 10:30-11:10 取締役 樹脂・ケミカル事業本部長 猪原 伸之 Resins & Chemicals 年度2019実績 IFRS3,204 4,100 +282022目標 IFRS億円:グループ間取引ケミカル 樹脂 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 AP-G 2022売上収益目標 樹脂事業のバリュー・チェーン 社会問題解決する開発パートナーへ レの事業領域 客様事業領域 ベースポリマ

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  • Toray Industries, Inc.Integrated Annual Report 2020

    39

    Toray Industries, Inc.Integrated Annual Report 2020

    38

    樹脂事業

    コンパウンド事業をさらに増強樹脂事業では、非晶性のABS樹脂、結晶性のナ

    イロン、PBT、PPS、液晶ポリエステル(LCP)、TIポリマーを事業化しており、これら樹脂に炭素繊維をブレンドしたトレカ樹脂も販売しています。ナイロン、PBTは多くの自動車部品に採用され、耐熱性が高く高付加価値のPPSは金属部品を代替する製品となっています。樹脂事業は、世界10ヵ国に19の拠点を有し、主にアジア諸国でコンパウンド事業を中心に展開しています。2014年度以降、メキシコ、韓国、ハンガリーと生産拠点を拡充し、昨年からはインドでのコンパウンド生産を開始しました。“AP-G 2022”の期間中も各拠点をさらに拡充していく方針です。

    xEV、5G用途が成長市場自動車で、2025年にはxEV(電動車)の生産割合が全体の46%(2020年は9%)に達すると予測されます。xEVのパワーコントロールユニット等にはPPSが、水素タンク部品にはナイロンが使用されています。加えて、運転支援技術の進化によりセンサー需要が拡大し、PBT需要の高まりが期待されます。また、日本でも5Gの商用サービスが始まりましたが、対応スマートフォンや基地局向けに、通信ロスの少ない低誘電PBTや高耐熱PPSの伸びが期待されます。さらには、独自開発のLCPポリマーも高速伝送フレキシブル基盤用途として需要拡大が見込まれます。

    PPSでのNo.1堅持と高機能ABS事業拡大私たちは、世界唯一のPPSモノマー・ポリマー・コ

    ンパウンド一貫メーカーであり、PPSコンパウンドの世界販売シェアは27%とNo.1を誇っています。PPSは、xEV、車載電装部品、軽量化ニーズを背景に年率5%の拡大が見込まれ、“AP-G 2022”期間中は、素材力、原料一貫開発力、グローバル対応力を強みとして、設計・加工法まで含めたトータルソリューション提案を行い、さらなる事業拡大を図ります。加えて、私たちは透明ABSで世界シェア37%を有しています。透明ABSを含む高機能ABSの世界市場は年率5%の成長が見込まれ、マレーシアで生産能力増強を進めています。さらに、医療用透明ABSや車両塗装用ABS、エンプラアロイ等の拡大により、高機能ABS樹脂で、No.1を目指しています。

    ケミカルリサイクルを推進樹脂事業では、サステナブル社会への対応とし

    て、リサイクル材の活用と共に、元の製品と同等のものとするケミカルリサイクルの技術開発を推進し、リサイクルの高度化を図ります。中長期的には、バイオマスプラスチックや生分解性・海中分解性樹脂の開発も視野に入れています。

    ケミカル事業

    主原料事業を軸に展開ケミカル事業は、繊維、樹脂、フィルムの主力製品であるナイロン、ポリエステルの主原料事業を軸に、その周辺で技術が活かせる事業を展開しています。大きくは3つの事業に分けられ、「基礎原料事業」は、カプロラクタム、テレフタル酸を扱ってい

    ます。「ファインケミカル事業」は、医農薬の原料や微粒子、動物薬、溶剤・洗浄液のDMSO、シーリング材のチオコールなどがあります。「香料事業」は、三井物産との合弁会社である曽田香料(株)の製品が、コーヒー、柑橘系飲料等に使われています。

    3Dプリンター、農業、環境、動物薬等に注力成長領域では、3Dプリンターの造形素材に使われるPPS微粒子を開発・上市しています。優れた粉体特性、均一な粒度分布を有しており、自動車、航空・宇宙用途等への適用が期待されます。農薬原料「メタジクロロベンゼン」は、PPS樹脂原料の副生品を原料としており、コスト面に加え、安全面・環境面でも比較優位な製法を有しており、世界シェアNo.1を堅持します。また、ラクタムの副生品であり、チッソ系の肥料として使われる硫安を、農家の機械撒きに適した形状にすることで高付加価値化を図ります。環境関連では、高断熱の複層ガラスに使われ、省エネに貢献するシーリング材のチオコール等の拡大に注力します。さらに動物薬では、世界初の猫インターフェロンや猫の腎機能低下抑制薬の海外展開を加速します。

    DAY One:10:30-11:10取締役樹脂・ケミカル事業本部長猪原 伸之

    Resins & Chemicals

    (年度) 2019実績(IFRS)

    3,204

    4,100+28%

    2022目標(IFRS)

    (億円) 注:グループ間取引を含むケミカル樹脂

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    “AP-G 2022”売上収益目標

    樹脂事業のバリュー・チェーン

    共に社会問題を解決する開発パートナーへ

    東レの事業領域お客様の事業領域

    原 料

    重 合

    ベースポリマ売り

    コンパウンド

    成形・部品

    組み立て

    樹脂・ケミカル事業