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RIT 事業 成功事例集 Success Stories of RIT Program 日本貿易振興機構 (ジェトロ) 機械・環境産業部 機械・環境産業企画課 地域産業連携班 ジェトロ 地域間交流支援事業(RIT 事業) / Regional Industry Tie-up(RIT)

RIT事業 成功事例集 - ジェトロ(日本貿易振興機構) | 業 成功事例集 Success Stories of RIT Program 日本貿易振興機構 (ジェトロ) 機械・環境産業部

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RIT 事業 成功事例集

Success Stories of RIT Program

日本貿易振興機構 (ジェトロ)

機械・環境産業部 機械・環境産業企画課 地域産業連携班

ジェトロ 地域間交流支援事業(RIT 事業) / Regional Industry Tie-up(RIT)

はじめに

日本各地には、高い技術力を有する中小企業から成る産業集積地が数多くありますが、取引先の海外生産シフトやアジア諸国からの低価格品の流入等の影響により、これまでの分業体制等の変化に直面しているところが少なくありません。

その打開策の一つが海外展開です。ジェトロは、「地域間交流支援事業」(Regional Industry Tie-up Program)、略して「RIT(アール・アイ・ティ)事業」にて、産業集積地の中小企業の海外ビジネスを支援しています。2007 年度に開始して以来、2012 年度まで全国約 50 件の地域間交流を支援してきています。

RIT 事業の仕組みですが、まず日本の産業集積地(=国内実施主体)が海外の産業集積地(=海外実施主体)と信頼関係を築きます。その上で、双方の集積地に属する中小企業同士が商談に臨みます。双方の産業集積地には企業のとりまとめ役としての事務局があり、日本側から見ると、海外側の事務局が関与することにより、身元のわかる、信頼できそうな海外企業に出会えるチャンスを増やすことができます。また、産業集積地の事務局とジェトロが協力して中小企業の海外ビジネスを支援するのも特色です。

これから輸出や調達に乗り出そうという中小企業の皆様、さらには生産委託、技術提携、共同開発の海外パートナー探し等、ハイレベルの海外ビジネスを検討する中小企業の皆様、およびそうした地元の中小企業をまとめて支援しようとお考えの自治体や産業支援機関にとって、RIT 事業は有効な支援手段となりえます。

本成功事例集では、RIT 事業を活用することにより、海外企業との商談成約に至った最近の事例について、国内実施主体の視点を交えて紹介しています。今後も随時、事例を追加していく予定です。本資料が RIT 事業理解の一助になれば幸いです。

<図:地域間産業交流の枠組み>

産業集積地

(中小企業群)

日本側

産業支援機関

(実施主体)

産業集積地

(企業群)

海外側

産業支援機関

(実施主体)

関係構築

商談実現のための主な支援ツール

① 国内研究会(勉強会)

② 調査(文献、専門家調査)

③ ミッション派遣(海外商談)

④ 有力企業招へい(国内商談)

最長 3年間の支援

輸出、調達、生産委託、技術提携、共同開発 等

コーディネータ

専門家

自治体

ジェトロ

コーディネータ

ジェトロ

2013 年 3 月日本貿易振興機構(ジェトロ) 機械・環境産業部 地域産業連携班

頁 企業名案件名 取引内容(製品名)

1アジア技研 株式会社

北九州市=韓国慶尚南道(機械部品・材料加工) 海外委託生産(スタッド)

2エスティケイ テクノロジー 株式会社

大分県=韓国忠清北道(半導体) 製品 ・ 技術・サービスの輸入(金属鋳造・樹脂成型品)

3エンジニアリング・システム 株式会社

諏訪=スイス / フランス(マイクロマシン) 共同研究 / 開発(超微細塗布装置)

4株式会社 オーツカディーゼル

大分県=韓国忠清北道(半導体) 製品 ・ 技術・サービスの輸入(発電機・同エンジン)

5有限会社 オフィス結アジア

藤沢=フィンランド(情報通信・電子機械機器 ) 現地法人設立

6株式会社 キッコウジャパン

山口=台湾(環境関連産業) 製品 ・ 技術 ・ サービスの輸出(護岸工事技術)

7救急薬品工業 株式会社

富山=スイス(医薬品) 共同研究 / 開発(貼り薬)

8株式会社 グリーンプラス

山口=台湾(環境関連産業) 製品 ・ 技術 ・ サービスの輸出(コーティング技術)

9高島産業 株式会社

諏訪=スイス / フランス(マイクロマシン) 製品 ・ 技術 ・ サービスの輸出(DTP 製品)

10日特エンジニアリング 株式会社

埼玉県=ドイツ(精密加工技術) 製品 ・ 技術 ・ サービスの輸入(ハンダ技術)

11株式会社 MIKAMI

埼玉県=ドイツ(精密加工技術) 製品 ・ 技術 ・ サービスの輸出(機械部品)

12A 社(北九州市)

北九州市=ベトナム・ハノイ・ハイフォン地域      (金属加工・機械製造)

海外委託生産(集塵機)

目  次

発行年:2013 年 3 月 / © JETRO 2013 All rights reserved

「継続は力」で 韓国での委託生産を開始

アジア技研 株式会社

代 表 者 : 代表取締役 溝口 純一資 本 金 : 3,000 万円 従業員数: 29 名主な製品: スタッド溶接機、スタッド(おねじ・

めねじ)、スタッド溶接ロボット、マグネシウム合金スタッド溶接システム

所 在 地 : 福岡県北九州市小倉北区西港町 72 番地 39T E L : 093-562-0170U R L : http://www.asiagiken.co.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ企業単独では難しい、海外地方企業との交流やビジネスマッチングを事前調査まで含めて実施できる RIT 事業に魅

力を感じて参加しました。

RIT 事業への継続参加が韓国企業との取引の契機にアジア技研株式会社の溝口社長は 2011 度に引き続き 2012 年度も本 RIT 事業に

参加、2012 年 10 月の韓国へのミッションでは、現地で Nam youn Hi-tech 社を訪問しました。Nam youn Hi-tech 社とは、2011 年度に参加したミッションにて関係を構築した別の韓国企業を介して知り合ったもので、今回のミッションの準備段階で、あらかじめ引合い情報の交換を行っていました。

事前の情報交換で意思疎通が十分に行われていたことから、この訪問では、 Nam youn Hi-tech 社が製造する、「めねじ」スタッドボルトの品質等を中心に確認し、基準を満たしていることから正式に委託生産契約を締結する運びとなりました。

今後は、 Nam youn Hi-tech 社からの納品物の検品を日本で行う予定であり、併せて本格的な委託生産が開始される見込みです。

アジア技研は、今後の東南アジアへの進出、現地生産・現地販売も含め、アメリカやヨーロッパ市場への販売網を拡大して行く意向です。

実施主体(北九州市)の目RIT 事業は、同一年度内に複数ツールを実施でき、更に各年度の成果が認められた場合には、複数年にわたって事

業を行うことができます。前年度事業で交流を持った別の韓国企業を通じて知り合った企業との成約は、連続して複数の商談機会を提供できる RIT 事業ならではの成果ですが、同時に、地域企業の要望によく応えて、複数回参加していただけるようなミッションの内容を企画実施した成果でもあると考えています。

企業概要 製品紹介

北九州市=韓国慶尚南道(機械部品・材料加工)

2013 年 1 月 時点

めねじスタッドボルト

スタッド溶接の例

1

2

企業概要

製品紹介

韓国企業から樹脂成型品を調達

エスティケイテクノロジー 株式会社

代 表 者 : 代表取締役社長 丸井 彰資 本 金 : 1 億 8 千 100 万円 従業員数: 400 名主な製品: 半導体検査装置開発製造、半導体受託生産

所 在 地 : 大分県大分市三佐 2468-10T E L : 097-527-2161U R L : http://www.stk-net.co.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ近年、半導体業界はグローバル化が加速しており、エスティケイテクノロジー株式会社がおかれている業態はます

ます海外シフトが顕著な事もあり、RIT 事業に参加し自社の立ち位置の明確化、販路拡大、仕入先のグローバル化を目的とし参加しました。

韓国から部品を調達エスティケイテクノロジー株式会社は、半導体製造装置の開発・製造と半導体の設計・製造をしており、2010 年

10 月の韓国への商談ミッションの際に、韓国企業 JUNTECH 社と板金加工品・樹脂成型品の調達について商談を行いました。

同年 12 月に韓国からの商談ミッションの一環として、JUNTECH 社を含めた韓国企業が大分県を訪れ、その際に改めて両社で商談を行い、取引を前提とした MOU(覚書)を締結しました。

この覚書に基づき、両社の持つ技術や販売網などの情報交換を開始し、両者間での取引に向けた協議を推進していくことを確認するなど、商談成約に向けてのビジネス環境を整えました。

その後、2011 年 7 月の韓国へのミッションの際に行われた商談において、エスティケイテクノロジーが樹脂成型品の委託生産及び JUNTECH 社のその他の製品の輸入する基本契約を締結しました。

実施主体(大分県LSIクラスター形成推進会議)の目エスティケイテクノロジー株式会社は海外への展開について意欲的であり、今回の RIT 事業においても積極的で全

てのイベントに参加して頂いた。バーン・イン装置を始め、テスト技術、加工技術で優れた技術を持っており外部へ指導できる立場でもある。

今回 成約の最大の要因は両企業のコミュニケーションがとれている事を適時確認し、案件のフォローアップを行ったことである。また相手を良く知るために相互の企業訪問を勧めたり、商談会等、交流の機会がある際は両社の社長の参加を依頼した。

両社立ち合いでの MOU、MOA(合意覚書)の書面作成の際は JETRO の支援を得ながらお互いが納得できる文面にした。長い展望で協業していくという両社の経営方針が比較的に近いことも良かった。

大分県=韓国忠清北道(半導体)

2013 年 1 月 時点

バーンイン装置 MEMSテスター

 スイスの工科大学と研究開発

エンジニアリング・システム 株式会社

代 表 者 : 代表取締役 柳沢 真澄資 本 金 : 2,000 万円 従業員数: 25 名主な製品: 自動化生産機械装置、自動検査装置等所 在 地 : 長野県松本市笹賀 5652-83T E L : 0263-26-1212

U R L : http://www.engineeringsystem.co.jp/

RIT 事業に参加したきっかけ諏訪地域の工業集積地に集まる企業が地域の活性化を目的に開催する「Desk Top Factory(DTF)」研究会のメンバー

として、超精密卓上工作機械・システムの研究開発に取り組む中で、同研究会が RIT 事業を活用すると同時に自然な形で RIT 事業に参加した。また、2009 年当時、「国内市場の縮小傾向が続く中で、その打開策として欧州が次の販路開拓先として有望になる」との会社の施策と RIT 事業のコンセプトが一致した。

日本とスイスの技術の融合で新商品を開発諏訪とスイス企業との間での提携の可能性を探るために、2009 年 3 月に行

われた海外出張調査の際に、諏訪から派遣された専門家が EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)を訪問しました。この際に、同専門家が同大学の精密デバイス分野の教授と面談し、エンジニアリング・システム株式会社(ESCO 社)製品の「高精度塗布装置」の提携可能性を相談したところ、この教授から同装置に関心を持ちそうな、同教授の研究室に在籍する研究者を紹介するとの話を受けました。

この出張の後に、専門家より EPFL との提携の可能性の報告を受けた柳沢社長は、同年 5 月のスイスへの商談ミッションに参加し、この教授と面談しました。 柳沢社長から高精度塗布装置の性能の詳しい説明を受けた教授は、自身の研究室での研究対象への応用を検討し始めました。

検討の結果、2010 年 1 月に、この教授から ESCO 社との共同開発提案が寄せられ、同教授の研究室の大学院生が 2011 年 10 月~ 2012 年 1 月まで ESCO社に派遣され、同社の技術者と共同で新しいデバイスの製品開発を行いました。

両者の共同開発の成果などが EPFL の論文で発表され、今後研究機関から民間企業に広く普及されることが期待されています。また、この共同開発の成功を受け、現在は新しい共同プロジェクトの検討も行われています。

現在は研究機関との共同開発を中心とする海外展開となっていますが、ESCO社としては民間企業向けの製品開発も視野に入れています。

実施主体(長野県テクノ財団)の目RIT 事業がきっかけとなって支援終了後も年に1回現地にミッション団を派遣しているほか、諏訪工業メッセに先

方を招待するなどして年に 2 回程度、顔が見える地域間交流を継続的に行っている。同社の場合、企業の決定権者である社長が自らミッションに参加して、海外に対してプレゼンを行ったり、海外からの要望に応じた開発を行うなど新しい試みに対して積極的な姿勢をもっていたほか、同社がスイスから人材を受け入れたことで、先方とのパイプをより太くしたことが成約に繋がった。

企業概要 製品紹介

スイスの工科大学と研究開発3諏訪=スイス / フランス(マイクロマシン)

2013 年 1 月 時点

「ナノインプリント」装置

共同開発のベースとなった「Q-Jet」

3

企業概要

製品紹介

4  韓国から発電機用部品を導入

株式会社 オーツカディーゼル

代 表 者 : 代表取締役 大塚 吉高資 本 金 : N/A 従業員数: N/A主な製品: 常用・非常用発電機、ポンプ

所 在 地 : 大分県大分市西新地1丁目 1 番 32 号T E L : 097-558-9271U R L : http://www.otsuka-diesel.co.jpE m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ国内はもとより、海外との競争に打ち勝っていくために技術力向上とコスト低減をはかるため、株式会社オーツカ

ディーゼルでは海外製の発電機構成部品を積極的に用いてきました。大分県には、産官学が一体となった大分県 LSIクラスター推進会議があり、同会議より RIT 事業をご紹介頂き、参加致しました。

韓国から部品を調達2010 年 12 月に行われた韓国への商談ミッションに参加した株式会社オーツカディーゼルの大塚社長は Daeyoung

Engine & Generators(デヨン社)のキム代表理事と面談し、発電機構成部品(エンジン、制御装置)の輸入商談を行いました。日本語に堪能なキム代表理事の積極的な姿勢もあり、2011 年 7 月 20 日からの韓国への商談ミッション派遣に先立ち、7 月 5 日に大分で行われた予備商談で、大塚社長とキム代表理事は発電機部品の輸入に大筋で合意しました。

この合意を受け、7 月 21 日に再び韓国で商談を行い、発電機用エンジン並びに発電機の完成品輸入の合意書(MOU)を締結し、実際の取引に向けた具体的な検討を行うことを確認しました。MOU 締結後も、オーツカディーゼルの担当者がデヨン社を訪問、技術的な確認を経た上で、2011 年 11 月の大分での商談会で基本契約を締結しました。

この基本契約で、防災用の非常電源(UPS)発電機用ディーゼルエンジンをデヨンが販売しオーツカの発電機に搭載することと、オーツカがデヨンへディーゼル発電機をサンプル発注することに合意しました。今後は、発電機完成品の輸入についての個別契約を締結する見込です。

同社としては、競争力の高い発電機構成部品の輸入については、これからも継続して行く予定であり、ガスエンジン、バイオマスエンジンが候補となっています。また、電力事情の悪い海外へ向けての発電機輸出、レンタル事業展開を視野にいれて、信頼できる海外パートナー企業を採り入れるための、情報収集を行う予定です。

実施主体(大分県LSIクラスター形成推進会議)の目近年、災害時の停電対策が叫ばれる中、発電機の需要は大きく増加している。株式会社オーツカディーゼルへも発

電機の引き合いが多く、設計を含めた生産能力は限度に近づいてきている。その中で RIT 事業でのデヨンエンジン社との商談はタイムリーなものとなった。オーツカディーゼルは技術力が高く、海外からの技術の導入については高度な要求がなされる。今回 取引成立の最大の要因は両企業のコミュニケーションがとれていることを適時確認し、お互いが要求する案件に十分に応えているかについてフォローアップを行ったことである。また相手を良く知るために相互の企業訪問を勧めたり、商談会等、交流の機会がある際は両社の社長に参加を依頼しました。両社立ち合いでのMOU、MOA の書面作成の際は JETRO の支援をもらいながらお互いが納得できる文面にしました。

韓国から幅広い調達を目指す4

大分県=韓国忠清北道(半導体)

2013 年 1 月 時点

エンジンユニット 非常用発電機

フィンランドに欧州拠点を設立

有限会社 オフィス結アジア

代 表 者 : 代表取締役社長 高橋 宜盟資 本 金 : 300 万円 従業員数: 15 名主な製品: 携帯端末用アプリケーション所 在 地 : 神奈川県藤沢市鵠沼東 1-1 玉半ビル 3FT E L : 0466-21-7448U R L : http://www.office-yui.co.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ2011 年1月に藤沢産業センター(現:財団法人湘南産業振興財団)で開催された 2010 年度のフィンランド RIT ミッ

ション派遣報告会に参加。最初は漠然とした興味を持っただけでしたが、日本に一番近いヨーロッパの国という言葉に他と違う何かの存在を感じ、2011 年度のミッションに参加。

フィンランドから世界へアプリを発信2011 年のフィンランドへの商談ミッション参加した当時、オフィス結アジアの高橋社長は、「指伝話(ゆびでんわ)」

(予め登録してある言葉を指で選択して音声で自らの意思を伝える iPhone、iPad 用のアプリケーション)を開発中でした。日本でのビジネス展開すら見えていない中でのミッション参加でしたが、同国への進出支援をしている団体”Otaniemi Marketing” と出会い、「あなたのアイデアは資本だ」という担当者の言葉に心動かされ、ヨーロッパ進出を決意しました。

帰国後、Otaniemi Marketing から紹介のあった、インキュベーションセンターの活用や大学との連携を念頭にフィンランドへの拠点設立準備に入った高橋社長は、2012 年 3 月に独自でフィンランドに渡航し、オフィス候補地の下見と弁護士と現地法人設立に向けた打合せを行いました。ミッション参加から半年後の 2012 年 5 月に現地法人 “Office Yui Europe” を設立(資本金 2500 ユーロ)しました。

2012 年 10 月にはフィンランドへの商談ミッションに参加、アプリケーションのユーザ志向のインタフェースが認められ、オウル市のヘルスケアプロジェクトにフィンランド企業として参加を表明すると共に、ヘルシンキの技術会社との提携も決めました。

高橋社長はフィンランドから EU 市場全体を視野に入れた展開も見据えており、「指伝話」以外の商品でクロアチアの企業と代理店契約も結びました。アプリケーション開発は、数ヵ月で急速に成長するビジネススキームではありませんが、ヨーロッパとアジアに拠点を持つ強みを活かしつつ、着実に芽を育てていこうとしています。

実施主体(財団法人 湘南産業振興財団)の目同社の情報収集力と積極的な交流がポイントである。そして、何よりも実行に移すまでのスピードも成功の要因と

言えます。また、当財団が運営するインキュベートルームに入居している利点を活かし、様々な情報にアンテナを伸ばし、該当する支援ツールを活用している。このスピード感と積極性は海外展開を行なう上では重要であり、ミッション後、半年足らずで現地拠点を設置するまでに至った要因と言えます。

企業概要

5

製品紹介

フィンランドに欧州拠点を設立5藤沢=フィンランド(情報通信・電子機械機器 )

2013 年 1 月 時点

「指伝話」

フィンランド・エスポー市のオフィス

台湾の被災地復興に貢献

株式会社 キッコウ・ジャパン

代 表 者 : 代表取締役 吉村 隆顯資 本 金 : 4,788 万円 従業員数: 20 名主な製品: 鉄筋コンクリート 2 次製品 等所 在 地 : 山口県美祢市西厚保町原 1675-2T E L : 0837-58-0151U R L : hhttp://www.kikkouen.com/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ株式会社 吉工園(現:株式会社キッコウ・ジャパン)は、10 年余りの歳月をかけて、自然石とブランチ(樹木型)

ブロックを使って河川護岸、盛土擁壁を作るブランチブロック工法を開発した。2003年に本格的に実用化されて以来、日本国内で 15 件近い施工実績があったが、斬新な技術であることから新規受注には苦労していた。そんな折、ジェトロ RIT 事業の台湾ミッション参加の誘い(山口県、下関市、ジェトロ山口から)を受け、「視察くらいなら」という気持ちで、参加することになった。

台湾からの評判で逆上陸を果たす2009年8月に台湾への商談ミッションに参加した株式会社キッコウ・ジャパンの吉村社長は、その商談会の当日に、

大型台風の台湾直撃に遭い、甚大な被害状況を目の当たりにしました。その時、豪雨被災地の復旧工事には、自らが開発したブランチブロック工法が貢献できると確信しました。 

同年 10 月の台湾当局の被災復旧工事の予算編成時に、現地の RIT 事業の専門家兼コーディネータを通じて復旧工事の管轄部署に、この工法を提案したところ、この部署のトップが同工法の有効性に理解を示し、被災地である嘉義県阿里山来吉村の工事を落札した台湾企業(華三営造股份有限公司、嘉義県大林鎮)に技術指導することになりました。

これを受け、2010 年 3 月にキッコウ社と華三営造との間で技術提携の契約が締結されました。この契約に基づいて、吉工園は同年 4 月より華三営造社に対してブランチブロック工法に関する技術指導を始め、2010 年 12 月に工事が無事に完了しました。

この工法は、台湾の実績が日本のメディアに取り上げられたことなどから、日本国内で反響を呼び、土木工学の権威である大学教授らの呼びかけもあり、 2011 年 11 月にブランチブロック工法協会が設立されました。また、東日本大震災の被災地復興工事にも有効な工法として採用されています。

台湾企業を経由したベトナムからの引き合い。その他、2011 年に洪水の被害が大きかったタイ、中国をはじめとする東アジア地域での施工も展望しており、「株式会社キッコウ・ジャパン」の名のもと、現地の建設会社等とも連携しながら海外のプロジェクトを進めて行きたい、と吉村社長は考えています。

実施主体(山口県、下関市)の目2009 年 8 月に台湾ミッションに参加した同社は、商談会当日に大型台風の直撃に遭い、甚大な被害状況を目の当

たりにしました。自らが開発したブランチブロック工法が災害復興に貢献できると確信した吉村社長の情熱と行動力が、成約に結びつくこととなりました。

また、同時にジェトロ RIT 事業の専門家による台湾行政への提案と担当部署トップの技術に対する理解という幸運に恵まれたことも大きいです。実施主体事務局としては技術提携に必要な法律等専門家等の紹介、台湾の商習慣についての研究会による情報提供など成約後のフォローアップも丁寧に行いました。

企業概要

6

製品紹介

台湾の被災地復興に貢献6

山口=台湾(環境関連産業)

2013 年 1 月 時点

ブランチブロック

ブランチブロックの施工風景

スイスから欧州市場を攻略

救急薬品工業 株式会社

代 表 者 : 代表取締役社長 稲田 裕彦資 本 金 : 9,500 万円 従業員数: 222 名主な製品: 医療用医薬品 ・ 一般用医薬品所 在 地 : 富山県射水市戸破 32-7T E L : 0766-56-9901U R L : http://www.qqp.co.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ救急薬品工業株式会社が取り扱う外用貼付剤と口腔内適用フィルム製剤の販路拡大を図る目的で RIT 事業に参加し

ました。海外市場において、当社が扱う剤型は製品も少なく認知度も低いのが現状ですが、一方で、学術的にもその有用性は認められております。また、国内市場では一定の地位を確立しています。このことは、海外市場においても高い競争力と潜在性を示すものと捉え、現地ビジネスパートナーとの接点を得る機会と考えました。

日本とスイスの技術の融合2007 年 10 月、スイスへの商談ミッションに参加した救急薬品

工業株式会社の稲田社長は Vifor 社の担当者と出会い、これを契機に両社の交流がスタートしました。

同社は、2008 年 11 月に再びスイスへの商談ミッションに参加し、自社の製剤技術(湿布)とスイスの Vifor 社の薬効成分を合わせた消炎鎮痛成分を配合した貼り薬の共同開発計画に合意し、スイスにて臨床試験を開始し、スイス当局に開発申請を提出しました。

2009 年 10 月に3度目のスイスへの商談ミッションに参加した稲田社長は、ミッションの期間中にスイス当局から Vifor 社との共同開発製品(貼り薬)の開発・販売承認を受けました。同製品は富山工場で生産し、2010 年 1 月から欧州市場での販売が始まりました。

同社の海外展開の基本的な考え方は現地企業との提携による製品開発とその製品の製造 ・ 供給となります。海外向け製品の拡大を図るため、救急薬品では引き続き開発パートナー開拓を進めると同時に、海外展開に対応できる開発・ 製造基盤の構築 ・ 強化を方針としています。さらに今後、生産数量の増加に伴っては、国内事業動向、事業コスト格差、海外製造のメリット ・ デメリットなど総合的に勘案し、海外での生産分担の可性も視野に入れています。

実施主体(社団法人富山県薬業連合会)の目救急薬品工業株式会社はフィルム製剤など他にはない独自の技術を開発し、積極的にグローバル展開を図るなど有

望な製薬企業と考えます。同社の事例については、第一義的には自社が努力された結果であると考えていますが、救急薬品工業はRIT事業にも積極的に参加していただき、2007年には富山の訪問団とともにVifor社を視察しています。当連合会が中心となっての取組みが、救急薬品工業と Vifor 社との互いの信頼関係の構築等に対し、間接的に効果があったものと考えています。

企業概要 製品紹介

スイスから欧州市場を攻略7富山=スイス(医薬品)

2013 年 1 月 時点

Vifor 社との共同開発製品(パッケージ)

Vifor 社との共同開発製品(貼り薬)

スピード成約で台湾市場を席巻

株式会社 グリーンプラス

代 表 者 : 代表取締役 加藤 功資 本 金 : 1,000 万円 従業員数: 5 名主な製品: ガラスコーティング商品所 在 地 : 山口県下関市王司上町1丁目 7-20T E L : 083-249-1878U R L : http://www.greenplus.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ株式会社グリーンプラスは 2002 年に主力製品の「GP コート」(ガラスコーティング剤)の国内販売を始め、豪華客船、

車輌、大型ビルのガラスなどの分野で実績を積み重ねてきました。国内市場の縮小に伴い、海外への販路拡大を見出したいと考えていたところ、ジェトロ山口から台湾との RIT 事業の紹介があり、とにかく動いてみようという気持ちで参加しました。

台湾をハブに東南アジアへも顧客を開拓株式会社グリーンプラスは国内での販売実績はあるものの、海外との取引の経験がなかったため、2009 年 1 月に

ジェトロが個別企業の輸出支援を行う「輸出有望案件発掘事業」の支援対象企業に申請し、海外経験豊富な専門家との海外ビジネスへの挑戦が始まりました。

この支援事業が開始された直後の2月に行われた、台湾への商談ミッションに参加した加藤社長は、商談会で台湾域内に約 70 店もの店舗をかまえる大手洗車会社(卡氏専業汽車美容国際集団)と出会いました。専門家のアドバイスを受けながら、商談では伝えきれない製品の効果を実際に体感してもらうために、卡氏社の担当者の車にガラスコーティング剤を施工し、日本に帰国しました。

日本への帰国後は、専門家や台湾での商談会に同席した通訳のサポートを受けながら、コーティング剤の販売に向けて卡氏社とのコンタクトを続けました。卡氏社からは、2月に施工したコーティング剤のガラスへの保護効果が持続することに高い評価を受け、2009 年 6 月に売買契約を締結し、初めての海外輸出に成功しました。

台湾との取引開始直後は、何度も台湾に足を運び、コーティング剤の効果を最大限に発揮するための施工指導を卡氏社の従業員に徹底的に行いました。台湾国内の卡氏社の店舗での実績を着実に積み重ねながら、2010 年 7 月には卡氏社を経由しての、マレーシア、シンガポールへの輸出も果たしました。

また、2011 年 6 月からは、ジェトロの中国向けの輸出支援事業「アジアキャラバン事業」に参加し、同年 11 月には中国上海への輸出も開始しています。

台湾での販路拡大をきっかけに、同社の売り上げに占める海外比率は約 50%まで急伸しました。今後は上海以外の中国市場や卡氏社のネットワークを補うかたちで、東南アジアへ販路も開拓する方針です。将来的には、欧米にも視野を広げたいと、加藤社長の夢は広がっています。

実施主体(山口県、下関市)の目初回の商談から4ヵ月後には売買契約締結という、非常に速いスピードで成約に至ることができました。これは、

①独自の研磨技術と GP コートが優れていたことはもとより、②台湾の大手洗車会社と出会えたこと、③加藤社長、ジェトロ輸出有望専門家、通訳の3人が頻繁に連絡を取り合うなどチームワークがとてもよかったからだといえます。また、④双方企業のトップによる商談で、即決できたこと、⑤日台双方のビジネス習慣を理解した通訳による意思疎通のサポート、⑥輸出有望専門家による商談、契約などの実務的な支援によるとことも大きいです。併せて、実施主体の主催する研究会での情報提供等も役に合ったものと思われます。

企業概要

8

製品紹介

スピード成約で台湾市場を席巻8

山口=台湾(環境関連産業)

2013 年 1 月 時点 2013 年 1 月 時点

「GPコート」

台湾での施工デモ

公設機関をパートナーに販路開拓

高島産業 株式会社

代 表 者 : 代表取締役社長 小口 武男資 本 金 : 2,400 万円 従業員数: 220 名主な製品: 電機・電子部品、医療機器部品 等所 在 地 : 長野県茅野市金沢 5695-6T E L : 0266-72-8825U R L : http://www.takashima.co.jpE m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ諏訪地域の工業集積地の企業が地域の活性化を目的に開催する「Desk Top Factory(DTF)」研究会のメンバーと

して、同研究会が RIT 事業を活用すると同時に自然な形で RIT 事業に参加することとなった。RIT 事業に参加した理由は、当社の多機能卓上加工機が、当時、欧州での販売展開が全くなかったので、その市場開拓のためであった。

公設研究所を核にフランスでの市場開拓を目指す高島産業株式会社は 2007 年 9 月のフランスへの商談ミッションに参加し、その一環でスイスとの国境に近い仏オー

トサボア県にある公設の企業支援 / 技術センターの CTDEC(Centre technique de l ‘industrie du décolletage;産業切削技術センター)を訪問しました。

その後、2009 年のスイス・フランスへの商談ミッションに再び参加した同社は、他の DTF 研究会のメンバー企業と共に、スイス・ローザンヌで行われていた「EPMT(Environment Professionnel Micro Technologies) 2009」

(マイクロテクノロジー分野の展示会)の会場での商談会に臨みました。その場で、高島産業の遠藤常務取締役がCTDEC の研究員と出会いました。

2009 年 10 月にジェトロは、この CTDEC の研究員を有識者として諏訪に招へいし、国内側の実施主体である長野県テクノ財団が高島産業への訪問を設定しました。この訪問で、DTF 製品の詳しい説明を受けた研究員は DTF のコンセプトに関心を示しました。

2010 年 1 月に諏訪側の専門家がフランスに出張した際に、同社の省エネ・省スペースの多機能型 DTF を高島産業に代わって、改めて CTDEC に紹介しました。

2009 年度を持って RIT 事業は終了しましたが、諏訪側の実施主体である DTF 研究会は、RIT 事業の支援終了後もフランス側との交流を着実に継続して行きました。この交流の一環として、2011 年 5 月にフランスに派遣されたミッションに再び参加した遠藤常務がCTDECより受注を獲得し、2011年10月にCTDECに最初の製品が納品されました。

県内の公設機関である CTDEC での同製品の利用を通じて、高島産業の DTF の良さが域内企業に認知されれば、更なる販売台数の増加が見込まれます。

実施主体(長野県テクノ財団)の目RIT がきっかけとなって RIT 事業実施後も年に1回現地にミッション団を派遣しているほか、諏訪工業メッセに先

方を招待するなどして年に 2 回程度、顔が見える地域間交流を継続的に行っている。交流を通じてプレゼンや意見交換を繰り返すことで研究にかかる条件面の話が初めてできるようになった。公的機関を通じたミッションを派遣したことで現地の影響力がある研究機関との商談に繋がった。同社の場合、決定権をもつ常務がミッションに参加してプレゼンをするなど、海外との取引という新しい試みに対して積極的であったことが成功につながった。

企業概要

9

製品紹介

公設機関をパートナーに販路開拓9諏訪=スイス / フランス(マイクロマシン)

2013 年 1 月 時点 2013 年 1 月 時点

マルチプロ

CTDEC に納入した製品

10 日独の要素技術の融合を目指して

日特エンジニアリング 株式会社

代 表 者 : 代表取締役社長 近藤 進茂資 本 金 : 68 億 8,490 万円 従業員数: 556 名主な製品: 巻線事業所 在 地 : 埼玉県さいたま市南区白幡 5-11-20T E L : 048-837-2011U R L : http://www.nittoku.co.jp/E m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけジェトロよりドイツ企業からのプレゼンがあるとの知らせを受け参加しました。弊社としてはニッチの世界であっ

てもキラリと光る技術を持った企業とコラボレーションすることにより、今まで実現できなかったお客様の求める価値ある設備を提供することを考えています。また、今後国際社会の中で設備提供企業として生き残っていく為には国内外問わず技術の融合が不可欠とも考えています。

ドイツから先端の溶接技術を導入巻線機の生産を行っている、株式会社日特エンジニアリングは 2012 年 1 月、ドイツからの企業招へいの際に来日

したドイツ企業 EUTECT 社と商談を行いました。EUTECT 社は小型電子部品などへの精緻なハンダ付けを可能とする技術を有する企業で、来日中に日特エンジニアリングの工場を訪問し、生産設備・工場管理システム・生産技術について現場での視察を行いました。

埼玉での商談後も両社はコンタクトを着実に続け、2012 年 5 月に「販売・サービス契約」を締結しました。

この契約では、日特エンジニアリングが EUTECT 社から同社独自の接合技術を有するハンダ付け装置を購入することになりました。これにより、これまで顧客からの強いニーズがありながらも解決が困難であった、特定電子部品のはんだ付けを利用した接合を行うことが可能となり、既存の日特製品に EUTECT 社の製品が加わることで、多様な顧客ニーズに対応した解決法を提案できるようになります。

一方、EUTECT は、日特エンジニアリングが有する日本を含めたアジアの販売網を活用することが可能となり、同社製品の販売のみならず、販売した製品に対するアフターサービスとメンテナンスを日特に委託することで、日本やアジアに拠点を持つことなく販路開拓することを目指しています。

また、本契約で提携関係が構築された両社は、生産技術向上のために従業員の相互交流を行っていくことで、人的な面からも相乗効果が生まれることも期待しています。

今後、日特エンジニアリングは中華圏拠点の整備とともに、ベトナム、インドネシアなどのアセアン地区、 インドにサービス営業拠点を設置し、海外展開している日本企業を初め各海外企業のアフターサービス拠点の充実を図る予定です。また、南米メキシコ、ブラジルにおいても今後拠点の設置を推進し、現地サービスの充実を図る考えです。

実施主体(さいたま市産業創造財団)の目EUTECT 社のプレゼンを聞き、同社のニーズに合致すると判断した代表者が、急きょ福島工場を案内するなど、決

断の速さと技術の見極め力が成功の要因です。ドイツ語が話せるスタッフがおり、コミュニケーションに不自由していません。また、技術的にも、さいたま市による認証を受けた「テクニカルブランド企業」の中核をなす企業でもあり、財団としては今後も積極的に支援して行きたいと思います。

企業概要 製品紹介

日独の要素技術の融合を目指して10

埼玉県=ドイツ(精密加工技術)

2013 年 1 月 時点

部品の高速運搬装置 EUTECT 社との共同開発製品

ドイツ企業から精密加工を受注

株式会社 MIKAMI

代 表 者 : 代表取締役社長 三上 誠資 本 金 : 1,000 万円 従業員数: 37 名主な製品: 金属精密加工・組み立て 等

所 在 地 : 埼玉県所沢市林 1-299-7T E L : 04-2949-9450U R L : http://www.mikami-co.jpE m a i l : [email protected]

RIT 事業に参加したきっかけ2007 年頃より新規開発製品の国内販路開拓に取組んできましたが、日本企業の開発風土に 100%の製品を作って

はいけない考え方があることがわかり、当社の技術を逆に海外から売り出そうと考えた結果、埼玉国際ビジネスサポートセンター(SBSC)へ相談したところ、さいたま市が取組んでいる RIT 事業を勧めていただき参加しました。

高精度の金属加工技術にドイツ企業が注目2011 年 6 月のドイツへの商談ミッションに参加した三上社長は、現地で A 社(手術用補助器具、自動車部品製造)

と商談しました。その商談では、A 社が株式会社 MIKAMI の技術に強く関心を持つも、その後のコミュニケーション・トラブルにより音信不通となってしまいました。

音信普通の状態が暫く続きましたが、国内実施主体と海外実施主体(メドテックファルマ ) の協力により、同年 11月にミュンヘンで開催された展示会に MIKAMI が出展した際に、A 社が MIKAMI のブースを訪問し、前回の商談で話し合われた自動車関連部品の加工を依頼しました。

2012 年 2 月に有力企業として埼玉側に招へいされた A 社は、MIKAMI との間で、先に加工依頼した自動車部品の正式契約に向けた詰めの交渉を行いました。また、自動車部品の加工精度に満足した A 社は、より高い加工精度が求められる、手術補助器具用の油圧部品(高密閉ピストン)の加工を MIKAMI に依頼しました。

外国語に対応できるスタッフが社内にはいない点が A 社とのスムーズなコミュニケーションを阻んでいると考えた三上社長は、埼玉国際ビジネスサポートセンター(SBSC)の仲介により、ドイツ人留学生をインターンシップ生として受け入れたり、中国人の社員を新たに採用するなど、海外とのコミュニケーションの改善を図っています。

また、MIKAMI は商談前に、国内実施主体が主催している海外でのプレゼンテーションを想定した勉強会や個別企業の海外ビジネス支援を行うジェトロの「輸出有望案件発掘支援事業」など、積極的に支援ツールを活用しています。

今後、MIKAMI はドイツとのビジネス拡大を視野に、3年以内にドイツ(ニュルンベルグ)への海外駐在を検討しています。また、今後スイス、ロシア、米国においても海外展開を予定しており、世界企業への地歩を着実に踏み出しています。

実施主体(さいたま市産業創造財団)の目株式会社 MIKAMI は外国企業とのビジネスの際にハードルとなる言葉の壁を突破する行動力があります。社長自

ら外国の企業に何度も訪問し、直接顔を合わせながらで商談を進めるなど、アクティブな企業です。今回の成果は2011 年のメドテックファルマの個別商談会への参加が両社の商談が始まったきっかけでありますが、その後も RIT事業による招へいと商談ミッション派遣プログラムを行い、継続的な商談が実施できるように当財団として支援しました。

企業概要

製品紹介

11 ドイツ企業から精密加工を受注11埼玉県=ドイツ(精密加工技術)

2013 年 1 月 時点

同社の金属加工技術の例

ベトナムで集じん機の委託生産を開始

A 社(北九州市)

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RIT 事業に参加したきっかけ弊社は、日本国内の大型集じん機業界では、最後まで国内製作で頑張ってきましたが、熾烈を極める価格競争下で、

営業状況はコスト的に不利で苦しい状況になっていました。その為、他社同様に近隣諸国での製作を検討しましたが、日本メーカが中国での委託生産に集中していた為、弊社としてはポスト中国としてのベトナムに目を向け、北九州ベトナム協会と共に探索調査を開始しました。その頃、北九州市貿易振興課より RIT 事業の案内があり、参加しました。

ポスト中国としてのベトナムの可能性に着目A 社は、同社の主力製品の一つである工場用大型集じん機(バグフィルター)の生産委託先として、ベトナムに注

目し独自に探索を始めました。この頃、北九州市が実施主体として事業を行っている RIT 事業へも参加することを決め、2011 年 9 月のベトナムへの商談ミッションに参加しました。

商談ミッションの期間中、ベトナム側の実施主体である VIETRADE(ベトナム商業省貿易促進庁)のアレンジにより、ハノイの商談会にて数社との面談を果たしました。

この面談及び企業調査等にて、ベトナム企業の可能性を確信した A 社は、商談ミッションから帰国後に、独自で再びベトナムに赴き、ベトナム企業 B 社との間で集じん機の委託生産についての契約を締結しました。

2011 年 10 月には B 社に小型サンプル品の生産を委託、ベトナムより輸入して、A 社の自社設備内で品質等を確認しました。その後、日本国内の販売用として実設備向け集じん機の生産委託契約を締結し、2012 年内には大型集じん機2基を輸入しました。今後も、日本国内での販売を目指し B 社との協議は継続していく予定です。

A 社としては、今後も海外での集じん機の委託生産を中国も候補として取組みを続けるとともに、チェインコンベヤ等の製品についても、海外での委託生産に向けて取り組みを開始する予定です。

実施主体(北九州市)の目製造業者が海外生産委託の検討を行うにあたっては、何度も現地訪問し、できるだけ多くの企業を調査する必要が

あります。この成約は、RIT事業のミッションや民間団体ミッション、独自活動など複数の調査機会を経て実現したものですが、

RIT 事業の実施主体として本案件の進捗を把握しながら、他ミッションの企画などにも携わり、適時に質の高い商談機会を提供できたことは、今回の成果の一因にもなったと考えています。

企業概要

製品紹介

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北九州市=ベトナム・ハノイ・ハイフォン地域(金属加工・機械製造)

2013 年 1 月 時点

ベトナム企業に生産委託した「バグフィルター」