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2.スペクトル解析 -1.フーリエ級数とフーリエ展望 未知関数() f x を性質のわかった関数系 { } / in xa e π によって / 1 () 2 in xa n n fx Ce a π +∞ =−∞ = のように展開する方法をフーリエ級数展開という。 [フーリエ計数展開の概念] ◎ ベクトルの展開 N次元の Euclid 空間中のベクトル r を、1組の単位直交ベクトル { } i e (i=1N)を使って表そう。 1 , 0 i j ij ij i j i j δ δ = = = e e さて、 r で近似すると、近似されたベクトルを r とし、 r ( 1 , i i mm N = < e ) m m r の誤差 m ε 2 m ε = r r m i とする。すると、 1 m i m i C = = r e 2 2 i m m i C ε = = r r r e 2 2 i i i i j C CC = + r r e e j e i e の直交性を使って 2 2 2 1 1 ( ) m m i i m i i i C ε = = = + r r e r e さて、 C に関係するのは第3項だけであり、この項は常に であるから、 i 0 0 i i C = r e の時、 m ε は最小となる。 i i C = r e とおくと r に最も近づく。 m r 第2項は負の項であり、項数が増える程絶対値は大きくなる。すなわち、近似がよくなる。 この時、 にしても、前の係数 C i 1 m m + ( 1 i m) = = の値は変わらない事は明らかである。 この様な性質を最終性という。 (最終性は、基底ベクトルの直交性に起因している) また、 r は元のベクトルより長くない。 m 2 2 2 2 ( ) i m m ε = = 0 r r r e r m ε の定義)

rr ∑∑ rr re - Hiroshima University · 5 直交関数列の条件 ベクトルと同じ様に、直交性が必要な事は前に述べた。さらに、ベクトルではn 次元成分のすべてを表す

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2.スペクトル解析 2-1.フーリエ級数とフーリエ展望

未知関数 ( )f x を性質のわかった関数系{ }/in x ae πによって

/1( )2

in x an

nf x C e

+∞

=−∞

= ∑

のように展開する方法をフーリエ級数展開という。 [フーリエ計数展開の概念] ◎ ベクトルの展開

N次元の Euclid 空間中のベクトルr を、1組の単位直交ベクトル{ }ie (i=1~N)を使って表そう。

1

,0

i jij ij

i ji j

δ δ=

= = ≠e e

 ・

 

さて、r を で近似すると、近似されたベクトルをr とし、 とr ( 1 ,i i m m N= <e ~ ) m mr

の誤差 mε は2

mε = −r rm

i

とする。すると、

で 1

mi

mi

C=

=∑r e

22 i

m m iCε = − = −∑r r r e

2 2 i ii i jC C C= − +∑ ∑r r e e・ ・ je

ie の直交性を使って

22 2

1 1( )

m mi i

m ii i

Cε= =

= − + − ∑ ∑r r e r e・ ・

さて、C に関係するのは第3項だけであり、この項は常に≥ であるから、 i 0

0iiC− =r e・ の時、 mε は最小となる。

iiC∴ = r e・ とおくとr は に最も近づく。 m r

第2項は負の項であり、項数が増える程絶対値は大きくなる。すなわち、近似がよくなる。 この時、 にしても、前の係数C i1m m→ + ( 1i m)= = ~ の値は変わらない事は明らかである。 この様な性質を最終性という。 (最終性は、基底ベクトルの直交性に起因している) また、r は元のベクトルより長くない。 m

2 2 2 2( )im mε− = − = ≥ 0∑r r r e r・

( mε の定義)

次に関数の展開を考える。 区間 の関数( ,a a− ) ( )f x を考える。この区間を x△ の間隔で区切って、

( 2 ),), ( ), ( ( )f a f− −a a x+ − +△ △ ・・・・・x f f a (但し、 )という離散的にa a n= − + △x ( )f x を表す。 ( )f A i x− + △ を if と表せば、 ( )f x を 0 1( , , , )nf f f・・・・・・ という一組の数値 次元ベクトルで近似している事になる。 1n= +

(この時、 if は 1i + 次元めの成分) よって、△ の時、n となり、関数は無限次元0x → →∞

fi1 2f f f   

nff

0

さて、

ベクト

左辺は

関数

すなわ

n →

また、

となる

従って

ここで

選べる

-- 前回の結果で、ベクト

ル を成分で表0f g =・

0 0 1 1 2 2f g f g f g+ + +・

、分割区間の中 x△ を掛

( ) ( )f x g x・ の積 ( )f x・ち

∞の時 0f g−

= →・

ベクトルの大きさは自

( ) ( )a

i jij

a

e x e x dx δ−

=∫

、 、区間 で定義さ( ,a a− )

( ) ( )ii

if x C e

=∞

=∑ x

、 を決めると言う事

様に、関数列も任意性

ie

のベクトルと考える事ができる。

ルの直交性は関数の世界ではどう表現されているであろうか? すと、

0i if g+ + =・・・・ ・・・・・

けると、 i if g x∆∑ となり、

( )g x の区間 ( , )a a− での面積となる。

( ) ( )a

a

f x g x dx =∫ 0 ( ) ( ) 0a

a

f x g x dx−

=∫

身の内積であるから基底ベクトル に相等する関数 e は ie ( )i x

れた関数 ( )f x を性質のよい直交関数 で級数展開すると良い様である。 ( )ie x

は、ベクトルで言う座標系を勝手に選ぶ事に相等している。座標系は任意に

が残る。

5 直交関数列の条件 ベクトルと同じ様に、直交性が必要な事は前に述べた。さらに、ベクトルでは N 次元成分のすべてを表す

事が可能でなければならない。 → 前の mε の値が の時 0 となる必要がある。この事を関数列の完全性と言う。 m N=

上に述べた性質を満たし、かつ、くせのない関数列が三角関数である。 区間 ( , で定義された関数)a a− ( )f x を、 2m 1+ 個の三角関数の和で近似する。

00

( ) ( cos sin ), ( 0)m

m n nn

n x n xf x a b ba aπ π

=

= +∑ =

ベクトルの時と同様に誤差 mε を

2( ) ( )a

m ma

f x f x dε−

= −∫ x で定義する。

さて、 mε を求める前によく使用する関数式を書く。 6

'' 'cos cos sin sin

' 'sin sin cos

2

a a

nna a

a a

a aa

a

n x n x n x n xdx aa a a a

n x n x n xdx aa a a

dx a

π π π π δ

π π π− −

− −

= =

= = =

∫ ∫

∫ ∫

(n ≥

また、

( ) cosa

na

n xf x daπα

= ∫ x ( 0,1,2,n = ・・・・

( )sina

na

n xf xaπβ

= ∫ dx ( 1,2, ,n = ・・・・

として、

2

0( ) 2 ( )

a m

m nna

n n nf x dx a bε α=−

= − +∑∫ β

2 )

2 20

12 (

m

n nn

aa a a b=

+ + +∑

22 20

1

1( ) ( )2

a m

n nna

f x dxa a

α α β=−

= − + +

∑∫ 2

0, ' 1n ≥

( , ' 1n n ≥ )

)

)・

)0 0β =

2 200

12 ( ) ( ) ( )

2

mn n

n nn

a a a a ba a

α α=

+ − + − + − ∑ 2

7 第一、 二項は ( )f x と三角関数だけで決まる量であり、第三、四項が係数によって変化し、かつ、≥ で

ある。 0

よって、第三、四項を 0 とする係数が最もよい近似となる。

00 , , (

2n n

n na a b na a a

1)α α β∴ = = = ≥

この時、

2

2 20

1

1( ) ( )2

a m

m nna

f x dxa a

α 2nε α β

=−

= + + +∑∫

22 20

1

1 ( )2

m

n nna a

α α β=

+∑≥ +

これは、 m≥r r に相応し、 の時、Bessel の不等式という。 m = ∞

上述した係数は求め方からも解る様に にしてもa b1m m→ + , ( )n n n m≤ は変わらない。 これは、関数列の直交列の直交性に起因している。 ベクトルの時は、直交基底ベクトルで展開したので関数列も大きさを 1 ととる。 1 1 1, cos , sin ( 12

n x n x na aa a aπ π ≥

)

となる。

8 収束性の問題 ベクトルでは有限 N 次元で考えたため、有限和の mε も、 0( )m m Nε → → となっていた。関数の時は∞

次元なため、 でm →∞ 0mε → となるかどうかは、わかっていない。 また、 ( )mf x も無限級数となるので収束するのかどうかは数学の問題となる。

幸い、我々の扱う様な関数では 0mε → でかつ ( )mf x に収束する事({ }( 0) ( 0) /f x f x+ + − 2に収束する時

もある。)がわかっているので、これ以降は収束性には気にかけない。 形式的に、

0

1

1( ) ( cos sin )2 n n

n

n x n xf xa a a a

α π πα β∞

=

= + +∑

( )f x を上述した級数で展開した時、右辺を ( )f x の Fourier(フーリエ)級数という。 9 次に、三角関数の表式をオイラーの関係式を使用して、指数表示に変えると、

2 1i = − として、 より cos sinie i= +θ θ

/ /

0( ) ( )in x a in x a

n nn

f x A e B eπ π∞

=

= +∑

/1 1( ) ( )2 2

ain x a

n n na

A i f x ea a

πα β −

= − = ∫ dx

/1 1( ) ( )2 2

ain x a

n n na

B i f x ea a

πα β−

= − = ∫ dx

あるいは、n=-∞から∞とし、右辺をまとめて表示すると、

/( ) in x an

nf x C e π

=−∞

= ∑

/1 ( )2

ain x a

na

C f x ea

π−

= ∫ dx

)

a

この表示を複素フーリエ級数という。 10 フーリエ級数の拡張(フーリエ変換) 区間 は有限な任意の大きさであるが ( ,a a−

a →∞とした時の表現を考える。 今、 /nk nπ= とおくと、( は波数と呼ばれる量) nk

1n nk k kaπ

+= −△ = はその間隔である。

すると、/1( )

2 2in x a iknx

n nn

kf x C e C ea

π

π

∞− +

=−∞

= =∑ ∑△

( )a

iknxn

a

C f x e−

= ∫ dx

k

a →∞の時、△ となるので 0k →

この時、△ と移項する。 ( )nk C C k dk→∑ ∫

よって、 とおきかえ ,nk k k d→ →∑ ∫△

1( ) ( )2

( ) ( )

ikx

ikx

f x C k e

C k f x e dx

π

−∞

∞−

−∞

=

=

dx が得られる。

これを、フーリエの積分表示又は、フーリエ変換と言う。 この時、係数

1(2 )π −は、 ( ), ( )f x C k のどちらにつけてもよい。

11 よって、以降

( )f x のフーリエ変換を などとし、 ( )F k1( ) ( )

2ikxF k f x e dx

π

∞−

−∞

= ∫ (フーリエ変換)

( ) ( ) ikxf x F k e∞

−∞

= ∫ dk

dt

dt

(逆フーリエ変換)

(フーリエ逆変換) などと書く。 この時の を積分核と言う。 ,ikx ikxe e−

片側フーリエ変換

0

( ) ( ) i tF f t e ωω∞

−= ∫

( )

0

( ) ( ) i tF f t e σ ωω∞

− += ∫

とすると、 ( ) tf t Meα≤ (M,α定数)であればσ α> で収束する。

i Sσ ω+ = とするとラプラス変換となる。

フーリエ級数 展開の意味 パワースペクトルの導入 白色光

7色 光のスペクトル

例えば、プリズムによる光のスペクトル分解の様に、計測値や不規則信号をフーリエ変換によって、周波

数 f とその成分波の強さ、エネルギーに分解されたものをスペクトル(あるいはエネルギースペクトル)

と言う。 信号 ( )x t の周波数 f の波のエネルギーはその振幅 ( )X f の2乗で表され、その単位時間当たりのエネルギ

ーを次の様に定義する。

2 *1 1( ) lim ( ) lim ( ) ( )T T

P f X f X f X fT T→∞ →∞

= =

これを、パワースペクトル密度関数と言う。

不規則変動 ( )x t の平均パワー2x は、

2

2 2

2

1lim ( )

T

TT

x x t dtT→∞

= ∫

であり、これは、周波数 f f df+~ の間の成分波のエネルギー の総和であるから、 ( )P f df

∫∞

∞−

= dffPx )(2

2-2 相関関数とスペクトル 不規則現象の解析に用いられるものに相関関数がある。文字通り、変量間の相関を表すものであり、異

なった変量間の関数を表すのが相互相関関数、同一変量の異なった時刻の相関を示すのが自己相関関数で

ある。

x0

×××××× ・・・・・ × × × ×× ・・・・・・ ×××××××× × ・・・・・ ××××× ・・・

××× × × × ・・・・・× × × ×××・・・・・ ××××××

×× × × ・・・・・ × ×××××××× ×××・・・・・・ × × ××××××××

×× ・・・・・・・ × × ×××× ×× ・・・・・ × × × ××× ××× ×

××・・・・・ × × ××××××× ・・ ・・×××××××××××× ・・

・強い相関 ×弱い相関

変量 ,x y の関数を視覚化するには、x y− 平面で点を

プロットすると都合がよい。

今、 ,x y が時間 t の関数で、点 ( ( ), ( ))x t y t τ+ をプロットする。もし x と に完全な相関があれば直線上

になるだろうし、あまり関係なければ点はバラツクだけであろう。 y

この2つの変量の相関を、相関度

2xy xr E E yx x

= =

2yx xyr E Ey y

= =

などで表わす。

2 ( )x P f df∞

−∞

= ∫ となる。

もし、 ,x yを同じ様に扱うのなら

[ ]2 2

E xyr

E x E y=

[ ]C E xy=

で表す。( [ ]E はアンサンブル平均)

例 1. ,x y が無相関で [ ] [ ] 0E x E y= =

[ ] 0E xy = (D,C,成分を除いたもの)

より、 0r =2. ,x y が完全な相関 ( ,x y 0)α α= ≠

[ ] 2E xy E yα =

1/

1r α α

∴ = = −

弱定常確率過程 ( , )x t ω が平

α>0

α<0

均値関数、共分散関数のみが時間の移動に関して不変であるならば、

{ }( , )x t ω は弱定常過程という。

従って、ある時間τ だけずらした時、元の波形とどれだけ似ているか調べると、変動中の周波数成分の情

報が得られる。

14 自己相関関数の定義 変数 に関する変量t ( )x t により、

[ ]( , ) ( ) ( )C t E x t x tτ τ= ・ + ← ( ( )x t と (x t )τ+ の積の平均値)

で定義される関数 ( , )x t τ を自己相関関数という。τ は隔たり時間又はラグ(タイムラグ)という。 右辺のアンサンブル平均を時間平均ですきかえ

( ) ( ) ( )C x t x tτ τ= +

2

2

1lim ( ) ( )

T

TT

x t x t dtT

τ→∞

= +∫

で表す事ができる場合(エルゴード仮定)が多い。 また、C( )τ を で規格化した(0)C ( )R τ ( ) ( ) / (0)R C cτ τ=

2( ) ( ) / ( )x t x t x tτ= +

を自己相関係数という。 例として、各自 ( ) cosx t tα ω= の自己相関関数を求めてみよ。

2

( ) cos2

( ) cos

C

R

ατ ωτ

τ ωτ

=

=

2-15 自己相関関数の性質 (i) 偶関数

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

TT

C x t xT

t dtτ τ→∞

− = −∫

't tτ− = とし

2

2

1lim ( ' ) ( ') '

T

TT

x t x t dT

τ

τ

τ−

→∞− −

= +∫ t

ところで、T では→∞2 2T Tτ± − → ± であるから

( ) ( )C Cτ τ− = となる。

(ii) τ=0 で最大値をとる。 恒等式

[ ]2

2

2

1lim ( ) ( ) 0

T

TT

x t x t dtT

τ→∞

± + >∫ ( 0)τ ≠

を展開して

2 21 1lim ( ) lim ( )x t dt x t dtT T

τ+ +∫

12lim ( ) ( ) 0x t x t dtT

τ± +∫ >

2-16 第一、 二項は共に C(0)であり第三項は C(τ) であるから

C(0) ±C(τ) >0、τ≠0 ∴ C(0) >|C(τ)|、τ≠0

(iii) 自己相関関数の微分 C(τ)= C(-τ)、両辺をτで微分して

∴ C’(τ)= -C’(-τ) τ=0 の時は C’(0)= -C’(0) ∴ C’(0)=0 (iv) 変量の微分との相関

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

T

C x t x tT

dtτ τ−

= ∫ + τで微分して

1'( ) lim ( ) '( )C x t x tT

dtτ τ= +∫

∴ 変量とその微分との相関は自己相関関数の微分に等しい。

また、2

2

1'( ) lim ( ' ) '( ') '

T

T

x tT

τ

τ

τ τ+

− +

= −∫C とできるので x t dt

1''( ) lim '( ) '( ') 'C x t xT

τ τ= − −∫ t dt

1lim '( ) '( ' )x t x t dtT

τ= − +∫

(v) 不規則現象では、τ が大きい程相関が悪くなる。

, ( )C 0τ τ∴ →∞ → また、変動のスケールが大きい(ゆっくり)していると、同じτでも C(τ)は大きくなる事が定義から明ら

かであり、τはこの変動スケールを表している。 自己相関関数の別な表現

一般的に変量 ( )x t の平均値 ( )x t が 0 でないので

( ) ( ) ( )x t x t x t= − の自己相関を取る場合があり、これを自己共分散関数と言う。

1( ) lim ( ) ( )T

C x t x tTυ dtτ τ

→∞= +∫

}{ { }1lim ( ) ( ) ( ) ( )x t x t x t x t dT

τ τ= − + − +∫ t

{ } 21lim ( ) ( ) lim ( ) ( )xx t x t x t x t dt xT T

τ τ= + − + +∫ ∫ + ( ( ) ( ) )x t x t xτ= + =

2

( )C xτ= −

2

( ) ( )C Cυ τ τ x∴ = −

相互相関関数 変数 の2つの変量t ( ), ( )x t y t との相関を

( ) ( ) ( )xyC x t y tτ τ= +

で表し、 ( )xyC τ を相互相関関数と言う。

また、C ( )xy τ を ,x y の大きさで規格化し、

2 2( ) ( ) ( ) /xyR x t y t xτ τ= + ・y

( ) / (0) (0)xy x yC C Cτ=

を相互相関関数と言う。

(i) ( ) ( )xy yxC Cτ τ= − である。

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

xy TT

C x t yT

t dtτ τ→∞

= +∫

2

2

1lim ( ' ) ( ') '

T

TT

x t y t dT

τ

τ

τ+

→∞− +

= −∫ t ( ' )t t τ= +

( )xyC τ= −

(ii) τが大きくなると相関は悪くなるので

, ( )xyC 0τ τ→∞ →

2-19

恒等式 [ ]2( ) ( ) 0x t y tα β τ± + ≥ ,α,βは定数より、

[ ]21lim ( ) ( ) 0x t y t dt

Tα β τ± + ≥∫

2 21 1lim ( ) 2 lim ( ) ( )x t dt x t y t dtT T

α αβ τ± +∫ ∫

2 21lim ( ) 0y t dtT

β τ+ +∫ ≥

2 2(0) 2 ( ) (0) 0xy yCx C Cα αβ τ β∴ ± + ≥

α、βが定数なので、αβ

の2次式として判別式をとると

2 ( ) (0) (0) 0xy x yC C Cτ − ≤

( ) (0) (0)xy x yC C Cτ∴ ≤

または、 ( ) 1xyR τ ≤

特に、α=β=1とおき

2 21 1( ) (0) (0)2 2xy x yC C C xτ y ≤ + = +

よって、 ( )xyC τ は変量の2乗平均の平均以下となる。

補足 自己相関関数の例

( ) sinf t A tω= として

2

12

1( ) lim sin

T

TC A

Ttτ ω

→∞−

= ∫ ・ sin ( )A t dtω τ+

を使ってcos( ) cos cos sin sincos( ) cos cos sin sin

A B A B A BA B A B A B+ = −− = +

{ }22

2

1lim cos cos (2 )2

T

TT

A tT

ωτ ω τ→∞

= −∫ dt+

2 2

2

1 1lim cos sin (2 )2 2

T

T T

A t tT

ωτ ω τω→∞

= − +

sin sin2

A B =cos( ) cos( )A B A− − + B

2 2 2

lim cos sin ( ) sin ( )2 4 4T

A A AT TT T

ωτ ω τ ωω ω→∞

= − + −

τ−

2

cos2A ωτ=

この様に、自己相関関数は、周波数成分を抽出する事が出来る。

つまり、不規則信号の周期性を調べる=ある時間(空間)τだけずらすとどれだけ元の信号と似ているか

を判別する。→ 応用は、天候、海洋、地震などの地球物理学結晶などの材料関係

自己雑音 ( )n t定義、あらゆる周波数成分を同程度含む 特徴 ラグτが 0 以外で自己相関がない

2

2

2

1( ) lim ( ) ( ) ( )

T

TT

C n t n t dtT

nτ τ δ→∞

= + =∫ ・ τ

δ(τ)はデラックのデルタ関数

( )f t =

( )C τ =

被積分項

雑音 n

また、定

∴ ( )C τ

0τ ≠

よって、

δ(τ)

=

a 0 b τ

( ) 0, 0, ( ) 1b

a

dδ τ τ δ τ τ= ≠ ∫

( ) ( ) (0)f t d fδ τ τ =∫

sin ( )A t n tω + とおくと

{ }{ }2

2

1lim sin ( ) sin( ) ( )

T

TT

A t n t A t n tT

ω ω τ→∞

+ + +∫ dtτ+

を展開すると、第一項は前と一致 (t)は、信号とは相関がないので sin ( )sin ( ) ( )

A t n tA t n t

ω τω τ

+ +

・の項は→0 となる筈

義によって、 ( ) ( )n t n t τ+ の項は2 ( )n δ τ

22cos ( )

2A nωτ δ τ= +

2

cos2A ωτ となる。

自己相関関数はノイズフィルターの様に働いている。

離散化データの表示 演習 上述の C×(j)を求めるアルゴリズムを考える。

( )x i 0 2Ni = ~

1

1( ) ( ) ( )N

xi

C j x j x j iN =

= +∑

x 0 N i 2N

演習 上述の を求めるアルゴリズムを考える。 ( )xC j

2-20 パワースペクトル S(ω)の導入( f ω→ へ表示を変える) 2-1 で扱ったフーリエ変換を用いて、自己相関関数とそのスペクトルの関係を示す。

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

TT

C x t x tT

dtτ τ→∞

= +∫

また、 ( )x t とフーリエ変換 ( )X ω は

i t( ) ( )x t X e dωω ω∞

−∞

= ∫

であった。よって

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

i t

T

C X e d xT

ω t dtτ ω ω τ∞

−∞−

= +∫ ∫

2

2

1lim ( ) ( )

T

i t

T

X x t e dtdT

ωω τ ω+∞

−∞ −

= +∫ ∫

2

( )

2

1lim ( ) ( )

T

i i t

T

X e x t e dtdT

ωτ ω τω τ ω∞

− +

−∞ −

= +∫ ∫

*2 ( ) ( )lim

iX X e dT

ωτπ ω ω ω∞ −

−∞

∫=

τ=0 とおくと、C(0)= 2x であり、

*2 2 ( ) ( )lim X Xx d

Tπ ω ω ω

−∞

= ∫

2-21

ここで、パワースペクトル S(ω)は、2 ( )x S dω ω

−∞

= ∫

2* 2 ( )2( ) lim ( ) ( ) lim

T

XS X X

T Tπ ωπω ω ω

→∞= =

となる。 パワースペクトル S(ω)の意味

フーリエ変換は、変量 ( )x t の周波数成分の強度を表わしていた。フーリエ成分 ( )X ω は周期2ωπ

の波の

振中であり、2 ( )X ω はそのエネルギーを表わす。

そこで周波数 (2 )f fπ ω= とその波のエネルギー2 ( )X ω の分布を表わしたのがエネルギースペクトル

と言う。 そこで、単位時間当たりの平均エネルギーでこの分布を表すと

2 *2 2lim ( ) lim ( ) ( ) ( )T

X X XT T

Sπ πω ω ω ω→∞

= =

となる。 ところで、前の式より、S(ω)は偶関数であり、 S(ω)= S(-ω)

( ) ( ) ( )i iC S e d S eωτ ωτdτ ω ω ω∞ ∞

−∞ −∞

ω∴ = =∫ ∫

2-22 よって、パワースペクトル S(ω)のフーリエ変換が自己相関関数 C(τ)である。 また、その逆変換は、

1( ) ( )2

iS C e ωτdω τ τπ

∞−

−∞

= ∫

この C(τ)と S(ω)の関係を Wiener-Khintchine の公式と言う。 例 白色雑音の自己相関関数 白色雑音は、あらゆる周波数成分の強さが同じ理想的な雑音である。それゆえ、S(ω)=const とできる。 すると、その自己相関関数は

( ) iC e d constωττ ω∞

−∞

= ×∫

=2π×const×δ(τ) よって、白色雑音の自己相関関数はデルタ関数となる。

2-23 クロススペクトル 前述のパワースペクトルは、自己相関関数C( )τ のフーリエ変換で与えられた。次に、相互相関関数のフー

リエ変換として、クロススペクトル (xyS )ω を定義する。

1( ) ( )2

ixy xyS C e ωτdω τ τ

π

∞−

−∞

= ∫

あるいは、

( ) ( ) ixy xyC S e ωτdτ ω ω

−∞

= ∫

さて、クロススペクトルの表示を ,x y のフーリエ変換から求める。

2

2

1( ) lim ( ) ( )

T

xyT

C x y tTτ

dtτ τ τ→∞

= +∫

2

( )

2

1lim ( ) ( )

T

i t

T

x t Y e d dT

ω τ tω ω∞

+

−∞−

= ∫ ∫

2

2

1lim ( ) ( )

T

i t i

T

x t e Y e d dtT

ω ωτω ω∞

−∞−

= ∫ ∫

2

2

1lim ( ) ( )

T

i t i

TT

x t e dt Y e dT

ω ωτω ω∞

→∞−∞ −

=

∫ ∫

2-24

*2lim ( ) ( ) i

TX Y e d

Tωτπ ω ω ω

+∞

→∞−∞

= ∫

*2( ) lim ( ) ( )xy TS X

TYπω ω ω

→∞∴ =

クロススペクトル ( )xyS ω の意味

変量 xy中のある角周波数ωの成分の実効的な平均パワーを示したものと言える。 ベクトル表示すると

( ) ( )

( ) ( )

i t

i t

X X e

Y Y e

ω α

ω β

ω ω

ω ω

+

+

=

=

で、 ( )X ω もY ( )ω も原点中心に角周波数ωで回転している。この時、X,Y の内積は X*Y で表わされ、

*( ) ( ) ( ) ( ) cos( )X Y X Yω ω ω ω β= −α

)

クロススペクトルは、これの周期平均を取ったものとなっている。 2-25 クロススペクトルの性質

1) ( ) (xy yxS Sω ω− =

2) *( ) (xy xyS S )ω ω− =

3) * ( ) ( )xy yxS Sω ω=

これらは ( )xyC τ のフーリエ表示から直ちに得られる。

例 ( ) ( )yx xyC Cτ τ= − より

( ) ( )i iyx xyS d Sωτ ωτdω ω ω

∞ ∞−

−∞ −∞

=∫ ∫ ω

ω ω→ −

( ) ixyS dωτω ω

−∞

= −∫

2-26 その他の表現 クロススペクトルは複素数なので実部と虚部に分ける時がある。前者をコスペクトル(co-spectrum)後者を

クオドスペクトル(quad-spectrum)と言う。

2 2

( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )

xy xy xy

xy xy xy

S K iQ

S K Q

ω ω ω

ω ω ω

= −

= +

*( ) (xy xyS S )ω ω− = より

( ) ( )xy xyK Kω ω= − で偶感数

で奇関数

また、他にコヒーレンスとフェイズで ( )xyS ω を表す事がある。コヒーレンス coh2 ( )ω は

2

2( )

( )( ) ( )

xy

xx yy

Scoh

S Sω

ωω ω

≡ iy xyS

フェイズ ( )xyθ ω は xyQxyQ

1 ( )( ) tan

( )xy

xyxy

QK

ωθ ω

ω−

xyK x

2-27 コヒーレンスは二変動 ,x y の間の各周波数成分ω毎の相間係数に類するもので 1を越えない。

何故なら 前に述べた

2( ) (0) (0)xy x yC C Cτ ≤

より

2 (0) (0) (0)xy x yC C C≤

2

1 1 2( ) ( ) ( )xy xS d S d Sy d 2ω ω ω ω ω∞ ∞ ∞

−∞ −∞ −∞

≤∫ ∫ ∫ ω

2

右辺 1 2 1( ) ( )x yS S d dω ω ω ω∞

−∞

= ∫

左辺

*

1 1 2 2

*1 2 1 2

( ) ( )

( ) ( )

xy xy

xy xy

S d S d

S S d d

ω ω ω ω

ω ω ω ω

∞ ∞

−∞ −∞

−∞

=

=

∫ ∫

任意の ,x y の関数に対する について上の不等式が成り立つためには、積分の中は , ,xy x yS S S

All 1 2,ω ω

*1 2 1( ) ( ) ( ) ( )xy xy x yS S S S 2ω ω ω≤ ω

∴ 1 2ω ω= =ω とおき

2 ( ) ( ) ( )xy x yS S Sω ω ω≤

22 ( )

)( ) ( )

xy

x y

Sh

S Sω

ω ωω ω

≤ =0 ( 1≤