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中国地域におけるオープンソースプログラミング言語 Ruby」の拠点形成可能性調査 報告書 平成 22 12 中国経済産業局 平成22年度地域経済産業活性化対策調査

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中国地域におけるオープンソースプログラミング言語

「Ruby」の拠点形成可能性調査

報告書

平成 22 年 12 月

中国経済産業局

平成22年度地域経済産業活性化対策調査

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目 次

Ⅰ.調査の背景・目的······················································· 1

Ⅱ.IT 産業及び Ruby の現状について ········································ 2

1.IT 産業の現状 ························································· 2

2.Ruby ビジネス利用の現状 ·············································· 3

3.Ruby 市場規模の推計 ················································· 14

4.Ruby 人材、企業分布 ················································· 17

5.Ruby 標準化の動き ··················································· 20

6.Ruby の性能向上について ············································· 21

Ⅲ.Ruby の可能性と課題について ·········································· 22

1.ビジネス利用の可能性 ················································ 22

2.可能性実現における課題 ·············································· 26

Ⅳ.Ruby 拠点の在り方について ············································ 27

1.検討委員会の開催 ···················································· 27

2.拠点形成の意義について ·············································· 28

3.Ruby 拠点の体制について ············································· 29

4.実施スケジュール ···················································· 33

5.Ruby 拠点形成に必要な支援 ··········································· 33

6.地域 IT ベンダ、ユーザ企業のメリット ································· 33

7.まとめ ······························································ 34

参考資料(アンケート調査、ヒアリング調査の詳細について) ·················· 35

1.IT ベンダに対するアンケート調査結果 ·································· 35

2.自治体に対するアンケート調査結果····································· 53

3.ヒアリング調査結果 ·················································· 63

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Ⅰ.調査の背景・目的

オープンソース・ソフトウェアのプログラミング言語である「Ruby」は、プログラム開

発時のソースコードの記述量が尐なく、開発生産性が高いことから、又、システムへの変

更要求に柔軟に対応できることから、近年国内外の大手企業からも注目されている。

「Ruby」の開発者である「まつもとゆきひろ」氏は島根県松江市に在住しており、島根県

や松江市では「Ruby」を産業発展に向けた地域の強みと位置づけ、Ruby を軸とした IT

産業振興に取り組んでいる。

中国経済産業局では、平成 21 年度に「Ruby ビジネス活用研究会」を設置し、「Ruby」

でシステムを開発することによる IT ベンダの優位性、「Ruby」で開発されたシステムを採

用することによる IT ユーザのメリットなどを明らかにしたところである。

本事業では、「Ruby」のビジネス利用の現状と、IT ビジネスの潮流を踏まえた Ruby の

可能性と課題を詳らかにすると共に、中国地域に「Ruby ビジネス」の拠点を形成し、地

域の IT 産業の発展を目指すために必要な具体的方策を提言することを目的とする。

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Ⅱ.IT 産業及び Ruby の現状について

1.IT 産業の現状

(国内市場の成長の鈍化/グローバル展開の必要性の増加)

2002 年以降、我が国の情報サービス市場の成長率は大きく鈍化。また、ユーザ企業に

おける人件費単価の抜本的な見直し、クラウド・コンピューティングの進展、オフショア

開発の普及等による価格競争の高まり等を背景に IT コストの構造的な低下傾向が常態化

している。

国内市場は成長が鈍化する一方で、ユーザ企業のグローバルな事業展開が拡大しており、

グローバルレベルでの IT 投資は増加する可能性が高い。特に中国などの経済成長率の高

い国において IT 市場が今後拡大することが見込まれる。

(高品質・高信頼性)

国内ユーザの厳しい要求に対応し続けてきたことから、我が国 IT 企業が構築/開発す

る情報システム・ソフトウェアの品質・信頼性は高いものとなっており、我が国 IT 産業

が海外展開を図っていく際の強みとなり得る。情報システム・ソフトウェアの品質・信頼

性を維持・向上していくことが求められる。

(下請構造の地域・中小ベンダ)

我が国の情報サービス・ソフトウェア産業は、プライムベンダを頂点に、多くの地域・

中小ベンダが支えるピラミッド型の産業構造となっており、約 8 割弱の地域・中小ベンダ

が何らかの形で下請業務を受注している。

また、地域・中小ベンダは、下請業務を中心に事業を展開してきたため、必ずしも地域・

中小ユーザのニーズに応え切れていない。クラウドが台頭する時代において、新たな市場

に向けての業態転換も求められている。

IT ベンダ業界の構造

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2.Ruby ビジネス利用の現状

ここでは、Ruby のビジネス利用の現状について、代表的な事例と最近の傾向などを紹

介する。

(1)民間市場での Ruby 利用

わが国において Ruby の利用が急速に広まったのは平成 17 年頃からであり、その背

景には、平成 16 年にデンマーク人のプログラマーである David Heinemeier Hansson

氏が Web アプリケーション・フレームワークである Ruby on Rails を開発したことが関

係している。

代表的な導入事例としては、平成 18 年に楽天㈱が自社システムに Ruby と Ruby on

Rails を採用し、翌年にまつもとゆきひろ氏を楽天技術研究所のフェローに招聘したこ

とが、大きな話題となった。また、レシピ投稿サイトを運営するクックパッド㈱と、レ

ストランのクチコミサイトを運営する㈱カカクコムが Ruby と Ruby on Rails を導入し

た。

こうした中で、大規模なアクセスがあるシステムを構築する場合には、Ruby と Ruby

on Rails の処理速度の遅さが問題視されることもあったため、楽天㈱はまつもとゆきひ

ろ氏と共同で並列分散処理技術を研究し、㈱カカクコムは Ruby on Rails とデータベー

スである MySQL のチューニングを最適化するなど、独自の方法により対応している。

最近では、Ruby1.9 系のリリースに際し、東京大学の笹田耕一講師が開発した仮想マ

シンである YARV(Yet Another Ruby VM)が導入され、処理速度が大幅に改善されて

いる。

次ページ以降では、マスコミ情報や本事業のヒアリング調査結果をもとにユーザにお

ける Ruby の採用事例及び IT ベンダにおける Ruby の活用事例を紹介している。

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≪わが国最大の買物サイト≫

楽天㈱

本社:東京都品川区 資本金:107,605 百万円

従業員:5,810 名 (平成 21 年 12 月時点)

○楽天㈱は、平成 19 年 6 月より、まつもとゆきひろ氏を楽天技術研究所のフェローに招聘

し、共同研究を実施している。

○そのテーマの一つとして、大規模なデータを処理する分散処理技術の開発がある。楽天

では、ユーザの買物履歴を分析し、そのユーザに適した商品やサービスをお勧めするレ

コメンデーション・エンジンを独自開発しており、急速に増え続けているユーザと商品・

サービスに対応しながら、お勧めする商品やサービスの解析を日次ベースで行う必要が

ある。

○データの蓄積を分散するシステムとして Roma を開発し、平成 21 年から稼動を開始させ

た。Roma の特徴の一つとして、データの蓄積をサーバ側で行うため、ユーザがパソコ

ンや携帯電話など異なる端末からアクセスしても、その人のデータを閲覧することがで

きる。このように、Roma を利用すれば、クライアントの多様化に柔軟に対応できる。

○データの処理を分散するシステムとしては Fairy を開発し、同じく平成 21 年から稼動さ

せている。Fairy の特徴の一つとしては、Fairy サーバを並列につなぐ際、既存のバッチ

プログラムをほとんど修正する必要がなく、手軽に並列分散処理を実施できる点が挙げ

られる。

○楽天㈱は、Roma と Fairy の分散処理技術を、同社が独自に開発したレコメンデーショ

ン・エンジンと組み合わせることにより、さらに顧客満足度の高いシステムの開発を進

めている。

≪世界最大級のレシピ投稿サイト≫

クックパッド㈱

本社:東京都港区 資本金:796 百万円 従業員:78 名

○クックパッド㈱は、月間 1,000 万人が利用し、89 万品のレシピが集まる世界最大級の料

理レシピ投稿サイト「クックパッド」等を運営している。

○同社では、「クックパッド」の検索ランキングを活用した食の検索データサービスである

「たべみる」を開始した。このサービスは、「クックパッド」の ID 取得ユーザが「どの

ようなキーワードで料理レシピを検索しているのか」という情報を、食材・地域・季節・

組み合わせ検索語など様々な切り口で分析し、食品関連業界に消費者の欲求や潜在ニー

ズのマーケティングデータを提供するものである。

○「たべみる」のサイトの構築を Ruby で試みたところ、Ruby 初級者が 1 カ月で完成させ

ることができたことから、社内において Ruby への注目度が急激に高まった。

○この出来事がきっかけとなり、「クックパッド」を全面リニューアルする際には、Ruby

をメイン言語として使用することとなった。

○同社では、Web サイトを構築する際は、プロトタイプの改良を幾度も繰り返すことから、

プログラムの変更や拡張が容易で、コンパイルの要らない Ruby は、開発スピードを高

めるための重要なツールとして活用されている。

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≪わが国 No.1 のレストランのクチコミサイト≫

㈱カカクコム

本社:東京都渋谷区 資本金:695 百万円

○㈱カカクコムは、レストランの No.1 クチコミサイトである「食べログ.com」を運営して

いる。

○「食べログ.com」は、“信頼のできるレストラン選び”をコンセプトに、実際にレストラ

ンを利用したユーザから寄せられた“クチコミ”をもとに、各レストランを 5 点満点で

評価することにより、本当に満足のできるお店を浮き彫りにし、信頼できるレストラン

ランキングを提供している。

○同社は、平成 19 年 10 月に「食べログ.com」を Ruby on Rails でフルリニューアルし

た。当時の利用状況は月間利用者約 380 万人、月間約 2,900 万ページビューであり、登

録レストラン件数も約 13 万店に達しており、Ruby on Rails でつくったサイトとしては

当時国内最大規模であった。

○リニューアルに着手する以前は、「Ruby on Rails の処理速度が遅いため、『食べログ』

のように大量のアクセスがあるサイトの構築は難しい」という意見もあった。しかし、

実際に調べてみると、ボトルネックとなるのは Ruby 自体ではなく、データベース周り

であることが判明し、Ruby on Rails によるリニューアルに踏み切った。

≪納入実績 300 件超の CMS≫

㈱富士通四国システムズ

本社:香川県高松市 資本金:200 百万円 従業員:705 名

○㈱富士通四国システムズは、平成 10 年から Ruby の使用を開始。平成 13 年に香川県か

ら CMS を受注し Ruby で構築したことをきっかけとして、その後、自治体向けの CMS

を中心として Ruby 関連の事業を本格的に展開してきた。

○同社の CMS の主力製品は、Ruby をはじめとする OSS で構成された「GWebLink-Neo」

というパッケージソフトウェアである。ユーザライセンスフリーのため、利用者数や端

末数におけるライセンス費用かからず、ユーザは低価格で導入することができる。

○同社では、10 数年間 Ruby を使用してきた実績と、手厚いサポート体制を背景として、

フル OSS である「GWebLink-Neo」の価格競争力を活かした顧客開拓を実施している。

○同社の納入先は、官公庁、大学、健康保険組合など全国に広がっており、累計 318 団体

に達している。

○今後、「GWebLink-Neo」の機能を、コンテンツ表示関連ビジネスで拡張する予定である。

例えば、①デジタルサイネージシステムと連携するためのコンテンツ配信のコアエンジ

ンとしての活用、②CMS を SaaS で提供するサービス(同社の高知インターネット・デ

ータ・センターを活用)、などが挙げられる。

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≪Java と組み合わせた Web システム≫

㈱イーシー・ワン

本社:東京都港区 資本金:300 百万円 従業員:172 名

○㈱イーシー・ワンの最首社長は、Ruby ビジネス・コモンズの会長、福岡 Ruby ビジネス

拠点推進会議の副会長を務めるなど、福岡県内における Ruby のムーブメントを牽引し

ている人物である。

○福岡県の外郭団体である「福岡県産業・科学技術振興財団」は、クラウド・コンピュー

ティングにより、Ruby を使ったソフトウェアなどの開発環境を提供する予定であり、最

首社長が会長をつとめる Ruby ビジネス・コモンズがアドバイザーとして参加する。

○Java と Ruby を得意とする同社では、顧客のニーズに合わせて最適な技術を選択してい

る。特に、将来的に機能拡張や変更が見込まれるシステムでは積極的に Ruby を採用し

ている。

○ Ruby 案件としては、これまでに EC サイトの構築で数多くの実績を持っているが、企

業の基幹システムへの適用なども行っている。

○ 特に、自社製品の開発については、ほぼ 100%Ruby を採用している。これは、Ruby で

開発することの効果を高く評価しているためであり、現実に開発コストと Time to

Market の点で、極めて高い成果をあげている。

○同社が開発した大規模なクラウド環境の監視・制御システム「Monkey Magic」に、Ruby

が全面採用されている。このサービスは、月額利用料 500 円からという低価格でありな

がら、数千万サーバを超える大規模なシステムや、複数データセンターに分散されたク

ラウド環境全体をコントロールする。性能は、サーバ台数の追加で簡単に向上させるこ

とができるだけでなく、単一サーバの障害や、単一データセンターの障害にもシステム

はダウンしない構造をもっており、よく設計された Ruby の高い信頼性を証明している。

○平成 22 年 11 月には、九州電力株式会社との提携を発表し、需要が高まるクラウドや分

散処理の分野でサービス提供をおこなっていく計画である。

≪Web を活用したシステムの受託開発≫

㈱万葉

本社:東京都千代田区 資本金:13.8 百万円 従業員:6 名

○㈱万葉の大場社長は、会社に勤務していた時期に Ruby と出会い、家計簿システム「小

槌」を作成したところ、Award On Rails 2006 の大賞を受賞した。このシステムでは、

家族一人ひとりの家計簿をつくり、関連のある記入を自動的に連携記入する機能が装備

されている。

○平成 19 年に㈱万葉を設立し、Ruby をメイン言語とするプログラミングや人材育成など

の事業を実施している。現在、7 名のエンジニアが Ruby 技術者認定資格の Silver を保

有しており、そのうち 1 名は Gold も保有している。また、会社としては Ruby システム

インテグレータの認定を受けている。

○プログラミングに関しては、大手・中堅 SI 企業から受託し、主に Web を活用したグル

ープウェア、ショッピングサイト、コミュニケーションサイトなどを Ruby on Rails で

制作している。また、iPhone アプリケーション、ソーシャルゲームなども手がけている。

○人材育成に関しては、平成 18 年から島根大学で大学生を対象とした Ruby の実践的な講

義を毎年 1 回担当するなど、教育界・産業界からの依頼に応じて研修を請け負っている。

○大場社長は、「Ruby on Rails の逆引きクイックリファレンス」の著者としても知られて

おり、2010 RubyWorld Conference や日本 Ruby 会議など、様々な舞台で講演活動も実

施している。

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≪商店街のまちづくりサイト≫

リバティ・フィッシュ㈱

本社:大阪府大阪市 資本金:8 百万円 従業員:15 名

○リバティ・フィッシュ㈱は、制御システムの受託開発を主力事業としてきたが、近年、

Ruby をはじめとする OSS を利用した自社商品の開発・販売に取り組んでいる。

○同社には、Ruby 技術者認定資格の保有者が 9 名おり、その殆どが Linux、Java、C 言語

も使うことができるなど、OS からアプリケーションまで一貫して開発・サポートできる

人材を育成している。会社としては、Ruby システムインテグレータの認定も受けている。

○Ruby のプログラミング技術の教育スクールも開催しており、20~30 日間かけて、実践

ですぐに役立つカリキュラムを実施している。日本情報技術取引所からも Ruby の研修

事業を請け負っている。

○これから同社が拡販を目指しているシステムは、商店街のまちづくりサイトである。商

店街全体のサイトを立ち上げ、そこに個々の商店が自由に簡単に使えるページも割り当

てる。さらに、商店街内部でのグループウェアの機能、ショッピングサイトの機能、ブ

ログの機能なども盛り込むほか、ツイッターとも連動させる。このシステムは Ruby を

使っているため、迅速かつ低コストで構築することができる。

○また、多言語に対応できる iPad に最適化した問診票アプリケーションを Ruby で開発。

これは、最初に言語を選択すると、以降の問診項目が選択した言語で表示され、最後に

入力内容を PDF で出力するものである。サーバにデータを集約し、ブラウザで表示する

クラウド型のアプリケーションにすることで、iPad や Android、パソコン等、端末を選

ばない機能性と、直感的に操作ができるボタン等、タブレット端末でのユーザインター

フェースを実現した。

≪首都圏全域の地震防災システム≫

㈱ティージー情報ネットワーク

本社:東京都品川区 資本金:400 百万円 従業員:573 名

○㈱ティージー情報ネットワークは、東京ガス㈱が全額出資している IT ソリューション企

業である。

○同社は、阪神淡路大震災の教訓をもとに、東京都で直下型大地震が発生した場合の火災

による二次被害を最小限にとどめるため、平成 13 年に地震防災システム「Supreme」(シ

ュープリーム)をリリースした。平成 21 年に全面リニューアルした際、同システムのソ

ースコードを C 言語から Ruby に書き換えた。

○「Supreme」は、首都圏に 4,000 基設置されている地震センサーから送られてくるデー

タを、東京都と千葉県にあるサーバに集約し、被害が甚大な地域のガス供給を停止する

“ミッション・クリティカル”なシステムである。Supreme を開発したことにより、地震

発生からガス供給停止までの時間を、2,400 分から 10 分へと大幅に短縮することに成功

した。

○また、同社では、①Supreme で集めた情報を電子メールや Web サイトで一般に発信する

「地震情報配信システム jishin.net」、②地震、風水害、新型インフルエンザなどの災害

情報を提供する「災害情報ステーション」、③災害時に社員の安否をメールと携帯電話で

確認する「社員向け安否確認システム」も、Ruby で構築している。

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≪バックボーンのトラフィック監視システム≫

㈱インターネットイニシアティブ

本社:東京都千代田区 資本金:14,295 百万円 従業員:1,687 名(連結)

○㈱インターネットイニシアティブは、インターネット接続から、セキュリティ、メール

システム、コンテンツ配信、データセンターおよびクラウドサービス等の各種アウトソ

ーシングサービス、システム構築、運用保守までをトータル・ネットワーク・ソリュー

ションを提供しているリーディング企業である。

○同社では、サービス管理システムなどを Ruby で構築している。

○また、バックボーンのトラフィック状態(通信されているデータ量やエラーの発生状況)

を調べるため、バックボーン上のルーターからデータを取り出してグラフ化する機能も、

Ruby でつくられている。

○トラフィック状態とは別に、通信データの内訳(通信先および通信元による分析)をグ

ラフ表示する機能も、Ruby で構成されている。

○外販用パッケージソフトにも Ruby を使用している。これは、ユーザのサービス基盤シ

ステムにおいて、障害が発生しているかどうかを監視するシステムである。このような

監視システムは一般に外国語表示のものが多いが、ユーザから「日本語表示にしてほし

い」との要望が多かったことから、同社では日本語と親和性の高い Ruby を利用した。

≪舶用プロペラ工場の生産管理システム≫

㈱システムズナカシマ

本社:岡山県岡山市 資本金:10 百万円 従業員:116 名

○㈱システムズナカシマは、舶用プロペラのトップメーカーであるナカシマプロペラ㈱の

新規事業として、自社製 CAD システム「ANDES」シリーズの開発・販売により起業し

た。グループの情報部門を担うとともに、CAD/CAM、GIS、Web システム、RFID 等

の技術を生かしたパッケージシステムから、提案型の営業/開発/運用までトータルサポ

ートを行っている。

○RubyWorld Conference 2010 では、Ruby と Flash を用いて船舶用プロペラ工場の“見

える化“を行う生産管理システムを発表した。

○このシステムでは、プロペラの加工を行った直後にその部署がハンディターミナルで作

業状況を入力することにより、プロペラが生産工程のどこにあるのか、どの程度の工数

をかけたのかを把握できる。

○また、プロペラの鋳造工程では、溶融した銅合金をプロペラ形状に造形した鋳型に流し

込む。ここで、鋳造品質を記録しているが、このデータも本システムで集約している。

○このシステムにおいては、ハンディターミナルとデータベースをつなぐミドルウェアと

して Ruby が利用されている。

○このシステムでサーバに収集されたデータは、各作業現場に設置されているモニターに

リアルタイムで映し出すことができるため、現場で直接状況確認することによる作業品

質の向上と、管理者による総合的な効率化と品質向上を支援する。

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≪図書館の基幹システム≫

㈱まちづくり三鷹

本社:東京都三鷹市 資本金:272 百万円

○㈱まちづくり三鷹は、中心市街地活性化法に基づくまちづくりを進める主体として設立

された第三セクターである。

○同社及び同社の IT 事業本部から独立した株式会社内に、Ruby を取り扱えるエンジニア

を 10 名程度有している。また、同社が事務局を担っている三鷹 ICT 事業者協会内にも

10数名のRuby技術者がいるほか、社外のパートナー約10名とも協力関係を持っている。

○この人材を活用し、約 70 万件の書誌情報をスムーズに検索できる技術を開発するなど、

Ruby で図書館の基幹システム全体を構築する技術を有している。このシステムは、先進

的な完全 Web 方式の採用により、複数の公共図書館や学校図書館などをインターネット

上で結び、一カ所のサーバで統合管理を行うこともできる。

○さらに、Ruby の開発効率の良さとライセンス料がかからないオープンソース・ソフトウ

ェアを活用し、図書館システムの受注額を従来から大幅に安く抑えることに成功した。

○同社は、システムを受注して構築する際は、発注者(自治体)の地元ベンダと共に作業

を行い、ソースコードも開示して保守業務を委託することで、地元企業にお金が還流す

るビジネスモデルを確立している。

○図書館システムのほかに子育て支援システムも Ruby で開発しており、これまでに計6

団体から受注を獲得している。

≪社内コミュニケーションシステムの実証実験≫

㈱日立ソリューションズ

本社:東京都品川区 資本金:38,372 百万円 従業員:10,387 名(単独)

○日立ソリューションズは、平成 21 年 12 月に Ruby センタを開設し、併せて松江事務所

内にも Ruby ラボを設置した。また、Ruby アソシエーションからシステムインテグレー

タの認定も受けるなど、大手 SIer の中でも Ruby に関して先進的な取組を展開している。

○同社では、Ruby の性能を検証するため、平成 20 年に、PHP で書かれた社内コミュニケ

ーションシステム(市販されている OpenPNE)と、それと同じ仕様を Ruby でつくった

ものを比較した。

○社内コミュニケーションシステムは、日記、メッセージ、コミュニティ、カレンダ、メ

ール等の機能で構成されており、同社での利用状況は、登録ユーザは約 5,000 名、ログ

インは 1 日当たり 550 回、ページビューは 1 日当たり 24,000PV であった。

○今回の 1 プロジェクトのみの結果では Ruby の性能について正確に評価することはでき

ないが、参考情報として検証結果が公表されている。それによると、システム全体の画

面数が 99 画面、計画からシステムテストまでの総工数が 8,119step であったことから、

平均すると 1 画面を 82step、6.4 時間でつくったことになり、本件においては開発効率

が高かったことが確認された。

○また、バグの修正に要する時間は平均で 1 件当たり約 2 時間、開発中の仕様変更への対

応時間も 1 回当たり約 4 時間であり、良好な結果を得ている。

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≪軽量 Ruby の組込みシステムへの適用≫

㈱福岡 CSK

本社:福岡県福岡市 資本金:200 百万円 従業員:119 名

○㈱福岡 CSK は、まつもとゆきひろ氏、九州工業大学 田中和明准教授、東芝情報システ

ム㈱とともに、経済産業省「平成 22 年度地域イノベーション創出研究開発事業」の採択

を受け、平成 22~23 年度に「軽量 Ruby を用いた組込みプラットフォームの研究・開発」

を実施している(予算額 1 億 4,000 万円)。

○その主要テーマとして、Web システムに適した言語体系であるとされてきた Ruby を、

組込みソフトで高速・安定的に動作させるために実装体系をスリム化した「軽量 Ruby」

の開発を行っている。軽量 Ruby は、通常の Ruby でつくったソフトでは容量が大きすぎ

てチップに搭載することができないため、まつもとゆきひろ氏の発案により軽量化の技

術を開発することとなった。

○この軽量 Ruby はユーザインターフェースやデータベースに利点がある。例えば、組込

みに適用する例として電子レンジの場合、次々に生み出され公表されている料理の新し

いレシピの膨大な情報を、ユーザにとって選びやすい状態に整理し、ユーザがそのレシ

ピを選択した時に素早く画像や文字情報をモニターに映し出すなど考えられる。

○本事業では、軽量 Ruby の開発と並行して、電子基板部品「Ruby チップ」等の試作開発

も進めている。

≪保険会社の数理計算の補助システム≫

アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ㈱

本社:東京都港区 従業員:約 800 名

○アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ㈱では、開発生産性や品質の向上の

ために、現場でもさまざまな工夫がおこなわれており、Ruby のグルー言語(システムと

システムをつなぐ言語)としての活用もその一例である。

○例えば、保険会社における数理計算のシステムで、Ruby を適用した事例がある。保険会

社には、アクチュアリと呼ばれる数理計算の専門家が膨大な数値データを処理する業務

があり、その数値データを、アクチュアリは Excel で、メインフレームは CSV で処理し

ていた。このため、両者の間でデータを変換が必要であり、この変換するシステムを Ruby

でつくりあげた。

○また、あるクライアントのバックエンドのシステムを取り扱った事例では、そのシステ

ムが多数のインターフェースを持っていたため、そのインターフェースにつながってい

る多数のデータベースの単体テストを繰り返しながら、システム全体を構築する必要が

あった。しかし、各インターフェースの開発状況やバージョン情報が他のインターフェ

ースの担当者に適切に伝達されていない場合もあり、システム全体の結合テストを円滑

に進めることが出来なかった。そこで、Ruby on Rails のマイグレーション機能とバー

ジョン管理ツールを活用し、システム全体の調整を図りながら、業務を遂行した。

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(2)行政システムでの Ruby 利用

自治体においては、平成 19 年頃から、島根県、松江市、独立行政法人情報処理推進

機構(以下「IPA」という。)の主導により実績が徐々に誕生し始めている。平成 19 年

度には IPA の公募事業として松江市の医療・介護の高額合算システムを Ruby で開発し

たプロジェクトがある。このプロジェクトは、松江市に本社を置く㈱テクノプロジェク

トを中心に数社がコンソーシアムを組んで受託し、Ruby による基幹業務開発の信頼

性・安定性とそこでの生産性の測定が行われ、問題が無いことが実証された。

また、島根県は、県内 IT 企業の高度化と集積を推進することを目的とする「しまね

IT 産業振興事業」に取り組んでおり、Ruby を軸とした技術研究・システム開発による

技術力の向上を図るとともに、効果的な人材育成、情報発信を行っている。

この「しまね IT 産業振興事業」では、「IT 人材育成支援事業」、「実践型 OSS 開発人

材育成事業」など 10 種類の事業が実施されており、そのうち「Ruby 利用開発促進事業」

において、県の基幹業務システムに Ruby を導入するプロジェクトが展開されている。

(資料)島根県産業振興課情報産業振興室のホームページ

しまね IT 産業振興事業

松江市の医療・介護の高額合算システムの概要

(資料)㈱テクノプロジェクト「自治体システムでの Ruby 活用の可能性について」

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島根県の個々の業務システムでは、「iOFW(Integrated Open Framework)」という

名称の共通の業務統合基盤の上で稼動しているものがある。平成 22 年度からその改修

を行うことを機に、その業務統合基盤の上で稼動する Ruby によるシステムの研究開発

が推進されている。

前ページのような構想のもと、島根県では、iOFW の改修に先立って、その上で稼動

する Ruby によるシステムの研究開発の実証事業として、中小企業近代化資金特別会計

システムを Ruby で構築する事業を実施した。

この結果、Ruby には信頼性、機能性、実用性において問題となる欠落点はなく、自

治体システムを Ruby で開発できることが実証された。

さらに、平成 22 年 11 月までに iOFW にかかる 13 種類の業務システムの開発業務が

公募され、このうち 12 業務が Ruby を提案した地元企業により落札された。落札され

たシステムの内訳は、「人口移動調査システム」、「恩給システム」などであり、この事業

を通じて、自治体の業務基幹系システムを Ruby で構築できるという実績がつくりあげ

られるとともに、そこで得られた技術やノウハウが地元に蓄積される見通しである。

(資料)島根県「島根県電子県庁推進計画(平成 22年度)」

島根県における情報通信システムの整備・改修計画

(資料)しまね Ruby Enterprise コンソーシアム「中小企業近代化資金特別会計システム評価報告書」

中小企業近代化資金特別会計システムの概要

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平成 22年度 iOFW 業務システム開発における Ruby の利用状況

(資料)島根県「業務システム開発における Ruby の利用について」

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3.Ruby 市場規模の推計

IPA が実施した「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」(平成 21

年度)によると、「アプリケーション開発(ツール)として利用される OSS の利用率・利

用意向率」は下表の通りであった。

このうち「現在利用」の欄をみると、「Ruby」との回答は 146 件、「Ruby on Rails」は

82 件であった。「現在利用」の総回答数は 4,467 件であることから、「Ruby」と「Ruby on

Rails」を合計した 228 件の構成比は 5.1%となる。

一方、「今後利用」の欄をみると、「Ruby」との回答が第 1 位の 84 件、「Ruby on Rails」

が第 2位の 74件となっている。「今後利用」の総回答数は 1,072件であることから、「Ruby」

と「Ruby on Rails」を合計した 158 件の構成比は 14.7%となる。

このように、アプリケーション開発で利用される OSS において、Ruby の占める割合は

5.1%から 14.7%へと大幅に拡大する見通しとなっている。

アプリケーション開発(ツール)として利用される OSS の利用率・利用意向率

(資料)IPA「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」

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「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」では、前ページの結果を

利用して、期待成長倍率分布を算出している。

期待成長倍率とは、「現在利用している」とした回答数に対する、「現在利用していない

が、今後利用する」とした回答数の比率であり、期待成長倍率が 1 であれば、現在の利用

者と同じだけの利用意向を持つ潜在的な利用者がいることを示す。

この分布図をみると、「Ruby」と「Ruby on Rails」は、「利用規模が大きく着実に拡大

中」というグループに含まれている。

期待成長倍率分布

(資料)IPA「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」

また、本事業のアンケート調査において中国地域の IT ベンダ企業に平成 21 年度の IT

関連売上高と Ruby に関する売上高を尋ねたところ、98 社から回答があった。

IT 関連売上高の「合計」は、41,606 百万円(1 社当たり 425 百万円)であった。

また、Ruby に関連する売上高(注)の「合計」は 490 百万円(1 社当たり 5 百万円)で

あり、この内訳は「開発業務」413 百万円、「運用・保守業務」26 百万円、「その他 IT 関連」

51 百万円であった。

(注)僅かでも Ruby のソースコードを含むものの売上高。

平成 21年度の IT 関連売上高と Ruby に関する売上高 (単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

18,528 413

(44.5) (1.0)

10,743 26

(25.8) (0.1)

12,335 51

(29.6) (0.1)

41,606 490

(100.0) (1.2)(注)回答者数98社。

開発業務

運用・保守業務

その他IT関連

合計

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前ページの売上高の「合計」だけ回答し、「開発業務」などの内訳は回答しなかった企業

を含めて集計すると、IT 関連売上高は 55,644 百万円、Ruby に関する売上高は 493 百万

円であった。なお、Ruby に関する売上実績があった企業は 11 社であった。

平成 23 年度について上表と同じ要領で集計すると 91 社から回答があり、IT 関連売上

高は 42,444 百万円、Ruby に関する売上高は 1,094 百万円であった。なお、Ruby に関す

る売上見込額の回答があった企業は 11 社であった。

平成 21 年度と平成 23 年度の Ruby に関する売上高を両方とも回答した企業は 90 社で

あった。

その合計額をみると、平成 21 年度は 438 百万円、平成 23 年度は 1,094 百万円と、約

2.5 倍に増加する見通しとなっている。

以上のように、「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」および本

事業のアンケート調査結果とも、今後 Ruby の利用が順調に拡大する見通しとなっている。

IT 関連及び Ruby に関する売上高

(単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

55,644 493

(100.0) (0.9)(注)回答者数105社。

合計

平成 23年度の IT 関連と Ruby に関する売上高

) (単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

42,444 1,094

(100.0) (2.6)(注)回答者数91社。

合計

平成 21年度と平成 23年度の Ruby 関連の売上高

) (単位:百万円)

平成21年度 平成23年度

438 1,094

( - ) (2.5倍)

(注)回答者数90社。

Rubyに関する売上高

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4.Ruby 人材、企業分布

Ruby アソシエーションからシステムインテグレータの認定を受けた企業は、平成 22 年

12 月時点で 29 社である。

都道府県別の企業数では、「東京都」10 社、「島根県」5 社、「大阪府」5 社などとなって

おり、現時点ではこれら 3 都府県が 7 割弱を占めている。

システムインテグレータ認定制度の立ち上げ当初は、「東京都」の企業が多かった(表の

上位に「東京都」が並んでいる)が、最近は「広島県」、「島根県」、「長野県」、「石川県」

など地方の県が多くなっており(表の下位に地方の県が並んでいる)、システムインテグレ

ータを認定する動きが、大都市圏から地方圏へ徐々に広がりつつある。

Ruby アソシエーション認定システムインテグレータ

No 企業名 所在地 資本金

1 ㈱ネットワーク応用通信研究所 島根県 24

2 伊藤忠テクノソリューションズ㈱ 東京都 21,763

3 ㈱万葉 東京都 13

4 ㈱アールラーニング 東京都 41

5 ㈱コスモウェーブ 福岡県 10

6 ㈱日立ソリューションズ 東京都 38,372

7 ㈱ゼネット 東京都 41

8 ㈱アクティブネットワーク 大阪府 25

9 ㈱アーチ 東京都 80

10 ㈱北見コンピューター・ビジネス 北海道 20

11 ㈱DTS 東京都 6,113

12 ㈱BSC 大阪府 50

13 ㈱ジェイテック 大阪府 30

14 ㈱サンフレックス 東京都 10

15 ㈱テクノプロジェクト 島根県 100

16 日本アイティディ㈱ 福島県 55

17 ㈱永和システムマネジメント 福井県 61

18 ㈱ケイビーエムジェイ 東京都 448

19 ㈱ファインディックス 東京都 40

20 リバティ・フィッシュ㈱ 大阪府 8

21 ㈱サイバーミッションズ 神奈川県 0.5

22 ㈱ケイケンシステム 長野県 75

23 ㈱ワコムアイティ 島根県 49

24 ㈱プロビズモ 島根県 99

25 シーエスエヌ㈱ 石川県 58

26 ㈱コルモ 大阪府 10

27 ㈱富士通長野システムエンジニアリング 長野県 200

28 ㈱マツケイ 島根県 25

29 ㈱アイヒデコーポレーション 広島県 3

(資料)Ruby アソシエーションのホームページより作成

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「ちゅうごく地域 Ruby ビジネスフォーラム」(平成 22 年 8 月開催分)の資料では、中

国地域における Ruby 技術を有する企業として、下図の 50 社が紹介されている。

県別の企業数をみると、「島根県」が 31 社と突出しており、次いで「広島県」11 社、「鳥

取県」4 社、「岡山県」3 社、「山口県」1 社の順であった。

本事業のアンケート調査で新たに把握した Ruby 技術者を有している企業を追加すると、

合計で 70 社となった。特に、新たに把握した企業数は、「広島県」13 社、「岡山県」5 社

などとなっており、島根県以外でも Ruby 技術の習得に向けた動きが広まっている様子が

理解できる。

(単位:社)Rubyビジネス活用研究会

本調査 合計

島根県 31 0 31松江市 22 0 22出雲市 6 0 6浜田市 2 0 2益田市 1 0 1

鳥取県 4 1 5鳥取市 1 0 1八頭町 1 0 1米子市 2 1 3

岡山県 3 5 8岡山市 3 4 7倉敷市 0 1 1

広島県 11 13 24広島市 9 12 21福山市 1 0 1呉市 1 0 1東広島市 0 1 1

山口県 1 1 2宇部市 0 1 1下松市 1 0 1

合計 50 20 70

中国地域における Ruby 技術を有する企業

中国地域における Ruby 技術を有する企業

(資料)中国経済産業局「ちゅうごく地域 Ruby ビジネスフォーラムの取組みについて」

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本事業で実施した中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、IT 技術者数を尋

ねたところ 123 社から回答があり、総人数は 3,413 人(1 社当たり 27.7 人)で、このう

ち Ruby 技術者(注)は 142 人(同 1.2 人)、Ruby 技術者認定資格保有者は 33 人(同 0.3

人)であった。

(注)業務として Ruby を一部にでも利用している IT 技術者。

Ruby 技術者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 93 社(構成比 75.6%)を占め

ており、約 4 分の 3 の企業では Ruby を扱える人材がいないと思われる。

一方、Ruby 技術者数が 1 人でもいる企業は約 4 分の 1(同 24.4%)であり、そのうち

「16~20 人」と「21~30 人」との回答がそれぞれ 1 社みられた。このように、Ruby への

取組状況には企業間で大きな違いがみられる。

なお、Ruby 技術者認定資格保有者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 95.9%を

占めており、1 人でもいる企業は 4.1%であった。

Ruby 技術者の人数に関する充足感を尋ねたところ 122 社から回答があり、「必要ない」

との回答が 50 社(構成比 41.0%)、「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 40.2%)

を占めた。

また、Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感を尋ねたところ 116 社から回答があり、

「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 42.2%)、「必要ない」との回答が 46 社(同

39.7%)を占めた。

このように、現時点では、Ruby 技術者の人数や技術レベルについて、ニーズをあまり

感じていない企業が全体の約 8 割を占めている。

Ruby 技術者数 Ruby 技術者認定資格保有者

Ruby 技術者の人数に関する充足感 Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 93 75.61~5人 22 17.96~10人 6 4.911~15人 0 0.016~20人 1 0.821~30人 1 0.8

合計 123 100.0

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 118 95.91~5人 3 2.46~10人 1 0.811~15人 1 0.816~20人 0 0.021~30人 0 0.0

合計 123 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

必要ない 50 41.0どちらともいえない 49 40.2かなり不足している 7 5.7不足している 6 4.9十分足りている 5 4.1足りている 5 4.1合計 122 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

どちらともいえない 49 42.2必要ない 46 39.7不満である 8 6.9満足している 6 5.2かなり不満である 4 3.4十分満足している 3 2.6合計 116 100.0

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5.Ruby 標準化の動き

Ruby は平成 17 年頃から世界的に利用が急速に拡大したものの、国内あるいは国際的に

承認された言語の標準仕様書はない。このため、言語の標準化により、より一層利用しや

すい環境を整備する必要があると考えられるようになった。

このような状況の下、平成 20 年から IPA を主体として、国内および国際規格化を目的

とする Ruby の標準化が進められてきた。特に、国際的な標準化を実現することは、日本

発の言語が世界に認められたことを示すことでもある。

先ず、国内規格である JIS 化の作業から開始され、平成 20 年 11 月には IPA に Ruby

標準化検討 WG が立ち上げられた。この WG は、JIS 原案の作成母体となる組織であり、

委員長には筑波大学の中田育男名誉教授が就任し、委員にはまつもとゆきひろ氏を含む

Ruby 言語開発者から 4 名、ユーザ企業から 4 名、学識経験者等 4 名が就任した。

それから約 1年後の平成 21年 11 月に約 300 ページの英語版の標準仕様書のバージョン

1(ドラフト v1)が完成した。このドラフトは、現在最も広く普及している Ruby1.8 系を

もとに仕様が成文化されている。

平成 21 年 12 月から平成 22 年 1 月にかけ、ドラフト v1 を全世界の Ruby コミュニティ

に公開し、広くコメントを募集した。この結果、100 件を超えるコメントが国内外から寄

せられ、それらを反映した英語版の標準仕様書が同年 2 月に完成した。

同じく 2月に日本語版の JISドラフトが完成し、5月にJIS原案を規格協会に提出した。

その後、6 月から 7 月までの 2 カ月間で、規格調整委員によるレヴューを 3 度にわたって

実施し、平成 22 年 8 月に JIS 原案が完成した。

現在、平成 22 年度末までに JIS として制定されることを目指し、JIS 化の手続きが実

施されている。

前述の通り、国内規格である JIS 化が実現された後には、国際規格である ISO としての

制定を目指した取組が開始される予定である。

これまでの Ruby の標準化に向けた取組

2008.11 IPA に Ruby 標準化検討委員会を設置

2009.11 英語版ドラフト v1 完成

2009.12-2010.1 Ruby コミュニティに公開し、コメント受付

2010. 02 コメントを反映した英語版の標準仕様書が完成

2010.02 日本語版 JIS ドラフト作成

2010.04 ニューヨークにて概要説明

2010.05 JIS 原案を規格協会に提出

2010.06 規格調整委員によるレヴュー(1)

2010.07 規格調整委員によるレヴュー(2)

2010.07 規格調整委員によるレヴュー(3)

2010.08 JIS 原案完成

(資料)筑波大学名誉教授 中田育男氏 RubyWorld Conference の講演資料をもとに作成

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6.Ruby の性能向上について

Ruby の課題の一つとして、インタープリタであるため処理速度が遅いことがしばし

ば指摘されていた。

しかし、平成 19 年 12 月に発表された Ruby1.9 系列では、東京大学の笹田耕一氏が

開発した仮想マシンである「YARV」が搭載されたことで、処理速度が大幅に向上した。

YARV は、Ruby プログラムを中間コード(YARV バイトコード)にコンパイルし、

最適化を施したうえで、スタック・マシン型の仮想マシンにより実行する。

処理速度向上の仕組みの一例として「インライン・メソッド・キャッシュ」がある。

このキャッシュは、メソッドの指示に従って検索した結果(変数の具体的な値など)を

保存するもので、命令列の中に配置されおり、同一の検索が繰り返される場合に、当該

キャッシュに検索結果を問い合わせるだけでよいため、処理時間を短縮できる。

今後の Ruby に関する研究開発の要素の一つとして、マルチコアなどの並列計算機に

対応するための Ruby の並列化がある。将来的には、並列処理を意識しなくても Ruby

を使える、つまり普通に Ruby を使っている最中に実は裏側で並列処理が実行されるこ

とが理想である。その際、言語レベルか言語処理系レベルかに分けて検討する必要があ

る。

現時点では、Ruby の開発は開発コミュニティが無償で協力している状況である。開

発コミュニティが今後も安心して開発に取り組めるように、開発支援などの環境を整え

ることも Ruby を持続的に発展させるためには重要である。

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Ⅲ.Ruby の可能性と課題について

1.ビジネス利用の可能性

本事業のアンケート調査とヒアリング調査および文献資料により、Ruby のメリットを

IT ベンダ側とユーザ側に分けてまとめると、下表の通りである。

このようなメリットを活かし、IT ベンダの中にはユーザに以下のような提案を展開し、

Ruby に関するビジネスの開拓に取り組んでいる企業もみられる。

○ライセンス料のかかるソフトウェアを導入しているユーザに、フル OSS でライセ

ンス料のかからないシステムを提案。

○リスクのある事業展開を検討している企業に、最初は小さいシステムを安価につく

り、成果を確認したうえでシステムを徐々に拡張する手法を提案。

○プロトタイプのソフトウェアをユーザにパソコンで持ち込み、商談の中で改良しな

がら顧客ニーズを実現した質の高いサービスを提供することができる。

IT ベンダ側とユーザ側のメリット

◇調達コストを削減できる ◇導入コスト、保守コストを低減できる

OSSであるためライセンス料が不要。コスト意識の高いユーザに提案しやすい。

OSSであるためライセンス料が不要。パソコン使用台数の多いユーザほど、コスト削減効果が顕著。

◇開発期間が短い ◇開発期間が短い

(a)記述量が尐ない、(b)Webアプリケーションフレーム

ワークでRuby on Railsの利用などから開発期間を短縮できる。

開発期間が短いため、短期間でのサービス開始が可能となる。

◇開発しながら修正や改良がしやすい ◇最適なシステムへの要求を盛り込みやすい

(a)コンパイルが不要である、(b)尐ない記述量(クラスの継承など)で機能を拡張できる、ことなどから修正や改良を短期間で行える。

機能の拡張性が高いため、仕様変更に柔軟に対応できる。

◇プログラマーにとって利用しやすい ◇最初は小さく、徐々に大きくできる

Rubyは、英語に近い文法であり直感的に理解しやすいことなどからプログラマーにとって利用しやすい。

機能の拡張性が高いため、最初はリスクを回避するため小さいシステムでスタートさせ、成果があることを確認した後にシステムを大きくできる。

◇様々な処理系での実装

MRI(Matz' Ruby Implementation) 、YARV、JRuby、

IronRubyなどで実装。

◇優位性のある機能が標準装備されている

(a)日本語の処理に適している(JISコードに対応)、(b)

テキストデータ(文字データ)の処理に適している、など優位性のある機能が標準装備されている。

◇習得しやすい

JavaやPHPを習得しているエンジニアにとって、Ruby

は短期間で習得できる。

◇堅牢なシステムが構築可能 ◇堅牢なシステムが構築可能

Ruby on Railsが提供するセキュアな機能と、開発規約を用いてセキュアな実装を徹底することで、堅牢なシステムを構築できる

Ruby on Railsが提供するセキュアな機能と、開発規約を用いてセキュアな実装を徹底することで、堅牢なシステムを構築できる

◇信頼性が確保されている ◇信頼性が確保されている

国内及び国際規格化を目的とするRubyの標準化の動き。 国内及び国際規格化を目的とするRubyの標準化の動き。

◇先進性をアピールできる日本発の言語として注目を集めているRubyを提案することで、先進性をアピールできる。

ユーザ側のメリット

コスト

開発のスピード・生産性

開発の自由度

ITベンダ側のメリット

人材育成

信頼性

その他

標準機能

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本事業で実施した中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、Ruby を利用した

ソリューション展開のターゲット業種について質問した。

その結果、「現在」に関しては 90 社から回答があった。このうち「特にターゲットを設

定していない」との回答が 60 社(構成比 66.7%)、「官公庁」との回答が 18 社(同 20.0%)

を占めた。

また、「平成 23 年度」の見通しに関しては 88 社から回答があり、これについても「特

にターゲットを設定していない」との回答が 57 社(同 64.8%)、「官公庁」との回答が 22

社(同 25.0%)を占めている。

このように、ターゲット業種については、「官公庁」を除いては特に絞り込むことなく全

方位的な対応をしている企業が多く、当面は「官公庁」による発注が Ruby の市場を牽引

する状況が続くとの見方が多い。

Ruby を利用したソリューション展開のターゲット業種(複数回答)

6.8

0.0

0.0

1.1

3.4

1.1

2.3

2.3

2.3

3.4

6.8

5.7

25.0

64.8

10.0

0.0

0.0

1.1

1.1

1.1

2.2

2.2

2.2

3.3

5.6

6.7

20.0

66.7

0 10 20 30 40 50 60 70

その他

化学・医薬品

電力・ガス・石油

鉄鋼・非鉄金属

電気機器・精密機械

金融・保険

建設

輸送機器・機械

通信

食品

学校

流通・小売

官公庁

特にターゲットを設定していない

(%)

(回答者数) 現在    90社 平成23年度 88社

現在 平成23年度

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同じく中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、Ruby を利用した IT ソリュ

ーションのターゲットについて質問した。

その結果、「現在」に関しては 52 社から回答があり、このうち「Web サイト(情報発信)」

との回答が 30 社(構成比 57.7%)を占めた。次いで、「購買・販売管理」と「グループウ

ェア」がともに 10 社(同 19.2%)となっている。

「平成 23 年度」に関しては 57 社から回答があり、ここでも「Web サイト(情報発信)」

が 36 社(同 63.2%)と過半を占めている。このことから、今後も、Ruby を利用した IT

ソリューションとしては、Web サイトが中心的な位置を占めるとともに、さらに拡大する

可能性も考えられる。

なお、平成 23 年度の構成比が現在より高まっている項目としては、「顧客情報管理・分

析」と「経営情報管理・分析」などがみられる。このように、Ruby を利用した IT ソリュ

ーションとしては、各種情報の管理や分析についても期待が高まっていると思われる。

Ruby を利用した IT ソリューションのターゲット(複数回答)

0.0

3.5

5.3

7.0

12.3

7.0

7.0

8.8

10.5

7.0

12.3

12.3

17.5

21.1

17.5

21.1

63.2

1.9

3.8

7.7

7.7

7.7

9.6

9.6

9.6

9.6

11.5

11.5

11.5

15.4

15.4

19.2

19.2

57.7

0 10 20 30 40 50 60 70

財務会計

管理会計

セキュリティ運用

引合・営業

経営情報管理・分析

生産管理

ネットワーク運用

アプリケーション保守

人事・給与・勤怠管理

物流

ネットワーク構築

在庫管理

システム運用

顧客情報管理・分析

グループウェア

購買・販売管理

Webサイト(情報発信)

(%)

(回答者数) 現在    52社 平成23年度 57社

現在 平成23年度

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中国地域の自治体向けアンケート調査において、「現在」Ruby を僅かでも利用している

システムについて尋ねたところ 7 団体から回答があり、「住民・企業サービス(ホームペ

ージ)」(4 団体、構成比 57.1%)など、インターネットを利用した住民・企業サービスに

関する項目が上位にみられる。

「今後」Ruby を導入する余地があると思われるシステムについて尋ねたところ 11 団体

から回答があり、「職員サービス(庶務事務)」と「職員サービス(グループウェア)」がと

もに 8 団体(同 72.7%)を占めており、職員に関連する分野での利用拡大の可能性がある。

0.0

72.7

72.7

63.6

27.3

18.2

27.3

18.2

18.2

27.3

27.3

36.4

18.2

36.4

36.4

27.3

45.5

27.3

27.3

36.4

36.4

36.4

36.4

63.6

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

14.3

14.3

14.3

14.3

14.3

28.6

28.6

57.1

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

その他

職員サービス(グループウェア)

職員サービス(庶務事務)

職員サービス(文書管理)

個別業務(商工・農林水産)

個別業務(土木・建築・上下水道)

個別業務(医療・福祉・介護)

基幹業務(住民・戸籍)

基幹業務(税務・保険・年金)

基幹業務(財務会計)

基幹業務(人事給与)

基幹業務(統計)

基幹業務(その他)

全庁基盤関連(ユーザー認証)

全庁基盤関連(稼動管理)

全庁基盤関連(その他全庁基盤関連)

住民・企業サービス(施設予約・図書館)

住民・企業サービス(電子調達)

職員サービス(統合型GIS)

職員サービス(その他職員サービス)

個別業務(その他個別業務)

住民・企業サービス(電子申請・電子申告)

住民・企業サービス(その他住民・企業サービス)

住民・企業サービス(ホームページ)

今後 現在

(回答者数) 現在  7団体

 今後 11団体

(%)

現在 今後

Ruby について、現在利用しているシステム、今後利用する可能性のあるシステム(複数回答)

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2.可能性実現における課題

本事業のアンケート調査とヒアリング調査および文献資料により、Ruby のデメリット

を IT ベンダ側とユーザ側に分けてまとめると、下表の通りである。

頻繁に聞かれたデメリットとしては、保守に関して、「OSS であるため、問題が発生し

た場合の責任を誰が取るのかという質問を、ユーザから迫られることがある」というもの

であった。また、開発に関しては、ライブラリやサンプルコードが尐ないこととの指摘が

複数あった。

一部の企業からは、「エンジニアが尐ないため、Ruby の業務を突然受注した時、人手が

足りないことがある」との指摘もあった。

IT ベンダ側とユーザ側のデメリット

◇ライブラリの整備が不十分

ライブラリの更なる拡充が必要である。また、メンテナンスされていないライブラリも多く、使用している環境によっては動かない場合もある。

◇コーディングなどの情報量が尐ない

JavaやPHPなどに比べてコーディングに関する情報

(Web上で公開されているサンプルプログラムなど)が尐ない。

◇手引書が尐ない

JavaやPHPなどに比べて開発手引書が尐ない。特に、初心者に標準的な記述法を分かりやすく解説する手引書が尐ない。

◇Windowsとの親和性が低い

Windowsとの親和性が低い。特にIE6など、画像処理関連での親和性が低い。

◇デプロイして運用する際のインフラが未整備

Javaに比べると、デプロイして運用する際のインフラが整備されていない。

◇実効速度が遅い ◇実効速度が遅い

インタープリタ言語であるため、実効速度が遅い。特に大量のアクセスが集中した時に、実効速度が遅くなることがある。

インタープリタ言語であるため、実効速度が遅い。特に大量のアクセスが集中した時に、実効速度が遅くなる。

◇共同作業やメンテナンスを行いにくい ◇サポートに対する不安がある

記述法が標準化されておらず、プログラマーによってコーディングに個人差があるため、共同作業やメンテナンスを行いにくい。

OSSであるため、問題が発生した時のサポートに不安がある。

◇バージョンアップの対応が不十分 ◇稼動環境のバージョンアップが難しい

1.8系から1.9系へのバージョンアップが大幅なものであったため、既納ユーザーへの対応が必要となる場合があるまた、今後のバージョンアップの計画に関する情報も不足している。

Rubyの稼動環境のバージョンアップにより、既存システムが稼動しなくなるケースがあるなど、リスクが存在する。

◇管理する言語の数が増える ◇管理する言語の数が増える

開発言語が増えることで、システム開発の管理の負担が増える。また、複数の開発言語に対応した技術者を準備する必要がある。

Rubyでつくられたシステムが加わると、ユーザ側が管理する言語が増えるため、担当者の負担が大きくなる。

◇ユーザの間でRubyの知名度が低い ◇導入事例の情報発信が不足している

ユーザの間でRubyの知名度が低いため、ユーザからの信頼を得にくい。

Web系・業務基幹系とも、導入事例(特に有名で信頼感のある大手ユーザの事例)の情報発信が不足している。

◇基幹業務系での開発実績が尐ない ◇基幹業務系での開発実績が尐ない

基幹業務系での開発実績が尐なく、ITベンダにとっても未知の領域が多いため、計画的な業務遂行に不安が残る。

基幹業務系での開発実績が尐ないため、実効性能等に不安が残る。

◇エンジニアが不足している ◇ユーザ側の人材が不足している

Rubyに精通したエンジニアが不足しているため、開発に必要な人数を確保できなかったり、サポートが手薄になるケースがみられる。

ユーザ側に、仕様書を作成したり、ITベンダの提案を理解したり、検収を行ったりできる人材がいない。

ユーザ側のデメリット

開発

実績情報

人材

実効速度

保守

ITベンダ側のデメリット

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Ⅳ.Ruby 拠点の在り方について

1.検討委員会の開催

中国地域における Ruby 拠点の検討のために、検討委員会を設置し、拠点として必要と

される機能、体制等についての検討を行った。

検討委員会は、中国地域内外の IT ベンダ企業、産業支援機関等 Ruby に関して知見を有

するメンバーで構成し、計 3 回実施した。

(1)検討委員会

第 1 回検討委員会 平成 22 年 10 月 7 日 委員 5 名、オブザーバ 5 名

(事務局を除く。以下同様)

第 2 回検討委員会 平成 22 年 12 月 9 日 委員 5 名、オブザーバ 9 名

第 3 回検討委員会 平成 22 年 12 月 10 日 委員 5 名、オブザーバ 8 名

中国地域 Ruby 拠点形成可能性検討委員会名簿

氏 名 所属・職名等

委 員 長 井上 浩 株式会社ネットワーク応用通信研究所 代表取締役社長

委 員

澤田 盛繁 財団法人しまね産業振興財団 参事

正村 勉 株式会社日立ソリューションズ

技術開発本部 本部長 Ruby センタ センタ長

田代 秀一 独立行政法人情報処理推進機構

オープンソフトウェア・センター センター長

吉岡 宏 株式会社テクノプロジェクト 代表取締役社長

オブザーバ

前田 修吾 合同会社 Ruby アソシエーション 副理事長

鶴原 隆一 株式会社テクノプロジェクト Ruby ビジネス推進室

コンサルタント

松本 新吾 島根県 商工労働部 産業振興課 情報産業振興室 室長

杉原 健司 島根県 商工労働部 産業振興課 主任

田中 哲也 松江市 産業経済部 次長

角田 泰男 松江市 産業経済部 企業支援課 係長

川上 貴史 松江市 産業経済部 企業支援課 副主任

野田 哲夫 国立大学法人島根大学 総合情報処理センター長

安田 征司 財団法人しまね産業振興財団 IT 産業支援室 主任

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2.拠点形成の意義について

(1)地域 IT ベンダ企業が目指す方向性

これまで述べてきたように、近年、Web アプリケーションだけなく企業等の基幹業務シ

ステムでの利用が広がり、特に「経済のサービス化」が進む中で、顧客ニーズ指向型のサ

ービスを実現する言語として評価が高まっている。また、組込み分野での利用検討も始ま

り、行政等での率先利用、支援も行われる中でビジネスでの一層の利用拡大が見込まれて

いる。更に、国際標準化に向けた JIS 原案が策定されるなど標準化に向けた動きがある。

Ruby は、開発生産性が高く、顧客の要望に合わせて柔軟にプログラムを変更できると

いう特徴を持ち、Web アプリケーションの開発に向いているため、クラウドでのサービス

提供に適していると考えられる。また、その特徴により、ユーザに対して短期間でプロト

タイプを提示し、ユーザのニーズに対応した質の高いサービスの提供が可能となる。質の

高い独自のソリューションを短期間で提供することが、地域・中小 IT ベンダ多重下請け

構造から脱却するための一つの方法であると考えられる。Ruby はそのための大きな武器

となる可能性がある。

つまり、Ruby の利用、その他 OSS の普及、クラウドの広がりによって IT サービスが

低コストで提供できるようになり、実現されるサービスの質の差が IT ベンダ企業の優务

を決める重要な要因となっている。こうした中で、地域の IT ベンダ企業は Ruby の特徴を

活かすことで顧客のニーズを的確に捉え、また、ニーズの変化に柔軟に対応できるサービ

スを提供し続けることで、新たな時代におけるビジネス機会の創出が実現できる。

(2)Ruby をビジネス利用するための課題

アンケート結果、「Ⅲ.Ruby の可能性と課題について」、及び平成 21 年度に実施した「ち

ゅうごく地域 Ruby ビジネス活用研究会」などから Ruby をビジネスで利用する際の課題

として、「サポート体制の不安」、「利用に際する情報の不足」、「標準化(仕様)の維持体制

の安定性」、「言語の開発体制の安定性」、「Ruby エンジニアの不足」、「高度な人材育成体

制の不安」、「認知度の低さ」が挙げられる。

これらの現状及び課題を踏まえて、Ruby の開発者である「まつもとゆきひろ」氏が在

住し、Ruby の開発実績を有する企業が集積し、Ruby のビジネスとコミュニティの橋渡し

をする合同会社 Ruby アソシエーションがある島根県松江市を中心とした中国地域を核と

して、Ruby の情報・人材・技術が集まる拠点を形成することで、Ruby の普及と発展が加

速することが期待できる。Ruby が普及・発展することにより、IT 市場における Ruby の

市場が拡大し、もって Ruby 拠点を形成する企業及び拠点への地理的アドバンテージを有

する地域 IT 企業のビジネス機会の増大、Ruby を利用するユーザ企業の競争力強化を図る

ことが望ましい。

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3.Ruby 拠点の体制について

Ruby 拠点の実現には、中国地方を核として持続可能な「Ruby Eco System」を構築し、

Ruby の普及と発展のために島根県松江市を拠点に活動する Ruby アソシエーションの基

盤を強化することをもって、Ruby 関連のプロジェクトやコミュニティ、ビジネスの関係

を強化し、エンタープライズ領域における Ruby の利用に関する諸課題の解決に取り組む

体制を整備することが望まれる。特に Ruby はオープンソースのプログラミング言語であ

るという性格上、Ruby コミュニティとの関係に配慮した体制を構築していくことが必要

となることからも、Ruby アソシエーションを中心とした拠点形成が相応しい。

「Ruby Eco System」概念図(出典:Ruby アソシエーション HP)

こうした拠点を構築し、持続可能な一定の収益規模を実現するためには、Ruby アソ

シエーションと、その活動に賛同する企業の協調・協働関係が極めて重要になる。具体

的には Ruby アソシエーションが直接実施する事業と、賛同する企業が実施する事業の

機能を分化すべきである。

この場合、Ruby アソシエーションが直接実施する事業は、受益者が一部の企業等に

限定されるのではなく、不特定多数の多くの企業、Ruby 利用者に向けて、言わば世界

に向けて実施することが望まれる。

また、賛同する企業が事業実施することで得る収益の一部が Ruby アソシエーション

を通じて、開発コミュニティや、自社を含めた Ruby をビジネス利用する企業に還元さ

れることで、更なる Ruby の発展とビジネス市場の成長を果たすことが期待される。

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Ruby アソシエーション事業と認定事業者事業

(1)Ruby アソシエーションの基盤強化

現状 Ruby アソシエーションは、LLC(Limited Liability Company、合同会社)であ

り、コミュニティに対する影響力、認知度は高いが、運営体制などが脆弱という課題があ

るため、前述の Ruby アソシエーションの理念に基づきより公益性の高い法人にすること

が望ましい。Ruby アソシエーションが Ruby のビジネス利用における課題を解消する事

業を行うことで、IT 市場への好影響を与えるとともに、幅広い Ruby 普及の活動をするこ

とができる。

(2)必要とされる機能

①Ruby アソシエーションの取り組み

(a) 情報発信、交流の場の創出

Ruby に関する理解を拡げるための情報を収集、編集し、提供する。また、Ruby

の技術コミュニティ、アプリケーション開発者、Ruby 利用企業などが交流する場

(例:RubyWorld Conference)を創出する。

(b) Ruby 開発支援

開発コミュニティが安心して Ruby の開発に従事できる環境を提供し、活動を支援

する。

(c) Ruby のビジネス利用支援

Ruby の標準仕様の維持と、域内企業と協力し、Ruby の開発環境、サポートサービ

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ス等を提供することで、Ruby がよりビジネス利用時に魅力的な言語となるよう環境

を整備する。

②その他の取り組み

(a) R&D 機能

(b) 高度人材の養成

Ruby 拠点概念図

その他の取り組みの「(a) R&D 機能」及び「(b) 高度人材の養成」については、実施主

体、実施内容など今後検討を要する。

(3)具体的な取り組み

より公益性の高い法人となった Ruby アソシエーションは、現在の合同会社 Ruby アソ

シエーションの事業(Ruby 技術資格認定制度等)を継承するとともに、以下の事業に取

り組む。

具体的な事業としては、大きく以下の 3 事業を実施する。

①Ruby アソシエーション協賛制度

多くの Ruby を利用する IT ベンダ、ユーザ企業及び個人が協賛金によって Ruby アソ

シエーションを支える仕組みを目指す。協賛金は多くの企業、ユーザが賛同しやすいよ

うな協賛金な設定を検討し、協賛会員に対して、「限定/優先イベントの招待」、「限定情

報の提供」などの特典を設ける。

②Ruby 事業認定制度

Ruby に関するサービスを実施する事業者を対象とした認定制度を設ける。Ruby アソ

シエーションが事業者を認定することで、市場に信用を付与し Ruby のビジネス利用の

促進を図る。認定に際しては条件を設け、Ruby アソシエーションが審査し、認定企業

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を対外的に公表する。

○想定される対象事業

・システムインテグレーション(SI)事業 注)現在、実施中

・サポート事業

・教育事業

・グッズ販売事業

・クラウドサービス(PaaS)事業 など

③Ruby アソシエーションの直営事業

Ruby の普及と発展のために、情報発信、開発支援などを Ruby アソシエーションが

無償若しくは有償で直接実施する事業。

○想定される事業

・Ruby 技術者認定事業 注)現在、実施中

・Ruby 開発支援事業

・Ruby 標準化維持事業

・情報発信事業(出版事業を含む)

・イベント事業

・サポート事業(直営分)

この中で Ruby アソシエーションの収益の柱となり得るのは、情報発信事業とサポー

ト事業である。

情報発信事業は、無償提供と有償提供の情報に分かれる。このうち有償提供の情報は、

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最新の技術動向、標準化に関する解説書などビジネス利用価値が高い情報を中心に電子

出版などで提供していくことが考えられる。この場合、既存の電子出版企業と協働し、

Ruby アソシエーションはコンテンツの充実に注力すべきである。

サポート事業は、現在のビジネス市場では大手 IT ベンダ企業等が Ruby 及びその周辺

技術のサポート事業を実施しているが、こうした企業からも自社で解決できない問題が

発生した場合に、まつもと氏を始め、より高い技術力を有するエンジニアのサポートを

得たいとの声がある。こうした要望に応えて Ruby アソシエーションが IT ベンダ企業向

けのサポート事業を実施することを検討することが望ましい。その実施方法としては、

特に Ruby アソシエーションの活動に賛同する企業が自社のエンジニアを Ruby アソシ

エーションの活動に直接参加させ(例えば出向等の形態を取る)、サポート事業に従事さ

せることが考えられる。この場合、賛同する企業は、自社のエンジニアがまつもとゆき

ひろ氏、前田修吾氏といった Ruby アソシエーションの優れた技術者から直接に、また、

実践に沿って技術習得を果たせるとともに、Ruby に関わる様々な組織、人とのネット

ワークを構築できる、といったメリットがある。

4.実施スケジュール

平成 24 年度の本格実施を目指して、平成 23 年度中に協賛制度、Ruby 事業認定制度

等の詳細設計をすると共に、体制強化に向けた検討を行うことが望まれる。

5.Ruby 拠点形成に必要な支援

Ruby アソシエーションの基盤を強化し、Ruby 拠点を形成するためには、IT ベンダ・

IT ユーザの産業界、大学、産業支援機関、コミュニティ及び行政機関が密接に協力して

行く必要がある。特に行政機関においては、必要とされる事務所等のハード整備及び情

報発信のためのソフト整備等の諸機能整備に係る財政面の支援と共に必要となる諸手続

に関する人的支援が期待される。

6.地域 IT ベンダ企業、ユーザ企業のメリット

以上のように Ruby 拠点をこの地で形成することで、中国地域の IT ベンダ企業、ユ

ーザ企業には次のメリットが考えられる。

(1)双方のメリット

・協賛企業制度によって Ruby アソシエーションを支えることで、市場からの評

価を得られる。

・地理的アドバンテージを活かし、Ruby アソシエーションが開催する当地域限

定セミナーに数多く参加することでビジネス関連情報をいち早く捉えられる。

(2)IT ベンダ企業のメリット

・Ruby アソシエーションの活動に賛同し、積極的に協働することで自社エンジ

ニアの技術力を向上させ、自社の競争力強化へと繋げることができる。

・Ruby アソシエーションに関する取り組みを通じて、既存の連携関係がより強

固に、また、新たな連携関係が築くことができる。

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(3)ユーザ企業のメリット

・地域の IT ベンダ企業が提供する質の高いサービスを利用することで、自社の

経営力、競争力を向上させることができる。

7.まとめ

Ruby は、開発生産性が高く、顧客の要望に合わせて柔軟にプログラムを変更できる

という特徴から、クラウドでのサービス提供に適しており、また、従来の受託開発にお

いてもより質の高いサービスの提供も可能であり、地域 IT ベンダ企業のビジネス機会

の創出を実現する可能性を持っている。Ruby は現在普及期に差し掛かっており、国内

外の大手企業も注目しており、すでにビジネスに活用され始めている。また、標準化の

動きも進んでおり近い将来国際規格として標準化される見込みである。このような状況

の中で、地域 IT ベンダ企業が今後 IT ビジネスにおいて優位性を確保するためには、で

きるだけ早期に Ruby アソシエーションの基盤を強化し、その活動に賛同する企業の協

調・協働関係の上で持続可能な Ruby 拠点を整備する必要がある。

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参考資料(アンケート調査、ヒアリング調査の詳細について)

1.IT ベンダに対するアンケート調査結果

【実施概要】

時 期:平成 22 年 11 月上旬

対 象:中国地域の IT ベンダ 668 社

方 法:郵送法

有効回答:137 社(有効回答率 20.6%)

Ruby についての認知度を尋ねたところ 137 社から回答があった。

このうち「Ruby のプログラムの記述方法をある程度理解している」との回答は 36 社(構

成比 26.3%)、「Ruby のプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解してい

る」との回答は 39 社(同 28.5%)であり、これらを合計すると Ruby の概要を知ってい

る企業の割合は 54.8%と過半を占めている。

一方、「Ruby という名称は知っているが、内容については十分理解していない」との回

答は 54 社(同 39.4%)、「Ruby というプログラミング言語を知らなかった」という回答は

8 社(同 5.8%)であった。

県別に集計すると、島根県においては、「Ruby のプログラムの記述方法をある程度理解

している」との回答が 10 社(同 62.5%)、「Ruby のプログラムの記述方法は知らないが、

その特徴などを理解している」との回答が 5 社(同 31.3%)を占めており、これらを合計

すると 8 割超の企業が Ruby の特徴などを知っている。

このように、島根県は、中国地域の他の県比べて Ruby について知っている企業の割合

が高くなっている。

Ruby についての認知度

(単位:社、%)

広島県 岡山県 山口県 島根県 鳥取県 合計

14 8 3 10 1 36(21.9) (26.7) (16.7) (62.5) (11.1) (26.3)

16 6 8 5 4 39(25.0) (20.0) (44.4) (31.3) (44.4) (28.5)

32 13 4 1 4 54(50.0) (43.3) (22.2) (6.3) (44.4) (39.4)

2 3 3 0 0 8

(3.1) (10.0) (16.7) (0.0) (0.0) (5.8)

64 30 18 16 9 137

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)合計

Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない

Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している

Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している

Rubyというプログラミング言語を知らなかった

Ruby についての認知度(県別)

(単位:社、%)

回答数 構成比

Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している 36 26.3

Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している 39 28.5

Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない 54 39.4

Rubyというプログラミング言語を知らなかった 8 5.8

合計 137 100.0

54.8%

概要を

理解している

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Ruby の特徴について知っている項目を尋ねたところ 129 社から回答があり、このうち

「日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である」(113 社、構成比

87.6%)と「オープンソース(OSS)である」(110 社、同 85.3%)の回答が、ともに 8

割超に達している。

「オブジェクト指向プログラミングの言語である」(80 社、同 62.0%)、「Ruby on Rails

の登場で Web アプリケーションソフト開発でも広く利用されている」(78 社、同 60.5%)

など技術的な特徴についての認知度は 5~6 割程度となっている。

一方、「楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている」の

回答は 50 社(同 38.8%)にとどまっており、利用実績に関する情報が不足しているもの

と思われる。

県別に集計すると、ここでも島根県内企業における認知度が高い傾向がみられた。

特に、「Ruby on Rails の登場で Web アプリケーションソフト開発でも広く利用されて

いる」(15 社、同 93.8%)、「プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い」(14

社、同 87.5%)、「楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されて

いる」(14 社、同 87.5%)の回答割合が 8 割を超えており、他県の企業の回答割合が 3~6

割程度にとどまっていることと比べると、Ruby についての理解がかなり進んでいる様子

が伺われる。

Ruby の特徴について知っている項目(複数回答)

Ruby の特徴について知っている項目(複数回答、県別)

(単位:社、%)

回答数 構成比

日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である 113 87.6

オープンソース(OSS)である 110 85.3

オブジェクト指向プログラミングの言語である 80 62.0

Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている 78 60.5

プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い 76 58.9

UNIX、DOS、Windows、BeOSなど幅広いOSの上で動く 67 51.9

楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている 50 38.8

使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている 28 21.7

合計 129 100.0

(単位:社、%)

広島県 岡山県 島根県 山口県 鳥取県 合計

53 22 15 14 9 113

(85.5) (84.6) (93.8) (87.5) (100.0) (87.6)

54 21 15 13 7 110

(87.1) (80.8) (93.8) (81.3) (77.8) (85.3)

35 17 13 9 6 80

(56.5) (65.4) (81.3) (56.3) (66.7) (62.0)

33 14 15 10 6 78

(53.2) (53.8) (93.8) (62.5) (66.7) (60.5)

34 15 14 7 6 76

(54.8) (57.7) (87.5) (43.8) (66.7) (58.9)

32 12 11 8 4 67

(51.6) (46.2) (68.8) (50.0) (44.4) (51.9)

18 9 14 5 4 50

(29.0) (34.6) (87.5) (31.3) (44.4) (38.8)

10 4 9 3 2 28

(16.1) (15.4) (56.3) (18.8) (22.2) (21.7)

62 26 16 16 9 129

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)

日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である

オープンソース(OSS)である

オブジェクト指向プログラミングの言語である

Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている

合計

プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い

UNIX、DOS、Windows、BeOSなど幅広いOSの上で動く

楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている

使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている

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- 37 -

最も売上高の大きい業務を尋ねたところ 132 社から回答があり、このうち「ソフトウェ

ア業」が 100 社(構成比 75.8%)と最も多く、次いで「情報処理・提供サービス業」(24

社、同 18.2%)、「インターネット付随サービス業」(8 社、同 6.1%)の順であった。

平成 21 年度の IT 関連売上高と Ruby に関する売上高を尋ねたところ 98 社から回答が

あった。

IT 関連売上高の「合計」は、41,606 百万円(1 社当たり 425 百万円)であった。この

うち「開発業務」が 18,528 百万円(構成比 44.5%)、「運用・保守業務」が 10,743 百万円

(同 25.8%)、「その他 IT 関連」が 12,335 百万円(同 29.6%)を占めた。

また、Ruby に関する売上高(注)の「合計」は 490 百万円(1 社当たり 5 百万円)であ

った。このうち「開発業務」は 413 百万円、「運用・保守業務」は 26 百万円、「その他 IT 関

連」は 51 百万円であった。

(注)僅かでも Ruby のソースコードを含むものの売上高。

最も売上高の大きい業務

平成 21年度の IT 関連売上高と Ruby に関する売上高

(単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

18,528 413

(44.5) (1.0)

10,743 26

(25.8) (0.1)

12,335 51

(29.6) (0.1)

41,606 490

(100.0) (1.2)(注)回答者数98社。

開発業務

運用・保守業務

その他IT関連

合計

ソフトウェア業(100社、75.8%)

情報処理・提供サービス業(24社、18.2%)

インターネット付随サービス業(8社、6.1%)

回答者数132社

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- 38 -

なお、前ページの売上高の「合計」

だけ回答し、「開発業務」などの内

訳は回答しなかった企業を含めて

集計すると、Ruby に関する売上高

は 493 百万円で、IT 関連売上高に

占める割合は 0.9%であった。

ただし、Ruby に関する売上高

493 百万円のうち島根県内企業が

490 百万円を占めている。

「Ruby に関する売上高」の総工数を 100%とした場合の Ruby そのものに関する工数

の割合を尋ねたところ 76 社から回答があり、このうち「0~20%未満」との回答が 73 社

(構成比 96.1%)を占めた。次いで、「80~100%」との回答が 2 社(同 2.6%)、「20~40%

未満」との回答が 1 社(同 1.3%)の順であった。

ちなみに、「0~20%未満」の平均を 10%、「80~100%」の平均を 90%、「20~40%」

の平均を 30%とみなし、76 社の総平均を計算すると 12.4%となる。

平成 21 年度における IT 関連事業の案件数を尋ねたところ 87 社から回答があり、全案

件数は 7,804 件、このうち Ruby に関する案件数は 134 件であった。

Ruby に関する案件数の内訳(下表)をみると、77 社が「0 件」にとどまる一方、31 件

以上を受注した企業が 2 社みられた。

IT 関連及び Ruby に関する売上高

「Ruby に関する売上高」の総工数を 100%とした場合の Ruby そのものに関する工数の割合

平成 21年度における Ruby に関する案件数

(単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

55,644 493

(100.0) (0.9)8,029 490

(100.0) (6.1)47,615 3(100.0) (0.006)

(注)回答者数105社。島根県は13社。

島根県

その他

合計

(単位:社、%)回答数 構成比

0~20%未満 73 96.1

80~100% 2 2.6

20~40%未満 1 1.3

40~60%未満 0 0.0

60~80%未満 0 0.0

合計 76 100.0

(単位:社、%)

回答数 構成比

0 77 88.51 2 2.32 2 2.33 1 1.14 0 0.05 0 0.0

6~10 2 2.3

11~20 1 1.1

21~30 0 0.031~40 1 1.1

41~50 1 1.1

87 100.0

案件数

合計

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Ruby の利用度合いを尋ねたところ 137 社から回答があった。

このうち、「顧客向けシステムでの Ruby 利用実績が多く、十分な知識と経験がある」(5

社、構成比 3.6%)、「顧客向けシステムでの Ruby の利用実績は尐ないが、実績はある」(12

社、同 8.8%)、「Ruby の利用は自社利用のみである」(12 社、同 8.8%)を合計すると、

Ruby を利用している企業の割合は 21.2%となっている。

さらに、「Ruby の利用を検討している段階である」(22 社、同 16.1%)と「Ruby に興

味はあるが、特に何もしていない」(61 社、同 44.5%)も加えると、Ruby に興味を示し

ている企業の割合は 81.8%に達する。

県別に集計すると、島根県において「顧客向けシステムでの Ruby 利用実績が多く、十

分な知識と経験がある」と「顧客向けシステムでの Ruby 利用実績は尐ないが、実績はあ

る」との回答がともに 5 社(構成比 31.3%)を占めており、他の 4 県に比べて高い回答割

合を示している。

Ruby の利用度合い

(単位:社、%)

広島県 岡山県 山口県 島根県 鳥取県 合計

0 0 0 5 0 5(0.0) (0.0) (0.0) (31.3) (0.0) (3.6)

3 3 0 5 1 12(4.7) (10.0) (0.0) (31.3) (11.1) (8.8)

8 3 8 3 0 22(12.5) (10.0) (44.4) (18.8) (0.0) (16.1)

7 2 1 1 1 12(10.9) (6.7) (5.6) (6.3) (11.1) (8.8)

34 14 7 1 5 61(53.1) (46.7) (38.9) (6.3) (55.6) (44.5)

12 8 2 1 2 25

(18.8) (26.7) (11.1) (6.3) (22.2) (18.2)

64 30 18 16 9 137

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)

Rubyの利用は自社利用のみである

顧客向けシステムでのRuby利用実績が多く、十分な知識と経験がある

合計

Rubyの利用を検討している段階である

Rubyに興味はない

Rubyに興味はあるが、特に何もしていない

顧客向けシステムでのRuby利用実績は尐ないが、実績はある

Ruby の利用度合い(県別)

(単位:社、%)回答数 構成比

顧客向けシステムでのRubyの利用実績が多く、十分な知識と経験がある 5 3.6

顧客向けシステムでのRubyの利用実績は尐ないが、実績はある 12 8.8

Rubyの利用は自社利用のみである 12 8.8

Rubyの利用を検討している段階である 22 16.1

Rubyに興味はあるが、特に何もしていない 61 44.5

Rubyに興味はない 25 18.2

合計 137 100.0

21.2%

81.8%利用している

興味がある

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Rubyを顧客向け又は社内で利用している企業にその使用年数を尋ねたところ27社から

回答があり、この内訳は「1 年」との回答が 10 社(構成比 37.0%)、「2 年」との回答が 8

社(同 29.6%)、「3 年」との回答が 4 社(同 14.8%)などの順であった。このことから、

最近 3~4 年間で、Ruby の利用が急速に増加している様子が伺われる。

ちなみに、27 社の平均使用年数は 2.4 年であった。

顧客向け及び社内で Ruby の利用実績がある企業に対して Ruby に関するスタンスを尋

ねたところ 27 社から回答があり、「ユーザから要請を受けた場合に Ruby を使用している」

との回答が 16 社(構成比 59.3%)を占めており、受け身のスタンスをとっている企業が

過半を占めている様子が伺われる。

なお、「自社からユーザに Ruby を積極的に提案している」との回答は 11 社(同 40.7%)

であった。

Ruby の使用年数

Ruby に関するスタンス

(単位:社、%)使用年数 回答数 構成比

1年 10 37.02年 8 29.63年 4 14.84年 3 11.15年 1 3.76年 0 0.07年 0 0.08年 0 0.09年 1 3.7合計 27 100.0

自社からユーザーにRubyを積極的に提案している(11社、40.7%)

ユーザーから要請を受けた場合にRubyを使用している(16社、59.3%) 回答者数27社

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顧客向け及び社内で Ruby の利用実績がある企業に対して、Ruby を使うことをユーザ

から断られた経験があるか否かを尋ねたところ 25 社から回答があり、「断られたことはな

い」との回答が 19 社(構成比 76.0%)を占めた。

一方、「断られたことがある」との回答は 6 社(同 24.0%)であった。

前ページで紹介した「Ruby に関するスタンス」と上図の「Ruby の使用を断られた経験

があるか」をクロス集計すると、「自社からユーザに Ruby を積極的に提案している」企業

10 社のうち半数に当たる 5 社が「断られたことがある」と回答している。

なお、断られた理由については、以下の回答があった。これをみると、ユーザ側(人材

不足や既存システムとの親和性等)と IT ベンダ側(技術者不足等)の双方に課題がある

ことが理解できる。

Ruby を提案して断られた理由(自由記述回答)

○環境が対応していない

○サーバ構築に課題(コスト高)

○メンテナンスができないため

○既存システムで使用した言語の資産が多い

○納入先の担当者が Ruby の知識が無く、メンテナンスに不安を感じられた

○普及度が尐なく技術者が尐ない

Ruby の使用を断られた経験があるか

Ruby に対するスタンスと Ruby の使用を断られた経験の有無

断られらたことがある(6社、24.0%)

断られたことはない(19社、76.0%)

回答者数25社

(単位:社、%)断られた

ことがある断られた

ことはない合計

5 5 10

(50.0) (50.0) (100.0)

1 12 13

(7.7) (92.3) (100.0)

6 17 23

(26.1) (73.9) (100.0)

自社からユーザーにRubyを積極的に提案している

ユーザーから要請を受けた場合にRubyを使用している

合計

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Ruby に関する取組方針を尋ねたところ 135 社から回答があり、このうち「Ruby に対

する明確な取組方針はない」との回答が 79 社(構成比 58.5%)と過半を占めた。

一方、「サービスメニューの1つとして Ruby に取り組む方針である」との回答は 27 社

(同 20.0%)、「主たる事業として積極的に Ruby に取り組む方針である」との回答は 5 社

(同 3.7%)であり、これらを合計すると 23.7%の企業が Ruby に取り組む方針を明確に

打ち出している。

なお、「現在、Ruby に対する方針を検討中である」との回答は 21 社(同 15.6%)、「Ruby

に取り組まない方針である」との回答は 3 社(同 2.2%)であった。

県別に集計すると、島根県において「主たる事業として積極的に Ruby に取り組む方針

である」との回答が 4 社(構成比 25.0%)、「サービスメニューの1つとして Ruby に取り

組む方針である」との回答が 7 社(同 43.8%)を占めており、他の 4 県に比べて高い割合

を示している。

なお、他の 4 県においても「サービスメニューの1つとして Ruby に取り組む方針であ

る」と「現在、Ruby に対する方針を検討中である」との回答が 1~2 割みられることから、

このような企業が Ruby に関する事業に踏み出せるような施策展開が望まれる。

Ruby に関する取組方針

(単位:社、%)

広島県 岡山県 山口県 島根県 鳥取県 合計

1 0 0 4 0 5(1.6) (0.0) (0.0) (25.0) (0.0) (3.7)

11 4 3 7 2 27(17.5) (13.3) (17.6) (43.8) (22.2) (20.0)

9 5 4 2 1 21(14.3) (16.7) (23.5) (12.5) (11.1) (15.6)

41 21 9 3 5 79(65.1) (70.0) (52.9) (18.8) (55.6) (58.5)

1 0 1 0 1 3

(1.6) (0.0) (5.9) (0.0) (11.1) (2.2)

63 30 17 16 9 135

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)

主たる事業として積極的にRubyに取り組む方針である

Rubyに対する明確な取組方針はない

現在、Rubyに対する方針を検討中である

合計

Rubyに取り組まない方針である

サービスメニューの1つとしてRubyに取り組む方針である

Ruby に関する取組方針(県別)

(単位:社、%)

回答数 構成比

主たる事業として積極的にRubyに取り組む方針である 5 3.7

サービスメニューの1つとしてRubyに取り組む方針である 27 20.0

現在、Rubyに対する方針を検討中である 21 15.6

Rubyに対する明確な取組方針はない 79 58.5

Rubyに取り組まない方針である 3 2.2

合計 135 100.0

23.7%

Rubyに

取り組む

方針である

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IT 技術者数を尋ねたところ 123 社から回答があり、総人数は 3,413 人(1 社当たり 27.7

人)で、このうち Ruby 技術者(注)は 142 人(同 1.2 人)、Ruby 技術者認定資格保有者は

33 人(同 0.3 人)であった。

(注)業務として Ruby を一部にでも利用している IT 技術者。

Ruby 技術者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 93 社(構成比 75.6%)を占め

ており、約 4 分の 3 の企業では Ruby を扱える人材がいなかった。また、「1~5 人」(22

社、同 17.9%)と合わせると、Ruby を扱える人材が 5 人以下の企業が全体の 93.5%を占

めている。

また、Ruby 技術者認定資格保有者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 95.9%を

占めている。

Ruby 技術者の人数に関する充足感を尋ねたところ 122 社から回答があり、「必要ない」

との回答が 50 社(構成比 41.0%)、「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 40.2%)

を占めた。

また、Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感を尋ねたところ 116 社から回答があり、

「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 42.2%)、「必要ない」との回答が 46 社(同

39.7%)を占めた。

このように、現時点では、Ruby 技術者の人数や技術レベルについて、ニーズをあまり

感じていない企業が全体の約 8 割を占めている。

Ruby 技術者数 Ruby 技術者認定資格保有者

Ruby 技術者の人数に関する充足感 Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 93 75.61~5人 22 17.96~10人 6 4.911~15人 0 0.016~20人 1 0.821~30人 1 0.8

合計 123 100.0

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 118 95.91~5人 3 2.46~10人 1 0.811~15人 1 0.816~20人 0 0.021~30人 0 0.0

合計 123 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

必要ない 50 41.0どちらともいえない 49 40.2かなり不足している 7 5.7不足している 6 4.9十分足りている 5 4.1足りている 5 4.1合計 122 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

どちらともいえない 49 42.2必要ない 46 39.7不満である 8 6.9満足している 6 5.2かなり不満である 4 3.4十分満足している 3 2.6合計 116 100.0

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Ruby の優れた点について尋ねたところ 110 社から回答があり、このうち「オープンソ

ース(OSS)である」との回答が 69 社(構成比 62.7%)と過半を占めた。

次いで「開発スピードが高まる」(36 社、同 32.7%)、「低価格で顧客に提供できる」(33

社、同 30.0%)などの順となっており、コストとスピードに関する項目が続いている。

さらに、「Ruby に取り組むことで先進性をアピールできる」(24 社、同 21.8%)、「Ruby

に特化することで Ruby 関連案件を受注しやすくなる」(17 社、同 15.5%)、「Ruby の使

用により他社と差別化できる」(16 社、同 14.5%)など、自社の特徴づくりに関する項目

が続いている。

Ruby の優れた点(複数回答)

6

2

2

2

4

8

16

16

17

24

33

36

69

0 10 20 30 40 50 60 70 80

その他

下請割合が削減し、元請割合が増える

セキュリティ対策がしやすい

技術者の数が多い

顧客がソースコードを参照・修正できる

実用に耐えうる性能と信頼性がある

関連情報がインターネット上に豊富にある

Rubyの使用により他社と差別化できる

Rubyに特化することでRuby関連案件を受注しやすくなる

Rubyに取り組むことで先進性をアピールできる

低価格で顧客に提供できる

開発スピードが高まる

オープンソース(OSS)である

回答者数110社

(社)

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Ruby の問題点について尋ねたところ 112 社から回答があり、「Ruby に精通した人材が

社内にいない」との回答が 62 社(構成比 55.4%)と過半を占めている。

次いで、「Ruby が何時まで存続するか分からない」(44 社、同 39.3%)、「Ruby の認知

度が一般的に低い」(34 社、同 30.4%)といった、Ruby のプログラミング言語としての

将来性や利用状況に関する項目が続いている。さらに、「緊急時の技術的サポートを得にく

い」(31 社、同 27.7%)など、Ruby の利用を支援する仕組みに関する項目が続いている。

上記の問題点が全て解決されたと仮定

した場合、平成 23 年度における売上高に

占める Ruby の割合を何%程度まで高め

たいかについて尋ねたところ 76 社から

回答があり、平均は 9.8%となった。

その分布状況をみると、「0%」が 29 社

(構成比 38.2%)と最も多く、次いで「10

~20%未満」(20 社、同 26.3%)、「5~10%

未満」(9 社、同 11.8%)などの順であっ

た。

Ruby の問題点(複数回答)

問題点が解決された場合に Ruby の売上割合を何%程度まで高めたいか

13

1

2

3

5

5

6

6

9

9

12

16

29

31

34

44

62

0 10 20 30 40 50 60 70

その他

トータルでは顧客のIT投資額が高くなると思われている

自社製の既存商用パッケージと競合する

既存の商用パケージを利用しないため売上高が減る

顧客にRubyに対する不安が存在する

セキュリティに不安がある

バグの改修や顧客からの要請対応に手間がかかる

顧客既存システムとの接続がうまくいかない

顧客にRubyを管理できる人材がいない

アライアンス先を探しにくい

顧客が自らソースコードを書き換える恐れがある

アプリケーション系などのライセンスが分かりにくい

将来のバージョンアップの計画を把握しにくい

緊急時の技術的サポートを得にくい

Rubyの認知度が一般的に低い

Rubyが何時まで存続するか分からない

Rubyに精通した人材が社内にいない

回答者数112社

(社)

(単位:社、%)売上割合 回答数 構成比

0 29 38.21~5未満 4 5.35~10未満 9 11.810~20未満 20 26.320~30未満 8 10.530~40未満 1 1.340~50未満 0 0.050~60未満 3 3.960~70未満 0 0.070~80未満 1 1.380~100 1 1.3合計 76 100.0

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平成 23 年度の IT 関連売上高と Ruby に関する売上高を尋ねたところ 89 社から回答が

あった。

このうち IT 関連売上高の「合計」は 40,424 百万円(1 社当たり 454 百万円)で、この

うち「開発業務」が 16,892 百万円(同 190 百万円)、「運用・保守業務」が 10,347 百万円

(同 116 百万円)であった。また、Ruby に関する売上高の「合計」は 1,094 百万円(1

社当たり 12 百万円)であった。このうち「開発業務」は 703 百万円(同 8 百万円)、「運用・

保守業務」は 171 百万円(同 2 百万円)であった。

上表の「合計」だけ回答し、「開発業務」などの内訳は回答しなかった企業を含めて集計

すると、IT 関連売上高は 42,444 百万円、Ruby に関する売上高は 1,094 百万円であった。

Ruby に関する売上高 1,094 百万円のうち島根県内企業の売上高は 867 百万円と約 8 割に

達している。

平成 21 年度と平成 23 年度の Ruby に関する売上高を両方とも回答した企業は 90 社で

あった(「0 円」との回答も含む)。その合計額をみると、平成 21 年度の 438 百万円から、

平成 23 年度には約 2.5 倍の 1,094 百万円に増加する見通しである。

平成 23年度の IT 関連と Ruby 関連の売上高

) (単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

16,892 703

(41.8) (1.7)

10,347 171

(25.6) (0.4)

13,185 220

(32.6) (0.5)

40,424 1,094

(100.0) (2.7)(注)回答者数89社。

開発業務

運用・保守業務

その他IT関連

合計

(単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

42,444 1,094

(100.0) (2.6)7,624 867

(100.0) (11.4)34,820 227(100.0) (0.7)

(注)回答者数91社。島根県は11社。

島根県

その他

合計

平成 23年度の IT 関連と Ruby に関する売上高

(単位:百万円)

平成21年度 平成23年度

438 1,094

( - ) (2.5倍)

436 867

( - ) (2.0倍)

2 227

( - ) (113.5倍)

(注)回答者数90社。島根県は11社。

Rubyに関する売上高

島根県

その他

平成 21年度と平成 23 年度の Ruby に関する売上高

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- 47 -

Ruby を利用したソリューション展開のターゲット業種について尋ねたところ、「現在」

に関しては 90 社から回答があり、このうち「特にターゲットを設定していない」との回

答が 60 社(構成比 66.7%)、「官公庁」との回答が 18 社(同 20.0%)を占めた。また、「平

成 23 年度」の見通しに関しては 88 社から回答があり、これに関しても「特にターゲット

を設定していない」との回答が 57 社(同 64.8%)、「官公庁」との回答が 22 社(同 25.0%)

を占めている。

このように、ターゲット業種については、「官公庁」を除いては特に絞り込むことなく全

方位的な対応をしている企業が多い。

Ruby を利用したソリューション展開のターゲット業種

6.8

0.0

0.0

1.1

3.4

1.1

2.3

2.3

2.3

3.4

6.8

5.7

25.0

64.8

10.0

0.0

0.0

1.1

1.1

1.1

2.2

2.2

2.2

3.3

5.6

6.7

20.0

66.7

0 10 20 30 40 50 60 70

その他

化学・医薬品

電力・ガス・石油

鉄鋼・非鉄金属

電気機器・精密機械

金融・保険

建設

輸送機器・機械

通信

食品

学校

流通・小売

官公庁

特にターゲットを設定していない

(%)

(回答者数) 現在    90社 平成23年度 88社

現在 平成23年度

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- 48 -

Ruby を利用した IT ソリューションのターゲットについて尋ねたところ、「現在」に関

しては 52 社から回答があり、このうち「Web サイト(情報発信)」との回答が 30 社(構

成比 57.7%)を占めた。次いで、「購買・販売管理」と「グループウェア」がともに 10 社

(同 19.2%)となっている。

「平成 23 年度」に関しては 57 社から回答があり、ここでも「Web サイト(情報発信)」

が 36 社(同 63.2%)と過半を占めている。このことから、今後も、Ruby を利用した IT

ソリューションとしては、Web サイトが中心的な位置を占めるとともに、さらに拡大する

可能性も考えられる。

なお、平成 23 年度の構成比が現在より高まっている項目としては、「顧客情報管理・分

析」と「経営情報管理・分析」などがみられる。このように、Ruby を利用した IT ソリュ

ーションとしては、各種情報の管理や分析についても期待が高まっていると思われる。

Ruby を利用した IT ソリューションのターゲット

0.0

3.5

5.3

7.0

12.3

7.0

7.0

8.8

10.5

7.0

12.3

12.3

17.5

21.1

17.5

21.1

63.2

1.9

3.8

7.7

7.7

7.7

9.6

9.6

9.6

9.6

11.5

11.5

11.5

15.4

15.4

19.2

19.2

57.7

0 10 20 30 40 50 60 70

財務会計

管理会計

セキュリティ運用

引合・営業

経営情報管理・分析

生産管理

ネットワーク運用

アプリケーション保守

人事・給与・勤怠管理

物流

ネットワーク構築

在庫管理

システム運用

顧客情報管理・分析

グループウェア

購買・販売管理

Webサイト(情報発信)

(%)

(回答者数) 現在    52社 平成23年度 57社

現在 平成23年度

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以下の設問について、別添の回答用紙にご記入をお願いいたします。

1.Rubyについてどの程度ご存知でしょうか(1つだけ選択)。

① Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している。② Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している。③ Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない。④ Rubyというプログラミング言語を知らなかった。

2.Rubyの特徴についてご存知のものをお教えください(複数選択可)。

① オープンソース(OSS)である。② プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い。③ オブジェクト指向プログラミングの言語である。④ 多くのUNIX、DOS、Windows、Mac、BeOSなど幅広いOSの上で動く。⑤ Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている。⑥ 使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている。⑦ 日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である。⑧ 楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている。

3.貴社のIT関連事業の中で売上高が最も多い業務は、次のどの業種に該当しますか(1つだけ選択)。

① ソフトウェア業 ② 情報処理・提供サービス業 ③ インターネット付随サービス業

(注)僅かでもRubyで記述したソースコードを含むもの。

① 0~20%未満 ② 20~40%未満 ③ 40~60%未満 ④ 60~80%未満 ⑤ 80~100%

7.現在、貴社で主に利用されている開発言語をご記入下さい。

8.現在、貴社のRubyの利用度合いとして当てはまるものを選択して下さい(1つだけ選択)。

① 顧客向けシステムでのRuby利用実績が多く、十分な知識と経験がある② 顧客向けシステムでのRuby利用実績は尐ないが、実績はある③ Rubyの利用は自社利用のみである④ Rubyの利用を検討している段階である⑤ Rubyに興味はあるが、特に何もしていない⑥ Rubyに興味はない

9.問8で①~③をご回答された場合は、Rubyの使用年数をお教え下さい。

10.問8で①~③をご回答された場合は、Rubyに関する貴社のスタンスをお教え下さい(1つだけ選択)。

① 貴社からユーザにRubyを積極的に提案している。② ユーザから要請を受けた場合にRubyを使用している。

11.問8で①~③をご回答された方にお伺いします。Rubyを使用することをユーザに提案し、断られたことがありますか。また、断られたことがある場合は、その理由をお教え下さい。

① 断られたことがある② 断られたことはない

Rubyに関するアンケート調査(ITベンダ用)

4.平成21年度の業務別のIT関連売上高(IT事業以外は除く)を、回答用紙にご記入下さい。

  また、Rubyに関する売上高(注)があれば、その金額もお教え下さい。

5.問4でご回答いただいた「Rubyに関する売上高」について、総工数を100%とした場合、Ruby

  そのものに関する工数(Rubyによるプログラミングなど)のおおよその割合を、以下の選択肢の中から  お選び下さい。

6.平成21年度におけるIT関連事業の全案件数をお教え下さい。

  また、Rubyに関する案件があれば、その件数もお教え下さい。

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12.貴社のRubyに関する取組方針として当てはまるものを選択して下さい(1つだけ選択)。

① 主たる事業として積極的にRubyに取り組む方針である② サービスメニューの1つとしてRubyに取り組む方針である③ Rubyに取り組まない方針である④ 現在、Rubyに対する方針を検討中である⑤ Rubyに対する明確な取組方針はない(未検討)

(注)業務としてRubyを一部にでも利用しているIT技術者。

14.貴社のRuby技術者の「人数」に関する充足感として当てはまるものを選択して下さい(1つだけ選択)。

① 十分足りている ② 足りている ③ どちらともいえない④ 不足している ⑤ かなり不足している ⑥必要ない

① 十分満足している ② 満足している ③ どちらともいえない④ 不満である ⑤ かなり不満である ⑥必要ない

16.Rubyの優れた点として感じておられる項目をお選び下さい(複数選択可)。

① オープンソース(OSS)である② 低価格で顧客に提供できる③ 関連情報がインターネット上に豊富にある④ Rubyの使用により他社と差別化できる⑤ Rubyに特化することでRuby関連案件を受注しやすくなる⑥ 下請割合が削減し、元請割合が増える⑦ 開発スピードが速まる⑧ Rubyに取り組むことで先進性をアピールできる⑨ 実用に耐えうる性能と信頼性がある⑩ 顧客がソースコードを参照・修正できる⑪ セキュリティ対策がしやすい⑫ 技術者の数が多い⑬ その他(具体的な内容をご記入下さい)

17.Rubyの問題点として感じておられる項目をお選びください(複数選択可)。

① Rubyに精通した人材が社内にいない② 自社製の既存商用パッケージと競合する③ 既存の商用パッケージを利用しないため売上高が減る④ 緊急時の技術的サポートを得にくい⑤ バグの改修や顧客からの要請対応に手間がかかる⑥ Rubyが何時まで存続するか分からない⑦ 将来のバージョンアップの計画を把握しにくい⑧ トータルでは顧客のIT投資額が高くなると思われている⑨ Rubyの認知度が一般的に低い⑩ 顧客にRubyに対する不安が存在する⑪ 顧客にRubyを管理できる人材がいない⑫ 顧客が自らソースコードを書き換える恐れがある⑬ 顧客の既存システムとの接続がうまくいかない⑭ セキュリティに不安がある⑮ アプリケーション系などのライセンスが分かりにくい⑯ アライアンス先を探しにくい⑰ その他(具体的な内容をご記入下さい)

13.貴社のIT技術者の総数をお教え下さい。また、Ruby技術者(注)とRuby技術者認定資格の

  保有者の数もお教え下さい。

18.平成23年度(来年度)の業務別の売上高の見通しをお教え下さい。

  また、Rubyに関する売上高が見込まれる場合は、その金額もお教え下さい。

15.貴社のRuby技術者の「技術レベル」に関する充足感として当てはまるものを選択して下さい   (1つだけ選択)。

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① 官公庁 ② 学校 ③ 建設 ④ 食品⑤ 化学・医薬品 ⑥ 鉄鋼・非鉄金属 ⑦ 輸送機器・機械 ⑧ 電気機器・精密機械⑨ 通信 ⑩ 電力・ガス・石油 ⑪ 金融・保険 ⑫ 流通・小売⑬ その他 ⑭ 特にターゲットを設定していない

① ネットワーク構築 ② グループウェア ③ Webサイト(情報発信)④ 引合・営業 ⑤ 購買・販売管理 ⑥ 在庫管理⑦ 生産管理 ⑧ 物流 ⑨ 人事・給与・勤怠管理⑩ 財務会計 ⑪ 管理会計 ⑫ 顧客情報管理・分析⑬ 経営情報管理・分析 ⑭ システム運用 ⑮ セキュリティ運用⑯ ネットワーク運用 ⑰ アプリケーション保守

21.問17でお答えいただいた課題が、仮に全て解決した場合、平成23年度(来年度)における貴社の

  IT売上高に占めるRubyの割合を何%程度まで高めたいと思われますか。

19.Rubyを利用したソリューションを展開するに当たって、貴社のターゲット業種を、現在と

  平成23年度(来年度)のそれぞれについて選択して下さい(複数選択可)。

20.Rubyを利用したソリューションを展開するに当たって、貴社のターゲットとするITソリューション

  区分を、現在と平成23年度(来年度)のそれぞれについて選択して下さい(複数選択可)。

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IT関連売上高(21年度)(IT事業以外は除く) うちRubyに関する売上高

開発業務 百万円 百万円

運用・保守業務 百万円 百万円

その他IT関連 百万円 百万円

合計 百万円 百万円

IT関連売上高(23年度見通し)(IT事業以外は除く) うちRubyに関する売上高

開発業務 百万円 百万円

運用・保守業務 百万円 百万円

その他IT関連 百万円 百万円

合計 百万円 百万円

問14

貴社名 ご担当部署名

TEL( ) -

Rubyに関するアンケート調査 回答用紙

問1 問2 問3

問5 問6

問4

問9問8問7

業務区分

全案件数                  件

うちRubyに関する案件数                  件

          年

問12 問13

問10回答が①の場合の理由

   問11

問18

問19 問20

IT技術者

          人

Ruby技術者

          人

Ruby技術者認定資格保有者

           人

問15

現在 23年度(来年度)

お忙しい中ご協力頂き、誠に有難うございました。

問21

約        %

現在 23年度(来年度)

業務区分

問16回答が⑬の場合の具体的内容

問17回答が⑰の場合の具体的内容

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2.自治体に対するアンケート調査結果

【実施概要】

時 期:平成 22 年 11 月上旬

対 象:中国地域の自治体(県・市・町・村)114 団体

方 法:郵送法

有効回答:48 団体(有効回答率 42.1%)

Ruby についての認知度を尋ねたところ 48 団体から回答があった。

このうち「Ruby のプログラムの記述方法をある程度理解している」との回答は 4 団体

(構成比 8.3%)、「Ruby のプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解して

いる」との回答は 11 団体(同 22.9%)であり、これらを合計すると Ruby の概要を理解

している自治体の割合は 31.2%となっている。

なお、「Ruby という名称は知っているが、内容については十分理解していない」との回

答は 28 団体(同 58.3%)、「Ruby というプログラミング言語を知らなかった」との回答は

5 団体(同 10.4%)であり、今後、自治体における Ruby の認知度を高める必要がある。

県別に集計すると、島根県において「Ruby のプログラムの記述方法は知らないが、そ

の特徴などを理解している」との回答が 7 団体(同 53.8%)を占めており、他の 4 県に比

べて Ruby の認知度が高い様子が理解できる。

Ruby についての認知度

(単位:団体、%)

島根県 広島県 岡山県 鳥取県 山口県 合計

1 1 1 1 0 4

(7.7) (7.7) (11.1) (14.3) (0.0) (8.3)

7 2 0 1 1 11

(53.8) (15.4) (0.0) (14.3) (16.7) (22.9)

5 8 6 4 5 28

(38.5) (61.5) (66.7) (57.1) (83.3) (58.3)

0 2 2 1 0 5

(0.0) (15.4) (22.2) (14.3) (0.0) (10.4)

13 13 9 7 6 48

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)合計

Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している

Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している

Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない

Rubyというプログラミング言語を知らなかった

Ruby についての認知度(県別)

(単位:団体、%)回答数 構成比

Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している 4 8.3

Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している 11 22.9

Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない 28 58.3

Rubyというプログラミング言語を知らなかった 5 10.4

合計 48 100.0

概要を

理解している

31.2%

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Ruby の特徴について知っている項目を尋ねたところ 44 団体から回答があり、このうち

「オープンソース(OSS)である」との回答と「日本人プログラマー(まつもとゆきひろ

氏)が開発した言語である」との回答がともに 39 団体(構成比 88.6%)に達した。

次いで「UNIX、DOS、Windows、BeOS など幅広い OS の上で動く」(23 団体、同 52.3%)、

「オブジェクト指向プログラミングの言語である」(19 団体、同 43.2%)、「プログラムの

記述量が尐なくて済むため、生産性が高い」(18 団体、同 40.9%)などの順となっている。

なお、「楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている」(9

団体、同 20.5%)といった導入事例に関しては、認知度が低位にとどまっている。

県別に集計し、それぞれの質問項目について最も回答割合が高かった県に○印をつける

と、島根県以外でも認知度の高い項目が複数みられる。

ただし、「楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている」

の回答割合は全ての県で半数を大きく下回っており、大手企業における成功事例の PR が

十分ではない様子が伺われる。

Ruby の特徴について知っている項目

(単位:団体、%)

島根県 広島県 岡山県 鳥取県 山口県 合計

13 10 5 5 6 39(100.0) (83.3) (71.4) (83.3) (100.0) (88.6)

13 9 7 5 5 39(100.0) (75.0) (100.0) (83.3) (83.3) (88.6)

8 5 4 4 2 23(61.5) (41.7) (57.1) (66.7) (33.3) (52.3)

4 7 3 3 2 19(30.8) (58.3) (42.9) (50.0) (33.3) (43.2)

6 6 2 3 1 18(46.2) (50.0) (28.6) (50.0) (16.7) (40.9)

5 2 1 1 0 9(38.5) (16.7) (14.3) (16.7) (0.0) (20.5)

3 1 2 1 0 7(23.1) (8.3) (28.6) (16.7) (0.0) (15.9)

1 3 0 0 0 4

(7.7) (25.0) (0.0) (0.0) (0.0) (9.1)

13 12 7 6 6 44

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)

楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている

Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている

使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている

合計

UNIX、DOS、Windows、Mac、BeOSなど幅広いOSの上で動く

オープンソース(OSS)である

オブジェクト指向プログラミングの言語である

プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い

日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である

Ruby の特徴について知っている項目(県別)

(単位:団体、%)回答数 構成比

オープンソース(OSS)である 39 88.6

日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である 39 88.6

UNIX、DOS、Windows、Mac、BeOSなど幅広いOSの上で動く 23 52.3

オブジェクト指向プログラミングの言語である 19 43.2

プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い 18 40.9

楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている 9 20.5

Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている 7 15.9

使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている 4 9.1

合計 44 100.0

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Ruby の利用度合いを尋ねたところ 47 団体から回答があり、このうち「Ruby の導入実

績がある」との回答は 6 団体(構成比 12.8%)、「Ruby に興味はあるが、特に何もしてい

ない」との回答は 25 団体(同 53.2%)であり、これらを合計すると 66.0%の自治体が Ruby

に興味を示している。「Ruby に興味はない」との回答は 16 団体(同 34.0%)であった。

県別に集計すると、島根県では、「Ruby の導入実績がある」との回答割合が 30.8%を占

めているが、それ以外の県では、「Ruby に興味はあるが、特に何もしていない」と「Ruby

に興味はない」を合わせた割合が約 9 割に達している。

このように、Ruby の利用度合いについては島根県とそれ以外の県で大きな違いがみら

れることから、今後は、島根県以外の地域においても Ruby の利用拡大に向けた取組が望

まれる。

これまでに IT ベンダから「Ruby を使いたい」と提案され断ったことがあるか否かを尋

ねたところ 42 団体から回答があり、全自治体が「断ったことはない」と回答した。

Ruby の利用度合い

Ruby の利用提案を断ったことがあるか

Ruby の利用度合い(県別)

(単位:団体、%)回答数 構成比

Rubyの導入実績がある 6 12.8

Rubyの利用を検討している段階である 0 0.0

Rubyに興味はあるが、特に何もしていない 25 53.2

Rubyに興味はない 16 34.0

合計 47 100.0

66.0%

興味がある

断ったことがある(0団体、0.0%)

断ったことはない(42団体、100.0%)

回答者数42団体

(単位:団体、%)

島根県 広島県 岡山県 鳥取県 山口県 合計

4 1 1 0 0 6

(30.8) (7.7) (12.5) (0.0) (0.0) (12.8)

0 0 0 0 0 0

(0.0) (0.0) (0.0) (0.0) (0.0) (0.0)

7 6 5 3 4 25

(53.8) (46.2) (62.5) (42.9) (66.7) (53.2)

2 6 2 4 2 16

(15.4) (46.2) (25.0) (57.1) (33.3) (34.0)

13 13 8 7 6 47

(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)合計

Rubyの導入実績がある

Rubyの利用を検討している段階である

Rubyに興味はあるが、特に何もしていない

Rubyに興味はない

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システム関連経費について尋ねたところ 36 団体から回答があり、平成 21 年度の総予算

額は 18,457 百万円で、このうち Ruby 関連の経費は 514 百万円であった。

平成 22 年度の総予算額は、調査時点においては複数の県が削減を予定していることな

どから 15,702 百万円(前年度比▲14.9%)と減尐し、Ruby 関連の経費も 149 百万円とな

る見通しである。

Ruby に関するメリットについて尋ねたところ 44 団体から回答があり、このうち

「Windows や Linux など幅広い OS の上で動く」(27 団体、構成比 61.4%)、「導入コス

ト(初期コスト)を低減できる」(19 団体、同 43.2%)などの順となっている。

なお、「中国地域(鳥取・島根・岡山・広島・山口県)の産業の活性化につながる」との

回答は 12 団体(同 27.3%)を占めており、Ruby を利用することが地域の産業振興につな

がるとの認識を 3 割弱の自治体が有していることが理解できる。

(単位:百万円)

平成21年度 平成22年度

総予算 18,457 15,702

うちRuby 514 149

システム関連経費について

Ruby に関するメリット(複数回答)

4

0

0

1

3

3

5

6

7

10

12

12

19

27

0 5 10 15 20 25 30

その他

関連する情報が豊富に存在している

バージョンアップが頻繁にされている

未使用のメモリ領域などを集めて、利用可能とする機能が備わっている

実用に耐えうる性能と信頼性がある

メリットはない

顧客側がソースコードを参照・修正できる

Webアプリケーションの追加や修正を迅速に行える

導入に要する期間が他のプログラミング言語を使用する場合より短い

運用コストを低減できる

ベンダー依存性を排除できる

中国地域(鳥取・島根・岡山・広島・山口県)の産業の活性化につながる

導入コスト(初期コスト)を低減できる

WindowsやLinuxなど幅広いOSの上で動く

(団体)

回答者数44団体

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Ruby に関するデメリットについて尋ねたところ 45 団体から回答があり、このうち「自

治体に Ruby のシステムを管理できる人材がいない」との回答が 31 団体(構成比 68.9%)

と最も多く、次いで「Ruby で実現できることが分かりにくい」(18 団体、同 40.0%)、「ユ

ーザにとって必要な Ruby の知識を習得する場がない」(16 団体、同 35.6%)などが続い

ており、ユーザ側における人材不足に関する項目が上位を占めている。

次いで第 4 位は「導入実績の紹介が尐ない」(14 団体、同 31.1%)、第 5 位は「ベンダ、

SI 事業者の保守・サポート体制が不十分」(12 団体、同 26.7%)などの順となっている。

Ruby に関するデメリット(複数回答)

4

0

0

0

1

1

2

3

4

7

9

12

14

16

18

31

0 5 10 15 20 25 30 35

その他

自治体のシステム調達の基準に抵触する

導入コスト(初期コスト)が高い

運用コストが高い

Rubyが自治体の業務、実務に適さない

デメリットはない

導入までの期間がパッケージに比べて長い

Rubyの機能が不十分である

既存アプリケーションとの接続性が悪い

システム移行に対する懸念が大きい

ベンダー、SI事業者の保守・サポート体制が何時まで存続するか不安

ベンダー、SI事業者の保守・サポート体制が不十分

導入実績の紹介が尐ない(信頼性・安定性に懸念がある)

ユーザーにとって必要なRubyの知識を習得する場がない

Rubyで実現できることが分かりにくい

自治体にRubyのシステムを管理できる人材がいない

(団体)

回答者数45団体

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- 58 -

現在 Ruby を僅かでも利用しているシステムについて尋ねたところ 7 団体から回答があ

り、「住民・企業サービス(ホームページ)」(4 団体、構成比 57.1%)など、インターネッ

トを利用した住民・企業サービスに関する項目が上位にみられる。

今後Rubyを導入する余地があると思われるシステムについて尋ねたところ11団体から

回答があり、「職員サービス(庶務事務)」と「職員サービス(グループウェア)」がともに

8 団体(同 72.7%)を占めており、職員に関連する分野での利用拡大の可能性が考えられ

る。

0.0

72.7

72.7

63.6

27.3

18.2

27.3

18.2

18.2

27.3

27.3

36.4

18.2

36.4

36.4

27.3

45.5

27.3

27.3

36.4

36.4

36.4

36.4

63.6

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

14.3

14.3

14.3

14.3

14.3

28.6

28.6

57.1

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

その他

職員サービス(グループウェア)

職員サービス(庶務事務)

職員サービス(文書管理)

個別業務(商工・農林水産)

個別業務(土木・建築・上下水道)

個別業務(医療・福祉・介護)

基幹業務(住民・戸籍)

基幹業務(税務・保険・年金)

基幹業務(財務会計)

基幹業務(人事給与)

基幹業務(統計)

基幹業務(その他)

全庁基盤関連(ユーザー認証)

全庁基盤関連(稼動管理)

全庁基盤関連(その他全庁基盤関連)

住民・企業サービス(施設予約・図書館)

住民・企業サービス(電子調達)

職員サービス(統合型GIS)

職員サービス(その他職員サービス)

個別業務(その他個別業務)

住民・企業サービス(電子申請・電子申告)

住民・企業サービス(その他住民・企業サービス)

住民・企業サービス(ホームページ)

今後 現在

(回答者数) 現在  7団体

 今後 11団体

(%)

現在 今後

Ruby について、現在利用しているシステム、今後利用する可能性のあるシステム(複数回答)

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- 59 -

Ruby に関する自治体の方針を尋ねたところ 47 団体から回答があった。

このうち、「主たるシステムとして積極的に Ruby を導入する方針である」との回答は 1

団体(構成比 2.1%)、「一部のシステムで必要に応じて Ruby を導入する方針である」と

の回答は 4 団体(同 8.5%)であり、これらを合わせると 10.6%の自治体が Ruby を導入

する方針を打ち出している。

一方、「Ruby に対する明確な方針はない(未検討)」との回答が 41 団体(構成比 87.2%)

を占めていることから、今後、自治体が Ruby の導入を積極的に検討するように情報提供

等の働きかけをすることが望まれる。

Ruby に関する自治体の方針

) (単位:団体、%)回答数 構成比

主たるシステムとして積極的にRubyを導入する方針である 1 2.1

一部のシステムで必要に応じてRubyを導入する方針である 4 8.5

現在、Rubyに対する方針を検討中である 1 2.1

Rubyに対する明確な方針はない(未検討) 41 87.2

Rubyを導入しない方針である 0 0.0

合計 47 100.0

10.6%

導入する

方針である

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- 60 -

以下の設問について、別添の回答用紙にご記入をお願いいたします。

1.Rubyについてどの程度ご存知でしょうか(1つだけ選択)。

① Rubyのプログラムの記述方法をある程度理解している。② Rubyのプログラムの記述方法は知らないが、その特徴などを理解している。③ Rubyという名称は知っているが、内容については十分理解していない。④ Rubyというプログラミング言語を知らなかった。

2.Rubyの特徴についてご存知のものをお教えください(複数選択可)。

① オープンソース(OSS)である。② プログラムの記述量が尐なくて済むため、生産性が高い。③ オブジェクト指向プログラミングの言語である。④ 多くのUNIX、DOS、Windows、Mac、BeOSなど幅広いOSの上で動く。⑤ Ruby on Railsの登場でWebアプリケーションソフト開発でも広く利用されている。⑥ 使用しなくなったメモリ領域などを集めて、利用可能なメモリ領域を増やす機能が備わっている。⑦ 日本人プログラマー(まつもとゆきひろ氏)が開発した言語である。⑧ 楽天やクックパッド(日本最大の料理レシピサイト)などで利用されている。

(注)僅かでもRubyで記述したソースコードを含むもの。

5.現在、貴自治体のRubyの利用度合いとして当てはまるものを選択して下さい(1つだけ選択)。

① Rubyの導入実績がある。② Rubyの利用を検討している段階である③ Rubyに興味はあるが、特に何もしていない④ Rubyに興味はない

6.これまでに、ITベンダから「Rubyを使いたい」と提案され、これを断ったことがありますか。また、断ったことがある場合はその理由をお教え下さい。

① 断ったことがある② 断ったことはない

① WindowsやLinuxなど幅広いOSの上で動く② 導入に要する期間が他のプログラミング言語を使用する場合より短い③ Webアプリケーションの追加や修正を迅速に行える④ 導入コスト(初期コスト)を低減できる⑤ 運用コストを低減できる⑥ ベンダ依存性を排除できる⑦ 関連する情報が豊富に存在している⑧ バージョンアップが頻繁にされている⑨ 実用に耐えうる性能と信頼性がある⑩ 顧客側がソースコードを参照・修正できる⑪ 未使用のメモリ領域などを集めて、利用可能とする機能が備わっている⑫ 中国地域(鳥取・島根・岡山・広島・山口県)の産業の活性化につながる⑬ その他(具体的な内容をご記入下さい)⑭ メリットはない

7.Rubyに関するメリット(またはメリットになりそうだと感じられる点)を選択して下さい

  (複数選択可)。

Rubyに関するアンケート調査(自治体用)

3.平成21年度のシステム関連経費について、総額、構築、運用・保守、その他IT関連の金額を

  お教え下さい。また、Ruby関連の経費(注)があれば、その金額もお教え下さい。

4.平成22年度のシステム関連経費の予算についても、問3と同様にお教え下さい。

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① 貴自治体にRubyのシステムを管理できる人材がいない② ユーザにとって必要なRubyの知識を習得する場がない③ Rubyの機能が不十分である④ Rubyで実現できることが分かりにくい⑤ Rubyが貴自治体の業務、実務に適さない⑥ 貴自治体のシステム調達の基準に抵触する⑦ ベンダ、SI事業者の保守・サポート体制が不十分⑧ ベンダ、SI事業者の保守・サポート体制が何時まで存続するか不安⑨ 導入実績の紹介が尐ない(信頼性・安定性に懸念がある)⑩ 既存アプリケーションとの接続性が悪い⑪ システム移行に対する懸念が大きい⑫ 導入コスト(初期コスト)が高い⑬ 運用コストが高い⑭ 導入までの期間がパッケージに比べて長い⑮ その他(具体的な内容をご記入下さい)⑯ デメリットはない

9.Rubyを僅かでも利用したシステムを導入している場合は、該当欄に○印をお付け下さい。また、今後導入する余地があると思われるものについても、該当欄に○印をお付け下さい。

10.貴自治体のRubyに関する方針として当てはまるものを選択して下さい(1つだけ選択)。

① 主たるシステムとして積極的にRubyを導入する方針である② 一部のシステムで必要に応じてRubyを導入する方針である③ Rubyを導入しない方針である④ 現在、Rubyに対する方針を検討中である⑤ Rubyに対する明確な方針はない(未検討)

8.Rubyに関するデメリット(またはデメリットになりそうだと感じられる点)を選択して下さい

  (複数選択可)。

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- 62 -

総発注額 総発注額

構築百万円 百万円

構築百万円 百万円

運用・保守百万円 百万円

運用・保守百万円 百万円

その他IT関連百万円 百万円

その他IT関連百万円 百万円

合計百万円 百万円

合計百万円 百万円

統合型GIS

その他職員サービス

商工・農林水産

土木・建築・上下水道

医療・福祉・介護

その他個別業務

住民・戸籍

税務・保険・年金

財務会計

人事給与

統計

その他基幹業務

ユーザー認証

稼働管理

その他全庁基盤関連

全庁基盤関連

個別業務

ホームページ

文書管理

問6①の場合の理由

問9

庶務事務

現在Rubyを利用したシステムを導入している

今後Rubyを導入する余地がある

問5

お忙しい中ご協力頂き、誠に有難うございました。

基幹業務

職員サービス

その他住民・企業サービス

グループウェア

住民・企業サービス

電子調達

問1 問2

貴自治体名 ご担当部署名  TEL( ) -

Rubyに関するアンケート調査 回答用紙

問4(平成22年度)問3(平成21年度)

うちRuby関連 うちRuby関連

問10その他

問7

問8

⑬の場合の理由

⑮の場合の理由

電子申請・電子申告

施設予約・図書館

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3.ヒアリング調査結果

ここでは、既に Ruby に関する事業に取り組んでいる企業を中心に 9 社を対象としたヒ

アリング調査結果の概要を紹介する。本ヒアリング調査では、積極的に Ruby を利用して

いる企業に対して、Ruby によるシステム開発の実績、利点、課題などをヒアリングした

ものであるため、IT 業界全体の Ruby に関する認識と乖離がある可能性がかなりあること

に留意が必要である。

(1)Ruby の専門組織・技術者数

Ruby の専門組織の有無について尋ねたところ、「ある」との回答が 4 社、「ない」と

の回答が 3 社であった。今回のヒアリング調査結果では、Ruby の専門組織と企業の規

模には必ずしも関連性はみられず、明確な戦略のもとで専門組織を編成している事例は

中堅・中小規模の企業においてもみられた。

社内組織・技術者数

企業名 専門部署 技術者数 コメント概要

A 社 ある

10~15 名

○私の所属部署は、Ruby をはじめとする OSS を専門

に取り扱っている。

○Ruby を書ける人材は 10~15 名。

○東京にある当社グループの中核企業には、Ruby など

OSS をサポートする専門組織があり、当社で対応で

きない場合は、その専門組織が対応する。

B 社 ない 10 数名 ○Ruby の専門組織はない。

C 社 ない

100数名

○Ruby の専門組織はない。

○Ruby を書ける技術者はいるが、正確な数は不明。

○Ruby に関する人材育成は行っていない。

D 社 - - -

E 社 - - -

F 社 ある

7 名

○Ruby 技術者認定資格の Silver が 7 名おり、そのうち

1 名は Gold も取得している。

○当社は、Ruby のシステムインテグレータの認定を受

けている。

G 社 ない

9 名

○Ruby の案件があればプロジェクトチームを編成す

る。

○Ruby の技術者認定資格の保有者は 9 名。殆どの正社

員が資格を有している。

H 社 ある

3 名

○Ruby を書ける技術者は 3 名。

○今後、Ruby を仕事で使う場面を設けたいと考えてお

り、それが実現すれば短期間で Ruby の技術者をかな

り増やせるだろう。

I 社 ある

25 名

○Ruby をメイン言語とする開発部隊が、本体から独立

した株式会社として活動している。

○同社及び上記株式会社と関連団体で、Ruby を書ける

人材は 25 名程度で、このうち1名は Ruby 技術者認

定資格の Silver を有している。この他に、連携してい

る社外の Ruby の技術者が 10 名程度いる。

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(2)Ruby を使用しているシステムの OS 及び DB

Ruby を使用しているシステムの OS について尋ねたところ「Linux」との回答が 4 件、

「RedHat」との回答が 1 件であった。

データベース(DB)については「PostgreSQL」との回答が 4 件、「Oracle」との回答が

2 件、「MySQL」との回答が 1 件であった。

このように、「Oracle」以外の回答は OSS であり、多くの企業において“フル OSS”

でシステム構築を志向している。この背景には、ライセンス料のかからない OSS をで

きるだけ利用することにより、コスト削減効果を創出しようとする狙いがあるものと思

われる。

Ruby を使用したシステムの OS・DB など

企業名 OS DB コメントの概要

A 社 Linux

RedHat

PostgreSQL

MySQL

○OS は様々なものを使っているが、Linux と RedHat

が多い。

○DB は PostgreSQL と MySQL が多い。

B 社 - - -

C 社 Linux PostgreSQL

○OS は Linux が多いと思う。

D 社 - - -

E 社 - - -

F 社 - - -

G 社 Linux

PostgreSQL

Oracle

○OS は Linux が多いが、要望に応じて何にでも対応す

る。

○DB は、PostgreSQL や Oracle など。

H 社 - Oracle ○OS は Windows。DB は Oracle。

I 社 Linux PostgreSQL ○OS は Linux、DB は PostgreSQL である。

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(3)Ruby を使用したシステムの受注状況

Ruby を使用したシステムの受注実績を尋ねたところ 6 社が「あり」、2 社が「なし」

と回答した。「なし」と回答した 2 社のうち 1 社では Ruby を使用したシステムが既に

社内で稼働しており、残る 1 社では研究部門で研究や検討を進めている。

また、Ruby を使える技術者の不足感については、4 社が「あり(不足している)」、2

社が「なし(不足していない)」と回答している。

このように、受注実績があり、かつ技術者不足を感じている企業が複数みられており、

既に Ruby に関するビジネスに手応えを感じている企業があることが確認できた。ちな

みに、受注に成功している企業では、Ruby のサポートに対応できる人材と体制を社内

に整えたうえで、販路の確保や提案手法の磨き上げに取り組んでいるケースが多い。

Ruby を使用したシステムの受注状況

企業名 受注

実績

技術者

不足感

コメントの概要

A 社 あり

あり

○これまでの受注件数は、累計 318 件。

○数百人日の工数を要する大きな案件も受注したいが、エ

ンジニア不足のため受注できない。Ruby の仕事を断る

ことがあるとすれば、その理由は Ruby の信頼性や技術

的な問題(プラットフォームやライブラリの未整備)で

はなく、エンジニア不足ということに尽きる。

B 社 なし - -

C 社 あり

なし

○年間数件の引き合いあり

○システムの運用にあわせて、Ruby だけでなくその他言

語を用いることもある。

D 社 あり

あり

○Ruby の需要が急速に伸びているため、エンジニアが足

りない。

○Ruby で仕事をできる企業が尐ないため、Ruby で提案

すれば、高い差別化要因となる。

○現在は、Ruby に本気で取り組んでいる企業に仕事が集

中し、そうでない企業には仕事が来ない状況である。

E 社 - - -

F 社 あり

あり

○案件の 90%以上が Ruby に関する仕事である。

○Ruby のエンジニアが足りないため、案件を断ることも

ある。エンジニアの数を増やせば、それだけ売上高を増

やせる状況である。

G 社 あり - ○Ruby に関しては、製造業や物流業からの受注が中心で

ある。自社開発の多言語対応問診アプリケーションの製

品化・販路確保にも取り組んでいる。

H 社 なし なし

○グループ企業向けシステムで Ruby を使用。外部での導

入実績はまだない。

I 社 あり

あり

○累計で自治体 10 団体から受注した。

○研究開発費を捻出するため、国からの委託事業も獲得し

ており、本年度だけで計 5 件の事業を実施している。

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(4)Ruby を提案して断られた経験

Ruby を提案して断られた経験については、1 社が「ある」、2 社が「ない」と回答し

ている。

「Ruby は OSS であり、トラブルが発生した場合の責任を取る組織がないため、ユー

ザから断られることが多いのではないか」と感じている企業が多いように思われる。し

かし、ヒアリング対象企業からは、「言語にこだわるユーザはあまり多くなく、むしろ

Ruby をサポートできる人材と体制を整備できない IT ベンダが Ruby を避けようとして

いる。サポートできる人材さえ確保できれば、ソースコードを自由に書き直せる Ruby

の方が取り扱いやすい」とのコメントも聞かれた。

Ruby を提案して断られた経験

企業名 断られた

経験

コメントの概要

A 社 -

○私は営業担当ではないので、Ruby の使用をお客様から断られた

ことがあるかどうかは分からない。

○Ruby は社内では十分に使い慣れた言語であり、信頼性に不安は

全く感じていない。もし、バグなどが発生しても、社内で対応で

きる体制を整えている。

B 社 - ○断られた経験の有無は把握していない。

○基幹系など大規模なシステムのユーザから、「Ruby を使ってトラ

ブルが生じた場合に責任をとってもらえるのか」と聞かれる可能

性はあると思う。

C 社 ない

○これまで、Ruby を使うことをユーザに説明して断られたことは

ない。

○社内、およびユーザシステムで Ruby を使っているが、これまで

トラブルが発生したことは無く、動作速度が遅いと感じたことも

ない。

D 社 - -

E 社 - -

F 社 ある

○当社は、創業当初から Ruby に特化してきた。

○「Ruby は使わないでほしい」という企業もある。このようなケ

ースは、主に Java のエンジニアが多い大手 SI で顕著である。ま

た、前例を重視する企業でも、Ruby のような新しい言語を避け

る傾向が強い。

G 社 - ○従来の業務は大手 SI からの受託開発が中心であったが、今後は

「元請」として Ruby で開発した自社商品を販売していく。

H 社 - -

I 社 ない

○Ruby を使うことを提案して断られたことはない。当社の顧客は

自治体であり、自治体は使用する言語に制約をほとんど設けない。

○自治体は、トラブルが発生した時の責任を取る者が明確でなけれ

ば、契約してくれない。そこで、パッケージに関する責任を当社

が取ることを明示している。

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(5)Ruby を利用している理由

Ruby を利用している理由は、下表の通りであった。同表の「コメントの概要」欄か

らキーワードを抽出すると、その主なものは以下の通りとなった。

○OSS であるため、ライセンス料が不要。

○日本語処理に適している。

○オブジェクト指向の言語である。

○ソースコードの記述量が尐なくて済む(生産性が高い)。

○ソースコードが公表されているため、トラブル時に自社で迅速に対応できる。

○マルチスレッド対応である。

○記述方法に柔軟性がある(同じ内容のプログラムを幾通りにも書くことができる)。

○C 言語との互換性が高い(C 言語のソースコードを Ruby の上で動かせる)。

○テキストデータの処理に強い(正規表現が標準装備されている)。

○インタープリタの言語であり、コンパイルが不要。

○Ruby on Rails があるため、Web アプリケーションを簡単につくることができる。

○拡張性が高い(最初に小さなシステムだけを開発して稼働させ、その後、徐々にシ

ステムを大規模化できる)。

○仕様変更に柔軟かつ迅速に対応できる。

Ruby を利用している理由

企業名 キーワード コメントの概要

A 社 ライセンス料

○Ruby はライセンス料が不要である。ライセンス料のかかるソ

フトウェアでは、多数のパソコンを使用しているユーザにお

いては、年間のライセンス料が大きな負担になる。

日本語処理 ○Ruby は日本語処理の対応能力が高い。

B 社 開発期間

○Web アプリケーションの開発期間が非常に短い。プロトタイ

プをお客様のオフィスへお持ちして、そこで商談しながらシ

ステムを完成して納品することもできる。

拡張性 ○拡張性が高い。最初は中核となるシステムだけ稼動させ、後

から徐々にシステムを追加することに適している。

C 社 オブジェクト

指向

○オブジェクト指向である。

記述量 ○記述量が尐なく、生産性が高い。

日本語処理 ○日本語との親和性が高い

マルチスレッ

○マルチスレッドと日本語処理の両方を標準で備えている言語

を探すと、選択肢として Ruby だけが残る。

言語の柔軟性

○記述方法の柔軟性が高い。ジャンクコードのようなくだけた記

述でも、正式なコーディング方法に則った記述でもできる。

C との互換性 -

D 社 生産性

○Ruby の最大の優位性は、高い生産性にある。特にテスト駆動

開発を行いやすく、信頼性の高い開発を、高効率に進めるこ

とができる。

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Ruby を利用している理由

企業名 キーワード コメントの概要

E 社 情報収集分析

○個人ユーザ向けの商品では、次々に公開される膨大な情報の

中から、お客様が選びやすいように情報を整理し、その情報

が選択された時には文字や画像として表示する必要がある。

そのような機能が、Ruby は優れている。

F 社 記述量

○ソースコードの記述量が尐ない。Ruby は、定義などの宣言系

のコーディングが尐ない。また、C 言語のようにヘッダー部

と実装部に分かれておらず、Java のようなインターフェース

に合わせるための機械的な作業も必要ない。

テキスト処理

○Ruby は、正規表現を標準装備するなど、テキスト処理の能力

が高い。また、Web 系技術との親和性が高い。

インタープリ

○インタープリタ言語なので、コンパイルしなくてよい。

Rails

○Ruby on Rails には、データベーススキーマのバージョン管

理、ユニットテストなどの仕組みがあり、迅速に開発できる。

拡張性

○Ruby は、拡張性が高い。継承のほか、モジュールを利用して、

共通コードを抽出したり、プログラムを拡張することが簡単に

行える。

開発期間 ○以上のような特徴があるため、Ruby を使うと、開発を初めて

からシステムが動き始めるまでの時間を短くできる。

G 社 記述量 ○記述量が尐ない(Java の 3 分の 1 程度ではないか)。

開発期間 ○Ruby は開発期間が短くて済む。このため、迅速にプロトタイ

プをつくってお客様にお持ちすれば、社内で検討して予算を

承認してもらいやすくなる。

ライセンス料 ○Ruby はライセンス料がかからないため、システム関連予算が

尐ないお客様にも関心を持ってもらえる。

サポート ○ソースコードが公表されているため、トラブルが発生した場

合、自社で迅速に対応できる。

H 社 ネットワーク ○ネットワークプログラムに強い。

Webシステム ○Web システムに適している。

ソケット通信 ○ソケット通信に適している。

言語の柔軟性 ○柔軟性の高い言語である。

オブジェクト

指向

○オブジェクト指向の言語である。

仕様変更 ○仕様変更に柔軟かつ迅速に対応できる。

I 社 ライセンス料 ○Ruby にはライセンス料がかからない。

記述量

開発期間

○Ruby を使えば、ソースコードの記述量が尐ないため、開発期

間が短くなる。

ライセンス料

開発期間

○ライセンス料が不要で開発期間が短いため、パッケージの販

売価格を、大手 SI より大幅に安く抑えることができる。

サポート ○ソースコードを開示しているため、トラブルが発生した場合

に、自社で迅速にサポートできる。

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(6)Ruby の課題

Ruby の課題に関する回答は下表の通りで、このうち主なものは以下の4項目であっ

た。

○Windows との親和性が低い。

○Ruby を使えるエンジニアが不足している。

○ライブラリを充実させる必要がある。

○サポート関連の情報が不足している。

Ruby の課題

企業名 キーワード コメントの概要

A 社 Windows

○現時点では、ユーザが使用している機器の Windows との連携

が大きな問題である。昨年までは、今後もその問題が続くと思

っていたが、クラウドが主流になると、当社の Ruby のシステ

ムとユーザの Windows の機器を連携させる必要がなくなる。

サポート

○Ruby1.8 のサポートが何時打ち切られるかが、ユーザをサポ

ートするうえで重要である。

人材不足 ○Ruby を使える人材が不足している。特に地方都市には優秀な

エンジニアが見当たらず、首都圏の企業に発注してしまう。

B 社 - -

C 社 ライブラリ ○1.9 系に対応しているライブラリをもっと充実させてほしい。

サンプルコ

ード

D 社 - -

E 社 - -

F 社 デプロイ環

○Java に比べると、デプロイして運用する際のインフラが弱い。

Java では、Web アプリケーションサーバが充実している。

動作速度 ○Ruby は、動作速度が速くはない。

G 社 情報発信 ○Ruby で開発したシステムの事例が、殆ど公表されていない。

成功事例を公表し、認知度と信頼感を高める必要がある。

H 社 ライブラリ ○ライブラリのサポートを充実させる必要がある。

GUI

○Ruby on Rails 等とは別に、Ruby 自体に GUI を標準装備し

て、アプリケーション開発を簡単に行えるようにしてほしい。

I 社 - -

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(7)今後整備すべき機能

今後整備すべき機能については、主に以下のコメントが聞かれた。

○エンジニアが不足しているので、「人材育成」に取り組んでほしい。

○Rubyを小学校から子供たちに教え、将来的には IT業界に限らず、様々な産業の人々

が Ruby を使った新しいビジネスモデルを考案できる仕組みがあれば良い。

○Ruby アソシエーション、島根県、松江市は、Ruby に関する情報を今まで以上に

発信し、それがきっかけとなり、全国各地で発生した Ruby の動きが、島根県に再

び還元されるような構図をつくってほしい。

今後整備すべき機能

企業名 キーワード コメントの概要

A 社 人材育成 ○Ruby を使える人材を育成する仕組みを構築してほしい。

B 社 - -

C 社 - -

D 社 教育

○比較的とりくみやすい言語であることを考えると、小学校程度

から Ruby 教育を行うことが可能。技術者のための素養という

よりも、社会の一般的な素養とすることで、将来様々な分野で

インターネット時代の新しい事業が開花する可能性が高まる。

E 社 教育

○地方都市では、IT 企業やエンジニアの数は限られている。そ

こで、全員が Ruby の簡単なプログラムを読み書きできるよう

に教育制度を整え、様々な産業の職員が Ruby を活用したビジ

ネスモデルを考案できるようにすることが良い。

F 社 - -

G 社 情報発信 ○成功事例の情報を発信し、ユーザが Ruby に対する信頼感を持

つようにしてほしい。

H 社 - -

I 社 情報発信

○Ruby アソシエーション、島根県、松江市は、Ruby に関する

情報を今まで以上に発信し、それがきっかけとなり、全国各地

で発生した Ruby の動きが、島根県に再び還元されるような構

図をつくってほしい。

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(8)行政への要望

行政への要望としては、以下のコメントが聞かれた。

行政への要望

企業名 コメントの概要

A 社 ○行政は、国産言語をさらに普及させるために、Ruby を指定して発注するべき

である。

B 社 -

C 社 -

D 社 -

E 社 -

F 社 -

G 社 -

H 社 -

I 社 ○自治体に当社のサービスをしっかりと聞いてもらい、導入してもらいたい。自

治体で実績ができると、企業も導入を真剣に考えるようになる。

○大手 SI は、プログラミングの重要な部分も含めてオフショアに外注している

ため、国内に技術やノウハウが蓄積されていない。これからは、国内に技術や

ノウハウが残る仕組みをつくるとともに、優秀なエンジニアが日本で生活でき

る仕組みをつくることが必要である。

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平成 22年度 地域経済産業活性化対策調査

中国地域におけるオープンソースプログラミング言語「Ruby」の拠点形成可能性調査報告書

平成 22年 12 月

中国経済産業局 地域経済部 電子・情報産業担当

〒730-8531 広島県広島市中区上八丁堀 6番 30号

TEL (082)-224-5630

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紙にリサイクル可

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中国地域におけるオープンソースプログラミング言語

「Ruby」の拠点形成可能性調査

概要版

平成 22 年 12 月

中国経済産業局

平成22年度地域経済産業活性化対策調査

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目 次

Ⅰ.調査の背景・目的······················································· 1

Ⅱ.IT 産業及び Ruby の現状について ········································ 2

1.IT 産業の現状 ························································· 2

2.Ruby ビジネス利用の現状 ·············································· 3

3.Ruby 市場規模の推計 ················································· 14

4.Ruby 人材、企業分布 ················································· 17

5.Ruby 標準化の動き ··················································· 20

6.Ruby の性能向上について ············································· 21

Ⅲ.Ruby の可能性と課題について ·········································· 22

1.ビジネス利用の可能性 ················································ 22

2.可能性実現における課題 ·············································· 26

Ⅳ.Ruby 拠点の在り方について ············································ 27

1.検討委員会の開催 ···················································· 27

2.拠点形成の意義について ·············································· 28

3.Ruby 拠点の体制について ············································· 29

4.実施スケジュール ···················································· 33

5.Ruby 拠点形成に必要な支援 ··········································· 33

6.地域 IT ベンダ、ユーザ企業のメリット ································· 33

7.まとめ ······························································ 34

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Ⅰ.調査の背景・目的

オープンソース・ソフトウェアのプログラミング言語である「Ruby」は、プログラム開

発時のソースコードの記述量が尐なく、開発生産性が高いことから、又、システムへの変

更要求に柔軟に対応できることから、近年国内外の大手企業からも注目されている。

「Ruby」の開発者である「まつもとゆきひろ」氏は島根県松江市に在住しており、島根県

や松江市では「Ruby」を産業発展に向けた地域の強みと位置づけ、Ruby を軸とした IT

産業振興に取り組んでいる。

中国経済産業局では、平成 21 年度に「Ruby ビジネス活用研究会」を設置し、「Ruby」

でシステムを開発することによる IT ベンダの優位性、「Ruby」で開発されたシステムを採

用することによる IT ユーザのメリットなどを明らかにしたところである。

本事業では、「Ruby」のビジネス利用の現状と、IT ビジネスの潮流を踏まえた Ruby の

可能性と課題を詳らかにすると共に、中国地域に「Ruby ビジネス」の拠点を形成し、地

域の IT 産業の発展を目指すために必要な具体的方策を提言することを目的とする。

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Ⅱ.IT 産業及び Ruby の現状について

1.IT 産業の現状

(国内市場の成長の鈍化/グローバル展開の必要性の増加)

2002 年以降、我が国の情報サービス市場の成長率は大きく鈍化。また、ユーザ企業に

おける人件費単価の抜本的な見直し、クラウド・コンピューティングの進展、オフショア

開発の普及等による価格競争の高まり等を背景に IT コストの構造的な低下傾向が常態化

している。

国内市場は成長が鈍化する一方で、ユーザ企業のグローバルな事業展開が拡大しており、

グローバルレベルでの IT 投資は増加する可能性が高い。特に中国などの経済成長率の高

い国において IT 市場が今後拡大することが見込まれる。

(高品質・高信頼性)

国内ユーザの厳しい要求に対応し続けてきたことから、我が国 IT 企業が構築/開発す

る情報システム・ソフトウェアの品質・信頼性は高いものとなっており、我が国 IT 産業

が海外展開を図っていく際の強みとなり得る。情報システム・ソフトウェアの品質・信頼

性を維持・向上していくことが求められる。

(下請構造の地域・中小ベンダ)

我が国の情報サービス・ソフトウェア産業は、プライムベンダを頂点に、多くの地域・

中小ベンダが支えるピラミッド型の産業構造となっており、約 8 割弱の地域・中小ベンダ

が何らかの形で下請業務を受注している。

また、地域・中小ベンダは、下請業務を中心に事業を展開してきたため、必ずしも地域・

中小ユーザのニーズに応え切れていない。クラウドが台頭する時代において、新たな市場

に向けての業態転換も求められている。

IT ベンダ業界の構造

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2.Ruby ビジネス利用の現状

ここでは、Ruby のビジネス利用の現状について、代表的な事例と最近の傾向などを紹

介する。

(1)民間市場での Ruby 利用

わが国において Ruby の利用が急速に広まったのは平成 17 年頃からであり、その背

景には、平成 16 年にデンマーク人のプログラマーである David Heinemeier Hansson

氏が Web アプリケーション・フレームワークである Ruby on Rails を開発したことが関

係している。

代表的な導入事例としては、平成 18 年に楽天㈱が自社システムに Ruby と Ruby on

Rails を採用し、翌年にまつもとゆきひろ氏を楽天技術研究所のフェローに招聘したこ

とが、大きな話題となった。また、レシピ投稿サイトを運営するクックパッド㈱と、レ

ストランのクチコミサイトを運営する㈱カカクコムが Ruby と Ruby on Rails を導入し

た。

こうした中で、大規模なアクセスがあるシステムを構築する場合には、Ruby と Ruby

on Rails の処理速度の遅さが問題視されることもあったため、楽天㈱はまつもとゆきひ

ろ氏と共同で並列分散処理技術を研究し、㈱カカクコムは Ruby on Rails とデータベー

スである MySQL のチューニングを最適化するなど、独自の方法により対応している。

最近では、Ruby1.9 系のリリースに際し、東京大学の笹田耕一講師が開発した仮想マ

シンである YARV(Yet Another Ruby VM)が導入され、処理速度が大幅に改善されて

いる。

次ページ以降では、マスコミ情報や本事業のヒアリング調査結果をもとにユーザにお

ける Ruby の採用事例及び IT ベンダにおける Ruby の活用事例を紹介している。

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≪わが国最大の買物サイト≫

楽天㈱

本社:東京都品川区 資本金:107,605 百万円

従業員:5,810 名 (平成 21 年 12 月時点)

○楽天㈱は、平成 19 年 6 月より、まつもとゆきひろ氏を楽天技術研究所のフェローに招聘

し、共同研究を実施している。

○そのテーマの一つとして、大規模なデータを処理する分散処理技術の開発がある。楽天

では、ユーザの買物履歴を分析し、そのユーザに適した商品やサービスをお勧めするレ

コメンデーション・エンジンを独自開発しており、急速に増え続けているユーザと商品・

サービスに対応しながら、お勧めする商品やサービスの解析を日次ベースで行う必要が

ある。

○データの蓄積を分散するシステムとして Roma を開発し、平成 21 年から稼動を開始させ

た。Roma の特徴の一つとして、データの蓄積をサーバ側で行うため、ユーザがパソコ

ンや携帯電話など異なる端末からアクセスしても、その人のデータを閲覧することがで

きる。このように、Roma を利用すれば、クライアントの多様化に柔軟に対応できる。

○データの処理を分散するシステムとしては Fairy を開発し、同じく平成 21 年から稼動さ

せている。Fairy の特徴の一つとしては、Fairy サーバを並列につなぐ際、既存のバッチ

プログラムをほとんど修正する必要がなく、手軽に並列分散処理を実施できる点が挙げ

られる。

○楽天㈱は、Roma と Fairy の分散処理技術を、同社が独自に開発したレコメンデーショ

ン・エンジンと組み合わせることにより、さらに顧客満足度の高いシステムの開発を進

めている。

≪世界最大級のレシピ投稿サイト≫

クックパッド㈱

本社:東京都港区 資本金:796 百万円 従業員:78 名

○クックパッド㈱は、月間 1,000 万人が利用し、89 万品のレシピが集まる世界最大級の料

理レシピ投稿サイト「クックパッド」等を運営している。

○同社では、「クックパッド」の検索ランキングを活用した食の検索データサービスである

「たべみる」を開始した。このサービスは、「クックパッド」の ID 取得ユーザが「どの

ようなキーワードで料理レシピを検索しているのか」という情報を、食材・地域・季節・

組み合わせ検索語など様々な切り口で分析し、食品関連業界に消費者の欲求や潜在ニー

ズのマーケティングデータを提供するものである。

○「たべみる」のサイトの構築を Ruby で試みたところ、Ruby 初級者が 1 カ月で完成させ

ることができたことから、社内において Ruby への注目度が急激に高まった。

○この出来事がきっかけとなり、「クックパッド」を全面リニューアルする際には、Ruby

をメイン言語として使用することとなった。

○同社では、Web サイトを構築する際は、プロトタイプの改良を幾度も繰り返すことから、

プログラムの変更や拡張が容易で、コンパイルの要らない Ruby は、開発スピードを高

めるための重要なツールとして活用されている。

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≪わが国 No.1 のレストランのクチコミサイト≫

㈱カカクコム

本社:東京都渋谷区 資本金:695 百万円

○㈱カカクコムは、レストランの No.1 クチコミサイトである「食べログ.com」を運営して

いる。

○「食べログ.com」は、“信頼のできるレストラン選び”をコンセプトに、実際にレストラ

ンを利用したユーザから寄せられた“クチコミ”をもとに、各レストランを 5 点満点で

評価することにより、本当に満足のできるお店を浮き彫りにし、信頼できるレストラン

ランキングを提供している。

○同社は、平成 19 年 10 月に「食べログ.com」を Ruby on Rails でフルリニューアルし

た。当時の利用状況は月間利用者約 380 万人、月間約 2,900 万ページビューであり、登

録レストラン件数も約 13 万店に達しており、Ruby on Rails でつくったサイトとしては

当時国内最大規模であった。

○リニューアルに着手する以前は、「Ruby on Rails の処理速度が遅いため、『食べログ』

のように大量のアクセスがあるサイトの構築は難しい」という意見もあった。しかし、

実際に調べてみると、ボトルネックとなるのは Ruby 自体ではなく、データベース周り

であることが判明し、Ruby on Rails によるリニューアルに踏み切った。

≪納入実績 300 件超の CMS≫

㈱富士通四国システムズ

本社:香川県高松市 資本金:200 百万円 従業員:705 名

○㈱富士通四国システムズは、平成 10 年から Ruby の使用を開始。平成 13 年に香川県か

ら CMS を受注し Ruby で構築したことをきっかけとして、その後、自治体向けの CMS

を中心として Ruby 関連の事業を本格的に展開してきた。

○同社の CMS の主力製品は、Ruby をはじめとする OSS で構成された「GWebLink-Neo」

というパッケージソフトウェアである。ユーザライセンスフリーのため、利用者数や端

末数におけるライセンス費用かからず、ユーザは低価格で導入することができる。

○同社では、10 数年間 Ruby を使用してきた実績と、手厚いサポート体制を背景として、

フル OSS である「GWebLink-Neo」の価格競争力を活かした顧客開拓を実施している。

○同社の納入先は、官公庁、大学、健康保険組合など全国に広がっており、累計 318 団体

に達している。

○今後、「GWebLink-Neo」の機能を、コンテンツ表示関連ビジネスで拡張する予定である。

例えば、①デジタルサイネージシステムと連携するためのコンテンツ配信のコアエンジ

ンとしての活用、②CMS を SaaS で提供するサービス(同社の高知インターネット・デ

ータ・センターを活用)、などが挙げられる。

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≪Java と組み合わせた Web システム≫

㈱イーシー・ワン

本社:東京都港区 資本金:300 百万円 従業員:172 名

○㈱イーシー・ワンの最首社長は、Ruby ビジネス・コモンズの会長、福岡 Ruby ビジネス

拠点推進会議の副会長を務めるなど、福岡県内における Ruby のムーブメントを牽引し

ている人物である。

○福岡県の外郭団体である「福岡県産業・科学技術振興財団」は、クラウド・コンピュー

ティングにより、Ruby を使ったソフトウェアなどの開発環境を提供する予定であり、最

首社長が会長をつとめる Ruby ビジネス・コモンズがアドバイザーとして参加する。

○Java と Ruby を得意とする同社では、顧客のニーズに合わせて最適な技術を選択してい

る。特に、将来的に機能拡張や変更が見込まれるシステムでは積極的に Ruby を採用し

ている。

○ Ruby 案件としては、これまでに EC サイトの構築で数多くの実績を持っているが、企

業の基幹システムへの適用なども行っている。

○ 特に、自社製品の開発については、ほぼ 100%Ruby を採用している。これは、Ruby で

開発することの効果を高く評価しているためであり、現実に開発コストと Time to

Market の点で、極めて高い成果をあげている。

○同社が開発した大規模なクラウド環境の監視・制御システム「Monkey Magic」に、Ruby

が全面採用されている。このサービスは、月額利用料 500 円からという低価格でありな

がら、数千万サーバを超える大規模なシステムや、複数データセンターに分散されたク

ラウド環境全体をコントロールする。性能は、サーバ台数の追加で簡単に向上させるこ

とができるだけでなく、単一サーバの障害や、単一データセンターの障害にもシステム

はダウンしない構造をもっており、よく設計された Ruby の高い信頼性を証明している。

○平成 22 年 11 月には、九州電力株式会社との提携を発表し、需要が高まるクラウドや分

散処理の分野でサービス提供をおこなっていく計画である。

≪Web を活用したシステムの受託開発≫

㈱万葉

本社:東京都千代田区 資本金:13.8 百万円 従業員:6 名

○㈱万葉の大場社長は、会社に勤務していた時期に Ruby と出会い、家計簿システム「小

槌」を作成したところ、Award On Rails 2006 の大賞を受賞した。このシステムでは、

家族一人ひとりの家計簿をつくり、関連のある記入を自動的に連携記入する機能が装備

されている。

○平成 19 年に㈱万葉を設立し、Ruby をメイン言語とするプログラミングや人材育成など

の事業を実施している。現在、7 名のエンジニアが Ruby 技術者認定資格の Silver を保

有しており、そのうち 1 名は Gold も保有している。また、会社としては Ruby システム

インテグレータの認定を受けている。

○プログラミングに関しては、大手・中堅 SI 企業から受託し、主に Web を活用したグル

ープウェア、ショッピングサイト、コミュニケーションサイトなどを Ruby on Rails で

制作している。また、iPhone アプリケーション、ソーシャルゲームなども手がけている。

○人材育成に関しては、平成 18 年から島根大学で大学生を対象とした Ruby の実践的な講

義を毎年 1 回担当するなど、教育界・産業界からの依頼に応じて研修を請け負っている。

○大場社長は、「Ruby on Rails の逆引きクイックリファレンス」の著者としても知られて

おり、2010 RubyWorld Conference や日本 Ruby 会議など、様々な舞台で講演活動も実

施している。

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≪商店街のまちづくりサイト≫

リバティ・フィッシュ㈱

本社:大阪府大阪市 資本金:8 百万円 従業員:15 名

○リバティ・フィッシュ㈱は、制御システムの受託開発を主力事業としてきたが、近年、

Ruby をはじめとする OSS を利用した自社商品の開発・販売に取り組んでいる。

○同社には、Ruby 技術者認定資格の保有者が 9 名おり、その殆どが Linux、Java、C 言語

も使うことができるなど、OS からアプリケーションまで一貫して開発・サポートできる

人材を育成している。会社としては、Ruby システムインテグレータの認定も受けている。

○Ruby のプログラミング技術の教育スクールも開催しており、20~30 日間かけて、実践

ですぐに役立つカリキュラムを実施している。日本情報技術取引所からも Ruby の研修

事業を請け負っている。

○これから同社が拡販を目指しているシステムは、商店街のまちづくりサイトである。商

店街全体のサイトを立ち上げ、そこに個々の商店が自由に簡単に使えるページも割り当

てる。さらに、商店街内部でのグループウェアの機能、ショッピングサイトの機能、ブ

ログの機能なども盛り込むほか、ツイッターとも連動させる。このシステムは Ruby を

使っているため、迅速かつ低コストで構築することができる。

○また、多言語に対応できる iPad に最適化した問診票アプリケーションを Ruby で開発。

これは、最初に言語を選択すると、以降の問診項目が選択した言語で表示され、最後に

入力内容を PDF で出力するものである。サーバにデータを集約し、ブラウザで表示する

クラウド型のアプリケーションにすることで、iPad や Android、パソコン等、端末を選

ばない機能性と、直感的に操作ができるボタン等、タブレット端末でのユーザインター

フェースを実現した。

≪首都圏全域の地震防災システム≫

㈱ティージー情報ネットワーク

本社:東京都品川区 資本金:400 百万円 従業員:573 名

○㈱ティージー情報ネットワークは、東京ガス㈱が全額出資している IT ソリューション企

業である。

○同社は、阪神淡路大震災の教訓をもとに、東京都で直下型大地震が発生した場合の火災

による二次被害を最小限にとどめるため、平成 13 年に地震防災システム「Supreme」(シ

ュープリーム)をリリースした。平成 21 年に全面リニューアルした際、同システムのソ

ースコードを C 言語から Ruby に書き換えた。

○「Supreme」は、首都圏に 4,000 基設置されている地震センサーから送られてくるデー

タを、東京都と千葉県にあるサーバに集約し、被害が甚大な地域のガス供給を停止する

“ミッション・クリティカル”なシステムである。Supreme を開発したことにより、地震

発生からガス供給停止までの時間を、2,400 分から 10 分へと大幅に短縮することに成功

した。

○また、同社では、①Supreme で集めた情報を電子メールや Web サイトで一般に発信する

「地震情報配信システム jishin.net」、②地震、風水害、新型インフルエンザなどの災害

情報を提供する「災害情報ステーション」、③災害時に社員の安否をメールと携帯電話で

確認する「社員向け安否確認システム」も、Ruby で構築している。

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≪バックボーンのトラフィック監視システム≫

㈱インターネットイニシアティブ

本社:東京都千代田区 資本金:14,295 百万円 従業員:1,687 名(連結)

○㈱インターネットイニシアティブは、インターネット接続から、セキュリティ、メール

システム、コンテンツ配信、データセンターおよびクラウドサービス等の各種アウトソ

ーシングサービス、システム構築、運用保守までをトータル・ネットワーク・ソリュー

ションを提供しているリーディング企業である。

○同社では、サービス管理システムなどを Ruby で構築している。

○また、バックボーンのトラフィック状態(通信されているデータ量やエラーの発生状況)

を調べるため、バックボーン上のルーターからデータを取り出してグラフ化する機能も、

Ruby でつくられている。

○トラフィック状態とは別に、通信データの内訳(通信先および通信元による分析)をグ

ラフ表示する機能も、Ruby で構成されている。

○外販用パッケージソフトにも Ruby を使用している。これは、ユーザのサービス基盤シ

ステムにおいて、障害が発生しているかどうかを監視するシステムである。このような

監視システムは一般に外国語表示のものが多いが、ユーザから「日本語表示にしてほし

い」との要望が多かったことから、同社では日本語と親和性の高い Ruby を利用した。

≪舶用プロペラ工場の生産管理システム≫

㈱システムズナカシマ

本社:岡山県岡山市 資本金:10 百万円 従業員:116 名

○㈱システムズナカシマは、舶用プロペラのトップメーカーであるナカシマプロペラ㈱の

新規事業として、自社製 CAD システム「ANDES」シリーズの開発・販売により起業し

た。グループの情報部門を担うとともに、CAD/CAM、GIS、Web システム、RFID 等

の技術を生かしたパッケージシステムから、提案型の営業/開発/運用までトータルサポ

ートを行っている。

○RubyWorld Conference 2010 では、Ruby と Flash を用いて船舶用プロペラ工場の“見

える化“を行う生産管理システムを発表した。

○このシステムでは、プロペラの加工を行った直後にその部署がハンディターミナルで作

業状況を入力することにより、プロペラが生産工程のどこにあるのか、どの程度の工数

をかけたのかを把握できる。

○また、プロペラの鋳造工程では、溶融した銅合金をプロペラ形状に造形した鋳型に流し

込む。ここで、鋳造品質を記録しているが、このデータも本システムで集約している。

○このシステムにおいては、ハンディターミナルとデータベースをつなぐミドルウェアと

して Ruby が利用されている。

○このシステムでサーバに収集されたデータは、各作業現場に設置されているモニターに

リアルタイムで映し出すことができるため、現場で直接状況確認することによる作業品

質の向上と、管理者による総合的な効率化と品質向上を支援する。

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≪図書館の基幹システム≫

㈱まちづくり三鷹

本社:東京都三鷹市 資本金:272 百万円

○㈱まちづくり三鷹は、中心市街地活性化法に基づくまちづくりを進める主体として設立

された第三セクターである。

○同社及び同社の IT 事業本部から独立した株式会社内に、Ruby を取り扱えるエンジニア

を 10 名程度有している。また、同社が事務局を担っている三鷹 ICT 事業者協会内にも

10数名のRuby技術者がいるほか、社外のパートナー約10名とも協力関係を持っている。

○この人材を活用し、約 70 万件の書誌情報をスムーズに検索できる技術を開発するなど、

Ruby で図書館の基幹システム全体を構築する技術を有している。このシステムは、先進

的な完全 Web 方式の採用により、複数の公共図書館や学校図書館などをインターネット

上で結び、一カ所のサーバで統合管理を行うこともできる。

○さらに、Ruby の開発効率の良さとライセンス料がかからないオープンソース・ソフトウ

ェアを活用し、図書館システムの受注額を従来から大幅に安く抑えることに成功した。

○同社は、システムを受注して構築する際は、発注者(自治体)の地元ベンダと共に作業

を行い、ソースコードも開示して保守業務を委託することで、地元企業にお金が還流す

るビジネスモデルを確立している。

○図書館システムのほかに子育て支援システムも Ruby で開発しており、これまでに計6

団体から受注を獲得している。

≪社内コミュニケーションシステムの実証実験≫

㈱日立ソリューションズ

本社:東京都品川区 資本金:38,372 百万円 従業員:10,387 名(単独)

○日立ソリューションズは、平成 21 年 12 月に Ruby センタを開設し、併せて松江事務所

内にも Ruby ラボを設置した。また、Ruby アソシエーションからシステムインテグレー

タの認定も受けるなど、大手 SIer の中でも Ruby に関して先進的な取組を展開している。

○同社では、Ruby の性能を検証するため、平成 20 年に、PHP で書かれた社内コミュニケ

ーションシステム(市販されている OpenPNE)と、それと同じ仕様を Ruby でつくった

ものを比較した。

○社内コミュニケーションシステムは、日記、メッセージ、コミュニティ、カレンダ、メ

ール等の機能で構成されており、同社での利用状況は、登録ユーザは約 5,000 名、ログ

インは 1 日当たり 550 回、ページビューは 1 日当たり 24,000PV であった。

○今回の 1 プロジェクトのみの結果では Ruby の性能について正確に評価することはでき

ないが、参考情報として検証結果が公表されている。それによると、システム全体の画

面数が 99 画面、計画からシステムテストまでの総工数が 8,119step であったことから、

平均すると 1 画面を 82step、6.4 時間でつくったことになり、本件においては開発効率

が高かったことが確認された。

○また、バグの修正に要する時間は平均で 1 件当たり約 2 時間、開発中の仕様変更への対

応時間も 1 回当たり約 4 時間であり、良好な結果を得ている。

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≪軽量 Ruby の組込みシステムへの適用≫

㈱福岡 CSK

本社:福岡県福岡市 資本金:200 百万円 従業員:119 名

○㈱福岡 CSK は、まつもとゆきひろ氏、九州工業大学 田中和明准教授、東芝情報システ

ム㈱とともに、経済産業省「平成 22 年度地域イノベーション創出研究開発事業」の採択

を受け、平成 22~23 年度に「軽量 Ruby を用いた組込みプラットフォームの研究・開発」

を実施している(予算額 1 億 4,000 万円)。

○その主要テーマとして、Web システムに適した言語体系であるとされてきた Ruby を、

組込みソフトで高速・安定的に動作させるために実装体系をスリム化した「軽量 Ruby」

の開発を行っている。軽量 Ruby は、通常の Ruby でつくったソフトでは容量が大きすぎ

てチップに搭載することができないため、まつもとゆきひろ氏の発案により軽量化の技

術を開発することとなった。

○この軽量 Ruby はユーザインターフェースやデータベースに利点がある。例えば、組込

みに適用する例として電子レンジの場合、次々に生み出され公表されている料理の新し

いレシピの膨大な情報を、ユーザにとって選びやすい状態に整理し、ユーザがそのレシ

ピを選択した時に素早く画像や文字情報をモニターに映し出すなど考えられる。

○本事業では、軽量 Ruby の開発と並行して、電子基板部品「Ruby チップ」等の試作開発

も進めている。

≪保険会社の数理計算の補助システム≫

アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ㈱

本社:東京都港区 従業員:約 800 名

○アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ㈱では、開発生産性や品質の向上の

ために、現場でもさまざまな工夫がおこなわれており、Ruby のグルー言語(システムと

システムをつなぐ言語)としての活用もその一例である。

○例えば、保険会社における数理計算のシステムで、Ruby を適用した事例がある。保険会

社には、アクチュアリと呼ばれる数理計算の専門家が膨大な数値データを処理する業務

があり、その数値データを、アクチュアリは Excel で、メインフレームは CSV で処理し

ていた。このため、両者の間でデータを変換が必要であり、この変換するシステムを Ruby

でつくりあげた。

○また、あるクライアントのバックエンドのシステムを取り扱った事例では、そのシステ

ムが多数のインターフェースを持っていたため、そのインターフェースにつながってい

る多数のデータベースの単体テストを繰り返しながら、システム全体を構築する必要が

あった。しかし、各インターフェースの開発状況やバージョン情報が他のインターフェ

ースの担当者に適切に伝達されていない場合もあり、システム全体の結合テストを円滑

に進めることが出来なかった。そこで、Ruby on Rails のマイグレーション機能とバー

ジョン管理ツールを活用し、システム全体の調整を図りながら、業務を遂行した。

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(2)行政システムでの Ruby 利用

自治体においては、平成 19 年頃から、島根県、松江市、独立行政法人情報処理推進

機構(以下「IPA」という。)の主導により実績が徐々に誕生し始めている。平成 19 年

度には IPA の公募事業として松江市の医療・介護の高額合算システムを Ruby で開発し

たプロジェクトがある。このプロジェクトは、松江市に本社を置く㈱テクノプロジェク

トを中心に数社がコンソーシアムを組んで受託し、Ruby による基幹業務開発の信頼

性・安定性とそこでの生産性の測定が行われ、問題が無いことが実証された。

また、島根県は、県内 IT 企業の高度化と集積を推進することを目的とする「しまね

IT 産業振興事業」に取り組んでおり、Ruby を軸とした技術研究・システム開発による

技術力の向上を図るとともに、効果的な人材育成、情報発信を行っている。

この「しまね IT 産業振興事業」では、「IT 人材育成支援事業」、「実践型 OSS 開発人

材育成事業」など 10 種類の事業が実施されており、そのうち「Ruby 利用開発促進事業」

において、県の基幹業務システムに Ruby を導入するプロジェクトが展開されている。

(資料)島根県産業振興課情報産業振興室のホームページ

しまね IT 産業振興事業

松江市の医療・介護の高額合算システムの概要

(資料)㈱テクノプロジェクト「自治体システムでの Ruby 活用の可能性について」

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島根県の個々の業務システムでは、「iOFW(Integrated Open Framework)」という

名称の共通の業務統合基盤の上で稼動しているものがある。平成 22 年度からその改修

を行うことを機に、その業務統合基盤の上で稼動する Ruby によるシステムの研究開発

が推進されている。

前ページのような構想のもと、島根県では、iOFW の改修に先立って、その上で稼動

する Ruby によるシステムの研究開発の実証事業として、中小企業近代化資金特別会計

システムを Ruby で構築する事業を実施した。

この結果、Ruby には信頼性、機能性、実用性において問題となる欠落点はなく、自

治体システムを Ruby で開発できることが実証された。

さらに、平成 22 年 11 月までに iOFW にかかる 13 種類の業務システムの開発業務が

公募され、このうち 12 業務が Ruby を提案した地元企業により落札された。落札され

たシステムの内訳は、「人口移動調査システム」、「恩給システム」などであり、この事業

を通じて、自治体の業務基幹系システムを Ruby で構築できるという実績がつくりあげ

られるとともに、そこで得られた技術やノウハウが地元に蓄積される見通しである。

(資料)島根県「島根県電子県庁推進計画(平成 22年度)」

島根県における情報通信システムの整備・改修計画

(資料)しまね Ruby Enterprise コンソーシアム「中小企業近代化資金特別会計システム評価報告書」

中小企業近代化資金特別会計システムの概要

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- 13 -

平成 22年度 iOFW 業務システム開発における Ruby の利用状況

(資料)島根県「業務システム開発における Ruby の利用について」

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- 14 -

3.Ruby 市場規模の推計

IPA が実施した「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」(平成 21

年度)によると、「アプリケーション開発(ツール)として利用される OSS の利用率・利

用意向率」は下表の通りであった。

このうち「現在利用」の欄をみると、「Ruby」との回答は 146 件、「Ruby on Rails」は

82 件であった。「現在利用」の総回答数は 4,467 件であることから、「Ruby」と「Ruby on

Rails」を合計した 228 件の構成比は 5.1%となる。

一方、「今後利用」の欄をみると、「Ruby」との回答が第 1 位の 84 件、「Ruby on Rails」

が第 2位の 74件となっている。「今後利用」の総回答数は 1,072件であることから、「Ruby」

と「Ruby on Rails」を合計した 158 件の構成比は 14.7%となる。

このように、アプリケーション開発で利用される OSS において、Ruby の占める割合は

5.1%から 14.7%へと大幅に拡大する見通しとなっている。

アプリケーション開発(ツール)として利用される OSS の利用率・利用意向率

(資料)IPA「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」

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「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」では、前ページの結果を

利用して、期待成長倍率分布を算出している。

期待成長倍率とは、「現在利用している」とした回答数に対する、「現在利用していない

が、今後利用する」とした回答数の比率であり、期待成長倍率が 1 であれば、現在の利用

者と同じだけの利用意向を持つ潜在的な利用者がいることを示す。

この分布図をみると、「Ruby」と「Ruby on Rails」は、「利用規模が大きく着実に拡大

中」というグループに含まれている。

期待成長倍率分布

(資料)IPA「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」

また、本事業のアンケート調査において中国地域の IT ベンダ企業に平成 21 年度の IT

関連売上高と Ruby に関する売上高を尋ねたところ、98 社から回答があった。

IT 関連売上高の「合計」は、41,606 百万円(1 社当たり 425 百万円)であった。

また、Ruby に関連する売上高(注)の「合計」は 490 百万円(1 社当たり 5 百万円)で

あり、この内訳は「開発業務」413 百万円、「運用・保守業務」26 百万円、「その他 IT 関連」

51 百万円であった。

(注)僅かでも Ruby のソースコードを含むものの売上高。

平成 21年度の IT 関連売上高と Ruby に関する売上高 (単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

18,528 413

(44.5) (1.0)

10,743 26

(25.8) (0.1)

12,335 51

(29.6) (0.1)

41,606 490

(100.0) (1.2)(注)回答者数98社。

開発業務

運用・保守業務

その他IT関連

合計

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前ページの売上高の「合計」だけ回答し、「開発業務」などの内訳は回答しなかった企業

を含めて集計すると、IT 関連売上高は 55,644 百万円、Ruby に関する売上高は 493 百万

円であった。なお、Ruby に関する売上実績があった企業は 11 社であった。

平成 23 年度について上表と同じ要領で集計すると 91 社から回答があり、IT 関連売上

高は 42,444 百万円、Ruby に関する売上高は 1,094 百万円であった。なお、Ruby に関す

る売上見込額の回答があった企業は 11 社であった。

平成 21 年度と平成 23 年度の Ruby に関する売上高を両方とも回答した企業は 90 社で

あった。

その合計額をみると、平成 21 年度は 438 百万円、平成 23 年度は 1,094 百万円と、約

2.5 倍に増加する見通しとなっている。

以上のように、「第 3 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」および本

事業のアンケート調査結果とも、今後 Ruby の利用が順調に拡大する見通しとなっている。

IT 関連及び Ruby に関する売上高

(単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

55,644 493

(100.0) (0.9)(注)回答者数105社。

合計

平成 23年度の IT 関連と Ruby に関する売上高

) (単位:百万円、%)

IT関連売上高

Rubyに関する売上高

42,444 1,094

(100.0) (2.6)(注)回答者数91社。

合計

平成 21年度と平成 23年度の Ruby 関連の売上高

) (単位:百万円)

平成21年度 平成23年度

438 1,094

( - ) (2.5倍)

(注)回答者数90社。

Rubyに関する売上高

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4.Ruby 人材、企業分布

Ruby アソシエーションからシステムインテグレータの認定を受けた企業は、平成 22 年

12 月時点で 29 社である。

都道府県別の企業数では、「東京都」10 社、「島根県」5 社、「大阪府」5 社などとなって

おり、現時点ではこれら 3 都府県が 7 割弱を占めている。

システムインテグレータ認定制度の立ち上げ当初は、「東京都」の企業が多かった(表の

上位に「東京都」が並んでいる)が、最近は「広島県」、「島根県」、「長野県」、「石川県」

など地方の県が多くなっており(表の下位に地方の県が並んでいる)、システムインテグレ

ータを認定する動きが、大都市圏から地方圏へ徐々に広がりつつある。

Ruby アソシエーション認定システムインテグレータ

No 企業名 所在地 資本金

1 ㈱ネットワーク応用通信研究所 島根県 24

2 伊藤忠テクノソリューションズ㈱ 東京都 21,763

3 ㈱万葉 東京都 13

4 ㈱アールラーニング 東京都 41

5 ㈱コスモウェーブ 福岡県 10

6 ㈱日立ソリューションズ 東京都 38,372

7 ㈱ゼネット 東京都 41

8 ㈱アクティブネットワーク 大阪府 25

9 ㈱アーチ 東京都 80

10 ㈱北見コンピューター・ビジネス 北海道 20

11 ㈱DTS 東京都 6,113

12 ㈱BSC 大阪府 50

13 ㈱ジェイテック 大阪府 30

14 ㈱サンフレックス 東京都 10

15 ㈱テクノプロジェクト 島根県 100

16 日本アイティディ㈱ 福島県 55

17 ㈱永和システムマネジメント 福井県 61

18 ㈱ケイビーエムジェイ 東京都 448

19 ㈱ファインディックス 東京都 40

20 リバティ・フィッシュ㈱ 大阪府 8

21 ㈱サイバーミッションズ 神奈川県 0.5

22 ㈱ケイケンシステム 長野県 75

23 ㈱ワコムアイティ 島根県 49

24 ㈱プロビズモ 島根県 99

25 シーエスエヌ㈱ 石川県 58

26 ㈱コルモ 大阪府 10

27 ㈱富士通長野システムエンジニアリング 長野県 200

28 ㈱マツケイ 島根県 25

29 ㈱アイヒデコーポレーション 広島県 3

(資料)Ruby アソシエーションのホームページより作成

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「ちゅうごく地域 Ruby ビジネスフォーラム」(平成 22 年 8 月開催分)の資料では、中

国地域における Ruby 技術を有する企業として、下図の 50 社が紹介されている。

県別の企業数をみると、「島根県」が 31 社と突出しており、次いで「広島県」11 社、「鳥

取県」4 社、「岡山県」3 社、「山口県」1 社の順であった。

本事業のアンケート調査で新たに把握した Ruby 技術者を有している企業を追加すると、

合計で 70 社となった。特に、新たに把握した企業数は、「広島県」13 社、「岡山県」5 社

などとなっており、島根県以外でも Ruby 技術の習得に向けた動きが広まっている様子が

理解できる。

(単位:社)Rubyビジネス活用研究会

本調査 合計

島根県 31 0 31松江市 22 0 22出雲市 6 0 6浜田市 2 0 2益田市 1 0 1

鳥取県 4 1 5鳥取市 1 0 1八頭町 1 0 1米子市 2 1 3

岡山県 3 5 8岡山市 3 4 7倉敷市 0 1 1

広島県 11 13 24広島市 9 12 21福山市 1 0 1呉市 1 0 1東広島市 0 1 1

山口県 1 1 2宇部市 0 1 1下松市 1 0 1

合計 50 20 70

中国地域における Ruby 技術を有する企業

中国地域における Ruby 技術を有する企業

(資料)中国経済産業局「ちゅうごく地域 Ruby ビジネスフォーラムの取組みについて」

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本事業で実施した中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、IT 技術者数を尋

ねたところ 123 社から回答があり、総人数は 3,413 人(1 社当たり 27.7 人)で、このう

ち Ruby 技術者(注)は 142 人(同 1.2 人)、Ruby 技術者認定資格保有者は 33 人(同 0.3

人)であった。

(注)業務として Ruby を一部にでも利用している IT 技術者。

Ruby 技術者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 93 社(構成比 75.6%)を占め

ており、約 4 分の 3 の企業では Ruby を扱える人材がいないと思われる。

一方、Ruby 技術者数が 1 人でもいる企業は約 4 分の 1(同 24.4%)であり、そのうち

「16~20 人」と「21~30 人」との回答がそれぞれ 1 社みられた。このように、Ruby への

取組状況には企業間で大きな違いがみられる。

なお、Ruby 技術者認定資格保有者数の分布状況をみると、「0 人」との回答が 95.9%を

占めており、1 人でもいる企業は 4.1%であった。

Ruby 技術者の人数に関する充足感を尋ねたところ 122 社から回答があり、「必要ない」

との回答が 50 社(構成比 41.0%)、「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 40.2%)

を占めた。

また、Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感を尋ねたところ 116 社から回答があり、

「どちらともいえない」との回答が 49 社(同 42.2%)、「必要ない」との回答が 46 社(同

39.7%)を占めた。

このように、現時点では、Ruby 技術者の人数や技術レベルについて、ニーズをあまり

感じていない企業が全体の約 8 割を占めている。

Ruby 技術者数 Ruby 技術者認定資格保有者

Ruby 技術者の人数に関する充足感 Ruby 技術者の技術レベルに関する充足感

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 93 75.61~5人 22 17.96~10人 6 4.911~15人 0 0.016~20人 1 0.821~30人 1 0.8

合計 123 100.0

(単位:社、%)技術者数 回答数 構成比

0人 118 95.91~5人 3 2.46~10人 1 0.811~15人 1 0.816~20人 0 0.021~30人 0 0.0

合計 123 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

必要ない 50 41.0どちらともいえない 49 40.2かなり不足している 7 5.7不足している 6 4.9十分足りている 5 4.1足りている 5 4.1合計 122 100.0

(単位:社、%)回答数 構成比

どちらともいえない 49 42.2必要ない 46 39.7不満である 8 6.9満足している 6 5.2かなり不満である 4 3.4十分満足している 3 2.6合計 116 100.0

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5.Ruby 標準化の動き

Ruby は平成 17 年頃から世界的に利用が急速に拡大したものの、国内あるいは国際的に

承認された言語の標準仕様書はない。このため、言語の標準化により、より一層利用しや

すい環境を整備する必要があると考えられるようになった。

このような状況の下、平成 20 年から IPA を主体として、国内および国際規格化を目的

とする Ruby の標準化が進められてきた。特に、国際的な標準化を実現することは、日本

発の言語が世界に認められたことを示すことでもある。

先ず、国内規格である JIS 化の作業から開始され、平成 20 年 11 月には IPA に Ruby

標準化検討 WG が立ち上げられた。この WG は、JIS 原案の作成母体となる組織であり、

委員長には筑波大学の中田育男名誉教授が就任し、委員にはまつもとゆきひろ氏を含む

Ruby 言語開発者から 4 名、ユーザ企業から 4 名、学識経験者等 4 名が就任した。

それから約 1年後の平成 21年 11 月に約 300 ページの英語版の標準仕様書のバージョン

1(ドラフト v1)が完成した。このドラフトは、現在最も広く普及している Ruby1.8 系を

もとに仕様が成文化されている。

平成 21 年 12 月から平成 22 年 1 月にかけ、ドラフト v1 を全世界の Ruby コミュニティ

に公開し、広くコメントを募集した。この結果、100 件を超えるコメントが国内外から寄

せられ、それらを反映した英語版の標準仕様書が同年 2 月に完成した。

同じく 2月に日本語版の JISドラフトが完成し、5月にJIS原案を規格協会に提出した。

その後、6 月から 7 月までの 2 カ月間で、規格調整委員によるレヴューを 3 度にわたって

実施し、平成 22 年 8 月に JIS 原案が完成した。

現在、平成 22 年度末までに JIS として制定されることを目指し、JIS 化の手続きが実

施されている。

前述の通り、国内規格である JIS 化が実現された後には、国際規格である ISO としての

制定を目指した取組が開始される予定である。

これまでの Ruby の標準化に向けた取組

2008.11 IPA に Ruby 標準化検討委員会を設置

2009.11 英語版ドラフト v1 完成

2009.12-2010.1 Ruby コミュニティに公開し、コメント受付

2010. 02 コメントを反映した英語版の標準仕様書が完成

2010.02 日本語版 JIS ドラフト作成

2010.04 ニューヨークにて概要説明

2010.05 JIS 原案を規格協会に提出

2010.06 規格調整委員によるレヴュー(1)

2010.07 規格調整委員によるレヴュー(2)

2010.07 規格調整委員によるレヴュー(3)

2010.08 JIS 原案完成

(資料)筑波大学名誉教授 中田育男氏 RubyWorld Conference の講演資料をもとに作成

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6.Ruby の性能向上について

Ruby の課題の一つとして、インタープリタであるため処理速度が遅いことがしばし

ば指摘されていた。

しかし、平成 19 年 12 月に発表された Ruby1.9 系列では、東京大学の笹田耕一氏が

開発した仮想マシンである「YARV」が搭載されたことで、処理速度が大幅に向上した。

YARV は、Ruby プログラムを中間コード(YARV バイトコード)にコンパイルし、

最適化を施したうえで、スタック・マシン型の仮想マシンにより実行する。

処理速度向上の仕組みの一例として「インライン・メソッド・キャッシュ」がある。

このキャッシュは、メソッドの指示に従って検索した結果(変数の具体的な値など)を

保存するもので、命令列の中に配置されおり、同一の検索が繰り返される場合に、当該

キャッシュに検索結果を問い合わせるだけでよいため、処理時間を短縮できる。

今後の Ruby に関する研究開発の要素の一つとして、マルチコアなどの並列計算機に

対応するための Ruby の並列化がある。将来的には、並列処理を意識しなくても Ruby

を使える、つまり普通に Ruby を使っている最中に実は裏側で並列処理が実行されるこ

とが理想である。その際、言語レベルか言語処理系レベルかに分けて検討する必要があ

る。

現時点では、Ruby の開発は開発コミュニティが無償で協力している状況である。開

発コミュニティが今後も安心して開発に取り組めるように、開発支援などの環境を整え

ることも Ruby を持続的に発展させるためには重要である。

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Ⅲ.Ruby の可能性と課題について

1.ビジネス利用の可能性

本事業のアンケート調査とヒアリング調査および文献資料により、Ruby のメリットを

IT ベンダ側とユーザ側に分けてまとめると、下表の通りである。

このようなメリットを活かし、IT ベンダの中にはユーザに以下のような提案を展開し、

Ruby に関するビジネスの開拓に取り組んでいる企業もみられる。

○ライセンス料のかかるソフトウェアを導入しているユーザに、フル OSS でライセ

ンス料のかからないシステムを提案。

○リスクのある事業展開を検討している企業に、最初は小さいシステムを安価につく

り、成果を確認したうえでシステムを徐々に拡張する手法を提案。

○プロトタイプのソフトウェアをユーザにパソコンで持ち込み、商談の中で改良しな

がら顧客ニーズを実現した質の高いサービスを提供することができる。

IT ベンダ側とユーザ側のメリット

◇調達コストを削減できる ◇導入コスト、保守コストを低減できる

OSSであるためライセンス料が不要。コスト意識の高いユーザに提案しやすい。

OSSであるためライセンス料が不要。パソコン使用台数の多いユーザほど、コスト削減効果が顕著。

◇開発期間が短い ◇開発期間が短い

(a)記述量が尐ない、(b)Webアプリケーションフレーム

ワークでRuby on Railsの利用などから開発期間を短縮できる。

開発期間が短いため、短期間でのサービス開始が可能となる。

◇開発しながら修正や改良がしやすい ◇最適なシステムへの要求を盛り込みやすい

(a)コンパイルが不要である、(b)尐ない記述量(クラスの継承など)で機能を拡張できる、ことなどから修正や改良を短期間で行える。

機能の拡張性が高いため、仕様変更に柔軟に対応できる。

◇プログラマーにとって利用しやすい ◇最初は小さく、徐々に大きくできる

Rubyは、英語に近い文法であり直感的に理解しやすいことなどからプログラマーにとって利用しやすい。

機能の拡張性が高いため、最初はリスクを回避するため小さいシステムでスタートさせ、成果があることを確認した後にシステムを大きくできる。

◇様々な処理系での実装

MRI(Matz' Ruby Implementation) 、YARV、JRuby、

IronRubyなどで実装。

◇優位性のある機能が標準装備されている

(a)日本語の処理に適している(JISコードに対応)、(b)

テキストデータ(文字データ)の処理に適している、など優位性のある機能が標準装備されている。

◇習得しやすい

JavaやPHPを習得しているエンジニアにとって、Ruby

は短期間で習得できる。

◇堅牢なシステムが構築可能 ◇堅牢なシステムが構築可能

Ruby on Railsが提供するセキュアな機能と、開発規約を用いてセキュアな実装を徹底することで、堅牢なシステムを構築できる

Ruby on Railsが提供するセキュアな機能と、開発規約を用いてセキュアな実装を徹底することで、堅牢なシステムを構築できる

◇信頼性が確保されている ◇信頼性が確保されている

国内及び国際規格化を目的とするRubyの標準化の動き。 国内及び国際規格化を目的とするRubyの標準化の動き。

◇先進性をアピールできる日本発の言語として注目を集めているRubyを提案することで、先進性をアピールできる。

ユーザ側のメリット

コスト

開発のスピード・生産性

開発の自由度

ITベンダ側のメリット

人材育成

信頼性

その他

標準機能

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本事業で実施した中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、Ruby を利用した

ソリューション展開のターゲット業種について質問した。

その結果、「現在」に関しては 90 社から回答があった。このうち「特にターゲットを設

定していない」との回答が 60 社(構成比 66.7%)、「官公庁」との回答が 18 社(同 20.0%)

を占めた。

また、「平成 23 年度」の見通しに関しては 88 社から回答があり、これについても「特

にターゲットを設定していない」との回答が 57 社(同 64.8%)、「官公庁」との回答が 22

社(同 25.0%)を占めている。

このように、ターゲット業種については、「官公庁」を除いては特に絞り込むことなく全

方位的な対応をしている企業が多く、当面は「官公庁」による発注が Ruby の市場を牽引

する状況が続くとの見方が多い。

Ruby を利用したソリューション展開のターゲット業種(複数回答)

6.8

0.0

0.0

1.1

3.4

1.1

2.3

2.3

2.3

3.4

6.8

5.7

25.0

64.8

10.0

0.0

0.0

1.1

1.1

1.1

2.2

2.2

2.2

3.3

5.6

6.7

20.0

66.7

0 10 20 30 40 50 60 70

その他

化学・医薬品

電力・ガス・石油

鉄鋼・非鉄金属

電気機器・精密機械

金融・保険

建設

輸送機器・機械

通信

食品

学校

流通・小売

官公庁

特にターゲットを設定していない

(%)

(回答者数) 現在    90社 平成23年度 88社

現在 平成23年度

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同じく中国地域の IT ベンダ向けアンケート調査において、Ruby を利用した IT ソリュ

ーションのターゲットについて質問した。

その結果、「現在」に関しては 52 社から回答があり、このうち「Web サイト(情報発信)」

との回答が 30 社(構成比 57.7%)を占めた。次いで、「購買・販売管理」と「グループウ

ェア」がともに 10 社(同 19.2%)となっている。

「平成 23 年度」に関しては 57 社から回答があり、ここでも「Web サイト(情報発信)」

が 36 社(同 63.2%)と過半を占めている。このことから、今後も、Ruby を利用した IT

ソリューションとしては、Web サイトが中心的な位置を占めるとともに、さらに拡大する

可能性も考えられる。

なお、平成 23 年度の構成比が現在より高まっている項目としては、「顧客情報管理・分

析」と「経営情報管理・分析」などがみられる。このように、Ruby を利用した IT ソリュ

ーションとしては、各種情報の管理や分析についても期待が高まっていると思われる。

Ruby を利用した IT ソリューションのターゲット(複数回答)

0.0

3.5

5.3

7.0

12.3

7.0

7.0

8.8

10.5

7.0

12.3

12.3

17.5

21.1

17.5

21.1

63.2

1.9

3.8

7.7

7.7

7.7

9.6

9.6

9.6

9.6

11.5

11.5

11.5

15.4

15.4

19.2

19.2

57.7

0 10 20 30 40 50 60 70

財務会計

管理会計

セキュリティ運用

引合・営業

経営情報管理・分析

生産管理

ネットワーク運用

アプリケーション保守

人事・給与・勤怠管理

物流

ネットワーク構築

在庫管理

システム運用

顧客情報管理・分析

グループウェア

購買・販売管理

Webサイト(情報発信)

(%)

(回答者数) 現在    52社 平成23年度 57社

現在 平成23年度

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中国地域の自治体向けアンケート調査において、「現在」Ruby を僅かでも利用している

システムについて尋ねたところ 7 団体から回答があり、「住民・企業サービス(ホームペ

ージ)」(4 団体、構成比 57.1%)など、インターネットを利用した住民・企業サービスに

関する項目が上位にみられる。

「今後」Ruby を導入する余地があると思われるシステムについて尋ねたところ 11 団体

から回答があり、「職員サービス(庶務事務)」と「職員サービス(グループウェア)」がと

もに 8 団体(同 72.7%)を占めており、職員に関連する分野での利用拡大の可能性がある。

0.0

72.7

72.7

63.6

27.3

18.2

27.3

18.2

18.2

27.3

27.3

36.4

18.2

36.4

36.4

27.3

45.5

27.3

27.3

36.4

36.4

36.4

36.4

63.6

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

14.3

14.3

14.3

14.3

14.3

28.6

28.6

57.1

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

その他

職員サービス(グループウェア)

職員サービス(庶務事務)

職員サービス(文書管理)

個別業務(商工・農林水産)

個別業務(土木・建築・上下水道)

個別業務(医療・福祉・介護)

基幹業務(住民・戸籍)

基幹業務(税務・保険・年金)

基幹業務(財務会計)

基幹業務(人事給与)

基幹業務(統計)

基幹業務(その他)

全庁基盤関連(ユーザー認証)

全庁基盤関連(稼動管理)

全庁基盤関連(その他全庁基盤関連)

住民・企業サービス(施設予約・図書館)

住民・企業サービス(電子調達)

職員サービス(統合型GIS)

職員サービス(その他職員サービス)

個別業務(その他個別業務)

住民・企業サービス(電子申請・電子申告)

住民・企業サービス(その他住民・企業サービス)

住民・企業サービス(ホームページ)

今後 現在

(回答者数) 現在  7団体

 今後 11団体

(%)

現在 今後

Ruby について、現在利用しているシステム、今後利用する可能性のあるシステム(複数回答)

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2.可能性実現における課題

本事業のアンケート調査とヒアリング調査および文献資料により、Ruby のデメリット

を IT ベンダ側とユーザ側に分けてまとめると、下表の通りである。

頻繁に聞かれたデメリットとしては、保守に関して、「OSS であるため、問題が発生し

た場合の責任を誰が取るのかという質問を、ユーザから迫られることがある」というもの

であった。また、開発に関しては、ライブラリやサンプルコードが尐ないこととの指摘が

複数あった。

一部の企業からは、「エンジニアが尐ないため、Ruby の業務を突然受注した時、人手が

足りないことがある」との指摘もあった。

IT ベンダ側とユーザ側のデメリット

◇ライブラリの整備が不十分

ライブラリの更なる拡充が必要である。また、メンテナンスされていないライブラリも多く、使用している環境によっては動かない場合もある。

◇コーディングなどの情報量が尐ない

JavaやPHPなどに比べてコーディングに関する情報

(Web上で公開されているサンプルプログラムなど)が尐ない。

◇手引書が尐ない

JavaやPHPなどに比べて開発手引書が尐ない。特に、初心者に標準的な記述法を分かりやすく解説する手引書が尐ない。

◇Windowsとの親和性が低い

Windowsとの親和性が低い。特にIE6など、画像処理関連での親和性が低い。

◇デプロイして運用する際のインフラが未整備

Javaに比べると、デプロイして運用する際のインフラが整備されていない。

◇実効速度が遅い ◇実効速度が遅い

インタープリタ言語であるため、実効速度が遅い。特に大量のアクセスが集中した時に、実効速度が遅くなることがある。

インタープリタ言語であるため、実効速度が遅い。特に大量のアクセスが集中した時に、実効速度が遅くなる。

◇共同作業やメンテナンスを行いにくい ◇サポートに対する不安がある

記述法が標準化されておらず、プログラマーによってコーディングに個人差があるため、共同作業やメンテナンスを行いにくい。

OSSであるため、問題が発生した時のサポートに不安がある。

◇バージョンアップの対応が不十分 ◇稼動環境のバージョンアップが難しい

1.8系から1.9系へのバージョンアップが大幅なものであったため、既納ユーザーへの対応が必要となる場合があるまた、今後のバージョンアップの計画に関する情報も不足している。

Rubyの稼動環境のバージョンアップにより、既存システムが稼動しなくなるケースがあるなど、リスクが存在する。

◇管理する言語の数が増える ◇管理する言語の数が増える

開発言語が増えることで、システム開発の管理の負担が増える。また、複数の開発言語に対応した技術者を準備する必要がある。

Rubyでつくられたシステムが加わると、ユーザ側が管理する言語が増えるため、担当者の負担が大きくなる。

◇ユーザの間でRubyの知名度が低い ◇導入事例の情報発信が不足している

ユーザの間でRubyの知名度が低いため、ユーザからの信頼を得にくい。

Web系・業務基幹系とも、導入事例(特に有名で信頼感のある大手ユーザの事例)の情報発信が不足している。

◇基幹業務系での開発実績が尐ない ◇基幹業務系での開発実績が尐ない

基幹業務系での開発実績が尐なく、ITベンダにとっても未知の領域が多いため、計画的な業務遂行に不安が残る。

基幹業務系での開発実績が尐ないため、実効性能等に不安が残る。

◇エンジニアが不足している ◇ユーザ側の人材が不足している

Rubyに精通したエンジニアが不足しているため、開発に必要な人数を確保できなかったり、サポートが手薄になるケースがみられる。

ユーザ側に、仕様書を作成したり、ITベンダの提案を理解したり、検収を行ったりできる人材がいない。

ユーザ側のデメリット

開発

実績情報

人材

実効速度

保守

ITベンダ側のデメリット

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Ⅳ.Ruby 拠点の在り方について

1.検討委員会の開催

中国地域における Ruby 拠点の検討のために、検討委員会を設置し、拠点として必要と

される機能、体制等についての検討を行った。

検討委員会は、中国地域内外の IT ベンダ企業、産業支援機関等 Ruby に関して知見を有

するメンバーで構成し、計 3 回実施した。

(1)検討委員会

第 1 回検討委員会 平成 22 年 10 月 7 日 委員 5 名、オブザーバ 5 名

(事務局を除く。以下同様)

第 2 回検討委員会 平成 22 年 12 月 9 日 委員 5 名、オブザーバ 9 名

第 3 回検討委員会 平成 22 年 12 月 10 日 委員 5 名、オブザーバ 8 名

中国地域 Ruby 拠点形成可能性検討委員会名簿

氏 名 所属・職名等

委 員 長 井上 浩 株式会社ネットワーク応用通信研究所 代表取締役社長

委 員

澤田 盛繁 財団法人しまね産業振興財団 参事

正村 勉 株式会社日立ソリューションズ

技術開発本部 本部長 Ruby センタ センタ長

田代 秀一 独立行政法人情報処理推進機構

オープンソフトウェア・センター センター長

吉岡 宏 株式会社テクノプロジェクト 代表取締役社長

オブザーバ

前田 修吾 合同会社 Ruby アソシエーション 副理事長

鶴原 隆一 株式会社テクノプロジェクト Ruby ビジネス推進室

コンサルタント

松本 新吾 島根県 商工労働部 産業振興課 情報産業振興室 室長

杉原 健司 島根県 商工労働部 産業振興課 主任

田中 哲也 松江市 産業経済部 次長

角田 泰男 松江市 産業経済部 企業支援課 係長

川上 貴史 松江市 産業経済部 企業支援課 副主任

野田 哲夫 国立大学法人島根大学 総合情報処理センター長

安田 征司 財団法人しまね産業振興財団 IT 産業支援室 主任

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2.拠点形成の意義について

(1)地域 IT ベンダ企業が目指す方向性

これまで述べてきたように、近年、Web アプリケーションだけなく企業等の基幹業務シ

ステムでの利用が広がり、特に「経済のサービス化」が進む中で、顧客ニーズ指向型のサ

ービスを実現する言語として評価が高まっている。また、組込み分野での利用検討も始ま

り、行政等での率先利用、支援も行われる中でビジネスでの一層の利用拡大が見込まれて

いる。更に、国際標準化に向けた JIS 原案が策定されるなど標準化に向けた動きがある。

Ruby は、開発生産性が高く、顧客の要望に合わせて柔軟にプログラムを変更できると

いう特徴を持ち、Web アプリケーションの開発に向いているため、クラウドでのサービス

提供に適していると考えられる。また、その特徴により、ユーザに対して短期間でプロト

タイプを提示し、ユーザのニーズに対応した質の高いサービスの提供が可能となる。質の

高い独自のソリューションを短期間で提供することが、地域・中小 IT ベンダ多重下請け

構造から脱却するための一つの方法であると考えられる。Ruby はそのための大きな武器

となる可能性がある。

つまり、Ruby の利用、その他 OSS の普及、クラウドの広がりによって IT サービスが

低コストで提供できるようになり、実現されるサービスの質の差が IT ベンダ企業の優务

を決める重要な要因となっている。こうした中で、地域の IT ベンダ企業は Ruby の特徴を

活かすことで顧客のニーズを的確に捉え、また、ニーズの変化に柔軟に対応できるサービ

スを提供し続けることで、新たな時代におけるビジネス機会の創出が実現できる。

(2)Ruby をビジネス利用するための課題

アンケート結果、「Ⅲ.Ruby の可能性と課題について」、及び平成 21 年度に実施した「ち

ゅうごく地域 Ruby ビジネス活用研究会」などから Ruby をビジネスで利用する際の課題

として、「サポート体制の不安」、「利用に際する情報の不足」、「標準化(仕様)の維持体制

の安定性」、「言語の開発体制の安定性」、「Ruby エンジニアの不足」、「高度な人材育成体

制の不安」、「認知度の低さ」が挙げられる。

これらの現状及び課題を踏まえて、Ruby の開発者である「まつもとゆきひろ」氏が在

住し、Ruby の開発実績を有する企業が集積し、Ruby のビジネスとコミュニティの橋渡し

をする合同会社 Ruby アソシエーションがある島根県松江市を中心とした中国地域を核と

して、Ruby の情報・人材・技術が集まる拠点を形成することで、Ruby の普及と発展が加

速することが期待できる。Ruby が普及・発展することにより、IT 市場における Ruby の

市場が拡大し、もって Ruby 拠点を形成する企業及び拠点への地理的アドバンテージを有

する地域 IT 企業のビジネス機会の増大、Ruby を利用するユーザ企業の競争力強化を図る

ことが望ましい。

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3.Ruby 拠点の体制について

Ruby 拠点の実現には、中国地方を核として持続可能な「Ruby Eco System」を構築し、

Ruby の普及と発展のために島根県松江市を拠点に活動する Ruby アソシエーションの基

盤を強化することをもって、Ruby 関連のプロジェクトやコミュニティ、ビジネスの関係

を強化し、エンタープライズ領域における Ruby の利用に関する諸課題の解決に取り組む

体制を整備することが望まれる。特に Ruby はオープンソースのプログラミング言語であ

るという性格上、Ruby コミュニティとの関係に配慮した体制を構築していくことが必要

となることからも、Ruby アソシエーションを中心とした拠点形成が相応しい。

「Ruby Eco System」概念図(出典:Ruby アソシエーション HP)

こうした拠点を構築し、持続可能な一定の収益規模を実現するためには、Ruby アソ

シエーションと、その活動に賛同する企業の協調・協働関係が極めて重要になる。具体

的には Ruby アソシエーションが直接実施する事業と、賛同する企業が実施する事業の

機能を分化すべきである。

この場合、Ruby アソシエーションが直接実施する事業は、受益者が一部の企業等に

限定されるのではなく、不特定多数の多くの企業、Ruby 利用者に向けて、言わば世界

に向けて実施することが望まれる。

また、賛同する企業が事業実施することで得る収益の一部が Ruby アソシエーション

を通じて、開発コミュニティや、自社を含めた Ruby をビジネス利用する企業に還元さ

れることで、更なる Ruby の発展とビジネス市場の成長を果たすことが期待される。

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Ruby アソシエーション事業と認定事業者事業

(1)Ruby アソシエーションの基盤強化

現状 Ruby アソシエーションは、LLC(Limited Liability Company、合同会社)であ

り、コミュニティに対する影響力、認知度は高いが、運営体制などが脆弱という課題があ

るため、前述の Ruby アソシエーションの理念に基づきより公益性の高い法人にすること

が望ましい。Ruby アソシエーションが Ruby のビジネス利用における課題を解消する事

業を行うことで、IT 市場への好影響を与えるとともに、幅広い Ruby 普及の活動をするこ

とができる。

(2)必要とされる機能

①Ruby アソシエーションの取り組み

(a) 情報発信、交流の場の創出

Ruby に関する理解を拡げるための情報を収集、編集し、提供する。また、Ruby

の技術コミュニティ、アプリケーション開発者、Ruby 利用企業などが交流する場

(例:RubyWorld Conference)を創出する。

(b) Ruby 開発支援

開発コミュニティが安心して Ruby の開発に従事できる環境を提供し、活動を支援

する。

(c) Ruby のビジネス利用支援

Ruby の標準仕様の維持と、域内企業と協力し、Ruby の開発環境、サポートサービ

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ス等を提供することで、Ruby がよりビジネス利用時に魅力的な言語となるよう環境

を整備する。

②その他の取り組み

(a) R&D 機能

(b) 高度人材の養成

Ruby 拠点概念図

その他の取り組みの「(a) R&D 機能」及び「(b) 高度人材の養成」については、実施主

体、実施内容など今後検討を要する。

(3)具体的な取り組み

より公益性の高い法人となった Ruby アソシエーションは、現在の合同会社 Ruby アソ

シエーションの事業(Ruby 技術資格認定制度等)を継承するとともに、以下の事業に取

り組む。

具体的な事業としては、大きく以下の 3 事業を実施する。

①Ruby アソシエーション協賛制度

多くの Ruby を利用する IT ベンダ、ユーザ企業及び個人が協賛金によって Ruby アソ

シエーションを支える仕組みを目指す。協賛金は多くの企業、ユーザが賛同しやすいよ

うな協賛金な設定を検討し、協賛会員に対して、「限定/優先イベントの招待」、「限定情

報の提供」などの特典を設ける。

②Ruby 事業認定制度

Ruby に関するサービスを実施する事業者を対象とした認定制度を設ける。Ruby アソ

シエーションが事業者を認定することで、市場に信用を付与し Ruby のビジネス利用の

促進を図る。認定に際しては条件を設け、Ruby アソシエーションが審査し、認定企業

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を対外的に公表する。

○想定される対象事業

・システムインテグレーション(SI)事業 注)現在、実施中

・サポート事業

・教育事業

・グッズ販売事業

・クラウドサービス(PaaS)事業 など

③Ruby アソシエーションの直営事業

Ruby の普及と発展のために、情報発信、開発支援などを Ruby アソシエーションが

無償若しくは有償で直接実施する事業。

○想定される事業

・Ruby 技術者認定事業 注)現在、実施中

・Ruby 開発支援事業

・Ruby 標準化維持事業

・情報発信事業(出版事業を含む)

・イベント事業

・サポート事業(直営分)

この中で Ruby アソシエーションの収益の柱となり得るのは、情報発信事業とサポー

ト事業である。

情報発信事業は、無償提供と有償提供の情報に分かれる。このうち有償提供の情報は、

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最新の技術動向、標準化に関する解説書などビジネス利用価値が高い情報を中心に電子

出版などで提供していくことが考えられる。この場合、既存の電子出版企業と協働し、

Ruby アソシエーションはコンテンツの充実に注力すべきである。

サポート事業は、現在のビジネス市場では大手 IT ベンダ企業等が Ruby 及びその周辺

技術のサポート事業を実施しているが、こうした企業からも自社で解決できない問題が

発生した場合に、まつもと氏を始め、より高い技術力を有するエンジニアのサポートを

得たいとの声がある。こうした要望に応えて Ruby アソシエーションが IT ベンダ企業向

けのサポート事業を実施することを検討することが望ましい。その実施方法としては、

特に Ruby アソシエーションの活動に賛同する企業が自社のエンジニアを Ruby アソシ

エーションの活動に直接参加させ(例えば出向等の形態を取る)、サポート事業に従事さ

せることが考えられる。この場合、賛同する企業は、自社のエンジニアがまつもとゆき

ひろ氏、前田修吾氏といった Ruby アソシエーションの優れた技術者から直接に、また、

実践に沿って技術習得を果たせるとともに、Ruby に関わる様々な組織、人とのネット

ワークを構築できる、といったメリットがある。

4.実施スケジュール

平成 24 年度の本格実施を目指して、平成 23 年度中に協賛制度、Ruby 事業認定制度

等の詳細設計をすると共に、体制強化に向けた検討を行うことが望まれる。

5.Ruby 拠点形成に必要な支援

Ruby アソシエーションの基盤を強化し、Ruby 拠点を形成するためには、IT ベンダ・

IT ユーザの産業界、大学、産業支援機関、コミュニティ及び行政機関が密接に協力して

行く必要がある。特に行政機関においては、必要とされる事務所等のハード整備及び情

報発信のためのソフト整備等の諸機能整備に係る財政面の支援と共に必要となる諸手続

に関する人的支援が期待される。

6.地域 IT ベンダ企業、ユーザ企業のメリット

以上のように Ruby 拠点をこの地で形成することで、中国地域の IT ベンダ企業、ユ

ーザ企業には次のメリットが考えられる。

(1)双方のメリット

・協賛企業制度によって Ruby アソシエーションを支えることで、市場からの評

価を得られる。

・地理的アドバンテージを活かし、Ruby アソシエーションが開催する当地域限

定セミナーに数多く参加することでビジネス関連情報をいち早く捉えられる。

(2)IT ベンダ企業のメリット

・Ruby アソシエーションの活動に賛同し、積極的に協働することで自社エンジ

ニアの技術力を向上させ、自社の競争力強化へと繋げることができる。

・Ruby アソシエーションに関する取り組みを通じて、既存の連携関係がより強

固に、また、新たな連携関係が築くことができる。

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(3)ユーザ企業のメリット

・地域の IT ベンダ企業が提供する質の高いサービスを利用することで、自社の

経営力、競争力を向上させることができる。

7.まとめ

Ruby は、開発生産性が高く、顧客の要望に合わせて柔軟にプログラムを変更できる

という特徴から、クラウドでのサービス提供に適しており、また、従来の受託開発にお

いてもより質の高いサービスの提供も可能であり、地域 IT ベンダ企業のビジネス機会

の創出を実現する可能性を持っている。Ruby は現在普及期に差し掛かっており、国内

外の大手企業も注目しており、すでにビジネスに活用され始めている。また、標準化の

動きも進んでおり近い将来国際規格として標準化される見込みである。このような状況

の中で、地域 IT ベンダ企業が今後 IT ビジネスにおいて優位性を確保するためには、で

きるだけ早期に Ruby アソシエーションの基盤を強化し、その活動に賛同する企業の協

調・協働関係の上で持続可能な Ruby 拠点を整備する必要がある。

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平成 22年度 地域経済産業活性化対策調査

中国地域におけるオープンソースプログラミング言語「Ruby」の拠点形成可能性調査概要版

平成 22年 12 月

中国経済産業局 地域経済部 電子・情報産業担当

〒730-8531 広島県広島市中区上八丁堀 6番 30号

TEL (082)-224-5630

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