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1 SCARマーカーによるリンドウのDNA品種識別マニュアル 一般社団法人安代リンドウ開発 作成代表者 日影孝志 2010 年 12 月 17 日

SCARマーカーによるリンドウのDNA品種識別マニュアル4 組織培養施設で維持されている株を基準株とした。その他の市販品種については基準

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    SCARマーカーによるリンドウのDNA品種識別マニュアル

    一般社団法人安代リンドウ開発

    作成代表者

    日影孝志

    2010年 12 月 17 日

  • 2

    リンドウDNA品種識別マニュアルの目次

    1.適用範囲

    2.一般事項

    3.分析の原理

    4.識別方法

    4.1 方法の要旨

    4.2 検査試料

    4.3 購入試薬

    4.3.1 SCARプライマーセット

    4.3.2 試薬

    4.4 調整試薬

    4.5 機器・プログラム

    4.6 実験操作

    4.6.1 操作準備作業

    4.6.2 操作場所

    4.6.3 試薬及び器具

    4.6.4 試料材料の取り出し

    4.6.5 DNAの抽出操作

    4.6.6 DNAの定量

    4.6.7 PCR増幅操作

    4.6.8 DNAマーカーの検出方法

    4.6.9 データ解析、判定

    4.6.10 実験操作フロー図

    5. トラブルシューティング

    6.是正処置

    付属文書

    1.平成 20 年度農林水産物等輸出促進事業のうち品種保護に向けた環境整備事

    業報告書

    2.参考文献

    この目次リストはISO規格やJIS規格の試験方法の様式に準拠したものです。

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    1.適用範囲

    日本でのリンドウの栽培は約 500ha であり、主要花卉の一つである。近年県や市町

    村での品種育成に加え、生産者によるオリジナル品種の開発が活発に行われている。

    これら開発された品種には栄養繁殖で増殖、栽培される品種/系統が多く存在する。

    現在の種苗法ではリンドウの品種特性は、花色、花の形状、総花数、早晩生、草丈、

    茎の太さ、茎色や葉型など、花きとしての品質に関わる特徴で表されている。しかし、

    これらの多くは量的形質であり、栽培環境の変化によって形質が変化するため、一定

    の栽培環境における品種の特徴は説明出来るが、確実に品種を識別する指標としては

    利用出来ない。育成した新品種の権利は、植物品種保護制度により保護されているが、

    上述のように、リンドウは栄養繁殖が可能であり、形態形質から品種を確実に特定す

    ることは極めて困難であることから、オリジナル品種の不正使用や海外流出に対応す

    るための手段を確立しておく必要がある。そこで、一般社団法人安代リンドウ開発は、

    財団法人岩手生物工学研究センターと協力して、多数の SCAR (Sequence characterized

    amplified region)マーカーを開発し、そのうちの9種類を利用して、リンドウに適応

    できる DNA品種識別技術を開発した。

    品種3品種

    八幡平市で育成されている栄養系リンドウ品種(メルヘンアシロ、ラブリーアシロ、

    シャインブルーアシロ)

    被検査物:葉

    2.一般事項

    本 DNA品種識別マニュアルは、八幡平市で育成されている栄養系リンドウ 34品

    種・系統(クリスタルアシロ、GSW100、 メルヘンアシロ、ラブリーアシロ、シャイ

    ンブルーアシロ、ピュアホワイト、SP2-002、SR2-015、SR3-004、11-22-1、11-22-2、

    11-24-3、11-24-4、11-191-1、12-217-1、12-249-1、14-218-21、04/05-29、04/05-66、04/05-73、

    12-202-2 (LP)、12-205-1、12-218-17、12-267-4、12-327-1、12-342-1、14-203-1、14-203-3、

    14-210-2、14-218-8、14-218-10、14-222-5、14-248-7、15-93-1)、岩手県の育成品種 3

    品種(ポラーノブルー、ポラーノホワイト、ももこりん)、高橋俊一氏育成品種 3品

    種(エタニティー、紅竜、青竜)およびその他市販参考品種を用いて、解析・作成さ

    れたものである。

    本 DNA品種識別マニュアルは、開花期のリンドウの葉から抽出した DNAを用い

    て、SCARマーカーによる分析を3回行った結果を基に作成されたものである。

    八幡平市の育成品種である 34 品種・系統(クリスタルアシロ、GSW100、 メルヘ

    ンアシロ、ラブリーアシロ、シャインブルーアシロ、ピュアホワイト、SP2-002、SR2-015、

    SR3-004、11-22-1、11-22-2、11-24-3、11-24-4、11-191-1、12-217-1、12-249-1、14-218-21、

    04/05-29、04/05-66、04/05-73、12-202-2 (LP)、12-205-1、12-218-17、12-267-4、12-327-1、

    12-342-1、14-203-1、14-203-3、14-210-2、14-218-8、14-218-10、14-222-5、14-248-7、

    15-93-1)については雪冷房リンドウ培養育苗生産施設で維持されている株を基準株と

    する。岩手県の育成品種については、岩手県農業研究センターで維持されている株を

    基準株とした。高橋俊一氏育成品種については、株式会社T&Gバイオナーサリーの

  • 4

    組織培養施設で維持されている株を基準株とした。その他の市販品種については基準

    株は存在しない。

    3.分析の原理

    SCARマーカーによる分析法は、ゲノムの特定領域の配列に基づいてプライマーを

    設計し、PCR 反応によって特異的な DNA 断片を増幅する方法である。作製した

    SCAR マーカーの検出にかかる行程は、ゲノム DNA の抽出、PCR 反応、電気泳動

    による確認とシンプルであり、短時間で安定した結果が得やすいという利点がある。

    さらに、SCARマーカーは共優性マーカーであり、増幅産物の有無ではなく、産物サ

    イズの差を検出するようにデザインすることで、アーティファクトによる識別ミスを

    減らすことが出来る。また、アガロースゲルにより分離可能な増幅サイズを得ること

    が可能なため、特殊な装置を必要とせず、簡易分析手法として優れた方法である(嶋

    田ら、2008; Shimada et al. 2009)。

    4.識別方法

    DNAマーカーの一種である SCARマーカー9種類を用いた識別方法である。

    4.1方法の要旨

    SCARマーカーを作成するには遺伝子の配列情報が必要であるが、今回、開発した

    マーカーについては、リンドウの花色生合成遺伝子(一部は転写制御因子遺伝子)の

    イントロン長多型に基づくものである。リンドウの花色に関わる遺伝子についてはこ

    れまでほぼ全ての遺伝子の配列情報が報告されており(Nishihara et al. 2008)、それらの

    情報に基づき、前述の 20 系統・品種、その他、参考品種を用いて多型が出やすく、

    再現性の高いプライマーの組み合わせを選定した。また、煩雑さを避けるように PCR

    条件が一定になるようなプライマー長としている。なお、花色遺伝子の多くは遺伝子

    ファミリーとして存在することより、今回の SCARマーカーによる分析に適した手法

    である。DNA 抽出については市販キットを使用することとしており、試薬の調整ミ

    ス等による人為的ミスが回避可能である。電気泳動による検出についてもミューピッ

    ド等の簡易電気泳動装置が使用可能であり、ゲル作成等に熟練を必要としない汎用性

    の高い方法として開発を行った。なお、ここで示す 9種類以外のマーカーについても

    開発しており、適時、使用可能である。

    4.2検査試料

    葉を検査試料対象とし、病害、虫害、その他の被害を受けていない健全な組織を用

    いる。

    葉はできるだけ若い葉を用いることとし、生葉、凍結保存葉を使用する。いずれの

    方法でも良好な結果が得られる。凍結保存後に DNA抽出を行う場合には、保存前に、

    生のときに必要量を計測してから、ビニール袋、チューブなどに入れ密封し、-80℃

    のフリーザーで保存する。

    4.3購入試薬

    4.3.1 SCARプライマーセット

  • 5

    下記に示したプライマーセットを使用する。プライマーの合成には、グライナー社製

    受諾合成サービスの DNA解析用プライマーを利用する。逆相カラム精製を行った純

    度の高いプライマーが望ましい。なお、プライマー名は、遺伝子の略称と U (upper) も

    しくは L (Lower) ならびにプライマー設計時に使用した配列位置情報 (数字) が併

    記されている。

    ANS イントロン

    CHI 第 3 イントロン

    Primer Length Sequence

    CHI3rdU173 24 mer 5'-GAG TGG TTA AGC AGA TGA CAC GAC-3'CHI3rdL763 24 mer 5'-AAG AAA ATT GAC AAC ATG CAG AAG-3'

    FHT 第 1 イントロン (U24 & L356)

    Primer Length Sequence

    FHTintU24 24 mer 5'-GAT TCA TTG TTT CCA GCC ATT TGC-3'FHTintL356 24 mer 5'-GTC ATG GAT CAC AAA ACA AGA TCA-3'

    FHT 第 1 イントロン (U906 & L1896)

    Primer Length Sequence

    FHTintU906 24 mer 5'-TTA CAC AAA AAT AGG GTC AGT TCC-3'FHTintL1898 24 mer 5'-TCG TTA TAA ATA GAT GTG GTC CTC-3'

    FHT 第 1 イントロン (U1253 & L1631)

    Primer Length Sequence

    FHTintU1253 24 mer 5'-TTG CAC CTG AAG TAG AAT TTT ACA-3'FHTintL1631 24 mer 5'-TTC TGA CAG AAC TTC AAG CAA TTT-3'

    F3'5'H イントロン

    Primer Length Sequence

    F3'5'HintU1363 24 mer 5'-TCC ATT GAT TAA AAT GAG GGA CCA-3'F3'5'HintL1974 24 mer 5'-TAT GGT AAG TTG GGG ATG TCT GAT-3'

    DFR イントロン

    Primer Length Sequence

    DFRintU853 24 mer 5'-GAG CAC TTG CAT TAT TGT TCA GAA-3'DFRintL1267 24 mer 5'-GTA GTG TGC TTC ATT CCC TAT GGA-3'

    FLS イントロン

    Primer Length Sequence

    Alta_gFLS_U2724 24 mer 5'- TAG TAT TTG ATT TGA TGA AGA CAG-3'

    Primer Length Sequence

    ANSintU683 24 mer 5'-ATG TCA ACT TTT TAT TGG TCC TAA-3'ANSintL1142 24 mer 5'-GAG CAC AGC AAG AAC TTT GGT AGC-3'

  • 6

    Alta_gFLS_L3287 24 mer 5'- CAT GGC TAC CTA CTA CCT ATG AGT-3'

    bHLH1 イントロン

    Primer Length Sequence

    bHLH_U336 24 mer 5'- AAG GTG ATC GTT GTG AAA ATG TCT-3'bHLH_L629 24 mer 5'- GGC CGT CTA GTT TGG TGG TTG GTT-3'

    4.3.2 試薬

    以下の試薬を購入する。

    (1)GenElute Plant Genome DNA Miniprep Kit (SIGMA) 1 キット 10 サンプル分 (code: G2N10-1KT)

    70 サンプル分 (code: G2N70-1KT)350 サンプル分 (code: G2N350-1KT)

    (2)99.5% エタノール 500 ml (Wako, code:057-00456)

    (3)2.0 ml スクリューキャップチューブ (フナコシカタログ code: 2330-00) 2 x 500 本入り

    (4)2.0 ml スクリューキャップ (フナコシカタログ code: 2001-00) 2 x 500 個入り

    (5)アルミナビーズ (直径 2 mm) (アズワンカタログ code: 5-4043-01) 1 kg

    (6)ExTaq DNA polymerase (TaKaRa Bio) 250U (code: RR001A) 1000U (250U x 4) (code: RR001B) 3000U (250U x 12) (code: RR001C)

    (7)PCR 0.2 ml チューブバンドセパレート 8 連ナチュラル (greiner bio-one)

    125 セット (code: 301401)

    (8)SeaKem GTG Agarose (メーカー: CMR. 取り扱いは TaKaRa Bio) 25 g (TaKaRa code: F0071) 125 g (TaKaRa code: F0070) 500 g (TaKaRa code: F0074)

    (9)100 Base-Pair Ladder (GE Healthcare)100 µg (code: 27-4007-01)

    *本製品は 1 µg/µl に調整されている.これに TE buffer, 6 x (または 10 x) 泳動用色素 (XC, BPB など) を加えて 20 倍希釈 (終濃度 0.05 µg/µl) して使用.

    (10)50 x TAE (ニッポンジーン) 500 ml (code: 313-90035)

    (11)核酸泳動用色素マーカー

  • 7

    ブロモフェノールブルー (and/or キシレンシアノール) から調製.もしくは制限酵素等購入時に付属の物を使用.

    (12)TE (pH 8.0) (ニッポンジーン) 500 ml (code: 316-90025)

    (13)1.5 ml クリックキャップチューブ(TreffLab, TOHO カタログ code: 30050) 1,000 本

    (14)マイクロピペット用チップ (RAININ) スペースセーバー詰め替え用 GPS

    GPS-1000S (滅菌済み) 960 本 GPS-250S (滅菌済み) 960 本 GPS-10GS (滅菌済み) 960 本

    (15)マイクロピペット各種容量

    (16)滅菌水(超純水をオートクレーブ 121°C20分したものか、 市販の DNase/RNaseフリー水を使用)(17)液体窒素

    (18)エチジウムブロマイド溶液 10mg/mL (ニッポンジーン) 10mL (Code315-90051)

    4.4 調整試薬

    購入試薬のうち、GenEluteTM Plant Genome DNA Miniprep (SIGMA)キット付属のWash Solutionについては、付属のマニュアルにしたがい、エタノールで希釈して使用する。

    4.5 器機・プログラム

    (1)ビーズ式細胞破砕装置 Micro Smash MS-100 (TOMY SEIKO) (2)サーマルサイクラー(バイオラッド社製、ABI社製等)(3)電気泳動槽 Mupid-2plus (ADVANCE, code: M-2P) (4)恒温槽 (65˚C で使用できれば,熱媒体は固体,液体どちらでも可)

    (5)微量高速冷却遠心機 (TOMY MX105等マイクロチューブの遠心が可能な もの)

    4.6 実験操作

    4.6.1 操作準備作業

    DNA実験操作は、実験台上をエタノールで消毒し、また必要に応じてクリーンベ

    ンチを使用する。実験操作中は、白衣、ゴム手袋、保護眼鏡。上履きを着用する。

    4.6.2 操作場所

    DNA抽出からPCR増幅、DNAの検出まで、供試サンプル以外のDNAが混入

    しないクリーンな環境で操作する。

    4.6.3 試薬および器具

    DNA抽出には GenEluteTM Plant Genome DNA Miniprep (SIGMA)キットを用いる。

    また、器具については DNA の分解を防ぐため、上述のチューブ、チップ等滅菌済みの

    DNase フリーのものを用いる。

    4.6.4 試験材料の取り出し

  • 8

    サンプルの取り出し・取り扱い時には、サンプル間で相互に混入しないように、サ

    ンプル毎に作業台や電子天秤等の清掃を充分に行うとともに、操作に細心の注意をは

    らう。

    生の葉、花芽、越冬芽の幼葉の取り出し・取り扱い時には、組織が乾燥しないよう

    に、迅速に操作を行う。凍結保存した葉、花芽、越冬芽の幼葉のサンプルを取り出D

    NAの抽出操作し・取り扱い時には、室温で長時間放置すると劣化・褐変が起こるの

    で、迅速に操作する。

    4.6.5 DNA抽出操作

    本マニュアルでは GenEluteTM Plant Genome DNA Miniprep (SIGMA)キットを使用す

    る方法を示す。適切にサンプリングされた葉、花芽、越冬芽の幼葉を用いるなら、本

    法以外でもDNA品種識別に利用可能な質をもつDNAの抽出が可能である。

    抽出操作を始める前に、65˚C 恒温槽を準備する。Elution buffer を必要量 (サンプル

    数 + 1 ) を分注し、65˚C 恒温槽で加温する。キット付属のチューブにサンプル名を

    記入する(1 サンプルにつき、GenElute Filtration Column 1 本、GenElute Nucleic Acid

    Binding Column 1 本、collection tube 3 本使用)。

    DNA抽出操作は以下のとおりである。

    1) 各植物体の若葉部分 (70-80 mg) を 2 ml ねじ口チューブ [アルミナビーズ (直径

    2 mm) を 1/3 程度入れてオートクレーブしたもの] にサンプリングし、DNA 抽出

    を行うまで –80˚C で保存する。乳鉢、乳棒を用いてサンプル破砕を行う場合は、

    アルミホイルなどに包んで –80˚C で保存する。

    2) サンプルの破砕

    Micro SmashTM MS-100 (TOMY) を用いて、5,500 rpm、20 秒間行った。[この操作を、

    サンプルが溶けないように破砕と破砕の間に液体窒素で冷却しつつ、サンプルがき

    め細かい粉末状になるまで繰り返す (4-5 回程度)]。

    乳鉢、乳棒を用いる際もサンプルが溶けないように液体窒素で冷却しつつ、サンプ

    ルがきめ細かい粉末状に破砕する。

    3) 粉末状に破砕したサンプルに 350 µl Buffer part A、50 µl Buffer part B (SDS が析出

    している時は加温し、完全に SDS を溶かしてから使用) を加えて混和する。

    4) 65˚C 恒温槽で 10 分間インキュベートする。インキュベート中に数回サンプルを

    転倒混和する (インキュベート後にサンプルの粘度が高い場合は、Buffer part A お

    よび Buffer part B を半量ずつさらに加えて再度インキュベートし、5) で加える

    precipitation solution 量を 1.5 倍にする)。

    5) Precipitation solution 130 µlを加えて混和し、氷上で 5 分間インキュベートする。

    6) 5)のインキュベートの間に、GenElute Nucleic acid Binding Column に 500 µl column

    preparation solution を加え、15,000 rpm、1 分間遠心する。遠心後の溶液を捨て、

    9) で使用するまで室温に置いておく。

    7) 氷上でインキュベートしたサンプルを 15,000 rpm、5 分間遠心し、上清を GenElute

    Filtration Column に移す。

    8) 15,000 rpm、1 分間遠心した後、得られた溶液に 700 µl Binding Solution を加えて

    混和する。

    9) 溶液 700 µl を 6) で準備した GenElute Nucleic acid Binding Column へ移し、

    15,000 rpm、1 分間遠心する。チューブに集めた溶液は捨てる。(サンプル溶液が残

  • 9

    っていた時は、遠心後の溶液を捨て、同じカラムにサンプルを加えて再度遠心を行

    う)

    10) カラムを新しい collection tube (付属) にセットする。500 µl wash solution を加え

    て 15,000 rpm、1 分間遠心し、溶液を捨てる。カラムを新しい collection tube にセ

    ットし、500 µl wash solution を加えて 15,000 rpm、3 分間遠心し、溶液を捨てる。

    11) カラムを新しい collection tube にセットし、65˚C に温めておいた elution buffer

    100 µl を加え、15,000 rpm、1 分間遠心する。溶出液を再度カラムに戻し、15,000 rpm、

    1 分間遠心する。

    12) 得られた溶液について吸光度測定および電気泳動により濃度を測定する。DNA

    溶液は –20˚C で保存する。

    4.6.6 DNAの定量

    抽出したDNAの定量には、アガロースなどの電気泳動による分析や分光光度計に

    よる分析がある。前者のアガロース電気泳動では、正確なDNAの量の値は算出され

    ないが、抽出されたDNAの量、抽出時のDNA分解程度(DNAの長さや移動度)

    や夾雑物の影響の有無を確認することができる。本マニュアルについては、以下に電

    気泳動法による定量方法を示す。

    1) 1µlのサンプルDNA溶液に、6 x loading dye 1 µlと滅菌水 4 µl を加え、よく混合

    する。

    2) 調整したサンプルDNA溶液、6µl あたり 10 ng に調整した lambda phage DNA

    溶液を、TAE 0.7%アガロースゲル(今回使用したアガロースは CMR社製 Seakem

    GTG Agarose (Takara Bio) である。)に6µlアプライする。

    3) ミューピッド電気泳動装置で、100 V で 30 分間程度、電気泳動を行う。

    4) 電気泳動済みのアガロースゲルを、エチジウムブロマイド溶液(1μg/mL程度)中

    で、30分程度静置して、染色を行う。

    5) 紫外線照射装置で 245nm や 366nm などの紫外線を照射し、写真撮影する。図1

    に電気泳動図を示す。

    6) Lambda phage DNAと比較することでDNA濃度を推定し、SCARマーカー分

    析用に 10-100 ng/µl に希釈した溶液を作成する。分解されていたり、極端に濃度が

    薄いサンプルは再抽出を行う。

    7) DNA溶液は –20˚C 以下で保存する。

    本分析については通常の分子生物実験での DNAの電気泳動法に準じたものであれば

    よい。

  • 10

    図1.電気泳動図

    上段は4.6.5DNA抽出操作で抽出したメルヘンアシロのDNA

    中段は4.6.5DNA抽出操作で抽出したラブリーアシロのDNA

    下段は4.6.5DNA抽出操作で抽出したシャインブルーアシロのD

    NA

    左右に 10ng の lambda phage DNA、各品種 15サンプルのDNAを流し

    た。抽出されたDNAの量は lambda phage DNAの濃さとの比較を行い

    定量する。

    抽出時の分解程度は DNAの移動度で評価し、スメアー

    になっていないことを確認する。

    夾雑物の影響の有無は電気泳動の流れ方を判断目安とする。

  • 11

    4.6.7 PCR増幅操作

    PCR増幅操作は以下のとおりである。なお、PCR実験では、微量の鋳型DNAで

    あっても増幅されるので、目的以外のDNAの混入を防ぐとともに、試料の酵素的分

    解を防ぐため、人間の皮膚表面から分泌されている DNase の混入を防止しなければな

    らない。コンタミネーション防止のため、適切な操作を行う必要がある。

    1) プライマーは超純水を用いて 100 pmol/µl に調製し、ストック溶液とする。PCR

    反応液の調製には、ストック溶液を超純水で 20 pmol/µl に希釈したものを使用する。

    どちらの溶液も冷凍保存する。

    2) PCR 反応液の組成 (1 反応分)

    滅菌水 14.8 µl

    10 x ExTaq reaction buffer (ExTaq 付属) 2.0 µl

    2.5 mM dNTP mix (ExTaq 付属) 1.6 µl

    Upper primer (20 pmol/µl) 0.5 µl

    Lower primer (20 pmol/µl) 0.5 µl

    ExTaq DNA polymerase (Takara Bio) 5U/µl 0.1 µl

    ゲノム DNA 溶液 (10-100 ng/µl に希釈したもの) 0.5 µl

    合計 20.0 µl

    *反応液の調製はすべて氷上で行う。複数の検体を同時に分析する場合は SCAR マ

    ーカーごとにまとめて PCR プレミックス (ゲノム DNA 溶液以外を混ぜた反応

    液) を調製、分注すると操作が効率的になる。また、その際に PCR プレミックス

    を「実際の検体数 + 1 検体分」調製すると分注などで生じる溶液のロスに対応で

    きる。また添加するゲノム DNA溶液の量については操作性を考慮し、1 µlとして

    もよいが、その場合は滅菌水の量を 13.8 µlとして調整する。以下のプリミックス

    の調整についても同様。

    [10 検体分析する場合の PCR プレミックスの組成 (10 検体 + 1 検体分)]

    滅菌水 162.8 µl

    10 x ExTaq reaction buffer (ExTaq 付属) 22.0 µl

    2.5 mM dNTP mix (ExTaq 付属) 17.6 µl

    Upper primer (20 pmol/µl) 5.5 µl

    Lower primer (20 pmol/µl) 5.5 µl

    ExTaq DNA polymerase (Takara Bio) 5U/µl 1.1 µl

    合計 214.5 µl

    氷上で PCR プレミックスを 19.5 µl ずつ PCR チューブに分注した後、ゲノム

    DNA 溶液 (50-100 ng/µl に希釈したもの) を 0.5 µl を加える。

    軽く遠心して溶液をチューブの底に集め、サーマルサイクラーにかけるまで氷上に保

    存する。

  • 12

    3) PCR 反応条件

    94˚C 1 分 30 秒

    94˚C 20 秒

    60˚C 40 秒 35 サイクル

    72˚C 1 分

    72˚C 5分

    10˚C ∞

    4.6.8 DNAマーカー検出方法

    PCR 後、反応液 5 µl に 6 x loading dye 1 µl を加えて電気泳動サンプルとする。電

    気泳動は、TAE 1.6%アガロースゲル、DNA サイズマーカーは 100 bp ラダーマーカ

    ー (GE Healthcare社製) を用いて行った。エチジウムブロマイド溶液で染色し、紫外

    線照射装置で写真撮影を行った。CCD カメラ等によるゲル撮影装置も使用することが

    できる。露光時間、絞りを調節し、DNAの増幅バンドが明瞭となるように撮影する。

  • 13

    4.6.9 データ解析、判定

    データの解析および判定は以下のとおり行う。

    まず、供試サンプルDNAについて、各プライマーセットで検出された増幅バンドサ

    イズを確認し、以下のとおり分類した多型のどれであるかを確認する。なお、多型バ

    ンドサイズは、PCR で増幅されるバンドのおおよそのサイズであり、DNAサイズマ

    ーカーと比較して判定する。

    1) ANS イントロン(ANSintU683&ANSintL1142)多型バンドサイズ多型 A: 300 bp、 500 bp多型 B: 500 bp多型 C: 300 bp、 350 bp多型 D: 300 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 2に示した。この結果から、メルヘンアシロとシャインブルーアシロは多型Aであ

    るが、ラブリーアシロはC型であることがわかる。

    図2.ANS イントロン(ANSintU683&ANSintL1142)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M

    MM

  • 14

    2) CHI 第 3 イントロン(CHI3rdU173&CHI3rdL763)多型バンドサイズ多型 A: 500 bp、600 bp多型 B: 600 bp、900 bp多型 C: 600 bp多型 D: 900 bp多型 E: 700 bp多型 F: 600 bp, 700 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 3に示した。この結果から、メルヘンアシロは多型A、シャインブルーアシロは多

    型C、ラブリーアシロは多型Fであることがわかる。なお、ラブリーアシロはそれ以

    外のバンドも増幅される。この方法で分類する場合は、500 bp、600 bp、700 bpおよ

    び 900 bpのバンドのみ多型分類に用いるものとする。

    図 3.CHI イントロン(CHI3rdU173&CHI3rdL763)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    M M

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 15

    3) FHT 第 1 イントロン (FHTintU24 & FTHintL356)多型バンドサイズ多型 A: 400 bp 付近に 2 本多型 B: 400 bp 付近に 1 本、900 bp多型 C: 400 bp 付近に 1 本多型 D: 400 bp 付近に 2 本、900 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 4に示した。この結果から、3品種は全て多型 Bであることがわかる。

    図 4.FHT 第 1 イントロン (FHTintU24 & FTHintL356)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    M

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 16

    4) FHT 第 1 イントロン (FTHintU906 & FTHintL1898)多型バンドサイズ多型 A: 330 bp多型 B: 330 bp、750 bp多型 C: 750 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 5に示した。この結果から、3品種は全て多型 Bであることがわかる。

    図 5.FHT 第 1 イントロン (FTHintU906 & FTHintL1898)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 17

    5) FHT 第 1 イントロン (FHTintU1253 & FHTintL1631)多型バンドサイズ多型 A: 400 bp、600 bp多型 B: 600 bp多型 C: 400 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 6に示した。この結果から、3品種は全て多型 Aであることがわかる。

    図 6.FHT 第 1 イントロン (FHTintU1253 & FHTintL1631)マーカーのバンドパター

    ン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 18

    6) F3'5'H イントロン(F3'5'HintU1363& F3'5'HintL1974)多型バンドサイズ多型 A: 300 bp多型 B: 650 bp多型 C: 300 bp、650 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 7に示した。この結果から、メルヘンアシロとラブリーアシロは多型 C、シャイン

    ブルーアシロは多型 Aであることがわかる。

    図 7.F3'5'H イントロン(F3'5'HintU1363& F3'5'HintL1974)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    M M

    シャインブルーアシロ

  • 19

    7) DFR イントロン(DFRintU853& DFRintL1267)多型バンドサイズ多型 A: 420 bp多型 B: 350 bp、420 bp、500 bp多型 D: 350 bp、420 bp、500 bpのいずれの増幅もみられないメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターンを

    図 8に示した。この結果から、メルヘンアシロとシャインブルーアシロは多型 A、ラ

    ブリーアシロは多型 Bであることがわかる。ラブリーアシロはそれ以外のバンドも増

    幅される。この方法で分類する場合は、350 bp、420 bpおよび 500 bpのバンドのみ多

    型分類に用いるものとする。なお、高橋俊一氏育成品種1品種「青竜」および八幡平

    市所有系統「12-267-4」では 350 bp、420 bp、500 bpでの増幅がみられないことがわ

    かっている。

    図 8.DFR イントロン(DFRintU853& DFRintL1267)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 20

    8) FLS イントロン(Alta_gFLS_U2724& Alta_gFLS_L3422)多型バンドサイズ多型 A: 320 bp多型 B: 370 bp多型 C: 420 bp多型 D: 320 bp、370 bp多型 E: 370 bp、420 bp多型 F: 600 bp多型 G: 320 bp、420 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターン

    を図 9 に示した。この結果から、メルヘンアシロとシャインブルーアシロは多型 C、

    ラブリーアシロは多型 Gであることがわかる。

    図 9.FLS イントロン(Alta_gFLS_U2724& Alta_gFLS_L3422)マーカーのバンドパター

    ン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 21

    9) bHLH1 イントロン(bHLH_U336&bHLH_L629)多型バンドサイズ多型 A: 850 bp、1.3 kb多型 B: 1.3 kb多型 C: 850 bpメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロの電気泳動パターン

    を図 10に示した。この結果から、3品種は全て多型 Aであることがわかる。これ以

    外にもメルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロには増幅バンド

    がみられることがある。またスメアーなバンドの増幅が認められる場合がある。この

    方法で分類する場合は、850bp と 1.3kb の2本のバンドのみ多型分類に用いるものと

    する。

    図 10.bHLH1 イントロン(bHLH_U336&bHLH_L629)マーカーのバンドパターン。

    各品種15サンプルずつを泳動。M、100 bp ラダーマーカー

    メルヘンアシロ

    ラブリーアシロ

    シャインブルーアシロ

    M M

  • 22

    以上の結果をまとめると、表1のとおりになる。

    表1.SCARマーカーの多型による分類

    番号 品種/系統

    AN

    Sイントロン

    CH

    I第

    3 イントロン

    FH

    Tイントロン

    (U

    24 &

    L35

    6)

    FH

    Tイントロン

    (U

    906

    & L

    1898

    )

    FH

    Tイントロン

    (U12

    53 &

    L16

    31)

    F3'

    5'Hイントロン

    DF

    Rイントロン

    FLSイントロン

    bHLH

    イントロン

    1 メルヘンアシロ A A B B A C A C A

    2 ラブリーアシロ C F B B A C B G A

    3 シャインブルーアシロ A C B B A A A C A

    また、独立に行った PCR の結果の電気泳動写真(目的のバンドの部分のみを抽出)

    を補足資料として示す。

    メルヘンアシロ、シャインブルーアシロまたはラブリーアシロという品種と外観が

    似ている品種がある場合、上記の 9種類のSCARマーカーを用いて一つでも多型に

    違いがある場合は別品種と判定することができる。これまで、メルヘンアシロ、シャ

    インブルーアシロおよびラブリーアシロを含む 37 の栄養系品種/系統のSCARマ

    ーカーでの多型の分類を行ったところ、すべての品種をこの 3品種とを区別すること

    が可能であった(付属文書)。また、高橋俊一氏育成品種 3品種(エタニティー、青

    竜、紅竜)、岩手県育成品種 3品種(ポラーノホワイト、ポラーノブルー、ももこり

    ん)および八幡平市育成品種 1品種(クリスタルアシロ)を用いて独立に試験を行っ

    たところ、以下のとおりとなり、これらの品種はメルヘンアシロら 3品種と1つ以上

    の多型の違いがあり、別品種と断定できた。

    番号 品種/系統

    AN

    Sイントロン

    CH

    I第

    3 イントロン

    FH

    Tイントロン

    (U

    24 &

    L35

    6)

    FH

    Tイントロン

    (U

    906

    & L

    1898

    )

    FH

    Tイントロン

    (U12

    53 &

    L16

    31)

    F3'

    5'Hイントロン

    DF

    Rイントロン

    FLSイントロン

    bHLH

    イントロン

    1 エタニティー A B B B A B A B A

    2 青竜 A F C A C A D A A

    3 紅竜 A A B B A A A B A

    4 ポラーノホワイト A F A B A A B A C

    5 ポラーノブルー A B A B A A A A B

    6 ももこりん B C B C A A A C B

    7 クリスタルアシロ A A B B A A A A A

    次に、多型が全て同じであれば、同一品種の可能性を疑うことになる。今後、トラ

    ンスポゾン、SSR、SNP等多くの識別技術が開発されると思われるが、現時点で

    は、今回増幅したイントロン配列のシークエンスを行うことになる。もし複数の

    SCARマーカー増幅断片が同じシークエンスであれば、同一品種の可能性が高い。

    ここに、メルヘンアシロ、シャインブルーアシロおよびラブリーアシロのANS、

    CHI、FHT、F3‘5’ H、DFRおよびFLSにおける各増幅産物のシーク

    エンスのアライメントを図11~16に示す。また、各々のシークエンスのデータを

  • 23

    補足資料として示す。本シークエンスは増幅されたバントを切り出し、サブクローニ

    ングしたのち、各クローンのシークエンスを決定して得られたものである。

    具体的には GeneCleanII kit(フナコシ社)製を用いて、アガロースゲルからの DNA抽出

    を実施し、pCR4TOPO(Invitrogen 社製)あるいは pGEM-TEasy(Promega 社製)に挿入し

    た。llustra™ TempliPhi 100 Amplification Kit (GE Healthcare社製)により増幅したプラス

    ミドDNAあるいはコロニーPCRによるPCR産物をテンプレートにシークエンス解析

    を行った。M13RVあるいはM13M4プライマーにより BigDye(R) Terminators version

    1.1 Cycle Sequencing Kit( ABI社製)を用いて、サイクルシークエンス反応を行い、

    3130xl キャピラリーシークエンサー( ABI 社製)により配列を決定した。各増幅産

    物について 10 クローン以上ずつのシークエンスを行い、4 クローン以上の共通した

    配列が得られたものについて記載した。シークエンス配列解析は Genetyx-Mac ver. 14

    を用いて行った。

  • 24

    図 11. ANSintU683-ANSintL1142 増幅断片の塩基配列の比較

  • 25

    図 12. CHI3rdU173-CHI3rdL763 増幅断片の塩基配列の比較

  • 26

    図 13. FHTintU1253-FHTintL1631 増幅断片の塩基配列の比較

  • 27

    図 14. F3'5'HintU1363-F3'5'HintL1974 増幅断片の塩基配列の比較

  • 28

    図 15. DFRintU853-DFRintL1267 増幅断片の塩基配列の比較

  • 29

    図 16. Alta_gFLS_U2724-Alta_gFLS_L3422 増幅断片の塩基配列の比較

  • 30

    4.6.10 実験操作フロー図

    サンプル採取 葉 花芽 つぼみ、茎 越冬芽の幼葉

    DNA抽出GenEluteTM Plant Genome DNA Miniprep (SIGMA)キットを用いる方法または、同等の濃度及び純度の DNAが抽出できる方法(CTAB法など)

    電気泳動 DNAの確認、DNA溶液(10-100ng/μl)の調整

    PCR増幅PCR反応

    94˚C 1 分 30 秒

    94˚C 20 秒

    60˚C 40 秒 35 サイクル

    72˚C 1 分

    72˚C 5分

    10˚C ∞

    増幅バンド多型に

    よる解析 PCR産物の電気泳動(1.6%アガロースゲル)

    増幅バンド多型の検出

    推定品種の増幅バンド多型との比較

    違うパターン

    同じパターン

    推定品種ではない

    推定品種の可能性あり。

    シークエンス等のさらなる詳細な解析が必要

  • 31

    5.トラブルシューティング

    問題点 対応

    DNAの抽出効率が悪い。 サンプルが古い。できるだけ若い葉の部

    分を使用する。

    バッファー懸濁時に粘性が高いようであ

    ればバッファー量を増やすか、サンプル

    量を減らすことで対応する。

    サンプリング 若い葉以外、つぼみ等の組織も使用でき

    る。どの組織から DNAを抽出しても結果

    は同じである。また、培養物等のサンプ

    ルも使用可能である。

    増幅バンドが不明瞭である。 抽出 DNAの量、純度を確認する。また、

    標準株で増幅されるか確認することで、

    一連の操作、試薬、器械等に異常がない

    かが判断できる。

    非特異的バンドやスメアーなバンドが見

    られる。

    電気泳動時のロードする量を減らす。ゲ

    ル撮影時の露光時間、絞りを調節する。

    バンドが近接している。 アガロースゲルの濃度を上げて泳動する

    と改善する場合がある(2%ゲル等)。

    バンドのサイズが同じかどうか判断しに

    くい。

    標準株と隣同士で泳動する。

    6.是正事項

    本マニュアルの使用者からの情報収集を行い、必要に応じてマニュアル等の是正措

    置を行う。

    参考文献

    Nishihara, M., Nakatsuka, T., Mizutani-Fukuchi, M., Tanaka, Y., Yamamura, S.

    (2008) Gentians: From gene cloning to molecular breeding. Floricultural and

    Ornamental Biotechnology, published by Global Science Books, UK. pp 57-67.

    Shimada, N., Nakatsuka, T., Nakano, Y., Kakizaki, Y., Abe, Y., Hikage, T. and

    Nishihara M. (2009) Identification of gentian cultivars using SCAR markers based

    on intron-length polymorphisms of flavonoid biosynthetic genes. Scientia

    Horticulturae 119: 292-296中塚貴司、嶋田典基、中野友貴、柿崎裕子、日影孝志、西原昌宏(2008)イントロン長多型を利用したリンドウ品種・系統識別マーカーの開発

  • 32

    園芸学研究 7別冊 2 P306

    平成 20 年度農林水産物等輸出促進事業のうち品種保護に向けた環境整備事業

    委託研究報告書. 研究課題:DNA 品種識別技術マニュアルの開発.

    財団法人岩手生物工学研究センター