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SEAT 2010 チュートリアル - TDK Product Center · 4 製品の検索[製品名から検索・簡易検索] seatには、製品を検索するための機能が複数実装されています。ここでは、「製品名から検索」と「簡易検索」を取り上げます。

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第1章 概要と製品検索 ................................................................................. 1SEATの概要 .................................................................................................... 2SEATの基本 .................................................................................................... 3製品の検索製品名から検索・簡易検索 ......................................................................... 4詳細検索 ..................................................................................................... 5シリーズレンジチャート ............................................................................ 6

第2章 特性の表示 ........................................................................................ 7周波数特性チップビーズのインピーダンス特性 .......................................................... 8コモンモードフィルタのインピーダンス特性 ............................................ 9積層セラミックコンデンサのインピーダンス、ESR特性 ........................ 10積層セラミックコンデンサのESL特性 ..................................................... 11積層セラミックコンデンサのtanδ特性 ................................................... 12インダクタのインダクタンス、Q特性 ..................................................... 133端子フィルタのSパラメータ特性 ........................................................... 143端子フィルタアレイのSパラメータ特性 ................................................ 15積層セラミックコンデンサのSパラメータ特性 ....................................... 16コモンモードフィルタのミックストモードSパラメータ特性 .................. 17コモンモードフィルタアレイのミックストモードSパラメータ特性 ....... 18周波数特性ボタンの種類 .......................................................................... 19

DCバイアス特性インダクタ ................................................................................................ 21積層セラミックコンデンサ ....................................................................... 22

温度特性インダクタ ................................................................................................ 23積層セラミックコンデンサ ....................................................................... 24

電流vs.電圧特性チップバリスタ ......................................................................................... 25

SEAT 2010 チュートリアル

抵抗vs.温度特性NTCサーミスタ ........................................................................................ 26

第3章 シミュレーション ........................................................................... 27パルス応答シミュレーションシングルエンド ......................................................................................... 28差動 ........................................................................................................... 30

TDRシミュレーション差動 ........................................................................................................... 32

温度上昇直流電流によるインダクタ ....................................................................... 34交流電流(リップル)による積層セラミックコンデンサ ........................ 36

静電気放電シミュレーション ....................................................................... 38NTCサーミスタシミュレーション ............................................................... 40

第4章 ツール ............................................................................................. 43ユーザ定義フィルタ積層セラミックコンデンサの並列接続 ..................................................... 44LCフィルタの作成 .................................................................................... 46

特性インピーダンス計算ツール単線路 ....................................................................................................... 48結合線路 ................................................................................................... 49

第5章 その他 ............................................................................................. 51グラフの操作軸設定とマーカ ......................................................................................... 52アラームゾーンとグラフ線 ....................................................................... 53

最新版へのアップデート .............................................................................. 54技術支援ツール ............................................................................................ 55

Appendix1 Sパラメータの基礎 ............................................................ 57

Appendix2 電子部品の分類 ................................................................... 67

CONTENTS

第1章概要と製品検索

2

SEATの概要SEATはSElection Assistant of TDK componentsの略称で、部品の特性を表示したり、簡単なシミュレーションをしたりすることができます。 SEATの主な機能

・ 部品の特性表示機能①周波数特性(インピーダンスやSパラメータなど)②DCバイアス/温度特性③チップバリスタのI-V特性④NTCサーミスタのR-T特性の表示

・シミュレーション機能①パルス応答(シングル/差動)②TDR(シングル/差動)③温度上昇④静電気放電⑤NTCサーミスタの出力電圧

・ツール①ユーザ定義フィルタ②ユーザ定義コンポーネント③特性インピーダンス計算ツール

・その他①豊富な部品検索機能②インターネット更新

製品リスト

製品スペック

DCバイアス/温度特性 検索機能

周波数特性 シミュレーション機能

3

SEATの基本

製品リストで選択

製品スペックが更新

2章参照

シミュレーションでDUTとなる製品を、製品リストで選択

シミュレーション条件フォームを起動して、条件を設定

シミュレーション実行ボタンをクリック

SEATでは、特性を表示する場合でも、シミュレーションをする場合でも、対象となる製品を画面左の製品リストで選択することから始まります。製品リストでは、カテゴリやサブカテゴリ、形状、シリーズなどで分類されていて、この中から評価したい製品をマウスで選択します。

シミュレーションの手順

特性表示の手順製品リストで製品を選択

リボンの特性ボタンをクリック

3章参照

4

製品の検索[製品名から検索・簡易検索]SEATには、製品を検索するための機能が複数実装されています。ここでは、「製品名から検索」と「簡易検索」を取り上げます。

製品名から検索

[ホーム]タブの[製品名]のテキストボックスに、製品名に含まれる文字列(一部でも可)を入力し、  もしくは をクリック

簡易検索

①[ホーム]タブの[簡易検索]ドロップダウンメニューを開いて、製品リストとカテゴリを選択

②形状やその他の項目から検索条件を設定(順序は任意)

③右側のリストに検索結果が表示 ダブルクリックで製品リスト上で選択状態にすることができます。

「製品名から検索」では、ワイルドカード(*や?)を使用することはできません。

5

製品の検索[詳細検索]詳細検索では、簡易検索よりも高度な検索が可能です。たとえば、文字列の検索でワイルドカード(*や?)が使えたり、製品スペックの検索では値の範囲を指定したり、周波数特性から検索したりすることもできます。また、製品の分布状態をマップとして表示する機能も実装しています。

マップ上でシンボルをダブルクリックすることで製品リスト上で選択状態にすることができます。

リスト表示

マップ表示

ワイルドカードの使用スペックからの検索

周波数特性からの検索

マップオプション

6

製品の検索[シリーズレンジチャート]シリーズレンジチャートは、各製品シリーズの代表特性の範囲をチャート化する機能です。

①カテゴリとシリーズを選択

②[チャート更新]ボタンをクリック

レンジチャート

チャートリスト

ダブルクリックすることで製品リスト上で選択状態にすることができます。

第2章特性の表示

8

チップビーズのインピーダンス特性チップビーズは、EMI対策部品として、LSIの電源ラインのデカップリングや、デジタル信号のオーバー /アンダーシュートの抑制などの用途で使用されます。

Step1 Result

製品リストでMMZ1005B121Cを選択

Step2

[インピーダンス]タブの|Z|、R、Xボタンをクリック

・ チップビーズは種類によって、RとXのクロスポイントが異なります。 クロスポイントはノイズ除去効果や波形の歪み方に影響します。・ [インピーダンス]タブの中のDCバイアスを変更することで、DCバイアス印加時の周波数特性を見ることもできます。

|Z|: インピーダンスの絶対値

X: インピーダンスのリアクタンス成分

R: インピーダンスの抵抗成分

9

コモンモードフィルタのインピーダンス特性コモンモードフィルタは電源回路や差動伝送ラインで使用されます。インピーダンス特性を表示する場合はモード(コモン/ディファレンシャル)を選択する必要があります。

Step1

製品リストでACM2520-301-2Pを選択

・ コモンモードフィルタの特性としては、一般的には|Zc|>>|Zd|であることが求められます。

・ その他の特性(RやLsなど)もモード別に表示します。例えば、Lscはコモンモード等価直列インダクタンスを表します。

|Zd|:ディファレンシャルモードインピーダンスの絶対値

Result

Step2

[インピーダンス]タブの[モード]を選択して、|Z|ボタンをクリック

|Zc|:コモンモードインピーダンスの絶対値

10

積層セラミックコンデンサのインピーダンス、ESR特性積層セラミックコンデンサは、RF回路の整合や、LSIの電源ラインのデカップリングなどのさまざまな用途で使用されます。デカップリング用途で使用されるコンデンサのESR(等価直列抵抗)は、電圧変動の影響を知るために評価されます。また、近年では電圧変動の影響を低減するために、任意のESR値になるように設計されたものも存在します。

Step1

製品リストでCERD2CX5R0G106M(ESRコントロールタイプ)を選択

・ 通常の積層セラミックコンデンサのESRは、形状と容量に依存しますが、おおむね数m�~数十m�です。一方、ESRコントロールタイプは数十m�~数�程度がラインナップされています。

Step2

[インピーダンス]タブの|Z|、Rボタンをクリック

Result

|Z|:インピーダンスの絶対値

R:インピーダンスの抵抗成分(ESR)

11

積層セラミックコンデンサのESL特性LSIのスイッチングによる電圧変動の影響を低減するために、デカップリング用途で使用されるコンデンサのESL(等価直列インダクタンス)の値は、できるだけ小さいものが要求されます。

Step1

製品リストでC0816JB1C104K(フリップタイプ–LW逆転)を選択

・ 通常の積層セラミックコンデンサのESLは、形状と容量に依存しますが、おおむね0.5~ 1nHです。一方、フリップタイプなどの低ESLタイプは

数十pH~ 0.2nH程度がラインナップされています。

Step2

[インピーダンス]タブのLsボタンをクリック

Result

フリップタイプ

(参考)標準タイプ

12

積層セラミックコンデンサのtanδ(誘電正接)特性tanδは、主にコンデンサのリアクタンスの純度を示す値として評価され、この値が小さければ小さいほど、コンデンサでの電力損失が小さいということになります(理想的なコンデンサは電力を損失しません)。

Step1

製品リストでC3216X7R1H474Kを選択

Step2

[インピーダンス]タブのD(tanδ)ボタンをクリック

tanδは「%」で表すことが一般的です。

Result

コンデンサとしてのtanδ

自己共振周波数

13

インダクタのインダクタンス、Q特性RF回路の整合用途に使用するインダクタは、RF信号をできるだけロスなく伝送させるために、高いQのものが求められます。また、周波数によってインダクタンスに違いがあるので、公称インダクタンスの値ではなく、使用する周波数でのインダクタンスを知ることも重要です。

Step1

製品リストでMLG0603Q1N0CT(積層セラミック・High-Qタイプ)を選択

Step2

[インピーダンス]タブのLs、Qボタンをクリック

Result-Ls

Result-Q

1.002nH at 100MHz

0.938nH at 2.4GHz

High-Qタイプ

(参考)標準タイプ

14

3端子フィルタのSパラメータ特性(リターンロス、挿入損失)3端子フィルタは、ひとつの部品の中に複数のインダクタやコンデンサを集積することで、信号を急峻に減衰させたり、減衰量を大きくしたりするために使用されます。3端子フィルタは、インピーダンス特性では全体の特性を表現できないので、シングルエンドSパラメータを使って、減衰量をdBで表すことが普通です。

Step1

製品リストでMEM2012S25R0T001を選択

|S21|(挿入損失)

Result

部品の端子とポート番号との関係は、SEATの画面左下のポート配置の中に記載されています。

Step2

ポート配置図を確認しながら、[Sパラメータ]タブで出力/入力ポートを選択して、|S|ボタンをクリック

(例) S11 ポート1から入射した信号がポート1に反射する量 (リターンロス) S21 ポート1から入射した信号がポート2に透過する量 (挿入損失)

・シングルエンドSパラメータ

出力ポート 入力ポート

Sij

|S11|(リターンロス)

15

3端子フィルタアレイのSパラメータ特性(クロストーク)3端子フィルタアレイは、ひとつの部品の中に複数のインダクタやコンデンサで構成されたフィルタを複数個集積したもので、実装面積を大幅に削減できるため、携帯電話などの高密度実装機器などで多く使用されます。一方、各フィルタが隣接していますので、周波数が高くなってくると、クロストークの影響が問題になる場合があります。

Step1

製品リストでMEA1210D501Rを選択

Step2

ポート配置図を確認しながら、[Sパラメータ]タブで出力/入力ポートを選択して、|S|ボタンをクリック

Result

|S31|(遠端クロストーク)

|S21|(近端クロストーク)

16

積層セラミックコンデンサのSパラメータ特性(Series-thruとShunt-thru)SEATに掲載されている一部の積層セラミックコンデンサやチップバリスタのSパラメータは、Series-thruもしくはShunt-thruが選択できるようになっています。特性を表示する際には、間違えないように注意してください。

Step1

製品リストでC1005JB1H221Kを選択

Step2

ポート配置図を確認しながら、[Sパラメータ]タブでSeries/Shunt、出力/入力ポートを選択して、|S|ボタンをクリック

Result

|S21|(Series-thru)

|S21|(Shunt-thru)

1

1

2

2

17

コモンモードフィルタのミックストモードSパラメータ特性(リターンロス、挿入損失)コモンモードフィルタは従来はコモンモード/ディファレンシャルモードインピーダンスで評価されてきましたが、近年の差動伝送の高速化に伴いミックストモードSパラメータで評価されるようになってきました。シングルエンドSパラメータにモード(cやdなど)の添字を付加して表現します。

Step1

製品リストでTCM1210H-900-2Pを選択

Step2

ポート配置図を確認しながら、[Sパラメータ]タブでモードおよび出力/入力ポートを選択して、|S|ボタンをクリック

・ミックストモードSパラメータ

Result

ミックストモードSパラメータのポート番号は、赤色でLogical Portとして記載されています。

出力モード 出力ポート

入力モード 入力ポート

Smnij

|Scc21|(コモンモードの挿入損失)

|Sdd11|(ディファレンシャルモードのリターンロス)

|Sdd21|(ディファレンシャルモードの挿入損失)

(例)Scd21 論理ポート1から入射した ディファレンシャルモード信号が、 コモンモードに変換されて 論理ポート2に透過する量

18

コモンモードフィルタアレイのミックストモードSパラメータ特性(クロストーク)コモンモードフィルタアレイは、DVIなどのように差動伝送ラインが複数チャンネル配置されている部分に使用しますが、高速信号を扱う場合はクロストークの影響が無視できなくなります。

Step1 Result

製品リストでTCM1608G-900-4Pを選択

Step2

ポート配置図を確認しながら、[Sパラメータ]タブでモードおよび出力/入力ポートを選択して、|S|ボタンをクリック

|Sdd21|(ディファレンシャルモードの近端クロストーク)

|Sdd31|(ディファレンシャルモードの遠端クロストーク)

19

周波数特性ボタンの種類-1

インピーダンス

Sパラメータ

インピーダンスの絶対値

Sパラメータの絶対値

インピーダンスの位相

Sパラメータの位相

アドミタンスの位相

等価並列インダクタンス

等価並列キャパシタンス

散逸(損失)係数

アドミタンスの絶対値 等価直列インダクタンス

等価直列キャパシタンスリアクタンス サセプタンス

抵抗 コンダクタンス

品質係数 スミスチャート

スミスチャート 電力損失

電力散乱

定在波比

群遅延

20

周波数特性ボタンの種類-2

影像インピーダンス

除去比 バラン

影像インピーダンスの虚数部

影像インピーダンスの絶対値

影像インピーダンスの実数部

影像インピーダンスの位相

同相除去比

差動除去比

振幅バランス 同相除去比

差動除去比位相バランス

21

インダクタの直流重畳特性一般にインダクタのインダクタンスは、室温中で、ある周波数の小振幅信号で測定したときの値が代表値として使用されます。しかし、電源回路などでは、直流が重畳された状態で使用されるため、インダクタンスの値が大きく変化する場合があります。

Step1 Result

製品リストでVLC5045T-6R8Mを選択

Step2

[DCバイアス/温度特性]タブの[DCバイアス特性]グループで、周波数、信号レベル、周囲温度を選択・設定して、Lsボタンをクリック

20°C

105°C

周囲温度:–20°C

22

積層セラミックコンデンサのDCバイアス特性一般に積層セラミックコンデンサの容量値は、室温中で、ある周波数の小振幅信号で測定したときの値が代表値として使用されます。しかし、デカップリング回路のようにDCバイアスが印加される場合は、容量値が大きく変化する場合があります。

Step1 Result

製品リストでC3216X5R1H105Kを選択

Step2

[DCバイアス/温度特性]タブの[DCバイアス特性]グループで、周波数、信号レベル、周囲温度を選択して、Csボタンをクリック ・ 積層セラミックコンデンサの公称容量値は、1kHz–1Vrmsや120Hz–

0.5Vrmsなどの条件で測定されます。・ 積層セラミックコンデンサの主な定格電圧記号

0G:4V 0J:6.3V 1A:10V1C:16V 1E:25V 1H:50V2A:100V 2E:250V 2J:630V

周囲温度:20°C

23

インダクタの温度特性一般にインダクタのインダクタンスは、室温中で、ある周波数の小振幅信号で測定したときの値が代表値として使用されます。しかし、使用する環境の温度によっては、インダクタンスの値が大きく変化する場合があります。

Step1 Result

製品リストでVLC5045T-6R8Mを選択

Step2

[DCバイアス/温度特性]タブの[温度特性]グループで、周波数、信号レベル、DCバイアスを選択・設定して、Lsボタンをクリック

直流重畳:0A

1.6A

0.8A

24

積層セラミックコンデンサの温度特性一般に積層セラミックコンデンサの容量値は、室温中で、ある周波数の小振幅信号で測定したときの値が代表値として使用されます。しかし、使用する環境の温度によっては、容量値が大きく変化する場合があります。

Step1 Result

製品リストでC3216X5R1H105Kを選択

Step2

[DCバイアス/温度特性]タブの[温度特性]グループで、周波数、信号レベル、DCバイアスを選択して、Csボタンをクリック ・ 積層セラミックコンデンサの主な温度特性記号

JB: –25~ +85°C/±10% JF: –25~ +85°C/+30,–80%X5R: –55~ +85°C/±15% X6S: –55~ +105°C/±22%X7R: –55~ +125°C/±15% X8R: –55~ +150°C/±15%Y5V: –30~ +85°C/+22,–82%

DCバイアス:0V

25V

25

チップバリスタの電流vs.電圧特性チップバリスタは通常は積層セラミックコンデンサのように振る舞いますが、大きな電圧が印加されると、急激に抵抗が減少して、電流が流れる非線形素子です。その特性を確認するために、電流vs.電圧特性を表示します。

Step1 Result

製品リストでAVR-M1608C080MTAABを選択

Step2

[その他の特性]タブの、I-Vボタンをクリック

このあたりから急激に電流が流れる

26

NTCサーミスタの抵抗vs.温度特性NTCサーミスタは温度によって抵抗値が変化する部品で、温度センサとして利用されます。NTCのNはNegativeの頭文字で、負の温度係数を持っています(つまり温度が高くなればなるほど、抵抗値が小さくなる)。NTCサーミスタにはB定数という値が代表特性として使われますが、B定数とは温度に対する抵抗の変化率を表したものです。つまり、この値が大きければ大きいほど、温度に対して敏感な素子だといえます。

Step1 Result

製品リストでNTCG203EH471Jを選択

Step2

[その他の特性]タブの、R-Tボタンをクリック

B定数:3250K

(参考)4150K→傾きが大きい

第3章シミュレーション

28

パルス応答シミュレーション[シングルエンド](設定)デジタル伝送で利用されるパルス波は、基本周波数とその高調波を含んでいます。高周波の信号は、基板上の短い伝送線路などからも簡単に放射されるため、不要輻射の原因となります。そのため、チップビーズなどを使って、デジタル信号としての品質を保ちつつ、高調波成分のみを減衰させる手法がとられています。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[パルス応答シミュレーション–シングルエンド]ボタンをクリック

DUTとして、製品リストでMMZ1005B121Cを選択

Step2 各条件(入力波形、ダンピング抵抗、ドライバ、レシーバ、伝送線路、観測点など)を設定(ここでは既定値のまま)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

伝送波形 スペクトラム

29

Result

パルス応答シミュレーション[シングルエンド](結果)

フィルタなし

ダンピング抵抗

MMZ1005B121Cチップビーズ1個でオーバー /アンダーシュートを抑制

(参考)MMZ1005D121C+ダンピング抵抗(100�)ダンピング抵抗を組み合わせることで、リンギングを抑制し、かつ高周波成分を大きく減衰

(参考)MMZ1005D121Cリンギングが発生

30

パルス応答シミュレーション[差動](設定)USBやHDMIなどの近年の高速シリアル伝送には、差動伝送方式が採用されています。差動伝送は、外来ノイズに強く、高速伝送化に向いていますが、伝送線路が非対称であったり、スキュー(差動信号の時間的なずれ)などによりコモンモード成分が発生します。コモンモード電流は小さな電流でも大きな不要輻射の原因になるため、これらを抑制するためにコモンモードフィルタが利用されます。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[パルス応答シミュレーション–差動]ボタンをクリック

DUTとして、製品リストでACM3225-102-2Pを選択

Step2 各条件(入力波形、出力/入力インピーダンス、伝送線路、観測点など)を設定(ここでは既定値のまま)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

31

伝送波形 伝送波形(コモンモード成分のみ)

Result

ACM3225-102-2Pスキューを抑制して伝送信号を改善(コモンモード成分のみを大きく減衰)

(参考)MMZ1608R102A チップビーズは差動伝送には不適

パルス応答シミュレーション[差動](結果)

フィルタなし

32

TDRシミュレーション[差動](設定)TDR(Time Domain Refl ectometry)は、ステップパルスを回路に入力し、その反射波から回路の特性インピーダンスを求める手法です。特に数百MHz以上の信号を扱う場合は、伝送線路やそこで使用する部品もできるだけ整合していることが求められます。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[TDRシミュレーション–差動]ボタンをクリック

DUTとして、製品リストでACM2012H-900-2Pを選択

Step2 各条件(システムインピーダンス、入力パルスなど)を設定(ここでは既定値のまま)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

33

Result

(参考)標準タイプ

TDRシミュレーション[差動](結果)

例:HDMI スペック85~115�

ACM2012H-900-2P高速差動伝送用として、ほぼ100�に整合

34

直流電流によるインダクタの温度上昇(設定)電源回路で使用されるインダクタには大きな直流電流が流れることがありますが、インダクタの巻線抵抗によって電力を消費するため、インダクタそのものの温度が上昇します。インダクタの温度は、電流値の2乗に比例して上昇しますので、実使用の際にも特に注意が必要です。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[その他のシミュレーション–温度上昇]ボタンをクリック

[インダクタ]タブで周囲温度を設定(熱抵抗と直流抵抗は、選択されている製品の参考値が自動で入力されます)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

Step2 製品リストでVLC6045-100Mを選択

・ 熱抵抗とは、インダクタで1W消費したときに、上昇する温度のことをいいます。つまり、この値が小さければ小さいほど、大電流が流れた時に温度が上昇しにくいことを表します。

35

Result

25°C

周囲温度:–20°C

直流電流によるインダクタの温度上昇(結果)

105°C

36

交流電流(リップル)による積層セラミックコンデンサの温度上昇(設定)積層セラミックコンデンサは、周波数が高くなるとインピーダンスが小さくなるため、大きな高周波電流が流れることで、コンデンサそのものの温度が上昇します。特に整流後の平滑コンデンサとして使用する場合に、大きなリップル電圧によって、コンデンサの温度が上昇する場合がありますので、注意が必要です。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[その他のシミュレーション–温度上昇]ボタンをクリック

[コンデンサ]タブで、各条件(電源インピーダンスなど)を設定(熱抵抗は、選択されている製品の参考値が自動で入力されます)

Step2 製品リストでC4532X5R1H155Kを選択

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

・ 熱抵抗とは、コンデンサで1W消費したときに、上昇する温度のことをいいます。つまり、この値が小さければ小さいほど、大電流が流れた時に温度が上昇しにくいことを表します。

37

Result

200kHz

交流電流(リップル)による積層セラミックコンデンサの温度上昇(結果)

500kHz

周波数:100kHz

38

静電気放電シミュレーション(設定)静電気として、数kVといった電圧が瞬間的に放電されることで、LSIが壊れてしまうことがありますが、この対策としてチップバリスタがよく使用されます。チップバリスタは通常はコンデンサのように振る舞いますが、ある電圧以上が印加されると、急激に抵抗が減少して、電流が流れる非線形素子です(2章:チップバリスタの電流vs.電圧特性参照)。この部品を、グランドとの間に挿入することで、大きな電圧が印加されたときに、LSIに大電流が流れて壊れてしまうことを防ぎます。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[その他のシミュレーション–静電気放電(バリスタ)]ボタンをクリック

CRモデルを設定(ここでは既定値のまま)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

Step2 製品リストでAVR-M1005C080MTAABを選択

39

Result

フィルタなし→負荷に大電圧が印加

チップバリスタ→大幅に電圧を抑制

静電気放電シミュレーション(結果)

40

NTCサーミスタシミュレーション(設定)NTCサーミスタは、温度によって抵抗値が変わるため(2章:NTCサーミスタの抵抗vs.温度特性参照)、温度センサとして利用されます。一般的には、NTCサーミスタといくつかの抵抗器と組み合わせて、そこに電圧を印加し、その出力電圧の変化から温度を判別する手法がとられます。

Step1 Step3[シミュレーション/ツール]タブの[その他のシミュレーション–NTCサーミスタ]ボタンをクリック

各条件(回路、入力電圧、抵抗値など)を設定(ここでは既定値のまま)

Step4 [シミュレーション実行]ボタンをクリック

Step2 製品リストでNTCG104BH103Hを選択

41

Result

R1=1k�

NTCサーミスタシミュレーション(結果)

20k�

傾きが大きいほど、温度に対する感度が良好ということ

Max.

Min.

Typ.

5k�

第4章ツール

44

ユーザ定義フィルタ[積層セラミックコンデンサの並列接続](設定)ユーザ定義フィルタは、複数の部品を組み合わせて、1つの仮想部品を作成する機能です。たとえば、チップビーズを直列に接続したり、コンデンサを並列に接続したりして、そのインピーダンス特性を確認することができます。そのほかに、インダクタとコンデンサを使ってLCフィルタを構成し、Sパラメータ特性(リターンロスや挿入損失など)を確認するといったこともできます。ここでは、積層セラミックコンデンサを3個並列に接続したときのインピーダンス特性を確認してみます。

Step1

[シミュレーション/ツール]タブの[ツール–ユーザ定義フィルタ]ボタンをクリック

Step2

[並列接続(1ポート)]タブを開き、製品リストで組み合わせるコンデンサを選択して、[適用]ボタンをクリック(ここでは、C1608JB1H103K(C=0.01μF)、C1608JB1H104K(C=0.1μF)、C1608JB1E105K(C=1μF)を設定)

Step3

出力名とコメントを入力して、[作成]ボタンをクリック

0.01μF

0.1μF

1μF

45

ユーザ定義フィルタ[積層セラミックコンデンサの並列接続](結果)

Result

合成した製品は、ユーザ製品リストの中に登録されます。また製品プロパティには、合成タイプや合成した製品のリスト、登録日が表示されます。

C1608JB1H103K(C=0.01μF)

C1608JB1E105K(C=1μF)

C1608JB1H104K(C=0.1μF)

合成した製品-3Caps

インピーダンスの絶対値特性

ユーザ製品リスト

・ Sパラメータの配置はリボンの[Sパラメータ]タブの中で設定します。

46

ユーザ定義フィルタ[LCフィルタの作成](設定)ここでは、インダクタと積層セラミックコンデンサ(Shunt-thru)を接続して、LCフィルタを作成してみます。

Step1

[シミュレーション/ツール]タブの[ツール–ユーザ定義フィルタ]ボタンをクリック

Step2

[縦続接続(2ポート)]タブを開き、製品リストで組み合わせるインダクタとコンデンサを選択して、[適用]ボタンをクリック(ここでは、MLP2012S1R0M(L=1μH)、C1608JB1H104K(C=0.1μF: Shunt-thru)を設定)

Step3

出力名とコメントを入力して、[作成]ボタンをクリック

0.1μF

1μH

1 2

47

ユーザ定義フィルタ[LCフィルタの作成](結果)

Result

合成した製品は、ユーザ製品リストの中に登録されます。また製品プロパティには、合成タイプや合成した製品のリスト、登録日が表示されます。

MLP2012S1R0M(L=1μH)

合成した製品-LC Filter C1608JB1H104K(C=0.1μF/Shunt-thru)

|S21|特性(挿入損失)

ユーザ製品リスト

48

特性インピーダンス計算ツール[単線路]特性インピーダンス計算ツールは、基板の寸法(線路幅や基材の厚みなど)と材料の比誘電率から、特性インピーダンスを計算するツールです。

Step1

[シミュレーション/ツール]タブの[ツール–特性インピーダンス計算ツール]ボタンをクリック

Step2

左側のリストから線路の種類を選択

Step3

表示される絵を参考に、各寸法と比誘電率を入力して、[計算]ボタンをクリック

Result

特性インピーダンス(Z0)と実効比誘電率(εeff)が計算されます。

49

Result

コモン/ディファレンシャルモードの特性インピーダンス(Z0)と実効比誘電率(εeff)が計算されます。

特性インピーダンス計算ツール[結合線路]前ページの単線路と同じ手順で、結合線路の特性インピーダンスを計算することができます。

第5章その他

52

グラフの操作[軸設定とマーカ]SEATで表示されるグラフは、統一された方法で操作することができます。

軸設定

[グラフ設定]ペインの[XY軸]グループで設定

マーカ

[グラフ設定]ペインの[マーカ]グループで設定

・ Ctrlキーを押しながら、マウスでグラフの領域を選択することで、その部分を拡大することができます。

・ グラフ上でダブルクリックをすることで、XY軸ともにオートレンジ設定となります。

チップビーズのインピーダンスの絶対値特性 チップビーズのインピーダンスの絶対値特性

マーカを表示したいアイテムを選択(選択したアイテムは背景が白)

53

グラフの操作[アラームゾーンとグラフ線]SEATで表示されるグラフは、統一された方法で操作することができます。

アラームゾーン

[グラフ設定]ペインの[アラームゾーン]グループで設定

グラフ線

[グラフ設定]ペインの[グラフ線]グループで設定

積層セラミックコンデンサの温度特性 基準インピーダンスの違いによる3端子フィルタの|S21|特性

グラフ線を変更したいアイテムを選択(選択したアイテムは背景が白)

10�

150�温度特性X7Rの範囲

Sパラメータの基準インピーダンス:50�

54

最新版へのアップデートSEATは、インターネットに接続できる環境であれば、差分データのみをダウンロードして最新版へアップデートすることができます。アップデートの有無の確認だけであれば数秒で終わりますので、時々実行するようにしてください。

Step1

インターネットに接続できる環境で、[ウィンドウ/ヘルプ]タブの[最新版のチェック]ボタンをクリック

Step2

画面に表示されたウィザードに従って、最新版へのアップデートを実行

TDKでは、SEATのほかに、回路シミュレータ用電子部品モデル「TVCL」や部品特性ビューア「CCV」を提供しています。

・部品特性解析ソフト「SEAT」(SElection Assistant of TDK components)→部品の特性を表示したり、シミュレーションしたりできるWindows用ソフトウェア

・部品特性ビューア「CCV」(Components Characteristic Viewer)→部品の特性をブラウザ上で表示できるWebアプリケーション

・回路シミュレータ用電子部品モデル「TVCL」(TDK Virtual Components Library)→回路シミュレータ用データおよびモデル集

55

TDKの技術支援ツール

分類 名前 概要

汎用電子部品モデル

S-parameter Data Library 実測のSパラメータデータ集

等価回路モデルライブラリ PDF形式の等価回路モデル集

SPICE Netlist Library ネットリスト形式の等価回路モデル集

シミュレータ専用電子部品モデル

Cadence Allegro® PCB PI option用電子部品モデル等価回路モデル

Cadence Allegro® PCB SI用電子部品モデル

図研CR-5000 Lightning用電子部品モデル

等価回路モデル、回路図シンボル、フットプリントデータ

Ansoft Designer® & NEXXIM®用電子部品モデル

Agilent ADS用電子部品モデル

AWR Microwave Offi ce用電子部品モデル

TVCLの内容

http://www.tdk.co.jp/seat

http://www.tdk.co.jp/tvcl

http://www.tdk.co.jp/ccv

Appendix1Sパラメータの基礎

58

(A1-1)  

Sパラメータは比なので、基本的には無次元量です(単位がありません)。しかし、その大きさを言う場合、常用対数をとって、dB単位で表わすのが普通です。参考のため、表A1-1に代表的な値を載せておきました。

表A1-1 Sパラメータの大きさ

A1-2 性質Sパラメータのいくつかの性質を列挙します。これらは覚えておくと便利です。・無損失回路の場合、S行列はユニタリ行列になります。従って、2ポート回路では、 

 (Feldtkellerの公式)

が成り立ちます。損失が無いので全割合を足せば100%になるということです。このことから、「S21(S11)が大きいときはS11(S21)が小さい」という関係にあることがわかります。

A1-1 定義Sパラメータ(Scattering parameter)とは、交流信号を波動と捉えたとき、その波の散乱度合いで対象となる回路の特性を表わしたものです。「散乱」という用語は、ここでは反射(入射側に戻ってくるもの)と伝送(別な方向に伝わるもの)の総称です。図A1-1に光との類推で図示してみました。「度合い」というのは、どの程度減衰されて、あるいは増幅されて伝わるかということを指していますが、それを電力(正確にはその平方根を取ったもの)で計量します。散乱度合い(Sパラメータ)によって対象回路の線形な性質はすべて把握できます。

図A1-1 Sパラメータの概念図(光との類推)

対象物

入射a1

S11=b1/a1

反射b1

透過,伝送b2

S21=b2/a1

対象回路のポート(出入り口)に番号を付け、「ポートjに入射→ポートiで検出」されるSパラメータをSijと記します。i=jの場合は反射、i≠jの場合は伝送を表わします。従って、nポート回路の場合、n2個のSパラメータが存在することになりますが、それらを行列の形に並べたのをS行列(散乱行列)と言います(式(A1-1))。詳細な定義は教科書([1]~ [5])などを参照してください。

59

option line(#行)の意味は表A1-2をご参照ください[6]。次の行からは、複数の列で構成された数値が並びます。一番左の列は周波数です。この例ではDC~ 6GHz(0Hz~ 6000MHz)になっています。周波数範囲やその間隔は任意ですが、低い順に並んでいなくてはなりません。残りの8列は、その周波数でのSパラメータ値です。2ポートの場合は、S11、S21、S12、S22の順に並んでいます。各Sパラメータは2つの実数(この例ではMA形式だから絶対値と位相)で表わされていますので、全部で8列(周波数を入れると9

列)となります。2ポート以外の場合もほぼ同じです(数値の並び順が行列のようになるなど、多少の違いはありますが)。

表A1-2 option line(#行)の文法

例 規格MHz 周波数の単位。S 回路行列の種類。S/Z/Yなど。MA 複素数の表現形式。MAは絶対値と位相(magnitude/

angle)のこと。その他にRI(real/imaginary)とDB(dB/angle)という形式もある。位相の単位は「度」。

R50 基準インピーダンス/�を示す。R50は、50�ということ。

A1-4 Sパラメータを使う理由電子機器の高速化に伴ない、デジタル設計においてもアナログ的な性質(SI= Signal Integrity)が重視されてきました。そのため、従来はやや特殊な扱いであったSパラメータも、今また注目が集まっています。Sパラメータは、どういう場面で、そしてどういう理由で使われるのでしょうか。いくつかを列挙してみました。・信号や電力(エネルギー)の授受を表わしている:そのため、フィルタの減衰量や能動素子の変換利得など、物理量として意味がある。

・2ポート受動回路の場合は、(等号は無損失のとき。前記)となります。従っ

て、受動回路のSパラメータは1(0dB)を越えません。この左辺、を"電力散乱率"と称します。それは、対象回路の中で

どの程度電力が消費されるかを示しています。 で、小さいほど損失性ということになります。

・カットオフ周波数とは、フィルタなどでその通過域と阻止域の境界を示す周波数です。概略、|Sij|=–3dB(半分の電力が通過する)となる周波数と考えてよいでしょう。従って、無損失2ポート回路の場合、カットオフ周波数では、|S11|=|S21|となっています(|S11|のグラフと|S21|のグラフの交点、実例は図A1-6参照)。・可逆な回路(受動部品で言えば一方向系(アイソレータやサーキュレータなど)でないもの)は、S行列が対称行列になります。従って、Sij=Sjiです。ミックストモードSパラメータ(A1-10節参照)でも同様に、Scc21=Scc12, Scd21=Sdc12, Sdc21=Scd12, Sdd21=Sdd12が成り立ちます。

A1-3 TouchstoneフォーマットSパラメータの測定は、最近ではネットワークアナライザを使うのが一般的です。その際、データを保存する形式としては、後に数値としてやり取りしたり、シミュレータで使う予定があるなら、いわゆるTouchstone形式(のテキストファイル(.snp))にしておく必要があります。Touchstoneファイルの例を図A1-2に示します。

図A1-2 Touchstoneファイルの例

60

表A1-3 インピーダンスを表現する諸量

領域

誘導性(Inductive)

容量性(Capacitive)

Ls R

表現回路 D= tanδ=1/Q

X≧0 ,B≦00≦θ≦π/2 X=ωLs B=-1 /ωLp

D=R/X=-G/B RG=1 / (1+Q 2)XB=-1 / (1+D 2)Cs=Cp (1+D 2)Lp=Ls (1+D 2)

RG≒D 2, XB≒-1Cs≒Cp , Lp≒Ls

D=R/ωLs=ωLpGD=cotθδ=π/2-θ

D=-R/X=-G/BD=ωCs R=G/ωCpD=-cotθδ=π/2+θ

Cs R Cp

G

Lp

G

X=-1 /ωCs B=ωCpX≦0 ,B≧0-π/2≦θ≦0

相互関係

D≪1のときの近似

(インピーダンス Z=R+jX=|Z|e jθ, アドミタンス Y=G+jB=|Y|e - jθ、とL、C、Q、D=tanδの関係)

ここでのL値やC値は虚数部を表現する一種のパラメータです。具体的に言えば、Ls、Cpはそれぞれ、リアクタンスX、サセプタンスBを角周波数ωで除したものです。それ以上でも、それ以下でもありません。例えば、コンデンサを測定し、Cpを表示させたとします。それがコンデンサの真の静電容量(誘電体の誘電率に比例するもの)になっているかどうかは、その測定周波数において、対象となるコンデンサがCとRの並列回路で(近似的に)表わされうるかどうかということによります。自己共振周波数を超えていれば、Cpは負になっているでしょうし、電解系のコンデンサのようにコンデンサと直列に入っている(陰極の)抵抗が大きく影響している(D>>1)のであれば、自己共振周波数以下でも、Cpが何を指しているかは不明です(電解系のコンデンサでは静電容量を測定する際、Csで見るのが普通です)。従って、少々逆説的ですが、測定モードをCpにするかCsにするかは、測定する前からわかっていないといけないということになります。もっとも、2つの(独立な)パラメータを取得してあるならば、測定後に表A1-3の式を使って、変換することは可能ですが。一方、インピーダンスやアドミタンスの実数部は回路の損失を表わします。実数部そのものではなく、実数部と虚数部の比D(=tan�、損失係数)で表現することもあります。�はインピーダンスあるいはアドミタンスの位相の余角に相当します(が、その値自体を扱うことはほとんどありません)。低損失なものを扱うときはtan�が小さくなりますので、100倍して%表示することがあります。またtan�の逆数、Q(品質係数)も広く使われています。

・高周波では、対象物が波長程度の大きさになり、場所による時間差を考慮する必要がある。そのため反射、伝送といった関係で現象を捉えた方が理解しやすいし、式も簡潔になる。伝送線路のSパラメータが、式(A1-13)のような簡単な式で表わされるのは、そういったことの一端である。・受動回路では常に存在する(発散しない):従って、例えば理想トランス網の解析などに有効。・高周波で測定可能:厳密な開放、短絡といった終端条件は、高周波では実現が難しい。その点、Sパラメータは抵抗終端で定義されているので測定しやすい。そういった測定可能な量で記述しておけば、計算が面倒でない(Z

行列とかY行列とかに変換する手間がかからない)。

A1-5 インピーダンス線形な1ポート(2端子)回路の特性は1つの複素数で記述できます。インピーダンスやアドミタンス、反射係数などがそうです。これらについては説明を要さないと思いますが、簡単にだけ触れておきましょう。端子間の電圧と端子を流れる電流の比が、インピーダンスZ、そしてその逆数がアドミタンスYです。複素数なので、実虚あるいは極形式など2つの実数で表わせます。インピーダンスの実数部は「抵抗R」、虚数部は「リアクタンスX」と呼ばれます。アドミタンスの実数部は「コンダクタンスG」、虚数部は「サセプタンスB」です。2つの実数で決められるので、コンデンサと抵抗器(C-R)あるいはコイルと抵抗器(L-R)の組み合わせ回路で表現することも可能です。組み合わせ方は並列、直列がありますので、結局全部で4通りあることになります(表A1-3参照)。

61

図A1-3 インピーダンス平面からスミスチャートへ

X

R

図A1-4 スミスチャートにLCR直列回路をプロットする

ImΓ

ReΓ

-j

+j

0-1(short) (open)

+1

C R L

図A1-4の青線はQ=1の等Q円を示しています。それは、スミスチャート上でX=±Rの点を結んだものです(従って、インピーダンス平面では原点を端とする傾き±1の半直線に相当します)。例として、LCRの直列共振回路を図A1-4に赤でプロットしました。周波数は図中に明示されていませんが、低周波では右端(Γ=1、open)にあり、そこから出発し、周波数が増加すると時計回りにまわって、高周波の極限では再び右端に戻ります。インピーダンス平面では、点(R、0)を通り虚軸に平行な直線になりますが、それを図A1-3のように丸めたのが、上記の軌跡になるわけです。Fosterのリアクタンス定理にあるように、リアクタンスは周波数の増加関数ですので、スミスチャート上では時計回りとなります。LCR直列回路の共振周波数は、

(A1-4)   ,

tan�を使うか、Qを使うかは、その分野で慣習的に決まっていることが多いと思います。コイルとコンデンサを(直列または並列に)つなげると共振回路になります。それぞれに損失があった場合、共振回路のQ(=中心周波数/半値幅、共振の鋭さを表わす)は、コイル、コンデンサの品質係数QL、QCと次のような関係にあります。

(A1-2)   Q1 = +QL

1QC .1

従って、コイル/コンデンサのQは、無損失(Q=∞)なコンデンサ/コイルをつなげたときの共振回路のQと定義することもできます。

A1-6 スミスチャート1ポートのSパラメータを反射係数と言います(反対に反射係数を2ポート以上に拡張したものがSパラメータとも言えます)。反射係数Γは、同じ1

ポートパラメータであるインピーダンスZやアドミタンスYと次のような関係にあります。

(A1-3)   = =Z+Z0

Z-Z0

Y0+Y .Y0-Y

Γ

ただし、Z0=1/Y0は基準インピーダンスです。スミスチャートというのは、反射係数の複素平面上に、インピーダンスを直読できるような目盛りを振ったものです。ΓとZ、Yは(無限遠点を含めれば)、式(A1-3)のように一対一に対応していますので、そのようなことが可能なのです。対応の様子を図A1-3に示します。この図を見ればわかるように、受動回路(インピーダンスの複素平面の右半平面)は、スミスチャートの内部になります。そして、short(Z=0�、インピーダンス平面の原点)が左端(Γ=-1)、open(Z=∞�)が右端(Γ=1)、Z=Z0が中心(Γ=0)になります(図A1-4)。

62

無損失の場合、これらの式からわかるように、①series-thruならZ=j2Z0のとき、②shunt-thruならY=j2Y0のとき 、カットオフとなります。ビーズの例で見てみましょう(図A1-6)。

図A1-6 ビーズのインピーダンスとSパラメータ

(a)

(b)

100ΩX R

|Z|

|S11||S21|

低域のカットオフ周波数は5MHz付近ですが、その周波数で、ちょうど|Z|=100�になっていることがわかります。100�というのは、もちろん、50�系のSパラメータを見ているからです。基準インピーダンスが50�でなければ、また違ってきます(図A1-7参照)。インピーダンスとSパラメータの関係は、理想的には上記のようになりますが、実測値を使って計算する場合は、少々注意が必要です。実際の測定では、図A1-5のように配置しても、GNDとの相互作用が何らか存在するからです。

A1-8 縦続接続回路の接続形態として最もよく使われているのは縦続接続です。2ポート回路Mと回路N(それらのS行列をSM、SNとします)を縦続接続したときの全体のS行列SMNは、

(A1-8)  .

となりますが、それは赤線が実Γ軸を横切る瞬間です。そして、両側の等Q

円との交点が半値幅 を示します。そして、LCR直列回路のQは、

(A1-5)   .        

となります。ただし、 . です。この図からわかるように、損失が少ない(赤線がスミスチャート外周に近い)ほど、半値幅が狭くなり、従って、Qが高くなります。スミスチャートはインピーダンス測定(反射係数からの換算)や整合回路の設計、マイクロ波増幅器の設計などに使われます。

A1-7 2端子部品のSパラメータ2端子部品、すなわちインピーダンスで特性付けられる部品を配置して2

ポート回路を構成してみましょう。最も簡単なものとして、図A1-5に示すような2つのタイプが挙げられます。実際の回路ではこれらをつなぎ合わせた構成(接続については次節参照)になっていることが多いと思いますが、そういった意味でこれらは基本形です。SEATで表示するSパラメータもこの配置のものです。

図A1-5 2端子部品で2ポート回路を構成する

①series-thru

Z

②shunt-thru

Y

Sパラメータの理論式は次のようになります。

(A1-6)  

(A1-7)  

63

も、適当なモードを取る(モードについてはA1-11節参照)ことにより独立になるならば、それぞれのモードで式(A1-11)を使うことができます。なお、特性インピーダンスはTDR測定でも求められます。その場合は、時間軸特性(位置情報)が得られます。ちなみに無損失伝送線路のS行列Stは次式で表わされます。

(A1-12)  

ただし 、 、tは電気長(単位は時間)です。基準インピーダンスを線路の特性インピーダンスに取れば、ρ=0なので、式(A1-12)は、

(A1-13)  .

と簡単になります。整合しているので、反射(S11)が無く、またS21は電気長分だけ位相が回ります。逆に式(A1-13)に基準インピーダンスの変更(次節参照)を施したものが、式(A1-12)となります。式(A1-12)の分母は不整合による多重反射を表わしているわけです。

A1-10 基準インピーダンスSパラメータを使う上で、あるいは理解する上で重要な概念に基準インピ-ダンスというものがあります[4]、[5]。Sパラメータの値を示すとき、単純にS21がxxdBとか言ったりしますが、本来は、yy�を基準にしたときのS21がxxdBと言う必要があります。たいていの場合、50�基準なので省略しても問題は無いのですが、何かを基準にしたときの、言わば相対値だということを忘れてはなりません。Sパラメータを取得(測定やシミュレーションで)した際の基準値が必ず付属しているのです。基準というのは次のような意味です。Zパラメータ(インピーダンス)は通常、基準値などは付いていませんが、付けて言うことも可能です。例えば、50�基準ならば、200�のことを4と、5�のことを0.1と称すればよ

となります。ただし、接続されるポートの基準インピーダンスは等しくなければなりません。縦続接続の計算ではF行列やT行列を用いることが多いのですが、元がS行列で表わされているならば、変換しなくて済む分、式(A1-8)は便利です。回路Mのポート2を終端したときの入力インピーダンス(反射係数ΓINで表わす)は、上記縦続接続で、回路Nが1ポート回路(その反射係数をSN11とする)の場合に相当するので、式(A1-8)の(1、1)要素、

(A1-9)   = + 1-SM22SN11

SM12SN11SM21ΓIN SM11 .

となります。

A1-9 伝送線路の特性伝送線路(もしくはフィルタなどを伝送線路と見立てたとき)の特性として、群遅延時間や特性インピーダンスがあります。群遅延時間 tGDは、S21の位相を用いて、

(A1-10)   .

で与えられます。この値が周波数に対して平坦でないと、デジタル波形のように複数の周波数成分を持つ信号は歪みが発生します。特性インピーダンスZ0tは、Open/Short法(他端をOpen、Shortしたときの入力インピーダンスから Z0t = Zopen ・ Zshort として求める)で算出することができます。OpenまたはShort終端のときの入力インピーダンスは式(A1-9)でSN11=±1とすれば得られますので、結局、特性インピーダンスZ0tは、Sパラメータを用いて、

(A1-11)  Z0t

Z0=

(1-S11+S22-|S |)(1+S11+S22+ |S |)

(1-S11-S22-|S |)(1+S11-S22-|S |)

.

と書くことができます。これは影像インピーダンスを求めていることに相当します。この方法は、Open/Short法を原理としているので、λ/4以下の低い周波数でないと精度良く求まらないということに注意が必要です。結合線路で

64

技術ですが、クロックの高速化とともに再び注目を集めています。差動伝送はディファレンシャルモードやコモンモードといったモード(コラム参照)を利用したシステムですが、その場合、Sパラメータもそういったモード空間で考える必要があります。それがミックストモードSパラメータ(modal Sパラメータ)です[5]、[7]。通常のSパラメータ(これをミックストモードSパラメータに対して、シングルエンデッドSパラメータ、あるいはnodal Sパラメータと言う)はポートごとの応答を表わしているのですが、ミックストモードSパラメータは2つのポートの和信号(コモンモード)や差信号(ディファレンシャルモード)の応答を表わしています。2入力、2出力型の4ポート回路で説明します(図A1-8)。ここでは、ポート1とポート3、ポート2とポート4が組になっています。

図A1-8 4ポートSパラメータ

1

3

2

4

C1

D1

C2

D2 

ミックストモードSパラメータは次のような意味があります。・Sccij:コモンモードの応答・Sddij:ディファレンシャルモードの応答

いのです。この場合は、割り算をしただけですので単純明快です。Sパラメータの場合は少し複雑(式(A1-3)参照)なので、少々理解しにくい面もありますが、何かを基準にした「相対値」だということには変わりありません。50�というのが単なる基準値である以上、変更が可能(再規格化=基準インピーダンスの変更)です。つまり、50�のときのSパラメータSがわかっていれば、それ以外の基準インピーダンスでのSパラメータS'に直すことができます。計算式は以下の通りです。

(A1-14)  

ただし、 です。Z0は元の基準インピーダンス、Z0'

は新しい基準インピーダンスです。またIは単位行列です。ここで、注意しなければならないのは、S'21だけが知りたい場合でも、元のSパラメータは全てのSijが必要ということです。

図A1-7 ビーズのSパラメータのZ0依存性

|S21|

|S11|

矢印は基準インピーダンスの増える(10Ω→50Ω→100Ω)方向

図A1-7はseries-thru配置のビーズのSパラメータを10、50、100�基準で描いたものです。基準インピーダンスが小さいほど、高い減衰能力を有することがわかります。shunt-thru配置のコンデンサは、ここには図示しませんが、その逆で、高インピーダンスほど減衰能力が高くなります。

A1-11 ミックストモードSパラメータ1990年代後半から、デジタル信号の伝送方式として、高速差動伝送が実用化されてきました。差動伝送方式(平衡伝送とも言う)は古くからあった

65

参考文献[1] 太田勲,「電磁波回路のSパラメータによる表現とその基本特性」,

MWE(Microwave Workshops & Exhibition)'97 Digest,pp.427-436,1997

[2] 荒木純道,「Sパラメータに基づく電磁波回路の解析と設計」,MWE(Microwave Workshops & Exhibition)'97 Digest,pp.437-445,1997

[3] 高橋秀俊,藤村靖,「高橋秀俊の物理学講義 -物理学汎論-」,丸善,1990

[4] K.Kurokawa, "Power waves and the scattering matrix", IEEE Trans. MTT,

vol. MTT-13, pp.194-202, 1965 March

[5] 藤城義和,「Sパラメータによる電子部品の評価」, http://www.tdk.co.jp/tvcl/spara/an-sp06a001_ja.pdf

[6] Agilent Technology社,「ADS」マニュアル.

TouchstoneはEEsof社(現Agilent Technology社)の線形回路シミュレータの名称です。

[7] David E.Bockelman, William R.Eisenstadt, "Combined Differential and

Common-Mode Scattering Parameters: Theory and Simulation", IEEE

Tarns. MTT, vol.43, No.7, pp.1530-1539, 1995 July

・Scdij、Sdcij:ディファレンシャルモード⇔コモンモード間のモード転換量 系の対称性が良ければ、ゼロ、つまり、各モードが独立する。

これらのミックストモードSパラメータSγの値はシングルエンデッドSパラメータSから求めることができます。計算式は以下の通りです[5]。

(A1-15)

ただし、

(A1-16)    

.

と置きました。ここで注意しなければならないのは、基準インピーダンスです。コモンモードの基準インピーダンスは、元のSパラメータの基準インピーダンスの1/2

で、ディファレンシャルモードは2倍です。つまり、元が50�系であれば、コモンモードの基準インピーダンスは、25�で、ディファレンシャルモードは100�になります。それ以外の基準で見たい場合は、式(A1-14)を併用する必要があります。図A1-9はコモンモードフィルタ(CMF)の実測例です。このCMFは、「100MHz付近のコモンモードを抑制するが、その帯域でのディファレンシャルモードは素通り」であるということが読み取れます。

図A1-9 CMFのミックストモードSパラメータ

|Sdd21|

|Scc21|

|Scd21||Sdc21|

66

コモンモードとディファレンシャルモード平行に走っている2本の導体(とGND導体)を想定します。その導体の電圧、電流をそれぞれ、V1、 I1、V2、I2とすると、コモンモード電圧Vc、電流 Ic、そしてディファレンシャルモード電圧Vd、電流Idは次のように定義されます(IEC用語規格IEC60050-161:1990,JIS C0161:1997)。・Vc: 各導体の電圧の平均

Vc =(V1+V2)/2・Ic: 各導体の電流の和

Ic = I1+I2・Vd: 2導体間の電圧

Vd = V1-V2・Id: 各導体の電流の差の半分

Id =(I1-I2)/2コモンモードが和信号、ディファレンシャルモードが差信号を表わしていることがわかります。ディファレンシャルモード電流は2導体を逆向き(逆相)に流れる電流成分ですので、GNDは直接関与していません(そのためノーマルモードと言うこともあります)。一方、コモンモード電流は2導体を同じ向き(同相)に流れる電流成分です。従って、行った電流はGND導体(またはどこか別のところ)を通って帰ってきます(そのため地回線と言ったりもします)。コモンモードのことをasymmetrical

(反対称あるいは「縦(例えば縦電流)、longitude」、ディファレンシャルモードのことをsymmetrical(対称)あるいは「横」と称することもあります。

Appendix2電子部品の分類

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電子部品の分類電子部品とは、電子回路に使われる受動部品のことです。狭義で言えば、音/光/機械などの電気的でない動作を伴なう物やスイッチやコネクタなどの機構部品は除かれます。電子部品を用途で分類すると、抵抗性の物とそれ以外(リアクタンス部品)の物に分けられます(表A2-1)。後者は無損失なので、信号や電力の制御に使われます。アナログ高周波回路で使われる部品は、バランやカプラ、サーキュレータなど、基本的に単一周波数を扱い、信号の流れを制御する役割のものです。一方、デジタル回路で使われる部品は、コンデンサやコイル系部品、あるいはそれらを組み合わせた3端子フィルタなどで、複数の周波数成分を扱い、広い意味でフィルタとして使われることが多いものです。もちろん、コンデンサやコイルなどは汎用なので、それ以外の用途もあります。機能や用途の詳細は表A2-2にまとめました。EMC対策部品というのは、EMC対策に使う電子部品のことで、表A2-1に挙げたような広義フィルタやバリスタ(広く捉えれば、これも(電圧に関する)フィルタと言えます)などの総称です。EMC対策部品という特定の物が存在するわけではありません。コイルとビーズには明確な線引きはありませんが、高周波帯で損失的になるのがビーズです。EMC対策には損失性が有利に作用する(エネルギーを吸収するとか)ことが多いので、好んで使われます。一方、コイルは高いインダクタンスが得られますので、比較的低周波で、絶対値が必要な個所に用いられます。チップ部品(SMD部品)は、リード線がなく、直接基板に接続して使われる部品です。その形状は4桁の数字で表現することが多いのですが、例えば、"1005"ならば縦横が1.0mm×0.5mmであることを指しています。電子部品の電気的な特性はインピーダンスやSパラメータで評価されます。インピーダンスは2端子部品に適用します。多端子の場合でも、それらを適当につなぎ2端子にすればインピーダンスで特性付けることが可能です。

CMFやトランスなどはそうです。つなぎ方の種類を変え、何種類かのインピーダンスの組で特性を表現します。GNDを要する部品は、インピーダンスでは特性を表現しにくいので、Sパラメータが使われます。インピーダンスで評価されるような部品も、適当にGNDを設ければ、Sパラメータで評価することも可能です。

表A2-1 代表的な電子部品

分類 電子部品

抵抗性部品抵抗器サーミスタバリスタ

リアクタンス部品

信号の流れを制御

伝送線路電力分配器バランカプラアイソレータサーキュレータ

広義フィルタ

コンデンサコイル系部品 コイル ビーズ トランス CMF3端子フィルタ

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表A2-2 各種電子部品の機能と用途

電子部品 外観 種類 機能 用途

抵抗器 厚膜(サーメット)薄膜(金属皮膜)

Z=R 電圧や電流の分割/電流の制限/電気信号の検出/終端抵抗(負荷)/フィルタ

NTCサーミスタ NTC セラミック Z=R(T) 温度検出

PTCサーミスタ プラスチック、セラミック Z=R(T) 過電流防止(ヒューズ)/ヒーター

バリスタ ZnO系、SrTiO3系 Z=R(V) 過電圧防止

コンデンサ セラミック[H�、L�]、電解系[Al、Ta]、フィルム

Q=CVZ=1/j�C

バイパス(デカップリング)/平滑/カップリング/フィルタ(RC、LC)/時定数/整合/位相補償

コイル 空芯、フェライト[Mn、Ni]、金属系 Z=j�L チョーク/デカップリング/フィルタ/整合

ビーズ 積層フェライト Z=R (f )+jX ノイズ除去

トランス フェライト、圧電 � DC絶縁/コモンモードの遮断/平衡不平衡の変換/極性の変更/昇降圧/インピーダンスの変更

CMF 巻線、薄膜、積層 Scc21=Scc21(f ) コモンモードノイズの除去

フィルタ、分波器 LC、圧電、誘電体 Sij=Sij(f ) 信号のろ波、分波

電力分配器 ̶ S=0 � �� 0 0� 0 0

信号の分配、合成

バラン Balun ̶ S=0 � -�� 0 0-� 0 0

平衡不平衡の変換

カプラ ̶ S= 0 tUU 0 信号のモニタ/入反射の分岐と分離

アイソレータ ̶ S= 0 0� 0 一方向化(反射や逆方向への信号からの保護)、不整合の緩和

サーキュレータ ̶ S=0 0 �� 0 00 � 0

アンテナの共用、アイソレータ、信号の分岐

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2005年 4月 初版発行2010年 6月 第7版発行

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