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© 2008 Microchip Technology Inc. DS01160A_JP - ページ 1 AN1160 はじめに このアプリケーション ノートでは、dsPIC ® デジタ シグナル コントローラ (DSC) を使用して実装し たセンサレス BLDC ( ブラシレス DC) モーター制御 アルゴリズムについて説明します。このアルゴリズ ムは、多数決関数を使用して逆起電力 (BEMF) をデ ジタル方式でフィルタリングします。モーターの各 相をフィルタリングすることによって、モーター駆 動電圧を整流するタイミングを決定します。この制 御方式を採用すると、外付けのローパス フィルタ リング ハードウェアや外部の専用コンパレータは 不要になります。以下の説明は、アプリケーション ソフトウェアを含め、3 相モーターの使用を前提と しています。ここで説明するモーター制御アルゴリ ズムは、主に次の 6 つの要素で構成されます。 • dsPIC に内蔵の ADC (Analog-to-Digital Converter) を使用して台形 BEMF 波形をサンプリング モーターの仮想中点を算出 台形 BEMF 波形と上記で求めたモーターの仮想 中点を比較して、ゼロ交差点を検出 上記の比較から得られた信号を多数決関数フィ ルタでフィルタリング モーター駆動電圧を整流 以上を繰り返す制御ループ このアプリケーション ノートでは、センサレス BLDC モーター制御を実装するにあたって、各要素 の基本的な内容を簡単に説明します。この制御方式 dsPIC DSC デバイス ベースのシングルチップ リューションです。ここで必要となる外付けハード ウェアは、 BEMF 信号を dsPIC DSC デバイスの ADC の動作電圧範囲内に調整するために使用する数個 の抵抗のみです。 センサ制御とセンサレス制御の比較 BLDC モーターは小型で、制御性と効率に優れてい るため、コンシューマおよび産業用アプリケーショ ンで広く使用されています。また車載アプリケー ションにおいても、ベルトと油圧システムの削減、 多機能化、燃費率向上などの一環として需要が高 まっています。 BLDC モーターの制御に必要な磁石 や電子部品の低コスト化が進んだことで、BLDC モーターの用途は広がり、より高い電力で使用され るようになってきています。 BLDC モーターはロータ位置に同期して励磁させ るため、通常は 1 つまたは複数のロータ位置セン サを使用します。しかしコストや信頼性、パッ ケージングの問題、そして特に液体中でロータを 動作させる場合を考慮すると、位置センサなしで モーターを動作させるセンサレス制御の方が望ま しいといえます。 モーター駆動電圧を整流するタイミングは、モー ター駆動中のいずれかの相で、励磁していないモー ター端子の逆起電力の電圧を検出することで決定 できます。センサレス制御ではホール位置センサが 不要となるため、コスト面では明らかに有利です。 しかしセンサレス制御には、次の弱点もあります。 検出可能な逆起電力 (BEMF) を得るには、モー ターを最小限の速度で回転させる必要がある モーター負荷が急変すると、BEMF の駆動ルー プが正常に動作しない • BEMF 電圧を測定できるのは、モーターの速度 が印加電圧に対して理想的な整流速度の範囲内 にある場合に限られる 理想の速度よりも高速に整流すると、モーター の応答が不連続になる 低コスト性が最優先され、モーター低速回転の必要 がなく、モーター負荷の急激な変化が想定されない ようなアプリケーションの場合に、センサレス制御 を選択した方が有利になります。ただし、上記の弱 点はいずれも対応するアルゴリズムで解決できま す。センサレス BEMF 方式は、現在最も一般的なソ リューションとして急速に広がりつつあります。 著者 : Daniel Torres Microchip Technology Inc. 多数決関数を使用した逆起電力フィルタリングによる センサレス BLDC 制御 ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報に つきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願い します。

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AN1160多数決関数を使用した逆起電力フィルタリングによる

センサレス BLDC 制御

ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報につきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願いします。

はじめに

このアプリケーション ノートでは、dsPIC® デジタル シグナル コントローラ (DSC) を使用して実装したセンサレス BLDC ( ブラシレス DC) モーター制御アルゴリズムについて説明します。このアルゴリズムは、多数決関数を使用して逆起電力 (BEMF) をデジタル方式でフィルタリングします。モーターの各相をフィルタリングすることによって、モーター駆動電圧を整流するタイミングを決定します。この制御方式を採用すると、外付けのローパス フィルタリング ハードウェアや外部の専用コンパレータは不要になります。以下の説明は、アプリケーションソフトウェアを含め、3 相モーターの使用を前提としています。ここで説明するモーター制御アルゴリズムは、主に次の 6 つの要素で構成されます。

• dsPIC に内蔵の ADC (Analog-to-Digital Converter)を使用して台形 BEMF 波形をサンプリング

• モーターの仮想中点を算出

• 台形 BEMF 波形と上記で求めたモーターの仮想中点を比較して、ゼロ交差点を検出

• 上記の比較から得られた信号を多数決関数フィルタでフィルタリング

• モーター駆動電圧を整流

• 以上を繰り返す制御ループ

このアプリケーション ノートでは、センサレスBLDC モーター制御を実装するにあたって、各要素の基本的な内容を簡単に説明します。この制御方式は dsPIC DSC デバイス ベースのシングルチップ ソリューションです。ここで必要となる外付けハードウェアは、BEMF 信号を dsPIC DSC デバイスの ADCの動作電圧範囲内に調整するために使用する数個の抵抗のみです。

センサ制御とセンサレス制御の比較

BLDC モーターは小型で、制御性と効率に優れているため、コンシューマおよび産業用アプリケーションで広く使用されています。また車載アプリケーションにおいても、ベルトと油圧システムの削減、多機能化、燃費率向上などの一環として需要が高まっています。BLDC モーターの制御に必要な磁石や電子部品の低コスト化が進んだことで、BLDCモーターの用途は広がり、より高い電力で使用されるようになってきています。

BLDC モーターはロータ位置に同期して励磁させるため、通常は 1 つまたは複数のロータ位置センサを使用します。しかしコストや信頼性、パッケージングの問題、そして特に液体中でロータを動作させる場合を考慮すると、位置センサなしでモーターを動作させるセンサレス制御の方が望ましいといえます。

モーター駆動電圧を整流するタイミングは、モーター駆動中のいずれかの相で、励磁していないモーター端子の逆起電力の電圧を検出することで決定できます。センサレス制御ではホール位置センサが不要となるため、コスト面では明らかに有利です。しかしセンサレス制御には、次の弱点もあります。

• 検出可能な逆起電力 (BEMF) を得るには、モーターを最小限の速度で回転させる必要がある

• モーター負荷が急変すると、BEMF の駆動ループが正常に動作しない

• BEMF 電圧を測定できるのは、モーターの速度が印加電圧に対して理想的な整流速度の範囲内にある場合に限られる

• 理想の速度よりも高速に整流すると、モーターの応答が不連続になる

低コスト性が最優先され、モーター低速回転の必要がなく、モーター負荷の急激な変化が想定されないようなアプリケーションの場合に、センサレス制御を選択した方が有利になります。ただし、上記の弱点はいずれも対応するアルゴリズムで解決できます。センサレス BEMF 方式は、現在最も一般的なソリューションとして急速に広がりつつあります。

著者 : Daniel TorresMicrochip Technology Inc.

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6 段階 ( 台形 ) 整流

このアプリケーション ノートで説明するセンサレス アルゴリズムでは、モーターの巻き線を 6 段階台形 (120°) 整流式で励磁します。図 1 に、6 段階整流のしくみを示します。各段階 ( セクター ) は、電気角度 60 度に相当します。6 つのセクターで電気角度 360 度、すなわち 1 電気回転となります。

図 1: 6 段階整流

巻き線図の矢印は、6 段階の各ステップでモーターの巻き線に流れる電流の方向を示しています。このグラフは、6 段階の各ステップで、それぞれのリード線 ( 巻き線 ) に印加される電圧を示しています。これらの 6 段階を連続実行すると、モーターは 1 電気回転します。

各段階での整流

• 段階 1- 赤巻き線は正電圧に駆動- 緑巻き線は負電圧に駆動- 青巻き線は非駆動

• 段階 2- 赤巻き線は正電圧に保持- 青巻き線は負電圧に駆動- 緑巻き線は非駆動

• 段階 3- 緑巻き線は正電圧に駆動- 青巻き線は負電圧に駆動- 赤巻き線は非駆動

• 段階 4- 緑巻き線は正電圧に駆動 - 赤巻き線は負電圧に駆動- 青巻き線は非駆動

• 段階 5- 青巻き線は正電圧に駆動- 赤巻き線は負電圧に駆動- 緑巻き線は非駆動

• 段階 6- 青巻き線は正電圧に駆動- 緑巻き線は負電圧に駆動- 赤巻き線は非駆動

すべてのセクター ( 段階 ) で、2 つの巻き線のみが励磁され、1 つの巻き線は励磁されません。各セクターで 1 つの巻き線を励磁しないことは、センサレス制御アルゴリズムを使用する6段階制御の重要な特性です。

このアプリケーション ノートでは、モーターの回転速度を記述する際に、次の用語を使用します。

• 1 分あたりの電気回転数 (RPMElec)• 1 秒あたりの電気回転数 (RPSElec)電気回転数(RPMElec)を使用するとモーターの極数を考慮する必要がないので、モーターの回転速度を論じる際には、機械回転数 (RPMMech) ではなく上記の電気回転数を使用する方がわかり易くなります。機械回転数と電気回転数の間の関係は、次の 3つの式で表すことができます。

式 1: 機械/電気 RPM の関係

式 2: 電気/機械 RPM の関係

R

GB

154

6

2

3

60°

1 2 3 4 5 6

Blue Winding

Green Winding

Red Winding

Sector

+VBUS

-VBUS

+VBUS

-VBUS

-VBUS

+VBUS

RPMMech 2 RPMElec⋅モーターの極数------------------------------------------=

RPMElec RPMMech モーターの極数⋅2

--------------------------------------------------------------------------=

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式 3: RPS と RPM の関係

BEMF の検知方法

BLDC モーターが回転するとそれぞれの巻き線には、レンツの法則により、巻き線に供給されている主要電圧に対抗するBEMF (逆起電力 )が生じます。この BEMF の極性は、励磁電圧の逆方向となります。BEMF は、主に、モーターの次の 3 パラメータに依存します。

• 固定子 ( ステータ ) 巻き線の巻き回数• ロータの角速度• ロータの磁石で生じる磁場

BEMF は、モーターのパラメータと角速度の関数として、式 4 の計算式を用いて算出できます。

式 4: 逆起電力 (BEMF)

式 4 からわかるように、唯一の変数項はロータの角速度です。したがって、BEMF はロータの回転速度に比例しますので、回転速度が上がれば BEMF は増大します。

モーターの BEMF 波形は、ロータの位置と速度の両方の関数として変化します。したがって、ロータの回転速度がゼロか非常に遅い場合には、BEMF による位置の検出は不可能になります。しかしながら、低速での位置制御やクローズド ループ操作を必要としないアプリケーションがいろいろと考えられます ( 例えば、ファンやポンプなど )。これらのアプリケーションでは、BEMF 手法が最適です。BEMFを利用する手法はいろいろと考えられます。その多くの手法は次のように要約できます。 • モーター端子電圧の検知

- 直接測定か推定( スイッチ状態と DC バス電圧の知識から )

• 中間点電圧の検知

- Y 接続モーターとデルタ接続モーターにのみ有効ある種の巻き線接続では無効

- 実際に第 4 のワイヤは不要。モーターの 3 相を使用してスター ポイントを再生成可能

• バス電流勾配の検知

- ロータが進んだり遅れたりすると整流に変化が生じるためバス電流波形の特性に依存

- 高速バス電流制御は使用不可

選択された BEMF 検知手法

このアプリケーション ノートは、中間点電圧の復元と、不活性相の BEMF がゼロになる事象の検出に基づいています。したがって重要なのは、このアプリケーション ノートに記述されている BEMF 検知手法は、ゼロ交差事象を必要とするため、台形BEMF信号を使用する方法でしか実装できません。

この検知手法の重要な特長の一つは、ゼロ交差点を決める際に外部部品が少なくて済むことです。BEMF 信号調整用の抵抗と電力スイッチのゲートドライバを除けば、すべての制御機能を提供している dsPIC DSC デバイス 1 つで実装できます。

この BEMF ゼロ交差手法は、次の理由で採用されました。

• 広範なモーターでの使用に最適。

• 理論的には Y 接続 3 相モーターとデルタ接続 3相モーターの両方で使用可能。ある種の接続モーターでは使用不可。

• モーター特性の詳細な知識は不要。

• モーターの製造工程によるトレランスのばらつきには比較的左右されない。

• 電圧制御と電流制御の両方で動作可能。

• ゼロ交差手法は、速度がゼロ近辺でのクローズド ループ操作を必要としない広範なアプリケーションに適しています。速度がゼロより大きい場合、1 つの相の BEMF がゼロとなる場所は 1電気サイクルあたり 2 箇所となります。そして、この 2 箇所は BEMF がゼロ交差するときの傾斜により区別できます ( 図 2 参照 )。

図 2: ゼロ交差点の検出

RPSElec RPMElec60

-------------------------=

BEMF NlrBω=ここで

N = 相あたりの巻き線回数

l = ロータの長さ

r = ロータの内部半径

B = ロータの磁場

ω = 角速度

5 0 1 2 3 4 5 0 1SECTOR

0

0

0

= BEMF Zero Crossing

30°

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各セクターは、1 電気サイクルに属する 6 つの等価60º部分の1つに対応しています (セクターの番号付与は全く任意です )。整流は各セクターの境界で行われます。ですから、セクターの境界を検出する必要があります。BEMF のゼロ交差位置と所望整流位置との間には 30º のオフセットがありますので、これを補正してモーターの回転を効率的でスムーズなものにする必要があります。

図 2 は各相の BEMF の理想的波形も示しています。BEMF を検知する際に、モーターの 3 本のリード線のみが利用できるようにすると、BEMF 波形はスター ポイント電圧だけオフセットされているので、モーターのスター ポイントの電圧を決めなければなりません。

BEMF のゼロ交差検知手法

BEMF電圧のゼロ交差信号は複数の異なる方法で検出できます。このセクションでは、2 つの異なる検知手法を説明します。どちらの手法も利点と欠点を持っていますので、これについては次のセクションで議論します。どちらの手法も、モーターの中点がワイヤリングされていないかあるいはモーターの巻き線がデルタ モードで構築されているために、ほとんどの時間でモーターの中点が利用できないことを考慮しています。

BEMF 電圧を DC バス電圧の 2 分の 1 と比較

この手法は、BEMF が VDC/2 に等しいときにゼロ交差事象が発生すると仮定して、コンパレータを使用して BEMF 電圧を DC バス電圧の 2 分の 1 と比較することで行われます。図 3 に、この手法を実装するための回路を示します。

図 3: BEMF 電圧を DC バス電圧の 2 分の 1と比較

モーターが図 1 の整流段階 1 にある場合、電子スイッチで A 相は +VBUS に接続され、電子スイッチで C 相は -VBUS に接続され、B 相はオープンになっています。B 相で観察される BEMF 信号は負の傾斜を持ち、その最大値は整流段階 2 が起こる直前にほぼ +VDC に等しくなります。B 相は、整流段階 2 が発生したときに +VDC に到達します。

その瞬間に、電子スイッチで B 相は +VDC に接続され、A 相が今度はオープンで、C 相は -VDC に接続されたままになります。A 相に観察される BEMF 信号は正の傾斜を持ち、その最小値は整流段階 3が起こる直前にほぼ -VDC に等しくなります。B 相と A 相に観察される両傾斜が VDC/2 と比較され、ゼロ交差事象を決定します。この回路の実装は容易で、3 つのオペアンプでコンパレータを構成するだけです。

この手法の欠点としては次の点が挙げられます。

• この手法は、モーターの巻き線パラメータがすべて等価であると仮定している

• 検知された BEMF 信号は正と負の両方の位相シフトを有している

• モーター駆動用定格電圧は、ほぼ常時 VDC 電圧より低いため、ゼロ交差事象が常に VDC/2 で起こるとは限らない

BEMF 電圧をモーターの中点と比較

前述のゼロ交差検知手法は、ゼロ交差事象を検出する際に可変のスレッショルド電圧点を導入することで改善できます。この可変電圧は、実際、モーターの中点です。多くの場合、モーター メーカはモーターの中点を公表していません。しかし、抵抗ネットワークを使用することで、中点を生成できます。3 つのネットワークをモーターの各巻き線の一端と並列に接続し、他端を一緒に接続すると、仮想中点が生成されます。図 4 にこの接続を示します。

図 4: 仮想中点と比較される BEMF 電圧

A

C B

DC+

DC-

DC/2

+

_

Back-EMF

To IC2

A

C

BDC-

Virtual Neutral

+

_

Back-EMF

To IC2

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このアプリケーション ノートで使用される手法は、これと同じ原理に基づいています。しかし、中点信号はソフトウェアで復元されます。中間電圧はBEMF 信号の平均値に等しいので、ゼロ交差スレッショルド値は式 5 で表されます。

式 5: 仮想中点と BEMF 信号の関係

復元されたモーター中間電圧は、各 BEMF 信号と比較されてゼロ交差事象を決めるのに使用されます。ゼロ交差事象は、BEMF 信号がモーター中点に等しいときに発生します。図 5 は ADC で測定されたBEMF 信号を示しています。

この手法をソフトウェアで実装することについては後続のセクションで議論します。この手法の課題は、ADC で取得されたサンプルが PWM スイッチング周波数により引き起こされる共鳴遷移電圧の影響を受けるので、BEMF 信号の正確なサンプリング時刻を決めることです。これらのサンプルは、巻き線の励磁を停止する際に生成されるキックバック電流によっても影響を受けます。図 6 は BEMF 信号とモーターの中点を示しています。図 7 は、BEMF信号と復元された仮想中点を示しています。

この手法の利点は、測定がより柔軟になることです。速度が変化すると、巻き線特性が変動し、その結果 BEMF に影響を与えます。このような状況下で、dsPIC DSC デバイスは、ゼロ交差点の決定を完全に制御します。デジタル フィルタを実装し、BEMF 信号から高周波スイッチング ノイズ成分をフィルタリングします。

図 5: dsPIC® DSC ADC を使用して測定した BEMF 電圧

Vn BEMF A BEMF B BEMF C+ +3

----------------------------------------------------------------------------=

ここで

Vn はモーターの中間電圧

BEMF A は A 相に観察される BEMF 電圧

BEMF B は B 相に観察される BEMF 電圧

BEMF C は C 相に観察される BEMF 電圧

3-PhaseInverter

PWM3HPWM3LPWM2HPWM2LPWM1HPWM1L

FLTA Fault

BLDCdsPIC30F2010

AN3AN4AN5

AN2

Demand

Phase Terminal Voltage Feedback

R49 R41 R34 R36

R44

R52

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図 6: PWM デューティ サイクルが 100% に等しいときの BEMF 信号と仮想中点との関係

図 7: PWM デューティ サイクルが 100% に等しいときの BEMF 信号と復元された仮想中点との関係

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

Time

Volta

ge

PHASE A PHASE B PHASE C NEUTRAL

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

Time

Volta

ge

PHASE A PHASE B PHASE C RECONS

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必要とされるハードウェア

このアプリケーション ノートに記述した BLDCモーター制御手法を実行するには次のハードウェアが必要になります。

dsPIC30F ソフトウェア バージョン

• PICDEM™ MCLV 開発ボード ( 図 8 参照 ) • Hurst 社製 DMB0224C10002 CL B 6403 24V BLDCモーター

• 24 V 直流電源

図 8: PICDEM™ MCLV 開発ボード

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dsPIC33F ソフトウェア バージョン

• dsPIC33FJ12MC202 PIM• Explorer 16 開発ボード

• モーター制御インターフェイス PICtail™ とドーター ボード

• 3 相低電圧電源モジュール dsPICDEM™ MC1L• Hurst 社製 DMB0224C10002 CL B 6403 24V BLDCモーター

• 24 V 直流電源

図 9: dsPIC33F ソフトウェア バージョンに対するハードウェア接続

これらの品目は、完全なキットとして、あるいは個別のコンポーネントとして、マイクロチップ社から購入できます。注文情報については、マイクロチップ社 Web サイトの開発ツールのセクションを参照してください。

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ハードウェアの変更

以前に図 5 に示したハードウェアのブロック図は、このモーター制御アプリケーションの簡略化されたブロック図です。それはこのアルゴリズムを実現するのに必要な基本的接続を示しているのに過ぎません。

図 5 に示されたハードウェア構成を MCLV ボード上に実現するために必要な接続は、表 1 にリストアップされたジャンパ設定で実行できます。

表 1: MCLV のジャンパ構成

MCLV ボードを構築するためにジャンパ設定は次のとおりです。

• Pot R14 は速度に対する要求を選択します。これは dsPIC DSC ADC のチャネル AN4 に接続される

• BEMF 信号は、抵抗ネットワーク R34/R36/R35、R41/R44/R42 および R49/R52/R50 を使用して検知される。BEMF の A、B、C の各相の信号は、それぞれ、ADC チャネルの AN3、AN4、AN5 に印加される

• すべてのBEMFフィルタリングはソフトウェアで行うため、BEMF 信号をフィルタリングするためのキャパシタ C17、C19 と C21 は接続しない

• Fault 入力は、電流フィードバック回路と接続されたコンパレータ回路(U7D)を介して受信される

• 電流は 0.1Ω抵抗 (R26) を用いて検知される。コンパレータのスレッショルド点は pot R60 を使用して調整できる

図 5 に示した dsPIC33FJ12MC202 ハードウェア構成を実現するのに必要な接続を以下にリストアップします。

dsPIC33FJ12MC202 PIM に対するデフォルトのハードウェア構成は、表 2 に示した構成と一致するように変更する必要があります。

表 2: PIM の抵抗構成

Explorer 16開発ボードに対するデフォルトのハードウェア構成は、表 3 に示した構成と一致するように変更する必要があります。

表 3: EXPLORER 16のジャンパと抵抗の構成

モーター制御インターフェイス PICtail™ とドーター ボードに対するデフォルトのハードウェア構成は、表 4 に示した構成と一致するように変更する必要があります。

表 4: モーター制御インターフェイスPICtail™とドーター ボードのジャンパ構成

Jumper Setting

J8 OpenJ10 OpenJ12 OpenJ14 OpenJ19 OpenJ7 Short in position 2 - 3J11 Short in position 2 - 3J13 Short in position 2 - 3J15 Short in position 2 - 3J16 ShortJ17 Short

Resistor Setting

R29, R30, R8, R6, R20, R31, R27, R25, R9, R7, R5

Not populated

R15, R16, R17, R18, R19, R32, R33, R14, R10, R23, R22, R21, R28, R26, R24, R13, R11, R12

Populated

Hardware modification Setting

Jumper JP2 ShortJumper J7 Short in position PIC24Switch S2 Short in postion PIMResistors R50, R51, R52 Not populated

Jumper Setting

J12, J11, J10 OpenJ1, J4 OpenJ14, J15, J16 OpenJ17 ShortJ6, J7, J8 OpenJ13 Open

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3 相低電圧電源モジュール dsPICDEM™ MC1L 内の37W_DTYPE_PLUG LK 抵抗のデフォルトのハードウェア構成は、表 5 に示したように構成します。

表 5: 3 相低電圧電源モジュールdsPICDEM™ MC1L の抵抗構成

デジタル フィルタ ( 多数決関数 )この BEMF 検知手法は、「多数決関数」と呼ばれる非線形デジタル フィルタに基づいています。ある状況下では、これは「メディアン オペレータ」としても知られています。多数決関数はブール関数で、n 個のバイナリ入力を受け取り、その間で最も共通な値を戻します。3 つのブール入力の場合は、少なくとも 2 度生じた値 ( 真または偽 ) を戻します。この場合、2 つの等しい値は全体数 (3 つ ) の 66% になります。多数決関数は、数値のうちの多数決 (> 50%)の値を戻します。表 6 に 3 入力多数決関数の例を示します。

表 6: 3 入力を使用した場合の多数決関数の例

数値の多数決は、2 つの論理オペレータ、式 6 に示すように AND (∧) と OR (∨) を用いて表現できます。

式 6: 多数決関数のブール表現

アルゴリズムの実装

前述のセクションで、BEMF 手法は、BEMF 信号上に生じるゼロ交差事象の検出に基づいていると申しました。このセクションでは、dsPIC DSC デバイスのリソースとペリフェラルを使用した、このアルゴリズムの実装方法を説明します。

BEMF 信号のサンプリング

最初に行うべき作業は、BEMF 信号のサンプリングです。この作業を遂行するには、dsPIC DSC ADC がPWMのリロード周波数に等しいサンプリング レートで BEMF 信号を同時にサンプリングできるように、dsPIC DSC ADC を構成する必要があります。この場合それは 20 kHz です。したがって、ADC はPWM リロード事象と同期することになります。

dsPIC DSC ADC は PWM の ON 時にサンプリングするように構成されます。その目的は、電子スイッチによって生じるリンギング ノイズと巻き線の励磁停止事象で生じる高電圧スパイクなどのその他のノイズを避けるためです。これらのノイズは、誤ったゼロ交差事象を生成するので、整流が正しく実行されなくなります。

PWM の ON 時に信号をサンプリングする場所は、モーターの回転速度により変化します。低速回転では、dsPIC DSC デバイスは PWM の ON 時間の 50%( 中央 ) のところで BEMF 信号をサンプリングします。しかし、サンプリング点は PWM のデューティサイクルにしたがって前方に移動し、PWMのデューティ サイクルが 100% になるとサンプリング点はPWMのON時間の 75%にあたる最大点に達します。図 10 と図 11 はサンプリング点を示しています。

モーターの中点は、サンプリングされた BEMF 信号A、B、C を使用してソフトウェアで復元されます。この復元信号は、ゼロ交差事象を特定するためにサンプリングされた BEMF 信号と比較されます。この時点まで、外部コンパレータはソフトウェアでエミュレートされてきています。これらのソフトウェア コンパレータの出力は、サンプリングされたBEMF 信号のバイナリ表現になっています。これらのソフトウェア コンパレータにより生成された信号には、巻き線の励磁停止事象で生じたノイズと電子スイッチで生じたリンギング ノイズが含まれています。

注意 : 金属筐体の蓋を外す際は電気ショックに注意が必要です。筐体内の PCB に触れる前に、モジュールの電源を切った後少なくとも 5 分待ってください。金属筐体の蓋を外す前に、3 相低電圧電源モジュール dsPICDEM™ MC1L ユーザーズ ガイドのSection 1.6.2 “Accessingthe System” に記述されている安全のしおりにしたがってください。

LK 51Ω resistors Setting

LK22, LK24, LK25, LK26, LK30

Populated

LK19, LK20, LK21, LK23, LK27, LK28, LK29, LK31, LK32

Not populated

A B C Majority

1 1 1 11 1 0 11 0 1 11 0 0 00 1 1 10 1 0 00 0 1 00 0 0 0

多数決 A B∧( ) A C∧( ) B C∧( )∨ ∨=

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AN1160

BEMF 信号を 20 kHz でサンプリングすれば、サンプリングされた BEMF 信号上のスイッチング ノイズを大幅に減らすことができるので、ゼロ交差事象を検出するのは容易です。しかし、このエイリアジング トリックは、BEMF 信号を完全にフィルタリングするには十分ではありません。それで、多数決関数フィルタが使用されます。

図 10: デューティ サイクル 80% での BEMF のサンプリング点

PWM Signal

BEMF SignalBEMF Sampling Point

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AN1160

図 11: デューティ サイクル 20% での BEMF のサンプリング点

PWM Signal

BEMF SignalBEMF Sampling Point

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AN1160

多数決関数フィルタを使用した BEMF 信号のフィルタリング

この非線形フィルタは、デジタル表示されたBEMF 信号でのゼロ交差事象の発生を特定する目的で、最上位 3 サンプル ( ビット ) の少なくとも 51% が “1” に等しく、最下位 3 サンプル ( ビット )が “0” に等しくなるような 6サンプル ウィンドウに基づいて実装されます。このフィルタリング ステップにより、このアルゴリズムはより確実となります。

多数決関数フィルタの最初のステージは、2 つの論理オペレータを使用して実装されます。AND オペレータは、既存の整流状態に対応することになるアクティブな BEMF 信号を検出するのに使用され、排他的論理和 (XOR) オペレータは、アクティブ BEMF信号上の立ち下りエッジか立ち上りエッジを検出するのに使用されます。この論理オペレーションの出力は以下のセクションで「アクティブ マスクド(active-masked) BEMF 信号」と呼ばれます。

それから、このアクティブ マスクド BEMF 信号は多数決検出フィルタを用いてフィルタリングされます。このフィルタは、64 個の値で構成されるアレイと、次のデータ アレイのポインタを変更するのに使用される特別な論理テスト条件とで実装されます。この論理テスト条件は、また、アクティブマスクド BEMF 信号の立ち下りエッジと立ち上りエッジの両方を特定し、この 2 つのエッジは論理テスト条件の出力に真から偽への事象として表されます。この論理テスト条件の出力は、また、多数決検出フィルタの入力としても使用されます。

64 個の値は、アクティブ マスクド BEMF 信号に対して 6 サンプル ウィンドウがとれる 26 個の可能な組み合わせを表しています。ルックアップ テーブル上のそれぞれの値は、時間とともに変化する、次の信号ステートへのポインタです。このフィルタは、論理テスト条件の出力に真から偽への変化が現れるかどうかを常に監視しています。この真から偽への条件が検出されると、フィルタは、ゼロ交差事象が発生したことを確定するために3つの連続した偽ステートを探します。論理テストの出力での真から偽への条件は、ゼロ交差事象を表しているので、少しの遅延の後にモーターの整流が行われます。この遅延は 30 電気度からデジタル フィルタリングの実行時間を引いたものです。整流が終わると新しいBEMF 信号がモニタされます。

64 個のアレイ値は次のように決定されます。

• 式 7 に示すように、最初の 32 個の数値はインデックス数を 2 倍した値です

式 7: アレイの前半分の計算

• 最後の 32 個の値は式 8 を使用して埋められます。

式 8: アレイの後半分の計算

表 7: アレイ値

真から偽への条件を表すユニークなアレイ インデックス数が 16 個あります。これらの値を出現する順にリストアップすると、24、25、26、28、40、41、42、44、48、49、50、52、56、57、58、60 となります。これらのユニークなインデックスで示される値は、真から偽への条件が発生したことを示すために “1” で置き換えられます。

アレイ値 [N] N 2⋅=

Array Index [N]

Array Value

Array Index [N]

Array Value

0 0 32 0

1 2 33 2

2 4 34 4

3 6 35 6

4 8 36 8

5 10 37 10

6 12 38 12

7 14 39 14

8 16 40 16

9 18 41 18

10 20 42 20

11 22 43 22

12 24 44 24

13 26 45 26

14 28 46 28

15 30 47 30

16 32 48 32

17 34 49 34

18 36 50 36

19 38 51 38

20 40 52 40

21 42 53 42

22 44 54 44

23 46 55 46

24 48 56 48

25 50 57 50

26 52 58 52

27 54 59 54

28 56 60 56

29 58 61 58

30 60 62 60

31 62 63 62

アレイ値 [N] N 32–( ) 2⋅=

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AN1160

16 個のユニークなインデックス値は次の多数決関数の基準を使用して選択されます。アレイ インデックス数のバイナリ表現の最上位 3 ビットに “1” の多数決 (> 50%) が含まれており、それに続く最下位 3ビットに “0” の多数決 (> 50%) が含まれている場合に、このアレイ インデックス数はユニークな値であると判断されます。表 8 はこの 2 つの条件を満たす 16 個の数値を示しています。

表 8: アクティブ マスクド BEMF 信号内で真から偽への条件を告知する 16 個のユニークな数値

残り 48 個のアレイ数値は、真から偽への条件が発生した場合にユニークな値へのポインタとなります。いくつかの値は、16 個のユニークな数値の整数倍にはなっていないために、決してユニークな値を指し示しません。表 9 はこの条件を満たすいくつかの数値を示しています。

表 9: ユニークな数値の整数倍となる数値

16 個のユニークな数値を示さない数値は整数倍を指し示すようにシフトされますが、フィルタがユニークな数値を示す新しい値を待つため、ループ内に閉じ込められます。表 10 はユニークな値の整数倍にはならない数値を示しています。

表 10: 決してユニークな値を指し示さない数値

完全なフィルタ係数を表 11 に示します。

表 11: 多数決フィルタの係数Number 6-bit Binary Representation

24 011000

25 011001

26 011010

28 011100

40 101000

41 101001

42 101010

44 101100

48 110000

49 110001

50 110010

52 110100

56 111000

57 111001

58 111010

60 111100

Number6-bit

Binary Rep.

Number of Times

to be Left-Shift

ed

Unique Number

to be Pointed

6-bit Binary Rep. of Unique Number

3 000011 3 24 011000

11 001011 3 24 011000

54 110110 1 44 101000

7 000111 2 28 011100

Number 6-bit Binary Rep.

Numbers Pointed Before Becoming Zero

Number of Times to be Left-Shifted

1 000001 2, 4, 8, 16, 32 5 9 001001 18, 36, 8, 16, 32 5

36 100100 8, 16, 32 317 010001 34, 4, 8, 16, 32 5

Array Index

[N]

Array Value

Array (Unique

Numbers)

Array Index

[N]

Array Value

Array (Unique

Numbers)

0 0 0 32 0 01 2 2 33 2 22 4 4 34 4 43 6 6 35 6 64 8 8 36 8 85 10 10 37 10 106 12 12 38 12 127 14 14 39 14 148 16 16 40 16 19 18 18 41 18 110 20 20 42 20 111 22 22 43 22 2212 24 24 44 24 113 26 26 45 26 2614 28 28 46 28 2815 30 30 47 30 3016 32 32 48 32 117 34 34 49 34 118 36 36 50 36 119 38 38 51 38 3820 40 40 52 40 121 42 42 53 42 4222 44 44 54 44 4423 46 46 55 46 4624 48 1 56 48 125 50 1 57 50 126 52 1 58 52 127 54 54 59 54 5428 56 1 60 56 129 58 58 61 58 5830 60 60 62 60 6031 62 62 63 62 62

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表 12 は完全なフィルタリング過程の一例を示しています。入力はノイズがない場合の BEFM 信号のバイナリ表現です。表 13 も完全なフィルタリング過程の一例です。しかしこの場合の入力は、ノイズが多いときの BEMF 信号のバイナリ表現です。

表 12: ノイズのない BEMF 信号を使用したデジタル フィルタリングの計算例

ELEC

TRIC

AL

AN

GLE

BEMF Phase XOR-Masked Phase

AND-Masked Phase

LOG

ICA

L TE

ST C

ON

DIT

ION

CO

MM

UTA

TIO

N S

TEP

DIG

ITA

L FI

LTER

OU

TPU

T

ZER

O-C

RO

SSIN

G E

VEN

T

AND MASK

XOR MASK

C B A C B A C B A

0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 FALSE 000 000

3 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 FALSE 010 000

6 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 2 FALSE 001 111

9 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 6 FALSE 100 000

12 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 14 FALSE 010 111

15 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 30 FALSE 001 000

18 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE 100 111

21 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE 000 000

24 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —27 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —30 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —33 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —36 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —39 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —42 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —45 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —48 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —51 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —54 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —57 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —60 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 62 FALSE — —63 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 60 FALSE — —66 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 1 FALSE — —69 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2 TRUE — —72 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 4 FALSE — —75 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 10 FALSE — —78 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 22 FALSE — —81 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 46 FALSE — —84 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 30 FALSE — —87 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —

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AN1160

90 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —93 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —96 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —99 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —

102 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —105 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —108 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —111 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —114 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —117 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 62 FALSE — —120 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 62 FALSE — —123 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 60 FALSE — —126 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 1 FALSE — —129 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 2 TRUE — —132 1 0 1 0 0 0 1 0 0 1 3 4 FALSE — —

表 12: ノイズのない BEMF 信号を使用したデジタル フィルタリングの計算例 ( 続き )EL

ECTR

ICA

L A

NG

LE

BEMF Phase XOR-Masked Phase

AND-Masked Phase

LOG

ICA

L TE

ST C

ON

DIT

ION

CO

MM

UTA

TIO

N S

TEP

DIG

ITA

L FI

LTER

OU

TPU

T

ZER

O-C

RO

SSIN

G E

VEN

T

AND MASK

XOR MASK

C B A C B A C B A

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AN1160

表 13: ノイズの多い BEMF 信号を使用したデジタル フィルタリングの計算例

ELEC

TRIC

AL

AN

GLE

BEMF Phase XOR-Masked Phase

AND-Masked Phase

LOG

ICA

L TE

ST C

ON

DIT

ION

CO

MM

UTA

TIO

N S

TEP

DIG

ITA

L FI

LTER

OU

TPU

T

ZER

O-C

RO

SSIN

G E

VEN

T

AND MASK

XOR MASK

C B A C B A C B A

0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 FALSE 000 000

3 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 FALSE 010 000

6 1 0 1 0 0 0 0 1 0 0 1 2 FALSE 001 111

9 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 4 FALSE 100 000

12 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 10 FALSE 010 111

15 0 1 1 0 0 0 0 1 0 1 1 22 FALSE 001 000

18 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 46 FALSE 100 111

21 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 1 FALSE 000 000

24 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 2 FALSE — —27 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 6 FALSE — —30 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 14 FALSE — —33 1 1 1 0 0 0 0 1 0 1 1 30 FALSE — —36 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 62 FALSE — —39 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 1 FALSE — —42 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 2 FALSE — —45 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 6 FALSE — —48 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 12 FALSE — —51 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 26 FALSE — —54 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 54 FALSE — —57 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 1 FALSE — —60 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2 TRUE — —63 1 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 4 FALSE — —66 0 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 10 FALSE — —69 1 1 1 1 1 1 0 0 1 0 2 22 FALSE — —72 1 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 44 FALSE — —75 0 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 1 FALSE — —78 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 2 FALSE — —81 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 4 FALSE — —84 0 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 10 FALSE — —87 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 22 FALSE — —90 0 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 44 FALSE — —93 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 1 FALSE — —96 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 2 FALSE99 1 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 4 FALSE — —

102 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 10 FALSE — —

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AN1160

105 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 22 FALSE — —108 1 1 1 1 1 1 0 0 1 0 2 46 FALSE — —111 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 1 FALSE — —114 1 1 0 1 1 1 0 0 1 1 2 2 FALSE — —117 1 0 0 1 1 1 0 0 1 1 2 6 FALSE — —120 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 14 FALSE — —123 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 28 FALSE — —126 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 1 FALSE — —129 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 2 2 TRUE — —132 1 0 1 0 0 0 1 0 0 1 3 4 FALSE — —

表 13: ノイズの多い BEMF 信号を使用したデジタル フィルタリングの計算例 ( 続き )EL

ECTR

ICA

L A

NG

LE

BEMF Phase XOR-Masked Phase

AND-Masked Phase

LOG

ICA

L TE

ST C

ON

DIT

ION

CO

MM

UTA

TIO

N S

TEP

DIG

ITA

L FI

LTER

OU

TPU

T

ZER

O-C

RO

SSIN

G E

VEN

T

AND MASK

XOR MASK

C B A C B A C B A

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AN1160

これらの計算例は、次の事実を思い出させてくれます。すなわち、BEMF 信号のこのバイナリ表現はBEMFサンプル信号を仮想中点と比較した後に生成されたものであることを。これら 2 つの表には、サンプリング周波数が 20 kHz であるという表現はありませんので、この例で使用されているサンプルはランダムなサンプリング周波数を用いてランダムに採取されたものです。

ゼロ交差事象が検出されると、dsPIC DSC デバイスは、少しの遅延の後に、6 段階整流ステップにしたがって駆動電圧を整流します。ステータ ( 固定子 )の磁場をロータの先に進めておくために、1 つのセクターから別のセクターへの遷移は、最適トルクを得るために、ロータの正確な位置で行う必要があります。

整流の遅延は、30 電気度のタイミングからデジタル フィルタリング過程の実行時間を引いたものです。整流の遅延を決めるには、dsPIC DSC の汎用目的の内蔵タイマを 1 個使用して、1 つのゼロ交差事象から次の事象までに経過した時間を測定します。この時間は 60 電気度と等価です。

ゼロ交差事象が検出されたとき位相遅延がないとすると、次の整流は 30 度で起こるはずです。タイマが採取した値を 2 で割ると、30 電気度に相当する時間が得られます。整流遅延を生成するために、この値は別のタイマの周期レジスタにロードされます。このタイマは整流タイマとも呼ばれます。整流タイマに対する割り込みが発生すると、それは次のステートのモーター巻き線を整流するタイミングとなります。

スタートアップ シーケンス

モーターのスタートアップ シーケンスは次の 2 段階で構成されます。

• ロータの位置を確定するために、1 マイクロ秒の間に、予め定義された整流シーケンスで 1024 個のパルスを印加します。

• 次に、モーターがアイドル状態から抜け出すために必要な最小のデューティ サイクルを持った正確な整流ステップを加えることで、モーターはオープン ループ モードで回転します。

HURST 社製のモーターでは、静止慣性から抜けるために必要な PWM のデューティ サイクルは 7.5%です。一度モーターが回転を始めると、BEMF 信号が検出されるので、このアルゴリズムはオープンループ モードとクローズド ループ モードのいずれでも実行できます。

制御ループ

BLDC モーターの興味ある特性として、モーターはある範囲まで同期して回転することが挙げられます。つまり、与えられた負荷、印加電圧、および整流レートに対して、これらの 3 つの変数が理想値から大きく外れない限り、モーターは整流レートと共

にオープン ループのロック状態を維持するのです。この理想値はモーター電圧とトルク定数によって決められます。

印加電圧に対して整流レートが遅すぎる場合を考えると、BEMF も低くなりすぎるので、モーター電流がより増加します。これに対するモーターの応答は、次の位相位置まで加速し、それから減速して次の整流を待つことになります。

これと逆の場合は、モーターは、次の整流が行われるまでステッピング モーターのようにそれぞれの位置にすばやく移動します。モーターは整流レートよりも高速な加速が可能なので、理想よりずっと低いレートでもロックを外すことなく耐えることができます。しかしその代償として、過大な電流が消費されることになります。

モーターが次の整流を捕まえるための十分な加速を行えないほど整流が早く到着すると、ロックが外れてモーターの回転が落ちます。この現象は、理想レートからそれほどずれてなくても突然に起こります。突然にロックが外れると、モーターの応答は不連続になり、クローズド ループ制御が難しくなります。クローズド ループ制御に代わるものとして、自己ロッキング オープン ループ制御が得られるまで整流レートを調整する方法があります。

このアプリケーション ソフトウェアには、センサレス動作の間にその使用を選択できる2つの制御モードがあります。これらのモードを次に示します。

• オープン ループ• クローズド ループ

オープン ループ モード

動作範囲内でモーターの負荷が一定であれば、印加電圧に相対的なモーター速度の応答曲線は線形です。トルク負荷が一定であることに加えて、供給電圧が良くレギュレートされていれば、速度範囲全体でモーターをオープン ループで動作させることができます。

パルス幅変調では、その実効電圧は PWM のデューティ サイクルに線形に比例すると見なします。PWM のデューティ サイクルを 16 ビットの変数に結びつけることで、オープン ループ コントローラを作ることができます。この 16 ビットの値は、ポテンショメータ ( 電位差計 ) 端子をよぎる電圧を検知する ADC チャネルを使用するポテンショメータにより設定できます。図 12 に、このモードのブロック図を示します。

図 12: オープン ループ制御

dsPIC® DSC

MCPWM

BLDCMotor

VoltageDemand

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AD変換値は10ビット符号なし整数形式で提供されますので、変換値の範囲は 0 ~ 1023 までとなります。この変換値をスケーリングして PWM のデューティ サイクルの範囲と一致させる必要があります( 式 9 参照 )。このアプリケーションでは、PWM のデューティ サイクル値は0~1473まで変化します。

式 9: PWM のデューティ サイクル範囲の計算

MCPWM、ADC、ポートおよび Timer3 を初期化すると、プログラムはモーターを回転させるための起動信号 ( たとえば、キーの押圧 ) 待ちの状態になります ( 図 14 参照 )。キーが押圧されると、スタートアップ シーケンスが実行され、BEMF 信号と Pot 値がサンプリングされてフィルタリングされます。

ゼロ交差事象と現在の整流状態に基づいて、対応する値がテーブルから引き出されて、整流遅延のあと次の整流ステップに移行するように電子スイッチを設定するため、この値が PWM OVDCON レジスタに書き込まれます。このプログラム フローを図16 と図 17 に示します。

最初、デューティ サイクル値はデフォルトの 7.5%に保持されています。しかしながら、ADC 割り込みサービス ルーチンに引き続いて、ポテンショメータが読まれてその値がスケーリングされます。その値が PWM PDCx レジスタにコピーされたときにその値がデューティ サイクルとして挿入されます。この働きによりモーターの速度が決定します。PDCxレジスタの値が大きいほど、モーターはより高速に回転します。

クローズド ループ モード

クローズド ループ モードでは、モーターに渡されるPWMのデューティ サイクルを制御するために速度制御ループが使用されます。速度要求はポテンショメータの値で決定され、これはスケーリングされて所望の速度範囲が得られます。速度コントローラは、速度要求と計算されたモーター速度間の誤差を補償するための PI コントローラを介して実装されます。図 13 は、速度クローズド ループ モードのブロック図を示します。

図 13: 速度クローズド ループ モード

式 1、式 2、および式 3 によれば、対となる極の数と 1 秒あたりの電気回転数が分かれば、モーター速度を決めることができます。1 秒あたりの 1 電気回転は 1つの 6段階整流サイクルに等しいことを思い起こせば、1 秒あたりの機械回転数は 6 段階整流サイクル数と直接関連しています。

2 対極のモーター ( 即ち、4 極モーター ) では、1 回の完全な機械回転を得るには6段階整流サイクルを2 回実行する必要があります。したがって、6 段階整流サイクルの数をカウントしそれをモーターの対極数と比較することで、1 秒あたりの機械回転数を測定できます。

1 秒あたりに機械回転数を測定するために、Timer3は Free-Running Up-Counting モードで動作するように設定し、時間ベースとしてシステム クロック周波数 ( 約 29.4 MHz) を 256 で割った値 (8.68 µs) を使用します。この時間ベースを使用すれば、Timer3 は8.68 µs~568.84 msまでカウントできます。したがって、低速度と高速度を十分な分解能で測定することが可能で、モーター速度を正確に決定できます。

すると、Timer3 は 6 段階整流サイクルを N 回終了するたびごとにトリガーされます。ファクタ N は、実際に、対極の数です。したがって、Timer3 は、1秒間に1機械回転するごとにトリガーされることになります。

一度現在速度が計算されると、それは、pot ( ポテンショメータ ) のスケーリング値で設定された所望の速度と比較されます。所望の速度と現在速度間の比例的積分誤差が計算されて、PI 定数が掛けられます( 式 10 参照 )。

式 10: PI コントローラによる計算

次に、PI 出力は PWM のデューティ サイクルの範囲に合うようにスケーリングされます。図 14、図 15 および図 16 は、オープン ループ モードとクローズドループ モードの両方に対する完全なソフトウェアフローを図解しています。

ここで

FCY はシステム周波数で、約 29.4 MHzFPWM は所望の PWM の周波数で、このアプリケーション

では 20 kHz

PWMのデューティ サイクル範囲FCY

FPWM--------------- 1–=

dsPIC® DSC

MCPWMSpeed PI Controller

Demand

+

-Calculated Motor Speed

Motor

Σ

速度誤差 所望速度 現在速度–=

積分誤差 積分誤差 速度誤差+=

PI出力 kp( ) 速度誤差( ) Ki( ) 積分誤差( )⋅+⋅=

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図 14: メイン ルーチン

START

INIT PWM SW1, SW2 DIGTAL PORTSSET THE VAR INIT VALUES

/*Initialization code*/Init FRC, PLL

Configure Oscillator to operate the device at 29491200Hz

INFINITE LOOP

WAIT FOR PLL TO LOCK

WAIT FOR PUSH BUTTON TO BE PRESSED

DEBOUNCE LOOP (20 msec)

SETTING THE INITIAL MOTOR RUNNING PARAMETERS

MOTOR RUNNING

EXECUTE THE START-UP SEQUENCE WHILE THE MOTOR REACHES THE MINIMAL SPEED TO DETECT THE BEMF SIGNALS

START-UP SEQUENCE ENDS?

PUSH BUTTON WAS PRESSED AGAIN?

YES

NO

NO

YES

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図 15: ADC の割り込みサービス ルーチン

ADC INTERRUPT

SAMPLE DESIRED SPEED VALUE AND BEMF SIGNALS RECONSTRUCT THE VIRTUAL NEUTRAL POINT

COMPARE BEMF SIGNALS TO THE VIRTUAL NEUTRAL POINT

BEMF > VNP BEMF COMPARATOR OUTPUT = 0

BEMF COMAPARATOR OUTPUT = 1

EXIT

NO

YES

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図 16: PWM の割り込みサービス ルーチン

PWM INTERRUPT

TRUE-TO-FALSE CONDITION HAS

OCCURRED

DETERMINE THE BEMF SAMPLING

POINT

POINT TO THE NEXT BEMF FILTER NUMBER

IS IT ONE OF THE 16 UNIQUE

VALUES?

EXTRACT THE N BEMF FILTER ARRAY VALUE

CALCULATE CURRENT SPEED AND COMMUTATION DELAY

IS THE START-UP SEQUENCE

APPLY 1024 TIMES THE SAME COMMUTATION STEP IN ORDER TO

DETECT THE ROTOR INITIAL POSITION

EXIT

NO

YES

NO

YES

NO

YES

TRIGGER COMMUTATION TIMER

IS OPEN LOOP

ENABLED?

EXECUTE PI SPEED LOOP CONTROLLER

YES

NO

ACTIVE?

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図 17: 整流タイマの割り込みサービス ルーチン

COMMUTATION TIMER ISR

SWITCH TO THE NEXT COMMUTATATION STEP

CLEAR TIMER INTERRUPT FLAG

DISABLE COMMUTATION TIMER

EXIT

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結論

このアプリケーション ノートは、基本的で簡単な形式で、別個のローパス フィルタリング用ハードウェアや外部コンパレータを使用せずに、新しいBLCD制御手法を用いてセンサレスBLDCモーターを駆動する開発者を対象にしています。

この制御手法は、シングルチップ dsPIC DSC デバイスに基づいた新たなソリューションで、BEMF 信号を dsPIC DSC ADC の動作電圧範囲に調整するための数個の抵抗を別とすると、外部ハードウェアを必要としません。ここで記述されたアルゴリズムは、回転するBLDCモーターで生成される逆起電力を検知するため、多数決検出関数に基づく非線形デジタル フィルタリングを使用しています。

ここで記述した手法は、マイクロチップ社のアプリケーション ノート AN901、AN992 や AN1083 (「参考文献」を参照 ) に記述された手法とは全く異なることにご留意ください。次に、このアプリケーション ノートで説明した手法と以前のアプリケーション ノートに記述された手法の重要な相違点を紹介します。

AN1083 の ADC は、BEMF を非常に高いサンプリング周波数でサンプルするのに使用されます。その後これらのサンプルは、BEMF 信号を復元するためIIR フィルタで処理されます。ゼロ交差事象を特定するのに使用されるスレッショルド点は VBUS/2 です。IIR フィルタリング過程に起因する遅延のために、整流時間を特定する必要がありますが、それにはタイマが使用されています。低速度では、それは3 つの BEMF 信号をフィルタリングしますが、6 整流段階を時間通り確実に行うために1つのタイマが使用されます。高速度では、それは 1 つの BEMF 信号のみをフィルタリングし、6 整流段階を時間通り確実に行うために 3 つのタイマが使用されます。

AN901 では、サンプリングは PWM の OFF 時間に実行されますが、PWM 信号の極性が反転されているため、PWM の ON 時間にサンプリングしたものと「類似の」結果が得られます。この場合、信号は固定点でサンプリングされます。この固定点は、PWM の OFF 時間の終端近くです。次に、サンプリングされた信号は、ゼロ交差事象を決めるために、VBUS/2 と比較されます。これは、n サンプル ウィンドウを使って行われます。n サンプル ウィンドウに封入されたサンプルが VBUS/2 と比較されます。最初の半サンプルが VBUS/2 より低く第 2 の半サンプルが VBUS/2 より高ければ、真のゼロ交差事象が発生したものとされます。

デジタル フィルタリングは、逆起電力信号内のゼロ交差事象をより正確に検出することを実現します。dsPIC DSC デバイスで検出されると、ゼロ交差事象は、モーター巻き線を整流するためにこのアルゴリズムに必要な情報を提供します。

逆起電力信号内でゼロ交差事象を正確に検出することが、6 段階、つまり台形整流を使用して駆動されるBLDCモーターのセンサレス制御の鍵となります。ハードウェア フィルタや外部コンパレータの代わりにデジタル フィルタリングを使用すればハードウェアを最小限に抑えられ、コストを安く、かつ PCB も小型化できます。

参考文献

• Valiant, L. (1984), “Short Monotone Formulae for the Majority Function”, Journal of Algorithms 5: 363–366.

• “Modern Power Electronics and AC Drives”, B. Bose, Prentice Hall PTR, ISBN 0130167436

• “Electric Motors and Drives”, A. Hughes, Heinemann Newnes, ISBN 0750617411

• “Brushless Permanent Magnet and Reluctance Motor Drives”, T. Miller, Oxford Clarendon, ISBN 0198593694

• K. Iizuka et. al., “Microcomputer Control for Sensorless Brushless Motor”, IEEE Transactions on Industrial Applications, Vol. 21, No.4 1985, pp 595-601

• AN857, “Brushless DC Motor Control Made Easy”, Microchip Technology Inc., 2002

• AN901, “Using the dsPIC30F for Sensorless BLDC Control”, Microchip Technology Inc., 2007

• AN957, “Sensored BLDC Motor Control Using dsPIC30F2010”, Microchip Technology Inc., 2005

• AN970, “Using the PIC18F2431 for Sensorless Motor Control”, Microchip Technology Inc., 2005

• AN992, “Sensorless BLDC Motor Control Using dsPIC30F2010”, Microchip Technology Inc., 2005

• AN1017, “Sinusoidal Control of PMSM Motors with dsPIC30F DSC”, Microchip Technology Inc., 2005

• AN1078, “Sensorless Field Oriented Control of PMSM Motors”, Microchip Technology Inc., 2007

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ノート :

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マイクロチップ社デバイスのコード保護機能に関する以下の点にご留意ください。

• マイクロチップ社製品は、その該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。

• マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様どおりの方法で使用した場合、マイクロチップ社製品は現在市場に流通している同種製品としては最もセキュリティの高い部類に入る製品であると考えております。

• コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在します。マイクロチップ社の確認している範囲では、このような方法のいずれにおいても、マイクロチップ社製品をマイクロチップ社データシートの動作仕様外の方法で使用する必要があります。このような行為は、知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。

• マイクロチップ社は、コードの保全について懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。

• マイクロチップ社を含むすべての半導体メーカーの中で、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません。コード保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証しているものではありません。

コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、製品のコード保護機能の改善に継続的に取り組んでいます。マイクロチップ社のコード保護機能を解除しようとする行為は、デジタルミレニアム著作権法に抵触する可能性があります。そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作物に不正なアクセスを受けた場合は、デジタルミレニアム著作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があります。

本書に記載されているデバイス アプリケーションなどに関する情報は、ユーザーの便宜のためにのみ提供されているものであり、更新によって無効とされることがあります。アプリケーションと仕様の整合性を保証することは、お客様の責任において行ってください。マイクロチップ社は、明示的、暗黙的、書面、口頭、法定のいずれであるかを問わず、本書に記載されている情報に関して、状態、品質、性能、商品性、特定目的への適合性をはじめとする、いかなる類の表明も保証も行いません。マイクロチップ社は、本書の情報およびその使用に起因する一切の責任を否認します。マイクロチップ社デバイスを生命維持および /または保安のアプリケーションに使用することはデバイス購入者の全責任において行うものとし、デバイス購入者は、デバイスの使用に起因するすべての損害、請求、訴訟、および出費に関してマイクロチップ社を弁護、免責し、同社に不利益が及ばないようにすることに同意するものとします。暗黙的あるいは明示的を問わず、マイクロチップ社が知的財産権を保有しているライセンスは一切譲渡されません。

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01/02/08