SimPowerSystems™は、発電、伝送、配電、および電力消費など、電力システムのモデリングやシミュレーションを行うツールであり、Simulink®の環境を拡張します。SimPowerSystemsは、三相機械、電気駆動装置、およびフレキシブルACトランスミッションシステム（FACTS）や風力発電などの特定用途モデル向けのライブラリがあり、電力システムで使用される多数の電気系コンポーネントのモデルを提供します。周波数解析、全高調波ひずみ（THD）と負荷潮流の計算、その他の主要な電力システムの解析が、SimPowerSystems専用のGUI環境（PowerGUI）で実行できます。また、シミュレーションを高速化するために、SimPowerSystemsモデルを離散化することができます。

SimPowerSystemsは、自動車、飛行機、�製造プラント、電力設備分野などで見られるような、複雑な自立型の電力システムの開発に非常に適しています。また、SimPowerSystemsは、他のMathWorks物理モデリング製品と組み合わせることで、マルチドメイン物理システムにおける複雑な相互作用をモデリングすることができます。SimPowerSystemsのブロックライブラリおよびシミュレーション手法は、モントリオールのHydro-Québec社によって開発されました。

主な機能■�AC、DC、およびAC/DC混在の電力システムモデルを構築するためのモデリング環境を提供

■�一般的なAC/DC電気駆動装置、フレキシブルACトランスミッションシステム（FACTS）、風力発電などの特定用途モデル向けのライブラリを提供

■�モデル実行の高速化を可能にする離散化およびフェーザシミュレーションモード

■�理想的なスイッチングアルゴリズムによる、パワーエレクトロニクス装置の高速で正確なシミュレーション

■�回路の状態空間表現の取得、機械の負荷潮流の計算の解析手法を提供

■�主要な電気技術のデモンストレーションモデルを提供

SimPowerSystemsによる非同期電動機およびディーゼル発電機の無停電電源装置（UPS）のモデル。SimulinkのScopeブロックで観測した非同期電動機のステータ電流と速度を表しています。

SimPowerSystems 5電力システムのモデリングおよびシミュレーション

電力システムのモデリングSimPowerSystemsでは、回路図を描くように、多数の電気系コンポーネントを組み合わせることで、電力システムのモデルを構築できます。電力システムモデルの各電気系コンポーネントは、理想的な伝導路を表す導線によって接続されます。この手法では、電力システムの電気的な物理構造を表現すればよく、電力システムを表す方程式を導き出して組込む必要はありません。SimPowerSystemsは、回路図のように表されたユーザのモデルから電力システムの挙動を特徴付ける微分代数方程式（DAE）を自動的に構築します。これらの方程式は、他のSimulinkでモデル化した部分と統合されます。

SimPowerSystemsのSensorブロックを使用して電力ネットワークの電流と電圧を測定し、それらの信号を標準のSimulinkブロックに渡すことができます。Sourceブロックでは、Simulink信号の値を電気的（電流と電圧）変数に割り当てることができます。また、SensorブロックとSourceブロックを使用して、Simulinkで開発した制御アルゴリズムをSimPowerSystemsのネットワークに接続することも可能です。

カスタムコンポーネントのモデリングSimPowerSystemsでは、ライブラリに含まれる基本要素をSimulinkブロックと組み合わせて使用することで、カスタムコンポーネントのモデルを作成することができます。

SimPowerSystemsには以下のコンポーネントがあります。

電気素子： 線形および可飽和変圧器、アレスタ/ブレーカー、伝送線モデル

電気的動力装置： 同期型/永久磁石同期型/直流型の電動機モデル、励起システム、油圧タービンおよび蒸気タービン加減弁システムのモデル

パワーエレクトロニクス： ダイオード、理想サイリスタ、高精度サイリスタ、GTO、スイッチ、IGBTモデル、標準的なブリッジトポロジの選択を可能にする汎用ブリッジ回路

制御・計測： 電圧/電流/インピーダンスの測定、RMSの測定、有効/無効電力の計算、タイマ/マルチメータ/フーリエ解析、HVDC制御、全高調波ひずみ、abc-dq0/dq0-abc変換

三相コンポーネント： RLC負荷/分岐、ブレーカー /短絡障害、π型伝送路、電圧源、トランス、同期/非同期発電機、電動機/アナライザ/計測

電気駆動、その他のアプリケーションライブラリSimPowerSystemsは、下記の専門のアプリケーションライブラリを提供します。

FACTS： フレキシブルACトランスミッションシステムのフェーザモデル

分散電源： 風力タービンのフェーザモデル

電気駆動： 編集可能な電気駆動系モデル。これらのモデルには、各駆動系に含まれる電動機、コンバータ、コントローラの詳細な説明が含まれています。

電気駆動系ライブラリには、永久磁石型、同期型、および非同期（誘導）型の電動機モデルが含まれています。コンバータ、コントローラは、上記の電動機のスピードやトルクを制御するための、直接トルク制御やベクトル制御などといった最も一般的な手法が組み込まれています。

SimPowerSystemsでは、AC駆動装置、DC駆動装置、風力タービン発電機、三相要素、およびFACTSモデルのライブラリが提供されています。

シミュレーション機能SimPowerSystemsは、電力システムネットワークに対する3つの解析手法と、高周波スイッチングを行うシステムに対するシミュレーションパフォーマンスを向上させる理想的なスイッチングアルゴリズムを提供し�ます。

SimPowerSystemsを用いることで、Simulink内の可変ステップ積分アルゴリズムを使用し、非常に正確な電力システムモデルのシミュレーションを行うことができます。Simulinkの可変ステップ積分アルゴリズムの中には、実際の電力システムのモデリングの際によく生じる、スティッフなシステムを扱うものもあります。Simulinkのゼロクロッシング検出機能により、機械の最高精度で不連続性を確実に検出し、解決することができます。

離散化モードでは、固定時間ステップの台形積分を用いてシステムのシミュレーションを行います。この手法はパワーエレクトロニクスデバイスを含む電力システムモデルに対して非常に効果的です。また、このモードは実時間でのモデルの実行を容易にし�ます。

フェーザ解析は、回路を表現する微分方程式を、固定周波数での代数方程式に置き換えます。フェーザシミュレーションは、マルチマシンシステムの過渡安定度の調査を容易にします。

SimPowerSystemsの理想的なスイッチングアルゴリズムを使用すると、パワーエレクトロニクスデバイスを含むシステムを高速かつ正確にシミュレーションすることができます。このアルゴリズムは、高インピーダンスのスナバを持つ電流源に依存せずに、システムの状態空間表現の算出のための改善された計算方法を使用して、パワーエレクトロニクスデバイスをモデル化します。この方法により、ソルバと結果を短いシミュレーション時間でより柔軟に選択することができ�ます。

電力システムの解析手法SimPowerSystemsは、以下のシステム解析ツールを提供します。

・�定常状態の電圧および電流の表示

・�初期状態値の表示および変更

・�負荷潮流およびマシン初期化の実行

・�インピーダンスと周波数の測定値の表示

・�定常状態計算のレポートを生成

SimPowerSystemsのグラフィカルユーザインタフェースは、電流と電圧の計測値と�インダクタ電流およびキャパシタ電圧を含む、すべての変数値の定常状態値を表示します。

負荷潮流計算エンジンは、同期型および非同期型の電動機の初期電流を計算します。必要とされる定常状態の電動機の状態を回路に指定すると、SimPowerSystemsによって負荷潮流が計算されます。結果として得られたロータの位置、初期電流、および内部磁束は、自動的に電動機のパラメータに書き込まれます。

SimPowerSystemsを使用することで、シミュレーションを行うことなく、電気系統トポロジを解析し、同等の状態空間モデルを計算することができます。また、その状態空間モデルをControl�System�Toolbox™のLTI�Viewerインタフェースと接続して、時間領域応答や周波数領域応答を得ることができます。

SimPowerSystemsのPowerGUIダイアログボックス。各ボタンをクリック すると、主要な電力システムの解析を実行します。

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MATLAB/Simulinkでの マルチドメイン物理モデリングSimPowerSystemsは、電力システムの�モデリングのための拡張された機能を提供します。電気的な物理接続により電気系の物理プラントモデルを作成し、Simulinkの信号フローを使用して作成された制御モデルに直接接続することができます。SimPowerSystemsモデルは、MathWorks製の他の用途固有/ドメイン固有の物理モデリングツールにも接続できます。これにより、マルチドメイン物理システムでの複雑な相互作用をモデリングすることが可能です。また、MATLAB®を使用して、モデルのパラメータ化、シミュレーションテストの自動化、出力データの解析、およびシステム性能の最適化を行うこともできます。その結果、システム全体（マルチドメイン物理プラントとコントローラ）をMATLAB/Simulink環境でテストすることが可能となります。

動作環境SimPowerSystemsには、以下の製品が必要です。

・�MATLAB®・�Simulink®

動作環境の詳細につきましては、　�　���　�www.mathworks.co.jp�をご覧ください。

関連製品・SimDriveline™　�メカニカルな動力伝達システムのモデリングおよびシミュレーション

・SimElectronics™　�電子・電気機械システムのモデリングおよびシミュレーション

・SimHydraulics®　�油圧システムのモデリングおよびシミュレーション

・SimMechanics™　�メカニカルシステムのモデリングおよびシミュレーション

・Simscape™　�マルチドメイン物理システムのモデリングおよびシミュレーション

可変ピッチの風力タービンで駆動される誘導発電機を使用した9MWの風力発電プラントのSimPowerSystemsモデル。このモデルには、羽根のピッチ制御と保安システムが含まれます。

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