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030 ▶教科書p.6 さとうきび畑 ▶教科書p.4 作詞者・作曲者 寺島尚彦(1930 2004)。東京 都生まれ。作曲家。東京藝術大学作曲科卒。在学 中に日本音楽コンクール入賞。東京交響楽団の定 期演奏会に作品を委嘱される。作品は幅広いジャ ンルにわたり,作詞,編曲,エッセーなども手が けている。洗足学園音楽大学教授を務めた。 楽曲解説 この曲は作曲者が沖縄のさとうきび畑を訪れた ことがきっかけとなって誕生した。1964 6 月の ことで,当時の沖縄は日本復帰前であった。摩文 仁の丘に続くさとうきび畑で「この土の中に戦没 者の遺骨が埋もれたままになっています」という 話を聞き,美しく広がっていた青い空はモノクロ ームに一変し,頭越しに吹き抜ける風の音だけが 耳を打ち,立ちすくんでしまったそうである。そ の時に聞こえた音が「ざわわ ざわわ」という,印 象的な音である。歌詞は11 番まで続き,沖縄の悲 劇と戦争の悲惨さを忘れないために,66 回も「ざ わわ」が繰り返されている。教科書に掲載されて いるのは「普及版」であるが,「オリジナル版」はフ ル・コーラスで10 分もかかるため,できた頃はテ レビやラジオでとりあげられることはほとんどな かった。しかし多くのアーティストが歌い継いで きて,作曲されてから35 年目に初めてフル・コー ラス版のCD が発売された。また現在の糸満市に ある平和祈念公園のあたりが,当時のさとうきび 畑だったということも感慨深い。 取り扱い上の要点 ◦歌詞の内容をよくかみしめながら歌わせる。 ◦何回も出でくる「ざわわ」の歌い方を,工夫させ る。 ◦いろいろなアーティストの演奏を鑑賞させる。 伴奏譜…本書p.114 作詞者 福島県南相馬市立小高中学校 平成24 度卒業生 作曲者 小田美樹(1973 - )。福島県生まれ。山 形大学教育学部中学校教員養成課程卒業。 1997 より山形市内中学校で教鞭をとり, 99 年より福島 県の中学校教員となり,現在に至る。2011 3 月, 当時勤務していた南相馬市立小高中学校で東日本 大震災を経験する。 編曲者 信長貴富(1971 - )。東京都生まれ。作 曲家。上智大学文学部教育学科卒。公務員を経て 作曲家として独立。独学で作曲を学び,数多くの 作品を世に出している。大学在学時より作品は入 選や受賞を果たし,コンクールの課題曲にも選ば れている。合唱活動を長く続けていたことから,作 品は合唱曲が多いが,歌曲や器楽曲にも積極的に 取り組んでいる。 楽曲解説 東日本大震災と原発事故によって引き離された 友人や家族を思い,福島県立南相馬市立小高中学 校の生徒達が共同で言葉を紡ぎ出し,それを小田 美樹が構成・作曲した,深い思いの詰まった作品 である。2012 年度の卒業生は,1 年生の時に被災 したが, 106 名いた学年の生徒は, 2 名が津波の犠 牲となり, 97 名が原発事故による避難のため散り 散りとなっている。この曲には,教科書にある2 部合唱版の他,混声3 部版・混声4 部版・英語版・ オーケストラ伴奏版・オリジナル版が存在する。 取り扱い上の要点 ◦出だしは低い音域で始まるが,暗くなることな く,明るい響きをもって歌いだしたい。 ◦描かれている情景を,リアリティーをもって思 い浮かべながら,それらを綴った生徒たちの深く 複雑な思いを,想像力をもって感じ取り,精一杯 表現させたい。 伴奏譜…本書p.108 群青

sk3 03 renew030 教科書p.6 さとうきび畑 教科書p.4 作詞者・作曲者 寺島尚彦(1930-2004)。東京 都生まれ。作曲家。東京藝術大学作曲科卒。在学

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Page 1: sk3 03 renew030 教科書p.6 さとうきび畑 教科書p.4 作詞者・作曲者 寺島尚彦(1930-2004)。東京 都生まれ。作曲家。東京藝術大学作曲科卒。在学

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▶教科書p.6

さとうきび畑

▶教科書p.4

作詞者・作曲者 寺島尚彦(1930-2004)。東京都生まれ。作曲家。東京藝術大学作曲科卒。在学中に日本音楽コンクール入賞。東京交響楽団の定期演奏会に作品を委嘱される。作品は幅広いジャンルにわたり,作詞,編曲,エッセーなども手がけている。洗足学園音楽大学教授を務めた。楽曲解説 この曲は作曲者が沖縄のさとうきび畑を訪れたことがきっかけとなって誕生した。1964年6月のことで,当時の沖縄は日本復帰前であった。摩文仁の丘に続くさとうきび畑で「この土の中に戦没者の遺骨が埋もれたままになっています」という話を聞き,美しく広がっていた青い空はモノクロームに一変し,頭越しに吹き抜ける風の音だけが耳を打ち,立ちすくんでしまったそうである。その時に聞こえた音が「ざわわ ざわわ」という,印象的な音である。歌詞は11番まで続き,沖縄の悲劇と戦争の悲惨さを忘れないために,66回も「ざわわ」が繰り返されている。教科書に掲載されているのは「普及版」であるが,「オリジナル版」はフル・コーラスで10分もかかるため,できた頃はテレビやラジオでとりあげられることはほとんどなかった。しかし多くのアーティストが歌い継いできて,作曲されてから35年目に初めてフル・コーラス版のCDが発売された。また現在の糸満市にある平和祈念公園のあたりが,当時のさとうきび畑だったということも感慨深い。取り扱い上の要点◦歌詞の内容をよくかみしめながら歌わせる。◦何回も出でくる「ざわわ」の歌い方を,工夫させる。◦いろいろなアーティストの演奏を鑑賞させる。伴奏譜…本書p.114

作詞者 福島県南相馬市立小高中学校 平成24年度卒業生作曲者 小田美樹(1973- )。福島県生まれ。山形大学教育学部中学校教員養成課程卒業。1997年より山形市内中学校で教鞭をとり,99年より福島県の中学校教員となり,現在に至る。2011年3月,当時勤務していた南相馬市立小高中学校で東日本大震災を経験する。編曲者 信長貴富(1971- )。東京都生まれ。作曲家。上智大学文学部教育学科卒。公務員を経て作曲家として独立。独学で作曲を学び,数多くの作品を世に出している。大学在学時より作品は入選や受賞を果たし,コンクールの課題曲にも選ばれている。合唱活動を長く続けていたことから,作品は合唱曲が多いが,歌曲や器楽曲にも積極的に取り組んでいる。楽曲解説 東日本大震災と原発事故によって引き離された友人や家族を思い,福島県立南相馬市立小高中学校の生徒達が共同で言葉を紡ぎ出し,それを小田美樹が構成・作曲した,深い思いの詰まった作品である。2012年度の卒業生は,1年生の時に被災したが,106名いた学年の生徒は,2名が津波の犠牲となり,97名が原発事故による避難のため散り散りとなっている。この曲には,教科書にある2部合唱版の他,混声3部版・混声4部版・英語版・オーケストラ伴奏版・オリジナル版が存在する。取り扱い上の要点◦出だしは低い音域で始まるが,暗くなることなく,明るい響きをもって歌いだしたい。◦描かれている情景を,リアリティーをもって思い浮かべながら,それらを綴った生徒たちの深く複雑な思いを,想像力をもって感じ取り,精一杯表現させたい。伴奏譜…本書p.108

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