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Smart Connected Product by M.Porter ~IoTに関するポータ教授の競争戦略論を読み解く~ PTCジャパン株式会社 ソリューション戦略企画室 IoTビジネス開発担当 ディレクター・フェロー 後 藤 2015.8.28

Smart Connected Product by M.Porter - jasa.or.jp · 2 本セッションのねらい 製品やサービスの変革の推進において、IoTは欠かせない経営テーマの一つ

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Smart Connected Product by M.Porter ~IoTに関するポータ教授の競争戦略論を読み解く~

PTCジャパン株式会社 ソリューション戦略企画室 IoTビジネス開発担当 ディレクター・フェロー 後 藤 智

2015.8.28

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本セッションのねらい 製品やサービスの変革の推進において、IoTは欠かせない経営テーマの一つとなりました。本セッションでは、昨年秋のHBR誌に寄稿のあったマイケル・ポーター教授のIoT競争戦略の論文を読み解きながら、特に 製造企業における製品のスマートコネクテッド化にともなう経営上の課題や、IoTの実践で考慮すべき10個の戦略オプションについて、最新のグローバル事例を交えながらご紹介します。

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3

マイケル E. ポーター ハーバードビジネススクール教授

ファイブフォース分析

競争戦略論の第一人者

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ポーター教授のIoT競争戦略論

「接続機能を持つスマート製品」が変える

IoT時代の競争戦略 –Harvard Business Review, November 2014

–DIAMOND ハーバート・゙ビジネス・レビュー 2015年4月号

ジム・ペプルマン PTC社CEO

マイケル・ポーター教授 ハーバード・ビジネス・スクール

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書かれている概要を理解する

6個のポイントを理解しよう(次頁⇒)

どんなことが書かれているのか?

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1. モノの本質が変わってきた―

2. 製品がIoT機能を持つと、何ができるの?

3. 業界の競争関係はどうなるの?

4. 企業内部の業務活動はどうしたらいいの?

5. IoT戦略オプション(計10個)

6. 戦略上、やってはいけないこと

どんな内容が書かれているの?

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IoT(モノのインターネット)

モノの本質が変わってきたー

抜刷り冊子 P.4~8

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8 Do not reproduce or distribute without permission

モノのインターネット (IoT)

世の中のあらゆる“モノ”どうしが、インターネットの ような通信インフラを経由しながら接続し、様々な コンピュータシステムとも有機的に繋がっていくことで これまでにない新しい価値を生み出す技術のこと

通信インフラ モノ コンピュータ・システム もはや、単なる物理的なモノではなく、センサーやソフトウェアが搭載され、外部との通信機能を備えたスマート・コネクテッド製品

無線LAN、WiFi、4G、Bluetoothといったネットワークによって、モノとインターネットを相互接続

データの取り込み、データ分析、ビジネスアプリケーションによって、まったく新しい形の価値を創出

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競争の第三波

1800年代…………….…..1960年代 ……………………...…1980年代……………………..….2000年代 …………... その先へ

Mechanical Products & Physical Processes

Value Chain Automation

Value Chain Dispersion and Integration

Products with Embedded IT and

Connectivity

アナログの時代

手作業で造られた 機械式の製品、 情報は紙媒体や 人と人が口頭で 伝えていた

第1次IT革命

電算機の登場で データ処理が 自動化し業務が

省力化

第2次IT革命

インターネットの登場で個々の業務が有機的に統合し、外部企業や顧客との情報連携が時間と空間を越えたグローバル化を実現

第3次IT革命

スマート&コネクテッドな製品やシステムの実現で、新たな価値の再定義。営業、マーケティング、開発、調達、サービス、すべての領域で新しい事業創造の到来

ITが、製品そのものに不可欠な存在になる

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スマート・コネクテッド・プロダクト (接続機能を持ったスマート製品)

電子制御

Smart

Product

プロダクト・クラウド

センサー技術

ソフトウエア制御

ユーザインターフェース

機械部品

Smart,

Connected

Product

Physical Product 電気部品

ネット接続

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新しいテクノロジースタック

ID管理と セキュリティ機能

外部の情報源とのゲートウェイ

製品データのデータベース

スマート製品のアプリケーション

ルール/解析エンジン(アナリティクス)

アプリケーション・プラットフォーム

業務システムとの 統合

製品ハードウェア

製品ソフトウェア

製品クラウド

ネットワーク通信

企業は、まったく新しい技術インフラの構築/支援に迫られる

接続機能

製品

P.8

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製品がIoT機能を持つと、 何ができるの?

抜刷り冊子 P.9~11

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何ができるのか?

モニタリング

制御

最適化

自律性

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製品がIoT化していく4つのステップ

1. モニタリング

2. 制御

3. 最適化

4. 自律性

• 製品の状態

• 外部環境

• 製品の稼動

• 製品の利用状況

• 製品機能の制御

• ユーザの利用操作

のパーソナル化

• 製品性能の向上

• 予防診断

• 予防サービス

• 予防修理

• 製品の自動運用

• 他製品や他システム

との自動連携

• 製品改良の自動化

やパーソナル化

• 自己診断と自己修理

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業界の競争関係はどうなるの?

抜刷り冊子 P.12~18

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ファイブフォース分析 (5つの競争要因)

IoTになっても、競争のルールは従来と変わらない

サプライヤー の交渉力

買い手の 交渉力

新規参入者 の脅威

既存企業 同士の競争

代替品や 代替サービスの

脅威

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買い手の交渉力

• エンジンメーカー(GE)が、最終顧客(アリタリア航空) に多くのサービスを直接提供できる態勢

• GEからの燃料使用データの分析結果から、着陸時の操縦プロセスを変更し、燃料費が削減できた

• アリタリア航空は、GEとの緊密なつながりを構築、その一方で機体メーカーへの影響力を強めている

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既存企業同士の競争

• 創業140年、テニスラケット老舗のバボラ社

• グリップにセンサーと通信機能を内蔵した新製品

• ボール速度、スピン、インパクトエリアをスマホアプリで把握・分析し、選手のプレーの改善に役立てるサービスを提供

• ライバル各社も機能強化、しかし性能向上を価格転嫁できない可能性あり ⇒ 業界の収益性を圧迫

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新規参入業者の脅威

• 共有サービスによる「製品のサービス化」

• ジップカー社:利用者が必要な時に必要な場所ですぐに自動車を利用できるサービス

• スマホアプリで最も近い場所の車が探せる

• 利用者は、車を所有する必要がなくなる

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代替品や代替サービスの脅威

• 多くの業界で、新しいタイプの代替品の脅威

• フィットビットのウェアラブル型フィットネス機器

• ヒトの活動量や睡眠パターンの計測機能

• 健康に関する様々なデータを記録

• ランニングウォッチや歩数計のような既存製品に 代わる役割を果たしている

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供給業者(サプライヤ)の交渉力

• ハードよりソフトの優位性が、サプライヤとの従来の関係性を揺さぶっている

• ソフト機能の強化によって、ハードを交換せずに 顧客ニーズに合わせられる

• OOA(車載用アンドロイドの業界団体)

• ソフトウェアアプリ開発の専門性に関して、 自動車OEMよりサプライヤの交渉力が上回ってくる

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業界領域が変わっていく

農家管理 システム

降雨量、 湿度、気温

センサー

天気図

天気予報

気象データ アプリケーション

農家経営 データベース

種子データベース

播種最適化 アプリケーション

現場センサー

灌漑地域

灌漑 アプリケーション

複合システム (System of Systems)

農家同士の 連携

種まき機

トラクター

農業機械 システム

耕運機

製品システム

+

+

接続機能を持つ スマート製品

+

スマート 製品

製品

農業機械 システム

灌漑 システム

気象データ システム

播種 最適化 システム

トラクターを作っている機械メーカーだと思っていたら、 気づいたら農家の経営管理のコンサル業界で競争しているかもしれない・・・

P.14

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企業内部の組織活動は どうしたらいいの?

抜刷り冊子 P.18~21

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バリューチェーン

購買物流 製 造 出荷物流 販売・マーケティング

サービス

調達活動

技術開発

人事・労務管理

全般管理(インフラストラクチャ)

主活動

支援活動

出所:「競争優位の戦略」MEポーター著、ダイヤモンド社 (1985)より編集

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「技術開発」 はどうなるのか?

26 Confidential and Proprietary - Not for Distribution

• カスタマイズはソフトウェアに任せて、ハードウェアは規格化するための設計に軸足

• 顧客毎のきめの細かいパーソナル化を可能にする設計

• 予測サービス、改良型サービス、遠隔サービスのための設計

• アップグレードのし易さを追求した設計

新しい設計原則の必要性

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「サービス」 はどうなるのか?

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• 予防的なメンテナンスやサービス生産性の大幅改善を狙えるチャンス

• 故障・不具合等の兆候に発見につながる製品データを活かして、適切なタイミングで現地修理や遠隔修理を実現するためには、サービス組織やプロセスの刷新が求められる

• 従来の部品をソフトウェア部品に替えることで、アフターサービスコストの節約を狙う

新しいサービス組織と業務プロセスの刷新

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「調達活動」 はどうなるのか?

28

Connectivity / Analytics Infotainment / Software

• IoTのテクノロジーに強いサプライヤとのパートナーシップや連携機会

• ハードウェア部品の調達が単純化され、調達する部品アイテム数が削減

• ソフトウェア機能の強化とハードウェア部品削減効果が、従来型のハードウエア部品サプライヤの数を合理化

IoT技術に強い協力企業との連携

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「インフラストラクチャ」 はどうなるのか?

• 入退出のセキュリティー管理の強化

• 製品データの保護、製品不正利用の防止

• 製品テクノロジースタックと企業内業務システムとの安全な相互接続

• 新たな認証プロセス、製品データの安全な保管、アクセス権限の設定と管理

• 製品データと顧客データのハッキング防止

社内ITインフラのスマート化と革新

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「販売・マーケティング」 はどうなるのか?

• 製品使用データの蓄積や分析結果に基づいた、顧客満足分析、製品ポジショニング定義

• ビックデータ分析結果から、まったく新しい市場セグメントを再定義

• エンジン馬力をソフトの機能で自由に設定できると、エンジンの種類を合理化できる

• 修理が必要な自動車は、自動的に修理用ソフトのダウンロードを要請するか、指定の修理工場への搬送サービスの手配をするか、利用者に付加価値な提案ができる

顧客とのビジネス関係の再定義

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「人事・労務管理」 はどうなるのか?

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• IoT技術に強い人材の確保、採用計画

• 機械エンジニア中心の製品開発部門の人材改革に着手

• ソフトウェア技術者、システムズエンジニアリングの育成と採用

• 製品クラウド、ビッグデータ解析エンジニアの増員と強化、外部との協業機会検討

• 情報システム部門と製品開発部門の橋渡し人材の育成

新分野の人材登用や能力評価の再定義

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従来型の組織のままでは、 IoTビジネスは厳しい

新しい3つの役割と 人材が急務!

出所: LiveWorx 2015でのマイケル・ポーター教授の基調講演内容から引用し加筆 (2015.5.5)

自社製品の顧客先での フルバリュー評価と管理

クラウドとハイブリッド化した 製品の運用管理

製品にスマート接続機能を持たせるためのIoTセンサー

や制御ソフトの開発

1

2 3

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IoT 戦略オプション

抜刷り冊子 P.21~33

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1. どんな機能や特性を追求すべき?

2. 製品と製品クラウド、どちらに何を?

3. オープンシステム? クローズシステム?

4. すべて内製? パートナーに任せる?

5. どんなデータを、どう分析する?

6. データの使用権やアクセス権は?

7. 流通チャネルを中抜きすべき?

8. ビジネスモデルを手直しすべき?

9. データ再販の新規事業にいくか?

10. 事業の範囲を拡大すべき?

IoTビジネスにおける10個の戦略オプション

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IoT 戦略オプション

(その1)

自社製品をIoT化する場合どんな機能や特性を追求すべきか?

家庭向け給湯器を対象に、動作不良の監視・通知機能を開発したが、給湯器は製品寿命が非常に長く信頼性も高いため、コストに見合う料金をこの機能のために支払おうとする家庭はわずかで、一部の機種にオプションで付けている程度。ところが、産業用の給湯器やボイラーの場合は、このような機能の利用率は高い。法人顧客は、熱源や湯がないと業務を遂行できないため、遠隔による監視や運用の価値がコストと比べて大きく、この機能は広く普及しつつある。

ビル管理ソリューションの一環として、電気・ガスの消費量のほか、ビルの稼働状況を示す大量のデータを収集している。ある顧客セグメント(ビルオーナー)向けには、ビル機器の遠隔監視・警告、光熱費などのコスト節約アドバイスといったサービスを提供している。完全なアウトソーシング・ソリューションを望む顧客には、機器の遠隔管理を一手に引き受けて、顧客に成り代わって電気・ガスの消費を最小限に抑えている。

給湯器・ボイラー

ビル管理

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IoT 戦略オプション

(その2)

製品とクラウドそれぞれに対してどれくらいの機能を 持たせるべきか?

一般家庭用オーディオ機器

ワイヤレス・オーディオ・システムとして音楽ソースとユーザ・インターフェースの両方をクラウド上に置いているため、ユーザはスマホだけでオーディオ機器を操作することができる。その結果、機器自体の設計は単純化できる。

マニア向けオーディオ機器

ファイヤレス通信を利用したストリーミング配信では、本格的なオーディオ・ファンが求める音質は実現できないので、別の視点で競合他社とは異なった差別化戦略が求められる。

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IoT 戦略オプション

(その3)

オープンシステムとクローズシステムのどちらを追求すべきか?

自社製の航空機エンジンから得る稼働データは、そのエンジンを利用する航空会社にしか提供されない。このようなクローズなシステムは、飛行機システムのあらゆる要素を制御してお互いに最適化を図りながら、エンジンメーカとしての競争優位を手に入れることができる。技術とデータを自社の管理下に置きながら、顧客にはライセンス契約を結ばせ、デファクトスタンダードとして最大限の価値を手に出来る。

航空機エンジン 色相照明システム

電球の色調や照度を自由に調整するための簡単なスマホアプリを提供。このアプリ開発のためにインターフェースを一般公開したことで、様々なアプリ開発者によって何十ものアプリが提供された。これが、同社の色相照明システムの有用性を高め、売上増につながった。オープンシステムの戦略をとると、多数の協力者が現れて、革新的なアプリが次々と誕生する。

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IoT 戦略オプション

(その4)

自社製品をIoT化する場合、機能とインフラすべてを内製すべきか、それともベンダーやパートナーに外注すべきか?

農業機械

製品のIoT化をすべて内製化することで、製品の特徴や機能、データを思いのままに扱うことができる。加えて、技術開発の方向性を左右する力と先行者利益を手に入れることができる。更には、他社にない学習効果が短期間に得られ、それが競争優位の維持に役立つこととなる。ただし、そのためには大規模なソフトウェア開発センターのような組織を、自社内に設けてソフトウェア開発力を自前で持つことが重要となる。

自社製品のIoT化を、すべて自前で用意するとなると、その難易度、技能、時間、コストの面での負荷が大きいので、階層毎に分業する戦略も考えられる。多くの外部パートナーネットワークを構成することで、自社製品に搭載する情報エンターテイメントシステムの開発を支えている。

車載情報システム

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IoT 戦略オプション

(その5)

製品やサービスの価値を最大化するには、どういったデータを取り込んで、安全に保護し、そして分析する必要があるのか?

防衛システム

突発的な有事に備えている防衛システムでは、リアルタイムで活用できる「即効性のある」データを豊富に集めなくてはならない。と同時に、主導権を握ろうとする企業であれば、多数の製品や外部環境に関する広範囲なデータの収集・分析に注力する必要があり、場合によっては他社製品のデータさえも対象になりうる。

サーモスタット、火災報知機

家に人がいる時間帯を自動で学習しながら、最適なエアコンのOn/Offを自動調整し、家庭の光熱費を節約する仕組み。また、ガスレンジやガス給湯器と連動しながら、もし一酸化炭素を感知すると、機器が自動的に分析し、ガスの元栓を占めてくれる。

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IoT 戦略オプション

(その6)

製品データの使用権とアクセス権をどう管理するか?

個人のフィットネス情報を収集してソーシャル・メディア経由で共有するサービスを提供している。ただし、すべての顧客がデータ共有を望むわけではないので、利用者に対して明確な価値提案を示す必要がある。

ウェアラブル機器 心臓ペースメーカー

心臓ペースメーカーを装着している患者のプライバシーに配慮しながら、不整脈データやペースメーカーの電池の寿命に関するデータは、その患者の主治医だけがアクセスできるような配慮をしている。

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IoT 戦略オプション

(その7)

流通チャネルやサービス網の一部または全部を中抜きすべきだろうか?

完成車メーカーの直販モデル

ディーラーを介さずにユーザへの直販型の自動車販売ビジネス。ディーラーでの価格交渉を省き、修理への第三者関与もなくした結果、修理代金がストレートに自社の収益となる。また、車載ソフトウェアが修理の必要性を自動検知し、ソフトウェアが営業マンに成り代わって遠隔修理を要請、正規修理工場への移送サービスを促している。

顧客は、地元の正規ディーラーに足を運び、プロフェッショナルなメカニックサービスを信頼し、販売員との会話を好む傾向も否定できない。また、物理的に製品のデリバリーや修理の必要性もある。そのような地域顧客との関係を通じて、ビジネス価値を維持している。貴重なチャネル・パートナーの役割を奪うと、事業パートナーを大切にする戦略を持つ競合他社にそれらパートナーが流れかねない。

地域密着型のディーラー販売

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IoT 戦略オプション

(その8)

自社のビジネスモデルを手直しすべきだろうか?

サイクルショップ レンタサイクル

製品がサービス化することによって、メーカーは製品の所有権を保持しながら利用者から定期的に料金を徴収し、運用とサービスコストは、すべて提供する側が引き受けるビジネスモデル。例えば、レンタサイクルの場合、顧客が製品の代金を一括払いするのではなく、継続的に使用料を支払う。製品性能の向上による運用コストの低減とサービス効率の向上がもたらす便益は、メーカー側が手にする。

サイクルショップは、製品単体の売上だけでなく、スペア部品や修理サービスで収益を上げているので、製品の信頼性、耐久性、修理のしやすさを高めようというインセンティブが働きにくい恐れがある。その状況で、あえてビジネスモデルを製品がサービス化する方向に舵を切った場合、製品の所有権を自社に残して顧客から使用料だけを徴収することになり、経済インセンティブが逆転する。

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IoT 戦略オプション

(その9)

製品データを第三者に販売して利益を得るタイプの新規事業に乗り出すべきだろうか?

家庭用のTV録画機は、従来は単にTV番組を録画する装置で、個人の利用目的の価値を提供していた。最近は、その製品価値が変化しつつある。どんな番組を視聴し、どのコマーシャルを見ているかといった顧客の購買行動を観測する機器として十分役立つモノであるとの認識が高まっている。ただし、ここから得られた顧客情報(個人情報)を、顧客の反発を買わずに、第三者に提供する仕組みを見つけ出す必要がある。

家庭用TV録画装置

様々な装置のデータを収集するためのソフトウェアプラットフォームを提供。これにより顧客は、自社で稼働している様々な機器や装置の稼働状況をモニタリングすることが可能となる。

ソフトウェア プラットフォーム

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IoT 戦略オプション

(その10)

事業の範囲を拡大すべきだろうか?

冷暖房空調設備 ⇒ ホーム・オートメーション・システム

自社製品に対しては、冷暖房システムのプラットフォームで製品同士が共通のインタフェース仕様で繋がっている。しかし、それはあくまでも、ホーム・オートメーション・システムを支える一部でしかない。結果として、同社は自社製品内だけでインターフェースを共通化するだけではなく、ホーム・システム全体の複合体に組み込めるようにインターフェースを設けている。

自社製品のIoT化が進んだことで、自社の事業領域と競争範囲が広がりを見せていくと、自社の経営目標を再考する必要に迫られている。単なる冷暖房空調設備の製図メーカーから、高性能ビルディングの快適化へと経営の重点項目をシフトさせている。

冷暖房空調設備 ⇒ ビル環境の快適化

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戦略上,やってはいけないこと

抜刷り冊子 P.29

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• 顧客が求めていない機能まで追加している

• セキュリティーやプライバシーへのリスク対策が甘い

• 新たな脅威への予測を誤る

• 意思決定があまりにも遅い

• 社内の能力を過大評価している

戦略上、やってはいけないこと

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参考資料 弊社(PTC/ThingWorx)のご紹介

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48 ※2014年6月時点でのIIC加盟企業の一覧

PTCについて: IICの加盟企業の一社です

PTC と ThingWorx、標準化の推進と IoT 採用の加速に向けて インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)に加盟 【2014年6月17日】 PTC (本社:米国マサチューセッツ州、Nasdaq: PTC、社長兼 CEO:ジェームス・E・へプルマン)の日本法人である PTC ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:桑原 宏昭)は、本日、PTC と PTC の子会社でモノのインターネット(IoT)プラットフォームのリーディング企業である ThingWorxが、本日、モノのインターネット(IoT)の採用を加速し、デジタルの世界と物質的な世界の一体化を推進する目的で設立されたオープンメンバーシップ制で開かれた会員組織であるインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)に加盟したとの米 PTC と米 ThingWorx の発表を明らかにしました。

(※PTCの報道発表資料より抜粋)

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• 顧客数:数百社

• 接続デバイス数:数百万

• IoT専用の開発プラットフォーム

ThingWorx について

• IoTの専任社員:450 名

• IoT製品の開発者:200 名

• 親会社PTCの社員: 6,440名

企業組織/人材としての強み 実証済みのIoTテクノロジー IoT市場での存在感

IoT ビジネスで急成長 IoT事業カテゴリの分布 グローバル推進体制

FY 2014年度の収益分布

3 年間の CAGR

% = 年度ごとの成長率

ライセンスおよびサブスクリプションのサービス収益

1 2 3

1 ThingWorx の 2013 事業年度の収益。PTC は 2013 年 12 月に ThingWorx を買収。

2 ThingWorx と Axeda の 2014 事業年度の収益。PTC は 2014 年 8 月に Axeda を買収。

3 2015 年は収益計画。

• IoTパートナー: 150 社以上

• 世界初のIoTマーケットプレース

• 最大規模級の IoT イベントLiveWorxを企画運営

• IoTアカデミック プログラム推進

• IIC加盟(2014年6月)

世界 15 カ所のIoTデータ センター( 印 )

78 カ所のグローバル オフィス(図示なし)

2009年、IoTアプリケーションの開発/運用プラットフォームに関するビジネスで起業. その後、2013年12月に、PTC社による買収でPTCの子会社となり、IoT事業拡大中.

PTC社について:www.ptc.com 設立1985年、製造業を中心に製品開発やサービス分野のICTソリューションの開発/販売/サービスのソリューション企業. CAD/ALM/PLM/SLM等が主力事業. 現在は, ThingWorxの買収により、ものづくり+IoTで価値を訴求中.

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PTCのIoTパートナーエコシステム(抜粋)

ソリューション

プロバイダ

SI &

販売代理店

通信

サービス

プロバイダ

ビジネ スシステム / 解析パー トナー

エッジ & 組み込みデバイス

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参考:IoTバリューロードマップ

製品、オペレーション、システムに対して、主なIoTユースケースを明確化し、 経営目標と関連付けながら、フィールドでの課題項目および設定すべき評価指標を検討するための早見表

IoTユースケース

ビジネス戦略

フィールドの課題

評価指標(KPI)

ユースケースの定義

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IoT バリュー構想ワークショップ … スマート製品&サービスのビジネス変革のための構想策定イノベーション

IoTの構想立案のためのワークショップを常時開催しています

現状課題の確認 解決すべき課題の特定 ビジネス戦略の確認

IoTソリューション案の検討

イメージ イメージ

イメージ

ステップ 1 ステップ 2 ステップ 3

ステップ 5

IoTユースケースの議論

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IoTテストベッドの構築

ステップ 6

イメージ イメージ

ステップ 4

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