3
22 23 LESSON 医薬品・医療機器の分類 1 医療機器はまた、その機器の人体におよぼす危険度に応じて、国際的なクラス分類(クラスⅠ~クラスⅣ) がされています。クラスⅠは最も人体への危険度が低いものであり、クラスⅣは機器に不具合が生じた場 合、人の生命・健康に重大な影響を与える恐れがあるとして最も危険度が高いとされるものです。 国際クラス分類と国内での分類の対応は次のようになります。 クラスⅠ(Class Ⅰ)(一般医療機器:Genarel medical devices) クラスⅡ(Class Ⅱ)(管理医療機器:Controlled medical devices) クラスⅢ(Class Ⅲ)(高度管理医療機器:Specially controlled medical devices) クラスⅣ(Class Ⅳ)(高度管理医療機器:Specially controlled medical devices) 医療機器で注意をしなければならないのは、機器それ自体が持つ機能が発揮されないことによるリスク と、使用法を間違えたことによるリスクがあるということです。たとえば、メス(scalpel/surgical knife) を例にとりますと、それ自体が持つ機能としては「人体などの組織の切開を行う」ことです。そして、その 機能が発揮されない場合とは「人体などの組織の切開ができない(切れない)」ということです。この不具合 による人体へのリスクは極めて小さく、別のメスに取り換えればよいことになります。一方、「人体などの組 織の切開を行う」際に使い方を間違えて、切る必要のない血管や神経を切断してしまい、患者が死亡や永続 的な機能不全に陥る場合もありますが、この場合は機器の不具合ではなく、不適切な使用法によるものとな ります。上に述べた医療機器のリスクはあくまでも、機器自体が持つ機能が発揮されないことによるリスク です。 医療機器のリスクによる分類 1 - 4 2005年の薬事法大改正に伴い、医療機器はそのリスクに基づいて以下のように分類されました(表3)。 保守点検、修理その他の管理に専門的な知識および技能を必要とするものを「特定保守管理医療機器」とい い、一方、専門的な知識及び技能を必要としないものを「特定保守管理非該当医療機器」といいます。 すべての医療機器は、以下の3種類のいずれかに分類されます。 a. 高度管理医療機器(Specially controlled medical devices) 「医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合(適正な使用目的に従い適正に使用 された場合に限る。)において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからそ の適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定す るものをいう。」(薬事法第2条第5項) 例: 埋込み型心臓ペースメーカ注射筒輸液ポンプ人工心肺用システム治療用コンタクト レンズb. 管理医療機器(Controlled medical divices) 「高度管理医療機器以外の医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合において人 の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生 労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。」(薬事法第2条第6項) 例: 全身用X線CT診断装置心電図モニタ単回使用注射用針歯科用銀地金単回使用ピン セット家庭用電気マッサージ器連続式電解水生成器耳かけ型補聴器c. 一般医療機器(General medical devices) 「高度管理医療機器及び管理医療機器以外の医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じ た場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものとして、厚生労 働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。」(薬事法第2条第7項) 例: X線用テレビ装置水銀柱式血圧計縫合針外科用テープ手術用照明器医療ガー 救急絆創膏表3 医療機器のリスクによる分類 テキスト 1 レッスン 1 「医薬品・医療機器の分類」 “薬事法・治験” “医学統計” “遺伝子・がん”という3テーマを柱に学ぶ本講座ですが、「テキスト1」レッスン1ではそ の前提知識として、 医薬品・医療機器に関する基礎知識についても詳しく解説しています。 このように本講座では、医学・薬学の重要知識だけではなく、 医薬翻訳を学ぶうえで土台となる知識もあわせて 体系的に習得できるので、医薬知識がない方でもスムーズに学習でき、 “医薬翻訳”の本格的な学習に直結す る第一歩を安心してスタートさせる ことができます。

SText メディカルベーシック 出力用...60 61 LESSON2 薬事法と医薬品開発 2-4 優先審査制度(Priority Review System) 規制当局による医薬品などの承認審査は通常、承認申請された日付の順番に審査され、申請してから承

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22 23

LESSON 医薬品・医療機器の分類1

 医療機器はまた、その機器の人体におよぼす危険度に応じて、国際的なクラス分類(クラスⅠ~クラスⅣ)

がされています。クラスⅠは最も人体への危険度が低いものであり、クラスⅣは機器に不具合が生じた場

合、人の生命・健康に重大な影響を与える恐れがあるとして最も危険度が高いとされるものです。

 国際クラス分類と国内での分類の対応は次のようになります。

  クラスⅠ(Class Ⅰ)(一般医療機器:Genarel medical devices)

  クラスⅡ(Class Ⅱ)(管理医療機器:Controlled medical devices)

  クラスⅢ(Class Ⅲ)(高度管理医療機器:Specially controlled medical devices)

  クラスⅣ(Class Ⅳ)(高度管理医療機器:Specially controlled medical devices)

 医療機器で注意をしなければならないのは、機器それ自体が持つ機能が発揮されないことによるリスク

と、使用法を間違えたことによるリスクがあるということです。たとえば、メス(scalpel/surgical knife)

を例にとりますと、それ自体が持つ機能としては「人体などの組織の切開を行う」ことです。そして、その

機能が発揮されない場合とは「人体などの組織の切開ができない(切れない)」ということです。この不具合

による人体へのリスクは極めて小さく、別のメスに取り換えればよいことになります。一方、「人体などの組

織の切開を行う」際に使い方を間違えて、切る必要のない血管や神経を切断してしまい、患者が死亡や永続

的な機能不全に陥る場合もありますが、この場合は機器の不具合ではなく、不適切な使用法によるものとな

ります。上に述べた医療機器のリスクはあくまでも、機器自体が持つ機能が発揮されないことによるリスク

です。

医療機器のリスクによる分類1-4

 2005年の薬事法大改正に伴い、医療機器はそのリスクに基づいて以下のように分類されました(表3)。

保守点検、修理その他の管理に専門的な知識および技能を必要とするものを「特定保守管理医療機器」とい

い、一方、専門的な知識及び技能を必要としないものを「特定保守管理非該当医療機器」といいます。

 すべての医療機器は、以下の3種類のいずれかに分類されます。

a. 高度管理医療機器(Specially controlled medical devices)

 「医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合(適正な使用目的に従い適正に使用

された場合に限る。)において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからそ

の適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定す

るものをいう。」(薬事法第2条第5項)

 例: 埋込み型心臓ペースメーカ、注射筒輸液ポンプ、人工心肺用システム、治療用コンタクト

レンズ。

b. 管理医療機器(Controlled medical divices)

 「高度管理医療機器以外の医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合において人

の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生

労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。」(薬事法第2条第6項)

 例: 全身用X線CT診断装置、心電図モニタ、単回使用注射用針、歯科用銀地金、単回使用ピン

セット、家庭用電気マッサージ器、連続式電解水生成器、耳かけ型補聴器。

c. 一般医療機器(General medical devices)

 「高度管理医療機器及び管理医療機器以外の医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じ

た場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものとして、厚生労

働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。」(薬事法第2条第7項)

 例: X線用テレビ装置、水銀柱式血圧計、縫合針、外科用テープ、手術用照明器、医療ガー

ゼ、救急絆創膏。

表3 医療機器のリスクによる分類

テキスト 1 レッスン 1 「医薬品・医療機器の分類」

“薬事法・治験”“医学統計”“遺伝子・がん”という3テーマを柱に学ぶ本講座ですが、「テキスト1」レッスン1ではその前提知識として、医薬品・医療機器に関する基礎知識についても詳しく解説しています。

このように本講座では、医学・薬学の重要知識だけではなく、医薬翻訳を学ぶうえで土台となる知識もあわせて体系的に習得できるので、医薬知識がない方でもスムーズに学習でき、“医薬翻訳”の本格的な学習に直結する第一歩を安心してスタートさせることができます。

テキスト3

テキスト4

テキスト2

テキスト1

60 61

LESSON 薬事法と医薬品開発2

優先審査制度(Priority Review System)2-4

 規制当局による医薬品などの承認審査は通常、承認申請された日付の順番に審査され、申請してから承

認されるまでおおよそ2年程度の時間をかけて審査されます。しかし、重篤な疾病に使用される医薬品や緊

急性を要する医薬品などの申請に対しては「優先審査(Priority Review)」が適用され、他のものに優先

して審査され、可及的速やかに患者が使用できるようになっています。この制度を優先審査制度(Priority

Review System)と呼びます。

2-4-1 特例承認制度 新型のウィルスによるするインフルエンザ(flu:influenza)が流行した時や、かつてエイズ(AIDS:

acquired immune [immunological] deficiency syndrome)が日本に上陸した時など、国民の生命およ

び健康に重大な影響を与える恐れがある疾病が発生した時に、それらに対する医薬品を承認するために2年

もかけて審査している余裕はありません。

 そのような緊急性を要する疾患のまん延防止のために、すぐに使用されることが必要な医薬品で、当該医

薬品の使用以外に適当な方法がなく、その効能・効果について外国における販売等が認められている医薬品

であれば、厚生労働大臣が、通常の承認審査手続きを経ずに、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その

品目にかかる承認を特例措置として与えることができます。これを特例承認(Preferential approval)制

度といいます。

 最近の事例としては、2009年~2010年に新型インフルエンザが国内でも猛威をふるい、時の厚生労働

大臣であった舛添要一氏は新型インフルエンザワクチンの輸入に対しての特例承認の検討を指示し、2010

年1月20日に特例承認されました。

2-4-2 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ:Orphan drug) 患者数が少ない難病で有効な治療法がほとんどない疾病、日本では推定患者数が5万人以下、を希少疾病

(rare diseases)と呼びます。しかし、この程度の患者数しかない難病に対する医薬品を開発しても製薬

企業としては採算が取れないため、なかなか新薬などの開発に着手しようとする動きが出てきません。そこ

で国は、このような希少疾病に対する医薬品の開発を促進させるための制度を設けました。そして、希少疾

病に対する医薬品を希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ:orphan drug)と名付けました。

 この希少疾病用医薬品の研究開発を促進するための諸施策が1993年に制定され、希少疾病用医薬品と

しての指定基準、試験研究促進のための措置などが決まりました。希少疾病用医薬品の指定を受けた医薬品

は、優遇措置として国から開発費用の一部が還付され(最も費用の掛かるヒトを対象とした臨床試験の実施

経費の約半分が医薬基盤研究所を通して助成金として交付されます)、試験研究費に対する税額控除や指導・

助言(厚生労働省、医薬品医療機器総合機構および医薬基盤研究所による指導・助言を受けることができま

す)、優先審査、再審査期間の延長(医薬品については8年間から最長10年間の、医療機器については4年か

ら最長7年間)などが実施されています。この延長された再審査期間の間はジェネリックが出てこないこと

で、独占権が保証されます。

【演習問題 L2-2:先発品(Original drug)と後発品(Generic drug)】

問題1 法律で規定されている医療用医薬品の承認後の審査・調査は次のうちどれでしょうか。

  a. 再審査、b. 再評価、c. 副作用・感染症報告、d. a~cのすべて、e. どれでもない

問題2 再審査の「目的」について説明してください。

  

問題3 医療用医薬品のうち、再審査期間が原則8年であるのはどれでしょうか。

  a. 新医療用配合剤、b. 新効能効果医薬品、c. 希少疾病用医薬品、

  d. 新有効成分医薬品、e. 新用法用量医薬品

問題4 再審査に関する調査でないものは次のうちどれでしょうか。

  a. 市販直後調査、b. 安全性定期報告、c. 使用成績調査、

  d. 特定使用成績調査、e. どれでもない

問題5 ジェネリック医薬品が先発医薬品より薬価が低い(安い)理由を説明してください。

  

新型のウィルスによるインフルエンザ(flu:influenza)が流行した時や、かつてエイズ(AIDS:

患者数が少ない難病で有効な治療法がほとんどない疾病(日本では推定患者数が 5 万人以下)を希少疾病

テキスト 1 レッスン 2 「薬事法と医薬品開発」

ここでは “薬事法”を学ぶページをご紹介。医薬翻訳で取り扱われる文書の半数以上が“新薬開発”と“承認申請”に関連したものと言われており、“薬事法”はその内容や書式に関して準拠法とすべきものになります。ですので、医薬翻訳に関わるうえで“薬事法”に関連した知識は大前提、かつ最重要のものと言えるでしょう。「テキスト1」レッスン2内で正確に、抜け漏れなく把握しておきましょう。

テキスト内では、各テーマごとに「演習問題」もご用意。このページでは、「テキスト 1」レッスン2で学ぶ20以上のテーマの中から、“先発品と後発品(ジェネリック薬品)”を題材にしています。また、「演習問題」巻末の解答解説では、必要に応じて補足説明もしてあるので、講義ページで学んだ知識を確実に定着させることができます。

90 91

問題1 法律で規定されている医療用医薬品の承認後の審査・調査は次のうちのどれでしょうか。

  a. 再審査、b. 再評価、c. 副作用・感染症報告、d. a~cのすべて、e. どれでもない

  正解は d. a~cのすべて(テキスト53ページ)

      薬事法では、新しく承認された医薬品(新有効成分を含むもの)は販売を開始した後

も医療の現場での使用状況の調査が義務づけられています。

      また、発売後では開発段階で予測し得なかったさまざまな不都合な反応が出現し重篤

な転帰に至る症例が発生することがあります。このために、このような被害の発生、拡

大につながらないよう情報を共有し、的確に評価し、適切な措置を講ずる体制を、製造

販売業者、医薬関係者、行政当局の連携により構築しています。この体制を副作用・感

染症報告制度といい、実際の報告を副作用・感染症報告と呼びます。

問題2 再審査の「目的」について説明してください。

  

新医薬品の承認時に評価検討される資料や情報の質および量に関しては、新医薬品の薬効

評価に限定されているため、一般診療の場と比較するとかなり特殊な状況下で収集された

ものとなります。

承認が取れて発売を開始した後においても、医薬品企業等に製造販売後の実際の診療現場

での使用状況の調査を義務づけ、承認された医薬品の有効性や安全性が承認時の評価と同

様であるかどうかを確認することを目的としています。

(テキスト54ページ)

問題3 医療用医薬品のうち、再審査期間が原則8年であるのはどれでしょうか。

  a. 新医療用配合剤、b. 新効能効果医薬品、c. 希少疾病用医薬品、

  d. 新有効成分医薬品、e. 新用法用量医薬品

  正解は d. 新有効成分医薬品(テキスト53ページ)

      新有効成分を含有する医薬品に関する再審査期間は、従来は原則6年でしたが、2007

年4月1日より原則8年間となっています。

【演習問題 L2-2の解説:先発品(オリジナル)と後発品(ジェネリック)】

問題4 再審査に関する調査でないものは次のうちのどれでしょうか。

  a. 市販直後調査、b. 安全性定期報告、c. 使用成績調査、

  d. 特定使用成績調査、e. どれでもない

  正解は b. 安全性定期報告(テキスト57ページ)

      再審査に関する調査の種類としては、使用成績調査(treatment outcome

research)、市販直後調査(early postmarketing phase vigilance)、特定使用成

績調査(specific use survey)、があります。安全性定期報告(Periodic Safety

Reports)は、再審査・再評価と並んでPMSの三本柱の一つとなっている独立した制度

です。

問題5 ジェネリック医薬品が先発医薬品より薬価が低い(安い)理由を説明してください。

  

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売の承認が

なされた医薬品でありながら、臨床開発に関するデータがほとんど不要であり、開発費用

を低く抑えられることから、低価格での供給が可能となります。

テキスト3

テキスト4

テキスト2

テキスト1

解答解説

58 59

LESSON 医薬品開発のステップの概要3

3-3-5 治験(臨床試験)での安全性の評価

 治験における安全性の評価は、開発医薬品の種類や対象疾患の領域によらず、ほぼ一定の項目に基づいて

行われます。それは、有害事象、臨床検査結果、バイタルサイン検査、心電図および特殊検査(眼底検査や

肺活量、脳波など)です。

 有害事象で注意すべき事項を以下に示します。

1.有害事象(Adverse Event)

 有害事象とは、「治験薬を投与された被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。必ずしも当

該治験薬の投与との因果関係が明らかなもののみを示すものではない。すなわち、有害事象とは、治験薬が

投与された際に起こる、あらゆる好ましくないあるいは意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)、症状ま

たは病気のことであり、当該治験薬との因果関係の有無は問わない。」と定義されています。

ICHでの定義:

Any untoward medical occurrence in a patient or clinical investigation subject

administered a pharmaceutical product and which does not necessarily have to have

a causal relationship with this treatment. An adverse event (AE) can therefore be any

unfavourable and unintended sign (including an abnormal laboratory finding, for example),

symptom, or disease temporally associated with the use of a medicinal product, whether

or not considered related to the medicinal product.

 一般的に、発生率1%の有害事象の検出には300例以上の投与症例が必要であるといわれています。

2.副作用(薬物有害反応)(ADR:Adverse Drug Reaction)

 病気の予防、診断もしくは治療、または生理機能を変える目的でヒトに投与された(投与量にかかわらな

い)医薬品に対する反応のうち、有害で意図しないものをいいます。「医薬品に対する反応:responses to

a drug」とは、当該医薬品と有害事象の間になんらかの因果関係の可能性があること、すなわち、因果関係

が否定しきれない有害事象の意味です。

ICHでの定義:

A response to a drug which is noxious and unintended and which occurs at any doses in

man for prophylaxis, diagnosis, or therapy of disease or for modification of physiological

function. The phrase “responses to a drug” means that a causal relationship between

a medicinal product and an adverse event is at least a reasonable possibility, i.e., the

relationship cannot be ruled out.

 従来より副作用を意味する英語としてSide effect(s)が使用されてきましたが、これは非臨床研究での

薬理学用語で、目標とする作用(例えば、糖尿病治療薬での血糖降下作用)以外の作用を総称してSide

effect(s)と呼びます。従って、そこには作用の良し悪しは考慮されていません。ところが、ヒトを対象とし

た試験での副作用では上記のように「好ましくない、有害で意図しないもの」を指していますので、意味が

違います。そこで、英語圏ではヒトでの「好ましくない、有害で意図しないもの」を意味する副作用として

はADR(Adverse Drug Reaction)という英語を使用することになりました。

 このADRの日本語訳は「薬物有害反応」ですが、従来より使われてきた「副作用」という意味は、ADR

(Adverse Drug Reaction)と同じですので、本邦では主に「副作用」という用語が使われています。

3.重篤な有害事象(SAE:Serious Adverse Event)

 重篤な有害事象とは、治験において、治験薬が投与された(投与量にかかわらない)際に生じたあらゆる

好ましくない医療上のできごとのうち、以下のものを言います。

a. 死に至るもの

b. 生命を脅かすもの

c. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの

d. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの

e. 先天異常を来すもの

ICHでの定義:

A serious adverse event (experience) or reaction is any untoward medical

occurrence that at any dose:

a. results in death

b. is life-threatening

c. requires inpatient hospitalisation or prolongation of existing hospitalisation

d. results in persistent or significant disability/incapacity, or

e. is a congenital anomaly/birth defect.

テキスト 2 レッスン 3 「医薬品開発のステップと治験」

“治験”に関する知識を学ぶ「テキスト2」のうち、「安全性の評価」に関する重要用語について解説しているページを採りあげました。

ここでは、ICH(※)における各重要用語の定義を英文と和文で掲載しています。本講座は翻訳テクニックについて学ぶ講座ではありませんが、このように英文・和文の両方を紹介したり、特に重要な用語は必ず英語・日本語併記とするなど、翻訳の学習にもそのまま役立つ形で医薬知識を身につけることができるので、修了後の医薬翻訳学習を飛躍的に効率化できます。

※日米EU医薬品規制調和国際会議(新医薬品の製造や輸入の承認の際に要求される資料を共通化することで、医薬品開発の迅速化・効率化をめざす会議)

テキスト3

テキスト4

テキスト2

テキスト1