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製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on Generic Selection Criteria and New Comparative Evaluation Methods Based on Pharmaceutical Properties 平成 28 年度 論文博士申請者 子(Wada, Yuko指導教員

Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

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製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および

新規製剤学的評価法に関する研究

Study on Generic Selection Criteria and New Comparative Evaluation Methods

Based on Pharmaceutical Properties

平成 28 年度

論文博士申請者

和 田 侑 子(Wada, Yuko)

指導教員

石 井 文 由

Page 2: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

2

緒 論

近年、医療費削減の観点から後発医薬品(以下、後発品)の積極的な使用が求め

られている。平成24年厚生労働省告示第76号診療報酬の算定方法の一部を改正する

件(告示)において、一般名処方が推奨され、様式が変更された処方箋が医療の現

場に定着してきている。この様式において、後発品の選択は調剤を行う薬剤師の判

断に委ねられている部分が大きい。厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療

協議会が行った「平成22年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成 22 年

度調査)後発医薬品の使用状況調査報告書」1)における保険薬局778施設に行った調

査によると、保険薬局778施設の後発品採用基準(複数回答)として、最も回答が多

かった「後発品メーカーや卸業者が十分な在庫を確保している(59%)」に対し「患

者の評価がよい(10%)」と回答した施設は少なく、後発品選択において、患者の使

用感や使いやすさ等のメリットは重視されていないことがわかる。しかし一方で、

同調査により後発品から先発医薬品(以下先発品)に戻した理由(単数回答,n=585)

として、「後発品の使用感が合わなかった為(30%)」と回答した施設が最も多かっ

た。薬剤師が患者使用感や使いやすさ等を考慮した後発品選択を行うことは、患者

の求める医療に近づくことになる。

多くの剤形の中でも外用剤は使用感の差を感じやすい剤形であり、先発品と後発

品は主薬以外の基剤、添加剤、製法や容器が異なる理由から、「沁みる」、「はがれや

すい/はがれにくい」などの製剤特性、「容器から出しやすい/出しにくい」等の容器

特性が同等とは限らず、常に先発品が後発品より優れているとは限らない。実際に

先発品と後発品の使用感あるいは製剤学的特性に差異が生じる例は多数報告され

ており、医中誌Webを用いたキーワード「後発医薬品・使用感」での原著論文検索

(2016年8月24日)によれば、貼付剤に関する論文が8件、2,3,4,5,6,7,8,9) 点眼剤に関す

る論文が3件、10,11,12) 点鼻剤に関する論文が2件 13,14) 報告されている。しかしいず

れの報告も各著者の所属機関の採用品目と思われる1~2製品、多くても4製品のみ

を評価しており、多数存在する後発品を漏れなく比較評価した報告は未だ無い。ま

た、使用感に関わる製剤特性の評価方法として、日本薬局方で定められている項目

は第17改正版から新しく収載された貼付剤の粘着力試験法のみであり、その他の項

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目は研究者により評価方法が異なり、測定方法とともに評価方法が確立されていな

い。

そこで、これまでに我々は既報において、貼付剤、15) 点眼剤、16) 点鼻剤、17) 軟膏

剤、18,19) クリーム剤、18,19) ローション剤18,19) について各々使用頻度の高い医薬品を

取り上げ、先発品および後発品各種の製剤学的特性を評価し、医療現場における患

者ニーズに立脚した後発品選択に有用な情報として公表してきた。またその過程に

おいて、製剤学的特性の測定値と使用感との関連性を解析し、製剤特性を評価する

試験法が確立されていない項目は、適切な方法を確立することも行った。

本論文は、製剤物性と使用感の関係について考察できる剤形として、貼付剤 15) お

よび点眼剤 16) について詳細に検討し、総括したものであり、これを次項からの各

章にわたって詳述する。

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第 1 章

ケトプロフェン含有テープ剤の

先発および後発品各製剤の製剤特性

第 1 項 緒 言

近年、整形外科療域においては、腰痛症、変形性関節症、筋肉痛および関節リウ

マチ等に効果がある非ステロイド性鎮痛消炎剤テープ剤が臨床現場で汎用されて

いる。20) その中でもケトプロフェン含有テープ剤は、医療用医薬品国内売上高ラン

キングにおいて 2013 年度に第 7 位(757 億円)2014 年度に第 9 位(692 億円)2015

年度に 11 位(645 億円)と医薬品全体においても上位、テープ剤のなかでは第 1 位

であり、使用頻度が非常に高い薬剤であると共に、各製薬会社から多くの後発品が

発売されている。しかし、ケトプロフェン含有テープ剤は、とくに先発品であるモ

ーラステープの評価の高さ、後発品との使用感に差があることから、後発品への切

り替えが進んでいない現状がある。

貼付剤を後発品から先発品に戻したケースにおいて、最も多く報告される理由は

「動作時の剥がれやすさ」、次に「貼り心地の悪さ」そして「貼りにくさ」であり、

21) こうした使用感の差が大きな課題となっている。薬剤師は各製品の特性を考慮に

入れて患者の希望にあったものを選択し、患者に説明することが求められる。しか

しながら、これまでに各種製剤の選択基準となる特性についての報告は少なく、医

療現場で十分に活用されていないのが現状である。22, 23)

そこで本章では、ケトプロフェン含有テープ剤の先発品および後発品の物理化学

的特性の評価を行い、実際に医療現場で役立つ情報として、各種製剤を製剤学的特

性あるいはそこから予想される使用感の面から後発品を選択するための基準につ

いて検討したので報告する。

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第 2 項 実験方法

1.試料

ケトプロフェンを含有するテープ剤の先発品であるモーラス®テープ L40mg(久

光製薬株式会社:東京都)および 7 種の後発品、すなわちケトプロフェンテープ

40mg「テイコク」(帝國製薬株式会社:香川県)、パテル®テープ 40(株式会社大

石膏盛堂:佐賀県)、フレストル®テープ 40mg(東和薬品株式会社:大阪府)、レ

イナノン®テープ 40mg(シオノケミカル株式会社:東京都)、ロマール®テープ 40

(株式会社ビオメディクス:東京都)、タッチロン®テープ 40(救急薬品工業株式

会社:東京都)(以下Ⓡを省略する。)およびケトプロフェンテープ 40mg「日医工」

(日医工ファーマ株式会社:富山県)を購入し、実験に使用した。本研究に用いた

各製剤の製品名、製造会社および製造番号をまとめて Table 1 に、添付文書に記載

された添加物を Table 2 に示す。

また、その他の試薬はすべて特級品を使用した。

Table 1 Product Name, Company, and Lot Number of

Various Pharmaceuticals used in this study

分類 製品名 略名 製造会社 製造番号

先発品 モーラス®テープ L40mg モーラスMohrus

久光製薬 LC12U

後発品 ケトプロフェンテープ 40mg「テイコク」 テイコクTiekoku

帝國製薬 7104

後発品 パテル®テープ 40 パテル

Patell 大石膏盛堂 621110

後発品 フレストル®テープ 40mg フレストル

Frestol 東和薬品 A007

後発品 レイナノン®テープ 40mg レイナノンRaynanon

シオノ

ケミカル ZS03

後発品 ロマール®テープ 40 BMD ビオメディ

クス 1W17

後発品 ケトプロフェンテープ 40mg「BMD」 タッチロン

Touchron 救急薬品 1Y11

後発品 ケトプロフェンテープ 40mg「日医工」 日医工

Nichi-Iko

日医工

ファーマ 1S12

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Table 2 Additives of Various Ketoprofen tapes

製剤 添付文書に記載された添加物 文献

モーラス

Mohrus

添加物として、l-メントール、ジブチルヒドロキシトルエン、水素添加ロジングリ

セリンエステル、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、4-tert-ブチ

ル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、ポリイソブチレン、流動パラフィン、その他

5 成分を含有する。

24)

テイコク

Tiekoku

スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、脂環族飽和炭化水素樹脂、

ポリブテン、BHT、l -メントール、流動パラフィン、その他 2 成分

25)

パテル

Patell

ミリスチン酸イソプロピル l-メントール 脂環族飽和炭化水素樹脂 流動パラフィ

ン その他 2 成分

26)

フレストル

Frestol

軽質流動パラフィン、l-メントール、クロタミトン、メタクリル酸・アクリル酸 n-

ブチルコポリマー、天然ゴムラテックス、SBR 合成ラテックス、ミリスチルアル

コール、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリブテン、モノオレイン酸ソルビタ

ン、ポリソルベート 80

27)

レイナノン

Raynanon

軽質流動パラフィン、l-メントール、クロタミトン、メタクリル酸・アクリル酸

n-ブチルコポリマー、天然ゴムラテックス、SBR 合成ラテックス、ミリスチルア

ルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリブテン、モノオレイン酸ソルビタ

ン、ポリソルベート 80

28)

BMD

軽質流動パラフィン、l -メントー ル、クロタミ トン、メタクリル酸・アクリル

酸 n- ブチルコポリマー、天然ゴムラテックス、SBR 合成ラテックス、ミリスチ

ルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリブテン、モノオレイン酸ソル

ビタン、ポリソルベート80

29)

タッチロン

Touchron

流動パラフィン、l-メントール、クロタミトン、メタクリル酸・アクリル酸 n-ブチ

ルコポリマー、天然ゴムラテックス、SBR 合成ラテックス、ミリスチルアルコー

ル、BHT、ポリブテン、オレイン酸ソルビタン、ポリソルベート 80

30)

日医工

Nichi-Iko

流動パラフィン,l-メントール,クロタミトン,メタクリル酸・アクリル酸 n-ブチ

ルコポリマー,天然ゴムラテックス,SBR 合成ラテックス,ミリスチルアルコー

ル,ジブチルヒドロキシトルエン,ポリブテン,オレイン酸ソルビタン,ポリソ

ルベート 80

31)

2. 各製剤の製剤学的評価

(1)pH 測定

pH の測定は、大谷らの方法 22) を参考に行った。すなわち、各製剤を 70 mm × 50

mm 四方に裁断し、精製水 20 mL を入れたサンプル瓶に加え、24 時間振とうさせ

た。開始から 24 時間後の水溶液の pH を、温度補正機能付ガラス電極式水素イオン

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濃度示指計 F-74(株式会社堀場製作所、京都府)を用いて 25±1℃の条件下で測定

した。なお、測定は各製剤について 3 回行い、その平均値を pH 値とした。

(2)粘着力測定

(2)-1 ボールタック粘着力測定

ボールタック粘着力測定は、第十七改正日本薬局方収載の傾斜式ボールタック試

験法32) に準じて行った。すなわち、傾斜角が 30°の傾斜板を用い、幅 10 mm、長さ

140 mm に裁断した製剤を傾斜板上に粘着面を上にして固定し、助走路用の紙(長

さ 100mm)を、試料の上端の位置に貼り付け、中央に 100 mm の粘着面を残して下

端も紙で覆い、ボールを傾斜板の上端より転がし、粘着面で停止した最大のボール

の重さ(g)を測定値とした。測定は 25±1℃の条件下で各製剤について 3 回行い、

その平均値を測定値とした。

(2)-2 ピール剥離力測定

ピール剥離力測定は、三浦らの方法 33) を参考に行った。すなわち、実験台にラ

ボジャッキを固定し、ジャッキの片側に酢酸ビニル共重合体(EVA: Controlled Caliper

Ethylene Vinyl Acetate)膜(3MTM CoTranTM 9702)を巻き付け、その上から30 mm ×

52 mm 四方に裁断した各製品を縦長に貼り付けた。さらに、円筒状の重り(4 kg)

で製剤上を1往復させた30分後、上辺2 mmの部分をクリップで挟み、さらにそのク

リップにデジタルフォースゲージZTS-20N(株式会社イマダ、愛知県)を取り付け、

接着面と引く方向が90度となるように一定の速度(1 mm/sec)で完全に剥離される

までにかかる最大の力をピール剥離力として測定した。測定に用いた装置をFig.1に

示す。なお、測定は25±1℃の条件下で各製品について3回行い、その平均値を剥離

力とした。

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Fig. 1 Equipment for Measuring Peel Force

(3)透湿度測定

透湿度試験は日吉ら 20)の方法に従って行った。すなわち、ガラス容器に精製水 10

mL を入れ、直径 40 mm の円形に裁断した製品で開口部を覆い、その周囲をパラフ

ィン系の伸縮フィルム(パラフィルム®: Pechiney Plastic Packaging Company、 USA)

で固定後、それぞれ重量を測定した。その後、40℃・50%相対湿度(RH: relative

humidity)の一定条件下で 24 時間静置し、再度、重量を測定し、その重量の変化量

から下記の計算式により透湿度 P(g/m2・24hr)を算出した。なお、測定は各製品に

ついて 4 回行い、その平均値を透湿度とした。

P =(W0-W1)/A

W0:試験前の重量(g),W1:試験後の重量(g)

A:ガラス容器の開口部面積(m2)

Tape

Disital Force Gauge

Clip

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(4)伸長度測定

20 mm × 100 mm 四方に裁断した製剤を接着面が上向きの状態で、製剤の両端 10

mm をクリップで挟み、片方のクリップは固定して、もう片方のクリップに固定し

た 300g のおもりをつけて引っ張ることで、最大に伸びた製剤の長さ(mm)を測定

した。測定方法を Fig. 2 に示す。測定した長さを 80mm で割った比(下記の式によ

り求めた値)を伸長度 S とした。なお、測定は 25±1℃の条件下で各製品について

6 回行い、その平均値を求めた。

S = X/80 X:最大に伸びた長さ(mm)

(5)剛軟度測定

剛軟度の測定は、JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」における剛軟度カン

チレバー法を一部修飾して行った。すなわち、水平部分と 30 度の傾斜部分を持つ

装置を用い、20 mm × 100 mm 四方に裁断した製剤を接着面が上向きの状態で、水

平部分の端に合わせて置き、少しずつ傾斜部分側にすべらせるように移動し、製剤

の端が斜面に触れるまでの移動距離(mm)を測定した。測定方法を Fig. 3 に示す。

なお、測定は 25±1℃の条件下で各製品について 10 回行い、その平均値を求め、剛

軟度の評価に用いた。

Fig. 2 Measuring Method of Elongation

100 mm

20 mm

10 mm 10 mm

Clip

80 mm

( ) mm

300 g

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Fig. 3 Measuring Method of Stiffness

3.統計解析

得られた各測定値は平均値(mean)± 標準偏差(S.D.)で表示した。測定データ

は、Dunnet の多重比較検定法を用いて統計学的有意差を解析した。なお、検定によ

り先発品と比較して危険率 5 %以下で有意差がある製剤は*印を、危険率 1 %以下

で有意差がある製剤は**印を、各結果のグラフ中に記した。

各データどうしの相関の解析には、Excel の CORREL 関数を用いて相関係数 r を

算出した。さらに、t 値を t=ABS(r*(n-2)^0.5/(1-r^2)^0.5)の式により算出し、p

値を Excel の TDIST 関数を用いて、TDIST(r,n-2,2)の条件において算出した。

30°

Moving distance(mm)

2mm

10mm

30°

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第 3 項 結果 および 考察

(1)pH 測定

外用剤における製剤の pH は、主剤の安定性に影響を与えるだけでなく、皮膚適

用時の刺激など患者の主観的使用感にも影響をおよぼすと考えられる。通常、皮膚

角質層の pH は 5.5-~7.0 の弱酸性である34) が、pH5 以下、あるいは pH7 以上の製

剤を適用した場合には、皮膚生理機能の低下などを引き起こすとの報告がある。35)

また、製剤の pH が 4 以下あるいは 7 以上で値が大きいほど、皮膚に感じる刺激が

大きい傾向にあることも報告されている。36) そこで、各製剤の pH を測定した。そ

の結果を Fig. 4 に示す。

Fig. 4 pH of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug

Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 3) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

Fig. 4 において、pH 測定結果は全ての製剤において酸性域を示し、最も低い pH3.9

から最も高い 5.1 まで製剤によって異なることが明らかとなった。特に先発品のモ

ーラスおよび後発品のテイコク、パテルについては、それぞれ pH 4.0、3.9、4.2 と

低値を示した。一方、その他の後発品、すなわちフレストル(pH 4.7, P = 0.019 < 0.05)、

レイナノン(pH 4.8, P = 0.0061 < 0.01)、BMD(pH 5.1, P = 9.2×10-5 < 0.01)、タッチ

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

pH

*

****

***

0

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ロン(pH 4.9, P = 0.0012 < 0.01)、日医工(pH4.6, P = 0.024< 0.05)は先発品と比較し

て有意に高い数値を示した。

全製剤において酸性域の pH を示したことは、主薬であるケトプロフェンの酸性

によるものであると考えられた。テープ剤は粘着剤に直接主薬を懸濁あるいは溶解

させて含有する製剤であるが、各製剤の添加物を各添付文書より調査した結果

(Table 2)より、いずれの製剤も pH 調整剤は配合されていなかった。したがって、

pH 測定の前処理である抽出時に水中に抽出されるケトプロフェンのカルボキシル

基によって酸性を示したものと考えられた。

pH が 4 以下の製剤は皮膚適用時に刺激を感じるとの報告がある 28) ことから、モ

ーラス(pH 4.0)とテイコク(pH 3.9)は、pH による刺激を感じる可能性があるこ

とが予想された。また、pH が 5 以下の製剤では皮膚生理機能低下を引き起こすと

の報告がある 27)ことから、BMD(pH 5.1)以外の全製剤、すなわち、モーラス(pH

4.0)とテイコク(pH 3.9)、パテル(pH 4.2)、フレストル(pH 4.7)、レイナノン(pH

4.8)、タッチロン(pH 4.9)および日医工(pH 4.6)は、皮膚の生理機能に影響をお

よぼす可能性が考えられた。BMD(pH 5.1)は、pH による皮膚への刺激や皮膚生理

機能低下を引き起こす可能性が低く、pH の面では皮膚に対する安全性が最も高い

製剤であると考えられた。

(2)粘着力測定 ボールタック粘着力測定 および ピール剥離力測定

貼付剤を後発品から先発品に戻したケースにおいて最も多く報告される理由は

「動作時の剥がれやすさ」21) であり、貼付剤投与において粘着力は使用感に大きく

影響をおよぼす項目であると考えられる。貼付剤における粘着力を評価する方法に

は、大きく 2 種類あり、1 つはタック試験と呼ばれる粘着剤表面の粘着力を試験す

る試験法、もう 1 つは貼付後の剥離に必要な力を測定する方法である。タック試験

には、ボールタック試験法(傾斜式ボールタック試験法とも呼ばれる)やブローブ

タック試験法が知られるが、本研究では、第 17 局日本薬局方に収載されており、

また各製剤の製造会社が製剤試験法として最も多く採用している方法であるボー

ルタック試験法を選択し、各製剤の測定を行うこととした。また、剥離に必要な力

を測定する方法としては 90 度ピール剥離力試験や 180 度ピール剥離力試験がある。

2 つの測定方法の違いは、前者が粘着力そのものを純粋に評価し、後者は粘着力だ

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けでなく支持体が持つ特性の影響を受けることが知られており、本研究では、純粋

な粘着力のみを評価できる 90℃ピール剥離力試験法を採用し、各製剤の測定を行う

こととした。

各製剤のインタビューフォームには、製剤の粘着力に関する規格および試験方法

が掲載されている。これらをまとめて Table 3 に示す。Table 3 より、粘着力試験の

方法は各社によって異なる(モーラスはブローブタック試験、その他後発品はボー

ルタック試験)こと、各後発品の粘着力表示は「ボールタック試験において、粘着

面で停止するボールは No.5(直径 9.5 mm、重さ 3.5 g)以上である。」といった様に

範囲表示となっていることから、同一の指標で試験した結果に関する情報は無く、

インタビューフォームから各製剤の粘着力の差を知ることはできない。

そこで、各製剤の粘着力を測定する目的で、ボールタック粘着力およびピール剥

離力を測定した。その結果をそれぞれ Fig. 5 および Fig. 6 に示す。

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Table 3 Adhesive Force information from Interview Form

of Various Ketoprofen tapes

製剤 インタビューフォームに記載された粘着力に関する規格および試験方法 文献

モーラス

Mohrus 40g 以上(プローブタック法) 37)

テイコク

Tiekoku

粘着力試験:医薬品製造販売指針記載の粘着力試験を行うとき、スチールボー

ル No.5(直径 9.5mm、重さ 3.5g)が粘着面で停止する。 38)

パテル

Patell

粘着力試験(ボールタック試験)本品のライナーを除き、系射角 30 度の試験機

の斜面上部から 10cm のところに粘着面を上に向けて置き、斜面の上部および下

部を適当な紙で多い、中央に 5cm の粘着面を残して台の上に固定する。斜面の

上端より、清浄なスチールボール No.4(直径 7.9mm、重さ 2.0g)を転がすと

き、スチールボールは粘着面で 30 秒以上停止する。

39)

フレストル

Frestol

粘着力:本品の膏体面を上に向けて、粘着力試験器に装着し、斜面の上端より

No.1~No.9 のスチールボールを転がすとき、膏体面で停止するスチールボール

は No.5 以上である。

40)

レイナノン

Raynanon

膏体面を上に向けて、粘着力試験器に装着し、斜面の上端よりスチールボール

を転がすとき、膏体面で停止するスチールボールは No.5 以上である。 41)

BMD 粘着力試験:スチールボールを用いるコロガリタック試験行うとき、膏体面で

停止するスチールボールは No.5(直径 9.5mm 、重さ 3.5g )以上である。 42)

タッチロン

Touchron

粘着力試験:スチールボールを用いるコロガリタック試験行うとき、膏体面で

停止するスチールボールは No.5(直径 9.5mm 、重さ 3.5g )以上である。 43)

日医工

Nichi-Iko

粘着力試験:No.5(直径 9.5mm 、重さ 3.5g )以上のスチールボールが停止す

る。 44)

Fig. 5 において、フレストル(3.5 g, P = 0.0065 < 0.01)、タッチロン(3.5 g, P =

0.0065 < 0.01)は、先発品であるモーラステープ(2.0 g)と比較して有意に高い値を

示し、レイナノン(2.4 g)、BMD(2.7 g)、日医工(2.4 g)は、先発品との間に有意

な差はなかったがやや高い値を示し、テイコク(1.8 g)、パテル(1.8 g)は、先発品

とほぼ同等の値を示した。

Fig. 6 において、先発品のモーラス(1.38 N)に対し、後発品のテイコク(1.82 N,

P = 0.011 < 0.05)およびパテル(1.77 N, P = 0.029 < 0.05)は有意に高い剥離力を示

したのに対し、その他の後発品はそれぞれフレストル(0.43 N, P = 5.0×10-6 < 0.01)、

レイナノン(0.57 N, P = 2.7×10-5 < 0.01)、BMD(0.51 N, P = 1.3×10-5< 0.01)、タッ

Page 15: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

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チロン(0.45 N, P = 6.4×10-6 < 0.01)および日医工(0.50 N P = 1.1×10-5 < 0.01)と

有意に低い値を示した。

Fig. 5 Adhesive Force of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug

Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 3) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

Fig. 6 Peel Force of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug

Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 3) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

0

1

2

3

4Adhesiv

eForc

e[g

]** **

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

Peel fo

rce [

N]

** **** ****

* *

Page 16: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

16

Fig. 5 および Fig. 6 示した結果から、ボールタック粘着力とピール剥離力の間に

は、同じ傾向は見られなかった。この理由を考察するために、この 2 つの項目の関

係性を Fig. 7 に示す。

Fig. 7 Relationship between the adhesive force and peel force

of various ketoprofen tapes

●:Mohrus tape (Brand-name drug of Ketoprofen tapes)

◆:Various generic drugs of Ketoprofen tapes

Plotted on each axis are mean of value

Fig. 7 に示すように、ボールタック粘着力とピール剥離力の間には、負の相関傾

向(r = -0.81,P = 0.01 )が認められた。しかしながら、これは直線的な相関では

なく二相性を示していると考えられる。すなわち、ボールタック粘着力が 2.2~2.3g

より小さい製剤では、ボールタック粘着力が大きい製剤ほど、ピール剥離力が小さ

いが、ボールタック粘着力が 2.2~2.3g を超える製剤では、ピール剥離力が一定と

なる傾向が観察された。

ボールタック粘着力とピール剥離力の間に、正の相関が得られない理由を、以下

のとおり考察した。すなわち、ボールタック粘着力は、その試験方法から粘着の過

程における初期接着における粘着特性を測定する試験であると考えられる。一方で、

ピール剥離力は、その測定方法から、粘着の過程において貼付後の剥離に対する抵

抗性を測定する試験であると考えられる。

Mohrus

Tiekoku

Patell

Frestol

Raynanon

BMD

Touchron

Nichi-Iko

0

0.5

1

1.5

2

1.5 2 2.5 3 3.5 4

Peel Forc

e[N

]

Adhesive Force [g]

r = —0.81 (P = 0.01)

Page 17: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

17

さらに、負の相関が得られた理由としては、以下の事項が考えられた。すなわち、

粘着剤は樹脂などの成分により構成され半固形状で、液体と固体の間の性質である

粘弾特性を持ち、ボールタック粘着力が測定している初期の接着性には、粘着剤の

粘着面への濡れ広がりや密着性といった液体としての特性(粘性)が大きく影響す

る。一方、貼付した後の剥離に対する抵抗には固体としての特性(弾性)が大きく

影響し、それぞれ粘性と弾性、相反する特性であることから、負の相関を示したと

考察された。接着と剥離の過程において影響する粘着剤の各特性を模式図として、

Fig. 8 に示す。接着の過程では、粘着剤が、被着体つまり皮膚の表面にある凹凸に

対し、濡れ広がり隙間なく接着することで、接着剤分子と被着体分子が近づくこと

で分子同士の分子間力により粘着する。これは粘着剤の流動性を示す粘性特性が大

きく寄与していると考えられる。また、剥離の過程では、剥離しようとする力がか

かるとき粘着剤内には負圧がかかり、起泡発生(キャビテーション)が起こり、こ

れが連続して起こることで剥離する。45) この剥離に耐えるためには、非流動的な性

質つまり弾性特性が大きく寄与すると考えられる。

Fig. 8 Mechanisms of adhesion and peeling of tapes

粘着剤

被着体(皮膚)

分子同士が近づくと

分子どうしの分子間力が働く

キャビテーション

(負圧による気泡発生)

隙間無く

接合する

(流動性)

液体の性質

(粘性特性)

剥離に

耐える

(非流動性)

固体の性質

(弾性特性)

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18

粘着力としてのボールタック粘着力およびピール剥離力の測定結果における、製

剤差の要因を考察するために、各製剤の添付文書に記載された添加物を調査した結

果を Table 2 に示す。なお、各製剤の添加物成分のうち粘着剤成分は下線で示した。

Table 2 および Fig. 6 より、先発であるモーラスは、粘着剤あるいは結合剤として、

スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を使用しているのに対し、脂環

族飽和炭化水素樹脂を用いている 2 製剤は、先発より有意に大きい剥離力を示し、

また粘着剤としてメタクリル酸・アクリル酸 n-ブチルコポリマーを使用している 5

製剤は、有意に小さい剥離力を示したことから、使用している粘着剤の材料から剥

離力の大小を予想する目安になる可能性が示唆された。

さらに、各製剤の粘着力試験結果と支持体の厚さとの関連性も解析した。その結

果を Fig. 9 に示す。ボールタック粘着力と支持体の厚さには、負の相関傾向( r =

-0.66,P = 0.07 )を示した。つまり支持体が厚い、重量が大きいほど剥離に必要

な力が大きい傾向が見られた。しかしながら、◆で示すメタクリル酸・アクリル酸

n-ブチルコポリマーを使用している 5 製剤と▲で示す脂環族飽和炭化水素樹脂を用

いている 2 製剤をそれぞれ点線枠で囲むと、縦軸に示すボールタック粘着力は、支

持体の厚さよりも、粘着剤成分の影響を大きく受けていることが示唆された。

Fig. 9 Relationship between the Adhesive Force and Thickness

of Various Ketoprofen Tapes

●:Mohras tape including Styrene-isoprene-styrene block copolymer as Adhesive Agent

◆:Generic Drugs including Methacrylic acid - acrylic acid n-butyl copolymer as Adhesive Agent

▲:Generic Drugs including Alicyclic Saturated Hydrocarbon Compound as Adhesive Agent

Plotted on each axis are mean of value

Mohrus

Tiekoku Patell

Frestol

Raynanon

BMD

Touchron

Nichi-Iko

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

0.40 0.45 0.50 0.55 0.60

Adhesi

ve F

orc

e[g

]

Thickness [mm]

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19

(3)透湿度測定

テープ剤による皮膚刺激としては剥離時の物理的刺激の他に、薬物アレルギー、

添加物および不純物などによる化学的刺激や貼付部の閉塞作用により引き起こさ

れる角質層水和、汗腺ブロックおよび細菌繁殖などの刺激(マセレーション刺激)

が起こると報告されている。46) 特に、マセレーション刺激は特に透湿性が乏しい製

品を貼付した箇所で起こりやすいことから、各製品の透湿度を測定した。その結果

を Fig. 10 に示す。

Fig. 10 Water-vapor Permeability of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 3) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

Fig. 10 において、各製品の透湿度を比較したところ、製品間で大きな差が認めら

れた。すなわち、先発品のモーラス(143 g/m2・24h)、後発品のテイコク(254 g/m2・

24h)およびパテル(64 g/m2・24h)は、他の 5 種の後発品の透湿度と比較して 1/

6 以下の低値を示した。その中でも、パテルはモーラスと比較して有意に低い値を

示し、テイコクは測定値のばらつきが他製剤と比較して大きく再現性に乏しいこと

から、支持体あるいは製剤に塗布された粘着成分の均一性が低い可能性が考えられ

た。

0

500

1000

1500

Wate

r-vapor

Perm

eability

[g/m

2・

24h]

** **

******

*

Page 20: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

20

一方、透湿度が高い 5 種の後発品の内、最も高い値を示したのは BMD(1,330

g/m2)であり、その他の製剤も、フレストル(1,125 g/m2・24h, P = 1.2×10-6 < 0.01)、

レイナノン(1,170 g/m2・24h, P = 1.2×10-6 < 0.01)、BMD(1,330 g/m2・24h, P = 1.2

×10-6 < 0.01)、タッチロン(1,107 g/m2・24h, P = 1.2×10-6 < 0.01)、日医工(1,231

g/m2・24h, P = 1.2×10-6 < 0.01)と、いずれも先発品と比較して有意に高い値を示し

た。

本実験に使用したこれらの製品はすべて 1 日 1 回の適用であり、24 時間貼付し

て使用するものである。その為、透湿度の高い製品を使用することでマセレーショ

ン刺激を抑える一つの方策となる47)。したがって、先発と比較して有意に高い値を

示した 5 つの後発品製剤は、先発品で報告される副作用の軽減を目的として製剤化

されている可能性も示唆された。しかしながら、透湿度の高い製剤は密閉性を低下

させることで薬物の皮膚への移行を低下させる要因にもなる 46) ことから、製品の

選択にはその特性を十分に理解することが重要であると考えられた。

(4)伸張度測定

ケトプロフェン含有テープ剤は、適用箇所として腰、肘および膝等の関節部に貼

付される場合がある。関節部に貼付する際には、関節の動きに対し剥がれることな

く、また違和感の無い可動性が求められることから、製剤の伸張性は重要な要因の

一つと考えられる。また、伸びやすい製剤は、剥離時に剥離しようとして加えた力

が製剤の伸びることに消費されてしまうことで、剥がしにくいと感じる可能性も予

想される。そこで、各製品の伸長度を測定した。その結果を Fig. 11 に示す。

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21

Fig. 11 Stretchability of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug

Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 6) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

Fig. 11 において、先発品のモーラスの伸長度 2.6 に対し、後発品のテイコクはほ

ぼ同等の伸長度 2.6 を示したが、その他の後発品はそれぞれパテル 2.8(P = 0.032<

0.05)、フレストル 3.0(P = 3.4×10-6 < 0.01)、レイナノン 3.4(P = 1.3×10-6 < 0.01)、

BMD 3.2(P = 1.3×10-6 < 0.01)、タッチロン 2.9(P = 1.4×10-4 < 0.01)および日医工

3.0(P = 2.1×10-6 < 0.01)と有意に高い値を示した。最も伸長度が低いモーラスの

2.6 に対し、一番伸長度が高いレイナノンの 3.4 は有意に伸びが良い特性を持ち、使

用感に影響をおよぼすと考えられた。

この伸長度における差は、各製剤を構成している支持体および粘着剤が異なるこ

とに因るものであると推察された。また、各製剤の伸長度の差は、関節部に貼付す

る際の使用感差に影響をおよぼすと考えられた。

(5)剛軟度測定

テープ剤を背中に適用する際など、見えない場所や手が届きにくい場所に貼付剤

をヨレやたるみ無く貼るのは困難であるが、テープ剤がやわらかい製品はより貼り

にくいと考えられる。そこで、支持体の硬さを示す剛軟度を測定した。その結果を

Fig. 12 に示す。

0

1

2

3

4

Str

etc

habili

ty

** **** **

**

*

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22

Fig. 12 Stiffness of Various Ketoprofen Tapes

Brand-name Drug

Various Generic Drugs

Mean ± S.D. (n = 10) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Mohrus tape , Dunnett’s test)

Fig. 12 において、先発品のモーラス(10.6)に対し、後発品のタッチロン(10.0,

c = 0.031 < 0.05)は有意に低い値を示し、日医工(11.3, P= 0.025 < 0.05)は有意に

高い値を示した。また、テイコク(11.0)は先発品より高めの値を示し、その他の

製剤は、パテル(10.1)、フレストル(10.3)、レイナノン(10.3)、BMD(10.3)と

先発品と近い値を示した。

後発品のタッチロンは先発品のモーラスに対して有意に低い値を示したことか

ら、先発品よりも支持体がやわらかい特性を示すと考えられ、背中等、直接確認す

ることができず手が届きにくい場所に貼付する際には貼りにくい可能性がある。そ

の一方で、日医工は先発品に対して有意に高い値を示したことから、先発品よりも

支持体が硬い特性を有していることが明らかとなり、貼付時にヨレやたるみなどを

起こしにくく、また背中等にも貼りやすいと考えられた。また、テイコクは、先発

品と比較して有意差はないものの高めの値を示し、その他の後発品製剤(パテル、

フレストル、レイナノン、BMD)は、先発品と近い値を示し、同程度の硬さを有し

ていると考えられた。

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

Stiffness

[m

m]

*

*

0

Page 23: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

23

(6) 各測定値間の相関

ボールタック粘着力の測定結果とピール剥離力の測定結果に負の相関傾向が認

められたことについては、(2)の項で考察したが、さらに各測定値間における相関

についても解析した。その結果を Table 4 に示す。

Table 4 Relationship between Various Physicochemical Properties

P -value Peel Force

Water-

vapor Perme

ability

Stretch

ability

Stiff

ness

Thick

ness Weight

Adhesive Force

(Ball Tack)

-0.81

(P=0.014)

0.71

(P=0.048)

0.37

(P=0.367)

-0.44

(P=0.274)

-0.66

(P=0.123)

-0.59

(P=0.075)

Peel Force -0.96

(P=0.0002)

-0.73

(P=0.041)

0.18

(P=0.571)

0.74

(P=0.034)

0.62

(P=0.098)

Water-vapor

Permeability

0.81

(P=0.015)

-0.08

(P=0.85)

-0.86

(P=0.006)

-0.76

(P=0.027)

Stretchability -0.24

(P=0.57)

-0.78

(P=0.024)

-0.55

(P=0.15)

Stiffness 0.25

(P=0.54)

-0.05

(P=0.90)

Thickness 0.93

(P=0.0010)

Table 4より、透湿度には、ボールタック粘着力と正の相関傾向(r = 0.71, P = 0.048)、

ピール剥離力(r = -0.96, P = 0.0002)と負の相関傾向が認められた。(2)の項で考

察したように、ボールタック粘着力が、粘着剤の粘弾特性のうち粘性特性に大きく

影響を受け、ピール剥離力が、粘着剤の粘弾特性のうち弾性特性に大きく影響を受

けていると仮定すれば、透湿度は、粘着剤の粘性特性に大きく影響を受けている可

能性が考えられた。

高分子膜に対する気体の透過については、拡散係数 D、気体透過係数 P、気体の

高分子に対する溶解度 S の間には、P=DS の関係が成り立つことはよく知られて

いる48)。また、拡散係数 D はおおむね粘度 η に逆比例することが知られており、レ

イノルズ数が低い液体中の球状粒子の拡散においては、ストークス-アインシュタ

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24

インの式(下記式)が成り立つことが知られている。

D = kBT/6πηr

( kB:ボルツマン定数、T:絶対温度、η:粘度、r:球状粒子の半径 )

樹脂等の高分子を主成分とし半固形状である粘着剤の透湿度は上記特性を示す、

すなわち、粘着剤中への水の溶解度と水分子の拡散係数の影響を受け、拡散係数は

粘着剤の粘度の影響を受けると予想される。したがって、粘着剤の粘性が高い程、

透湿度が高くなると考えられた。

さらに透湿度には、製剤の厚さと負の相関傾向( r = -0.86, P = 0.006 )が認め

られ、製剤が厚い程、湿度の透過速度が小さくなることも明らかとなった。

また Table 4 より、伸長度には、ピール剥離力と負の相関傾向( r = -0.73, P =

0.041 )、透湿度と正の相関傾向( r = 0.81, P = 0.015 )が認められた。透湿度と同

様に、伸長度は、粘着剤の粘性特性に大きく影響を受けている可能性が考えられた。

粘弾性を有する物質を一定の力で引っ張ると、ある速度で伸びが進行する粘性に

対して、ある程度伸びるとそれ以上進行しない弾性が相互に作用して、伸びは減速

して進行がとまる。このとき、伸びは力に比例することが知られ、フックの法則( F

= k x x:伸び [m] 、F:弾性力 [N]、k :ばね定数)に従うことになる。樹脂等

の高分子を主成分とする粘着剤は、半固形状であり、上記特性を示すことが推察さ

れる。つまり、同じ力がかかる時、弾性力が大きい粘着剤ほど、伸びは小さいこと

が予想される。したがって、伸長度は弾性が大きい程、小さくなると考えられた。

さらに Table 4 より、伸長度と製剤の厚さには、負の相関傾向( r = -0.78, P =

0.024 )が認められた。つまり、製剤が厚い程、伸びにくいことが明らかとなった。

上記のフックの法則において、2 つのばねを並列につなぐと、ばね 1 つの時と比

較して同じ距離 x を伸ばすのに 2 倍の力が必要になる。同様に、粘着剤を横方向に

引っ張る際の粘着剤の厚さは、ばねモデルにおけるばねの並列、あるいはばねが太

くなることにあたるため、同じ力がかかるとき、製剤の厚さが厚い程、伸長度が小

さくなると考えられた。

また、Table 4 より、製剤の厚さには、ピール剥離力と正の相関傾向( r = 0.74, P

= 0.034 )、が認められた。

Page 25: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

25

剥離に要する力であるピール剥離力は、剥離の過程における剥離に対する抵抗力

を示し、剥離の過程は Fig. 8 に示すとおり、剥離時の負圧によるキャビテーション

により起こると考えられている。ここで、粘着剤の厚みが大きい製剤では、剥離し

ようとしてかける力が粘着剤の伸びることに消費されて、負圧がかかりにくいこと

から、より大きな剥離力が必要になると考えられる。また、剥離に必要となるキャ

ビテーションについても、粘着剤の厚さが厚い程、より多くのキャビテーションが

起こる必要があると考えられ、これを満たすために、より大きな剥離力が必要にな

ることも推察された。

(7) 各測定値とアンケート調査による使用感スコアとの相関

以上の測定結果から、どのような使用感が予想できるのかを解析するために、植

松ら49) が調査した同製剤群の使用感アンケート調査による伸縮性、粘着性、貼り心

地および剥離性スコアと、各測定値の相関について解析した。

各試験項目と使用感スコアとの相関係数 r および有意性を示す P 値を Table 5 に

示す。

Table 5 Relationship between the Usability and Physicochemical Properties

相関係数(r)

使用感アンケートによるスコア(植松ら)

伸縮性スコア

(貼付中の

動きやすさ)

粘着性スコア

(貼付中の

はがれやすさ)

貼り心地スコア

(効き目を含む)

剥離性スコア

(剥離時の

剥がしやすさ)

Adhesive Force

(ball tack)

-0.72

(P=0.11) 0.83

(P=0.040)

-0.67

(P=0.14)

0.01

(P=1.1)

Peel Force 0.44

(P=0.38)

-0.69

(P=0.12) 0.84

(P=0.038)

0.12

(P=0.81)

Water-vapor

Permeability

-0.55 (P=0.25)

0.73

(P=0.10)

-0.89

(P=0.017)

-0.13

(P=0.80)

Stretchability -0.25

(P=0.62)

0.58

(P=0.23)

-0.75

(P=0.086)

-0.43

(P=0.40)

Stiffness 0.13

(P=0.81)

-0.25

(P=0.63)

0.07

(P=0.89) 0.83

(P=0.042)

Page 26: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

26

Table 5 より、「貼付中のはがれにくさ」を示すスコアは、ボールタック粘着力と

正の相関、ピール剥離力と負の相関傾向が認められた。また、総合的な「貼り心地」

スコアには、ピール剥離力との関連性、また、「剥離時のはがしやすさ」のスコアは、

剛軟度との相関性が示唆された。

使用感アンケートによる「貼付中のはがれやすさ」のスコアは、ボールタック粘

着力と正の相関傾向( r = 0.83, P = 0.040 )、ピール剥離力と負の相関傾向( r = -

0.69, P = 0.12 )が認められた。つまり、ピール剥離力(剥離に要する力)が大きい

製剤ほど、はがれやすいと感じることが明らかとなり、ピール剥離力を測定するこ

とにより、先発品あるいは他製剤と比較したはがれやすさを予想できると考えられ

た。ボールタック粘着力と負の相関を示したことは、 (2)でも述べたように、ボー

ルタック粘着力が大きい製剤ほど、粘着剤の粘弾特性のうち粘性が大きく弾性が小

さい特性を持つと考えられ、したがって剥離に耐える力は弱く、使用感としてはが

れやすいと感じると推察された。

さらに、使用感アンケートによる「貼り心地」のスコアは ピール剥離力と正の相

関傾向( r = 0.84, P = 0.038 )を示した。剥離力が大きいほど、貼り心地が良いと

感じることが明らかとなった。総合的な「貼り心地」には、「貼付中にはがれにくい

こと」が大きく関連する可能性が示唆され、はがれにくい製剤は、貼り心地が良い

と感じる可能性が高いと考えられた。

使用感アンケートによる「剥離時のはがしやすさ」スコアは、剛軟度測定値と正

の相関傾向( r = 0.83, P = 0.042 )を示した。支持体が硬いほど、剥離時にはがし

やすいと感じることが明らかとなり、剛軟度を測定することにより、先発品あるい

は他製剤と比較した剥離時のはがしやすさを予想できると考えられた。支持体が柔

らかいと剥がす時に変形しやすく取り扱いづらいと推察された。同様に「貼付時の

貼りにくさ」もこの剛軟度の影響を大きく受けると考えられた。

(8) 各測定値とアンケート調査による使用感スコアとの相関

本研究データを医療現場にて活用頂くために、各製剤の測定結果と予想される使

用感について Table 6 にまとめた。使用感に関しては先発と比較した使用感差とし

て示した。

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Table 6 Physicochemical Properties and expected usability

of Various Ketoprofen Tapes

商品名 剥離力

(N)

予想される

使用感

透湿度

(g/m2・24h)

予想される

使用感

剛軟度

(cm)

予想される

使用感

モーラス

Mohrus 1.38 175 1.06

テイコク

Tiekoku 1.82 先発と同等

あるいは

はがれ

にくい

先発と同等

あるいは

貼り心地が

良い

215 先発と同等

あるいは

蒸れやすい

1.10

先発と同等

あるいは

はがしやすい

パテル

Patell 1.77 135 1.01

先発より

はがし

にくい

フレストル

Frestol 0.43

先発と

比較して

はがれ

やすい

先発と

比較して

貼り心地が

悪い

1,125

先発と

比較して

蒸れにくい

1.03

レイナノン

Raynanon 0.57 1,170 1.03

BMD 0.51 1,330 1.03

タッチロン

Touchron 0.45 1,107 1.00

日医工

Nichi-Iko 0.50 1,186 1.13

先発より

はがしやすい

この情報を医療現場で活用する際には、例えば、先発であるモーラスを使用して

いて特に不満のない患者では、先発よりもはがれやすい後発に変更すると、はがれ

やすいことを不満に感じ、先発に戻すことを望むリスクがあるため、先発と同等あ

るいははがれにくい「テイコク」、パテルのうちどちらかを選択することにより、後

発品に不満を感じるリスクを回避できると考えられる。また、先発モーラスを使用

していて、蒸れやすいことを感じている患者には、先発と比較して蒸れにくいこと

が予想されるフレストル、レイナノン、「BMD」、タッチロン、「日医工」から選択

することで、この不満を解消することができる可能性があり、このとき、多少はが

れやすくなることを事前に説明しておくことで、不満や不信感を与えずに済む可能

性も期待できると考えられた。

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28

第 5 項 小括

本章では、ケトプロフェン含有貼付剤における先発品と後発品の使用感差に影響

をおよぼす製剤特性の差について明らかにすることができた。ケトプロフェン含有

テープ剤は、医療の現場において非常に使用頻度が高いにもかかわらず、後発への

切り替えが思うように進まない現状があった。しかし、本研究において明らかにし

た製剤特性差を把握することで、医療現場において患者本位の製剤選択が可能とな

ると考えられ、これにより後発品への不信感や不満を回避し、選択した後発品から

先発品へ戻す事例を避けることが可能になると考えられる。特に「剥がれやすさ」

や「貼り心地」との関連性が見られた剥離力測定値を参考して製剤選択を行うこと

により、後発品が先発品よりも「剥がれやすくなった」「貼り心地が悪い」等の理由

で後発から先発品に戻すことを避ける為には、後発品としてテイコクやパテルテー

プを採用、選択することが必要であると推察できる。その結果として、後発品を選

択する上での薬剤師と患者の良好な信頼関係も期待できる。

さらに、先発品に対する不満を解消できる後発品を選択することも可能となると

考えられ、患者の薬物治療における満足度、快適性が向上することも期待される。

特に、先発品を使用していて蒸れやすいことや蒸れによる赤みやかゆみ等が生じて

いる場合には、蒸れやすさに影響をおよぼすことが予想される透湿度の測定結果を

参考に、製剤選択を行う、つまり後発品としてフレストル、レイナノン、「BMD」、

タッチロン、「日医工」から選択することにより、患者の不満を解消できると推察で

きる。

以上のように、今までのように後発品を医療者の事情である流通や在庫等の情報

によって選択する医療者中心の医療ではなく、患者の希望を第一とした製剤選択を

行う患者中心の患者主体の医療を実現していくべきであると考え、本研究はその 1

つの成果になると考える。

また本章において、貼付剤の新規製剤学的評価方法として「伸長度」と「剛軟度」

の評価法を確立することができた。これらの評価方法は、測定誤差としての変動係

数が 8%以内であり再現性のある測定方法であると考えられた。さらに、特殊な機

器を必要としないことから、医療現場で本方法を用いることで、簡易に製剤の評価

Page 29: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

29

が可能であることも利点であると考えられる。また「伸長度」はピール剥離力、透

湿度と理論的に正当だと考察できる相関傾向を示し、「剛軟度」は使用感としての

剥がしやすさとの相関傾向が認められた点から、この測定値の信頼性および利用価

値を示すことができた。

Page 30: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

30

第 2 章

チモロールマレイン酸塩配合点眼液における

先発および後発品各製剤の製剤特性

第 1 項 緒言

菅原等が行った点眼剤の使用実態調査 50) によると、先発品から後発品に変更し

た患者のうち、約 18%が「点眼しにくい」、「眼に沁みるようになった」等の理由で、

再び先発品へ切り替えたことを報告している。これは点眼剤における点眼しやすさ、

眼への沁みやすさ、などの製剤特性は先発品と後発品とで同等とは限らないことを

示している。その理由の一つとして、先発品と後発品とでは製造工程や添加物、そ

の組成比が異なることが挙げられ、先発品が後発品より常に優れているとは限らな

い。製剤の使用感が原因となって、後発品から先発品に戻す事例が報告されている

1) ことを考えると、後発品選択において、使用感を考慮した製剤選択を行うことが

重要なファクターとなる。

池田ら51) は、点眼剤が眼に沁みるなどの要因を探求する際に点眼剤内容液の pH

および浸透圧情報の重要性を述べている。さらに点眼剤容器について三田ら52) は、

緑内障で加療中の患者 152 例を対象にアンケート調査を行い、5 種類の製剤につい

てキャップの大きさと開けやすさ、容器の硬さと持ちやすさ、液もれの程度、1 回

の点眼液量、残液量の確認の 7 項目および使いやすい順位を調査した結果、点眼剤

の使用感には点眼時の操作性と点眼液の滴下に関する項目が重要であると結論づ

けている。また、兵頭ら53) は、点眼容器から 1 滴を滴下する際の拇指が点眼容器を

押すときの押し圧力を触覚圧力センサーによって測定し、押し圧力と滴下時間を変

化させたとき容器の使用性に与える影響を評価し、平均最大押し圧力と平均滴下時

間は点眼容器の使用性に影響を与えると報告している。したがって、点眼剤におけ

る使用感は、内容液の特性と容器特性の両方に影響を受けると考えられる。

点眼剤治療が中心となる疾患として、緑内障が挙げられる。2000~2002年に多

治見市において実施された緑内障疫学調査(多治見スタディ)54) によると、40歳

Page 31: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

31

以上の日本人における緑内障の有病率は5.0%と推定され、また有病率は年齢の増

加と共に上昇し、40歳代で、2.30%、50歳代では3.02%、60歳代で7.89%、70歳以

上になると、13.11%と高率となり、日本国内で治療中の患者は約70万人(厚生労

働省平成23年 患者調査(傷病分類編))である。緑内障は極めて慢性に経過する

進行性の疾患であり、長期の点眼や定期的な経過観察を要し、かつ自覚症状が無

いことが多い。したがって緑内障診療ガイドライン第3版 55) では、治療の成功に

はアドヒアランスが得られやすい製剤選択が重要であると明記されている。一方

で兵頭ら56) は、点眼剤のアドヒアランスを低下させる原因を調査するために、緑

内障点眼治療を受けている患者84名(27~90歳)を対象として聞き取り調査を実施し

た結果、点眼を妨げる原因として、点眼本数(76.2%)、時間帯(72.6%)、点眼回

数(53.6%)と用法に関する内容に次いで、操作性(42.9%)、さし心地(8.3%)

が挙げられたことを報告している。したがって、緑内障治療用点眼剤の後発品の

選択時において、アドヒアランスに影響をおよぼす製剤の使用感は考慮すべき重

要な因子であると考えられる。しかしながら、全ての後発品製剤の使用感に関連

する製剤学的な特性を明らかにした報告や情報は未だ無い。

そこで本章では、緑内障治療用点眼剤の中で販売されている後発品数が最も多

いチモロールマレイン酸塩配合点眼剤を例にとり、先発品と比較して後発品の製

剤学的な視点に立脚した品質を評価し、医療現場での後発品採用あるいは選択時

に有用な情報としてまとめることを目的とした。チモロールマレイン酸塩配合点

眼剤は、β受容体を遮断し房水産生を抑制することにより、緑内障における眼圧下

降作用を示す製剤である。

なお、チモロールマレイン酸塩配合点眼剤には、用法が1日2回である先発品お

よび後発品群に対し、用法が1日1回に改良された徐放性DDS製剤が開発されてお

り、これらの製剤も研究対象として製剤学的特性の評価を行った。

Page 32: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

32

第 2 項 実験方法

1.研究に用いた試料

本研究に用いたチモロールマレイン酸塩配合点眼剤の、先発品「チモプトールⓇ点

眼液 0.25%および 0.5%」、「チモプトールⓇ点眼液 XE 0.25%および 0.5%」、「リズモ

ンⓇTG 点眼液 0.25%および 0.5%」(以下Ⓡを省略する。)および各後発品の、製品名、

メーカー、製造ロット番号、薬価(2014 年 7 月現在)を Table 7 に、添付文書に記

載された添加物および用法用量を Table 8 に示す。

Table 7 Product Name, Abbreviation, Company, Drug price and Lot Number of

Various Timolol maleate Eye Drops used in this study

分類 製品名 略称 メーカー

(株式会社は略)

薬 価

(円)

(0.25%/

0.5%)

製造ロッ

ト番号

(0.25%

/0.5%)

先発 チモプトール点眼液 0.25%/0.5% チモプトール

Timoptol

MSD(試験当時)

現在は参天製薬

241.1

/337.2

9FK013

/9EM09P

後発 リズモン点眼液 0.25%/0.5% リズモン

Rysmon わかもと製薬

63.6

/112.1

0313

/0314

後発 ファルチモ点眼液 0.25/0.5 ファルチモ

Phartimo

キョーリン

リメディオ

63.6

/91.6

16HE

/20HE

後発 チアブート点眼液 0.25%/0.5% チアブート

Thiaboot 日新製薬

63.6

/91.6

219081

/818001

後発 チモロール点眼液 T 0.25%/0.5% チモロール T

Timolol T 東亜薬品

63.6

/91.6

N01NC

/ N04NS

後発 チモレート点眼液 0.25%/0.5% チモレート

Timoleate ニッテン

76

/112.1

A5841

/ A992

後発 チモロール点眼液 0.25%/0.5%「テ

イカ」

テイカ

Timolol Teika テイカ製薬

63.6

/91.6

FE02

/ FH04

後発 チモレート PF 点眼液 0.25%/0.5% チモレート PF

Timoleate PF 日本点眼薬

76

/112.1

A691

/ A991

DDS

製剤

チモプトール XE 点眼液0.25%/0.5%

チモプトール XE

Timoptol XE

MSD(試験当時)

現在は参天製薬

503.2

/719.2

8KN01P

/8JN02P

DDS

製剤 リズモン TG 点眼液 0.25%/0.5%

リズモン TG

Rysmon TG わかもと製薬

491.1

/701.2

0737

/1779

Page 33: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

33

Table 8 Product Name, Additives and Dosage and Administration of Various

Timolol maleate Eye Drops

薬 品 名 添加物 用法

用量 文献

チモプトール

Timoptol

ベンザルコニウム塩化物液、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム

1 回 1 滴 1 日 2 回

57)

リズモン

Rysmon

ホウ酸、ホウ砂、塩化ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物、エデト酸ナトリウム水和物、ポリオキキシエチレン硬化、ヒマシ油 60

1 回 1 滴 1 日 2 回

58)

ファルチモ

Phartimo

リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物、pH 調節剤

1 回 1 滴 1 日 2 回

59)

チアブート

Thiaboot

ベンザルコニウム塩化物、無水リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、等調化剤、pH 調整剤

1 回 1 滴 1 日 2 回

60)

チモロール T

Timolol T

塩化ナトリウム、濃ベンザコニウム塩化物液 50、pH 調整剤

1 回 1 滴 1 日 2 回

61)

チモレート

Timoleate

ベンザルコニウム塩化物、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、等調化剤

1 回 1 滴 1 日 2 回

62)

テイカ

Timolol Teika

リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、等調化剤、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、エデト酸ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物

1 回 1 滴 1 日 2 回

63)

チモレート PF

Timoleate PF

リン酸水素ナトリウム水和物、結晶リン酸二水素ナトリウム

1 回 1 滴 1 日 2 回

64)

チモプトール XE

Timoptol XE

ジェランガム、トロメタモール、ベンゾドデシニウム臭化物、D-マンニトール

1 回 1 滴 1 日 1 回

65)

リズモン TG

Rysmon TG

メチルセルロース、マクロゴール 4000、クエン酸ナトリウム水和物、ベンザルコニウム塩化物、pH 調節剤

1 回 1 滴 1 日 1 回

66)

2. 各製剤の製剤学的評価

(1)pH 測定

各点眼剤中の内容液を取り出し、pH メーター(卓上型 pH メーター,F-74,株

式会社堀場製作所,京都)を用いて測定を行った。なお、測定は 25±1℃の条件下

で各製剤について 3 回行い、その平均値を算出した。

Page 34: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

34

(2)浸透圧測定

各製剤中の薬液を取り出し、凝固点降下法による浸透圧計(OSMOMAT-3000,

Gonotec,ベルリン(ドイツ))を用いて測定した。なお、測定は 25±1℃の条件下

で各製剤について 3 回行い、その平均値を算出した後、浸透圧比(生理食塩水の

浸透圧値に対する比)を計算した。

(3)表面張力測定

各製剤中から取り出した薬液および精製水(対照)を、25 ± 1 ℃の条件下、表

面張力計(デュヌイ表面張力計,離合社,埼玉)による円環法を用いて測定し

た。各製剤について 3 回測定を行い、その平均値を算出した。

(4)一滴量測定および(5)点眼液一滴を滴下するときに要する押し出し力(以

下、スクイズ力とする)の測定

倉本等 67) の方法を参考に、デジタルフォースゲージ(ZP-50N,株式会社イマ

ダ,愛知)を取り付けた特注の装置をスクイズ力測定のために作成した。装置の

模式図を Fig. 13 に示す。

Fig. 13 Equipment for Measuring Squeeze Force

上記装置に各製剤をセットし、ゆっくりとハンドルを回して、一滴を滴下した瞬

間にかかる力をスクイズ力とした。その際に滴下した一滴の重量を測定し、一滴

量とした。なお、測定は 25±1℃の条件下で各製剤について製剤毎にそれぞれ 10

回測定を行い、その平均値を算出した。

Disital Force Gauge

275mm

205mm

Handle

Screw

Eye drop

Receiver

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35

(6)点眼しやすさに関するアンケート調査

緑内障患者 4 名を含む 36 名(男性 10 名、女性 26 名)(かもめ薬局下高井戸店

に来店の眼科通院患者 6 名(50~70 代)および明治薬科大学学生 30 名(20 代))

を対象に、1 滴点眼するときの点眼薬の出しやすさについて以下の調査を行った。

被験者は利き手に点眼剤をもち、普段点眼をする際の態勢をとった。次に薬液

が眼に入らないよう、もう一方の手に持った透明のプラスチックシャーレで眼を

覆い、シャーレ上に点眼液 1~2 滴を滴下した。その時の点眼容器の押し出しやす

さについて、6 段階で評価した。すなわち、「すごく出しにくい」を 1 点、「出し

にくい」を 2 点、「どちらかというと出しにくい」を 3 点、「どちらかというと出

しやすい」を 4 点、「出しやすい」を 5 点、「すごく出しやすい」を 6 点とした。

被験者には、点眼剤の商品名およびメーカーがわからないよう、各種情報を印字

したフィルムは容器から取り除き、A~J の番号で識別した。調査に用いたアンケ

ート用紙を Fig. 14 に示す。

10 種類の点眼薬 A~J について、1滴を出すときの容器の使用感についてお聞きします。

1 滴ずる点眼薬をお皿の上に滴下して、当てはまる数字に○を付けてください。

点眼剤の種類 A B C D E F G H I J

すごく出しにくい 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

出しにくい 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

どちらかというと出しにくい 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3

どちらかというと出しやすい 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

出しやすい 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5

すごく出しやすい 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6

Fig. 14 Score Sheet of Usability of Various Timolol maleate Eye Drops

(7)統計解析

測定データは、統計ソフト Statcel3 を用いて Dunnet の多重比較検定法を行い、

統計学的有意差を解析した。検定により、チモプトール点眼液の同濃度品と比較

して危険率 5 %以下で有意差がある製剤は*、危険率 1 %以下で有意差がある製剤

Page 36: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

36

は**を、結果のグラフ上に記載した。

各データどうしの相関の解析には、Excel の CORREL 関数を用いて相関係数 r を

算出した。さらに、t 値を t=ABS(r*(n-2)^0.5/(1-r^2)^0.5)の式により算出し、p

値を Excel の TDIST 関数を用いて、TDIST(r,n-2,2)の条件において算出した。

第 3 項 結果および考察

(1)pH および(2)浸透圧測定結果

点眼剤において pH は、主剤あるいは製剤の安定性に影響するだけでなく、点眼

時における目が染みる等の主観的な使用感にも影響する。健常者あるいはドライ

アイ症候群の患者が点眼した場合、pH は 4~9、浸透圧は 150~480 mOsm/L、粘度

は 1~15 centipoise(1~15 mPa・s)の範囲では刺激を感じにくいことが知られて

いる。68) しかし、これはあくまでも使用者に刺激等の違和感が無い範囲であり、

細胞レベルで起こる各種の変化は無視されている。Luo ら69) が行った in vivo 研究

によると、培養されたヒト角膜上皮細胞は 450 mOsm/L(等張約 285 mOsm/L とす

ると浸透圧比は 1.58)以上の溶媒によりアポトーシスを引き起こし、Russell ら70)

が実施した in vivo 研究によれば、pH 6.5 以下あるいは 8.5 以上では角膜に構造的

および機能的な変化を生じることが報告されている。また Thomas ら71) が実施し

た in vitro 研究により、pH 7.2~7.8、浸透圧 290~350 mOsm/L の点眼は、細隙灯検

査により角膜上皮細胞に影響を与えないことが確認されている。そこで各製剤中

の内容液の pH および浸透圧の測定を行った。その結果をそれぞれ、Fig. 15 および

Fig. 16 に示す。

Fig. 15 より、各製剤の pH は pH 6.7~7.5 の範囲であった。したがって、いずれ

の製剤も pH による刺激性等の違和感を生じる可能性は少ないと考えられる。また

Russell らの報告を参考にすれば、いずれの製剤も pH 6.5~8.5 の範囲内であるた

め、角膜に構造的機能的変化を生じる可能性は低いと推察される。しかし Thomas

らの報告を考慮すれば、角膜上皮細胞に影響を与えないことが確認されている pH

7.2~7.8 の製剤を選択したい場合には、全製剤中で唯一 pH 7.5 を示したリズモン

TG が適していると考えられる。緑内障の治療は長期にわたることから、角膜上皮

Page 37: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

37

細胞におよぼす点眼剤内容液の pH の影響を考慮した製剤選択が好ましいと考えら

れる。

Fig. 16 より明らかなように、リズモン TG の浸透圧比は 1.5 であったのに対し、

その他の各製剤の浸透圧比は 1.0~1.1 であった。いずれの製剤も、眼への刺激違

和感を生じる可能性は低いが、リズモン TG に関しては角膜上皮細胞へ影響をおよ

ぼす可能性があると思われる。リズモン TG は、徐放性を目的とした熱応答性ゲル

基材としてメチスセルロースを用いているが、この高分子のゲル化をコントロー

ルする為に塩濃度を調整する必要があることが報告 72) されており、体温でゲル化

するよう調整する目的で、等張より高い塩濃度が配合されている可能性が考えら

れた。しかし、リズモン TG は高粘性の製剤であるため、眼表面へおよぼす浸透圧

の影響も緩慢である可能性があり、さらなる研究観察および検討が必要であると

考える。

Fig. 15 pH of Various Timolol maleate Eye Drops

0.25%

0.5% of Brand-name Drug

0.25%

0.5% of Various Generic Drugs

0.25%

0.5% of Various DDS Drugs

Mean ± S.D. (n = 10) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Timoptol , Dunnett’s test)

5

6

7

8

pH

** ****

****

**** ** **

* **

****

0

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38

Fig. 16 Osmotic Pressure of Various Timolol maleate Eye Drops

0.25%

0.5% of Brand-name Drug

0.25%

0.5% of Various Generic Drugs

0.25%

0.5% of Various DDS Drugs

Mean ± S.D. (n = 3) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Timoptol , Dunnett’s test)

(3)表面張力測定結果

防腐剤として添加されるベンザルコニウム塩化物は、陽イオン性界面活性剤であ

り、製剤の無菌性維持、使用時の汚染防止の目的で必要不可欠であり、現在 7 割の

点眼剤に使用されている。73) しかし、ベンザルコニウム塩化物を配合した点眼剤は、

ウサギの眼表面の乾燥を促進したとの報告74) があり、表面張力低下作用との関連性

が示唆されている。さらに石橋ら75) は、ベンザルコニウム塩化物配合あるいは非配

合のチモロール点眼液を 20 名の健常者に添加し、ドライアイの診断に用いられる

涙液層破壊時間(Tear film break-up time、以下 BUT と略す)を測定した結果、ベンザ

ルコニウム塩化物を配合したチモロール点眼液では、有意に BUT が低下したのに

対し、ベンザルコニウム塩化物を配合していないチモロール点眼液では、涙液層破

壊時間の低下は見られなかったと報告している。

涙液層は、一番外側に涙液の蒸発を防ぐ油層、角膜や結膜に栄養分を与える水層、

涙液を眼表面に維持する役割を持つムチン層の 3 層構造をとることが知られてい

る。したがって涙液の表面張力は精製水よりも低い値を示し、Tiffany ら76) は、65 名

0

100

200

300

400

500

600

Osm

otic p

ress

ure

[m

Osm

]

*

****

Osm

otic

pre

ssure

ratio

0

0.5

1.0

1.5

2.0

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39

の健常者の涙液の平均表面張力が 43.6±2.7mN/m あったことを報告している。さら

に、35 名のドライアイ患者の涙液層涙液の平均表面張力が 49.6±2.2mN/m であり、

涙液の表面張力と BUT には負の相関があったことも併せて報告している。さらに

眼にベンザルコニウム塩化物水溶液を点眼すると、涙液の表面張力は増加し、その

影響は濃度依存的であることが報告されており、77) ベンザルコニウム塩化物がそ

の高い界面活性作用により、涙液層の最外層である油層に浸潤することによって、

涙液の蒸発を招くと考えられている。

そこで、各製剤のベンザルコニウム塩化物による界面活性作用を知る目的で、各

製剤の内容液における表面張力を測定した。その結果を Fig. 17 に示す。

Fig. 17 Surface Tension of Various Timolol maleate Eye Drops

0.25%

0.5% of Brand-name Drug

0.25%

0.5% of Various Generic Drugs

0.25%

0.5% of Various DDS Drugs

Mean ± S.D. (n = 10) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Timoptol , Dunnett’s test)

表面張力は製剤によって大きく異なり、41~71 dyn/cm であった。これは各製剤に

よって添加剤の種類や含量が異なること、特にベンザルコニウム塩化物濃度が大き

く影響していると考えられた。そこで、ベンザルコニウム塩化物を各種濃度にて溶

解した水溶液を調製し、同様に表面張力を測定したところ、0.001 %では 52.6 dyn/cm、

0

20

40

60

80

Surf

ace T

ensi

on[

dyn/c

m]

****** **

**

* ** ** **

**

Page 40: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

40

0.005 %では 42.9 dyn/cm、0.01 %では 41.5 dyn/cm、0.02 %では 41.1 dyn/cm であっ

た。防腐効果を期待した場合に推奨されるベンザルコニウム塩化物濃度は

0.0005 %以上、最大で 0.02 %の濃度とされており、この範囲の表面張力と点眼剤

の表面張力はほぼ一致していることからも、点眼剤の表面張力は陽イオン性界面活

性剤であるベンザルコニウム塩化物濃度に依存すると推察された。

チモレート PF 点眼液の表面張力は、他製剤と大きな差を示し、精製水や生理食

塩水とほぼ同等の 71 dyn/cm であった。これは、本製剤が特殊な容器を採用するこ

とで防腐剤フリーを実現していることによると推察される。ベンザルコニウム塩化

物には副作用としての角膜障害や炎症が報告されており、78) 眼表面の乾燥を促すと

の報告もある。 74,75) したがって、長期の点眼剤治療が必須とされる緑内障治療にお

いて、防腐剤フリーによる利点は極めて大きいと考えられる。

また、使用感におよぼす表面張力の影響に関して以下に考察する。表面張力が低

い製剤は相対的に容器から液滴が落ちやすい為滴下しやすい、一方で点眼投与時に

眼から流れ落ちやすいと考えられる。しかし容器からの押し出しやすさについては、

表面張力の大きさは一要素であり、他に容器の形状や口径等が関与するため、後述

のスクイズ力の大小に大きく依存すると考えられる。また、眼から流れ落ちた薬剤

により接触性皮膚炎が見られる等皮膚が弱い患者には、眼から流れ落ちにくい高い

表面張力の製剤を選択することで、使用感の満足につながる可能性がある。さらに

表面張力が低い製剤は眼表面を乾燥させることから、ドライアイの患者には高い表

面張力の製剤を推奨できる。例えば先発品チモプトール(表面張力 52 dyn/cm)を使

用中の患者が、眼の周辺にかゆみや赤みあるいは眼の乾きを訴える場合に、後発品

チモレート PF(表面張力 71 dyn/cm)への変更を推奨することで、上記の症状が緩

和する可能性があると考えられる。

(4)一滴量測定結果

点眼剤における一滴量は、使用可能日数を左右する因子であり、医師の適切な処

方や薬剤師による患者の適正使用を支援するために有用な情報である。使用可能日

数の差は、患者が負担する薬剤費に直結することから、長期にわたる緑内障治療に

おいて薬剤選択における大きなファクターとなる。50,79) また、チモロールマレイン

酸塩配合点眼剤は、眼の周囲にアレルギー性の接触性皮膚炎を引き起こす原因物質

Page 41: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

41

として知られている。80) 点眼時、一時的に結膜嚢に保持できる最大液量は約 20 μ

L 81) であり、点眼剤の一滴量が 20 μL を大きく超えた場合、眼から流れ落ちる薬

剤量が多くなり、接触性皮膚炎リスクの増大が危惧される。そこで、各製剤の一適

量測定を行った結果を Fig. 18 に示す。

Fig. 18 Drop Weight of Various Timolol maleate Eye Drops

0.25%

0.5% of Brand-name Drug

0.25%

0.5% of Various Generic Drugs

0.25%

0.5% of Various DDS Drugs

Mean ± S.D. (n = 15) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Timoptol , Dunnett’s test)

Fig. 18 より、各製剤の一滴量には差が見られた。すべての製品において一滴点眼

量は 20 μL 以上であった。一滴量が過小である製剤は無く、いずれの製剤も十分

に主薬の薬理効果を期待できると考えらえる。一滴量が大きい製剤、その中でも特

に図 5 における表面張力が低い製剤において、結膜嚢に入りきらない液剤が眼から

流れ落ちやすい可能性が示唆された。眼の周辺に点眼剤に起因する接触性皮膚炎を

発症している患者、あるいは敏感肌等皮膚炎を起こす危険性が高い患者には、一適

量が小さい、かつ表面張力が高い製剤を選択することで、副作用の発現を防ぐこと

ができる可能性がある。

0.00

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

Dro

pW

eig

ht

[g]

****

**

****

** *

**

**

Page 42: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

42

(5)スクイズ力測定結果

緑内障患者は高齢者に多く、53 82, 83) 緑内障治療は長期にわたって行うため、緑内

障用点眼剤投与はわずらわしいあるいは不快に感じている割合が多く、その感覚は

製剤間における差が大きいとの報告がある。84) 高齢者にとって使いやすい点眼剤で

あることは、アドヒアランスの向上につながり、治療効果にも影響すると考えられ

る。そこで、各製剤の点眼時に一滴を滴下するのに必要な力(以下、スクイズ力と

表記する。)を測定した。その結果をFig. 20に示す。

Fig. 19 Squeeze Force of Various Timolol maleate Eye Drops

0.25%

0.5% of Brand-name Drug

0.25%

0.5% of Various Generic Drugs

0.25%

0.5% of Various DDS Drugs

Mean ± S.D. (n = 10) *:P < 0.05, **:P < 0.01 (vs Timoptol , Dunnett’s test)

Fig. 19 におけるスクイズ力測定結果より、最小の 4.1 N から、最大の 11.3 N と

約 3 倍近い差があり、これには各製剤の異なる容器形状、特に容器の点眼口の内

径、内容液の表面張力が影響していると推測された。チモレート PF 点眼液は最も

大きなスクイズ力を必要とし、本製品の特徴である防腐剤フリーにする為に採用

されている特殊容器に起因していると推察された。本容器は、内容物がメンブラ

ンフィルターを通して滴下される構造を持ち、内容液が微細なフィルターを通る

0

2

4

6

8

10

12

Squeeze f

orc

e [

N]

**

**

****

**

**

**

**

****

**

**

**

**

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43

のに大きな圧力を必要とすると考えられる。さらに、チモプトール XE およびリズ

モン TG も他製剤と比較して高い値を示した。両製剤は、主成分の徐放化を目的と

して基剤が高い粘性を有しており、Fig. 18 においても明らかであるように、滴下

する際の 1 適量が他製剤と比較して大きい。1 滴量が大きい程、その 1 滴を滴下す

るのに必要な力は大きくなると考えられる。

上記チモレート PF、チモプトール XE およびリズモン TG 以外の 7 製剤につい

ては、スクイズ力の測定結果と製剤容器の点眼口内径および内容液の表面張力と

の関連性について以下に考察する。スクイズ力測定結果と点眼口の内径、内容液

の表面張力との関係をそれぞれ、Fig. 20、Fig. 21 に示す。

Fig. 20 Relationship between the Squeeze Force and

Inner Aperture Diameter of Bottle

Fig. 20 に示したとおり、製剤容器の点眼口内径とスクイズ力との間には正の相関

傾向( r = 0.66, P = 0.11 )が認められた。また、Fig. 21 に示すとおり、内容液の

表面張力とスクイズ力との間にも正の相関傾向( r = 0.70, P = 0.081 )が認められ

た。

0

2

4

6

8

10

1 1.25 1.5 1.75 2 2.25

Squeeze F

orc

e [

N]

Inner Aperture Diameter of Bottle [mm]

0

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44

Fig. 21 Relationship between the Squeeze Force and Surface Tension

スクイズ力は、1 滴を押し出すにの必要な力であるが、点眼容器を少しずつ押す

と、容器の点眼口より液が吐出され始め、液滴は徐々に大きくなり、最終的に落

下する。このとき、点眼口に下がる液滴は、内容液の表面張力により維持されて

いる。点眼剤容器の点眼口から液滴が落下する様子と液滴に働く力は、模式図に

示すと Fig. 22 のようになる。

Fig. 22 Forces acting on an eye drop

0

2

4

6

8

10

35 40 45 50 55

Squeeze F

orc

e [

N]

Surface Tension [dyn/cm]

0

r

m g

2πr = m g

Drop Off

2πr

2πr < m g

2πr > m g

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45

すなわち、点眼出口から液滴が落ちる直前には、上に向かう点眼口の周囲 2 π r に

働く力 と下にかかる力 m g が釣り合っていて、下式が成り立つ。

2 π r = m g

液滴が小さい間は、2 π r > m g であるが、容器を押していくと液滴の質量

( m )が大きくなり、2 π r < m g になると、液滴が落下する。このとき、容

器を押す力として表されるスクイズ力は、液滴の質量 m を大きくすることで表現

できる。ここで、製剤の点眼口の内径 r が大きいほど、あるいは、製剤内容液の

表面張力 が高い製剤ほど、上方向にかかる力 2 π r が大きくなる。液滴が落下

するためには、この 2 π r より大きな下方向にかかる力 m g が必要であり、すな

わち、より大きな液滴の質量 m が必要となる。大きな液滴を押し出すためには、

より大きなスクイズ力が必要になると考えられる。以上の理由から、製剤容器の

点眼口内径とスクイズ力との間に正の相関傾向が認められたものと考察した。

(6)点眼しやすさに関するアンケート調査結果

Fig. 20 に示したスクイズ力測定結果は、主観的な「点眼しやすさ」に、最も大き

く影響する因子であると考えられる。しかし、容器の大きさや形状による持ちやす

さや点眼しやすさ等、スクイズ力に反映されない因子も存在すると推察される。河

嶋ら85) は、患者が点眼容器に求める条件として最も多いのが「点眼時に容器の硬さ

がちょうどよい」、2 番目に多いのが「点眼時に容器が持ちやすい」であると報告し

ており、患者にとって「点眼しやすさ」が重要な訴求点であることが示唆された。

そこで、人が実際に感じる使用感である容器の押し出す容易さに関して 6 段階評価

によるアンケート調査を行った。その結果を Fig. 23 に示す。

Page 46: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

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Fig. 23 Relationship between the Usability and Squeeze Force

●:Timoptol (Brand-name drug of Timolol Eye Drops)

◆:Various generic drugs of Timolol Eye Drops

Plotted on each axis are mean of value and 95%CI

Fig. 23 に示したアンケート調査の結果より、アンケート結果とスクイズ力には負

の強い相関性( r = -0.917, P = 0.00019 )が見られた。粘度の高い徐放性製剤で

あるチモプトール XE およびリズモン TG、特殊容器のチモレート PF は、点眼しに

くい傾向が見られた。しかし、これらは、「通常 1 日 2 回のところ 1 日 1 回の点眼

でよい」、「防腐剤無添加」などの利点を持つ製剤である。アンケート調査において、

「点眼しやすさ」と「1 日 1 回」あるいは「防腐剤無添加」のどちらを優先したい

かと質問した。その結果、「点眼しやすさ」よりも「1 日 1 回」を選択したのは 36

名中 26 名(72%)、「点眼しやすさ」よりも「防腐剤無添加」を選択したのは 36 名

中 24 名(67%)であった。本結果は、緑内障治療が長期に渡ること、また患者の多

くが高齢者であることが大きな要因であると考えられた。

(7)各製剤のインタビューフォームに記載された製剤学的特性

各測定結果より、先発品および各種後発品はそれぞれ評価項目によって類似した

あるいは異なる製剤特性を持つことが明らかとなった。薬剤師が各製剤の特徴を理

Timoptol

Rysmon

Phartimo

Thiaboot

Timolol T

Timoleate

Timolol Teika

Timoleate PF

Timoptol XE

RysmonTG

-3

-2

-1

0

1

2

3 4 5 6 7 8 9 10 11

Usa

bility

Score(

Mean,n

=36)

Squueze Force [N]0

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解し、患者の使用ニーズや好みに合わせた製剤選択を行うことで、より良好なアド

ヒアランスでの服薬を支援できると考えられる。さらに薬剤師はこのような製剤特

性の情報を、各メーカーから提供される添付文書やインタビューフォームより得る

ことができれば簡便である。そこで、添付文書およびインタビューフォームに記載

された各製剤の物理化学的測定値をまとめて Table 9に示す。Table 9に示すとおり、

添付文書から得られる製剤情報は pH と浸透圧であり、インタビューフォームにお

いて粘度と比重を記載しているのは先発品のみであった。

添付文書に記載された pH は、規格値として「pH 6.5~7.5」あるいは「pH 6.3~

7.3」のように pH の範囲幅をもって表示されており、その範囲内で生じる製剤差

について知ることはできない。一方で、「pH 7.2~8.0」と表記しているリズモン

TG のように、明らかに他製品と異なる pH を示す特性を知ることはできる。しか

し、角膜上皮細胞に影響を与えないことが確認されている pH 7.2~7.8 71)の製剤を

選択したい場合、添付文書の記載のみから判断するのは困難であると考えられ

た。

Page 48: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

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Table 9 Pharmaceutical Information from Interview Form

of Various Timolol maleate Eye Drops

薬 品 名 規格 粘度 比重 pH 浸透圧

比 文献

チモプトール

Timoptol

0.25% 1 mm2/s (25℃) 1.0163 6.5-7.5 約 1

86)

0.5% 1.01 mm2/s (25℃) 1.0165 6.5-7.5 約 1

リズモン

Rysmon

0.25%

/0.5% ― ― 6.5-7.5 0.9-1.4 87)

ファルチモ

Phartimo

0.25

/0.5 ― ― 6.5-7.5 約 1 88)

チアブート

Thiaboot

0.25%

/0.5% ― ― 6.5-7.5 0.9-1.1 89)

チモロール T

Timolol T

0.25%/

0.5% ― ― 6.5-7.5 0.9-1.1 90)

チモレート

Timoleate

0.25%

/0.5% ― ― 6.5-7.5 0.9-1.1 91)

テイカ

Timolol Teika

0.25%

/0.5% ― ― 6.3-7.3 0.8-1.2 92)

チモレート PF

Timoleate PF

0.25%

/0.5% ― ― 6.3-7.3 0.9-1.2 93)

チモプトールXE

Timoptol XE

0.25%

/0.5% 50-105

g/cm2

(ゲル強度)

1.014-1.017

(15~25℃) 6.5-7.5 - 94)

リズモン TG

Rysmon TG

0.25%

/0.5% 25-43

mm2/s

(20℃) - 7.2-8.0 1.3-1.6 95)

Table 9 より添付文書に記載された浸透圧も、pH と同様に「約 1」や「0.9~1.1」

のように幅をもって記載されていた。その幅の大きさは最小で 0.2、最大で 0.5 と各

社異なり、角膜上皮細胞に影響を与えないことが確認されている浸透圧の範囲 290

~350 mOsm/L(浸透圧比として約 1.0~1.2)を考慮すると、「約 1」、「0.9~1.1」や「0.9

~1.2」と表記された製剤は、十分に安全性が確保できていると判断できる。しかし

ながら、「0.8~1.2」や「0.9~1.4」と表記された製剤に関しては注意が必要である。

一方、Fig. 16 に示したとおり、「0.8~1.2」や「0.9~1.4」と表記された製剤も実測値

は 0.96~1.04 であることから、安全性に問題ないと考えられた。さらに、チモプト

ール XE には添付文書、インタビューフォームともに浸透圧の記載は無い。またリ

ズモン TG は、添付文書に浸透圧比 1.3~1.6 と記載されていることから、処方設計

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49

として高い浸透圧を設定していると推察された。この 2 製剤は徐放性の高粘性製剤

であり、浸透圧差が角膜へおよぼす影響も緩慢であると考えられることから、製剤

設計において浸透圧を等張にすることを重要視していないものと考えられた。特に

リズモン TG は熱応答によるゲル化を設計するために、メチルセルロース、マクロ

ゴールの他、クエン酸塩の配合濃度により調整されており、72) これにより浸透圧が

高くなったものと推測された。

以上より、添付文書やインタビューフォームに記載された pH や浸透圧の規格値

から推察できる製剤特性は、製剤選択時に参考になると考えられる。しかし本研究

のように pH や浸透圧における実測値や、より多くの物理化学的測定値から得られ

る情報は、多面的な視点からの詳細な特性を理解することを可能とし、参考情報と

して有用であると推察された。

(1) 各測定値と予想される使用感

本研究データを医療現場で活用するために、各製剤の測定結果と予想される使用

感についてまとめた内容を Table 10 に示す。なお、使用感に関しては先発品と比較

した使用感差として示した。

本研究で得られた結果を医療の現場で活用する際には、例えば、先発品であるチ

モプトールを使用していて特に不満のない患者では、先発品よりもさしにくい後発

品に説明無しに変更すると、さしにくいことを不満に感じ、先発品に戻すことを望

む可能性が生じるため、先発品と同等あるいはさしやすい製剤を選択することによ

り、後発品に不満を感じるリスクを回避できると考えられる。また、先発品を使用

していて、眼への刺激や乾燥を感じている患者には、先発品と比較して界面活性成

分による乾燥、刺激を感じにくいチモレート PF を選択することで、この不満を解

消することができると考えられる。このとき、点眼しにくい、つまり滴下するのに

大きな力が必要になることを事前に説明しておくことで、不満や不信感を与えずに

済むことが期待できる。

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50

Table 10 Physicochemical Properties and expected usability

of Various Timoptol Eye Drops

商品名

スク

イズ力

(N)

予想される

使用感 pH

浸透

圧比

予想され

使用感

表面張力

(dyn/cm)

予想される

使用感

チモプトール

Timoptol 7.8 6.8 1.0 51.7

リズモン

Rysmon 4.7

先発と比較して

さしやすい 6.9 1.0

pH や浸透

圧による

刺激は少

ないと考

えられる

46.0

先発と同等,あるいは

乾燥、刺激の可能性 ファルチモ

Phartimo 7.3

先発と同等

6.8 1.0 48.2

チアブート

Thiaboot 8.2 7.0 1.0 43.8

先発と比較して塩化

ベンザルコニウム等

界面活性成分による

乾燥、刺激の可能性

チモロール T

Timolol T 5.4

先発と比較して

さしやすい

6.8 1.0 43.3

チモレート

Timoleate 5.1 6.7 1.0 40.7

テイカ

Timolol Teika 6.0 6.8 1.0 40.7

チモレート PF

Timoleate PF 10.4

先発と比較して

さしにくい

6.8 1.0 70.7 界面活性成分による

乾燥、刺激は無い

チモプトール XE

Timoptol XE 8.9 6.9 1.1 52.6

先発と同等 リズモン TG

Rysmon TG 8.7 7.5 1.5 46.8

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51

第 5 項 小括

本章では、チモロールマレイン酸塩含有貼付剤における先発品と後発品の使用感

差に影響をおよぼす製剤特性について明らかにすることができた。特に点眼剤では、

さしにくい、眼に染みる等の後発品の使用感の違いにより、後発品への切り替えが

思うように進まない現状があった。しかし、本研究において明らかにした各製剤の

特性を把握することで、医療現場において患者本位の製剤選択が可能になると考え

られる。つまり、後発品への不信感や不満を回避し、選択した後発品から先発品へ

戻す事例を避けることが可能になると考えられる。その結果として、後発品を選択

する上での薬剤師と患者の良好な信頼関係も期待できる。

さらに、点眼剤における各製剤のスクイズ力測定結果と使用感アンケートによる

点眼しやすさの関連性について考察し、相関関係を明らかにすることができた。物

理化学的測定結果により、その後発品が、「先発品と比較してさしやすい」あるいは

「先発品と比較してさしにくい」といった使用感を予測できる可能性を示すことが

できた。また各製剤各測定値から、各点眼剤の眼に染みやすさ、刺激性等を考察す

ることができた。

これらの情報を参照することで、医療現場では、患者メリットが得られる後発品

を選択することも可能となり、薬物治療における患者の満足度に加えて、適正な服

薬につながることも期待される。薬局においては、各点眼剤の特性を踏まえた上で

採用品目を決定し、個々の患者ニーズに合った製剤を選択する為のアドバイスを行

う薬剤師の役割が重要であると考えられた。

Page 52: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

52

総 括 および 考 察

近年、急速に後発品の販売品目数および販売数量が増大し、医療費削減を目的と

した国の政策が進められてきた。しかし、先発品から後発品への切り替え時に起こ

る問題点として、後発品から先発品に戻す事例が報告されている。その理由として、

特に外用剤において製剤の使用感に大きな差があることが挙げられる。そこで、本

研究では、特に後発品の使用感に差があることが問題となっている貼付剤、点眼剤

の2剤形に着目し、それぞれ使用頻度の高い薬剤をモデルとして選択し、先発品お

よび各後発品の製剤学的特性に有意な差があることを明らかにするために研究を

行った。

以下に本研究で得られた結論を要約する。

1.ケトプロフェン含有テープ剤の先発品および後発品各製剤の製剤特性

貼付剤において、医療現場において問題となる使用感の差について、製剤学的特

性面から考察するために必要な測定項目として、「伸長度」および「剛軟度」の測定

方法を検討し、再現性のある測定方法を確立することができた。この方法は、特殊

な機器を必要とせず、臨床現場においても簡易に測定できることを特徴とし、また、

「伸長度」は他測定値との相関傾向を示し、この理由は理論的に妥当な考察が可能

であることから、高い信頼性を確認できた。また、「剛軟度」は使用感アンケートに

よる「はがしやすさ」と高い相関傾向が得られたことから、測定価値を明らかにす

ることができた。

また、ケトプロフェンの含有するテープ剤の先発品モーラステープおよび各後発

品については、各製剤の製剤学的特性を明らかにし、予想される使用感について考

察した。各製剤により異なる特徴を持つため、また、患者それぞれが求めるニーズ

は異なることから、患者視線での製剤選択が必要であると考えられた。したがって、

本研究で得られた情報を活用することで患者ニーズに合ったメリットが得られる

製剤選択を可能にすることを明確にできた。

Page 53: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

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2.チモロールマレイン酸塩配合点眼液における先発品および後発品各製剤の製剤

特性

点眼剤において、医療現場において問題となる使用感差について、製剤学的特性

面から考察するために必要な測定項目として、「スクイズ力」の測定と使用感アン

ケートによる「さしやすさ」との関連性を明らかにすることができた。

また、チモロールマレイン酸塩を含有する点眼剤の先発品および各後発品につい

ては、各製剤の製剤学的特性を明らかにし、予想される使用感について考察した。

この情報は、医療現場において、患者ニーズに合わせた製剤選択を可能とすること

で、後発品から先発品に戻すことを回避することが可能となり、患者の治療満足度

あるいはアドヒアランスを向上することも期待できる。

患者に投与される製剤に関しては、外用剤の使用感の差により、選択した後発品

から先発品に戻す事例が多く報告されていることは、後発品の使用促進を阻んでお

り、現在医療現場における重要な問題となっている。このような医療現場における

医薬品に関する問題点を解決する役割を担うのは、医療現場の薬剤師に他ならない。

これが現在の薬学教育においてカリキュラム化されている「研究思考」、そして薬

剤師に求められる機能として「研究能力」が挙げられている理由であると考える。

しかし、現在の医療現場の薬剤師の業務内容、その多忙さから、研究活動の実施が

難しい現状もある。そこで、大学と医療現場の共同研究は非常に有用であり、携わ

る大学の薬学生ばかりでなく医療現場の薬剤師の教育にもつながる。さらに、医療

現場で問題に直面する薬剤師と一緒に課題に取り組むことで、医療現場にそのまま

直接活用できる成果となる。科学研究は、日々の課題を解決しながら、今日より明

日をより良いものに変えるための 1 つの手法であり、医療現場においては、医療の

質を少しでも良いものに変えるための行動として研究が求められている。本研究は、

医療の質を向上するために、医療現場での課題に医療者と大学との共同で取り組ん

だことで、学術的側面、臨床的側面の両面において有意義な成果を得ることができ

た。

本研究により得られた成果は、薬物治療における患者満足度の向上に応えること

ができ、患者ニーズに応じた医療の質の向上に寄与できるものである。

Page 54: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

54

謝 辞

稿を終えるにあたり、ご指導ご鞭撻を賜りました明治薬科大学 医療製剤学研究

室 石井文由教授、ならびに、本論文をまとめるにあたり多くのご助言を頂きまし

た明治薬科大学 臨床薬剤学研究室 加賀谷肇教授、分子製剤学研究室 深水啓朗教

授に深甚なる謝意を表します。

また、特に統計解析方法について御助力を頂きました明治薬科大学 公衆衛生・

疫学研究室 赤沢学教授、同学 数理科学研究室 熊澤美裕紀博士に深く感謝いたし

ます。

そして、研究の遂行にあたり御助言を頂きました明治薬科大学 医療製剤学研究

室 下川健一准教授、地域医療学 山﨑紀子准教授に深謝いたします。

さらに、本研究の一部につき、学部卒業研究を通して御協力頂いた遠藤寛奈氏、

木原麻希氏、ならびに当研究室の各位に深く感謝いたします。

最後に、本研究の推進にあたり、各種医薬品をご提供頂き、専門的な多くのご助

言を賜りましたトライアドジャパン株式会社の野澤充氏に感謝の意を表します。

Page 55: Study on Generic Selection Criteria and New …製剤学的特性に基づいたジェネリック医薬品の選択および 新規製剤学的評価法に関する研究 Study on

55

引用文献

1) 平成 22 年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果について:<

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128160 > cited 24 August,

2016.

2) 山本吉章, 山谷明正, 能村涼子, 宮川慶子, 舟木 弘, 堀部千治, 溝口 恵, 毎田

千恵子, 大嶋耐之, 宮本悦子, 医薬品情報学, 9, 255-260 (2008).

3) 斉田翌美, 井上綾子, 石橋 久, 冨永宏治, 堀 里子, 三木晶子, 大谷壽一, 小野

信昭, 澤田康文, 薬学雑誌, 128, 795-803 (2008).

4) 泉 太郎, 堀 里子, 佐藤宏樹, 三木晶子, 澤田康文, 薬学雑誌, 132, 617-

627(2012).

5) 藤野圭司, 新薬と臨牀, 62, 2148-2158(2013).

6) 関本佳奈子, 阿部佳奈子, 山崎道穂, 応用薬理, 85, 83-89 (2013).

7) 舟木幹雄, 春日秀樹, 平野悦子, Therapeutic Research, 35, 763-768 (2014).

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版)

26) パテルテープ 20 パテルテープ 40 添付文書 2014 年 3 月改訂(第 18 版)

27) フレストルテープ 20mg フレストルテープ 40mg 添付文書 2014 年 3 月改訂

(第 16 版)

28) ケトプロフェンテープ 20mg「SN」ケトプロフェンテープ 40mg「SN」添付文

書 2015 年 6 月改訂(第 18 版)

29) ケトプロフェンテープ 20mg「BMD」ケトプロフェンテープ 40mg「BMD」イ

ンタビューフォーム添付文書 2016 年 1 月改訂(第 10 版)

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工」添付文書 2014 年 3 月改訂(第 11 版)

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年 3 月改訂(改訂第 9 版)

39) パテルテープ 20 パテルテープ 40 医薬品インタビューフォーム 2014 年 3 月改

訂(改訂第 14 版)

40) フレストルテープ 20mg フレストルテープ 40mg 医薬品インタビューフォーム

2014 年 3 月改訂(改訂第 16 版)

41) ケトプロフェンテープ 20mg「SN」ケトプロフェンテープ 40mg「SN」医薬品

インタビューフォーム 2015 年 7 月改訂(第 7 版)

42) ケトプロフェンテープ 20mg「BMD」ケトプロフェンテープ 40mg「BMD」医

薬品インタビューフォーム 2014 年 6 月改訂(第 7 版)

43) タッチロンテープ 20 タッチロンテープ 40 医薬品インタビューフォーム 2014

年 3 月改訂(第 3 版)

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訂(改訂第 13 版)

58) リズモン点眼液 0.25%リズモン点眼液 0.5%添付文書 2014 年 4 月改訂(第 10

版)

59) ファルチモ点眼液 0.25 ファルチモ点眼液 0.5 添付文書 2013 年 6 月改訂(第 13

版)

60) チアブート点眼液 0.25%チアブート点眼液 0.5%添付文書 2013 年 6 月改訂(第

6 版)

61) チモロール点眼液 T0.25%チモロール点眼液 T0.5%添付文書 2013 年 6 月改訂

(第 9 版)

62) チモレート点眼液 0.25%チモレート点眼液 0.5%添付文書 2013 年 6 月改訂(第

4 版)

63) チモロール点眼液「テイカ」0.25%チモロール点眼液「テイカ」0.5%添付文書

2013 年 6 月改訂(第 2 版)

64) チモレート PF 点眼液 0.25%チモレート PF 点眼液 0.5%添付文書 2013 年 6 月

改訂(改訂第 5 版)

65) チモプトール XE 点眼液 0.25%チモプトール XE 点眼液 0.5%添付文書 2014 年

8 月改訂(第 11 版)

66) リズモン TG 点眼液 0.25%リズモン TG 点眼液 0.5%添付文書 2014 年 4 月改訂

(第 10 版)

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86) チモプトール点眼液 0.25%チモプトール点眼液 0.5%医薬品インタビューフォ

ーム 2014 年 8 月改訂(改訂第 11 版)

87) リズモン点眼液 0.25%リズモン点眼液 0.5%医薬品インタビューフォーム 2013

年 6 月改訂(第 6 版)

88) ファルチモ点眼液 0.25%ファルチモ点眼液 0.5%医薬品インタビューフォーム

2014 年 4 月改訂(第 5 版)

89) チアブート点眼液 0.25%チアブート点眼液 0.5%医薬品インタビューフォーム

2010 年 8 月改訂(第 2 版)

90) チモロール点眼液 T0.25%チモロール点眼液 T0.5%医薬品インタビューフォー

ム 2010 年 8 月改訂(第 6 版)

91) チモレート点眼液 0.25%チモレート点眼液 0.5%医薬品インタビューフォーム

2013 年 6 月改訂(第 10 版)

92) チモロール点眼液「テイカ」0.25%チモロール点眼液「テイカ」0.5%医薬品イ

ンタビューフォーム 2014 年 4 月改訂(第 3 版)

93) チモレート PF 点眼液 0.25%チモレート PF 点眼液 0.5%医薬品インタビューフ

ォーム 2013 年 6 月改訂(改訂第 5 版)

94) チモプトール XE 点眼液 0.25%チモプトール XE 点眼液 0.5%医薬品インタビ

ューフォーム 2014 年 8 月改訂(第 13 版)

95) リズモン TG 点眼液 0.25%リズモン TG 点眼液 0.5%医薬品インタビューフォ

ーム 2013 年 6 月改訂(改訂第 5 版)