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INDEX INDEX Red Hat Summit and JBoss World 2012 CloudFormsを提供開始 ほか ★ NEW RELEASE ★ 「インフォメーション・エコノ ミー(情報経済)時代の今、価 値があるのは物理資産ではな く情 報 資 産 。そして情 報 資 産 が企業の競争力を左右してい ることを今一度認識するた め、これまでの産業発展の歴 史を振り返ってみたい」。 セッション冒頭こう語った ホワイトハーストは、世の中に 最初に登場した産業である農 業を例に説明を開始した。 「1700年ごろ、世界の経済は 農業を中心に形成。土地の所 有者が農作物を育てることで 価値を創出し、利益を得てい ました」とホワイトハ ーストは 語る。しかし1750年に産業革 命 が 起こり、工 業 の 時 代 に入 ると価値の源泉は一変する。 土地を所有しても利益を得る 時代は物理資産よりも情報資産の方が 大きな意味を持ち始めるという転換期にある 2012 年 6月26~29日、米ボストンのワールドトレードセンターで米 Red Hat 主催、世界 最大級のオープンソース・イベント「Red Hat Summit and JBoss World 2012」が開催さ れた。同イベントでは米 Red Hat の CEO ジム・ホワイトハースト、技術・開発部門長 EVP ポール・コーミア、CTO ブライアン・スティーブンスの講演をはじめ、180 にも及ぶテクニカ ルセッション、展示などを実施。「今、 ITもビジネスもかつての産業革命に匹敵するパラダイ ムシフトが起こっている」──。ホワイトハーストは自身の基調講演でそう言い切った。その 激しい変化の潮流を乗り切るためのカギは何なのか。その答えの一端を紹介していこう。 クラウドの登場は産業革命に匹敵するパラダイムシフトだ クラウドの登場は産業革命に匹敵するパラダイムシフトだ in Boston 産業の発展とともに 産業の発展とともに 価値のあり方は変遷している 価値のあり方は変遷している レッドハット最新レポート レッドハット株式会社 代表取締役社長 廣川裕司 講演 「急成長する OSS レッドハット RED HAT STORAGE オンプレミス・クラウド・ハイブリッドクラウド環境で 利用できるストレージソリューション Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2012 OPEN EYE 10 vol. 2012 SUMMER オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー ジム・ホワイトハースト 代表取締役社長兼CEO ジム・ホワイトハースト 代表取締役社長兼CEO Jim Whitehurst June 26-29 Opening keynote Opening keynote ユーザー事例 ユーザー事例 Success Story フルマネージドホスティングサービスの フルマネージドホスティングサービスの システム基盤に システム基盤にJBoss JBossを採用し収益性向上 を採用し収益性向上 みずほ情報総研株式会社 Red Red Hat Hat Storag Storage へのリプレイスで へのリプレイスで 増大する音楽データ格納の盤石化を図る 増大する音楽データ格納の盤石化を図る Slacker, Inc. ビジネスに即応するIT環境構築に ビジネスに即応するIT環境構築に JBoss Enterprise Middleware JBoss Enterprise Middlewareを採用 を採用 Sprint Nextel Corporation 開催レポート 開催レポート

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL ... · JBoss EAPの大幅な見直しを図った」と 語ったのは、ミドルウエアビジネス部門担 当副社長のクレイグ・モジラだ。Javaの最

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INDEXINDEX

Red Hat Summit and JBoss World 2012

「CloudForms」を提供開始 ほか★ NEW RELEASE ★

 「インフォメーション・エコノミー(情報経済)時代の今、価値があるのは物理資産ではなく情報資産。そして情報資産が企業の競争力を左右してい

ることを今一度認識するため、これまでの産業発展の歴史を振り返ってみたい」。 セッション冒頭こう語ったホワイトハーストは、世の中に最初に登場した産業である農業を例に説明を開始した。「1700年ごろ、世界の経済は

農業を中心に形成。土地の所有者が農作物を育てることで価値を創出し、利益を得ていました」とホワイトハーストは語る。しかし1750年に産業革命が起こり、工業の時代に入ると価値の源泉は一変する。土地を所有しても利益を得る

時代は物理資産よりも情報資産の方が大きな意味を持ち始めるという転換期にある

 2012年6月26~29日、米ボストンのワールドトレードセンターで米Red Hat主催、世界最大級のオープンソース・イベント「Red Hat Summit and JBoss World 2012」が開催された。同イベントでは米Red HatのCEO ジム・ホワイトハースト、技術・開発部門長EVP ポール・コーミア、CTO ブライアン・スティーブンスの講演をはじめ、180にも及ぶテクニカルセッション、展示などを実施。「今、ITもビジネスもかつての産業革命に匹敵するパラダイムシフトが起こっている」──。ホワイトハーストは自身の基調講演でそう言い切った。その激しい変化の潮流を乗り切るためのカギは何なのか。その答えの一端を紹介していこう。

クラウドの登場は産業革命に匹敵するパラダイムシフトだクラウドの登場は産業革命に匹敵するパラダイムシフトだ in Boston

産業の発展とともに産業の発展とともに価値のあり方は変遷している価値のあり方は変遷している

○ レッドハット最新レポート

レッドハット株式会社 代表取締役社長 廣川裕司 講演「急成長するOSSとレッドハット」 RED HAT STORAGEオンプレミス・クラウド・ハイブリッドクラウド環境で

利用できるストレージソリューション

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2012

OPEN EYE 10vol.2012 SUMMER

オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリーオープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

ジム・ホワイトハースト代表取締役社長兼CEO

ジム・ホワイトハースト代表取締役社長兼CEO

Jim Whitehurst

June 26-29

Opening keynote

Opening keynote

ユーザー事例ユーザー事例 Success Story

フルマネージドホスティングサービスのフルマネージドホスティングサービスのシステム基盤にシステム基盤にJBossJBossを採用し収益性向上を採用し収益性向上

みずほ情報総研株式会社

RedRed HatHat StoragStorageへのリプレイスでへのリプレイスで増大する音楽データ格納の盤石化を図る増大する音楽データ格納の盤石化を図る

Slacker, Inc.

ビジネスに即応するIT環境構築にビジネスに即応するIT環境構築にJBoss Enterprise MiddlewareJBoss Enterprise Middlewareを採用を採用

Sprint Nextel Corporation

開催レポート

開催レポート

Red Hat Summit and JBoss World 2012

ことができず、破産する農家が続出したのである。利益を上げたのは、鉄道や農耕機械や土木機械のメーカーたち。つまり「価値の源が農業から産業経済へと移動」したのだ。

 しかし15年ほど前から、その状況もいよいよ変わってき

た、とホワイトハーストは続ける。「例えば今、農業では衛星画像を用い、作物の生育状況や差異的な収穫時期を予測したりすることで、高品位な作物づくりが進められています。

つまり情報コンテンツが産業資産の方向付けを行うようになり、産業資産そのものよりも高く評価されるようになってきたのです」。 農業だけではない。金融業界、小売業界でも同様のことが起こっているとホワイトハーストは指摘する。銀行にとって重要なのは資産の保持と信頼性の確保である。銀行の業務のひとつであるオンライン上で預け入れられた資金を貸し出すというトランザクションを大量に処理する業務は、信用によって成り立つ情報ビジネスそのもの。またもうひとつの「融資およびプライシング業務」では、ビッグデータを活用することでリスクを回避し、資産の保持と信頼性の確保へとつなげている。つ

まり銀行の業務そのものが情報ビジネスへとシフトしているのである。小売業においても、どの商品をどの地域に配置するのか決定するカギを情報が握っている。

 「より効率的なビジネス運営を実現するため、あらゆる産業や業界における価値が、物理資産から情報資産へと移動していることがこれらの例からもわかるでしょう」。

 変化しているのは経済だけではない。IT業界においても、「産業革命と同等の変化が起こっている」とホワイトハーストは語る。 産業革命は1810年に英国の技術者であり発明家でもあるヘンリー・モーズリーが、最初の自動旋盤を生み出したことをきっかけに、一気に加速した。自動旋盤により、ボルトとナットの標準化を実現したからだ。人は、一度標準化されたパーツを手にするともうパーツの事を考える必用はなくなり、そのパーツで何を作るのかだけを考えればよくなる。 「モーズリー以前の部品は規格化されておらず、その都

度、職人が独自のボルトとナットを作って機械を組み立てていました。したがって機械が壊れると、そのたびにボルトとナットを新たに作ってもらわなければならなかったのです。このような状態では爆発的な産業革命は起こりえません。部品の標準化は、次のイノベーションを導く、最も重要な要素だったのです」。

より効率的なビジネスの実現には、物理資産ではなく情報資産が価値を持つ

物理資産よりも情報資産が物理資産よりも情報資産が大きな価値を持つ時代に大きな価値を持つ時代に

コンピュータコンピュータが登場して60年が登場して60年変化が起こっているワケ変化が起こっているワケ

2 OPEN EYE

Success story for your business

ブライアン・スティーブンスCTO

クレイグ・モジラミドルウエアビジネス部門担当副社長

Brian Stevens

 今回のテクニカルセッションで語られたのは、レッドハットのクラウド対応への強化策。 CTOのブライアン・スティーブンスは

IaaS管理フレームワーク「CloudForms」と開発者向けPaaS「OpenSh i f t」を紹介。前者は「Red Hat Enterpr ise Virtualization」のほか、「Amazon EC2」「vCenter」「OpenStack」などの異なるクラウド環境を統合管理できるという製品。「これによりロックインしないクラウド環境が構築できる」とスティーブンスは語る。後者の「OpenShift」はJBoss Enterprise Application Platform(JBoss EAP)、JBoss Application Server、Jenkins Server、Ruby on Rails、Node.jsを標準で用意、MySQL、PostgreSQL、MongoDBというデータベースも利用可能という

PaaS。「OpenShiftはオープンソースとして公開している。無料コースも用意しているので、ぜひ使ってみてほしい」とスティーブンス。 「クラウドサービスへの適用を考え、JBoss EAPの大幅な見直しを図った」と語ったのは、ミドルウエアビジネス部門担当副社長のクレイグ・モジラだ。Javaの最新バージョンEE6に対応したことで、Java Servlet3.0やJavaServer Faces2.0などの機能が利用可能になる。さらにモジラは2012年6月にリリースしたKVS(キーバリューストア)「JBoss Data Grid」、7月18日より最新版が提供開始されたビジネス

ルール管理ツール「JBoss BRMS」などを紹介。JBoss Data Gridを開発した理由について「JBossと統合されることは、煩雑さが軽減できるなど、ユーザーにとってメリットが大きいと考えたからだ」と明かす。 このように今回は、レッドハットのクラウド対応強化への本気度を参加者に伝えるイベントとなった。

ロックインしないクラウド環境の構築を目指しOSSが続々と登場

○ KeynoteCraig Muzilla

BOSTON, JUNE 26-29, 2012

 歴史的には産業革命が始まったのは1750年ごろからとされているが、それから約60年経って標準化されたナットとボルトを手に入れたように、コンピュータが登場して約60年経った今、クラウドコンピューティングに欠かせない、標準化された部品を手に入れることができるようになった。「今まさに、情報革命が起こっているのです」とホワイトハーストは強調する。

 情報経済の発達は経済にどんなインパクトを与えたのか。そのひとつが「取引コストの削減です」とホワイトハースト。最も身近な例としてホワイトハーストがあげたのは App l e のApp Store。従来、PCにアプリケーションをインストールするには、家電量販店などでアプリケーションを購入する必要があったが、App Storeであれば、インターネットに接続してダウンロードするだけで手に入る。しかも価格は安い。 「IT企業の市場への提供の仕方、コストの掛け方が根本的に変わってきています。製品を市場に出すまでに必要なコストも減少しているのです。そしてもっとも興味深いと感じているのは、その変化の一端をオープンソース・コミュニティが担っているという点です」 ワクワクするようなイノベーションは、従来からの階層構造の組織や企業からではなく、ソーシャルネットワークのような緩やかだけど密につながったオープンなネットワークから生み出されているとホワイトハーストは言うのだ。そんなネットワークで開発されたオープンソースソフトウェア(OSS)もITの世界にイノベーションを起こしつつある。 いま破竹の勢いのFacebookをはじめ、今後登場するであろう革新的なベンチャーが選択する技術は、WindowsやSolarisのようなプロプライエ

タリ・ソフトウェアではなくOSSとなるはずだ。それを表しているかのように、米Red Hatは昨年初めて年間売り上げ10億ドルを達成した。「これはオープンソースがメインストリームになりつつある証。次世代のITは間違いなくOSSがデフォルトの選択肢になるはずです」とホワイトハーストは力強く語る。そして多くの人が使い、多くの人がOSSのエコシステムに参加することで、OSSはさらに良いものへ進化していくというのである。

 コンピューティング・アーキテクチャは今まさに、パラダイムシフトの真只中にある。そしてこのパラダイムシフトは ITのビジネスモデルをも変えていく可能性を秘めている。 標準化されたナットとボルトが登場した時、モーズリーが特許を主張していたらどうなっていたか。「おそらくジェットエンジンのようなイノベーションは今なお登場していなかったかもしれない」とホワイトハーストは言う。

 これはコンピューティング・アーキテクチャにおいても同じことが言える。つまり真にハイブリッドなオープンアーキテクチャにするのか、Microsoftのようなプロプライエタリでいくのか──。私たちは決断すべき時にきており、その決断はおそらく前者にすべきである、とホワイトハーストは示唆しているのだ。もちろん、新しいITのアーキテクチャもビジネスモデルも既に完成されているわけではない。 「当社は設立当初からアーキテクチャのオープン化、標準化、コモディティ化の重要性を多く説いてきましたが、まだ完成したわけではありませ

ん。だからこそ、私たちはこの戦いにこれからも全力で挑んでいきます」。

 ユーザーも変化しつつある。これまでのユーザーはITベンダーのイノベーションをただ消費しているだけだったが、今は違う。その例としてホワイトハーストが挙げたのがビッグデータの活用のための技術である。 「A p a c h e H a d o o p やM o n g o D B 、A p a c h e Cassandraというビッグデータを処理する主要なコンポーネントはすべてOSSです。このようなことは5年前にはなかったこと。これは大きな変化です」。 このユーザーの変化により、ベンダーやパートナーの役割も変わりつつあるという。これまでユーザーは、信頼できるロードマップを描くパートナーやベンダーを選択していた。したがってITベンダーも素晴らしいCTOやスタッフを揃え、華々しいロードマップを描いて顧客の関心を誘ってきたのである。しかし今後は、Hadoopのようにより多くのイノベーションがOSSから生まれるようになる。その世界では「ユーザーはITベンダーのビジョンやロードマップが素晴らしいから、との理由ではなく、コミュニティの堅牢性や足跡を調べて投資をする。GoogleやAmazonなどの大規模データセンターで利用されているという実績からLinuxの採用が広がったように」。

 産業革命が標準化されたボルトとナットで爆発的進化

を遂げたように、クラウド環境を実現するパーツも整備されつつある。しかしホワイトハーストは「クラウドの物語はまだ半分しか進んでいない。これからが本番。自動旋盤が生まれて100年後に飛行機が空を飛んだように、標準化されたそれらのパーツを使うことで、飛行機に匹敵するイノベーションがきっと生まれてくるはず。その歴史を

つくる一端を私たちレッドハットが担っている。それが私たちにとって喜びなんです」と力強く語る。 さらに続けて「私たちが手がけている製品はまさにそれらの標準化されたパーツです。それらのパーツを活用して私たちの経済をさらに活性化するような何かを生み出してくれる。そんな日が遠からずくる。そんなワクワクする歴史をともに作っていきましょう」と、講演を結んだ。

エンタープライズシステムのアーキテクチャはオープンソースが

メインストリームになる

情報経済の発展が情報経済の発展が経済に与えたインパクト経済に与えたインパクト

ITのパラダイムシフトによりITのパラダイムシフトによりビジネスモデルも変わるビジネスモデルも変わる

ユーザー主導によるユーザー主導によるイノベーションの最前線イノベーションの最前線

クラウドの物語はまだ道半ば。クラウドの物語はまだ道半ば。これからが本番これからが本番

OPEN EYE 3

Red Hat K.K. EDITORIAL 2012

日本レッドハットユーザー会のCEO他企業TOPのメンバー約50名強が参加

 みずほフィナンシャルグループのIT戦略を担うみずほ情報総研。同グループで培った技術と信頼を武器に、コンサルティング、システムインテグレーション、アウトソーシングを3本柱とし、ITをコアテクノロジーとしたトータルソリューションを展開している。 インフラ構築業務推進部 ホスティングサービスチームが提供している「TEXIV」は、ミドルウェアまでを標準的に提供・運用するPaaS基盤。みずほフィナンシャルグループをはじめ、業種・業界を問わず国内のさまざまな企業の情報システム運用および活用を支援するソリューションのひとつとして、数多くの企業・機関に提供されている。現在、更改に向けて新基盤を構築中であり、2013年1月のリリースを予定している。 TEXIV運用を担当するみずほ情報総研株式会社 インフラ構築業務推進部 ホスティングサービスチーム システムエンジニア 小林拓史氏は次のように語る。 「同サービスの提供が始まったのは2003年。2008年には現在の基盤が構築されたのですが、時の経過とともにさまざまな課題が出てきました。その中でも最重要課題だったのが運用コストの最適化です。運用コストの最適化は収益性の向上が期待できるだけではありません。コスト削減による顧客への還元も可能です。まずはコストを最適化する方法について検討を始めることにしました」。

 「厳しい経済環境が続く中、国内企業の多くがITコストの削減を図っています。私たちにとってもTEXIVにかかる運用コストをいかに低減するかは大きな問題でした。従来使用していた商用APサーバのライセンス料も検討すべき項目のひとつに挙げられました。なぜなら実際のサポート期間よりも短いサイクルでの望まないバージョンアップが必要だったからです。そこで従来使用していた商用APサーバの代替手段はないかと検討することになったのです」(小林氏)。 TEXIVを構成している技術はリリース後しばらくして安定したバージョンを使用するので、「製品サポート期間がどうしても短くなってしまう」と言うのは、インフラ構築業務推進部 ホスティングサービスチーム システムエンジニアの中嶋加奈子氏。 より高いコストパフォーマンスを持ち、より長持ちする代替製品はないかと、いろいろ検討した結果、候補に上がったのがレッドハットのオープンソースミドルウェアJBoss En t e rp r i s e App l i c a t i on Platform(以下、JBoss)だった。

 TEXIVはエンタープライズ向けホスティングサービスの基盤。「何よりも、安定・安心して使える基盤を構築できるかが重要となります。その点も踏まえ、JBossが本当に従来使用していた商用APサーバの代替として使えるのか、検証をすることにしました」と小林氏。

 2010年秋よりJBossの機能検証を開始。その結果「例えば従来使用していた商用APサーバの管理コンソールはGUIベースとなっており、作業性も良い。しかもクラスタ環境を一元的に管理できるというメリットがあります。一方、当時のJBossは、設定・管理が主にコマンドベースで、GUIベースの管理と比較すると運用作業性はわずかですが良くありませんでした。とはいえそれ以外の機能では、従来使用していた商用APサーバとそん色がありませんでした」と中嶋氏。 実は中嶋氏が指摘した コマンドベースの管理という点について、「新規にアプリケーションサーバを構築する際には、JBossでは一から構築するのではなく、TEXIVの基本となる設定ファイルを用意しておけば、一部を書き換えるだけでいいので、横展開が容易にでき、むしろメリットに転じました。また次バージョンでGUIの管理コンソールが改善されるので、今後は特に問題にはならないと思います」と小林氏は明かす。

 これはいける──そう確信したインフラ構築業務推進部では従来使用していた商用APサーバの代替にJBossの採用を決定。実は検証を始めた当初、同部所属のエンジニアの中に、JBossの有識者はいなかったという。 「まずはセミナー、研修に参加しました。そしてレッドハットのJBoss Enterpr ise Appl icat ion Platformの開発用サブスクリプションを手に入れ、サポートを利用することにしました。レッドハットの手厚いサポートがなければ、JBossの採用は難しかったかもしれません」と中嶋氏。

 年々、変化が激しく厳しいビジネス環境においてはIT基盤の構築がカギを握っている。みずほ情報総研では、フルマネージドホスティングサービス「TEXIV」の基盤を刷新するにあたり、従来使用していた商用APサーバをレッドハットの「JBoss Enterprise Application Platform」に置き換えることで、運用コストの削減を実現。その効果はサービス料の低減を可能にし、顧客のメリットとして還元されるようになった。

フルマネージドホスティングサービフルマネージドホスティングサービス「TEXITEXIV」のシステのシステム基盤を商ム基盤を商用APサーバPサーバからJBosJBossへ。運用コストを大幅削減し運用コストを大幅削減し、収益性を向上収益性を向上

背景

顧客メリットの増大顧客メリットの増大および収益性の向上を図るため、および収益性の向上を図るため、TEXIVTEXIVの運用コストを低減したいの運用コストを低減したい

課題

商用アプリケーションサーバの商用アプリケーションサーバのライセンス料の高さとサポート期間の短さライセンス料の高さとサポート期間の短さ

システム要件

安定・安心して使え、従来使用していた安定・安心して使え、従来使用していた商用APサーバ同等の機能を有していること商用APサーバ同等の機能を有していること

JBossを選んだ決め手

従来使用していた商用APサーバと従来使用していた商用APサーバとそん色ない機能とサポートの手厚さそん色ない機能とサポートの手厚さ

01 背景

基盤構築のプロセスと効果

02 課題 03 システム要件 04 JBossを選んだ決め手

顧客メリットの増大および収益性の向上を図るため、TEXIVの運用コストを低減したい

商用アプリケーションサーバのライセンス料の高さとサポート期間の短さ

安定・安心して使え、従来使用していた商用APサーバ同等の機能を有していること

従来使用していた商用APサーバとそん色のない機能とサポートの手厚さ

・TEXIVの運用コストを下げることで、顧客への還元を図りたい

・景気が改善しない中、多くの企業でITコストの削減が急務

・従来使用していた商用APサーバにかかるライセンス料の問題

・なるべく長持ちするシステム基盤の構築

・従来使用していた商用APサーバと同等の機能を有していること

・コストが削減でき、安定・安心して使える製品であること

・従来使用していた商用APサーバとそん色のない機能を網羅

・レッドハットによる手厚いサポートの用意

4 OPEN EYE

Success story for your business

ユーザー事例事例Success Story

みずほ情報総研ホスティング基盤構築

 JBossの本番運用を開始したのは2011年。その新しい基盤に移行したアプリケーションは、金融ソリューション第3部が運用しているコンプライアンス関連のアプリケーションだった。 「当部においても運用コストの削減は大きな業務課題となっていました。OSSの採用によりコストが下がるのは嬉しいのですが、正直、本当に大丈夫なのか、最初は不安でした。しかし従来基盤とパフォーマンスを比較してみると、その不安は杞憂だったことがわかりました。応答時間については従来基盤と比べるとほぼ同等レベルだったのです」と、金融ソリューション第3部 第1チーム チーフシステムエンジニア 栗原政宏氏は言う。 そして栗原氏は次のように付け加えた。 「アプリケーションを改修することなく、全機能テストのみで移行できました。従来使用していた商用APサーバ固有の機能を使用せず、標準的な開発手法を採用していたのが幸いしたのだと思います。したがってJBossに関しては当初想定工数よりも少なく、その分新環境上でのテスト等へ体力を割くなど、品質向上に向けた対策に十分な時間を取ることが可能となりました」。 2012年4月よりコンプライアンス関連のアプリケーションはTEXIV上で本番稼働を開始。「大きな問題もなく安定稼働しています」と栗原氏は満足そうに語る。しかも新環境に移行したことで、運用コストの削減も実現。 「今回の新環境への移行ではOSSの採用を始めとし、従来基盤からシステム構成およびTEXIV運用

サービスを含め抜本的な見直しを行いました。その結果、従来の20~25%を削減することができました」(栗原氏)。

 運用コストが下がることに伴い、同部ではサービス料の価格体系を見直したと言う。既存顧客に対する満足度の向上を可能にするだけではなく、新規顧客を獲得するトリガーにもなりうると判断したのだ。 「新環境への移行と同時にサービス料を減額することにしました。お客さまにこれまで以上に使ってもらうためのよいアピールになるのではと期待しています。私たちの運用コストが下がるだけではなく、お客様の利用料も下げることができて、とても嬉しいですね」(栗原氏)。

 インフラ構築業務推進部においても、コスト削減以外にJBossで得られた効果はある。 従来使用していた商用APサーバのライセンスはハードウェアにひもづけられていたが、JBossはサブスクリプションを購入すれば、どのサーバでも稼働できるからだ。TEXIVは仮想環境で運用しているため、サーバリソースの有効活用が可能になる。仮想化のメリットも得られ、「システムに柔軟性が生まれた」と小林氏は語る。 現在、JBossで稼働しているアプリケーションは3つだが、今後受け入れる案件についてはJBossで構

築していくという。 「今後TEXIV基盤を更改するにあたり、従来のTEXIVで稼働しているアプリケーションも、順次移行のタイミングでJBossに乗せ替えていく予定です」(小林氏)。

 みずほ情報総研では、JBossのみならず、OSSを今後も積極的に検討していくために、部門間で情報共有する場を設けている。それは技術企画部が主催する「技術交流会」である。技術企画部 技術企画チーム システムエンジニア 中村浩二氏はこう説明する。 「日ごろ、あまり交流がない社内の複数の部署が集まり、お互いのサービス内容や業務背景の理解の深堀、技術者同士のチャネル強化を目的として、部門を超えて情報共有するための会合です。弊社ではOSSの中でも特にJBossへの取り組みが進んでおり、2011年度には、インフラ構築業務推進部を含む複数の部署間でJBossへの取り組み事例紹介や他のOSSに関する情報交換をする場を設けました。技術交流会で使用した資料や議事録は、社内のSNSや掲示板などで紹介するなど、社内におけるOSSのプレゼンス向上に繋げています」。 みずほフィナンシャルグループのビジネスをITの面から支援するみずほ情報総研。 「JBossだけではなく他のOSSに関しても、安定・安心して使え、サポートが手厚いものがあれば、ぜひ試してみたい。そのためにもレッドハットにはドキュメントやセミナーのさらなる充実と、引き続きOSS業界をリードしていってくれることを期待します」(小林氏)。

レッドハットへの期待

ドキュメントやセミナーの充実でドキュメントやセミナーの充実でOSS業界をリードしてほしいOSS業界をリードしてほしい

05 JBossを導入したメリット 1 06 JBossを導入したメリット 2 JBossを導入したメリット 307 08 レッドハットへの期待

JBossを導入したメリット 1

アプリケーション運用コストをアプリケーション運用コストを従来より20~25%削減を実現従来より20~25%削減を実現

JBossを導入したメリット 3

ライセンス料から開放され、ライセンス料から開放され、IT資産の有効活用が可能にIT資産の有効活用が可能に

JBossを導入したメリット 2

ASPサービス料のASPサービス料の価格体系を見直し、顧客にも還元価格体系を見直し、顧客にも還元

アプリケーション運用コストを従来より20~25%削減を実現

ASPサービス料の価格体系を見直し、顧客にも還元

ライセンス料から開放され、IT資産の有効活用が可能に

ドキュメントやセミナーの充実でOSS業界をリードしてほしい

・従来使用していた商用APサーバ固有の機能が未使用だったため、アプリケーションを改修することなく移行・アプリケーションの運用コストは従来の20~25%に低減

・サービス料の減額を実現し、顧客満足度を向上

・新規顧客獲得への期待

・ハードウェアにひもづいたライセンス料から開放・仮想化のメリットも享受、システムに柔軟性が生まれた

・JBoss以外にも要件に見合うOSSがあれば積極的に検討

・各部署がOSS採用に前向きになる風土作りも大切な要素

DシステムCシステム

Bシステム

B社一般ユーザ Aシステムを利用

Aシステム

C社 D社

TEXIV管理者・運用者管理・運用

バックアップSAN

RHEL

WEB

FWFW

Internet

VMware

RHEL

AP

VMware

RHEL

DB

VMware

Bシステムを利用 Cシステムを利用 Dシステムを利用

共有ストレージ 隔地保管

中嶋 加奈子 氏

みずほ情報総研株式会社インフラ構築業務推進部ホスティングサービスチームシステムエンジニア

小林 拓史 氏

みずほ情報総研株式会社インフラ構築業務推進部ホスティングサービスチーム システムエンジニア

OPEN EYE 5

Red Hat K.K. EDITORIAL 2012

▼ TEXIV概要図

 アメリカ、カナダでインターネットラジオ&音楽配信サービス「Slacker Radio」を提供しているSlacker社。同サービスを提供するため、同社では大量の音楽トラックをそれぞれ9つの異なるフォーマットに変換し保存している。 これまでSlacker社では、2つのストレージアレイで1ペタバイト(PB)以上のRAWストレージを管理してきた。2つのストレージのうち容量が大きい方のアレイには、レーベルから送られてきた280テラバイト(TB)のマスタファイルを保存。もう一方は音楽配信用として、160TBの変換済みオーディオデータを保存していた。しかしサービスの成長に伴い、かつてないペースで音楽ライブラリが増加。そのたびにSlacker社ではサービスのパフォーマンスを下げないよう、ストレージに相当の投資を行ってきたという。 「ここ数年は6カ月から9カ月で、平均約60TBのデータがコンスタントに増え続けていたんです。ストレージを追加したいと思っても、すぐに予算の枠を超えてしまうため、追加が難しい。この問題を解決するため、私たちが求める信頼性を実現しつつ、費用対効果に優れ、容易な運用を可能にするストレージ・ソリューションを探すことにしたんです。2008年初頭のことでした」(Slacker Inc.「Slacker Radio」担当エンジニア Liam Slusser氏)。

 既存のストレージ・システムとの親和性が確保でき、コストを削減できるストレージ・ソリューションはないか。そこで「目をつけたのはOSSのストレージ・ソリューションだった」、とSlusser氏は振り返る。しかし多くのOSSソリューションのファイルシステムは運用に手間がかかることに加え、既存のアーキテクチャにも多くの変更を加える必要があった。 「可能性のあるソリューションをすべて調べましたが、なかなか私たちの求めるものには出合えませんでした。そんな中で唯一、いけると感じたのが『Red Hat Storage』です。その他のソリューションのように運用に手間もかかることはありません。しかもLinuxの知識があれば誰もが容易に扱うことができる。これしか選択肢はないと思いましたね」。

 数カ月の検証期間の後、Red Hat Storageの採用を決定。現在Slacker社では、440TBのストレージをSupermicro製シャーシとSeagate製デスクトップ・ハードディスク・ドライブを組み合わせた2つのアレイを構成、運用している。

 Red Hat Storageの採用により得られた効果は何か。第一は同ソリューションが備えた柔軟なスケーリング機能により、よりスピーディかつ効率的にファイルの追加や取り出しが行えるようになったこと。第二はリスナーの継続的な視聴や新しく追加された音楽へのリクエストなどのサービス品質の向上である。「これでリスナーに対して24時間365日、サービスが提供できるようになりました」とSlusser氏は評価する。 「すべてのリスナーにとって、ベストなリスニング環境を提供できるようにするのが、私たちのゴールです」。Red Hat Storageは容易なファイル管理機能を実現しているのに加え、高い信頼性も提供してくれる。しかもコストを従来の80%に削減、金額にすると50万ドル節約できたという。「予算内で私たちの成長を支えてくれる理想的なシステムが構築できました」。 Red Hat Storageの良さはそれだけではない。セキュアでシン・プロビジョニング(実際に割り当てる物理ディスクの容量を削減できる技術)が可能で、マルチテナントに対応したスケールアウト型のストレージ・システムも容易に構築できる。しかもユーザインタフェースはシンプルで操作性も良好だ。 「Red Hat StorageはLinuxの利用経験があれば、すぐ使えます。したがって追加のトレーニングや専門の人材を用意する必要はありません。これらのこともコスト削減につながっているんです」とSlusser氏は続ける。削減されたコストはネットワークやサービスのアップグレードなど、他の主要な基盤環境を強化するために使われるという。 「かつてはITコストのうち、一番多くを占めていたのがストレージのコストでした。しかし今ではそのコストが一番低くなりました。しかもビジネスの成長に合わせて柔軟に容量を増やすこともできます。このようにRed Hatは、私たちに言葉にできないほどの驚きと感動を与えてくれたのです。まさしく私たちのビジネスの成長を支援してくれるソリューションです」。

■■導入ソリューション・Red Hat Storage

■導入ハードウェア・Supermicro製シャーシ・Seagate製デスクトップHD

 Red Hat Storageを選択したことで、コスト

を80%も削減し、かつより良いストレージ環

境を手にすることができ、満足しています。

 2007年に米国で設立。現在北米で3000万人のリスナーを有するインターネットラジオ「Slacker Radio」の運営会社。無償の「Slacker Basic Radio」のほか、2つの有償モデルをラインナップ。複数のスマート端末で利用できる「Slacker Radio Plus」。そして、より高度な機能がついている「Slacker Premium Radio」。同サービスはMP3プレーヤーのように好きな曲を保存し、自分好みのプレイリストが作成できる。シンプルな操作性、パーソナライゼーションの精度の高さが魅力となり多くのリスナーを獲得している。

 インターネット・ラジオ・サービス「Slacker Radio」を手がけているSlacker社では、増え続ける音楽データを格納するため、ストレージへの投資コストが急増、予算内に収まらなくなってきていた。その問題を解決するため、採用したのがRed Hat Storageである。従来のストレージ環境をRed Hat Storageでリプレイスしたことにより、それまでかかっていたコストを80%も削減。しかも従来以上のパフォーマンスとスケーラビリティも確保。リスナーへのサービス品質も向上するなど、Red Hat Storageは同社のビジネスの成長を強力にサポートしている。

Slacker Radio担当エンジニア

Liam Slusser 氏

日々増え続ける音楽データを格納する日々増え続ける音楽データを格納するストレージストレージ・システシステムにムにReRed d HaHat t StorageStorageを採用を採用。急成長するインタ急成長するインターネット・ラジラジオ・ビジビジネスネスをサポサポート

スケーラビリティに優れスケーラビリティに優れ安価なストレージ環境を手に入れたい安価なストレージ環境を手に入れたい

Slacker, Inc.Slacker, Inc.

運用の容易性にひかれ運用の容易性にひかれRed Hat Storageを選択Red Hat Storageを選択

大幅なコスト削減とともに大幅なコスト削減とともにリスナーへのサービス品質向上を実現リスナーへのサービス品質向上を実現

6 OPEN EYE

Success story for your business

 米国内でいち早く4Gサービスを提供するなど、同社のコアビジネスである通信業では常に先進的な取り組みをしてきたSprint Nextel Corporation(以下Sprint)。しかし同社の主要なビジネスを支援するアプリケーションについては、2011年までプロプライエタリなミドルウェア・プラットフォーム(Orac le WebLogicおよびIBM WebSphere)にロックインされていた。最も問題だったのは、コストがかかること。高額なライセンス費用に加え、保守やサポートにコストがかかってしまうため、ビジネスに即したIT戦略を立案できなかったのである。しかも複数あるこれらのミドルウェア製品は導入時期によりバージョンもバラバラで、最新の状態に保つのも困難だったという。 「すでにサポートが終了しているバージョンのWebSphereやWebLogic上で稼働しているアプリケーションが複数ありました」。 こう当時を振り返ったのは、SprintのITミドルウェア担当ディレクター Jamie Wil l iams氏。そこでSprintは、既存のミドルウェア環境をすべて最新バージョンにアップグレードするか、ミドルウェア・プラットフォームを一新し標準化する、という二択を迫られることになった。 同社の結論は「多種多様なビジネスアプリケーションを実現する柔軟性を備え、かつ標準化した方法で容易にソフトウェアを最新に保つことができるオープンスタンダードな技術を探す」だった。 「アプリケーションサーバをスタンドアローンの物理サーバから仮想環境へ、プロプライエタリなOSからLinuxへ、そしてプロプライエタリなWebサーバからApacheへの移行を検討しました」。

 念入りな調査と概念実証を経て、Sprintは新たなミドルウェア・ソリューションに「JBoss Enterprise Application Platform(JBoss EAP)」、OS環境に「Red Hat Enterprise Linux」を採用し、2011年4月よりマイグレーションを開始した。その際、同社ではRed Hat Consultingを利用したという。 今回、同社がマイグレーションするアプリケーションは100以上。しかもプロジェクト・スコープはセール

ス、人事、財務、IT、エンジニアリングを含め、同社のすべてのビジネス領域に及んでいた。ベンダーロックインをなくしつつ、アプリケーションのポータビリティ性、アーキテクチャの柔軟性と信頼性、そして優れたパフォーマンスを確保するにはどうすればいいか、Red Hat Consultingがそのノウハウを伝授した。 「Red Hat Consultingの協力のもとに、私たちはエンタープライズ・アーキテクチャ・フレームワークというアプリケーションの標準規格を作成。これにより、柔軟かつベンダーにロックインされない環境が構築できました」。 現在、Sprintではビジネス・クリティカルおよびミッション・クリティカルな57個のアプリケーションのマイグレーションを完了。同時にスタンドアローン・サーバからRed Hat Enterprise Linux上で稼動する仮想マシンへ、従来のプロプライエタリなWebサーバをオープンソースのApache Webサーバへの移行も完了した。

 既存のミドルウェア環境をJBoss EAPにリプレイスしたことにより、同社では年間400万ドルの削減を見込んでいる。効果はそれだけではない。標準化された実装方法と管理ツール「JBoss Operations Network」の導入により、開発者をはじめミドルウェア管理者、サポートスタッフの業務が効率化されたのだ。 「金銭的、および人的コストも削減されたことで、ビジネスのニーズに応えられるより多くのITプロジェクトに取り組めるようになった」とWilliams氏。 またWilliams氏はマイグレーションがスムーズに進行した理由を、もうひとつ明かしてくれた。それは「Red Hat Training」の利用だという。Red Hat Trainingでは複数のJBoss Enterprise Middlewareに関するコースが提供されている。 「プロジェクトの早い段階でこれらのトレーニングを終えたため、私たちはマイグレーションに必要な知識と自信を得ることができたのです」。 最後にWilliams氏は、今回のマイグレーションにより同社が得たものは単にコスト面でのメリットだけではなく「ミッション・クリティカル・システムの基盤環境を標準化できたことにより、開発者の生産性も向上、さらにビジネスの変化に俊敏に対応できる柔軟なIT環境が実現しました。今後、さらなる満足度向上につなげていきたいですね」と強調した。

■■導入ソリューション・Red Hat Enterprise Linux・Red Hat Consulting・Red Hat Training ・JBoss Enterprise Application Platform ・JBoss Operations Network

 オープンソース・スタンダードをベースに環境を構築したので、コストを抑えながらミドルウェア・プラットフォームを拡張することが可能になり、ビジネスのためのアプリケーション開発に注力できるようになりました。

 2004年にSprintがNextelを買収して発足。法人、個人、政府機関に向け、有線および無線サービスを包括的に提供している通信事業者。2012年第2四半期末時点の顧客数は5600万人。米国では業界初のワイヤレス4Gサービスを提供するなど、業界を常にリード。モバイルデータサービスやVirgin Mobile USAやBoost Mobileなどのプリペイド携帯電話サービス、国内外で利用可能なプッシュ・ツー・トーク(トランシーバー型通話サービス)サービス、インターネット接続事業も展開している。米国品質協会の産業別顧客満足度調査(American Customer Satisfaction Index)によると、通信事業者分野で第1位を獲得、また過去4年間で、全業種内で最も満足度指数が向上した企業としても位置づけられている。

 プロプライエタリなミドルウェアを採用していたため、ライセンス費用と保守コストがIT予算の大半を占め、戦略的なIT投資ができないという課題に直面していたSprint Nextel。その問題を解決するため同社では、ミドルウェア・プラットフォームに「JBoss Enterprise Application Platform」の採用を決定した。さらに、OSやアプリケーション・サーバ、WebサーバもすべてOSSに刷新。これにより大幅なコスト削減と運用にかかっていた手間を大きく削減した同社では、これまでなかなかできなかったビジネスに即応するIT戦略に注力ができるようになった。

Sprint NextelITディレクター

Jamie Williams 氏

多大なコストがビジネスに則した多大なコストがビジネスに則したIT戦略を阻害していたIT戦略を阻害していた

ベンダーにロックインされないベンダーにロックインされない次世代ITプラットフォームを構築次世代ITプラットフォームを構築

ビジネスの変化に俊敏にビジネスの変化に俊敏に対応できる柔軟なIT環境を実現対応できる柔軟なIT環境を実現

SpSpririntがプロプライエタリなミドルウェアをがプロプライエタリなミドルウェアをJBoss Enterprise MiddlewareJBoss Enterprise Middlewareで刷新。で刷新。ビジネビジネスに即応できる柔軟スに即応できる柔軟なIT環境を構築環境を構築

Sprint Nextel CorporationSprint Nextel Corporation

OPEN EYE 7

Red Hat K.K. EDITORIAL 2012

レッドハットNEWS

★ NEW RELEASE ★

7.18

7.24

2012.7.31

8.1

8.2

レッドハット、BPMとCEP機能を統合したビジネスルール管理のプラットフォーム、「JBoss Enteprise BRMS 5.3」を提供開始

レッドハット、オープンソースのインメモリ・データグリッド製品 、「JBoss Data Grid 6.0」を提供開始

レッドハット、クラウドでの利用に最適化したJava EE6完全対応のアプリケーション基盤「JBoss Enterprose Application Platform 6.0」を提供開始

レッドハット、JBoss Enterprise Application Platformのサポートを最大10年に延長

レッドハットが日本市場向けに「CloudForms」を提供開始

Other TOPIC

 レッドハットは、非構造化データの管理向けスケールアウト型オープンソースストレージソフトウェアソリューション「Red Hat Storage Server 2.0」を7月25日より提供開始した。同製品は、標準的なx86サーバと組み合わせることで、分散型のスケールアウトストレージをオンプレミス、クラウド、またはハイブリッドクラウド環境に構築できるという。 現在多くの企業では、爆発的に増加している非構造化データを適切に管理する課題に直面している。従来のストレージソリューションではコストパフォーマンスやスケーラビリティの観点で解決が難し

かった。これを解決するのが、「Red Hat Storage Server 2.0」だ。分散型のスケールアウトストレージである同製品を活用することで、専用ストレージと比較し3分の1のコストを実現する。 テクニカルプレビュー版として、Apache Hadoop環境もサポート。Hadoop Distributed File System(HDFS)と組み合わせて併用するか、またはHDFSの代替えとして使用できる。Hadoop環境において、ファイルベースまたはオブジェクトベースのアプリケーションに対して、より高速なファイルアクセスによるデータ提供が実現できるという。

 レッドハットはエンタープライズ向けのハイブリッドクラウドソリューション「Red Ha t CloudForms」を、7月31日より提供開始した。同ソリューションは、IaaS型のハイブリッドクラウドを構築・管理するためのプラットフォームで、「オープンハイブリッドクラウドの構築と管理」「複数の仮想化テクノロジとパブリッククラウドに渡るアプリケーションの展開と管理」「幅広

いベンダのツールおよびソフトウェアの利用」「エンドユーザーに対するセルフサービス機能の提供」という特徴を持つ。これにより、オンプレミスに展開された複数の異なる仮想化やプライベートクラウド、及びパブリッククラウドが統合され、オープンなハイブリッドクラウドが構築できる。クラウド上のアプリケーションも含めたベストなリソース管理が可能になるという。

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 GDP世界3位の日本。しかしICT市場は縮小。しかも世界経済フォーラムが発表した『The Global Informat ion Technology Report 2012』の国際 ICT競争力順位は18位と低迷している。ICTの中でも特に競争力がないのが、ソフトウェア分野である。「日本のICT産業の競争力向上は、ソフトウェアの競争力を改善していくことだ」と廣川は指摘する。

 日本がICT先進国になるには、廣川は「第一に少子高齢化で縮小する国内市場ではなく、グローバル市場に通用する製品・技術に集中すること。第二は国内に特化した製品や技術から徹底した国際標準化で価値を生む技術・人材にシフトする。第三はソフトウェアの立ち遅れをOSSの導入と活用で挽回することです」と語る。なぜOSSか。それはクラウドを実現する重要技術の一つであり、「開発者数は100万人以上。プロプライエタリなソフトウェアに比べると、イノベー

ションのスピードは圧倒的」だからだ。 その証明はOSSのカバー領域の拡大を見ればわかる。OSやミドルウェアはもちろん、今や分散処理やクラウド管理、ネットワークやストレージの仮想化、ビッグデータの領域までカバーしている。「OSSは次世代ICTシステムの中核を担う技術なのです」と廣川は強調した。

 とはいえ、いまだOSSは万全ではない。 「OSSには安定性、信頼性、ハードウェア(サーバ)とソフトウェア(アプリケーション)の互換性、セキュリティ、特許抗争などの問題ある。これらの落とし穴の回避に貢献するの

がレッドハットです」と廣川。 レッドハットならエンタープライズレベルの高い安定性・信頼性、パートナーとの協業により最高の互換性、ミッションクリティカルサポート、サブスクリプションモデルが提供されるからだ。しかも低成長時代においても目覚しい成長を遂げてきたレッドハットには体力もある。また、一例として R e d H a t E n t e r p r i s e Linuxの開発力が紹介され、コミュニティを含めると30万人規模と、他のソフトウェア会社と比較 すると圧倒的だ。 最後に廣川は「OSSの勢いとレッドハットの価値を活用するこ

とが、日本のICTの飛躍的な成長へとつながるはずだ。私たちはそのために最善の努力をします」と語り、講演を締めくくった。

 7月6日に開催された日経BP社主催のイベント「IT Japan 2012 成長への挑戦」で、レッドハット代表取締役社長の廣川裕司は「急成長するOSSとレッドハット」というテーマで講演を行った。日本がICT先進国になるには、OSSの活用がカギを握るという。なぜOSSに期待が集まっているのか、レッドハットが果たすべき役割とは何か。その講演内容を紹介しよう。

「OPEN EYE」宅配便 オンライン申込受付中! レッドハットエンタープライズユーザー会(REUG)会員募集中

日本が発展するにはICT産業の拡大が不可欠

OSSの落とし穴を回避するためレッドハットの役割は重要に OSSの代表格Linuxの成長

出典: 米国IDC, 2010

12M

10M

8M

6M

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2M

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

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38%

UNIXメインフレーム他

○○ レッドハット最新レポート

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レッドハット株式会社代表取締役社長

廣川裕司 講演

日本のICT競争力向上のカギを握るOSSレッドハットの役割もますます大きくなる

オンプレミス・クラウド・ハイブリッドクラウド環境で利用できるストレージソリューション

RED HAT STORAGE

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2012

OPEN EYE Vol.102012年 9月 発行

発行:レッドハット株式会社東京都渋谷区恵比寿4-1-18tel:03(5798)8500