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11.2.2016
担当:Yoshimi FUJINO
p. 1
SW論Ⅴ⑤ スーパービジョンの基本的理解(3)
Ⅰ.前回のふりかえり ~レスポンス・ペーパーから~
◇スーパービジョンについて
・スーパービジョンに対するイメージとして、以前は特別指導としてより細かい指導を受ける機会だと思っていた。
個別指導というかたちになるイメージもあり、間違いを指摘されたときの感じ方はより強いとも思っていた。スーパ
ービジョンの3つの機能のうちの支持的機能について、そういった側面があることを知らなかったため、とても驚
き、イメージも変わったので、スーパービジョンを普及させるとしたら、どういう側面があるのか、きちんと知らせ
るべきだと考えた。
・教育的機能のところの「経験を重ねた知識」に対して、疑問を抱くことが何度かありました。同職種のスーパーバ
イザーであっても、自分、その人の間だけではなく、その施設のワーカー間でも価値・倫理の捕らえ方は異なってい
るところが見られました。かかわる利用者・患者も複数なので、ひとりのバイザーだけではなく、何人かの人にバイ
ザーを頼むのも大切なのではないかと感じました。
・以前、カウンセラーの方にカウンセリング業務についてお話をうかがったことがあったが、料金をやや高めに設定
することによって、カウンセリングの質が高くなるとおっしゃっていた。自分でお金を払うからこそ、よりよいもの
にしたいと思い、準備や意識から変わってくるのではないかと考えた。
・アメリカには職場内にスーパーバイザーがいるが、日本ではそうではないという話があり、日本は他国に比べてま
だまだ福祉は遅れているのだろうなと感じた。
→「遅れている」と考えるか、「日本独自の発展をしている」と考えるか、考え方しだいかもしえれません。
◇実習スーパービジョン、実習指導について
・実施指導者とは、1日ごとに振り返りをする時間がなかったため、スーパービジョンについては指導者とゆっくり
話ができる時間という意識しか持っていなかった。振り返ってみると、今までの日誌を読み返し、実習で学んだこと
感じたことを話し合ったり、利用者とのかかわりで困ったことを話すと、指導者から見た利用者の様子や今までの経
験を話したりしてくれた。また実習の予定表についての説明を始めに受けていたので、教育的、管理的、支持的機能
が果たされていた。自分の困ったことや、指導者の話がきけたので、私はスーパービジョンについて、ポジティヴな
印象を持つことができた。
・春季事前訪問に行った際に、実習指導者さんに「県大は、事前訪問、夏もあるよね。その時にすべて説明するか
ら、今日はやることはないな」「なんで2回あるんだろうね」と言われてしまった。スーパービジョンとしての事前
訪問という意義が、私にあれば、よりコミュニケーションをとったり、実習への意欲を話したり、もっと有意義な時
間にできたのではないかと後悔した。
→春季事前訪問の意義を指導者さんが理解していないことは残念です。春季事前訪問があって、指導者さんと顔合わ
せしておくことが、実習計画作成の時に役に立ちませんでしたか? 会ったこともない指導者を想定して、実習計画
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を作成するのは思っている以上に大変です。実習先を理解するためには、訪問する機会は何度あっても良いと個人的
には考えています。
・帰校日指導や前期・後期の実習期間の間のSW実習指導Ⅱについて感じることだが、種別が異なる実習生同士で、
指導を受けたり、グループSVを行なっても、感じる悩みや求める指導内容は異なるため、同じ種別のクラスで指導
を受けたい。同じ種別の実習生同士で、グループSVや指導を行なうことで、他の事業所との比較や同じ視点からの
悩みが共有できるため、有効であると考える。
・演習の中で、他の実習先の話を聞くと、施設と利用者に対する言葉が適切でなかったり、たたいたり、嫌がってい
るのにムリヤリ風呂に入れる様子を見たという人もいて、実習生の立場にいる自分はそれを施設内の誰にどう話せば
いいのか、悩んでいる人もいた。藤野先生のアルバイトでの話をきいて、今ある立場で、どこまでできるのかという
ことを見つけることが難しい問題だと感じ、相談できる相手を持つことが大切だと考えた。
◇個人情報の保護について
・うわさ話しのように利用者のことを話す職員の話があったが、私の実習先では「利用者についての話が職員室で飛
び交う施設が良い」と指導者がおっしゃっていた。うわさ話と情報共有の線引きは難しいが、自分のフィルターを通
して判断しないようにしなければならない。個人情報の取り扱いについても、施設の広報に、利用者の実名や写真を
掲載してよいか書面で許可をとっていることが確認できた。
・個人情報保護について、写真を重要な個人情報のひとつであると話がありましたが、思えば、実習中もある施設の
パンフレット作成に伴い、同様の議論がありました。写真は文章よりも雰囲気を伝えることに長けていますが、やは
りプライバシーの問題があるということで、用いない方向に至りました。参考にするために、写真をのせたパンフレ
ットも用意されていましたが、顔にモザイクがかかっており、職員の中からは、「なんだか不気味」という声もきか
れ、個人情報保護と伝える側の目的(報道の自由のような)の兼ね合いが難しい問題だと感じました。
・個人情報の保護について、実習先では施設のお祭りの開催にあわせて、施設の廊下に利用者さんの生活の様子や施
設で企画される旅行の領すなど、約100枚程の写真を掲示していた。今、思い返せば、地域の住民など施設外の人
が来ることが想定されるお祭りという機会で、写真を掲示することは、利用者やその家族にきちんと分かるように説
明をし、同意を得る必要がある行為であることに気づいた。個人情報の保護・取り扱いについては、おそらく施設の
利用契約書などでも確認されるのではないかと考える。利用契約書については内容を見せていただいたが、そういっ
た内容がどのように書かれているのかを、もっと注意して見ておけばよかったと後悔した。
→写真も含む個人情報の使用等については、重要事項説明書・契約書の他に「同意書」を交わすことが一般的です。
◇その他
地域包括支援センターで「包括的・継続的ケアマネジメント事業」として介護支援専門員等へのサポートが実施され
ており、それはスーパービジョンの機能だということが説明されたが、このサポートとは具体的にどんな内容・頻度
で行なわれているのかということが気になった。
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Ⅱ スーパービジョンの歴史 ~北米におけるスーパービジョンの歴史~
◇スーパービジョンの萌芽期(1880年代~1920年代)
1869 の設立 ※活動の中心は である
→
◇スーパービジョンの確立期(1920年代~1950年代)
1899 夏期学校
1904 ニューヨーク博愛学校 ⇒ソーシャルワーカーとしての専門教育と訓練体制の成立
1914~1918 第1次世界大戦の影響 ※戦争神経症患者に対する治療
→個人の精神内界への関心を強めていった
1915 慈善矯正会議にて の発表
1917 M・リッチモンド『 』
1922 M・リッチモンド『 』
1929 世界大恐慌
1930年代 ソーシャルワーカーが増大
⇒大学(主として大学院)での専門教育としてのカリキュラム体系の整備・拡充が果たされ、専門家としての地域が確立
*この時期のソーシャルワーカーの活動の特徴
ソーシャルワーカーの活動が、国家機構の一環として公的福祉の機能を担うようになった。
⇒
「貧困・病気・犯罪などの社会的病理を専門家の知識と技術によって個人的に診断し、既存社会関係への適応の
処方を示し、公的資源と施設、機関によって実行させることがケースワークに求められた」
(小林清一(1999)『アメリカ福祉国家体制の形成』ミネルヴァ書房)
*スーパービジョンの特徴
1950年代
「教育的機能と管理的機能が、ひとりのスーパーバイザーによって可能なのか?」という議論
◇スーパービジョンの発展期(1960年代以降)
1960年代
SWへの批判:社会的視点が欠如しているという指摘、「SWは役に立たない」、SVの軽視という状態が起こる
1970年代 対人援助職のストレスやバーンアウトへの注目
→ スーパービジョンの支持的機能の重視
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Ⅲ スーパービジョンの歴史 -日本におけるスーパービジョンの発展-
・スーパービジョンの導入期(1950年代~60年代)
社会福祉事業法(現社会福祉法)において、
・スーパービジョンの展開期(1970年代~80年代)
・スーパービジョンの確立に向けた発展期(1990年代以降)
社会福祉基礎構造改革に象徴されるように、より質の高いサービスの提供が求められる状況
ケースカンファレンスやケア会議の浸透
認定社会福祉士・認定上級社会福祉士におけるスーパービジョンの義務化(2011)
*課題
Ⅳ スーパービジョンをより理解するポイント
*スーパービジョンは、構造化(行う日時や場所が決められている)されているものを言うのか?
*検討協議やカンファレンスは、スーパービジョンなのか?/ 多職種からのアドバイスは SV と言えるのか。
・職場でいわゆる「スーパービジョン」は行われていないが、管理者や所長によって、定期的に面談が行われて
いる。これはスーパービジョンではないのか?
・職場でいわゆる「スーパービジョン」は行われていないが、何か困ったときや悩みがある時は上司や先輩が親
身に話を聞いてくれて、いろいろとアドバイスをしてくれる。これはスーパービジョンではないのか?
・地域ケア会議やケアカンファレンスでは、他機関・多職種の人からいろいろケースについてアドバイスをもら
える。これはスーパービジョンではないのか?
◇スーパービジョンをどのように考えるか
・同職種によって行われるもの? 構造化されているもの?
・3つの機能が全て果たされているもの?
・個人の成長につながるものなら、全てSV?
・機関や施設のサービスの質が向上するなら、全てSV?
・SVなのか指導なのか相談なのか、その区切りはどのあたりにあって、どうやって区別をつけるの?
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Ⅴ 新しいスーパービジョン
1)ワナコット(2012) 公式/計画的スーパービジョンと非公式/臨機応援スーパービジョン
管理的機能、教育的機能、支持的機能を超えた多様なスーパービジョンの機能を示している
→SVの機能を伝統的な3つの機能に限定することはできない理由として下記の3点をあげている
①1回のSVにおいて、すべての3つの機能を提示することは難しい
②3つの機能の相互関連があるということは、それぞれを別々に切り離して取り扱うことは難しいことを意味し
ている
③ある限定された時間において、ひとつの機能が無視され、避けられるならばSVが安心あるものではなくなる。
そのうえで、マネジメント、デペロプメント、サポート、メディエーションの4つの機能をあげている
北島英治(2015)ソーシャルワークスーパービジョンの機能と役割」日本社会福祉教育学校連盟監修『ソーシャルワークスーパービジョン論』p82
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2)モリソン(2005)
アカウンタビリティ、デペロプメント、サポート、メディエーションの4つの機能をあげている。
多様な SVを管理的、臨床的/専門的、個人的を横軸、縦軸を「申告する人」「バイザーを決める人」「SVの焦
点」などを縦軸にし、多様なSVのあり方を「スーパービジョンのモデル」として提示している。
北島英治(2015)ソーシャルワークスーパービジョンの機能と役割」日本社会福祉教育学校連盟監修『ソーシャルワークスーパービジョン論』p80
Ⅵ スーパービジョンを受ける -スーパーバイジーの立場から-
◇スーパーバイザーをどのように/誰を選ぶか
・職場内:スーパービジョンとしてではなく、定期的に管理職から面談がある場合もある
*職場内にSVの体制がない場合は、職場外にスーパーバイザーを求めることになる
・職場外:以前の職場で上司・先輩だった人、研修で知り合った講師や大学の教員等
◇スーパーバイザーに何を求めるか
*信頼関係を結べるかどうかが、もっとも重要。SVがストレスとなっては意味がない
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◇事前準備:スーパービジョンの項目をまとめておく
①現在、特に意識して仕事に取り組んでいることはあるか。ある場合、どんなことか。
②現在、仕事、職場において悩むことはどんなことか。最近、失敗したと思ったことはどんなことか。そのこと
に対して、自分自身、そして周囲はどのように対応したか。
③現在、困難ケースがあるか。困難ケースがある場合、どのような点に困難を感じているか。また、自分なりに
取り組んでいることはあるか。困難が解消されるためには、どんなことが必要だと考えているか。
④職場でのコミュニケーションについて、他の職員と十分にとれているか。また職場におけるコミュニケーショ
ンで、自分なりに取り組んでいることはあるか。
⑤現在の自分のスキル、知識について、どのように考えているか。さらに習得したいスキルや知識はあるか。あ
れば、どのようなものか。
⑥現在の仕事量、自分の役割、そして待遇について、どのように考えているか。不満があれば、どのような点に
不満を感じているか。また、今後について、何らかのビジョンを持っているか。
⑦現在の職場において組織について、どう考えているか。職場や組織がもっとよくなるためには、どのような改
善等が必要だと考えるか。
⑧ケース記録や活動記録等、記録についてどのように取り組んでいるか。
⑨以上をふまえ、今回のスーパービジョンに特にテーマにしたいこと
*事前準備に取り組むことの効果
事前準備に取り組むだけで、自分自身の実践を振り返ることができ、ある程度のSV効果がある
*スーパービジョンを受けた後に行うこと
Ⅶ スーパービジョンを行う -スーパービジョンを行う上での留意点-
①利用者との面接と同様に、話しやすい雰囲気、環境を作る。
②スーパーバイジーの失敗等に対して、「どうして、そんなことをしたの?」といった原因を探るようなかかわ
り方は、バイジーの心を防衛的にしてしまい、バイジーの考えや感情の表出の妨げになる。原因を探るより、ま
ず「どのように対処したのか」「どう感じたのか」等、感情の表出を促し、「何を話しても否定されない」とバイ
ジー自身が思えるようにすることが重要である。
③②と関連するが、否定的にかかわるのではなく、肯定的・受容的にかかわる。マイナス点を見出すのではなく
プラス面を見出す。言い換えれば、バイジーが持つ強さ(ストレングス)に着目する。
④解決そのものを見出すのではなく、解決に向けて、スーパーバイジーのどんな取り組みや努力が必要か、バイ
ジー自身が考え、バイジー自身が方向性や方策を見出しせるようにする。スーパーバイザーは答えを出す存在で
はなく、バイジー自身が答えを見いだせるよう支援する役割を担うものである。
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担当:Yoshimi FUJINO
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⑤スーパーバイジー自身が答えを出せるようにするには、バイジーが語る内容に十分に耳を傾けること。②・③
とも関連するが、否定したり、「良い」「悪い」といった善悪の判断を下すより、まず「聴く」ことが重要である。
⑥スーパーバイジーが自分自身を振り返らず、周囲や環境に問題を見出す傾向がある場合は、自分自身を振り返
るように促す。問題の所在を周囲や環境の中に見出すよりも、バイジー自身の態度や取り組みを振り返り、改善
する点を見出す等、自己覚知を深めるようかかわる。
*実際に、組織や環境に課題があるかどうかの見極めも行う必要
⇒実際に組織や環境に課題があれば、
⑦スキルや知識については、利用者との対応例やスーパーバイザー自身の経験、本の紹介例など、その場で伝え
ることができるものなら伝える方が良い。ただ、対応例やバイザー自身の経験は、あくまで選択肢のひとつとし
て提示し、唯一の方法として押し付けるようなことはするべきではない。
⑧仕事量やスーパーバイジーの役割については、まず意見や考えを聞く。例えば「仕事量が多いから減らしてほ
しい」という意見が出たとしても仕事量を減らす約束はせず、「検討する」と述べるに留めておく。確約できな
いことは、約束するべきではない。
⑨記録については、改善するべき点があれば、見本となるような記録を用意し、具体的に改善点を示す。
*スーパービジョン全体を通しての留意点
*スーパービジョン後に行うこと
スーパーバイジーはSVで話されたことのまとめと整理に取り組む
⇒
*良いスーパービジョンとは?
・スーパーバイジーが十分に自身の考えていることや意見を話したり、感情を吐露できたか
・「自分の意見や考えを十分に聴いてもらえた」という体験は、クライエント体験としても重要
・スーパーバイジー自身のことだけでなく、職場の同僚や環境、組織そのものについて考えていく目線、思考を
養っていけたか