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財団法人 日本対がん協会 〒100−0006 東京都千代田区有楽町2−5−1 有楽町センタービル(マリオン)13F ☎(03)5218−4771 http://www.jcancer.jp/ 昭和44年3月31日第三種郵便物認可 第560号 2010年 (平成22年) 7月1日 (毎月1日発行) 3面 男性のがん死が微減 2009年 人口動態統計(概数) 4〜5面 がん検診実施状況㊦ 6〜7面 奨学医レポート 1部70円(税抜き) 乳がん検診の受診者は 1・8倍、子宮頸がんでは 2・6倍に。日本対がん 協会(垣添忠生会長)が、 全国の連携団体(支部)の 協力を求めて、女性特有が ん検診無料クーポン券の 「本当の効果」を調べたと ころ、こんな結果が出た。 若い世代での受診者の増加 ぶりが際だち、子宮頸がん では20歳で9・57倍になっ ていた。子宮頸がんの発病 者が増加している若い女性 の検診受診者が増えた意義 は非常に大きく、継続する ことの重要性が浮き彫りに なった。 (2面に関連記事) 無料に加え、クーポン券 などの配布が「個別勧奨」 になったのと、マスコミの 報道による「P R効果」な どが重なったとみられた。 対がん協会では今年初 め、乳がんと子宮頸がん検 診における受診者数の増加 ぶりについて各団体にアン ケートしてきたが、全年代 をまとめて尋ねたため、5 歳刻みで配布された無料ク ーポン券の効果が薄まって いると考えられた。そこで 日本対がん協会は、看護師や社会福祉士が、がん の不安や生活の悩みの相談に電話で応じる「がんホ ットライン」を開設しています。月〜土曜の午前10 時から午後6時。相談時間は20分までで予約は不要 です。(祝日は休み)。このほか、事前の予約制で、 専門医による電話や面接の無料相談も実施中です。 予約やお問い合わせは月〜金の午前10時から午後5 時までに、0335628015(予約専用電話)へ。 がんホットライン 月〜土 午前10時〜午後6時 03−3562−7830 子宮頸がんの20歳で9•57倍 若い世代に効果際立つ 女性特有のがん検診無料クーポン券アンケート 過去3年間のがん検診受診者数=()は対前年度比 39 団体 2007年度 2008年度 2009年度 3025614 2778302 (0.92) 2770558 (1.00) 2185391 2131625 (0.98) 2125892 (1.00) 大腸 1875865 1918507 (1.02) 1957739 (1.02) 973505 1022655 (1.05) 1223683 (1.20) 子宮頸 1147408 1136741 (0.99) 1304200 (1.15) 年齢別受診者数の推移=()は対前年度比 27団体 【乳がん】 2007年度 2008年度 2009年度 40歳 12220 12433 (1.02) 24765 (1.99) 45歳 10194 10516 (1.03) 20073 (1.91) 50歳 12246 12657 (1.03) 23546 (1.86) 55歳 15955 16386 (1.03) 27178 (1.66) 60歳 21580 25117 (1.16) 43214 (1.72) 72195 77109 (1.07) 138776 (1.80) 【子宮頸がん】 2007年度 2008年度 2009年度 20歳 501 536 (1.07) 5132 (9.57) 25歳 2375 2564 (1.08) 11600 (4.52) 30歳 7171 7210 (1.01) 20268 (2.81) 35歳 11606 12016 (1.04) 26710 (2.22) 40歳 13358 13453 (1.01) 29505 (2.19) 35011 35779 (1.02) 93215 (2.61) 今回、無料クーポン 券の対象となった年 齢について、過去3 年間、継続して検診 を受託している自治 体での受診者数を尋 ねた。 まず2009年度の 受診者数(有効回 答39団体)は乳が んでは122万3683人 で、前年度の1・20 倍だった。子宮頸 がんは130万4200人 で、同1・15倍にな っていた。肺、胃、 大腸の各がん検診の 受診者数はほぼ前年 並みだったのと比べ ると、乳がん、子宮 頸がんでの増え方が 顕著だった。 これを、無料クー ポン券の配布対象と それも若い世代への効果 は非常に高く、20歳では 9・57倍に、25歳で4・52倍 にもなっていた。 なった年齢についてみると (有効回答は28団体)、の通り、各年齢とも増えて いた。とくに子宮頸がん、

TAIGAN-07-4c...60歳 21580 25117(1.16) 43214(1.72) 計 72195 77109(1.07) 138776(1.80) 【子宮頸がん】 2007年度 2008年度 2009年度 20歳 501 536(1.07)

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  • 財団法人 日本対がん協会〒100−0006 東京都千代田区有楽町2−5−1 有楽町センタービル(マリオン)13F

    ☎(03)5218−4771 http://www.jcancer.jp/

    昭和44年3月31日第三種郵便物認可

    第560号 2010年(平成22年)

    7月1日(毎月1日発行)

    主な内容

    3面 男性のがん死が微減 2009年

       人口動態統計(概数)

    4〜5面 がん検診実施状況㊦

    6〜7面 奨学医レポート

    1部70円(税抜き)

     乳がん検診の受診者は1・8倍、子宮頸がんでは2・6倍に−。日本対がん協会(垣添忠生会長)が、全国の連携団体(支部)の協力を求めて、女性特有がん検診無料クーポン券の「本当の効果」を調べたところ、こんな結果が出た。若い世代での受診者の増加ぶりが際だち、子宮頸がんでは20歳で9・57倍になっていた。子宮頸がんの発病者が増加している若い女性の検診受診者が増えた意義は非常に大きく、継続することの重要性が浮き彫りになった。(2面に関連記事) 無料に加え、クーポン券などの配布が「個別勧奨」になったのと、マスコミの報道による「PR効果」などが重なったとみられた。 対がん協会では今年初め、乳がんと子宮頸がん検診における受診者数の増加ぶりについて各団体にアンケートしてきたが、全年代

    をまとめて尋ねたため、5歳刻みで配布された無料クーポン券の効果が薄まっていると考えられた。そこで

     日本対がん協会は、看護師や社会福祉士が、がんの不安や生活の悩みの相談に電話で応じる「がんホットライン」を開設しています。月〜土曜の午前10時から午後6時。相談時間は20分までで予約は不要です。(祝日は休み)。このほか、事前の予約制で、専門医による電話や面接の無料相談も実施中です。予約やお問い合わせは月〜金の午前10時から午後5時までに、03−3562−8015(予約専用電話)へ。

    がんホットライン 月〜土 午前10時〜午後6時03−3562−7830

    子宮頸がんの20歳で9•57倍 若い世代に効果際立つ女性特有のがん検診無料クーポン券アンケート

    過去3年間のがん検診受診者数=()は対前年度比 39 団体2007年度 2008年度 2009年度

    肺 3025614 2778302(0.92) 2770558(1.00)胃 2185391 2131625(0.98) 2125892(1.00)大腸 1875865 1918507(1.02) 1957739(1.02)乳 973505 1022655(1.05) 1223683(1.20)子宮頸 1147408 1136741(0.99) 1304200(1.15)

    年齢別受診者数の推移=()は対前年度比 27団体【乳がん】

    2007年度 2008年度 2009年度40歳 12220 12433(1.02) 24765(1.99)45歳 10194 10516(1.03) 20073(1.91)50歳 12246 12657(1.03) 23546(1.86)55歳 15955 16386(1.03) 27178(1.66)60歳 21580 25117(1.16) 43214(1.72)計 72195 77109(1.07) 138776(1.80)

    【子宮頸がん】2007年度 2008年度 2009年度

    20歳 501 536(1.07) 5132(9.57)25歳 2375 2564(1.08) 11600(4.52)30歳 7171 7210(1.01) 20268(2.81)35歳 11606 12016(1.04) 26710(2.22)40歳 13358 13453(1.01) 29505(2.19)計 35011 35779(1.02) 93215(2.61)

    今回、無料クーポン券の対象となった年齢について、過去3年間、継続して検診を受託している自治体での受診者数を尋ねた。 まず2009年度の受診者数(有効回答39団体)は乳がんでは122万3683人で、前年度の1・20倍だった。子宮頸がんは130万4200人で、同1・15倍になっていた。肺、胃、大腸の各がん検診の受診者数はほぼ前年並みだったのと比べると、乳がん、子宮頸がんでの増え方が顕著だった。 これを、無料クーポン券の配布対象と

    それも若い世代への効果は非常に高く、20歳では9・57倍に、25歳で4・52倍にもなっていた。

    なった年齢についてみると(有効回答は28団体)、表の通り、各年齢とも増えていた。とくに子宮頸がん、

  • ( 2 ) (第三種郵便物認可) 対 が ん 協 会 報 2010年7月1日

     日本対がん協会(垣添忠生会長)が全国の連携団体(支部)の協力を得て実施した女性特有のがん検診アンケートでは、無料クーポン券の配布対象となった年齢別に「初回受診者数」も尋ねた。 乳がん検診では2009年度は前年度の2・34倍に、子宮頸がんでは3・74倍になっていた。それぞれの年齢全体の伸び(1面参照)より高く、無料クーポン券などの配布は、これまで検診を受けなかった人たちに対して、より強い動機づけになったことが裏付けられた。 初回受診者数を尋ねた項目への回答があったのは22団体(支部)。 無料クーポン券の配布対象年齢以外も含めて乳がん検診を初めて受けた人は09年度は08年度の1・50倍に増えていた。08年度も前年度の1・09倍と増えていたが、増え方は09年度の方が顕著だった。これを無料クーポン券などが配布された年齢だけに限るともっと際立ち、09年度は08年度の2・34倍になっていた。 子宮頸がんではこの傾向がよりはっきり出ていた。09年度は08年度の1・73倍で、08年度の対前年度比1・04倍よりも伸び幅が大きかった。無料クーポン券などが配布された年齢では3・74倍にのぼっていた。 若い世代の場合をみると09年度は、20歳では10・90倍、25歳で5・96倍と大きく伸びていた。20歳では

    回答は38団体)。 無料クーポン券で評価できることに関して(複数回答)、「無料」を挙げたところが97・4%、「個人名で通知(個別勧奨)した」は65・8%、「がん検診自体のPRにつながった」も42・1%あった。 これに対し、検診手帳への評価は比較的低く、「がんに関心をもつ人が増える」は39・5%、「説明資料を読むと検診に行こうという気になる」も28・9%だった。 今回のアンケートから、受診者をさらに増やし、国のがん対策推進基本計画が検診の受診率の目標に掲げる50%を達成するには、無料、個別勧奨、啓発活動の充実が欠かせないことが改めた浮かび上がった。

    人数自体は少ないものの、これまでほとんど受診していなかった世代を大きく動かしたという点で無料クーポン券効果が高かったとみられる。 乳がんでは40歳が、子宮頸がんでは20歳がそれぞれ、検診の対象となる最初の年齢なので、「これまで受診しなかった層を動かした」ということにはあてはまらない。とはいえ、乳がんでは45、50、55、60の各年齢で初回受診者が倍増したことは、これまで受診しなかった人たちの足を検診会場に向けた効果があったといえよう。 子宮頸がんにも同様のことがいえ、3倍以上になったということをみると、効果は乳がんよりも顕著だった。 無料クーポン券の使用率について尋ねた結果(有効

    回答は13団体)、乳がんの場合は73・2%。子宮頸がんでは81・7%。子宮頸がんの方が使用率が高かった。 これを初回受診者に限って使用率をみると(有効回答は9団体)、乳がんの場合は79・9%と、全体の使用率より7ポイント近く高かった。子宮頸がんでは88・0%で、6・3ポイント高くなっていた。子宮頸がんでは若い年齢ほど使用率が高い傾向がみられた。 「無料だから受診した」という人も多いと見られる一方で、「無料クーポン券などが送られてきて初めて、子宮頸がんのことや検診のことを知った」という人も少なからずいたことも考えられる。 無料クーポン券と、一緒に配布された検診手帳についての評価も尋ねた(有効

    初めての受診者の増加ぶりが顕著女性特有のがん検診受診者数アンケート

    初回受診者の年齢別推移=()は対前年度比 22 団体【乳がん】

    2007年度 2008年度 2009年度40歳 7032 7099( 1.01) 14438( 2.03)45歳 3031 2911( 0.96) 7450( 2.56)50歳 3621 3451( 0.95) 8358( 2.42)55歳 3535 3525( 1.00) 9002( 2.55)60歳 5273 5605( 1.06) 13707( 2.45)計 22492 22591( 1.00) 52955( 2.34)

    【子宮頸がん】2007年度 2008年度 2009年度

    20歳 420 417( 0.99) 4547(10.90)25歳 1467 1493( 1.02) 8892( 5.96)30歳 4495 4228( 0.94) 13355( 3.16)35歳 3861 3912( 1.01) 13381( 3.42)40歳 4013 4210( 1.05) 13125( 3.12)計 14256 14260( 1.00) 53300( 3.74)

  • 2010年7月1日 対 が ん 協 会 報 (第三種郵便物認可) ( 3 )

     厚生労働省は6月2日、2009年の人口動態統計月報の1年間のまとめ(年計=概数)を発表した。 がん(悪性新生物)による死亡は、34万3954人で、08年(確定)より991人増え、全死亡の30・1%を占めた。ただ女性が13万7694 人で 08年より 1085人増えていたのに対し、男性は20万 6260人で 94人の減少となった。 概数とはいえ、1958年以降の人口動態統計(確定)をみる限り、男性のがん死が減ったのは初めて。女性も増えたとはいえ、増加幅は近年では比較的小さかった。

    亡に歯止めがかかったとは言い難い。肺がん以外の主ながんで軒並み減少しているとはいえ、9月に公表されると予想される確定値でもこの傾向に変わりがないのか、さらに来年も続くのかといった点を考慮する必要がある。一方で女性は増える傾向に変化がなかった。 こんごさらに進展する高齢化、とくに団塊世代の高齢化を考えると、がんによる死亡はまだ増えることが確実視される。いまのところ、早期のうちに見つけて早く治療することが、一般的に、がんに対する最も有効な手立てだ。その対策の拡充が求められる。

     部位別にみると、最も多かったのが肺がんの6万7568人で、08年より 719人増えた。次いで胃がんの5万人、大腸がん 4万2407人、肝がん3万 2714人となっていた。 08年と比べると胃がんで160人、大腸がんは604人、肝がんで 951人、それぞれ減っていた。 男女別では、男性で最も多いのは肺がんの4万9022 人で 08 年より 412人増えた。しかし、胃がんは3万2764人で同209人、大腸がんが2万 2748人で同 671 人、肝がんは 2万1631人で同 701人、それぞれ減少していた。一方で

    前立腺がんが10033人と08年より44人増えて初めて1万人を超えたほか、膵がんが1万 4076人で 373人増えていた。 女性で最も多いのが大腸がんの1万9659人で08年より67人増えた。次いで肺がんが1万 8546人で307人の増、胃がんは1万7236人で49人の増、膵がんが1万 2688人で 415人の増となっていた。また乳がんも 117人増えて 1万1914人になっている。 人口動態統計月報の年計(概数)で、男性のがん死がわずかながら減ったことをもって、戦後ずっと増えてきた日本人のがんによる死

    がんの主な部位別にみた死亡数(厚生労働省・人口動態統計月報統計より)

    部位 1975 1985 1995 2005 2006 2007 2008 2009全部位 136 383 187 714 263 022 325 941 329 314 336 468 342 963 343 954

    男(全部位) 76 922 110 660 159 623 196 603 198 052 202 743 206 354 206 260胃 30 403 30 146 32 015 32 643 32 745 33 143 32 973 32 764肝 6 677 13 780 22 773 23 203 22 576 22 300 22 332 21 631肺 10 711 20 837 33 389 45 189 45 941 47 685 48 610 49 022

    大腸 5 799 10 112 17 312 22 146 22 392 22 846 23 419 22 748女(全部位) 59 461 77 054 103 399 129 338 131 262 133 725 136 609 137 694

    胃 19 454 18 756 18 061 17 668 17 670 17 454 17 187 17 236肝 3 696 5 192 8 934 11 065 11 086 11 299 11 333 11 083肺 4 048 7 753 12 356 16 874 17 314 17 923 18 239 18 546

    乳房 3 262 4 922 7 763 10 721 11 177 11 323 11 797 11 914子宮 6 075 4 912 4 865 5 381 5 513 5 622 5 709 5 523大腸 5 654 8 926 13 962 18 684 18 664 19 013 19 592 19 659

    がん死34万3954人2009年の人口動態統計(概数)

    男性はわずかに減少女性は増加傾向続く

  • ( 4 ) (第三種郵便物認可) 対 が ん 協 会 報 2010年7月1日

    2008年度 対がん協会支部のがん検診実施状況から㊦ ◆肺がん

  • 2010年7月1日 対 が ん 協 会 報 (第三種郵便物認可) ( 5 )

    2008年度 市町村検診の対がん協会支部実施率

  • ( 6 ) (第三種郵便物認可) 対 が ん 協 会 報 2010年7月1日

     医師になり4年が過ぎようとしていたとき、目前の日常診療・研究に懸命になっていた僕に一つの転機が訪れました。内視鏡学会のセミナーで超音波内視鏡の講義を受け、「自分自身と地元に足らない技術はこれだ」と思ったのです。 その時の講師が山雄健次先生。すぐに先生が在籍する愛知県がんセンター中央病院の門をたたきました。消化管間質間質腫瘍(GIST)や消化管MALTリンパ腫症についても全国でも有数の症例数があることや、抗がん剤治療のマネジメントにことなども同センターを選んだ理由です。 超音波内視鏡と超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は全国一の症例数があり、最新技術の研修ができます。消化器がんに関する治験・臨床試験を含めた化学療法に関しても実践的な勉強ができました。消化管領域の透視・内視鏡検査、肝胆膵領域の画像診断、内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)や胆管ステント術といった内視鏡治療についても一からたたき直してもらいました。 学会発表や論文作成の機会も、国内外を問わず数多く、求めれば「倍返し」に近いほど多くのことを経験しました。 具体的には、学会発表17編(うち主題5編、講演1編、国際学会1編)、英文論文投稿6編(受理2編)、依頼原稿9編。資格も、消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会支部評議員、日本消化器内視鏡学会支部評議員、日本臨床腫瘍学会薬物療法専門医を得ることができました。とにかくやりたいこととマッチすれば、この上なく良い研修施設だと思いました。 がん・がん以外を問わず厚生労働省の斑会議に何度も参加し、新しい治療指針・ガイドラインがどのようにして作られるのかを目の当たりすることができました。何よりも多くのトップランナーの医療に対する姿勢や、そのモチベーションをたくさんうかがえたのが何より大きな収穫でした。 研修を通して地元の胆膵領域疾患の内視鏡診断・治療および消化器がんの化学療法のマネジメントをする力を得ることができたと思っております。同時に、習得した技術を早く還元したいと思っています。

    学んだ技術を還元したい~愛知県がんセンター中央病院研修を振り返って松本和也(鳥取大学医学部附属病院消化器内科)

     昨年7〜12月、奨学医として癌研有明病院の乳腺外科で研修し、主に要精査症例の検査・診断と手術適応となった症例の検討・治療を学びました。乳腺外科は7チームに分かれ、レジデントは3カ月ごとに各チームをローテーションします。今回の研修でも7〜9月と10〜12月に2チームを回りました。 研修内容は、乳腺の解剖と、それに対応するマンモグラフィの読影、超音波検査、要精査となった症例の穿刺吸引細胞診や超音波ガイド下針生検の手順、組織型の推定及び検査結果の考え方、MRI検査での非浸潤がんと浸潤がんの違い、良性疾患との鑑別などを学びました。 とくにマンモグラフィでは、岩瀬拓士部長をはじめスタッフの読影に際して一緒に検討し、読影方法や微細な所見の見方、精度を上げていくための読影方法などの説明を受け、大きな収穫でした。 がんと診断がつかなかった症例のフォロー方法、がんの診断がついた症例に対する術前検査、癌研有明病院での術前化学療法の適応基準に照らした検討なども学びました。乳腺科としての外来診療で大きな手助けになると実感しました。 手術については乳房温存手術の適応基準と検査所見から得られる病変の範囲の見極め、乳房再建の適応基準を学びました。病変の広がりは温存手術を行うにあたって極めて重要で、術前のカンファランスの大きな検討対象です。マンモグラ

    マンモの読影、超音波、生検、手術……多くの収穫井上謙一(癌研有明病院乳腺外科)

    後列右から2人目が筆者

  • 2010年7月1日 対 が ん 協 会 報 (第三種郵便物認可) ( 7 )

    高い診療レベルが刺激に武田雄一郎(岩手医科大学付属病院外科)

     日本対がん協会の2010年度の理事会と評議員会が6月9日、東京都内で開かれ、2009年度の事業報告案と決算案、2010年度の補正予算案が承認された。また2010年度の財団法人JKAの検診車整備事業についても承認された。 事業報告では、09年度の寄付金が2億6032万

    (大阪商工会議所会頭、京阪電鉄CEO)、林田英治氏(日本鉄鋼連盟会長、UFJスチール社長)、米倉弘昌氏(日本経済団体連合会長、住友化学会長)が新たに選任された。 任期はいずれも7月1日から2年。

    7277円だったことが説明された。 0 8 年度より3千万円ほど少なくなったが、これは08年度は、日本対がん協会が創立50周年を迎えたことから特別寄付があり、この影響で寄付金が増えていた。07年度と比べると6500万円ほど伸びている。 役員改選では、新常務理

    事に日本医師会長の原中勝征氏と、第一生命社長で生命保険協会の次期会長の渡邉光一郎氏を選任。前日本医師会長の唐澤祥人氏、住友生命社長で生命保険協会長の佐藤義雄氏が退任した。 また理事には、奥正之氏(全国銀行協会長、三井住友銀行頭取)、佐藤茂雄氏

    新常務理事に原中・医師会長ら選任理事会・評議員会

    フィや超音波、MRIなどの所見に整合性が得られない時にどう考え、いかに対応するか、よく議論され、大変勉強になりました。 実際の手術にあたってセンチネルリンパ節生検、術場での検索の仕方を学びました。癌研有明病院ではRIと色素を併用しており、色素法しか経験がなかったので特にRIの検出能力の高さに感銘を受けました。 術後の対応は、入院期間が長くなった患者さんに対して、ドレーンをつけたまま退院することを勧めていました。基本的にドレーンは長期にわたって留置しないものと思っていたため、場合によっては入院期間と自宅療法期間を合わせて3〜4週間も留置したままの患者さんもいるということに非常に驚きました。 まだまだ紙面には書ききれないほど数多くのことを学びました。一般外科医として対応していた時とは大きく違う専門病院での研修は、今後も臨床医を続けるうえで大きなステップになるものと確信しています。

     このたび、日本対がん協会の奨学医として癌研究会有明病院(以下癌研)の乳腺科で3カ月間研修しました。数多くの患者さんの治療にあたっている病院ですので、短期間とはいえ貴重な経験になりました。 外来では、予約患者様の経過、病状、方針などを前日まで予習し、スタッフの先生と今後の方針などを検討するようになっています。そこでは疾患ごとの検査、診断、治療、経過観察などの対応の仕方を学ぶことができました。 術前のカンファランスでは、画像によるがんの広がり診断の厳密さ、正確さに感心しました。あとで広がりの読みと病理のマッピング像を対比してみて、自身の診断能力の甘さを自覚し、そこに一つの課題をみつけることができました。 手術は週に5件参加することができました。自分で実施してきた手術と内容は同じにしても、一つひとつの技術は当然のことながら高くて、自分の中できれいで上手な手術のイメージを構築することができたのは大変よかったと思います。また、微小石灰化を主徴とする非浸潤がんの手術方法など難しい問題のポイントも学ぶことができました。 他に、正確な断端診断のために標本の整理の仕方や、病理切り出し図のmapping、病理診断など、精度向上の必要性を痛感しました。 教育機関としても一流で、日々カンファランスでの術前検討、問題症例検討に加え、病理カンファ、細胞診勉強会、臨床試験の説明会、学会発表報告などがあり、外科、化学療法科、放射線治療科、画像診断部、病理部それぞれの一流の先生方より乳がん診療の各分野の知識を学ぶことができる環境は非常にうらやましく感じました。 癌研における温存術後放射線治療の適応、温存術後追加切除、残乳切の適応、CT segmentectomyの適応などの話をきけたことも大変貴重な経験だったと思います。

  • ( 8 ) (第三種郵便物認可) 対 が ん 協 会 報 2010年7月1日

    地域でがん患者をどう支えるか地域連携・ボランティア組織化モデル事業報告 ㊥

    在宅緩和ケアの普及を目指して特定非営利活動法人福島県緩和ケア支援ネットワーク理事長 海野志ん子

    「がんと緩和ケアを学ぶ市民講座」記録写真2010年3月13日㈯二本松市安達保健福祉センター  講師:鈴木雅夫氏(ふくしま在宅緩和ケアクリニック院長)

     特定非営利活動法人福島県緩和ケア支援ネットワークは2006年3月、緩和ケア、特に在宅緩和ケアの推進と普及啓発を主な目的として設立されました。がんや難病などの患者とその家族への相談支援活動、在宅緩和ケアを提供する専門職種の人たちやボランティアの養成、遺族ケア、いのちの教育の支援などの事業を行っています。 2009年度、本法人は日本対がん協会から助成金を賜り、助成がなければできない事業を展開することができました。深く感謝しています。 事業の一つは、福島県県北保健福祉事務所が組織した福島県在宅緩和ケア県北地域連携会議作成の「在宅

    ので会場設定の数が限られていましたが、日本対がん協会の助成のおかげで予定以上の数の会場での開催ができました。結果的に16会場で、700名近い方々に参加していただきました。ここでは、参加者から現在のがん治療のつらさやいのちの不安、家族のがん死の悲痛な体験、人生の終末をどう結ぶか、家族のあり方の反省などが切実に語られ、一方では在宅緩和ケアの必要性、眼から鱗、知ってよかったなどの感謝の言葉が述べられています。 在宅緩和ケアの理解を訴える、これも大切ながん対策であると信じています。私どもは今後も市民レベルでがん対策に取り組んで行きたいと考えています。

    緩和ケア地域連携パス」の啓発リーフレットの配布です。 連携パスとは、入院していた患者が自宅に帰ってからもそれまでと同様の医療や介護のサービスが受けられるようにするために、関係者が病気の管理方針、処置等の内容や生活の情報などを共有し連携できるようにする「連絡表」です。しかしながら、折角作成したそのパスの存在が一般市民はもとより医療や介護の関係者にも知られておりませんでした。 県北保健福祉事務所と本法人の協議の結果できたのが「家で一緒に暮らしたい」という連携パスの存在を周知するリーフレットです。日本対がん協会の助成のおかげで、ポスターを500枚、

    リーフレットを6万枚印刷することができました。今後数年かけて、県北保健福祉事務所から福島県内の各市町村、病院や在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションなどに配布され、また本法人も協力していろいろな機会をとらえて配布の役割を担います。各地域に在宅医療と緩和ケアを普及させるための貴重な資料となるのは確かです。 また、本法人は昨年度から、寺子屋方式で「在宅緩和ケアを学ぶ市民講座」を開催しています。本法人が企画し、会員が講師となり、各地の公民館や学習センターに出向いて、がんや在宅緩和ケアの理解を図る講座です。費用の一切を本法人が負担しての講座です