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THAWS 睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡 睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡睡 TH rombolysis for A cute W ake-up and unclear-onset S trokes with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) Trial 試試試試試試試 試試試試試 試試試試試試 試試試試試 試試 ClinicalTrials.gov 試試試試 NCT02002325 - 1 -

thaws.stroke-ncvc.jp · Web view発症時刻不明の脳梗塞においては、本人が発症していない状態を確認できた最終時刻をもって、発症時刻とみなす。すなわち、前夜21時に就床した患者Aが、翌朝6時に起床して麻痺に気づき、7時に来院したときには、既に最終未発症確認時刻から10時間が経過し、rt-PA静注療法や機械的再開通療法

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THAWS

睡眠中発症および発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓

溶解療法の有効性と安全性に関する臨床試験

THrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes

with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) Trial

試験実施計画書

主任研究者: 国立循環器病研究センター 脳血管内科  豊田 一則

ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02002325

UMIN Clinical Trials Registry 登録番号 000011630

VERSION 1.4 (2015 年 5 月 31 日作成)

VERSION 1.4.1(2015 年 8 月 10 日誤記修正)

VERSION 1.4.2(2015 年 11 月 10 日誤記削除)

VERSION 1.5 ( 2016 年 11 月 11 日作成)

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THAWS

VERSION   1.5.2 ( 2016 年 4 月 20 日作成 指針改正に伴う書類整備のみ)

試験実施計画の要約

試験名 睡眠中発症および発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓

溶解 療法 の有効 性と安 全性 に関 する臨床 試験  ( THAWS Trial)

試験実施期域 日本

対象疾患名 急性期脳梗塞

目的 睡眠中発症および発症時刻不明の急性期脳梗塞患者に対する、

静注血栓溶解療法の有効性と安全性を確かめる。

試験デザイン

主要評価項目 試験開始 90 日後の modified Rankin Scale 0-1副次評価項目 試験開始 24 時間後、7 日後における NIH Stroke Scale 値のベー

スライン値からの変化

試験開始 90 日後の modified Rankin Scale 0-2試験開始 90 日後の modified Rankin Scale のシフト解析での評

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THAWS

安全性評価項目 試験開始後 24 時間以内の症候性頭蓋内出血発現率

試験期間中の大出血発現率

試験期間中の全死亡

試験の種類 介入試験

基本デザイン 多施設共同、無作為化、非盲検、実薬・標準治療対照、並行群間

比較試験

群数 2 群

1. 介入群: 静注血栓溶解療法

2. 対照群: 標準内科治療

試験薬 アルテプラーゼ 0.6 mg/kg 10%を急速投与し、残りを 1 時

間で静注

対象 脳梗塞患者のうち、以下の選択基準をすべて満たし、除外基準

のいずれにも抵触しない被験者。

【選択基準】

1. 年齢:20 歳以上

2. 性別:男女とも

3. 発症時刻不明

4. 最終未発症確認時刻から治療開始可能時刻まで 4.5 時間超

5. 発見から 4.5 時間以内に治療開始可能

6. 拡散強調画像での ASPECTS ≥57. FLAIR で初期虚血病変と考えられる明らかな高信号所見の不

8. 治療前 NIHSS 2~259. 本研究への参加について、書面による本人または代諾者の同

意が得られている

【除外基準】

1. 発症前 mRS >12. アルテプラーゼ静注療法適正治療指針での適応外症例

3. MR 検査不能の患者(MR 非対応ペースメーカーの装着など)

4. 小脳、脳幹ないし大脳半球の前大脳動脈領域または後大脳動脈

領域に広汎な早期虚血変化を有する患者

5. 試験期間中に頭部・頸部の手術や血管内治療を予定している

患者

6. 妊婦、授乳中の患者、妊娠している可能性のある患者

7. 余命 6 か月未満と予想される末期の疾患を有する患者

8. その他、試験担当医師が本試験の対象として不適当と判断し

た患者

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THAWS

目標参加者数 300 例

試験実施予定期間 先進医療の承認を得てから 2020 年 3 月 31 日まで

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THAWS

表 1. 試験のスケジュール

ベースライン試験薬

投与開始時観察期間

評価時点 0 時間後投与終了

24 時間後*7 日後または

退院時†

90 日後また

は中止時

許容範囲 ±3 時間 ±1 日 ±14 日

同意取得 ✓

被験者背景 ✓

選択/除外基準 ✓

無作為化 ✓

診察

NIHSS ✓ ✓ ✓

mRS 発症前 ✓ ✓

身長・体重 ✓

血圧・脈拍 ✓ ✓ ✓

体温 ✓

臨床検査・画像診断

血液検査 ✓ ✓

尿検査 ✓

12誘導心電図 ✓

頭部MRI ✓ ✓ ✓

【任意】PWI (✓)

ICH 確認画像 ✓

有害事象 ✓ ✓ ✓ ✓

試験薬投与 ✓

* 頭部MRI と ICH 確認画像は投与終了の 22~36 時間後に撮影する

† 頭部MRI は 7~14 日後(許容範囲:±1 日)または退院時に撮影する

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目 次

略語一覧 ………… 7

1. 緒言1-1. 背景 ………… 81-2. 後方視的研究 ………… 91-3. 前方視的研究 ………… 91-4. 進行中の臨床試験 ………… 10

2. 試験の目的と根拠

2-1. 目的 ………… 112-2. 評価項目 ………… 11

2-2-1. 主要有効性評価項目

2-2-2. 副次有効性評価項目

2-2-3. 安全性評価項目

2-3. 倫理的根拠 ………… 11

3. 試験デザイン

3-1. 試験デザインの概要 ………… 123-2. 試験デザインの設定根拠 ………… 13

4. 対象被験者

4-1. 対象疾患 ………… 134-2. 選択基準 ………… 134-3. 選択基準の設定根拠 ………… 134-4. 除外基準 ………… 144-5. 除外基準の設定根拠 ………… 154-6. 被験者の中止と追加 ………… 15

5. 試験薬

5-1. 被験薬 ………… 155-2. 被験薬の取り扱い ………… 155-3. 他の使用薬剤 ………… 155-4. 試験薬の投与方法 ………… 16

5-4-1. 介入群

5-4-2. 対照群

5-5. 併用禁止薬 ………… 16- 6 -

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5-6. 併用禁止療法 ………… 17

6. 登録・割付

6-1. 登録 ………… 176-2. 割付 ………… 17

7. 試験方法

7-1. 概要 ………… 177-2. 各評価時点での治療・評価 ………… 17

7-2-1. ベースライン時

7-2-2. 試験薬投与

7-2-3. 試験薬投与終了 24 時間後における評価

7-2-4. 7 日後または退院時における評価

7-2-5. 90 日後または中止時における評価

7-3. 試験の中断と中止 ………… 197-3-1. 試験の中断

7-3-2. 試験の中止

8. 有害事象

8-1. 定義 ………… 208-1-1.  重篤な有害事象

8-1-2.  因果関係

8-1-3.  転帰

8-2. 個々の有害事象の定義 ………… 218-2-1. 症候性頭蓋内出血(sICH)

8-2-2. 無症候性頭蓋内出血

8-2-3. 大出血

8-3. 有害事象発生時の対応 ………… 21

9. 統計解析

9-1. 解析対象集団 ………… 229-1-1.  主要評価項目・副次評価項目の解析対象集団

9-1-2.  安全性評価項目の解析対象集団

9-2. 目標被験者数 ………… 229-3. 解析方法 ………… 23

9-3-1. 被験者の人口統計的特性およびベースライン値

9-3-2. 主要評価項目

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9-3-3. 副次評価項目

9-3-4. 安全性評価項目

9-3-5. その他の統計的事項

9-3. データの収集とマネジメント ………… 23

10. 費用の支払い、健康被害補償および保険

10-1. 資金源 …………2410-2. 診療に関する費用の支払い ………… 2410-3. 健康被害補償および保険 ………… 24

11. 倫理的事項

11-1. 倫理 ………… 2411-2. 被験者の人権の擁護 ………… 2411-3. 同意の取得 …………2511-4. 予想される危険性および個人の利益・不利益 ………… 2511-5. 利益相反 ………… 25

12. 試験管理情報

12-1. 試験実施予定期間 ………… 2512-2. 個人情報保護 ………… 2512-3. モニタリング …………2612-4. 公表 ………… 2612-5. 知的所有権 ………… 2612-6. 研究組織 ………… 26

13. 参考資料

13-1. 引用文献 ………… 2913-2. National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)………… 3013-3. modified Rankin Scale (mRS) …………31

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略語一覧

略語 省略していない表現

ALP alkaline phosphatase

ALT alanine aminotransferaseaPTT activated partial thromboplastin time

ASPECTS Alberta Stroke Program Early Computed Tomography ScoreAST asparate aminotransferase

CRF case report formCT computed tomography

DM data managementDWI diffusion weighted image

FAS full analysis setFLAIR fluid-attenuated inversion recovery

GOT glutamic oxaloacetic transaminaseGPT glutamic pyruvic transaminase

γ-GTP γ-glutamyl transpeptidaseICH intracerebral hemorrhage

LDH lactate dehydrogenaseMRA magnetic resonance angiography

MR(I) magnetic resonance (imaging)mRS modified Rankin Scale

NIHSS National Institutes of Health Stroke ScalePPS per protocol set

PT-INR prothrombin time – international normalized ratioPWI perfusion weighted image

rt-PA recombinant tissue-type plasminogen activatorRESTORE Reperfusion therapy in unclear-onset stroke based on MRI

evaluation

SAS safety analysis setsICH symptomatic intracerebral hemorrhage

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THAWS

THAWS THrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes TrialWake-Up Efficacy and Safety of MRI-based Thrombolysis in Wake-Up Stroke

WASSABI Wake-Up Symptomatic Stroke - Benefit of Intravenous Clot Busters or Endovascular Intervention

WUS-rTPA Randomized, controlled, open study to evaluate the response to r-TPA therapy vs clinical standard therapy in patients affected by ictus at awakening coming in ER within 3 hours from symptoms compare

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THAWS

1. 緒言1-1. 背景

現在の超急性期脳梗塞治療において、発症から治療開始までの経過時間が非常に重要

である。標準治療である遺伝子組み換えによる組織型プラスミノゲン・アクティベータ

(recombinant tissue-type plasminogen activator, rt-PA:一般名アルテプラーゼ)を用い

た静注血栓溶解療法は発症から 4.5 時間以内に[1]、また血栓回収機器を用いた機械的再開通療

法は発症から 8 時間以内に治療を始めるよう[2,3]、強く推奨されている。これは、発症から治

療開始までの時間が脳虚血の侵襲の程度に良く相関し、制限時間を超えてから超急性期治療を

行った場合、脳虚血部位からの二次的な症候性頭蓋内出血( symptomatic intracerebral hemorrhage: sICH)が生じる危険が高まることによる。このような治療体制において、正確

な症状の発現時刻が分からない脳梗塞患者は、上記の超急性期治療の対象となり得ない。

発症時刻不明の脳梗塞には、睡眠から覚醒した際に本人または周囲の者が症状に気づ

く場合(睡眠時発症脳梗塞)と、日中の発症であるが失語や意識障害のために本人が発症時刻

を伝えられない場合とがある。これらの発症時刻不明脳梗塞は、脳梗塞患者全体の約 1/4 を占

める[4-6]。国立循環器病研究センターに 2011~2012 年に入院した全脳梗塞 1214 例中 502例(41%)が、発症時刻を特定できなかった(発症後短時間での発見と思われる症例を含む)。

発症時刻不明脳梗塞患者と発症時刻確定脳梗塞患者の臨床像や重症度、転帰の違いに関しては 、

諸説があるが、前者は後者と同等、ないし後者に比べてより重症で転帰も不良であるとの報告

が多い[4-6]。上述した国立循環器病研究センターでの 502 例のうち、最終未発症確認時刻から

治療開始可能時刻まで 4.5 時間超 12 時間以内で発見後 3.5 時間以内に来院し臨床情報や画像所

見に rt-PA 静注療法の適応外項目を含まない 52 例(女性 32 例、75±18 歳)においては、来院

時 National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)中央値 13、発症 3 か月後の完全自

立(modified Rankin Scale [mRS] 0-1)は 11 例(21%)、機能的自立(mRS 2)を含めた

自立は 16 例(31%)、高度機能障害ないし死亡(mRS 4-6)は 28 例(54%)と、転帰不良

例が多かった。この 52 例を起床時発見例 24 例(女性 17 例、75±22 歳)と日中発見例 28 例

(女性 15 例、76±13 歳)に分けると、来院時 NIHSS 中央値は 15.5 対 11、発症 3 か月後の

mRS 0-1 は 21%対 21%、mRS 0-2 は 25%対 36%、mRS 4-6 は 67%対 43%で、前者がよ

り重症で転帰不良な傾向が見られた。

発症時刻不明の脳梗塞においては、本人が発症していない状態を確認できた最終時刻

をもって、発症時刻とみなす。すなわち、前夜 21 時に就床した患者 A が、翌朝 6 時に起床し

て麻痺に気づき、7 時に来院したときには、既に最終未発症確認時刻から 10 時間が経過し、rt-PA 静注療法や機械的再開通療法の適応とならない。しかしながら、睡眠中の脳梗塞発症は、概

して起床直前、少なくとも起床前 1 時間以内であろうと推察されている。それを示唆する証拠

として、睡眠時発症脳梗塞患者と発症時刻確定脳梗塞患者の初療時 CTやMRI での早期虚血変化

所見に差が見られないこと[7,8]、血圧値や交感神経活動、エピネフリン等の代謝、凝固線溶能

等に日内較差があり、起床時にこれらが亢進すること等が挙げられる[9]。この推察が正しけれ

ば、例示した患者 A は来院時点で発症後長くとも 2 時間以内であったと推測され、rt-PA 静注療

法の適応を有することになる。したがって、発症時刻不明脳梗塞患者のなかに、本来 rt-PA 静

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THAWS

注療法に適う者が多く存在すると言えよう。

問診で発症時刻を特定できない患者の発症時刻を推定する手段に、頭部 MRI が挙げら

れる。MRI の各種撮像法のうち、拡散強調画像(diffusion weighted image: DWI)が発症後

1 時間以内の早期虚血変化も描出できるのに対して、 fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR)画像は 3 時間以内の早期虚血変化を同定し難いとされるので[10]、両者の陽性所見

の差をもって発症時間が 3 時間以内か否かを予測できるかもしれない。また潅流画像

(perfusion weighted image: PWI)で描出される潅流異常域と DWI陽性所見の差を持って、

虚血変化を呈していない可逆性の潅流異常域、いわゆる虚血性ペナンブラとみなすことが多く、

発症時刻が特定できなくても DWI 所見が大きくなく、かつ DWI-PWI のミスマッチ領域が一定

の範囲で存在すれば、rt-PA 静注療法の適応となり得るかもしれない[11]。

1-2. 後方視的研究Barreto ら[12]は発見(起床)後 3 時間以内に治療開始可能で、初回頭部 CT での早期

虚血変化が一側中大脳動脈領域の 1/3 未満である発症時刻不明脳梗塞患者 46 例に、rt-PA 静注

ないし局所動注を行った。治療後の sICH 発症率は 4.3%であった。初期重症度で調整した後の

転帰良好例(mRS 0-2:機能的自立を含めた自立例)の割合は 28%で、非治療者での 13%よ

り有意に多かった半面、死亡率もまた高かった(15%対 0%)。またこの成績は、3 時間以内

に rt-PA 静注療法を行った発症時刻確定脳梗塞患者の成績と同程度であった。

Cho ら[13]は、発見(起床)後 6 時間以内に治療開始可能で、初回頭部 MRI で DWI 病

変が一側中大脳動脈領域の半分未満、DWI-PWIミスマッチが 20%超で FLAIR で明確な病変が

同定できない発症時刻不明脳梗塞患者 32 例に、rt-PA 静注ないし血管内治療を行った。sICH は

6.3%に生じ、完全自立を示す mRS 0-1 を 37.5%、mRS 0-2 を 50%に認め、発症時刻確定脳

梗塞患者への既報の成績と同等と評価した。

1-3. 前方視的研究韓国 で 行われ た Reperfusion therapy in unclear-onset stroke based on MRI

evaluation (RESTORE) 試験[14]では、発見(起床)後 6 時間以内(ただし rt-PA 静注に関し

ては 3 時間以内)に治療開始可能で、初回頭部MRI で DWI 病変が広汎でなく(一側中大脳動脈

領域の 1/3 以下など)、DWI-PWIミスマッチが 20%超で FLAIR 病変が DWI 病変より小さい発

症時刻不明脳梗塞患者 83 例に、rt-PA 静注ないし血管内治療を行った。sICH は 3.6%に生じ、

3 か月後に mRS 0-1 を 28.9%、mRS 0-2 を 44.6%に認め、この試験と別に前向きに登録した

未治療者と比べて有意な転帰改善を認めた。

わが国では Aoki ら[15]が単施設で、発見(起床)後 3 時間以内に治療開始可能で、

DWI-FLAIRミスマッチを有する 10 例に、rt-PA 静注療法を行い、うち 5 例に 7 日後の NIHSS値 10点以上の改善を認め、また 3 か月後に mRS 0-1 を 3 例(30%)、mRS 0-2 を 4 例

(40%)に認めた。同施設での症例を追加して、DWI-FLAIRミスマッチを有する 20 例につい

て行われた報告では、sICH は 1 例も起こらず、mRS 0-1 を 33%、mRS 0-2 を 47%に認めた

[16]。- 12 -

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THAWS

既出の研究における有効性、安全性の情報を、表2に纏める。

表 2. 既出研究における有効性、安全性の情報

研究者 治療 sICH mRS 0-1 mRS 0-2 死亡

Barreto ら[12] IV/IA rt-PA 4.3% 14% 28% 15%

標準治療 0 6% 13% 0

Cho ら[13] IV rt-PA or IA urokinase 6.3% 37.5% 50% -

RESTORE 試験[14] IV rt-PA or 血管内治療 3.6% 28.9% 44.6% -

標準治療 - - 32.7% -

Aoki ら[16] IV rt-PA 0 33% 47% 13%

申請者ら 標準治療 - 21% 31% 8%

1-4. 進行中の臨床試験渉猟し得る範囲で、現在発症時刻不明脳梗塞患者に対象を限定した前向き試験が 6件

(AWOKE, SAIL-ON, Wake-Up, Wake-Up Stroke, WASSABI, WUS-rTPA)、対象の一部に発

症時刻不明脳梗塞患者を含む前向き試験が 4件(DAWN, DIAS-3/4, EXTEND, MR Witness)

進行中である。このうち、対象患者を 2 群ないし 3 群に無作為化割り付けした 3 試験(Wake-Up, WASSABI, WUS-rTPA)を紹介する。

Wake-Up (Efficacy and Safety of MRI-based Thrombolysis in Wake-Up Stroke)[17]はドイツなど欧州を中心に行われる第Ⅲ相実薬偽薬比較試験で、800 例を目標に 2012 年

から患者登録が始まっている。対象は最終未発症確認時刻から 4.5 時間を超え、発見(起床)

後 4.5 時間以内に治療開始可能であり、かつ頭部 MRI で DWI-FLAIRミスマッチを有する患者

である。実薬群はアルテプラーゼによる静注血栓溶解療法である。主要評価項目は 90 日後の

mRS 0-1 と mRS 4-6 の割合、および死亡率である。

WASSABI (Wake-Up Symptomatic Stroke - Benefit of Intravenous Clot Busters or Endovascular Intervention)[18]は米国を中心に行われる第Ⅱ相 3 群間比較試験で、90 例

を目標に 2011 年から患者登録が始まっている。対象は最終未発症確認時刻から 24 時間以内で、

頭部 CT で広汎な早期 虚 血 変 化 を 有さず ( Alberta Stroke Program Early Computed Tomography Score [ASPECTS] 7 以上)で、CT潅流画像でミスマッチを有する患者である。

アルテプラーゼによる静注血栓溶解療法群、血管内治療群、抗血小板薬とスタチンを用いた標

準治療群に分ける。主要評価項目は 90 日後の mRS である。

WUS-rTPA (Randomized,controlled,open study to evaluate the response to r-TPA therapy vs clinical standard therapy in patients affected by ictus at awakening

- 13 -

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THAWS

coming in ER within 3 hours from symptoms compare)[19]はイタリアを中心に行われる

第Ⅱ相実薬標準治療比較試験で、120 例を目標に 2010 年から患者登録が始まっている。対象

は発見(起床)後 3 時間以内に治療開始可能であり、頭部 CT の ASPECTS 7 以上の患者である。

アルテプラーゼによる静注血栓溶解療法群と標準内科治療群とに分ける。主要評価項目は 90 日

後の mRS 0-2 である。

2. 試験の目的と根拠2-1. 目的

睡眠中発症および発症時刻不明の急性期脳梗塞患者を対象とし、アルテプラーゼ 0.6 mg/kg を用いた静注血栓溶解療法の安全性と有効性を、標準内科治療群との多施設共同非盲検

群間比較法を用いて評価する。

2-2. 評価項目2-2-1. 主要有効性評価項目

試験開始 90 日後における mRS を 0~1 とする臨床的改善率

2-2-2. 副次有効性評価項目

試験開始 24 時間後、7 日後における NIH Stroke Scale 値のベースライン値からの変

試験開始 90 日後における mRS を 0~2 とする臨床的改善率

試験開始 90 日後における mRS をシフト解析を用いて評価した臨床的改善率

2-2-3. 安全性評価項目

試験開始後 24 時間以内の sICH 発現率

試験期間中の大出血発現率

試験期間中の全死亡

2-3. 倫理的根拠睡眠中発症および発症時刻不明の急性期脳梗塞患者の多くは、発症ないし最終未発症

確認時刻から 4.5 時間以内に治療を始めなければいけないアルテプラーゼ静注血栓溶解療法を、

受けられない。しかしながら、睡眠中の脳梗塞発症は、概して起床直前、少なくとも起床前 1時間以内であろうと推察され、既出の臨床研究では MRI の画像所見(DWI-FLAIRミスマッチ、

DWI-PWIミスマッチなど)を指標とすることで睡眠中発症脳梗塞患者の中から静注血栓溶解療

法の適応になり得る患者を抽出し、高い安全性で治療を遂行できた。睡眠中発症以外の発症時

刻不明急性期脳梗塞患者に対しては、発見直前の発症とは推測できないが、同様に画像所見を

指標として適応患者を抽出し、高い安全性で治療を遂行できた。進行中の臨床試験においても、

同様に画像所見を指標として患者適応を判断している。対照群に割り振られた患者が、適切な

従来治療を受けられるよう、また介入群の出血事象に対して、迅速かつ適切に対応できるよう

に、本試験は非盲検化とし、対照群には現時点でガイドラインに推奨される内科標準治療を行

うこととした。

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Page 15: thaws.stroke-ncvc.jp · Web view発症時刻不明の脳梗塞においては、本人が発症していない状態を確認できた最終時刻をもって、発症時刻とみなす。すなわち、前夜21時に就床した患者Aが、翌朝6時に起床して麻痺に気づき、7時に来院したときには、既に最終未発症確認時刻から10時間が経過し、rt-PA静注療法や機械的再開通療法

THAWS

睡眠中発症および発症時刻不明の急性期脳梗塞患者に高く推奨された超急性期治療が

行えない状況下で、このような患者の中から静注血栓溶解療法の適応患者を抽出して、内科標

準治療での成績と比べることは、意義あることと考える。対象患者にとっては、定期検査や

フォローアップ検査への協力を求められるが、通常の医療と本質的に異なるものではない。本

試験による治療の安全性に問題が見られた場合には、試験を早期中止するなど、倫理的に配慮

した計画になっている。また本試験は、「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則を遵守して行

われる。

3. 試験デザイン3-1. 試験デザインの概要

図 1.  試験デザインの概要

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Page 16: thaws.stroke-ncvc.jp · Web view発症時刻不明の脳梗塞においては、本人が発症していない状態を確認できた最終時刻をもって、発症時刻とみなす。すなわち、前夜21時に就床した患者Aが、翌朝6時に起床して麻痺に気づき、7時に来院したときには、既に最終未発症確認時刻から10時間が経過し、rt-PA静注療法や機械的再開通療法

THAWS

並行群間比較、ランダム化、非盲検、実薬・標準治療対照試験。

各被験者の試験期間は 90 日間の予定である。

急性期脳梗塞への内科標準治療を対照として、アルテプラーゼを用いた静注血栓溶解

療法(介入群)を検討する。

介入群と対照群が 1:1 になるように割り付ける。なお、群間での初期重症度の偏りを

回避するため、NIHSS 値を考慮した割付を行う。

3-2. 試験デザインの設定根拠

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THAWS

群間の被験者選択の偏りを回避するために、無作為割付法を採用した。

4. 対象被験者4-1. 対象疾患

脳梗塞

4-2. 選択基準1. 急性期脳梗塞と診断された患者

2. 年齢:20 歳以上

3. 性別:男女とも

4. 発症時刻不明

5. 最終未発症確認時刻から治療開始可能時刻まで 4.5 時間超

6. 発見から 4.5 時間以内に治療開始可能

7. DWI での ASPECTS ≥58. FLAIR で初期虚血病変と考えられる明らかな高信号所見の不在 

9. 治療前 NIHSS 2~2510. 本研究への参加について、書面による本人または代諾者の同意が得られている。

4-3. 選択基準の設定根拠1. 本試験の対象疾患である。

2. 自らの責任で試験に参加できる年齢を 20 歳以上と考えた。

3. 本試験結果は、性差なく実臨床に反映されると考えた。

4. 本試験の根幹をなす対象者の要因である。

5. 本試験の根幹をなす対象者の要因である。

6. 睡眠中の脳梗塞発症は、概して発症直前、長くとも起床前 1 時間以内であろうと推察

される。画像診断所見と組み合わせることで、実際の発症から 4.5 時間以内の患者に

治療する可能性が高いと考えた。また、統合解析を計画している Wake-Up [17]の基

準とも合わせた。

7. DWI での ASPECTS 5 以下が sICH と、また 4 以下が死亡と良く相関することが、アル

テプラーゼ静注療法適正治療指針第二版にも記載されている[1,20]。Aoki ら[16]の先行研究で、ASPECTS ≥5 を登録基準として、高い安全性でアルテプラーゼ静注療法を

遂行できた。

8. 既出の臨床研究では MRI の DWI-FLAIRミスマッチを指標とすることで睡眠中発症脳

梗塞患者の中から静注血栓溶解療法の適応になり得る患者を抽出し、高い安全性で治

療を遂行できた。

9. 2014 年のメタ解析で NIHSS0〜4 と軽症でもアルテプラーゼ静注療法により転帰良好

(mRS 0-1)が有意に増加することが示された[21]。しかし、NIHSS0〜1 は静注血栓

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THAWS

溶解療法の治療効果が転帰に反映されないほど軽症過ぎると判断した。NIHSS 26 以上

は、アルテプラーゼ静注療法適正治療指針にも慎重投与例と記載され [1]、静注血栓溶

解療法による ICH 発症の危険が高まると判断した。

10. 疾患の性格上、被検者が意識障害や失語症によりコミュニケーション困難な場合に

は家族等の代諾者による同意も可とした。

4-4. 除外基準1. 発症前 mRS >12. アルテプラーゼ静注療法適正治療指針第二版での適応外症例[1]

i. 非外傷性 ICH の既往

ii. 1ヵ月以内の脳梗塞(一過性脳虚血発作を含まない)の既往

iii. 3ヵ月以内の重篤な頭部脊髄の外傷あるいは手術の既往

iv. 21 日以内の消化管あるいは尿路出血の既往

v. 14 日以内の大手術あるいは頭部以外の重篤な外傷の既往

vi. アルテプラーゼの過敏症

vii. くも膜下出血の合併を疑う例

viii. 急性大動脈解離の合併

ix. 出血の合併(頭蓋内,消化管,尿路,後腹膜,喀血)

x. ベースライン時の収縮期血圧が降圧療法後も 185mmHg 以上

xi. ベースライン時の拡張期血圧が降圧療法後も 110mmHg 以上

xii. 重篤な肝障害の合併

xiii. 急性膵炎の合併

xiv. ベースライン時の血糖異常(<50mg/dl,または>400mg/dl)xv. ベースライン時の血小板 100,000/mm3以下

xvi. 抗凝固療法中ないし凝固異常症においてベースライン時の PT-INR>1.7 ま

たは aPTT の延長(前値の 1.5倍[目安として約 40秒]を超える)

3. MR 検査不能の患者(MR 非対応ペースメーカーの装着など)、および体動等で MR 評

価不能な患者

4. 小脳、脳幹ないし大脳半球の前大脳動脈領域または後大脳動脈領域に広汎な早期虚血

変化を有する患者(目安として脳幹断面の半分以上ないし一側小脳半球、一側前大脳

動脈領域の半分以上、あるいは一側後大脳動脈領域の半分以上)

5. 試験期間中に頭部・頸部の手術や血管内治療(Merci, Penumbra等を用いた機械的再

開通療法を含む)を予定している患者

6. 妊婦、授乳中の患者、妊娠している可能性のある患者

7. 余命 6 か月未満と予想される末期の疾患を有する患者。

8. その他、試験担当医師が本試験の対象として不適当と判断した患者

4-5. 除外基準の設定根拠1. 評価項目である mRS 0-1, mRS 0-2 への改善度を評価する上で、発症前から mRS が

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THAWS

1を超えた患者を登録することは、不合理である。

2. 被験者の安全性を考慮し、除外した。

3. MR 検査結果を得なければ、選択基準の 7, 8 を判定できない。

4. 小脳、脳幹ないし大脳半球の前大脳動脈領域または後大脳動脈領域に広汎な病変を有

する重症例は、ASPECTS によって判別することが出来ないため、被験者の安全性を考

慮し除外した。

5. 手術や血管内治療は 90 日後転帰に大きく影響し、対象患者の転帰を比較検討する上で

不適切な要因である。

6. 被験者の安全性を考慮し、除外した。

7. 90 日後転帰に大きく影響し、対象患者の転帰を比較検討する上で不適切な要因である。

4-6. 被験者の中止と追加下記事項に該当する被験者は、本試験を中止する。

1. 被験者本人、または被験者の代理人として同意文書に署名した者が、同意を撤回し

た場合。

2. 被験者が追跡不能な場合。

3. 安全性もしくは有効性に関する理由により、本試験から脱落することが、当該被験

者にもっとも有益になると、試験責任医師が判断する場合。

中止した被験者がすでに試験薬を投与されている場合は、代わりの被験者の追加は行

わない。ただし、中止した被験者が試験薬の投与を受けなかった場合においては、代わりの被

験者を追加することとする。中止した被験者についても、可能であれば 90 日まで追跡する。

5. 試験薬5-1. 被験薬

一般名 アルテプラーゼ (グルトパ®、アクチバシン®):添付溶解液で溶解し、

0.6 mg/kg の 10%を急速投与、残りを 1 時間で単回静注する。

5-2. 被験薬の取り扱い被験薬は、田辺三菱製薬株式会社と協和発酵キリン株式会社より無償提供される。被

験薬は、両社より被験薬管理部(国立循環器病研究センター薬剤部)に搬入され、被験薬管理

部において室温で保管される。被験薬管理部から適宜研究参加施設に、被験薬を送付する。被

験薬管理部責任者は、被験薬すべての受領、送付、返却について、適切に記録する。

5-3. 他の使用薬剤一般名 エダラボン (ラジカット®など):1回 30mg を 1 日 2回点滴静注する。

一般名 アスピリン (バイアスピリン®、バファリン配合錠 A81®など):経口投

与する。

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一般名 クロピドグレル硫酸塩 (プラビックス®):経口投与する。

一般名 アルガトロバン (ノバスタン®、スロンノン®など):投与初日は 1 日

60mg を適当量の輸液で希釈し、24 時間かけて持続点滴静注する。

一般名 未分画ヘパリン:投与初日は 1 日 1万単位以下を、24 時間かけて持続点滴静

注、ないし 2回に分けて皮下注する。

5-4. 試験薬の投与方法5-4-1. 介入群

アルテプラーゼを登録時に単回投与する。

エダラボンを登録時より使用開始する。ただし試験担当医師が投与を不適切と判

断した場合には、使用しない。

アルテプラーゼ投与終了後 24 時間以内には、アスピリン(75~300mg/日)、ク

ロピドグレル(75mg/日)、アルガトロバン、未分画ヘパリンは原則として用い

ない。ただし試験担当医師が投与を必要と判断した場合には、1剤のみ用いてよ

い。この場合、クロピドグレルよりもアスピリンを、またアルガトロバンよりも

未分画ヘパリンを、優先的に用いる。

アルテプラーゼ投与終了後 24 時間以降は、上記試験薬(アルテプラーゼを除く)

の使用の有無は試験担当医師の判断に従ってよい。

5-4-2. 対照群

アルテプラーゼを用いない。

エダラボンを登録時より使用開始する。ただし試験担当医師が投与を不適切と判

断した場合には、使用しない。

試験開始後 25 時間以内には、アスピリン(160~300mg/日)、クロピドグレル

(75mg/日)、アルガトロバン、未分画ヘパリンのうち、1~3剤を用いて治療す

る。ただしヘパリンとアルガトロバンの併用を禁じる。

試験開始後 25 時間以降は、上記試験薬(アルテプラーゼを除く)の使用の有無は

試験担当医師の判断に従ってよい。

5-5. 併用禁止薬併用禁止薬は下記のとおりである。ただし、禁止期間についてとくに注釈のない薬剤

に関しては、被験薬投与終了後 24 時間以降(対照群においては試験開始後 25 時間以降)また

は試験中止時以降は、併用薬に関する制限を設けない。下記薬剤を発症前に服用していた患者

も、被験薬投与終了後 24 時間以内はその服用を認めない。

血小板凝集抑制作用を有する薬剤: チクロピジン塩酸塩、シロスタゾール、オ

ザグレル、PGE1製剤、PGI2製剤、イコサペント酸エチル、サルポグレラート塩

酸塩、ジピリダモール、トラピジル、ジラゼフ塩酸塩、トリメタジジン塩酸塩な

抗凝固薬: ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、

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低分子ヘパリン、フォンダパリヌクス、メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファ

モスタット、メシル酸カモスタット、乾燥濃縮人アンチトロンビン III、乾燥濃縮ヒト活性化プロテインCなど

血栓溶解薬: ウロキナーゼなど (介入群における試験薬としてのアルテプ

ラーゼ以外は、試験開始日から試験終了日または中止時まで、使用禁止)

 

5-6. 併用禁止療法被験薬投与終了後 24 時間以内(対照群においては試験開始後 25 時間以内)の脳血管

内治療を禁止する。ただし、被験者の利益性の観点から同治療が必要と判断される場合は、試

験を中止する。この場合も、90 日後までの追跡を行う。

6. 登録・割付6-1. 登録

症例登録は、文書による研究参加への同意を取得した後に、各施設の担当者が行う。

登録には Web メールと国立循環器病研究センターが保有するサーバーを利用したシステムを用

いる。

6-2. 割付各被検者は、介入群または対照群のいずれかに、1:1 になるように無作為に割り付け

る。なお、群間での初期重症度の偏りを回避するため、NIHSS 値を割付調整因子とする。

7. 試験方法7-1. 概要

試験期間中の投薬や評価のスケジュールを表 1(18頁)に示す。

7-2. 各評価時点での治療・評価7-2-1. ベースライン時

試験薬を投与する前に、ベースライン時の評価を行う。ベースライン時には、同意の

取得、診察(NIHSS を含む)、12誘導心電図、血液検査、尿検査(被験薬投与終了 24 時間後

までに行う、ただしこの期間までに尿検体が採取できなければ、それ以降の直近の尿検体で測

定して良い)、画像診断を行い、適格性(選択・除外基準)を確認する。適格性が確認された

患者のみ、登録する。

血液・尿検査項目は、表 2 に示すとおりである。画像診断として MRI 装置を用い、頭

部の DWI、FLAIR、T2*強調画像、MRA を撮像する。検査可能な施設においては、PWI も撮像

する。

表 1. 試験のスケジュール

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ベースライン試験薬

投与開始時観察期間

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評価時点 0 時間後投与終了

24 時間後*7 日後または

退院時†

90 日後また

は中止時

許容範囲 ±3 時間 ±1 日 ±14 日

同意取得 ✓

被験者背景 ✓

選択/除外基準 ✓

無作為化 ✓

診察

NIHSS ✓ ✓ ✓

mRS 発症前 ✓ ✓

身長・体重 ✓

血圧・脈拍 ✓ ✓ ✓

体温 ✓

臨床検査・画像診断

血液検査 ✓ ✓

尿検査 ✓

12誘導心電図 ✓

頭部MRI ✓ ✓ ✓

【任意】PWI (✓)

ICH 確認画像 ✓

有害事象 ✓ ✓ ✓ ✓

試験薬投与 ✓

* 頭部MRI と ICH 確認画像は投与終了の 22~36 時間後に撮影する

† 頭部MRI は 7~14 日後(許容範囲:±1 日)または退院時に撮影する。

7-2-2. 試験薬投与

介入群では、脳梗塞の発見後 4.5 時間以内に、アルテプラーゼ静注を開始する。また

試験担当医師が不適切と判断しない限りは、エダラボン点滴静注を併用する。初回エダラボン

点滴は、アルテプラーゼ静注の開始前が望ましい。アルテプラーゼ静注終了 24 時間後までは、

抗血栓薬の投与は望ましくないが、深部静脈血栓症予防などの目的で試験担当医師が投与を必

要と判断した場合には、アスピリン(75~300mg/日)、クロピドグレル(75mg/日)、アル

ガトロバン、未分画ヘパリンのうち 1剤のみ用いて治療する。

対照群では、介入群の試験薬投与開始時刻の方針に準じて、試験担当医師が不適切と

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判断しない限りは、エダラボンを点滴静注する。また抗血栓薬として、アスピリン(160~

300mg/日)、クロピドグレル(75mg/日)、アルガトロバン、未分画ヘパリンのうち、ヘパ

リンとアルガトロバンの併用を除く試験薬を 1~3剤を用いて治療する。

アルテプラーゼ静注終了 24 時間後(対照群においては治療開始約 25 時間後)以降は、

試験担当医師が適切と判断する急性期脳梗塞治療を行う。

7-2-3. 試験薬投与終了 24 時間後における評価

血圧および脈拍を測定する。NIHSS を評価し、血液検査を行う。血液検査項目は、表

2 に示すとおりである。投与終了の 22~36 時間後に画像撮影(原則として頭部MRI)で sICHの有無を確認する。また頭部MRI(DWI、FLAIR、T2*強調画像、MRA)を撮影する。この評価

時点までに発生した全ての有害事象を、記録する。

7-2-4. 7 日後または退院時における評価

7 日後または退院時のどちらか早い時点で、NIHSS と mRS を評価する。また 7~14日後または退院時のどちらか早い時点で、頭部MRI(FLAIR)を撮影する。この評価時点まで

に発生した全ての有害事象を、記録する。

7-2-5. 90 日後または中止時における評価

mRS を評価する。この評価は、被験者がどの群に割り付けられたかを知らされていな

い医師が行う。評価を担当する医師は、mRS の評価を訓練し技術認定するコンピュータープロ

グラムの認定を、あらかじめ受ける。なお、日本語版 mRS においてもその信頼性についての

検討がなされており、評価者間一致性(級内相関係数 0.947)、評価の再現性(0.865)とも

にきわめて高いことが報告されている[22]。この評価時点までに発生した全ての重篤な有害事象を、記録する。

表 2.  血液・尿検査項目

血液学的検査 白血球数、血小板数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット

生化学検査 総蛋白、総ビリルビン、AST(GOT), ALT(GPT),γ-GTP, 尿素窒素, クレアチニン、ナトリウム, カリウム, 血糖、CRP※以下の項目は、ベースライン時、24 時間後、ないしこの両期間内の

任意の時点で 1回のみ測定されれば良い

尿酸、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロー

ル、トリグリセライド、尿酸、総蛋白、アルブミン、ヘモグロビン

A1c凝血学的検査   PT-INR, aPTT   (24 時間後は不要)

尿検査 潜血、蛋白、糖

7-3. 試験の中断と中止

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7-3-1. 試験の中断

試験実施中に、安全性評価基準に詳記した症候性頭蓋内出血、大出血、死亡の発生頻度

が一定の割合を超えた際などに、独立安全性評価委員会は試験の中断・中止や試験計画の変更

を勧告する。安全性その他の問題に関連して、独立安全性評価委員会あるいは施設の倫理委員

会等より試験中断の勧告が出た場合、運営委員会は全ての実施医療機関における新規被験者の

組み入れを中断し、その旨を各実施医療機関の研究責任者を通じ医療機関の長に報告する。運

営委員会は、研究計画書の改訂、手順の見直しその他必要な措置をとり、勧告を出した団体の

承認を得た上で、試験を再開する。

7-3-2. 試験の中止

試験実施中に、以下の状況が発生した場合、運営委員会は試験を中止する。

1. 試験中断後に運営委員会が行った措置について、勧告を出した団体の承認を得ら

れなかった場合

2. 独立安全性評価委員会より早期中止の勧告が出た場合

3. その他、運営委員会が試験の中止が適当と判断した場合

8. 有害事象8-1. 定義

介入群、対照群の全被検者に試験期間中に生じた、あらゆる好ましくない、あるいは

意図しない徴候(バイタルサインや臨床検査値の異常を含む)、症状、または疾病のことであ

り、当該試験薬との因果関係を問わない。

8-1-1.  重篤な有害事象

有害事象のうち、以下のものを重篤な有害事象とする。

1. 死亡

2. 死亡につながるおそれのあるもの

3. 治療のために病院または診療所への入院または入院期間の延長が必要となるもの

4. 障害

5. 障害につながるおそれのあるもの

6. その他、1~5 に準じて重篤であるもの

7. 後世代における先天性の疾病または異常

8-1-2.  因果関係

以下の2つに分類される。

関連なしとはいえない:有害事象の発現と当該試験薬投与との間の時間的関連性

が示唆され、なおかつ試験薬以外の要因による可能性は同等またはそれ以下であ

る。

関連なし:有害事象の発現と当該試験薬投与との間に、時間的関連性がない。ま

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たは原疾患、合併症あるいは他の薬剤の影響によるものと考えられる。

8-1-3.  転帰

重篤な有害事象が発現した場合、その転帰を評価する。以下の 5 つに分類される。

回復:完全に回復し、症状は全く認められない。

回復中:回復傾向にあるが、何らかの症状が認められる。

回復したが後遺症有り:回復したが、何らかの症状が残っている。

未回復:症状は改善せず、変化が見られない。

死亡

8-2. 個々の有害事象の定義8-2-1. 症候性頭蓋内出血(sICH)

適切な画像診断によって確認された ICH で、NIHSS 値を 4 以上悪化させる結果を伴う

もの。重篤な有害事象にあたる。

8-2-2. 無症候性頭蓋内出血

適切な画像診断によって確認された ICH で、sICH の定義を満たさないもの。

8-2-3. 大出血

ICH 以外の貧血または出血事象で、試験責任医師によって被検者の生命を脅かす危険

があると判定されたもの。国際血栓止血学会の大出血基準に基づき、以下のいずれかの項目を

満たすものとする。重篤な有害事象にあたる。

致死的出血

重要な部位または臓器における症候性出血(髄腔内,眼内,後腹膜,関節内また

は心膜,筋コンパートメント症候群を伴う筋肉内出血)

ヘモグロビン値の 2 g/dL 以上の低下をもたらす出血,全血または赤血球 4.5 単位以上(1単位は 250ml相当)の輸血に至る出血

8-3. 有害事象発生時の対応試験担当医師は、有害事象が発現した場合、適切な処置を行うこと。重篤な事象の場

合は速やかに実施医療機関の長に報告するとともに、詳細を中央事務局に速やかに報告する。

中央事務局は、速やかに他の参加医療機関の研究責任者に情報を提供する。また、中央事務局

は、重篤な有害事象の情報を独立安全性評価委員会に報告し、判定を仰ぐ。

9. 統計解析本臨床試験の主たる目的にかかわる解析方法について、その概要を以下に記述する。

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Page 27: thaws.stroke-ncvc.jp · Web view発症時刻不明の脳梗塞においては、本人が発症していない状態を確認できた最終時刻をもって、発症時刻とみなす。すなわち、前夜21時に就床した患者Aが、翌朝6時に起床して麻痺に気づき、7時に来院したときには、既に最終未発症確認時刻から10時間が経過し、rt-PA静注療法や機械的再開通療法

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海外データとの対比・統合の方法やより詳細で技術的な内容については、別途作成する統計解

析計画書に記載する。臨床試験実施後に、解析計画に変更が生じた場合には、その変更を変更

理由とともに記録に残す。

9-1. 解析対象集団主要評価項目と副次評価項目について、最大の解析集団 (full analysis set: FAS)を主

たる解析集団、試験実施計画書に適合した集団(per protocol set: PPS)を副次集団として解析

を実施する。安全性評価項目については、安全性解析集団(safety analysis set: SAS)を解析対

象集団とする。FAS、PPS、SAS は次のように定義する。

9-1-1.  主要評価項目・副次評価項目の解析対象集団

1) FAS: 本試験に組み入れられ、静注血栓溶解療法群あるいは標準内科治療群のいずれ

かに割りつけられた被験者のうち,いずれの試験治療を一度もうけず,また治療開始後の主要

評価項目および副次評価項目のデータがまったく観測されなかった被験者を除く、被験者集団。

2) PPS: FAS のうち,主要評価項目と副次評価項目の評価に影響を及ぼすような試験計

画からの逸脱・違反のあった被験者(例えば,選択基準を逸脱した被験者,除外基準に抵触し

た被験者、併用禁止薬の規定に抵触した被験者など)を除く,被験者集団。

9-1-2. 安全性評価項目の解析対象集団

SAS: 本試験に組み入れられた被験者のうち,試験治療を一度もうけなかった被験者を

除く、被験者集団。

9-2. 目標被験者数300 例 (150 例/群×2 群)

根拠: 本試験では、睡眠中発症および発症時刻不明の急性期脳梗塞患者におけるア

ルテプラーゼ静注療法を用いた介入群での mRS を 0-1 とする臨床的改善が、対照群(標準内科

治療群)に比べてどの程度まで優れているかを評価することが主目的である。将来的に現在進

行中の海外の臨床試験(Wake-Up [17]、WASSABI [18]、WUS-rTPA [19]:いずれも詳細は

「1-4. 進行中の臨床試験」を参照)と統合解析を行い、介入による優越性を検討することを考

慮し、症例数を設計する。表 2 の既出研究での mRS 0-1, 0-2 の頻度は研究間でばらつきがあ

るが、大まかに纏めると介入群対対照群で mRS 0-1 を約 30%対約 20%、mRS 0-2 を約 40%対約 30%である。これらの既出の試験成績や先行する海外の臨床試験から、本試験におけるア

ルテプラーゼ静注療法を用いた介入群と標準内科治療群の効果それぞれを 30%と 20%と仮定

する。また,海外の臨床試験の参照値として介入群と標準内科治療群の効果をそれぞれ 30%と

20%とし、本試験における効果比(介入群/標準内科治療群)が海外試験の参照の効果比よりも少

なくとも 0.5 よりも大きいであることを示すために必要とされる症例数は、検出力 0.9、有意

水準 0.025(片側検定)のもとで 1 群 139 例と算出される。中止・脱落を約 10%として、各群

150 例,合計で 300 例を組み入れ目標症例数とする。

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9-3. 解析方法9-3-1. 被験者の人口統計的特性およびベースライン値

連続変数・カテゴリー変数といったデータの尺度に応じて,適切な統計量をもって要

約する。

9-3-2. 主要評価項目

治療群毎に、試験開始後 90 日後の mRS 0-1 の割合を信頼区間と伴に算出し、これら

の割合をカイ 2乗検定に基づき比較する。必要に応じて,被験者特性やベースライン値といっ

た共変量の影響を評価するために,ロジスティックモデルなどのモデルに基づく解析を実施す

る。

9-3-3. 副次評価項目

試験開始 24 時間後、7 日後における NIHSS 値のベースライン値からの変化について,

治療群毎に変化の平均とその信頼区間を算出する。治療群間の変化の比較には、ベースライン

値を共変量とする共分散分析を用いる。試験開始 90 日後の mRS 0-2 については、治療群毎に

それらの割合を信頼区間と伴に算出し、これらの割合をカイ 2乗検定に基づき比較する。mRSのシフト解析は、mRS分布の偏移の程度を、Cochran-Mantel-Haenszel 検定(予定)を用い

て解析する。

9-3-4. 安全性評価項目

治療群毎に、試験開始後 24 時間以内の症候性頭蓋内出血発現率、大出血発現率、全死

亡率を,信頼区間と伴に算出する。有害事象については,治療群毎に、有害事象の発現例数と

件数を算出する。また,これらを因果関係の有無別、重篤度別にも算出する。臨床検査値につ

いては、治療群毎に、適切な統計量をもって要約する。

9-3-5. その他の統計的事項

断らない限り検定は片側検定とし、検定の有意水準は 2.5%とする.信頼区間は両側信

頼区間とし、信頼係数は 95%とする。欠測値の対処として、Last Observation carried forward(LOCF)により補完し解析を実施するが、必要に応じてその他の欠測値補完の方法を検

討し、LOCF の結果の妥当性を吟味する。

9-4. データの収集とマネジメントデータマネジメント(data management: DM)は、国立循環器病研究センターデー

タサイエンス部の DM/統計室が行う。DM担当者は、DM/統計室の手順書に従い、症例報告書

(case report form: CRF)の作成と改訂およびデータシステムのセッティングを行う。各実

施医療機関の研究責任者は、データ収集の正確性と迅速性に責任を負う。各実施医療機関の担

当者は、データ入力を正確かつ迅速に行う。データ収集はインターネットを介した EDC システ

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ムを用いて行われる。DM担当者は、収集されたデータについて疑義がある場合にクエリを発

生させ当該施設に送付する。各実施医療機関の担当者は、送付されたクエリに迅速に対応し、

必要に応じてデータの修正等を行う。

10. 費用の支払い、健康被害補償および保険10-1. 資金源

本 研 究 は 、 国 立 研 究 開 発 法 人 日 本医療 研 究 開 発機構の委託研 究 開 発費

(15ek0210025h0002、発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓溶解療法の適応拡大を

目指した臨床研究、研究開発代表者 豊田一則)や 2010 年度公益信託美原脳血管障害研究振興

基金「美原賞」(受賞者 峰松一夫)を資金源として、運営される。また、田辺三菱製薬株式

会社と協和発酵キリン株式会社より被験薬の無償提供を受ける。

10-2. 診療に関する費用の支払い本研究は通常の健康保険の範囲内で行われ、研究期間中の観察、検査、使用薬剤等に

は、被験者の健康保険が適用される。ただしアルテプラーゼの適応外使用となるため、先進医

療として実施する。被験薬(アルテプラーゼ)は、製造販売企業(田辺三菱製薬株式会社、協

和発酵キリン株式会社)より無償で提供される。研究対象者に対する謝金、交通費等の支払い

は行われない。

10-3. 健康被害補償および保険参加施設を代表して、国立循環器病研究センターが一括して、健康被害補償に備える

ために必要な保険に加入する。介入群の患者のみを対象とする。

11. 倫理的事項11-1. 倫理

本試験は、「臨床研究に関する倫理指針」(平成 15 年厚生労働省告示第 255 号、平成

20 年 7 月 31 日全部改正)、およびヘルシンキ宣言の倫理的原則を遵守して実施される。研究

計画書は、研究開始前及び変更時に、倫理委員会の承認および実施医療機関の長の許可を得て

から実施される。本試験への参加は自由意思で決められる。参加を強制するものではなく、

不利益になることはない。また一旦参加した場合でも、不利益を受けることなく、いつで

も参加を撤回することができる。

11-2. 被験者の人権の擁護被験者の人権の擁護のため、事前に研究の内容、目的および安全性、不利益を蒙る可

能性についても十分に説明を行い、同意書に署名または記名・押印を取得した上で検査を実施

する。また、得られたいかなる個人情報についても秘密が厳守されることを保証する。登録

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データは厳重に保護される。臨床成績を医学雑誌などに発表する際には最大限にプライバシー

保護に努め、研究対象者の名前や身元などを明らかにしない。

11-3. 同意の取得試験担当医師は、本試験を実施する前に、倫理委員会の承認を得た説明文書を用いて 、

被験者または家族等の代諾者(被検者が意識障害や失語症によりコミュニケーション困難

な場合)に分かり易く説明し、参加について自由意思による同意を文書で得る。なお、被験者

の同意に関連し得る新たな重要な情報が得られた場合には、説明文書を改訂し、倫理委員会の

承認を得ることとする。また、参加を継続するか否かについての被験者の意志に影響を与える

可能性のある情報が得られた場合には、これに関して被験者または代諾者に時宜を得て知らせ、

伝達内容について文書に記録する。

11-4. 予想される危険性および個人の利益・不利益予想される利益として、被験薬(アルテプラーゼ)により脳梗塞が改善する可能性が

ある。また、今回の結果をもとに、発症時刻不明脳梗塞患者へのアルテプラーゼ静注療法の保

険適応が検討される可能性がある。

予想される不利益として、被験者が介入群に割り付けられた場合、通常診療でのアル

テプラーゼ静注療法と同程度(約 4~6%)以上の症候性頭蓋内出血の発生が予測される。対照

群においても症候性頭蓋内出血が起こり得るが、介入群の出血発症率の方が高いと予測される 。

症候性頭蓋内出血を発症した場合には身体機能の回復があまり期待できず、致命的な転帰をと

る可能性がある。また介入群アルテプラーゼの添付文書に記載されている項目、頻度の副作用

発生が予測される。登録データが流出する危険があるが、厳重に管理され持ち出しはできず、

また解析は匿名化して行うため、ほとんど起こりえない。

11-5. 利益相反本研究で用いられるアルテプラーゼの製造販売元と研究者の間に、一般社団法人

日本脳卒中学会が定める申告基準を超える利益相反はない。製造販売元は本研究計画、

データ管理、結果発表に寄与しない。今後申告基準を超える事態が生じた場合は、同学会

に自己申告書を提出する。

12. 試験管理情報12-1. 試験実施予定期間

先進医療として承認された後、2020 年 3 月 31 日まで

12-2. 個人情報保護データを登録する時点で、連結可能匿名化を行う。各施設の主任研究者が連結表を管

理する。匿名化されたデータおよび EDC による各研究参加施設とのデータ授受の記録は中央事

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務局の担当者が管理する。データの保存媒体は、アクセス制御によりシステム管理し、国立循

環器病研究センター内に設置されたセキュリティ措置を講じたサーバー内で管理される。サー

バーへのアクセスはユーザー ID ならびにパスワードで制限される。研究終了後 5 年間は資料を

保存する。保存期間終了後の資料は電子データの場合はデータ削除、紙媒体の場合はシュレッ

ダー処理にて適切に廃棄する。各施設の連結表も資料と同様に保存期間終了後に廃棄する。

12-3. モニタリングモニタリング業務は、中央事務局の担当者および DM担当者が中央モニタリングとし

て行う。なお、必要に応じて、主任研究者により指名された担当者がサイトモニタリング(原

資料閲覧を含む)を行う場合がある。また、当局、倫理委員会、施設長等の指示より指名され

た担当者が原資料閲覧を行う場合がある。

12-4. 公表本試験の概要は、 ClinicalTrials.gov(登録番号 NCT02002325)および UMIN

Clinical Trials Registry (登録番号 000011630)に公表される。

本試験で得られた研究成果は、研究参加施設の共同発表とし、英語論文として報告す

る。コレスポンデンスは主任研究者とする。

12-5. 知的所有権知的所有権が発生した場合、その権利は研究遂行者などに属し、被験者には帰属

しない。

12-6. 研究組織別添資料1に記載

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13. 参考資料13-1. 引用文献

1. 日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針

改訂部会。rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版。脳卒中 2012; 34: 443-480

2. 一般社団法人日本脳卒中学会。Merci リトリーバー適正治療指針について。 Available from: http://www.jsts.gr.jp/img/meric.pdf

3. 一般社団法人日本脳卒中学会。Penumbra システム適正治療指針について。 Available from: http://www.jsts.gr.jp/img/penumbra.pdf

4. Mackey J, Kleindorfer D, Sucharew H, Moomaw CJ, Kissela BM, Alwell K, Flaherty ML, Woo D, Khatri P, Adeoye O, Ferioli S, Khoury JC, Hornung R, Broderick JP. Population-based study of wake-up strokes. Neurology. 2011; 76: 1662-1667.

5. Kang DW, Kwon JY, Kwon SU, Kim JS. Wake-up or unclear-onset strokes: are they waking up to the world of thrombolysis therapy? Int J Stroke. 2012; 7: 311-320.

6. Koton S, Tanne D, Bornstein NM; NASIS Investigators. Ischemic stroke on awakening: patients' characteristics, outcomes and potential for reperfusion therapy. Neuroepidemiology. 2012 ;39: 149-153

7. Serena J, Dávalos A, Segura T, Mostacero E, Castillo J. Stroke on awakening: looking for a more rational management. Cerebrovasc Dis. 2003; 16: 128-133.

8. Todo K, Moriwaki H, Saito K, Tanaka M, Oe H, Naritomi H. Early CT findings in unknown-onset and wake-up strokes. Cerebrovasc Dis. 2006; 21: 367-371.

9. Marsh EE 3rd, Biller J, Adams HP Jr, Marler JR, Hulbert JR, Love BB, Gordon DL. Circadian variation in onset of acute ischemic stroke. Arch Neurol. 1990; 47: 1178-1180.

10.Thomalla G, Rossbach P, Rosenkranz M, Siemonsen S, Krützelmann A, Fiehler J, Gerloff C. Negative fluid-attenuated inversion recovery imaging identifies acute ischemic stroke at 3 hours or less. Ann Neurol. 2009; 65:724-732.

11.Fink JN, Kumar S, Horkan C, Linfante I, Selim MH, Caplan LR, Schlaug G. Is the association of National Institutes of Health Stroke Scale scores and acute magnetic resonance imaging stroke volume equal for patients with right- and left-hemisphere ischemic stroke? Stroke. 2002; 33: 954-958.

12.Barreto AD, Martin-Schild S, Hallevi H, Morales MM, Abraham AT, Gonzales NR, Illoh K, Grotta JC, Savitz SI. Thrombolytic therapy for patients who wake-up with stroke. Stroke. 2009; 40: 827-832.

13.Cho AH, Sohn SI, Han MK, Lee DH, Kim JS, Choi CG, Sohn CH, Kwon SU, Suh DC, Kim SJ, Bae HJ, Kang DW. Safety and efficacy of MRI-based thrombolysis in unclear-onset stroke. A preliminary report. Cerebrovasc Dis. 2008 ;25: 572-579.

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14.Kang DW, Sohn SI, Hong KS, Yu KH, Hwang YH, Han MK, Lee J, Park JM, Cho AH, Kim HJ, Kim DE, Cho YJ, Koo J, Yun SC, Kwon SU, Bae HJ, Kim JS. Reperfusion therapy in unclear-onset stroke based on MRI evaluation (RESTORE): a prospective multicenter study. Stroke. 2012; 43: 3278-3283.

15.Aoki J, Kimura K, Iguchi Y, Shibazaki K, Iwanaga T, Watanabe M, Kobayashi K, Sakai K, Sakamoto Y. Intravenous thrombolysis based on diffusion-weighted imaging and fluid-attenuated inversion recovery mismatch in acute stroke patients with unknown onset time. Cerebrovasc Dis. 2011; 31: 435-441.

16.Aoki J, Kimura K, Shibazaki K, Sakamoto Y. Negative fluid-attenuated inversion recovery-based intravenous thrombolysis using recombinant tissue plasminogen activator in acute stroke patients with unknown onset time. Cerebrovasc Dis extra. 2013; 3: 35-43

17.Thomalla G, Fiebach JB, Ostergaard L, Pedraza S, Thijs V, Nighoghossian N, Roy P, Muir KW, Ebinger M, Cheng B, Galinovic I, Cho TH, Puig J, Boutitie F, Simonsen CZ, Endres M, Fiehler J, Gerloff C; WAKE-UP investigators. A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial to test efficacy and safety of magnetic resonance imaging-based thrombolysis in wake-up stroke (WAKE-UP). Int J Stroke. 2013 Mar 12. doi: 10.1111/ijs.12011. [Epub ahead of print]

18.http://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01455935?term=Wake-Up+stroke&rank=6

19.https://www.clinicaltrialsregister.eu/ctr-search/trial/2010-019359-23/IT20.Nezu T, Koga M, Kimura K, et al. Pretreatment ASPECTS on DWI predicts 3-month

outcome following rt-PA: SAMURAI rt-PA Registry. Neurology. 2010; 75: 555-56121.Emberson J, Lees KR, Lyden P, et al. Effect of treatment delay, age, and stroke

severity on the effects of intravenous thrombolysis with alteplase for acute ischemic stroke: a meta-analysis of individual patients data from randomised trial. Lancet 2014;384:1929-1935

22.篠原幸人、峰松一夫、天野隆弘、大橋靖雄、mRS 信頼性研究グループ。modified Rankin Scale の 信頼性 に 関 す る 研 究-日 本語版判定基 準 書 お よ び問診表の紹介.脳卒中

2007;29:6-13

13-2. National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)

以下の神経学的所見を、42点満点で評価する。

1a. 意識水準 0:完全覚醒    1:簡単な刺激で覚醒

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2:繰り返し刺激、強い刺激で覚醒    3:完全に無反応

1b. 意識障害-質問(今月の月名、年

齢)

0:両方正解   1:片方正解   2:両方不正解

1c. 意識障害-従命(開閉眼、手を握

る・開く)

0:両方可     1:片方可    2:両方不可

2. 最良の注視 0:正常      1:部分的注視麻痺     2:完全注視麻痺3. 視野 0:視野欠損なし  1:部分的半盲  2:完全半盲  3:両側性半

4. 顔面麻痺 0:正常    1:軽度の麻痺   2:部分的麻痺  3:完全麻痺

5. 上肢の運動

(右)

仰臥位のときは

45°で

0:90°を 10秒間保持可能(下垂なし)    1:90°を保持できる

が 10秒以内に下垂   2:90°の挙上または保持が出来ない 

3:重力に抗して動かない    4:全く動きがみられない

5’. 上肢の運動

(左)

0~4:同上

6. 下肢の運動

(右)

0:30°を 5秒間保持可能(下垂なし)  1:30°を保持できるが 5秒以内に下垂  2:重力に抗して動きがみられる 

3:重力に抗して動かない    4:全く動きがみられない

6’. 下肢の運動

(左)

0~4:同上

7. 運動失調 0:なし     1:1肢    2:2肢8. 感覚 0:障害なし    1:軽度から中等度   2:重度から完全

9. 最良の言語 0:失語なし 1:軽度から中等度 2:重度の失語 3:無言、全失語

10. 構音障害 0:正常    1:軽度から中等度   2:重度

11. 消去現象と注意障害

0:異常なし   1:視覚、触覚、聴覚、視空間、自己身体への不注

意、または 1 つの感覚様式で 2点同時刺激に対する消去現象   

2:重度の半側不注意または 2 つ以上の感覚様式に対する半側不注意

13-3. modified Rankin Scale (mRS)0.まったく症候がない

1.症候はあっても明らかな障害はない:日常の勤めや活動は行える

2.軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介

助なしに行える

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3.中等度の障害:何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える

4.中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である

5.重度の障害:寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする

6.死亡

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