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The Journal of chemical physics 2008, 128, 052305, 雑誌会レジュメ
1
[序] 15N@C60 を使って電子スピン-核スピン系の、パルス ENDOR 法による Psuedopure state, Psuedo Entangled state の生成・検出を行っている。Density matrix tomography も導き出している。 (1)電子スピン遷移の 109.47°パルスと核スピン遷移の 90°による Pseudopure state の生成。 (2)Rabi oscillation の amplitude から Pseudopure state の Tomography を出す。また、パルスの不
完全性(理想的な 109.47, 90°パルスからのずれ)を導いている。 (3)Psudopure state に 90°パルス(核スピン遷移)と 180°パルス(電子スピン遷移)を作用
させて Pusedoentangled states を生成。 (4)Phase rotation (TPPI)法による Pseudoentangled states の検出。 (5)Rabi oscillation から Pseudoentangled states の density matrix の対角成分を決定。 (6)Pseudoentangled states の density matrix の非対角成分を導く。 (7)Pseudoentangled state の Decoherence time (8)Complete density matrix を記述。理論的予想に対する実験データの正確さを定量化するた
めに Fidelity を定義。 (9)Quantum critical temperature について。 この論文は、S = 3/2, I = ½ の系についての話であるが、まず、より単純な S = ½, I = ½ の系でど
のようにして Entanglement を達成するかについて述べる。初期状態は Zeeman product states
(1) とする。エンタングルメント状態は、まず 1 つのスピンに対してアダマール変換を行い、続いて
Controlled Not 操作を行うことによって達成される。
(2)
アダマール返還とは以下のような変換である。
)(
)(
↓−↑⎯→⎯↓
↓+↑⎯→⎯↑
212
1
H
H
同様の手続きによって、2qubit 系の4つの entangled states を生成することができる。 用いる系:Endohedral fullerene 15N@C60 について 15N@C60 のパウダーサンプルをもちいる。 N は C60 分子の中心に位置している。N には3つの不対電子がp軌道に存在し
ており S = 3/2 である。15N は I = ½. 磁場がz軸方向を向いている時のハミルトニアンは
(4) 分子は高い対称性をもっているので超微細相互作用は等方的で a = -22.08 MHz。窒素原子は C60
内に閉じ込められているのでフリーの窒素原子と比べて a の値は大きい。H2+H3 は second and third rank tensor と呼ばれるもので環境の等方性からのずれを表す。これは decoherence の要因に
なる。十分強い磁場のもとで、ハミルトニアンは1次のオーダーで
(5)
になる。nonsecular term は無視。 テンソル演算子を除くと固有値は
(6)
になる。8個の固有状態は
(7) によって与えられる。対応するエネルギーダイアグラムを図1に示す。 1次のオーダーでは、ΔmS=±1の ESR 遷移は、mI = +1/2, mI = -1/2 それぞれに対して縮重し
ているので、ESR スペクトルは、図2に示すように2本線、ENDOR 信号(ΔmI=±1)の信号
2
は4本線になる。
|+3/2, +1/2> |+3/2, ‐1/2>
|+1/2, +1/2>
|‐1/2, +1/2>
|‐3/2, +1/2>
|+1/2, ‐1/2>
|‐1/2, ‐1/2>
|‐3/2, ‐1/2>
15N@C60 におけるEntangled spin statesについて 図1に|1>, |2>, |7>, |8>だけを考えて、1番目の qubit を|±3/2>, 2番目の qubit を|±1/2>とする
Fictitious two state subsystem を定義する。エンタングルメント状態は次のようになる。
|+3/2 +1/2>, |+3/2 -1/2>, |-3/2 +1/2>, |-3/2 -1/2> を|00>, |01>, |10>, |11>と記述した。 量子状態のz回転 量子状態の tomography を求めるために後でz軸まわりでの phase rotation をおこなう。したがっ
て、Phase rotation を行った時の量子状態のふるまいについて簡単に述べておく。電子スピン Sのz軸まわりの角度φ1 、核スピン Iのz軸まわりのφ2の回転は次のユニタリー変換に対応する。
量子状態|mS mI>に作用させると
3
となる。 この変換を qubit 1 の重ね合わせ状態に作用させると、
となる。同様に qubit 2 の重ね合わせ状態に作用させると、
となる。 エンタングルメント状態に作用させると異なる振舞が導かれる。
=ΨΨ ++2727
=ΦΦ ++1818
エンタングルメント状態は上で記述した
Phase dependence を観測することによって証
明される。 [実験] 15N@C60 の希釈したパウダーサンプル。 マイクロ波:約 9.5 GHz ラジオ波:0~40 MHz 温度;50 K パルスシークエンスを次に図3に示す。
4
パルスは以下のように記述する。
x y
zβ: 回転角度 ±: mI = ±1/2 に対応する電子スピン遷移 x;y :パルスの Phase を示す。 jk :エネルギー準位 j k 間の核スピン遷移。 F :Fictitious spin ½ operators 任意の Phase のパルスは次のように記述する。
[結果と考察] (1)Pseudopure state の生成 熱平衡状態での密度行列
から始める。 、 高温近似を適用すれば式を簡単化できる。
I8 は 8x8 の単位行列。(23)式は以下のように書き直せる。
5
with
(25)式のρp を Pseudo-Boltzmann matrix と定義し、これを Pseudopure density matrix を生成する
出発点にする。 Pseudopure state を生成するために次のパルスを作用させる。
°==− 109.47 )31arccos(- with)( 00 ββyP (電子スピン遷移)
After a waiting time of τ1 = 5 μs ( all transverse components decay)
212 /παα == 00 with)(yP (核スピン遷移)
そうすると密度行列の対角成分が
となる状態が得られる。 ρ10 は|10>=|-3/2 +1/2>にだけ non 0 の値がある密度行列。
⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜
⎝
⎛
=
100000000100000000100000000100000000100000000100000000000000
12
/2)cos(/2)sin(/2)sin(-/2)cos(
)(
αααα
αyP
6
)(90)(109.5)(109.5)(90 °°°°= −− 121210 yyPyyp PPPP ρρ ~~
(2)Pseudopure states の Tomography Pseudopure density matrices の適切な生成を立証するために、電子スピン遷移、核スピン遷移の
Rabi oscillation を測定した。
π/2
t
Rabi Oscillations の大きさと最初の位相は
占有数差の大きさと位相を表している。 Rabi oscillation の大きさは、フーリエ変換
と対応するスペクトルの曲線の積分によ
って決定された。実験値は熱平衡値での値
で較正した。 占有数差の実験値からβ0の値は 109.2°で
あることがわかった。理想値は 109.5°。 ENDOR 遷移の Rabi oscillation の実験も行った。β0, α0 パルスを作用させた後の Rabi oscillationの大きさは
になる。実験よりα0 = 88.8°が導かれた。β0, α0 の理想値からのずれはマイクロ波磁場、ラジオ
波磁場の不均一性によるものである。β0, α0 の実験値から密度行列の対角成分の値は
になる。したがって、Pseudopure fictitious two qubit density matrix ρ10 は
同様にしてρ11 も得た。
7
(3)Pseudoentangled state の生成 核スピン遷移のπ/2 パルスののち電子スピン遷移のπパルスを作用させることにより Entangled state を生成した。
)(90°78yP )(180°−
yP
12
78
12
78
12
78
以下の density matrices を導く。
これは以下のようなユニタリー変換によって導かれる。
理想的な条件では、
になる。ボールドで書かれている成分が Fictitious two qubit submatrix である。
同様に、 状態も18
±Φρ 11Pρ から出発して得ることができる。
8
ボールド成分が fictitious two qubit submatrix である。
ラジオ波π/2 パルス幅は 1.6 μs マイクロ波π パルス幅は 88 ns Pseudopure 状態から Entanglement を生成するのにおよそ 1.7 μs かかっている。 上の密度行列の成分は理想的な条件のもとでの値である。 つぎに density matrix tomography によって実験的に得た密度行列について解析する。 (4)Entangled states の Phase rotation 先に記述したようにz軸まわりに回転させて異なる Entangled states を区別する Phase rotation のユニタリー変換は、
測定する量は の場合、mI = -1/2 electron spin subsystem の z 磁化である。したがって観測され
る信号の強さは、
±Ψ27
ただし、Fz-は mI = -1/2 subsystem の fictitious electron spin 3/2。(3φ1-φ2)の Phase dependence は 状±Ψ
9
態を特徴づける。
同様に、 状態を検出するユニタリー変換は ±Φ18
であり、検出シグナルは
になる。(3φ1+φ2)の Phase dependence は 状態を特徴づける。 ±Φ
Fig.3に示すパルスシークエンスを繰り返して、Phase dependence は観測された。Phase angles ϕ1,ϕ2は step Δϕ1, Δϕ2 で増えていく。
ここで、virtual time scale t = nΔt を導入する。それは
virtual frequencies ν1, ν2 を定義する。φ1, φ2 を同時に増加させたときの検出信号の Oscillatory behavior を図5にしめす。図5は Phase interferogramである。フーリエ変換による Phase incrementation の
周波数はν1 = 2.5 MHz, ν2 = 1 MHz である。エンタング
ルド状態は に対して 3ν1-ν2 (c,d), に対し
て 3ν1+ν2 (e,f)としてあらわれる。(a,b)は single spin phase。2ν1±ν2 はパルスの不完全性による Artifacts である。2ν1±ν2と 3ν1±ν2 の大きさの比はβ1 のπからのず
れに依存して以下の式になる。Fig.5c からεβの平均は
|εβ|=0.23と決定された。このεβはエンタングルド状態
の Fidelity として使われる。
27±Ψpρ 18
±Φpρ
(5)エンタングルド状態の Density matrix の対角成分の決定 pseudopure 状態の対角成分を決定したのと同じように、Rabi oscillation の Amplitude から対角成
分を決定した。
10
数値的解析から に対する回転アングルα-=86.6°, α112=86.8°, α1
78=88.7° を決定した。平均す
ると、
27−Ψpρ
Pseudopure 状態ρ10 とα1, |εβ|から密度行列 の対角成分 rjΨを得た。 27
−Ψpρ
sub level density matrix −Ψρ の対角成分は太字で書かれている。実験誤差は±0.05 以下。この値
は preparationから detectionまでの待ち時間 100μsの間のDecayの影響を受けているがそれは4%
である(decay time 2.6 ms)。 (6)エンタングルド状態の density matrix の非対角成分の決定 エンタングルド状態の生成のときの Pulse angles α1, β1が実験的に分かっているので、原理的に
は density matrix の非対角成分を計算することができるが、そのかわり、実際の値を得るために
tomography sequence を適用した。 Fig.3 のシークエンスでφ2 を固定し、いろいろなφ1 で回転アングル(α:7−8 transition)を増加
させた(Fig. 6)。シグナルは対角成分と非対角成分に依存する。
Α3とΑ4の項を抽出することができる。Fig.5c から得た A3/A4 をもちいて Fig.7のデータを fit する
ことにより A4を決定することができる。 の最も重要な非対角要素 r27=r72 は次の形式で A427
−Ψpρ
11
パラメータに含まれる。
r27 の値として
を得た。 これは理論値 t27
th=-0.49 のたった64%である。この差はエンタングルメント状態の生成から
tomography までの間の Decay のせいである。 (7)Pseudoentangled state の Decoherence off-diagonal values は Decoherence によって小さ
くなる。Decoherence はパルス幅と delay time τ (エンタングルド状態の生成と tomography sequence の間の時間)で起こる。preparation sequence と tomography sequence との間の時間
を増加させることによってΨ-に対する decayを測定した。図8に decoherence decay を示す。 3ν1-ν2 で変調している。 Artifactsを除くために phase cyclingをしている。 Fig.8 の解析からエンタングルド状態の decoherence time は
と決定した。 パルス幅とエンタングルド状態の生成から tomography sequence までの時間を考慮して r27を再構
築すると
decoherenece の起源は static or dynamic lattice distortions である。これは分子の高い対称性からの
ずれに対応する。このゆがみは式(4)の H2, H3 で表現されている。 (8)Complete density matrix
図9にエンタングルド状態 と initial density matrix ρP10の graphical representation を示す。 27+Ψpρ
12
r27Ψ- = -0.31±0.04. decoherece time = 208±10 ns.
同様に、エンタングルド状態 、 の Complete
density matrix も得ることができる。
27pρ −
18pρΨ ±Φ
r27Ψ+ = 0.31±0.04. Decoherence time = 198±10 ns.
r18Φ- = -0.33±0.04. Decoherence time = 210±10 ns.
r18Φ+ = 0.33±0.04. Decoherence time = 213±10 ns. 理論的期待値に対する実験データの正確性を定量化するために Fidelity を平均二乗偏差として定
義した。
4つの Bell states の Fidelities をテーブル1にまとめた。
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(9)Quantum critical temperature 今回の実験条件(ν = 9.5 GHz, T = 50 K)では、厳密な意味でのエンタングルド状態を観測して
いるわけではない。どういう条件でエンタングルド状態が得られるか? Peres と Horodecki の positive transpose criterion を適用する。
β = ћ/kBT, ωS: マイクロ波周波数 エンタングルド状態は次の Quantum critical temperature 以下で得られる。
95GHz の ESR 測定装置を用いると Tq = 7.76 K が得られる。
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