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Title 上皮細胞の形態形成およびそのがん化におけるEphA2受容体の新規シグナル伝達経路の解明( Digest_要約 )
Author(s) 原田, 耕平
Citation Kyoto University (京都大学)
Issue Date 2015-03-23
URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19148
Right 学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により本文は2015-05-15に公開
Type Thesis or Dissertation
Textversion ETD
Kyoto University
上皮細胞の形態形成および
そのがん化における EphA2受容体の
新規シグナル伝達経路の解明
原田 耕平
1
目次
要旨 2
第 1章 序論 3
第 2章
2-1 結果 16
2-2 考察 33
結論 38
実験方法 39
参考文献 44
謝辞 51
2
要旨
受容体チロシンキナーゼである Eph 受容体は、細胞膜表面に存在する ephrin
リガンドと結合することで細胞内にシグナルを伝達する。これにより、発生過
程における細胞移動・生存制御、そして上皮組織の恒常性の維持などの重要な
役割を担っている。しかし、多くのがん組織において、Eph-ephrinシグナルのバ
ランスの崩壊が報告されている。中でも EphA2受容体は上皮組織由来のがん細
胞において発現量が上昇しており、がんの悪性度との相関性も指摘されている。
その一方で、がん化を促進するシグナル伝達経路の解析は、あまり進んでいな
いのが現状である。
本研究ではアノイキスと呼ばれる、上皮細胞において細胞外基質 (ECM) との
接着喪失により誘導されるアポトーシスに関して、EphA2 の新規シグナル伝達
経路を解析した。上皮細胞が ECMに接着することは、細胞の増殖、生存および細胞死の制御において重要な役割を担っている。そのため、アノイキスは組織
の恒常性や発達の制御に重要であると考えられている。一方で、上皮組織由来
のがん細胞はアノイキス耐性を獲得することで、原発巣から他の組織への転移
を可能にすることが知られている。膵がん細胞では EphA2過剰発現によりアノ
イキスが抑制されることが報告されていたため、申請者はヒト子宮頸癌由来の
HeLa 細胞を用いて、EphA2 に直接結合する新規 G 蛋白質活性化因子 Ephexin4
が下流で働くことを新たに見出した。Ephexin4 は細胞運動・生存制御など多様
な機能を担う、Rhoファミリー低分子量 G蛋白質 RhoGを特異的に活性化する。
また RhoGは PI3K/Aktシグナル経路を介してアノイキスを制御しており、本研
究ではこの上流において EphA2/Ephexin4による活性制御を受けていることを示
した。
これにより、申請者は EphA2に Ephexin4が結合することで RhoG、そしてそ
の下流にある PI3K/Akt経路を活性化し、がん細胞のアノイキス耐性の獲得に寄
与していることを初めて見出し、アノイキスを制御する新規シグナル伝達経路
を明らかにした。
3
第 1章
序論
4
細胞死は、形態的な特徴からアポトーシス (プログラム細胞死) とネクローシ
スの2つに大きく分類される。細胞膜の破裂により炎症が誘導されるネクロー
シスとは異なり、アポトーシスでは核 DNAの断片化が起こった後、アポトーシ
ス小体が形成され、マクロファージによる貪食を受ける。アポトーシスでは、
DNA損傷を受けた不要な細胞の除去だけでなく、神経管の閉鎖に代表されるよ
うな形態形成にも寄与している。近年のアポトーシス研究では、アノイキス、
エントーシス、オートファジー性細胞死などに細分化されており、第 3 章で焦
点を当てるアノイキスは、上皮細胞において細胞外マトリックス (ECM) との接
着喪失により誘導される、足場依存的なアポトーシスとして知られる。これは、
細胞-ECM 間に存在するインテグリンが細胞の接着だけでなく、細胞外増殖因
子に応答した生存・増殖シグナルの伝達を仲介しているために引き起こされる
(Frisch et al., 1994, 2001; Valentijn et al., 2004; Reddig et al. 2005)。元々は、一度剥
がれた細胞が離れた場所で再び接着し増殖するのを防ぐためであり、適切な器
官形成に必要な排除機能である。しかし、上皮組織由来のがん細胞ではアノイ
キスに対する耐性が獲得されており、がん細胞が原発巣から他の組織へと転移
していく過程で必要不可欠であると考えられている (図 1-1; Geiger et al., 2005;
Rennebeck et al., 2005; Simpson et al., 2008)。さらに近年の研究から接着非依存的
な細胞増殖だけでなく、上皮間葉転換 (EMT) との関連も指摘されたことから、
アノイキス耐性の獲得したがん細胞への関心がますます高まっている (Paoli et
al., 2013)。これまでの研究から、がん細胞特異的に引き起こされるアノイキス耐
性の獲得に関与するシグナル伝達経路として、PI3 キナーゼ (PI3K)とその下流
の標的分子である Akt を介したシグナル経路が重要であることが明らかになっ
ている (Datta et al., 1999; Zugasti et al., 2001; Grossmann et al., 2002; Duronio et al.,
2008)。
PI3Kは、その基質特異性によりクラス I (A、B)、II、IIIの 3種類に分類され
る。そのうちホスファチジルイノシトール-4,5–二リン酸を基質とするクラス IA
PI3Kは、触媒サブユニットである p110と調節サブユニットである p85から構成
されており、p110 には 3 つのアイソフォーム (p110α、p110β、p110δ)、そして
p85には 5つのアイソフォーム (p85α、p85β、p55α、p50α、p55γ) が存在する (図
1-2; Kok et al., 2009; Vanhaesebroeck et al., 2010)。p85は p110と結合することによ
り、p110 の蛋白質安定性や通常状態における活性の抑制を調節している。また
p85には、リン酸化チロシンに結合する 2つの Src homology (SH) 2ドメイン構造
5
図 1-1 正常な細胞とがん細胞におけるアノイキス
図 1-2 クラス I A PI3キナーゼのドメイン構造
接着の喪失
核 DNAの凝縮
アノイキス耐性
細胞死 (アノイキス )
正常な細胞 がん細胞
細胞外基質 原発巣
転移
接着の喪失
%= E,.2(/. %/#/.(5FG6H23423A
I/06H23423A
<E$JJ$
?E=?EB 5;;K6H23423A?E=
$JJ$
?E=5;;K6H23423A?E=
5;;K L-5;;K L-5;;K
5FG L-5FG
5GG L-5GG L-5GG
6
がある。この SH2 ドメインを介して、p85 がリン酸化されたチロシンキナーゼ
と結合すると、p85 による p110 の活性抑制が解除され、チロシンキナーゼの下
流において PI3K の機能が発揮される。PI3K が成長因子などの刺激により活性
化されると、Aktはホスファチジルイノシトール依存蛋白キナーゼによって 308
番目のスレオニン残基 (Thr 308)、または 473番目のセリン残基 (Ser 473) にリ
ン酸化を受ける。このふたつのリン酸化が、Aktの活性化に重要であることが報
告されている (Datta et al., 1999; Zugasti et al., 2001; Grossmann, 2002; Duronio,
2008)。
細胞は抗アポトーシス因子の発現促進とプロアポトーシス因子の発現抑制、
主にこの二つの抑制機構によりアポトーシスを抑制しており、PI3K/Akt シグナ
ルは後者の経路において機能している。また PI3Kによって活性化された Aktが
プロアポトーシス Bcl-2ファミリー蛋白質をリン酸化することにより、ミトコン
ドリアからの cytochrome c の放出を抑制する。これにより、caspase-3の活性化
を抑制しアポトーシス誘導を阻害するようにも働く (Valentijin et al., 2004;
Simpson et al., 2008; Grossmann, 2002)。しかし Aktの活性化が阻害されるとプロ
アポトーシス Bcl-2ファミリー蛋白質のリン酸化がされず、シグナルはミトコン
ドリア内を経由し caspase-3 の活性化を促進するように働く。これにより DNA
が断片化され、アポトーシスが引き起こされる (図 1-3; Reddig et al., 2005;
Duronio, 2008; Chiarugi and Giannoni, 2008)。このようにして PI3K/Aktは細胞の生
存制御を行っているが、これまでのアノイキス研究では、主にアポトーシスに
関わる共通の分子を対象としていたため、その上流のシグナル経路については
あまり研究が進んでいなかった。
Eph受容体は、受容体型チロシンキナーゼの中で最も大きなファミリーを構成
し、細胞表面に存在する ephrinと結合することで細胞内にシグナルを伝達する。
リガンドである ephrinは、グリコシルホスファチジルイノシトール (GPI) アン
カーを介して細胞膜に結合している Aタイプと、膜貫通型の Bタイプの二つの
サブタイプに分類されている。Eph受容体も同様で、アミノ酸配列の相同性とリ
ガンドとの親和性から EphA 受容体と EphB 受容体に分類される。現在までに、
9種類のEphA受容体 (A1~8およびA10) と5種類のEphB (B1~4およびB6) 受
容体、そして 5種類の ephrinA (A1~5)、3種類の ephrinB (B1~3) が哺乳動物で
同定されている。基本的に EphA受容体は ephrinAと、EphB受容体は ephrinBと
結合するが、EphA4と EphB2のように異なるタイプの ephrinと結合可能な受容
7
図 1-3 Aktによるアポトーシス制御メカニズム
体も存在する (Pasquale, 2004, 2005, 2010)。Eph受容体共通の細胞内構造として
は、蛋白質チロシンキナーゼドメイン、ステライル α モチーフ (SAM) ドメイ
ン、そして C末端に存在する PDZ結合モチーフが報告されており、ともに高度
に保存されている (図 1-4)。しかし中には、EphA10や EphB6のようにキナーゼ
PAkt
生存シグナル活性化
PI3K
Bad
BadP
細胞ストレス
Bcl-2
Caspase-9
Apaf-1
アポトーシスの抑制
Cleaved caspase-3
Caspase-3
カスパーゼ依存性 DNaseアポトーシス
活性化
cytochrome c 放出
8
図 1-4 Eph受容体の構造
ドメイン内のコンセンサスアミノ酸配列に置換が入ることで、キナーゼ活性を
欠失しているものもある。
Eph受容体は ephrinと結合後、Eph受容体間のシス結合が誘導され Eph-ephrin
二量体と四量体を形成する (Himanen et al., 2010; Seiradake et al., 2010)。受容体ク
ラスター形成により近接した Eph 受容体は、トランスリン酸化を引き起こすこ
とでチロシンキナーゼ活性を示す (Binns et al., 2000; Zisch et al., 2000;
Wybenga-Groot et al., 2001)。これにより、Eph受容体が下流のエフェクターへと
伝達するシグナルを前方向 (Foward) シグナル、それとは別に ephrin側に伝達さ
れるシグナルを逆方向 (Reverse) シグナルと呼ぶ (図 1-5)。双方向性の
Eph-ephrinシグナルは、Eph受容体発現細胞と ephrin発現細胞の間で反発反応を
引き起こすことが知られている。これにより、軸索ガイダンスにおける成長円
錐の崩壊や、異なる組織の混在を防ぎ、発生過程における神経回路形成や組織
GPI アンカー
EphrinA EphrinB
EphA
細胞膜
EphB
キナーゼドメイン
SAM ドメイン
PDZ 結合モチーフ
9
パターン形成に寄与している。また、細胞間コミュニケーションの制御による
上皮組織の恒常性維持への寄与や、がん・血管合併症などの病因としても知ら
れている(Surawska et al., 2004; Wilkinson 2001; Pasquale 2008, 2010; Pitulescu and
Adams 2010; Nievergall et al. 2012; Gucciardo et al., 2014)。
図 1-5 Eph-ephrinシグナルとその主な機能
多くのがん組織おいて、Eph受容体と ephrinの発現調節異常により Eph-ephrin
シグナルのバランスが崩壊している。特に Eph 受容体の一つである EphA2 は、
ephrinAの発現が低下している上皮組織由来のがん細胞において発現量が増加し
ており、ephrin非依存的にシグナルを伝達することでがん化を促進することが報
告されている (図 1-6; Zelinski et al. 2001; Macrae et al. 2005; Wykosky et al. 2005;
Pasquale 2010; Tandon et al. 2011)。アノイキス制御への関与も示唆されていおり、
膵がん細胞において EphA2を過剰発現することによりアノイキスが抑制される
ことが報告されている (Duxbury et al., 2004)。また、ヒトのグリオーマ細胞を用
Ephrin Eph受容体
PP
P
PP
P
キナーゼ活性
Reverse シグナル
Foward シグナル
エフェクター
反発反応
細胞間コミュニケーションの制御
・神経回路形成
・組織パターン形成
・上皮組織の恒常性の維持
軸索ガイダンス
10
図 1-6 Eph2受容体によるがん化の制御
いた実験では、成長因子刺激下において活性化 Aktにより EphA2の 897番目の
セリン (S897) がリン酸化され、リガンド非依存的にがん細胞の運動・浸潤が促
進されることが示された。また、ephrinA1 を加えることで EphA2 の S897 の脱
リン酸化が起こり、がん化促進機能の抑制が見られることから、リガンド依存、
非依存的なシグナルでは真逆の効果を示すことが明らかとなった (Miao et al.
2009)。しかし、EphA2 の S897 のリン酸化と、がん化促進を関連づける詳細な
分子メカニズムは不明である。
Eph受容体は、RhoA、Cdc42および Rac1に代表される Rhoファミリー低分子
量 GTP 結合型蛋白質 (G 蛋白質) を制御することにより、細胞形態・接着・運
動を制御している (図 1-7A; Pasquale, 2008, 2010; Lisabeth et al., 2014)。しかし、
これらの蛋白質は、アクチン細胞骨格系の制御だけではなく、細胞の増殖や生
存制御など多様な機能を担っている (Ridley, 2001, 2004; Etienne-Manneville and
Hall, 2002; Negishi and Katoh, 2002; Symons, 1996; Zohn et al., 1998)。Rhoファミリ
Ephrin
Eph
EphA2
がん化抑制
Eph-ephrin シグナル リガンド非依存的なシグナル
恒常性の維持
細胞外基質
細胞運動・浸潤の亢進
細胞膜
P
PP
P
Ser897
破綻
がん化促進
11
ー低分子量 G蛋白質には、GDP結合型の不活性型と GTP結合型の活性型が存在
し、活性依存的に特異的なエフェクターに作用することでシグナルを下流に伝
達している。また、GDP-GTP交換反応を促進するグアニンヌクレオチド交換因
子 (GEF)、そして GTPを加水分解し GDPへと変換する GTPase活性を触媒する
GTPase 活性化蛋白質 (GAP) により、時空間的に活性が制御され細胞内におけ
る分子スイッチとして機能している (図 1-7B; Rossman et al. 2005; Bos et al.,
2007)。
図 1-7 (A) Rhoファミリー低分子量 G蛋白質と
(B) その活性制御メカニズム
RhoARhoB
RhoCRnd1Rnd3 / RhoERnd2
RhoD
RifCdc42
TC10TCL
Wrch1Chp / Wrch2
Rac1Rac3
Rac2RhoG
RhoH / TTFRhoBTB1RhoBTB2
Rho
Rnd
Cdc42
Rac subfamily
RhoBTB
RhoGDP
RhoGTP
GDP GTP
PiGAP
GEF
A
B
活性化不活性化
12
哺乳動物において約 20種類発見されているRhoファミリー低分子量G蛋白質
には、70種類以上の GEFが存在するといわれている (García-Mata and Burridge,
2007)。そのうち Dbl ファミリー蛋白質と呼ばれる主要な GEF には共通して
Dbl-homology (DH) ドメインが存在し、その DHドメインに直接 Rhoファミリー
低分子量G蛋白質が結合することで、GDPからGTPへの交換反応を促進させる。
さらに Dbl ファミリー蛋白質は、DH ドメインのカルボキシル側に
Pleckstrin-homology (PH) ドメインが続く構造をしており、この PH ドメインが
DHドメインによる RhoファミリーG蛋白質の活性化を協調的に制御している。
Dbl ファミリー蛋白質がどの Rho ファミリー低分子量 G 蛋白質を活性化するの
か、その特異性に関しては未だ不明な点が多く残されているが、大部分の Dbl
ファミリー蛋白質は RhoA、Cdc42、あるいは Rac1の GEFとして機能している
ことがわかっている。一方、近年同定された Dockファミリー蛋白質には DH-PH
タンデムドメインが存在せず、Dock homology region (DHR)-1 (または CZH1) と
DHR-2 (または Docker、CZH2) と呼ばれる、高度に保存されたふたつの領域が
並んだ構造をしている。そのうち DHR-2ドメインにおいて、特異的に Rhoファ
ミリーG 蛋白質と直接結合し GDP-GTP 交換反応を促進させ、GEF として機能
していることがわかっている (Rossman et al. 2005; Bos et al., 2007)。
Rho ファミリー低分子量 G 蛋白質である RhoG は、線維芽細胞において成長
因子の刺激により誘導される遺伝子産物として、新たに同定された (Vincent et
al. 1992)。機能としては細胞運動の促進や神経突起の伸長、そして食作用やマク
ロピノサイトーシスの制御が報告されており、細胞内においてエフェクターで
ある ELMOと Dockファミリーに属する Dock180あるいは Dock4の複合体を細
胞膜へリクルートし、膜直下において Rac1を活性化させることでその機能を発
揮している (Fig. 1-6; Katoh et al., 2000, 2003, 2006; deBakker et al., 2004; Elfenbein
et al., 2009; Hiramoto et al., 2006; Patel et al., 2010)。また、RhoGは Rac1を活性化
させるシグナル経路とは別に、PI3Kを活性化させることで細胞の増殖や生存を
制御しており、所属する研究室では、活性型 RhoGが PI3Kの調節サブユニット
である p85aに結合することにより、PI3Kを介した Aktのリン酸化を促進させ、
アノイキス抑制的に機能することを示した (図 1-8; Murga et al., 2002; Yamaki et
al., 2007; Fujimoto et al., 2009)。RhoGは生体内の広範囲に発現がみられるものの、
ES細胞やがん細胞などといった、未分化または脱分化した細胞に、特に高い発
現が認められることから (Jiang et al., 2003; Boureux et al., 2006)、個体の発生過程
13
図 1-8 Rho Gの主な機能とそのシグナル伝達経路
やがんの進行過程におけるシグナル伝達経路の制御に、重要な役割を果たして
いることが考えられる。しかし、RhoG の機能はあまり研究がなされておらず、
特にそのシグナル伝達経路の分子メカニズムなどの詳細に関しては、未だ不明
な点が多く残っている。
近年、EphA 受容体に直接結合する Rho ファミリーの GEF として、新たに
Ephexinサブファミリーが同定された。Ephexinサブファミリーは Ephexin1–5と
SGEFから構成されており、すべての分子において Rhoファミリーの主要な GEF
である Dblファミリー蛋白質に特異的な、DH-PHタンデムドメインが存在して
いる (Shamah et al., 2001; Sahin et al., 2005)。Ephexin1 (または ARHGEF27、NGEF)、
Ephexin2 (または ARHGEF19、WGEF)、Ephexin3 (または ARHGEF5、TIM1)、
Ephexin5 (またはARHGEF15、Vsm–Rho GEF) に関してはRhoAを、SGEFはRhoG
の活性化を上昇させることが報告されている (Shamah et al., 2001; Sahin et al.,
2005; Ogita et al., 2003; Wang et al., 2004; Xie et al., 2005)。Ephexin1は EphA4に結
合して軸索のガイダンスやスパイン形成の制御に関与しており、Ephexin5 は
EphA4 に結合して血管平滑筋細胞の収縮を、EphB2 に結合して海馬ニューロン
RhoG
PAkt
RhoGp110
p85 PI3KRhoG
GTP
ELMODock180 or Dock4
Rac1
細胞運動の促進神経突起伸長
ファゴサイトーシス細胞の生存制御
活性化
14
における興奮性シナプスの形成を制御している (Sahin et al., 2005; Ogita et al.,
2003; Fu et al., 2007; Margolis et al; 2010)。また Ephexin2は平面内細胞極性に関与
し表皮の創傷治癒を制御しており、SGEFはマクロピノサイトーシスの制御に関
与していることがわかっている (Caddy et al., 2010)。Ephexin4 (または
ARHGEF16、neuroblastoma) 以外の Ephexinサブファミリーの機能は徐々に明ら
かになってきてはいるものの、これまでの研究では Ephexin4の機能に関する研
究は全く進んでいなかった。しかし所属する研究室では、Ephexin4が EphA2に
結合することで、膜へと移行し RhoGの GEFとして機能する。これにより、RhoG
が ELMO2、Dock4の複合体を膜へとリクルートし Rac1を活性化させることで、
リガンド非依存的にがん細胞の運動・浸潤の促進に寄与することを明らかにし
た(Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。
第 2 章では、EphA2 によるがん化促進機能の一つ、アノイキス耐性の獲得に
焦点を当て、その機能発現に関わるシグナル伝達経路の解明を目的として、RhoG
の新規活性化因子として同定した Ephexin4 の関与、および以前報告した RhoG
によるアノイキス制御機構との関係について検討した。
15
第 2章 EphA2受容体と
新規 G蛋白質活性化因子 Ephexin4による
アノイキス制御機構の解明
16
結果
HeLa細胞では Ephexin4のノックダウンによりアノイキスが促進される
EphA2および Ephexin4は上皮組織由来のがん細胞において広く発現している
ことが知られ、子宮頸癌由来の細胞株である HeLa細胞においてもその発現が確
認できた (Fig. 1A and Fig. 3A)。HeLa細胞は接着非依存的に生存および増殖可能
であり、アノイキス耐性を有している (Wu et al., 2002; Ke et al., 2004)。本研究で
は EphA2、Ephexin4 のアノイキス制御への関与を調べる上で、EphA2 あるいは
Ephexin4を標的とした shRNA (それぞれ shEphA2、shEphexin4) を HeLa細胞に
発現させ、RNA干渉により内在性蛋白質の発現抑制を行った。またコントロー
ルには、Luciferaseを標的とした shRNA (shLuciferase) を発現させた細胞を用い
た。生体内においてアノイキスが起こる環境を再現するために細胞を浮遊条件
下で 24時間培養し、アポトーシスを引き起こした細胞の割合を定量しコントロ
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.
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0&/121,2,"3&3+--4
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17
Fig. 1 HeLa細胞では、Ephexin4のノックダウンによりアノイキスが促進され
る。
(A) Luciferaseの shRNA (shControl)、Ephexin4の shRNA (shEphexin4) をそれぞれ一
過性に発現させたHeLa細胞の細胞溶出液に対しイムノブロットを行い、抗Ephexin4
抗体および抗 α-tubulin 抗体を用いて検出した。(B) YFP と shControl あるいは
shEphexin4 をコードした、ダブルプロモーターベクターを HeLa 細胞に導入し 3 日
間培養した。その後、細胞を培養ディッシュからはがし 24 時間浮遊培養した。
Hoechst 33258による核染色を行い、YFPポジティブな細胞のアポトーシスを解析し
た。写真は、生きている細胞 (左)、アポトーシスを引き起こした細胞 (右) の核染
色画像を示している。(C) YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こし
た細胞の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラ
ーバーは標準偏差を示している。***, P < 0.001; t検定。一回の実験において、ラン
ダムに選んだ視野から少なくとも 100個以上の細胞を数えている。(D) shControlと
shEphexin4をそれぞれ一過性発現させた HeLa細胞を 24時間浮遊培養させ、その細
胞溶出液に対しイムノブロットを行い、抗 cleaved-caspase3抗体、抗 Ephexin4抗体、
そして抗 α-tubulin抗体用いて検出した。(E) shControlと shEphexin4をそれぞれ一過
性発現させた HeLa細胞、および shControlあるいは shEphexin4と Flagタグを付加
した野生型ヒト Ephexin4 (Flag-Ephexin4-WT) を共発現させた HeLa細胞を 24時間
浮遊培養させた。その後、YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こし
た細胞の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラ
ーバーは標準偏差を示している。**, P < 0.01; t検定。一回の実験において、ランダ
ムに選んだ視野から少なくとも 100個以上の細胞を数えている。
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18
ール細胞と比較することで、アノイキス耐性の変化を評価した。アポトーシス
を引き起こした細胞は Fig. 1Bに見られるような核 DNAの凝縮が起こることか
ら、これを選定基準として定量を行った。
所属する研究室では、以前の研究から Ephexin4が Rhoファミリー低分子量 G
タンパク質の一つである RhoGを特異的に活性化させる、グアニンヌクレオチド
交換因子 (GEF)として機能することを新たに見出した (Hiramoto-Yamaki et al.,
2010)。RhoGは HeLa細胞においてアノイキス耐性の獲得に寄与していることか
ら、まず RhoGの GEFである Ephexin4がアノイキス制御に関与しているのかを
調べた (Yamaki et al., 2007)。Ephexin4ノックダウン細胞を用いて浮遊培養を行
った結果、有意にコントロール細胞に比べアポトーシスを引き起こした細胞の
割合が増加した (Fig. 1C)。接着条件下ではこのような現象はみられないことか
ら、Ephexin4ノックダウンにより HeLa細胞のアノイキス耐性が低下したためだ
と考えられる。また、核 DNAの凝縮がアポトーシスに起因することを確かめる
ため、その指標として用いられる活性化 caspase-3 (cleaved caspase-3) の細胞内量
を測定した。Ephexin4 ノックダウン細胞を浮遊条件下で培養し、その量を確認
したところ、コントロール細胞に比べ Ephexin4ノックダウンにより有意に増加
することから、アポトーシスが原因であることが確認出来た (Fig. 1D)。第 2章
の実験で用いた shEphexin4は、ヒト Ephexin4 mRNAのうち 3’-非翻訳領域を標
的としており、翻訳領域のみを含む野生型 Ephexin4 (Ephexin4-WT) は
shEphexin4 の標的とならないため、レスキュー実験に用いることが可能である
(Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。そこで、off-target効果でないことを確かめるため、
Ephexin4ノックダウン細胞に Ephexin4-WTを過剰発現させ、浮遊培養を行った。
その結果、Ephexin4-WT の発現によりアポトーシス細胞の割合はコントロール
細胞と同程度まで減少した (Fig. 1E)。以上のことから、Ephexin4-WT の過剰発
現によりノックダウンの効果が消失し、アノイキス耐性が上昇することから、
Ephexin4がアノイキスの抑制に関与していることが示唆された。
Ephexin4によるアノイキス抑制には RhoGの活性化が必要である
Dblファミリーに属する Ephexin4はその Dbl-homology (DH) ドメインに直接
RhoGが結合することで、GDP–GTP交換反応を促進させている (Fig. 2A)。この
19
RhoGとの結合領域である DHドメインを削り、GEFとしての機能を欠損させた
変異体 (Ephexin4-ΔDH)を作製し、Ephexin4によるアノイキス制御に RhoGの活
性化が必要かを検討した (Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。Ephexin4ノックダウン
細胞に Ephexin4-ΔDHを過剰発現させ浮遊培養を行ったところ、アポトーシス細
胞の割合は Ephexin4ノックダウン時と同程度であった (Fig. 2B)。また、レスキ
ュー実験として、RhoGの常時活性化型 (RhoG-V12)を、Ephexin4ノックダウン
細胞に過剰発現させたところ、アポトーシス細胞の割合はコントロール細胞と
同程度まで減少した (Fig. 2C)。これにより Ephexin4は RhoGの活性化を介して
アノイキス耐性の獲得を促進していることが示された。
この結果を裏付けるためにRhoGをノックダウンしたHeLa細胞を用いて浮遊
培養行ったところ、アポトーシス細胞の割合はコントロール細胞と比べ有意に
増加した。また RhoG ノックダウン細胞に Ephexin4-WT を過剰発現させた場合
でも、アポトーシス細胞の割合は RhoG ノックダウン時と同程度であった (Fig.
2D)。さらに RhoG のエフェクターである ELMO2 をノックダウンした HeLa 細
胞、そしてそこに Ephexin4-WT を過剰発現させた細胞を用いて浮遊培養を行っ
ても、アポトーシス細胞の割合に変化は見られず、以前の報告通り ELMO2のア
ノイキス制御への関与は認められなかった (Fig. 2D and E; Yamaki et al., 2007)。
次に浮遊条件下における RhoG の活性を調べた。Ephexin4 をノックダウンし
た HeLa細胞を浮遊状態で 2時間培養した後、GST融合蛋白質 (GST-ELMO-NT)
を用いてプルダウンアッセイを行った (Katoh and Negishi, 2003;
Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。その結果、Ephexin4 ノックダウンにより有意に
RhoG活性が低下した (Fig. 2F)。次に Hela細胞を浮遊培養し、2時間、12時間、
24 時間後の RhoG の活性を測定した。その結果、培養開始から徐々に RhoG 活
性は減少するが、12時間後をめどに増加に転じ、その後 12時間かけて接着時と
同程度まで回復することがわかった (Fig. 2G)。これにより浮遊状態での培養開
始 24時間後に行ったアッセイでは、接着喪失による RhoG活性の減少による影
響を受けていないことがわかった。また以前の報告から、RhoGは細胞の接着に
おいて重要な働きをしていることから、この RhoG活性の変化は細胞接着からア
ノイキス制御への機能の切り替えが行われたためだと考えられる (Katoh et al.,
2006; Katoh and Negishi, 2003)。
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21
Fig. 2 RhoGの活性化が Ephexin4によるアノイキス抑制に必要である。
(A) 本研究において使用した Ephexin4 のコンストラクトを示している。DH, Dbl
homology domain; PH, pleckstrin homology domain; SH3, Src homology domain 3. 数字
はアミノ酸配列を示している。(B-D) 図に示すようなプラスミドを導入した HeLa
細胞を 3日間培養し、その後 24時間浮遊培養した。回収した後、Hoechst 33258に
よる核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞
の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバー
は標準偏差を示している。***, P < 0.001; ns, not significant; t検定。一回の実験にお
いて、ランダムに選んだ視野から少なくとも 100 個以上の細胞を数えている。(E)
shControlあるいは ELMO2の shRNA (shELMO2)を一過性発現させた HeLa細胞の溶
出液に対しイムノブロットを行い、抗 ELMO2抗体そして抗 α-tubulin抗体を用いて
検出した。(F) shControl と shEphexin4 をそれぞれ一過性発現させた HeLa 細胞を 2
時間浮遊培養させ、GST-ELMO-NTを用いたプルダウンアッセイから RhoGの活性
を測定した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバーは標準
偏差を示している。**, P < 0.01; t検定。(G) HeLa細胞を一度培養ディッシュからは
がした後、再びディッシュに撒き直した細胞 (adherent)、あるいは図に示した時間
だけ浮遊培養させた細胞に対し、GST-ELMO-NTを用いたプルダウンアッセイを行
い RhoGの活性を測定した。相対的な RhoG活性の値は、ImageJ softwareにより解
析した GST-ELMO-NTと結合した RhoGの量を細胞溶出液に含まれる RhoGの量で
標準化し算出したものである。グラフは独立した 7 回の実験から得られた平均値、
エラーバーは標準偏差を示している。
Ephexin4によるアノイキス抑制には PI3Kの活性化が必要である
RhoGは PI3K/Akt経路の活性化を介しアノイキス制御を行っていることから、
これまでの実験から明らかにした Ephexin4/RhoG経路との関係について調べた。
PI3Kはアノイキスを含む、生存に関する多様なシグナル伝達経路に関与して
おり、その基質特異性によりクラスⅠ (A、B)、Ⅱ、Ⅲの 3 種類に分類される。
以前の報告では、RhoG が活性依存的にクラスⅠA PI3K の調節サブユニットで
ある p85αに直接結合、その後触媒サブユニットである p110αを介して標的分子
22
である Aktをリン酸化することを明らかにした (Yamaki et al.,2007)。そこでまず
PI3Kの特異的阻害剤である LY294002を用いて、Ephexin4の下流において PI3K
が機能しているのかを検討した。コントロール細胞そして Ephexin4ノックダウ
ン細胞に Ephexin4-WTを過剰発現させ、LY294002を添加した培地で浮遊培養を
行った。コントロール細胞では、LY294002処理によりアポトーシス細胞の割合
は有意に増加した。また Ephexin4 ノックダウン細胞でも同様で、Ephexin4-WT
の発現によってレスキューされていたアポトーシス細胞の割合は、LY294002処
理により Ephexin4 ノックダウン時と同程度にまで増加した (Fig. 3A)。PI3K は
触媒サブユニットであるp110αに細胞膜結合シグナル配列 (CAAX) を付加させ
ることにより、常時活性型の PI3K として機能することが知られている。この
p110α-WT-CAAX と PI3K キナーゼ不活性型 p110α-KD-CAAX を、Ephexin4 ノ
ックダウン細胞に発現させ浮遊培養を行ったところ、p110α-WT-CAAX を発現
させた細胞では Ephexin4ノックダウン時と比べ、アポトーシス細胞の割合が有
意に減少した。それに対し、p110α-KD-CAAXを発現させた細胞では、Ephexin4
ノックダウン時と同程度で有意な差は見られなかった (Fig. 3B)。これらの結果
から Ephexin4と PI3Kは同一のシグナル経路上にあり、Ephexin4は PI3Kの上流
にあることが示唆された。
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Fig. 3 PI3Kと Aktの活性化は、Ephexin4によるアノイキス抑制に必要である。
(A) shControlと shEphexin4をそれぞれ単独で一過性発現させた HeLa細胞、あるい
は Ephexin4-WTと共に一過性発現させた細胞を 3日間培養した後、20 µM になるよ
うに培地に LY294002を加え 24時間浮遊培養した。回収した後、Hoechst 33258に
よる核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞
の割合を定量した。(B) shControlあるいは shEphexin4と共に N末端に Flagタグを C
末端に CAAXもチーフを付加した野生型 p110α (Flag-p110α-CAAX)、またはキナー
ゼ不活性型の変異体 (Flag-p110α-CAAX)を一過性発現させたHeLa細胞を 24時間浮
遊培養させた。その後回収し、Hoechst 33258による核染色を行い、YFPポジティブ
な細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞の割合を定量した。グラフは独立し
た 3回の実験から得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示している。**, P < 0.01;
***, P < 0.001; ns, not significant; t検定。一回の実験において、ランダムに選んだ視
野から少なくとも 100個以上の細胞を数えている。(C) shControlと shEphexin4をそ
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24
れぞれ一過性発現させた HeLa 細胞を 2 時間浮遊培養した。その細胞溶出液に対し
イムノブロットを行い、S473にリン酸化を受けた Aktを認識する抗体 (p-Akt)およ
び抗 Akt抗体 (Total Akt)を用いて検出した。相対的なリン酸化 Aktの値は、ImageJ
softwareにより解析したp-Aktの量を total Aktの量で標準化し算出したものである。
グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示して
いる。*, P < 0.05; t検定。(D,E) 図に示すプラスミドを導入後 3日間培養した HeLa
細胞を、1 µMになるように Akt inhibitor Ⅳを加えた培地で 24時間浮遊培養した。
その後回収し、Hoechst 33258による核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちア
ポトーシスを引き起こした細胞の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験か
ら得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示している。**, P < 0.01; ***, P < 0.001;
ns, not significant; t検定。一回の実験において、ランダムに選んだ視野から少なくと
も 100個以上の細胞を数えている。
次に Ephexin4ノックダウンが Akt活性に与える影響を調べるため、浮遊培養
後の細胞に対し、S473にリン酸化を受けた Aktを特異的に認識する抗体を用い
てウェスタンブロット解析により調べた。その結果、Ephexin4 のノックダウン
により有意にリン酸化 Aktの割合が減少していた (Fig. 3C)。そこで Ephexin4に
よるアノイキス制御における Aktの関与を確かめるため、PI3Kによる Aktのリ
ン酸化阻害剤である Akt inhibitor Ⅳと、Aktの常時活性型であるミリストイル化
Akt (N-Myr-Akt) を用いた (Ito et al., 2006)。コントロール細胞あるいは Ephexin4
ノックダウン細胞に Ephexin4-WT を過剰発現させ、Akt inhibitor Ⅳを培地に添
加し浮遊培養を行った。その結果、Ephexin4-WT の発現によるアノイキス抑制
効果は Akt inhibitor Ⅳ処理により阻害された (Fig. 3D)。また Ephexin4ノックダ
ウン細胞に N-Myr-Akt を過剰発現させた場合では、アポトーシス細胞の割合は
何もしていないときと同程度であった (Fig. 3E)。これらの結果から、Akt は
Ephexin4/PI3K経路と同一シグナル経路上に存在し、Ephexin4の下流にあること
が示唆された。
25
HeLa細胞では EphA2ノックダウンによりアノイキスが促進される
EphA2 は浸潤性の高いがん細胞において発現量が増加していることが指摘さ
れており、その発現量と浸潤・転移といったではアノイキスの抑制が見られる
という報告が以前なされていたが、その詳細な分子メカニズムについては不明
であった (Duxbury et al., 2004)。そこで EphA2のがん化促進機能の一つであるア
ノイキス制御機能の分子メカニズムを解明するため実験を進めた。
まず HaLa 細胞においても膵がん細胞と同様に EphA2 によるアノイキス制御
メカニズムが機能しているのか検討した。EphA2 ノックダウン細胞を浮遊培養
ところ、コントロール細胞と比べ有意にアポトーシス細胞の割合が増加した
(Fig. 4B)。また shEphexin4と同様で、第 2章の実験で使用している shEphA2は、
ヒト EphA2 mRNAのうち 3’-非翻訳領域を標的としており、翻訳領域のみを含む
野生型 EphA2 (EphA2-WT) は shEphA2の標的とならないため、レスキュー実験
に用いることができる (Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。そこで EphA2ノックダウ
ン細胞に EphA2-WTを過剰発現させ浮遊培養したところ、EphA2を発現させる
ことによりアポトーシス細胞の割合はコントロール細胞と同程度まで減少した
(Fig. 4C)。EphA2-WTの過剰発現によりノックダウン効果が消失することから、
HeLa 細胞においても EphA2 によるアノイキス制御メカニズムが機能している
ことが示された。
Eph受容体はその細胞内構造として、チロシンキナーゼドメインとステラル α
モチーフ (SAM) ドメインが高度に保存されている。以前の報告から EphA2 は
キナーゼドメインを介して Ephexin4と結合することがわかっており、このキナ
ーゼドメインを削り Ephexin4 との結合能を欠損させた変異体 (EphA2-ΔKD) と
SAMドメインを削った変異体 (EphA2-ΔSAM) を作製し (Fig. 4D)、アノイキス
制御に必要なドメインの特定を行った。EphA2ノックダウン細胞に EphA2-ΔKD
あるいは EphA2-ΔSAM を過剰発現させ浮遊培養したところ、EphA2-ΔSAMを発
現させた場合のみ EphA2ノックダウン細胞と比べアポトーシス細胞の割合が減
少した (Fig. 4E)。EphA2-ΔKD を発現させた場合では EphA2 のクックダウン時
と同程度であることから、EphA2 はキナーゼドメインを介してアノイキス制御
を行っていることが示唆された。
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Fig. 4 Hela細胞では、EphA2ノックダウンによりアノイキスが促進する。
(A) shControl、EphA2の shRNA (shEphA2) をそれぞれ一過性に発現させた HeLa細
胞の細胞溶出液に対しイムノブロットを行い、抗 EphA2 抗体および抗 α-tubulin 抗
体を用いて検出した。(B,C) shControlと shEphA2をそれぞれ単独で一過性発現させ
た HeLa細胞、あるいはMycタグを付加したヒト EphA2-WTと共に一過性発現させ
た細胞を 24時間浮遊培養した。その後回収し、Hoechst 33258による核染色を行い、
YFP ポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞の割合を定量した。
グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示して
いる。**, P < 0.01; ***, P < 0.001; t検定。一回の実験において、ランダムに選んだ視
野から少なくとも 100 個以上の細胞を数えている。(D) 本研究において使用した
EphA2 のコンストラクトを示している。TM, 膜貫通領域; KD, キナーゼドメイン;
SAM, ステラル α モチーフ。数字はアミノ酸配列を示している。(E) 図に示したプ
ラスミドを導入したHeLa細胞を 24時間浮遊培養した。その後回収し、Hoechst 33258
による核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細
胞の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバ
ーは標準偏差を示している。***, P < 0.001; ns, not significant; t検定。一回の実験に
おいて、ランダムに選んだ視野から少なくとも 100個以上の細胞を数えている。
EphA2は Ephexin4、RhoGの上流においてアノイキス制御を行っている
EphA2は Ephexin4との結合領域であるキナーゼドメインを介してアノイキス
制御を行っていることから、EphA2のアノイキス制御に Ephexin4が関与してい
る可能性が示された。そこでアノイキス制御における、 EphA2 と
Ephexin4/RhoG/PI3K/Akt シグナル経路との関係について調べた。
まず EphA2、Ephexin4、および RhoGの関係性について検討した。EphA2ノッ
クダウン細胞にそれぞれ EphA2-WT、Ephexin4-WT、RhoG-V12を過剰発現させ
浮遊培養を行ったところ、アポトーシス細胞の割合はすべての細胞において
EphA2ノックダウン時と比べ有意に減少した (Fig. 5A)。また、Ephexin4ノック
ダウン細胞にそれぞれ Ephexin4-WT、RhoG-V12、EphA2-WTを過剰発現させた
場合では、EphA2-WTを発現させた時のみ Ephexin4ノックダウン時と同程度で
28
あり、他の場合では有意に減少した (Fig. 5B)。さらに EphA2をノックダウンし
た HeLa細胞を浮遊培養し、RhoG活性を測定したところ、コントロール細胞に
比べ有意にRhoG活性が低下した (Fig. 5D)。これにより EphA2は Ephexin4/RhoG
シグナル経路の上流においてアノイキス制御を行っていることが示唆された。
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29
Fig. 5 EphA2は Ephexin4、RhoG、PI3Kを介してアノイキスの制御をしている。
(A-C) 図に示したプラスミドを導入した HeLa細胞を 24時間浮遊培養した。その後
回収し、Hoechst 33258による核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちアポトー
シスを引き起こした細胞の割合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得ら
れた平均値、エラーバーは標準偏差を示している。*, P < 0.05; **, P < 0.01; ***, P <
0.001; ns, not significant; t検定。一回の実験において、ランダムに選んだ視野から少
なくとも 100個以上の細胞を数えている。(D) shControlと shEphA2をそれぞれ一過
性発現させた HeLa 細胞を 2 時間浮遊培養した。その後、GST-ELMO-NT を用いた
プルダウンアッセイを行い RhoGの活性を測定した。グラフは独立した 4回の実験
から得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示している。*, P < 0.05; t検定。(E)
shControlと shEphA2をそれぞれ一過性発現させたHeLa細胞を 2時間浮遊培養した。
その細胞溶出液に対しイムノブロットを行い、S473にリン酸化を受けた Aktを認識
する抗体 (p-Akt)および抗 Akt 抗体 (Total Akt)を用いて検出した。相対的なリン酸
化 Aktの値は、ImageJ softwareにより解析した p-Aktの量を total Aktの量で標準化
し算出したものである。グラフは独立した 4回の実験から得られた平均値、エラー
バーは標準偏差を示している。**, P < 0.01; t検定。
この結果を裏付けるために、EphA2と PI3K/Aktシグナル経路との関係につい
て調べた。EphA2 ノックダウン細胞に EphA2-WT を過剰発現させ、さらに
LY294002 処理をして浮遊培養を行った。すると Ephxin4 の時と同様に、
LY294002 処理を行った細胞ではアポトーシス細胞の割合は有意に増加した
(Fig. 5C)。また EphA2 をノックダウンした HeLa 細胞を浮遊培養し、リン酸化
Aktの割合を測定した。その結果、EphA2ノックダウン細胞ではコントロール細
胞に比べ有意に Akt活性が低下していた (Fig. 5E)。これらの結果から EphA2は
Ephexin4/RhoG/PI3K/Akt シグナル経路を介してアノイキスを制御していること
が確認された。
30
HeLa 細胞以外の細胞でも Ephexin4、EphA2 によるアノイキス制御は行わ
れている
ヒト乳癌由来の MCF7 細胞を用いて他のがん細胞においても同様のアノイキ
ス制御メカニズムが機能しているのかを検討した。EphA2、Ephexin4、および
RhoGをノックダウンしたMCF7細胞を用いて浮遊培養したところ、すべての細
胞において有意なアポトーシス細胞の割合の増加がみられた (Fig. 6A)。またコ
ントロール細胞あるいは Ephexin4 をノックダウンした MCF7 細胞に
Ephexin4-WTを過剰発現させ、LY294002処理をして浮遊培養を行った。その結
果、両細胞とも LY294002処理によりアポトーシス細胞の割合が有意に増加した
(Fig. 6B)。これらの結果から、MCF7細胞においても Ephexin4によるアノイキス
制御が行われていることが示唆された。また Fig. 6Bにおいて Ephexin4ノックダ
ウンによって増加したアポトーシス細胞の割合よりも、LY294002処理を行った
場合の方が有意に増加していたが、これは LY294002 処理によって Ephexin4 以
外の生存シグナルも一緒に遮断したためだと考えられる。
次にイヌ腎細胞である MDCK 細胞を用いて正常な上皮細胞においても
Ephexin4 によるアノイキス制御メカニズムが機能しているのかを検討した。
MDCK細胞は 48時間浮遊培養を行うことで、高いアポトーシスの割合が認めら
れたが、Ephexin4-WT、Ephexin4-ΔDH、RhoG-V12、そして EphA2-WTをそれぞ
れ過剰発現させた MDCK 細胞においては、Ephexin4-ΔDH を発現させた場合を
除き、コントロール細胞のアポトーシス細胞の割合と比べ有意に減少していた
(Fig. 6C)。また何も発現させていない場合、Ephexin4-WTを過剰発現させた場合、
そして EphA2-WT を過剰発現させた場合において LY294002 処理をして浮遊培
養を行った。すると何も発現させていない場合は、LY294002処理を行ってもア
ポトーシス細胞の割合に変化がなかったのに対し、Ephexin4-WT、EphA2-WTを
発現させた場合では LY294002処理をすることにより、何も発現させていないと
きと同程度まで増加した (Fig. 6D)。これらの結果から、MDCK細胞においても
Ephexin4によるアノイキス制御メカニズムが機能していることが示唆された。
31
Fig. 6 Ephexin4と EphA2は、ヒト乳がん由来の MCF7細胞およびイヌ腎臓由
来の MDCK細胞のアノイキスを抑制する。
(A,B) 図に示すプラスミドを導入したMCF7細胞を 3日間培養し、その後 LY294002
添加、未添加の培地で 24時間浮遊培養した。その後回収し、Hoechst 33258による
核染色を行い、YFPポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞の割
合を定量した。グラフは独立した 3回の実験から得られた平均値、エラーバーは標
準偏差を示している。*, P < 0.05; **, P < 0.01; t検定。一回の実験において、ランダ
ムに選んだ視野から少なくとも 100 個以上の細胞を数えている。(C,D) 図に示すプ
ラスミドを導入した MDCK細胞を 24時間培養し、その後 LY294002添加、未添加
の培地で 48時間浮遊培養した。その後回収し、Hoechst 33258による核染色を行い、
YFP ポジティブな細胞のうちアポトーシスを引き起こした細胞の割合を定量した。
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DD
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32
グラフは独立した 4回の実験から得られた平均値、エラーバーは標準偏差を示して
いる。**, P < 0.01; ***, P < 0.001; ns, not significant; t検定。一回の実験において、ラ
ンダムに選んだ視野から少なくとも 100個以上の細胞を数えている。
33
考 察
浸潤・転移を起こす悪性度の高いがん細胞ほど EphA2受容体の発現量が増加
しており、がん治療の観点からもそのがん化促進に関わるシグナル伝達経路の
特定に関心が高まっている (Macrae et al., 2005; Larsen et al., 2007;
Brantley-Sieders et al., 2008; Wykosky and Debinski, 2008; Miao et al., 2009)。本研究
ではがん細胞が原発巣から離脱し、転移する際に必要な機能であるアノイキス
耐性に着目し、そのシグナル伝達機構の解明に焦点を当てた。EphA2 によるア
ノイキス耐性の獲得は、膵がん細胞を用いた実験において確認されていたもの
の (Duxbury et al., 2004)、その詳細な分子メカニズムの解明はされていなかった。
第 2章の実験では、EphA2に結合する新規 G蛋白質活性化因子として同定した
Ephexin4、および所属する研究室において以前報告した RhoGによるアノイキス
制御メカニズムとの関与について検討した。
アノイキスは生体内において、ECMとの接着を喪失した上皮細胞をアポトー
シスによって排除し、組織の恒常性および発達を制御するためのシステムであ
る (Geiger et al., 2005; Rennebeck et al., 2005; Simpson et al., 2008)。in vitroにおい
てその環境を再現するため、細胞を浮遊条件下で培養し、アノイキスを引き起
こした細胞の割合を指標として、アノイキス耐性を評価した。本研究ではがん
細胞における機能を研究対象にしているため、非接着条件下での増殖が可能な
ヒト子宮頸癌由来の HeLa細胞を用いた。ヒト Ephexin4に対する shRNAを発現
させ RNA干渉によって内在性 Ephexin4の発現を抑制することにより、アノイ
キス耐性の抑制が見られた。このような現象は、接着条件下では見られないこ
とから、Ephexin4によるアノイキス制御メカニズムの存在が示唆された。また
以前の報告においてRhoGが活性依存的に PI3Kの調節サブユニットである p85a
に結合することにより、PI3Kを介した Aktのリン酸化を促進させ、アノイキス
を制御していることを明らかにしており (Yamaki et al., 2007)、この RhoGによ
るアノイキス制御メカニズムと Ephexin4との関係を調べるため、Ephexin4ノッ
クダウン細胞に野生型 Ephexin4、あるいは RhoG結合部位を欠損させた変異体
を過剰発現させた。これによって引き起こされたアノイキス耐性の変化から、
RhoGによるアノイキス制御には Ephexin4による 活性制御が必要であることを
明らかにした。また Ephexin4ノックダウン細胞において Akt活性が低下するこ
34
とから、下流にある PI3K/Akt経路との関係も確認することができた。Ephexin4
と同様に、内在性 EphA2の発現抑制によってもアノイキス耐性の抑制が確認で
きた。さらに EphA2ノックダウン細胞に野生型 EphA2、キナーゼドメインある
いは SAMドメインを欠損させた変異体を過剰発現させ、引き起こされたアノイ
キス耐性の変化から、Ephexin4と EphA2との結合がアノイキス耐性に重要であ
ることを明らかにした。またヒト乳癌細胞由来のMCF-7細胞、イヌ腎細胞由来
のMDCK細胞を用いて同様に実験を行い、EphA2によるアノイキス制御メカニ
ズムが HeLa細胞以外の細胞においても存在することを明らかにした。これによ
り Ephexin4は EphA2のキナーゼドメインに結合し、RhoGの活性化因子として
働くことによって、下流にある PI3K/Aktシグナル経路を活性化させ、がん細胞
のアノイキス耐性作用を媒介していることを初めて明らかにした (Fig. 7)。
Fig. 7 EphA2による Ephexin4/RhoGを介した、がん細胞のアノイキス耐性
獲得メカニズム
P
Ephexin4
RhoG
RhoG
EphA2
RhoG
がん細胞
p110
Akt
p85 PI3K
アノイキスの抑制
活性化
35
本研究においてAkt活性と cleaved caspase-3の量との関係ついて直接検証は行
っていないが、これまでの研究から明らかにされた機能および分子メカニズム
から説明することができる。Aktはプロアポトーシス Bcl-2ファミリー蛋白質の
リン酸化を制御することによって細胞の生存制御において重要な役割を果たし
ていることが報告されている (Reddig and Juliano, 2005; Duronio, 2008; Chiarugi
and Giannoni, 2008)。このプロアポトーシス Bcl-2ファミリー蛋白質は Aktの活
性依存的にリン酸化を受けることで caspase-3 の活性化を抑制し、cleaved
caspase-3による核 DNAの断片化を抑制している (Valentijin et al., 2004; Simpson
et al., 2008; Grossmann, 2002)。このため本研究において確認された Ephexin4のノ
ックダウンによるアノイキス耐性の抑制は、Ephexin4 による Akt の活性化が行
われなくなったことで、プロアポトーシス Bcl-2ファミリー蛋白質がリン酸化さ
れず、cleaved caspase-3の発現量が増加することによって核 DNAの凝縮が引き
起こされたためだと考えられる。一方 EphA2の上流については、リガンドであ
る ephrin 非依存的な経路において成長因子の制御を受けていることが報告され
ており、所属する研究室においても EGF 刺激を加えることで EphA2/Ephexin4
を介して、RhoG が活性化されることを明らかにした。本研究の実験では HeLa
細胞を浮遊状態で培養する際、増殖培地を用いており培地中に含まれる成長因
子によって EphA2/Ephexin4を介した RhoGの活性化が引き起こされ、アノイキ
スを抑制していたと考えられる。
Eph 受容体およびそのリガンドである ephrin は発達過程における様々な生理
機能の制御に関与しており、近年では多くのがん細胞において腫瘍形成および
がん化を促進する重要な因子として注目を集めている。中でも EphA2は多くの
ヒト上皮組織由来のがん細胞において発現量が増加しており、最近の報告にお
いて EphA2はがん細胞の運動・侵潤の促進、そして本研究で示したようにアノ
イキス耐性の獲得に重要な働きをしていることが明らかになっている
(Surawska et al., 2004; Pasquale, 2008, 2010; Macrae et al., 2005; Larsen et al., 2007;
Brantley-Sieders et al., 2008; Wykosky and Debinski, 2008; Miao et al., 2009)。また興
味深いことに、EphA2 は ephrin が結合により細胞膜近傍にあるチロシン残基に
リン酸化を受け伝達するリガンド依存的なシグナルとは別に、リガンド非依存
的に伝達するシグナルの存在が報告されている。がん細胞では、このリガンド
非依存的なシグナルによりがん化促進機能を制御しており、EGF などのある種
の成長因子が Akt を介して EphA2 のキナーゼドメインと SAM ドメインの間に
36
位置する 897 番目のセリン残基がリン酸化されることが主な要因であることが
明らかとなった (Miao et al., 2009)。また所属する研究室では、Aktによる S897
のリン酸化依存的に Ephexin4が EphA2に結合し、RhoGを活性化することでア
ノイキスを抑制することを示した。これにより、PI3K/Akt 経路の活性化に伴い
EphA2の S897のリン酸化を促進するポジティブフィードバックループが形成さ
れることを明らかにした (Kawai et al., 2013)。Eph受容体は、Eph受容体間でク
ラスターを形成する際、EphAと EphBの異なるタイプ同士で Eph–Eph結合を形
成し互いのシグナル制御に干渉することが近年報告された。この知見をもとに、
所属する研究室では、キナーゼ活性が欠失している EphB6が EphA2とクラスタ
ーを形成することで EphA2 の S897 へのリン酸化を弱め、Ephexin4 との結合能
を低下させることを見出した (Janes et al., 2011; Akada et al., 2014)。
所属する研究室では、乳癌細胞において ephrin非依存的に EphA2が細胞の運
動・侵潤を促進するシグナル伝達機構、またアノイキスを制御するシグナル伝
達機構において Ephexin4 と RhoG が関与していることを明らかにした
(Hiramoto-Yamaki et al., 2010)。このような EphA2による多様な機能は RhoGの
エフェクターの違いによるものであり、前者はエフェクターである ELMO2と、
Racの GEFである Dock4の複合体による Racの活性化、後者は PI3Kとその標
的分子である Aktの活性化に起因している。これらの事象から Ephexin4および
RhoG が EphA2 によるがん化促進作用において重要な役割を果たしていること
は明白であり、EphA2 とともに細胞のがん化において重要な因子であるといえ
る。現在 RhoGのノックアウトマウスについて、発達過程における異常は報告さ
れていないが (Vigorito et al., 2004)、がんモデルマウスと RhoG ノックアウトマ
ウスとの交配、あるいは RhoG ノックアウトマウスにがんウイルスを感染させ
ることによってより明確に RhoGの重要性が明らかになるかもしれない。
Ephexin4以外の Dblファミリー蛋白質おいて、いくつか RhoGの GEFとして
同定されその機能解析が進められている。Kalirinと Trioは二つの Rho GEFドメ
インを持つ高分子量蛋白質であり、神経系に発現し神経突起の伸張を制御して
いる (Estrach et al., 2002; May et al., 2002)。また上皮細胞において、Vavファミリ
ーGEF蛋白質や、Ezrinと結合する分子として同定された PLEKHG6は EGF刺激
による急速な RhoG の活性化を引き起こし、細胞の運動能や、EGF 受容体の内
在化を促進していることが報告されている (D’Angelo et al., 2007; Samson et al.
2010)。一方で内皮細胞では ICAM1の下流で、SGEFを介して RhoGが活性化さ
37
れることにより白血球の経内皮遊走を促進していることが明らかになっている
(van Buul et al., 2007)。このように、Ephexin4を含む RhoGの GEFが異なる細胞
種においてどのような機能発現に関与しているか、またどのように協調して
RhoGの活性を制御しているのかを解明していくことが今後の課題である。
38
結論
本研究により得られた結果をまとめると、以下の通りである。
第 2章では、がん細胞においてリガンド非依存的に EphA2受容体は Ephexin4を
介し RhoG を活性化している。これにより、RhoG は PI3K/Akt 経路を活性化す
ることでアノイキス耐性の獲得に寄与していることを明らかにした。
39
実験方法
プラスミドベクターの構成
蛋白質発現ベクターの構築
クラスⅠA PI3K 触媒サブユニットである p110α の発現ベクター
(p3xFlag-CMV) は東京大学の堅田利明博士よりいただいた。またプロモーター
が二カ所存在し、うちひとつの下流に EYFP をコードした二重プロモーターベ
クター (pCAG-EYFP) は大阪大学の宮崎純一博士、および千葉大学の斉藤哲一
郎博士よりいただいたものである。
ヒト Ephexin4および EphA2の cDNAは HeLa細胞から精製された RNAを鋳
型とする RT-PCR 法を用いて生成され、その塩基配列は解析し確かめられた。
Ephexin4-WTは pCXN2-Flagまたは pCAG-EYFP (Saito and Nakatsuji, 2001) ベク
ターに組み込んだ。Ephexin4-ΔDH (アミノ酸 1-275、 481-709) は、pCXN2-Flag
ベクターに挿入した。EphA2-WT、EphA2-ΔKD (アミノ酸 1-606、906-976)、お
よび EphA2-ΔSAM (アミノ酸 1-886) は、細胞膜貫通シグナルとして機能する Ig
κ 配列とMycタグをコードした pSec ベクター (Iwasato et al., 2007; Takeuchi et
al., 2009) に組み込んだ。
Mycエピトープタグを付加したヒト RhoG-V12、膜移行シグナルであるCAAX
モチーフをカルボキシル末端に融合させた p110α、および Srcミリストイル化シ
グナルをアミノ末端に融合させた HA エピトープタグを付加した Akt は以前の
報告で用いられたものを使用した。一部の実験では、Flag エピトープタグを付
加した Ephexin4-WTとYFPを同一細胞に発現させる二重プロモーターベクター
(pCAG-EYFP) を使用した。
ショートヘアピン RNA (shRNA) 発現ベクターの構築
コントロールの shRNA として、Luciferase の塩基配列のうち、どの哺乳動物
の遺伝子配列にも相同性をもたない 19ヌクレオチドを標的として設計し、合成
ヌクレオチドを shRNA 発現ベクターである pSilencer™2.1-U6 hygro (Life
40
technologies社) もしくは pCAG-EYFP-hU6に組み込んだ。
Ephexin4 の shRNA は、ヒト Ephexin4 の塩基配列のうち、どの哺乳動物の遺
伝子配列にも相同性をもたない 21 ヌクレオチドを標的とした。ELMO2 または
EphA2の shRNAは、それぞれヒト ELMO2、ヒト EphA2の塩基配列のうち、ど
の哺乳動物の遺伝子配列にも相同性をもたない 19 ヌクレオチドを標的とした。
これらの設計した合成ヌクレオチドは、 shRNA 発現ベクターである
pSilencer™2.1-U6 hygro もしくは pCAG-EYFP-hU6 に組み込んだ (Katoh et al.,
2006; Iwasato et al., 2007; Fujimoto et al., 2009)。
RhoG shRNAは、ヒト RhoGの塩基配列のうち、19ヌクレオチドを標的にした
合成ヌクレオチドを pSilencer™2.1-U6 hygroに挿入したものであり、以前の報告
の通り使用した (Katoh et al., 2006; Yamaki et al., 2007)。
抗体および試薬
抗体の作製
Ephexin4に対する抗体は、ヒト Ephexin4のアミノ酸配列のうち 690-708番目
に対応するペプチドを glutathione S-transferase (GST) に融合させた蛋白質を大腸
菌から精製して、抗原としてラビットに免疫し、その抗血清を得た。特異的な
抗体は、ペプチド共役型アフィニティカラムを用いて精製した。イムノブロッ
ト法を用いた内在性 Ephexin4の検出には、この抗体を 1 µg/mlの濃度で使用し
た。
購入品 (抗体)
マウスモノクローナル抗、Myc (9E10) 抗体、ラビットポリクローナル抗 EphA2
(C-20)、およびラットモノクローナル抗 RhoG (1F3 B3 E5) 抗体は、Santa Cruz
Biotechnology社より購入した。マウスモノクローナル抗 Flag (M2) と α-tubulin
は Sigma社、よりそれぞれ購入した。ラビットポリクローナル抗 Akt、リン酸化
Akt (Ser473) と cleaved caspase-3 (Asp175) 抗体は Cell Signaling社、およびラビ
ットポリクローナル抗 Myc 抗体は MBL 社より購入した。ヤギポリクローナル
抗 ELMO2抗体は Abcam社より購入した。Horseradish peroxidase (HRP) 共役二
41
次抗体は DAKO社、より購入した。一次および二次抗体の希釈濃度は、それぞ
れの添付文書に従って使用した。
購入品 (試薬)
PI3Kの特異的阻害剤である LY294002は Calbiochem社より購入し、ジメチル
スルオキシドで溶解後、20 µMで使用した。PI3Kによる Aktのリン酸化特異的
阻害剤である Akt inhibitor Ⅳは MERCK 社より購入し、ジメチルスルオキシド
で溶解後、1 µMで使用した。
細胞培養およびトランスフェクション法
細胞培養
HeLa、MCF7、 MDCK細胞は、10% ウシ胎児血清 (FBS)、4 mM glutamine、
100 units/ml penicillin、0.2 mg/ml streptomycinを含むダルベッコ変法イーグル培地
(DMEM) を用いて、5% CO2、37℃ の条件下で培養した。
トランスフェクション
HeLa、MCF7、およびMDCK細胞には LipofectAMINE 2000 (Life technologies
社) を用いて、製品添付書に従ってトランスフェクションを行った。トランスフ
ェクションには、血清使用量低減培地である Opti-MEM (Life technologies社) を
使用した。
持続的にコントロールの Luciferase shRNA、Ephexin4 shRNA または EphA2
shRNAを発現する HeLa細胞は、300 µg/ml hygromycin B (和光純薬工業社) によ
り選択して得られた。
アノイキスアッセイ
細胞を 0.01% EDTA を含む PBS を用いて培養プレートから回収し、1% FBS
を含む DMEMに懸濁した。5 x 104個になるように細胞懸濁液を、細胞接着を抑
制することで知られている polyhydroxyethylmethacrylate (poly-HEMA; Sigma社)
42
でコーティングした 24-ウェルプレート上に加え、24 時間または 48時間浮遊培
養した。その後細胞を回収し、4% paraformaldehyde (PFA) を含む PBS (PFA/PBS)
を用いて 15 分間固定させた。PBS で 1 回細胞を洗浄した後、Hoechst 33258
(Molecular Probes社) を含む PBSで 15分間インキュベートして細胞核を染めた。
細胞は 3 mg/ml p-phenylenediamine dihydrochlorideを含む PBSを用いて封入し、
Hoechst 33258により核が染まった GFPあるいは YFP発現細胞を解析した。蛍
光顕微鏡観察は、Nikon Eclipse E800顕微鏡の Nikon 20xもしくは 40x NA 0.75対
物レンズ (Nikon 社) を用いて行われ、Leica DC350F デジタルカメラシステム
(Leica社) にて検鏡像を取得した。
Rhoファミリー低分子量 G蛋白質の活性測定
細胞内における RhoG の活性は Bernard らの手法を一部改変して行った
(Bernard et al., 1999; Ren et al., 1999)。
GST融合蛋白質の精製
GST を融合させた RhoG との結合領域を含む ELMO2 のアミノ末端
(ELMO-NT; アミノ酸 1–362) は、E. coliに発現させた後に glutathione-Sepharose
ビーズを用いて精製し、Tris buffer (10 mM Tris-HCl、pH7.5、150 mM NaCl、2 mM
MgCl2、0.1 mM DTT) に懸濁させた。得られた GST 融合組み換え蛋白質は、
SDS-PAGEおよび CBB染色法により、BSAの検量線と比較することで濃度を測
定し、–80℃にて保存した。
内在性 RhoGの活性測定
持続的にコントロールの Luciferase shRNA、Ephexin4 shRNA または EphA2
shRNAを発現する HeLa細胞を浮遊条件下で 2時間培養した。RhoGの活性測定
には 20 µgのGST-ELMO-NTを氷冷した cell lysis buffer (10 mM Tris-HCl、pH7.5、
100 mM NaCl、2 mM MgCl2、1% Nonidet P-40、10% glycerol、1 mM DTT、1 mM
PMSF、10 µg/ml aprotinin、10 µg/ml leupeptin) に添加し、細胞を溶解させた。細
胞溶液を 10,000 x g、4℃ にて 5 分間遠心分離し、上清に glutathione-Sepharose
を加えて 30分間、4℃ にてインキュベートした。氷冷した wash buffer (10 mM
43
Tris-HCl、pH7.5、100 mM NaCl、10 mM MgCl2、1% Nonidet P-40、10% glycerol) で
ビーズを洗浄した後、結合蛋白質を 1 x Laemmli sample buffer で溶出し、
SDS-PAGEおよびイムノブロッティング法にて検出した。
リン酸化 Akt (Ser 473) の検出
HeLa細胞を 0.01% EDTAを含む PBSを用いて培養プレートから回収し、10%
FBSを含むDMEM に懸濁した。1 x 106個になるように細胞懸濁液を poly-HEMA
でコーティングした 60-mm の培養ディッシュに加え、2 時間浮遊培養した。そ
の後細胞を 1 x Laemmli sample bufferで回収し、蛋白質を溶出させた。その後
SDS-PAGEおよび抗 Aktとリン酸化 Akt (Ser 473) 抗体を用いたイムノブロッテ
ィング法により検出した。得られた結果の濃度分析は、ImageJ ソフトウェアを
用いて濃度を数値に換算して行った。細胞におけるリン酸化 Akt の割合は、リ
ン酸化 Aktの値を全体の Aktの値で割ることによって算出した。
イムノブロッティング法
7.5%、10%、12.5% または 15% の SDS ポリアクリルアミドゲルを用いた電
気泳動 (SDS-PAGE) 法により蛋白質を分離し、polyvinylidene difluoride 膜
(Millipore Corporation 社) に転写した。その膜をブロッキング溶液 (3% low fat
milkを含む Tris-buffered saline) でブロッキングした後、一次抗体に続いて HRP
共役二次抗体でインキュベートし、ECL detection kit (GE Healthcare社) を用いて
検出した。一次抗体および二次抗体の希釈には、ブロッキング溶液または、Can
Get Signal Immunostain Immunoreaction Enhancer Solution 1 (一次抗体用) および
Solution 2 (二次抗体用; いずれも TOYOBO社) を用いた。
44
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謝辞
本研究の終わりに臨み、本研究の機会を賜り、終始有益な御助言ならびに御
指導を賜りました、京都大学大学院 生命科学研究科 生体システム学分野 教授 根岸 学 先生 に謹んで感謝の意を表します。 また、本研究の全般を通じて直接の御指導を賜り、常に励まし有益な御助言
を頂いた、京都大学大学院 生命科学研究科 生体システム学分野 准教授 加藤 裕教 先生 に深く感謝いたします。
さらに、本研究の全般を通じて的確な御助言を頂いた、京都大学大学院 生
命科学研究科 生体システム学分野 助教 生沼 泉 先生 に深く感謝いた
します。
研究を通じて活発な議論を交わして頂いた、京都大学大学院 生命科学研究
科 生体システム学分野の皆様 に深く感謝いたします。
最後に、常に温かく見守り励ましてくれた家族に、心から感謝いたします。
本学位論文は以下の学術論文の内容に基づいて書かれたものである。
Kouhei Harada, Nao Hiramoto-Yamaki, Manabu Negishi, Hironori Katoh Ephexin4 and EphA2 mediate resistance to anoikis through RhoG and phosphatidylinositol 3-kinase. Experimental Cell Resarch, 317 (2011) 1701-1713