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Title 幕末の財政紊亂について(下) - 幕末特有の新經費續出を中 心として - Author(s) 大山, 敷太郎 Citation 經濟論叢 (1932), 35(3): 409-424 Issue Date 1932-09-01 URL http://dx.doi.org/10.14989/130222 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

Title 幕末の財政紊亂について(下) - 幕末特有の新經費續出を中 ... · 2016. 6. 19. · 幕末 財政素乱に dつ L 、 0) て (下) li 幕末特有の新経費績出を中心として

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Title 幕末の財政紊亂について(下) - 幕末特有の新經費續出を中心として -

Author(s) 大山, 敷太郎

Citation 經濟論叢 (1932), 35(3): 409-424

Issue Date 1932-09-01

URL http://dx.doi.org/10.14989/130222

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

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大正四年六月二十一日第一-一種郵便物認可(毎月一一回一因習汀)

- ~司ブ1.&1'主.~::~ヲF明日召辛子電量日

調

満洲困税制及其批判・・・・・・・・法皐博士神戸正雄

時差設費書・・・・・・・・・・・"・文間中博士高

2

舶膜過剰問題の一意義・・・・・・・・葉山書士小島昌太郎

沿岸漁業者問題・•••••

, .•••

,ぎ御率士峰川虎三

即日間一聞か州JI

政府皆上金いい杭いてa

a

0

・む仲良子松岡キ

mm

糠瞳経済ご個別経済・・・・・・・・経済摩士大塚一朗

幕末の財政素乱について・・・・・・経瀞間半士大山敷太郎

日げ訂統一貸借封照表について・・・・将湾問申士横本吉朗

潟替相場建動の原因について・・・法皐士正井敬,ャ大

企業珠算制度の米国何時現状・・・・経古車士山本安矢部

ズルタン氏の闘家牧入論・・・・・・空母皐士大谷政敬

ゾンバルト教授の百貨応観・・・筏宮下士堀新一

新着外園経済雑誌主要論題

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幕末

財政素乱にdつ

L 、

0)

(下)

l

i幕末特有の新経費績出を中心として|11

士、晶州鉱伐とその韓間

タ三

幕末新粧費として最後ド皐ぐべきも必仁長州征伐のそれがめあり

を傾倒して、

しかも一長州に勝つ能は‘ぎりしのみならや、

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弘子LANU十ホ

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I44じJ一一」ノ

却って自己の無力類腐を天下に暴露す

る醜態宇佐潰ぜしものでめるが、その費用は決して軽々のものでなかった。「外交憐勢」の記すB

とこ

ろに操れぱ次の加ぃ。

『御準賛御入用凡積一伊月

一金五局三千七百九十雨鎗御供方之面々御手営方雑用井職人手常其外一千常共

一金二高八千七百七十雨徐四百俵巳下族御挟持井右代波

一米二千八百四十八石穴斗五叶徐

一金三高七千八百五十九雨三分総

御供方精米秩其他国師々一波

幕末の財政索乱にワドて

第三十五巻

四O九

「外交官余勢J(1海舟全集」、巻九、ニ t:'二頁〉

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幕末の財政素飢について

第三十五巻

四一

O

宮古

御箪器其外御道具類新規御修覆其飴品々波

一金一高三千八百七雨鈴

一米千五百十九石三斗コ升飴

一金四苗向雨

小以〆

米四千三百六十八石一一一斗鈴

金十七鴎凹千二百一一一十五雨三分続

一金三百十五高七千四百四十六雨徐

(ノ)恐五月「註、恐ら

tE五日ならべご

湖舵mwh被印肉眼的」御法治汗に呪御滞院中子九月より賞五月ゐ一相一悦之河御手山市金昧抑止川は川万行代公共外

一金百三十一世間九千六百五十雨一分徐

寅六月より同十二月迄御遊稜御供之向御手嘗金族御扶持方石代金英外凡積

護地精米用意Am分

卸ち、右によれば一ヶ月入用金十七高四千餅雨、米四千三百餅石を要し、純計金四百三十七寓

七千傍雨の巨額である。「蓮城紀開」の記事にもこれに閲して『大坂迄之御入用金五百高雨と申事

に候露、御後駕前此節迄に二百五十高雨御梯切に相成候故、此末々右目営に而は引足申間敷哉と

申事に御座候、御軍艦4hu

大分損居候付、御武器初諸道具一緒に束ね可成丈御質素に而多分陪運免

御持之由に御座候』云々と見ゆるものがめって、征長軍費の如何に莫大なりしかか}想見せしなる

に足る。又、文久三年大坂において勝海舟が時の勘定奉行立国主水正と隠密にその入費如何につ

いて問答せし時、勘定奉行の日くに『:・前に上洛費の時、天守牽富士見賓臓の古金銀を以て業用

に充られ、征長軍費其出る所を不知、今既に七十高雨ぞ費す、若如斯にして敷ヶ月を笹ぱ、家を

傾け査すも猶不足を生ぜぱ慨歎に不ν堪なり一一一云々とある。勘定奉行といへばいふ迄もなく幕政の

「連城旬開」三、〈第一冊、三八O貰)「海舟全集」、港九、二七二頁3)

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橿機に愛劃する者、その人の言にしてかくの如きぞ以て見れば、蛍時の財政航態が尋常普通のも

のでな〈、素乱丸信〈その極に蓮せし-hu

のなることが知られる。

なほ、慶底二年六月、布衣以上之投入一役一人宛大贋間へ呼出し、老中稲葉美濃守より一示達せ

る用途窮乏の演告なるちのに究の如くいふU

臼〈

『御遊資に付去丑五月以来長均之御滞陣に候慮、右御入費之義、如何にも莫大にで、役々怜被下物斗にでも一ヶ月金十八寓録

之御出方にて、去丑五月より営笥迄に而御手常筋而己に而も最早金三百前向雨程之御出方に有之、其徐之御入費は右に准巨世尚

之御金御逸品目御用之魚に全〈別物之御出方に相成、先年中より引捕棋聖格外御用途差湊、御勝手向御不如意之折柄、常備に

至り候ては、御金制繰合方に稽と差支、江府表に於ても此上常地え可差越御金にも差支、寅に手段無之趣に付、同列一同常

惑芯入罷在候・•.

御勝手向之義は御制定所之外、他役之栓え相洩札院は不宣趣に慌得北ハ、心潤之絵無線何れえも右之趣相談致し置候問、右趣

旨一ω組1J

肌末λkvゴ巡何れも

buJ料ん川中間山机悦松山机ル

JAF

悦車内一一一日々hj

右に『役々・口被下物斗にて一ヶ月に十八高雨骨之御出方一左いひ、『去丑玉月より営節〈即ち寅六

月)迄御手賞筋而巳も最早金三百十品雨程之御出方に有之一云々とあるは前掲「外交倖勢」の敷字と

略々一致し、雨者の信越すべきかけ)思はしめ、旦又一先年中より引績き格外御用途差波、御勝手向

御不如意之折柄、営簡に至り候ては御金御燥合方に陥と差支、江府表に於ても此上常地え可差越

御金にも差支、買に手段無之趣に付、同列一同営惑恐入罷在候』云々といふ加さ、前掲勘定奉行

の慨歎その他と彼此封昭一、何人と臨も今や府庫会く窮乏して、如何ともなし難きに立至れること

を戚ぜぎるを得ないであらう。

幕末の財政占禁乱について

第三十五巻

号虎

「開園屋原」、下、 (1海舟全集J、港ニ、五七六買以下)4)

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幕末の財政素乱にワいて

第三十五巻

一一回

右を以て長州征伐の奉が、窮之の極にありし尉府財政にとって頗る重大なる経費な司りしことが

判るが、か、〉る莫大なる腔費も結果としては全く無意義に終り、却って自己の無力を天下に暴露

し、幕府を財政的に破産せしめたるのみなら守、天下に威信を失ひ自らの覆滅の重大原因E

となっ

にのである。然し乍ら、同ケョに一言附加すぺ主ば、この↑時に際して幕府営路者聞においで異に乾

坤一山怖の意気伝以て局耐の一大日間同を同A

つんと

hbJ

る計割あhし"γとこれでめる。帥ら、幕府がフ

ランスに託して軍資金及び軍艦の供給をつけ、以て‘びとり長州のみならや、他の諸強藩を窒め

流弊「い堪えゴる封建の制を自ら打破し、新時代に趨臆すべき郡牒の制ぞ樹てんとの議ありしこと

は大ひに注目すべ一き事責である。これについて勝海舟の誌すところによれば、臆肱三年五月願官

某、密に彼に告げて

Ht『邦家の形勢挽回途を絡す、唯一事あり、是必死の議なり、江戸今既に決

す、働郎西圃より金幣幾許軍艦敷躍を借ちんとす、既に会使に談中、公使本国に告戸、、業本国よ

り一使の来るを待なhJ、A1征長兵結て、不v解、其進退の如き、内政用途快乏如何共すべから子、

唯此儀の成るを待、誠に危険の策、唯此機曾に乗じ張藩二一を討ち、勝に乗じ他の大藩をにしな

め、封建の制を破らか、是、結封絶命の時出世」一式々と。然るにこの年暮フランス本園より謝絶の

旨通知めり、これより幕府額要の地位にあるもの、別に策なく、猿狽失望いふ屯べからrd

る形勢、と

なったといふo

蕊には右の如き密議あbしことによって、用途棋乏如何ともすべから中、遂に外

固に迄責を仰がんとさへ決意ぜしめし程、幕府財政の一通返し壷せしことを指摘すれば足るであら

5) 1慈肋J(1海舟全集」、倉九、二Fじ一頁)

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ぅ。海舟『解難銭』(慶臆二年一患において、這聞の事情を設いて日〈

『征長の事起りしより以来、園財空賞、域内白金庫皆一空、近く京師不際、費用金LR

不足し且歳暮に逼り牧枕寸でに終れ

p、其集る日一路、兵賦金のみ、此金員三百五六十高、乍レ然是兵隊軍艦白用に充るものにして、他に不レ可レ用、常此時一京師

盆々不際、兵を巣め弾築を貰ひ、そ白用途貨に多〈して、償之道無〈、亦日正を寛に成すの暇なし、是外人の不レ知しで諸官有

〔モトノマ・)

司も亦察皆殺像ナ、富士見台白金庫あり、高一に宿りでは之主開きで用に臆ぜむと、忠一川知らむ、山叩ヤ由服唯均寸世相幾許を存せりと

は、機密官支頼む所、悌関西に金軸閣を借る事院に成らむとして不レ成、此空想に因て一日を過仁、亦危念存亡之秋也』一百アζ

か〈の如〈にして、ぞの後幾許もな〈、幕府は壊滅し去ったのであった。

八、幕府の財政教治策概観

以上諭遁せるところを以て、幕末における幕府財政航態が如何に素凱を極め仁るも¢なわしか

が略々明瞭となっにこと〉思ふ。一万来、幕府財政の困難なら

Fりしは携にその初期の聞に限られ

その困難の度は時代の経過と共に益々甚しかったものであるG

しかして、この趨勢にありし幕府

財政が遂に会〈牧合すべからYる素飢の極に蓮せしは、郎ち、幾多重大なる幕末特有の新鰹費の

積出なる一大衝撃によるものである。然らぱ幕府歴代の営局者はか冶る財政困難の事賞に直面し

て、果して無免無策七、りしやといふに必ら宇しも然ら宇。剖ち、幕府の財政救拾策ム」しては産業

の開設殊に新田開墾の如き積極策、経費節減の消極策等感んに励行ザちれ、又いはゆる棄損とて

債務切拾の如き非常策が断行せられたこともめるが、就中、最色主要なるものは貨幣の改鋳によ

幕末白財政素飢についで

第三披

第三十五容

「解難録」、五、(,海舟全集」、巻丸、三三三頁)との聞の事情についでは、遠藤佐々喜民「徳川氏非常用合銀分銅の肝究(,史撃」、三巻、一披)参照

6) 7)

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第三十五巻

るものであり、御用金の賦課も亦軽視すべからぎるものであった。これらが夫々の意味において

幕末の財政素乱について

一占ノ、

四一四

相営の効果ありしは否定することが出来ない。しかも、現存の矛盾に満ちたる封建一吐舎の存績維

持d

ピ前提左せる結において、還に捕縫策たるに止まり、或は却って種々なる悪影響な枇曾粧掛上

に及ぼしたものであった。か〈して、財政の困難は迭に匡救せられ争、多少の効果もふ一く一時的

にるド過ぎ中、

財政窮迫mw事買は・次第じその甚

rし5を加へた。

直に幕府営局者いかかうる事賞に

庇国rurl構じた品々の財政岐拾策及びその効果にコい

t畑説、1る侍協なき枕、

トr1f一fuf

Fht

一九トiw

ii

表的なる貨幣改鋳及び御用金の雨策について若干を窺って見ること〉する。

抑々、造幣躍を澗占せる圃家権力にとうて、貨幣の悪改鋳は大なる刺盆を得べき財政策であっ

て東西の史上屡々採用せられしところであり、我が圃において必既に王朝時代にその先雌を見る

程でめるが、もとより経掛界の正常を硯り乙れを感胤に陥るh

悪影響営見れ難いう幕府が財政窮乏

に迅られぞの悪影響を顧みる遣な〈これや}断行せしは買に一元職八年(西、一六九五年)に始まる。印ち

そのいふところ、各鱗山より産出の金銀大ひに減少し、府開通用の令銀に不足し、加ふるに首相府

の経費非常に増加し、到底産出の金銀を以一てこれに底守る能はや、よって在来の貨幣を改鋳して

ぞの不足を補はんと。然し乍ら、か〈の如きはもとより一片の口買に過ぎない。新井白石は既に

これを明快に指摘して、慶長以来の金銀の誌を改め、『金をば銀を雑遺hノ、銀をば銅を増加候て天

下通用の金銀営増され候由の申沙汰』なるも、その一異質は慶長以来遣出きれ候ほどの金銀の敷

本庄博士、「日本社曾経測史」、四三五頁以下内田博士「日本古代通貨奥に闘す z研究J(r日;本総清史の研究」、上巻、三ヲL3i頁八なほ例之、 K. T. EheberιUeber d出 allcredeutsClle Munzwe干en und die I-Iauぉgeno出 enscharten,]8iO. (G. Sdllnollじ Staats-lmd sncialwis.sen-schsc1】乱ftlicheFoγschungεn, Tl, 5) W; Schwink.ヲ¥Vski:])as Gelc1-und Munz-'¥vesen Sιchsens; Beitrage zu ';;einer Geschichte, 11パK C. Onwn; Thf> cninnge ot

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業竿を奪ふべきための術にて候ひき』云々と断じてゐる。元職八年より正徳元年迄十七ヶ年に改

鋳は四回の多きに及び、これによって幕府の得たる利盆は賓に凡そ玉百高雨の多きに及んだ。爾

来幕府は財政救治の常套手段として好んでこれを用ひ、ようてその財政彦補填したのであっ亡。

徳川時代金韓併}通じて改鋳益金が果して幾許の額に建せしやは詳でないが、例之、費永の改嬉に

際して百二十高凧、文政十一年より天保八年まで昔、一八二八|三七年)に九百高八千雨、或は叉丈

政元年より安政四年まで(商・一八一八五七年〉に一千七百九十六高嗣除、この一ク年平均四十王高

闘の改飴議金がめつ七

2いふ。しかし

τ、「貨幣秘錐」によれば天保三年よhノ同十三年に主る十一

;21、

11

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1

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一う侃uLt

し1収支同性崎小、幕府財政改市p

トこの市川糟借金によ〉

τァての不足骨柿つhJeM

ぞれによるもなほ不足の年が三年めった。剖ち、天保十三年の如き、歳入百二十五高雨僚に費し

て歳出は百九十六十両雨斡に及び、ぞの不足七十高雨斡を五十高雨俸の改鋳盆金を捻出して調縫し、

なほ二十高雨俸の不足を示し、又その前年天保十二年の如き、百九十六高南俸の歳出に劃して歳

入は百九高雨餅に過ぎや、歳入組額を突破する百十五高雨憐の改鵠盆金を以て二十入高南俸の剰

俸を得たりとしてゐるω試みにこの十一ヶ年の改鋳盆金ぞ合計すれば七百五十王高八千除雨の

E

額に達してゐる。由是観之、改鋳盆金なくしては全く財政を胡躍する能は

Fりしこと明瞭である。

しかして、これ、土地経済による封建国家としての幕府財政組織に大なる麗質を来せることを示

すものに外ならない。然し乍ら、かくの如き財政策が早晩破綻すべきは勿論であり、

錆盆金ぞ搾出する能はざるに及んで、幕府それ自身が壊滅したともいひ得られる。

その謡に改

幕末の財政棄飢について

2主

第三十五巻

主ζ

En耳land,1931 3) 1常電院醍御賞記」、港ヨコ(1徳川賞言己 1、第四編、軍:On頁〉4),5) [一白石建議」、四(r新井白有全集」、第六、一九二頁)6) 黒板樽士「徳川幕府白貨幣政策J (,地味 l、三巻、一自主下7) 竹越興三郎氏「日本経漕史J(卒凡社版J第六巻、六一九頁)8) 中村勝麻呂氏「史宰研究銭」白第一、三 af二頁

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幕末の財政素乱について

第三十五巻

F、

第三披

A

以上の加〈、貨幣改鋳即ち良貨に代ふるに悪貨を以てしその差金ぞ利ぜんとする政策は、幕府

その利得の莫大なりし賠よりみて一躍その役割伝来せ

が元職以来常套的に用ひたるものである。

レもの〉如〈であるが、

しかも、これが種々なる窓口毒を及ぽし、粧持界営混乱に陥れしことは非常

なるものであつだ。

即ち一債値標準たる貨幣の劣悪化が物債の勝賞を来せるは勿論、

時子異にして

なされたる三貨の改議は、

ヂ}れが比債の極端なる麓動小山惹起し、寅買貸借上にも暗々なる紛一和bh

{註~ご

主じに。

-

一七

O二年〉以降屡々貸借費買の訴訟は一々応理するの濯な〈、時患に己れを常事者双方の一ポ

談に任したるによヲでも、その混飢を祭ナるととが出来LU

。叉常時の撃者にしで、との悪貨の弊害を論じたるものもと上

り齢〈たい。例之、太宰春台は一元旅以降の惑貨について『此斡(元蔵新銀)純銀にあ

bざるに図て傷遣する者起りで士民欺

を受る者多」』といひ、殊に賢永四柑貫録に関して『英色黒鰯にして繍圭生じ、銀の本色失はれて錯錫と・9も異ることなし、

民是在婚しむること土石の却し市園初以来の故一銀は犬十銭を以で金一一隅に直し、一銭銅銭七八十文に直すを常とせしに、

4T

三賀凶賓の惑銀になりでは、直大に減じて八十凶絵銭を以て金一一隅に直し、一伎を銅銭四+文許に直ナ、葱に歪て士氏の

忠英一し』と説骨、「一一一貨圏実遺考」の著者草間直方も交政七年の一来金が一伺の重量三分八尽にしで、金の含有量千分申仮

に一舟一一十一一一に過ずぎりしを詳しで『例無乙一朱金の吹戎』-:『七分通は銀にで三分組"は金を吹焚候而銀山口之似せ小州之

類色』といひ、「貨幣混考」の著者用羽田正見は天保三年のご朱金にういで『始達之時は礎煎のカ脱せ子黄色鍛然たる金たれ

Eも、精々入手を廃るものは文字等都て高奇庭皆剥落し、金気を見ず佼々たる銀色なり、是を以で山間芥の徒は全f備金白

銀幣なりと云に至る』とその粗雑さを難じ、夏に天保八年白一分銀については『其質純金二匁J4

分あ

P、此頃行ふ所の二

朱銀に比ナる時は毎雨の重バ殆EhT寸J

、官、厚顔、人意の表に出づ-銀は岡田甚下旬銅に粉々銀朱あるのみ、久くしでは

一一塊石の如し』と慨しでゐる。しかして、事賞か込る劣悪なる貨幣はその偲蓮縫蓮極めて容易であヲ夫。

〈謹二)

倒之、一万旅十五年〈商、

鋼青色を生じ、

「貨幣帯。銘J(r近古文書聖温知態害!、第五編、三丸京以下〉「日本財政解糖史料 1、第宍春、財政之部、八七ニ〕日:以下「経漕録,、巻五、 (r日本経漕叢書」、曜を六、一四 頁以下)「三貨圃葉遣考」、巻三(r日本経傍叢書 j、巻三八、i 五二二E支)「吠塵銑」、上(r海舟全集」袋三、四三一頁以下)

9) 10)

II) 12)

13)

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幕府ぼこの罪主犯すものに封しでは死を以で鴎んだが、皮肉にも慎遁貨幣中却ワで品質夏好の屯のもありしを侍へむれ、

叉虚刑場に牽かれザ〈健造犯人が聾高に『似せ金を作り出せし御仕置あ

bば、我々より吃としたる二本道具由獅役人こそ

罪基かるべし』と罵ったこともあったと稽せられてゐる。以て、常時の貫際を知るべきであらう。

右の如〈悪貨後行は表面的一時的には幕府財政を輔地し得るの効果が大であって、寧ろこれな

くしては切盛りし得5る程重要なるちのであったが、

宇』れが経蹄界を混乱サしめ物債を騰貴せし

めたることは、同時に盆々財政的支出を培加せしむること〉なり、失に遁hAぺき借金政策にる御

用金政策と共に自縄自縛の桔呆を招来せしめぎるを得なかっだ。

次に御用金とは徳川時代において国用の不足子補ふぺ〈臨時且任意に課せられだる金銭上の負

擦である。いはJY

一種の震幽公債とも見るべく、償還を議定し叉刺子をも附J9Z'E組帆Lι

寸る山

これを命ぜられたる富一家はなるべく負携を軽減ぜんとして百方噴顧してぞの減額を求め、

hytて

その指定一両と貫際の請高との聞には往々にして大なる業蓮を来したが、しかも.幕府財政の窮迫

に臆ヤペき重要なる方策なり〕こし

-d否定す〈炉ら

Yるものがある。

(註三)時四時、御用金と相並んで盛んに行ほれたものに献訟がある。雨者の性質は相類するも・根本的には償還傑件の有無

にようてこれを差別する。但、御用金中にあづても、その一ホさ礼たる償還傑件は往々にして貰行を伴日ず、戎は後に至っ

て献金に護ぜしものもあワた。日伐にこの献金も亦弱迫せる幕府財政に貢献したのは勿論である

却ち、例之、天保十四年大坂地方の請高は幕府指定高よりち百高樹程の減額であったが、しか

も総額百十四高雨株に速し、附足踏二年のそれば七百高雨の指定高に封して、銀十七高八千七百八

幕末。対政素乱につい

第三十五巻

;Ot:

四一七

「日本財政f宣告年a.料」、巻二、 :tr./"¥.i、氏、五六八買、港六、四二O頁等「甲子夜詩人巻二、(第ー冊、二-,,0

14)

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幕末の財政素飢にワヤて

第三十五巻

O

m p、

十四貰飴に及んでゐる。しかして、この口敏一千百八人、中には五貫目、七貫目等の小額のものを

合み、幕府が如何に用金高佐取纏めんと焦慮しつうゐhノしかを物語ってゐる。慶雁元年丑五月、

幕府営局よりの用金申波書に失の如くいふ。

『近年決岸防禦之御手一首筋井御本丸閏丸北ハ度々之御普請、其上去亥年以来雨皮御上洛、宝山外事而難賞御用途打減候折柄、向又A1

〔原女ノザマ】

般御警告付而、真太之御入用付、鴛御一融恒也、江坂井御料所一日姓町人之内身柄棺舷之者、且諾寺院一宮迄御用金殺仰付一候旨殺

仰出候、漢方共之内には御城

Tに安位、家業全何枚し獅同州思之法相弁・先年A御問令u同

k火は仁納合等相版係者も同自立

似へ洪.此皮之儀は是之とは詩柄達、安臥一小容目指御入用筋に付家業之除忽を以安築に暮貯候右様之御時節、酬明之御悲公筋を

も不相勤、徒に能在候は無hm鑓義に有之、其方共儀身上向手厚之趣は常々し相関居候義に付、冥利之程も相弁、何様共繰令致

し、際立出精可致候、布図聞に卑叫候市は出柏村之御賞響也被有之候、尤、金高井納方之義、町年寄共止申波候

但、此度被仰出後御用金之儀佐官県寅年九均十ヶ年に割合御下戻に相成候問此回円可存』云々

由是甑之、今や府庫全く窮乏して如何ともなし難〈、膝や一屈して町人に寂資金の融通子乞ひ十九

る跡歴然たるものがあるであらう。しかも、借りに屡々なる御用金の申付に謝しては、如何に財

力ぞ以て誇る町人階級といへども、必ら?しも唯々諾々たるが}得ゃ、加之、幕府に針する不信頼

次はの 次女日第くにL 、そふlSJの。調

困難伝

来$ しめ?こ

一万治元年九月十日朝、大坂日本橋札場に現れたる張紙に

『(前略)公儀之恕は火蜂之ニツ也、然に近来にせ浪士押入大金を盗候支度々たり、小ノも誠忠怒悲の吟味な〈、訴出候得ば、

「つ有キをじけ、盗去候後を考へ参り騒す計り也、京都之大火は舎賊、然も大砲を以て放火し、高民を嘗め、剰額に不レ可レ

一百仕業有ν之由、京擦の町人共取引渡世を妨げ米薪と諸ロ聞は盆々高値に相成候、国語亦時味無之、丸町議においで何の恩か免る

、、

.

. ‘.、

.h.、、.、.‘.、、、

三百年安堵之渡世は東照紳君由一鴻恩.今衣食は日月之恩也、常今之公義は高長之冠也、公儀へ御用金出す馬鹿はなし、仮令

幸田(成友〉博士、「日木経燐史問究」、四一三買、四回IA頁「連城紀聞」、三(第一、三八一頁)、「開園起源」下、 <r海!~全集」、港二、五二二頁)甲子雑録七、(第二、一五六頁)

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構成を以用金申立候共、怨る計なり、十分の一にねぎうて出ナなれ

E、捨るよりも措きなり』云々

これを曾持藩士、庚諜安任の私記「執隼錦」に『三郎又米一高俵を献示、

牛馬之を運する事

k. -. 、三十日、

戚思京岬に溢れ、

朝廷の情頼も殊に甚し、

良三郎等徴賎の身を以て政権を窃に執るを得

るものは此

4

かためなり』云々と記せる島津氏の戚思に比較すれば、

幕戚失墜の程知るべく、

カラ

て財政窮乏を救ふべき御用金政策

1究第に行詰ら.5るを得なかっ化。廃膳二年寅八月、大坂玉造

における張紙中にも衣の如く見えて、這般の事情念想見サしかる。日〈

〔原文ノマ、)

『・:・近来度々従必遁御用金波仰付、大坂市中町人一一清岡市州に去り、英太之御入賞も巨民効四月征戊無名之呉左辺し、天下効乱之

基を開き、高民之塗炭を不願民心斬同も安奇心なし』一百々と

F

御舟がこの聞の事耐を翫レJL

月捻

Z出川じ味じて

一亦耐にしては緊倣掛ド

Lて而

RE仁削心す町

しきりに用金之命ゐり、

或は旗下に令して其械の宇佐献ぜしな、

常用日

是を用ふる武備に非字、

々に供して不足、美形勢を以で考ふれば敵軍来らやといへども都下之瓦解、久しかるべから守、

A1不測の盤に営て人心悔々己云々と遁べたるは、必らやしも誇張の言ではないであらう。

なほ、幕府の財政救治策として積極策たりし産業同毅策もその主要なる新田開饗策にして、な

ほ搾取に悩める農民に劃しては到底増大しゅく幕府の財政需要を満足せしなるに足らや、或は却

て本田を荒廃せしなる結果となつえ。殊に封建制度の本質上、、ア¥'る自然カに依壊すること大な

る士地生産力を基礎p

とする以上、天災、就中機僅の際には歳入を激減せしめられ、のみならや同

時に救岨のために多大の出費を憐議なからしめらる〉不利を件った。更に又消極策たhし経費節

幕末の財政支飢について

第三十五容

四一九

Ei止

「棋掌銭」、一、 (i曾津務贈記録」、女:九三年、第三三、三瓦三頁)「連城漫筆」、主(第一、四P'1犬頁)「海舟日記」、慶.I!fl¥四年二月一日のiOfiC閑 14$舟全集 J、巻九、一二C頁)

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幕末の財政索乱について

第三十五巻

。第

一一一

減の如き色、多く、経持枇舎の賓情に却せ

Fる潟政者の理想案だるに止り、徒らに時代の経時的

進展に逆行-せんし一寸る操あh、偲令一時的にその効果J

の手ち概'v

て失投に蹄

?ydるど得なかっだ。

九、幕府財政行詰の必然性

(結言)

最後に

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然らは幕府の財政は何が故に、しかく困難ならぎるを待ゴりしものでみるか。以下、

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抑々、徳川幕府の始祖家康が天下一い鴇4

管制し得土る主要なる原因は、その非凡なる理財の才幹

に求hu

べきであるつ彼は豊臣家の莫大なる遺金その他の淀牧金を推したる外、その持前たる消極

的節俄政策を把持すると同時に、又外国貿易の仲張、鋸山特棋の掌握、造幣樺の濁占等々の積極

的致富政策の敢行によって、

その財政令」頗る豊富潤揮ならしhuるを得た。この遺制を・つけたる秀

忠は守成の士であって盆々府庫の充買に努め、三代家光に至って日光廟の大改築ぞの他に財を散

やること移しかりしも、未だその財政には大なる影響がなかった。とれ、前代以来の金銀の産出

依然豊富なりしこと及び諸侯の廃絶滅鵡等の結果、幕府の淀牧せるもの砂なから玄りしによるぺ

〈、又後に見る如き者修の風も未だ起らなかった。しかして、次代家綱の治世に突如として起れ

る江戸、明暦の大火は莫大なる臨時費を要し、還に幕府は大坂・駿府の貯銀を江戸に廻遣すぺ〈

飴議なからしめられし程であった。然し乍ら、前代の齢諜は嘗時府庫を全く窮迫せしなると迄に

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は至らなかった。然るに、五代綱吉以後幕府財政の窮迫は漸く賄若となった。その原因だるや、

天時型地異の如き自然的なる色のもあり、鍵山直営利盆の減退、正貨の大流出、者修の普及その他

による経費の大膨脹その他種々来げらるべきも、就中その最も根本的なるものとしては、営時の

一畦曾・経持組織その色のに内在ぜる矛盾に求めることができる。

人-E知る知〈、徳川幕府財政経済の恭礎は全〈米穀に存してゐた。しかも、この苑んど唯一の

正租として定められたる米設が全国より徴牧する色のでな〈、翠に幕府直領地より牧納する6の

に限られたることは頗る注目に償ずる。即ら、幕府が去の牧入は最大なりしとはいへ自己一例の

大名たるに措ぎやして、費際において天ドの政費をA

口一時目、〆るか一時'Zりしごとは大なお矛盾であ

った。幕政の初期においては前越の如き種々なる事情によりその財政頗る豊宮であり、営時正租

たる米穀による牧納の加き寧ろ小額であり、この矛盾は未だ表面にあらはる冶に至らなかった。

然るに世の泰卒と共に封建制度の積極的否定要素たる商工業の後達を招来し、士地経持力の基礎

に立つ封建的政治枇曾組織と根本的に相納れFる貨幣経論併の発展は上越せる諸事情と相俣って盆

々ヲぞの矛盾を旗大せしめた。このことは既に見たるが知〈、幕末漸〈多事、殊に調外的交渉の生

やるに件ひ圃防その他に莫大なる経費を必要とするに及んで愈々一期著となった。立においてか、

従来の加き封建的なる一枇曾・経持組織の最早や維持すべから.ざることは識者の認なる左ころとな

り、農を以て闘を建つるの不可・不能営読き、全国的規模にかいて徴すべき「商税之法」を定め、

幕末の対政素飢について

第二一十五巻

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幕末白財政索飢にワいて

第三十五巻

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F羽

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新興経済力を支配する商工立闘の方針を以て進bの急務なる念論十るものあるに至つだ。印も、

例之.「蓮域漫筆」の記事によれば、農を以て闘を建つるの不利を説いて「・元来地力は限、り有色

の也、地カに限有故に物産に限ある故に租税に限有、然るに世中の事は太平に随ひ十六第々々に事

繁く入費も次第に増加する事限なし、限りある粗憶を以限りなき出資用念出寸、実勢ひ窮せぎるを

不得、営然の理也』と艦捕枇舎の港反にも拘らや、鍔鵡依然ム/る浪花せる土地縮怖かのみケ

k県

事蹴とする出品建臥家税則の矛盾を指摘し、『是故に上必ら令しも者ら字、下必ら千しも怠らやとい

へども、上下倶に衰微を見れ中』と論じ、更に、『常今の時勢を観や名に武備は元よL

リ急務也、

然共其武備を整へんと干れば費用を民に取らゴるを不得、民より是を取れば、民怨み内乱の恐有、

又民心を壮一んとすれば取立方緩やかに鴻きrd

るを不得、取立を寛にすれば武備整ふべき方略な

L、

故に武備を整ると民心を牧かるとは、勢ひ料棒の如〈南会すべから守、固に如此弊あるは敵をし

月文ノ甲こ

て乗十ベき隙合符へしむるな

b、農を以て闘が}立るの不利誌一多し、然共A1一接して商法診行ふ時

九山女ノマ・}

は農税悉〈国庫日々に富むべし』云々と謹ベ、叉、世腹腔一冗年ゴ一月、長州慮分#諸政改革に闘する

某氏の建言中にも『・営A寸御勝手御繰合等不容易御時節に付.難被行様相聞候得士(、右御償には

商税之法御立御座候得者、是式之義は脚以御心配無之、其余御勝手御充質は申迄色無之、御武備

も十分相整候事に御座候、此商税櫛取立之方法は買に宮岡強兵の基、西洋諸州皆此法にで闘力ど

張候事に御座候』云々と論じて、この新法ぞ断行すれば一年貢之儀に付決而苦情無之、農民等も

。r連城漫筆」、四(r第三冊」、二四買以下}2) r淀稲葉宗文書」、第一冊、一九頁

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信伏可仕』云々と柱則の根本的避革による幕府財政の難生を力説し、更に又、

プ-ブンス↓公使百セ

スがわが老中との臆接に際して『圃政之大本は、財源を立るに在り』として種々進言したるうちに

色『不才を淘汰して農商に蹄し、生産を輿へ無用之兵を養ふ勿れ』とて、避閤徒食、無用の長物化せ

る武士階扱を養ふところの謂れなさ封建国家の徹底的解悼を読きにる後、税怯の根本的立替そ遁

ペて、『-4

商人を四等に分ち二分之税を滞納候(百分ノニ)、尤、等扱は幾等に分候而も宜候』一五々と

陳堪せし如き、これである。

鶴川時代、殊にその中期以後にかいて封建国家の直接憶税者としC定められたる農民階級炉、

その搾収によって

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次第に困窮に越さ、これと反哨に貸借市嬬一輔の議肢はよって町人階級が漸実令刀

を蓄積して経済的に有力となりしにも拘ら宇、原則として携穂階級たら.5りしことは去一中旬樗の

見地よりみて、頗る不合理なるものなりしはいふ迄もない。幕府蛍局者と雄も、ちとより一一弔問の

消息に蒙昧なりしわけではない。幕末において組法を破却して、この鰹持吐曾の進化に誼一腰すペ

き幾多の新経持政策念樹立せしは、賞にこのためであったのである。しかも、上越の如き時則、

延いては枇曾・経済組織の根本的改革は買はいふべくして容易に行はれ得べきものではなかった。

例之.既越せる横須賀遺舶所建設の議決せし時(元治元年三ア-アジス会使をわが官邸に招致し、論次

一造舶所設立は主として貴邦全国の官強を固る所以

なるを以て、宜く邦内列藩をして其経費を課出せしむべし〕云々と提議せしに封して、老中は『今

その莫大なるべき経費の黙に及ぷや、公使の『

幕米の財政素乱について

自主

第三十五巻

3i

「同上書」、第二冊、二一間頁以下例之、守政三年八月、幕府整問所に羽げる時務筑ーに閣+る一課題において、これを取扱ワてゐる。 (1大日本古文書可幕米外岡関係文書」、第一四谷、ヒ九八頁)本庄博士「幕米の新照宮耳政策」、 (1終飾品1肝党、第一Ri)t;)、同博士(近世封建祉舎の府究」、 (1改造文庫」木、一一五頁以下」、

3) 4)

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幕末の財政素凱にヲいて

第三十五巻

wr

ノ、

や凡百の費途陸績艇を接するの日に於て造船所設立費百高弗を支出す忍は集計賓に容易なら十』

と嘆じ、『貴一説営れり』といひ乍ら『-只憾hu、我闘の制度之を許きゴるを、況や方今の岡情とし

て幕府濁り主聾用を負指せ

Fるを得rt

るなり』一式々と臆えてゐる。以て営時の政情を知るべく、

幕府営局者の苦哀察すべきものがあらう。しかも、この矛盾の解消は格局において大土地所有の事

磁に立ち農民の搾取によって維持せられたる封建制度そのもの〉自己否定によるの外はなかった

のTJの・03

肌ド出・べにみが如ノ¥幕府首脳郡川町一一部じおレて、財政窮乏還に如何ともすぺからャ、

費を外国に仰ぎ、諸藩の勢カを削少することによって、自ら流弊に堪えrt

弓封建の制営破hノ郡牒

の新制を布き、以て、我園を一固として、彰携として押寄せ来れる資本主義的先進諸国に暫時せ

んとの議さへ生じた。然るに、この起死回生的大密謀も、相手凶の謝絶に遭ひて建に成ら中、こ

うに財政的に金〈行詰れる幕府は此夢破れて自らが壊滅し去つにのでめった。

徳川封建枇舎の崩壊原因は必ら十しも一二に止るものではない。しかも、以上論通せしところ

を以てこれをみるに、財政の困難がその致命的閏疾だりしことは殆ん

E疑がないであらう。しか

して、その本質上ま3に行詰ら、ざるを得Fhし幕府財政は、これを打開すべき幾多の政策にも拘

ら十・次第に窮迫を告げつ〉あったが、本稿論越せる如き幕末における艶多重大なる新経費の額出

てふ一大衝撃は、これを棄乱の極に陥れ、遂に幕府ぞのものを壊滅せしめたるものでめっにので

ゅのる。

6) 1飽奄遺稿」、 - 0円頁以下7) 本庄j士、「近世封建祉曾の研究J(1改造文庫」本)、 ー三一頁以下