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TSC Foresight
海洋エネルギー
江川 光平成30年7月13日
技術戦略研究センター (TSC)
再生可能エネルギーユニット
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)
TSC Renewable Energy Unit
海洋エネルギーの種類と導入ポテンシャル(国内)
2
海洋エネルギー
①海流
黒潮で代表される一方向の流れ
10~31 TWh/y
④潮流
潮の干満により生じる海水の流れ
6 TWh/y
③海洋温度差
海の表層水と深層水の温度差
15~47 TWh/y
②波力
風等によって生じる海面の波
19~87 TWh/y
※導入ポテンシャルは平成22年度NEDO「海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務」より洋上風力発電や潮汐発電、塩分濃度差発電は本レポートでは対象外
TSC RE / Energy system & H2 Unit
海洋エネルギーのポテンシャル(世界)
3
想定される市場
潮流・海流・潮汐力
波力
海洋温度差
黒潮
海洋エネルギー
海流800TWh/y
波力8,000~
80,000TWh/y
海洋温度差
10,000TWh/y
潮流
300TWh/y
各種資料よりNEDO作成
「IEA-OES, Annual Report 2007」より
TSC Renewable Energy Unit
世界における海洋エネルギーの導入量
4
図 世界の海洋エネルギーの種類別導入量推移
図 世界の海洋エネルギーの地域別導入量推移出所:OES Annual Report 2017(IEA, 2018)
潮流発電 波力発電 海洋温度差発電 塩分温度差発電
導入規模は計25MWで世界的に実証の段階
2016~17年に複数のMW級実証が開始
種類別では潮流・波力
地域別では欧州が多い
潮流
波力
欧州
アジア
TSC Renewable Energy Unit
海洋エネルギー導入量の将来見通し
5
0
5
10
15
20
25
30
35
2025 2030 2040
Sustainable Development Scenario
New Policies Scenario
Current Policies Scenario
GW
図 世界の海洋エネルギーの導入量見通し(左:潮流発電、右:波力発電)出所:Tidal Stream 1H 2017 – High Hopes But Also Anxiety(Bloomberg New Energy Finance, 2017)、
Wave power and ocean thermal, H2 2016: a few splashes(Bloomberg New Energy Finance, 2016)
波力発電~2020年
潮流発電~2020年
海洋エネルギー全体~2040年
図 IEAの各シナリオにおける海洋エネルギーの導入量予測出所:「IEA World Energy Outlook 2017」を基にNEDO技術戦略研究センター作成(2018)
短期的には欧州の潮流・波力が主。長期見通しは政策シナリオにより異なる。
TSC Renewable Energy Unit
①海流発電の特徴
6
海底から係留して浮遊させた水平軸タービンによって、海水の流れを受けて発電。
日本周辺を流れる黒潮は、世界最大規模の海流であり、トカラ列島から四国沖、紀伊半島沖にかけて大きなポテンシャル。
黒潮の流速・流向は時間により多少変動するが、ほぼ一定方向の流れであり、安定した出力が期待できる。
出所:平成22年度NEDO「海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務」成果報告書(2011)
図 黒潮流速の変化例(潮岬沖、年間)出所:海洋エネルギーポテンシャルマップ(地域詳細版)(鹿児島大学 他, 2018)
TSC Renewable Energy Unit
①海流発電の開発動向
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2017年8月に、世界初となる実海域での実証試験を口之島沖で実施(100kW級)。
水中にデバイスを浮遊させ続ける方式であり、姿勢・水深の制御技術が重要。
海外では、研究・構想段階での取組はあるが、実海域試験に至った例はない。
図 100kW級海流発電のNEDO事業実証機(IHI)
図 海流発電ファームのイメージ
TSC Renewable Energy Unit
②波力発電の特徴
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多様な発電方式が開発されており、振動水柱式、可動物体式、越波式の主に3種類。
ポテンシャルは太平洋側の離島沖、房総半島から東北にかけての太平洋沖、北陸から東北にかけての日本海沖などで比較的大きい。
波のエネルギーは天候・季節等に依存するため
変動電源であるが、その変動は太陽光や風力発に比べて激しくはない。
振動水柱式 越波式
図波力の変化例(神津島沖、5日間)出所:海洋エネルギーポータルサイト(東京大学、JAMSTEC)
可動物体式
出所:平成22年度NEDO「海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務」成果報告書(2011)
波パワー1
[kW
/m]
TSC Renewable Energy Unit
②波力発電の開発動向
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国内外で数多くの発電方式が開発されているが、どの方式が性能やコスト面で優れているか、絞り込まれていない状況。
過去には、海洋科学技術センター※による大型船での実証等も行われてきたが、現在は、単一大型装置より、小型(数十~数百kW)の多数設置型の開発が主。
NEDO事業では、沿岸設置型の振動水柱式と、沖合浮体式の可動物体式において、実海域試験を実施。
※現JAMSTEC
図 35kW級空気タービン式波力発電のNEDO事業実証機(振動水柱式、エム・エムブリッジ)
図 3kW級機械式波力発電のNEDO事業実証機(可動物体式、三井造船)
波高の高い沖合での浮体式強度や施工性に優れる沿岸固定式
TSC Renewable Energy Unit
②波力発電の開発動向(海外)
10
欧州・米国・オーストラリアなどでは、複数機かつ長期間の実証試験の実績。
ステージゲート方式や米国DOEのWave Energy Prize(波力発電の効率向上コンペティション)などで、有望方式の絞り込みが試みられている。
ポイントアブソーバー式(可動物体式の一種)が多く、開発が比較的進んでいる。
洋上風力設備等と組み合わせた開発も検討されている。
TSC Renewable Energy Unit
③海洋温度差発電の特徴
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表層の暖かい海水と深層の冷たい海水の温度差(熱)エネルギーによりタービンを回転させ発電。
沖縄などの低緯度地域、かつ水深約1,000m以深の海域でポテンシャル。
季節間の変動はあるが、予測可能であり、出力の安定した電源。
汲み上げた深層水は水産業等に複合利用可能。
出所:平成22年度NEDO「海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務」成果報告書(2011)
図 表層と深層の温度差の変化例(久米島沖、8年間)出所:海流データベース DREAMS-E(鹿児島大学 他, 2018)図 クローズドサイクルの海洋温度差発電システム図
TSC Renewable Energy Unit
③海洋温度差発電の開発動向
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図 100kW級タービンのNEDO事業実証設備(佐賀大学等、沖縄県久米島)
国内では沖縄県久米島において実証。久米島では水産業等にも海洋深層水を活用。
海外では米国Lockheed MartinやフランスNaval Group(旧DCNS)等により開発中。
高効率なクローズドループかつ大規模な浮体式で低コスト化を目指す傾向。
高額な深層水取水管の費用回収には、冷房、水産業、海水淡水化等の複合利用も有効。
TSC Renewable Energy Unit
④潮流発電の特徴
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海水の流れを受けて水平軸タービンによって発電する方式が主流であるが、垂直軸タービン等の方式も開発されている。
瀬戸内海や九州沿岸部にポテンシャルが集中。
潮の干満により流れの向きが180度変化する変動電源であるが、変動は地球・月・太陽の公転や自転から高精度に予測が可能。
出所:平成22年度NEDO「海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務」成果報告書(2011)
図 潮流・潮汐の変化例(佐世保港、1日)出所:国土交通省資料
赤:大潮期青:小潮期
太線:港口の潮流細線:潮汐
水平軸タービン 垂直軸タービン
[kW/㎡]:潮流をうける単位面積あたりのエネルギー
TSC Renewable Energy Unit
④潮流発電の開発動向
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水平軸タービンが主流であるが、羽の形状や枚数等は様々な方式が検討されている。
技術開発の傾向は、MW級への大型化の主であるが、小型機の量産により低コストを目指す例もある。
国内では小規模な実海域試験が行われてきた。環境省事業にて国内初のMW級実証を予定。
相反転プロペラ式潮流発電のNEDO事業試験機(協和コンサルタンツ等)
TSC Renewable Energy Unit
④潮流発電の開発動向(海外)
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英国の海洋エネルギー実証サイトEMECでは、複数のMW級での長期間の実海域の実績。
カナダのファインディ湾においても複数のMW級プロジェクトが進行。主なプレイヤーは欧州と共通。
欧州企業はアジアでの実証も検討。インドネシアでは、オランダ企業による「Tidal Bridge」(橋と潮流発電を一体として開発)プロジェクト等も進行中。
海洋エネルギーの課題と方向性
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TSC Renewable Energy Unit
海洋エネルギーの発電コストの低減
0
50
100
150
200
250
300
発電コスト
[円/k
Wh
]
NEDOの海洋
エネルギー実証事業における目標値
英国のCFDにおける潮流・波力の基準価格(2021~2023)※1£=145円換算
一般的な家庭用電力価格
1998年~2002
年のマイティホエール実証
(JAMSTEC)に基づく試算値
IEA-OESにおける第一世代アレイでのコスト評価(最小値~最大値)
最大の課題は発電コストの低減。現在は40円/kWh程度までの低減が見込み。
電源としては20円/kWh程度への低減が望ましいが、方策は種類により異なる。
種類 課題・対策
共通 防水、生物付着、錆等への対策
環境影響評価
海流 デバイス大型化
係留・海底固定技術、姿勢・水深の制御
効率的な施工、メンテナンス
波力 変動電源としての対応(出力平準化等)
台風・荒波対策 他設備との組み合わせ
海洋温度差
効率向上と所内電力低減 取水管の低コスト化と耐久性 深層水複合利用方法の開発
潮流 効率的な施工、メンテナンス
大型化・もしくは小型や低流速対応
表 発電コスト低減に向けた課題の例
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TSC Renewable Energy Unit
実海域試験(複数機/長期間)
実海域試験(単機/短期間)
実海域試験(スケールモデル)
デザイン検証・水槽試験
実海域試験による課題の洗い出しと離島への早期導入
図 国内の独立離島と海洋エネルギーポテンシャルの分布
陸上と比べ、海上や海中における施工・メンテナンスが高コストとならざるを得ず、実海域での試験により明らかになる課題も多い。
今後、実海域における長期試験を通した信頼性向上や課題の洗い出しが必要。
初期(~40円/kWh程度)の導入場所としては、
ポテンシャルに恵まれており、本土と連系していないため、燃料コストの高い内燃力発電により電力が供給されている独立離島が有望。
国内の海洋エネルギー開発段階
コンセプト研究 海洋温度差
海流
波力
トカラ列島
種子島
奄美大島
宮古島
石垣島
父島・母島
伊豆諸島
佐渡島粟島
久米島
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TSC Renewable Energy Unit
海洋エネルギーの種類ごとの特徴まとめ
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種類国内のポテンシャル試算
国内の適地候補 電源としての特性
実海域試験のレベル複合利用
独立離島 国内 海外
①海流
10~31TWh/y
四国沖、紀伊半島沖などの黒潮流域
トカラ列島など
時間変動は比較的少なく、安定
100kW級 実績なし ー
②波力
19~87TWh/y
東日本、北日本沿岸など比較的広い海域
太平洋側の離島や佐渡島など
天候等により出力が変動
数kW~100kW
数百kW~、複数機
防波堤等での消波効果
③
海洋温度差
15~47TWh/y低緯度地域かつ水深の深い海域
低緯度地域の離島
天候・昼夜によらず安定した発電が可能
100kW級 100kW級
水産業・冷房等に海洋深層水の複合利用
④潮流
6TWh/y瀬戸内海や九州沿岸部の海峡など
独立離島ではほとんどない
潮の干満に伴い大きく変動するが、高精度に予測可能
数kWMW級、複数機
ー
出所:各種公開資料を基にNEDO作成
TSC Renewable Energy Unit
まとめ
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海洋エネルギーは、大きなポテンシャルを持つ再生可能エネルギー源として期待されているものの、世界的にも商用化には至っていない電源である。
各国で多種多様な方式が開発されているため、国や地域の特徴に応じた発電方式を選択し、開発を進める必要がある。海流発電は、日本独自の技術であり、大きな選択肢の一つである。
国内では、海洋エネルギーのポテンシャルを有する独立離島が初期市場として有望である。
TSC Renewable Energy Unit
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ご静聴ありがとうございました