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1 Universal integrated amplifier UIA5600 技術解説

Universal integrated amplifier UIA5600 - PURE SPEED/ …saya-audio.com/_userdata/TechnicalGuideSaya5600.pdf3 3MHzのFETオペアンプで、この二つはオーディオ機器に広く使われているものです。これらは低価格で、安

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Universal integrated amplifier UIA5600

技術解説

2

UIA5600 は、D/A、プリ、パワーの総歪 0.92ppm

(0.000092%/1KHz/1W)を実現した、

USB-DAC 内蔵ユニバーサル・インテグレーテッドアンプ

です。UIA5600 は、USB/同 軸 /光 デジタル入 力

の全 てで 192KHz24Bit のハイサンプリング・ハ

イビット音 声 に対 応 するほか、MC/MM 入 力 、

バランス入 力 、専 用 アンプによる本 格 的 なヘッド

ホンアウト、5 台 10 チャンネルまで連 動 可 能 なア

ンプリンクの内 蔵 など、フレキシブルなアンプとして

設 計 されました。

1. 高性能ユニットアンプ PS-UNIT6

UIA5600 の DAC~パワーアンプまでの全信号経路はフォールデッドカスコード型の PS-UNIT6 で構成されま

す。PS-UNIT6 は電圧帰還型なので DAC~パワーアンプの全経路に採用でき、各種機能と増幅を一体化す

ることでシンプルな信号経路を実現、優れた性能を達成しています。

[伝播時間]

オーディオアンプの中核となる、オペアンプを高性能化するには、広帯域で大

きなNFBを掛けることが望まれます。NFBは出力を入力に戻し、出力が常

に入力に一致するようにサーボをかけるもので、歪、雑音が低減し、ダイナミ

ックレンジ、周波数特性が拡大、位相特性が平坦になって原音に忠実に

なります。反面、NFBを経由する出力の戻り時間が長いと、入出力間を信

号が巡回して発振を引き起こします。これはハウリングやハンチングと同じ現

象です。特に広帯域で大きな NFB を掛けるとなると、扱う信号の波長が短くなるため、出力の戻り時間、すなわ

ち伝播時間の低減が不可欠です。伝播時間とクローズドループゲイン(NFB を掛けた後の増幅度)を固定した

場合、高域のカットオフ周波数が高いほど発振に近づきます。そこで伝播時間に対して、高域のカットオフ周波

数が高すぎないよう、位相補償という手段を使って周波数特性を制限します。そしてクローズドループゲイン 0dB

における周波数帯域を GB 積と呼び、この値が大きいほど、広い周波数で、NFB が効力を発揮して諸特性が

改善するのです。GB 積は伝播時間に左右されるので、伝播時間の小さなアンプが優れているといえます。fig1

は伝播時間 td に対する発振しないカットオフ周波数 fc の関係を示したものです。

[実際の GB 積]

fig2 は、幾つかのオペアンプのゲイン-周波数特性をプロットしたものです。図の右端、すなわち高域でどれ

だけ高いゲインを有しているかが GB 積に影響します。赤は GB 積 1MHz の BJT オペアンプ、緑は GB 積

PureSpeed UIA5600

ユニバーサルインテグレーテッドアンプ

FIG1 td=伝播時間 fc=カットオフ周波数 =1/(td*3)

3

3MHz の FET オペアンプで、この二つはオーディオ機器に広く使われているものです。これらは低価格で、安

定性が高く使い易い反面、性能は今ひとつです。そこでGB積8~100MHzクラスのオペアンプが、計測機

器や、高性能オーディオに使われます。青は、こうした中でも も高速の部類に入る GB 積 100MHz のオ

ペアンプで、GB 積 3MHz のオペアンプと比較すると 30dB 性能が改善されることになります。 上段の黒

が PS-UNIT6 で、GB 積は 大 169MHz あり、NFB を掛ける前の裸特性も極限を極めています。

FIG2

[DC ゲイン]

fig2 の、ピンク色は GB 積 600MHz の超高速オペアンプです。しかし 100KHz 以下でゲインが頭打ちに

なっており、400Hz 以下では GB 積 3MHz(緑)のオペアンプに劣っています。グラフ一番左端のゲインを

DC ゲインと呼びますが、GB 積が大きくても、DC ゲインが少ないと中低域で性能が出ません。PS-UNIT6

は、DC ゲインは 142dB ほどあり低域から高域まで優れた性能を発揮できます。

[増幅段数]

増幅段が増えると、DC ゲインが増えますが、伝播時間が増大し、GB 積は増やせません。多くのオペアンプは

fig3 のように、2~3 段の増幅段に出力段のバッファアンプを組み合わせています。多段増幅でも高速化を実現

する方法は色々模索されてきましたが、副作用があります。伝播時間を低減するには、増幅段数を減らすシンプ

ルなやり方が一番良いと考えます。実際、今日の高速広帯域オペアンプの多くが 1 段の増幅ステ-ジしかもって

いません。1 段増幅回路は、シンプルな回路なので、素直な動特性を示します。1 段増幅のバリエーションとして

有名なものは、フォールデッドカスコード型、電流帰還型、電流帰還トポロジの電圧帰還型(以降・高速電圧帰

還型と称する)などが挙げられます。3 方式の共通点は、初段が Gm 段(電流変換)、2 段目は電流コピー機

能(カレントミラーや折り返しカスコード)で、両者が一体となって 1 段の電圧増幅を行う点にあります。この様子を

4

FIG3

FIG4

fig4 に示します。

[電流帰還型、高速電圧帰還型]

fig5電流帰還型と fig6高速電圧帰還型は、いずれも上下対称回路で、回路の上下どちらか半分がカットオフ

するような過入力があっても残り半分が生き残る B 級動作が可能です。よって静止電流以上の電流振幅が可

能で、大きなスルーレートを有します。静止電流と、スルーレートを分離し、少ない消費電力で優れた性能を発

揮する事が、これらのアンプの目的です。但し fig5 の電流帰還型は、帰還系のインピーダンスがオペアンプのオー

プンループ特性に影響を与えるため、使用上の制約が大きく、単純な増幅回路以外への応用が難しいため、

fig6 の高速電圧帰還型が開発されました。しかし fig6 は、電流帰還型のマイナス入力に、無帰還のバッファア

ンプを追加しているので、この部分の歪みが NFB で改善されず、歪み率が良くありません。PS-UNIT5 は、この

部分に全帰還の電流帰還バッファを追加して、この問題を解消しています。

[フォールデッドカスコード型]

fig7 のフォールデッドカスコード型は、A 級から B 級動作に遷移することができず、A 級動作範囲の上限に達す

ると飽和します。従って fig5、fig6 よりも静止電流を大きく取る必要性があります。反面、fig7 のほうが、裸特

性を追い込みやすいので、高性能を実現するには 適なグラウンドデザインになります。PS-UNIT6 はこれらの

理由からフォールデッドカスコード型をベースにすることにしました。PS-UNIT6 は電圧帰還型なので、進み位相

補償、トーンアンプ、D/A のアクティブフィルタや I/V コンバータなどに使え、UIA5600 では DAC~コントロールア

ンプ~パワーアンプの全経路に PS-UNIT6 を導入しています。

FIG7

FIG5 FIG6

5

FIG9

[PS-UNIT6-初段]

PS-UNIT6 の全体の回路図を fig8 に示します。全

段上下対称回路で、入力はダーリントン・上下対称差

動回路です。微小電流で動く入力エミッタフォロアによ

って入力容量、入力抵抗ともに小さく、CMOS スイッチ

のように信号源のインピーダンスが信号電圧で変調を

受ける場合にも歪み率が悪化しません。またミラー効

果による高域の歪率増大を防ぐためカスコードブートス

トラップ回路を実装しています。

[PS-UNIT6-フォールデッドカスコード段]

この部分の役割は、電流振幅を折り返すこと、そして

位相補償と示された部分で電圧に変換することの 2 つ

です。電流振幅をΔis、位相補償部分の負荷インピ

ーダンス Rs とすると、変換電圧はΔis×Rs となります。

Rs は、出力段の入力抵抗と、フォールデッドカスコード回路の出力抵抗、位相

補償であり、これらは非常に大きい値なので、1 段増幅であっても十分なオープ

ンループゲインが得ることができます。ところがカスコードトランジスタは、ベース電

流、Cob による電流が漏洩し、これらが信号電圧により変動します。この漏洩

電流は前述した Rs を低下させるもので、オープンループゲインを低下させると同

時に、Rsが信号電圧で変動するので歪が発生します。PS-UNIT6は、この対策として、ベースからのリーク電流

を減らすため、カスコードトランジスタを異極性ダーリントン接続としています。まずダーリントン接続でリーク電流は

約 1/400 に減少、オープンループゲインの減少を抑えます。fig9 は上下対称回路の上側のフォールデッドカスコ

ード段を抜き出したもので、PNP トランジスタのコレクタ電流 Ic が出力電流です。PNP トランジスタの Cob と rc

によるリーク電流 Ib は、信号電圧で常に変動し、これがコレクタ電流 Ic の変動になると歪が発生します。しかし

Ib の変動は定電流回路の電流 Icc の範囲内であれば、NPN トランジスタに吸収されます。即ち、Ib が増大す

ると、その分 NPN トランジスタの電流が減少しますす。この NPN トランジスタの電流減少分だけ、PNP トランジ

スタのエミッタ電流が増大します。この増大分は Ib 増大分に相当するので、相殺されます。結果、初段からの信

号電流は Ic+Icc で、NPN トランジスタのコレクタ電流 Ic で、いずれにも Ib が影響していないことが分かります。

Ib の増減は fig9 の四角のループ内に留まるのです。

[PS-UNIT6-出力段]

電圧増幅段の負荷となる出力のバッファアンプは、異極性ダーリントン上下対称 A 級プッシュプル回路です。初

段がカスコードブートストラップ接続なので、入力容量が信号電圧によって変動するのを防ぎ、前述の Rs を変調

させないので、歪みを抑える事ができます。

FIG8

6

[PS-UNIT6-電流源・電圧源]

PS-UNIT6 は±7~24V の広い電源範囲での使用を前提としており、動作電流は全て定電流回路により生

成されます。従って各電流は、電源電圧、同相電圧に依存せず安定です。またカスコードブートストラップや定電

流回路、出力段に必要なバイアス電圧などは、雑音源にならないよう、定電圧回路と高域特性の優れたフィル

タコンデンサにより構成され、雑音の多いツェナーダイオードは用いません。

[PS-UNIT6-コンストラクション]

PS-UNIT6の基板イメージを fig10 に示します。デュアルタイプで、

1枚に2アンプが格納されます。アンプ間の干渉を防ぐため、ユニッ

トアンプ単位で、リップルフィルタを導入するなどの対策も充実して

います。GB 積の大きい高速アンプではリードインダクタンス、配線

間の容量が無視できません。そこで PS-UNIT6 は、全ての部品

をリード線のない(インダクタンスの小さい)面実装部品とし、さらに

多層基板を用いることで、 短配線を実現し、この問題を緩和し

ています。多層基板では、電源やグラウンドは内層に格納され、

全面ベタの低インピーダンス・低インダクタンス配線が可能なので

理想的な電源に近づける事が可能です。ちなみに配線幅は太く、

厚くしたほうがインダクタンス・直流抵抗が減少して良いと思われが

ちですが、パタ-ンを太くすると、ギャップ(隣接するパターンとの距

離)が減少し結合容量が増えます。また隣接するパターンとのギャップを一定とした場合、パターン厚みを増やせ

ば、対向面積が増大しますから、結合容量が増大します。単純に 70μの基板を 140μにすれば、結合容量

は約 2 倍となります。従ってインダクタンス(パターンを太く厚く)、結合容量(パターンを狭く薄く)にはトレードオフが

あります。パターンは太いほどいい、厚いほどいいという単純な話ではないのです。こうした観点でも基板の 適化

は不可欠です。

[上下対称回路の効能] PS-UNIT6は上下対称回路です。上下“非”対称回路の電源変動抑圧比は、fig11の通り正負どちらか

一方で20~40dB程度悪いのですが、上下対称回路は、こうした問題がなく、電源雑音に強く高S/Nにす

ることが可能です。fig12はアンプ初段に使われる差動増幅回路で、上は、PNPもしくはNPN単独の回路

の特性、下はそれらを合成した、上下対称回路の特性です。fig12上のPNPは立上りが早く、立上りが遅

いのに対し、NPNでは立上りが遅く、立下りが早いため、スルーレートがアンバランスですが、fig12下の上下

対称回路ではPNPとNPNの動特性の中間となり、スルーレートの対称性が改善され、歪率を下げるのに効

果的です。このほか電圧雑音密度、裸利得が2倍になる、入力バイアス電流が低減するなど、様々な恩恵

があります。

FIG10

7

FIG11

FIG12

8

2. 低歪フルロジックコントロール

UIA5600 はボリュームを含め、全機能を CMOS スイッチとリレーによるフルロジックコントロールとし、配線の引き

回しは皆無です。一方、CMOS スイッチにはオン抵抗、オフ抵抗、オフ容量が信号電圧によって変動することで

独特の歪が発生します。fig13 上は、CMOS スイッチをシリーズ接続で使用する場合、fig13 下は CMOS スイ

ッチをシャント接続で使用する場合の等価回路です。Ron はオン抵抗、Roff はオフ抵抗、Coff はオフ容量です。

シリーズ接続のゲインは後段のインピーダンス Z があるので“Z/(Ron+Z)”となりますが、Ron が信号電圧で変

動するのでゲインが一定にならず、歪が発生します。Z を FET 入力などで大きくしても、FET は入力容量が大き

いので、高域の歪が悪化します。一方シャント接続のゲインは、Roff と Coff の合成インピーダンスを SIoff とす

ると“Z+SIoff /SIoff”で、SIoff が変動するので歪が発生します。Z を小さくすれば、この歪は小さくなりますが、

前段から見たスイッチオン状態の負荷が重くなるので限界があります。仮に Ron に関する直線を改善しようとして

オン抵抗を下げると、チップの面積が大きくなり、特に Roff、Coff すなわちリーク電流が増大し、今度はこちらの

非線形の影響が大きくなり、半導体スイッチ単体での直線性改善には限界があります。UIA5600 ではこれらの

歪を 小限に留める回路技法を導入しており、PS-UNIT5 の歪率をスポイルしないよう考慮されています。

FIG13

3. プリメインを抜本的に見直す新しいレベルダイアグラム

アナログソースの時代、プリメインアンプは 0.15V 程度の小さい入力レベルを前提に設計され、50W のプリメイン

アンプに必要なゲインは 42.5dB 以上、余裕を見て 50dB 程度とするのが普通でした。しかし CD プレーヤの登

場以降、ラインレベルは 2V に統一され、50W のプリメインアンプに必要なゲインは 20dB あれば十分です。録

音レベルの低いソースを考慮しても 30dB あれば十分です。CD プレーヤ登場以降は、他のソースの出力レベル

も大きくなり、現在の生き残っているソースで 50dB ものゲインが必要な用途はありえません。アンプはゲインが低

いほど、低歪低雑音にすることができるので、現代のアンプは性能を飛躍させることが可能です。そこで

UIA5600 は、標準となった 2V 機器を前提とした 29.6dB のローゲイン設計で、雑音歪率、ボリュームの分解

能などを改善しています。fig14 は、UIA5600 のレベルダイアグラムです。プリアンプ前段、プリアンプ後段、パワ

ーアンプのゲインはそれぞれ、5.7dB、8.8dB、15.1dB で、従来のアンプが 1 ステージで 20~30dB のゲイン

があったことを考えるとローゲインで、それだけ雑音歪率が低減します。

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FIG14

4. 192KHz&USB2.0 対応、高性能 DAC 搭載

UIA5600 は、USB、光デジタル 2 系統、同軸デジタル 2 系統の豊富なデジタル入力を持つ DAC 搭載型ア

ンプで、全デジタル入 力 において 192KHz24Bit をサポートします。DAC 搭 載 アンプは、陳 腐 化 す

るとの理 由 から抵 抗 も多 いようですが、DAC チップの進 歩 は 10 年 ほど前 から停 滞 しています。

DACから発生する雑音は、内部インピーダンスと周波数帯域に比例しますが、モノリシック ICである以上、インピ

ーダンス低減には消費電力と直線性の限界があります。従って、サンプリング周波数即ち周波数帯域が決まると、

S/N=分解能がおおよそ決定されます。既にオーディオ用 DAC は 10 年ほど前から性能は行き詰まり、物理限

界に肉薄していると言えます。DAC を乗せて陳腐化する次代は終わったのです。実際の 24~32BitDAC の

192KHz の性能を並べると以下の通りになります。

メーカー 型番 雑音歪率 S/N 発売時期

AnalogDevices AD1955 -110dB(18.0bit 精度) 123dB(20.1bit 精度) 2002 年

Texas Instruments PCM1795 -96.5dB(15.7Bit 精度) 123dB(20.1bit 精度) 2009 年

Texas Instruments PCM1798 -96.5dB(15.7Bit 精度) 123dB(20.1bit 精度) 2003 年

旭化成 AK4396 -100dB(16.3Bit 精度) 120dB(19.6bit 精度) 2004 年

NPC SM5865 -110.5dB(18.1bit 精度) 120dB(19.6bit 精度) 2006 年

上はいずれも各メーカーの 高性能品であり、ここから実際の分解能の上限は 16~20Bit と読み取れます。こ

の中では も古い AD1955 が、これまでの DAC では 高峰の性能を達成しており、以降 9 年間、これを超え

る DAC は登場していません。

10

[真の N ビット DAC に必要な性能]

n ビット DAC に必要な雑音歪率は、-(6.02n+1.76)dB となります。ここから 32BitDAC は-194.4dB

(0.00000002%)、24BitDAC は-146.24dB(0.0000005%)の性能が必要ですが、このような DAC

は現在も、そして今後も存在しないでしょう。DAC の持つ雑音歪率を XdB とすると((X-1.76)/6.02)Bit が、

本当の有効ビット数となり、前述の通り 16~20Bit となり、24~32BitDAC は言葉遊びにすぎません。

[ハイサンプリングで性能がダウンする DAC は使えない]

サンプリング周波数が高くなると、雑音歪率が悪化する DAC が多いため、カタログ上の n ビットはアテにせず、

44.1KHz~192KHz の全帯域で実効性能に優れたデバイスを探しました。採用された DAC チップの雑音歪

率はサンプリング周波数に依存せず、 高クラスの性能を有します。DAC 回路は fig15 の通りで DAC チップを

パラレル駆動し、バックエンドのバランス型 I/V 変換、フィルタ処理に 3 つの PS-UNIT6 を導入しています。弊社

では 10 パラ DAC まで実験をしてみましたが、パラレル数が多いと I/V 変換アンプの負荷電流が増えて直線性

が悪化するなど、副作用もあります。副作用以上の効能を得るは物量投入が必要で、規模の割りに性能向上

が微々たる物で効率的な手段とはいえません。そこでステレオ DAC をモノ構成にして片チャンネル 1 個使う 2 パ

ラ構成としました。これは、むしろクロストークを考慮した設計です。

FIG15

5. 低雑音・高機能を両立する VGAT コントロ-ルアンプ

可変抵抗は経年劣化しやすい、左右のゲインエラーが発生する、インピーダンスが高く熱雑音が大きい、配線の

引き回しが長いなど諸問題があり、UIA5600 は可変抵抗を使わない“VGAT” (Variable Gain

Amplifier/and/ATtenuator)と称する音量調整機構を搭載しています。fig16 が VGAT のブロック図で、2

つの PS-UNIT6 可変ゲインアンプの間に、低インピーダンスアッテネーターを挟み込む構造です。アッテネータ後の

レベル低下を防いで S/N の S を大きくし、アッテネータを PS-UNI6 で駆動することで低インピーダンス化を図り

熱雑音を減らすことが VGAT の目的です。ボリュームは 256 ステップ加速度オペレーションで、信号経路のシンプ

ル化のためにバランス調整を兼ねています。前段の PS-UNIT6 には NF 式のトーンコントロ-ルが埋め込まれ、

信号経路を複雑化せずに、音質調整が可能です。さらにトーンコントロールを切り離せるピュアダイレクトモードを

装備し、歪率を低減することが可能です。

DACチップ

DACチップ

DACチップ

DACチップ

11

FIG16

6. MOS-FET 多重帰還型パワーアンプ

インテグレーテッドアンプでは、歪の大半が、出力の大きなパワーアンプから発生します。歪を減らすには、出力

段のパラレル数増、アイドル電流増・・などが一般的です。しかしパラレル数を過剰にすると、出力段の入力抵抗

が低下し前段の負担が増大して歪率が悪化したり(バイポーラ出力段)、入力容量が増えて時定数が増大し

(MOSFET 出力段)位相補償を増やさざるをえなくなるなど副作用があります。アイドル電流を増やして A 級範

囲を広げると、電源リップルが増大し小振幅時の S/N が悪化します。これは同容量の電源なら、電源リップルの

大きさは、電源電流に比例するからです。これらの副作用を上回る効能を得るには、相当な物量投入が不可

欠で、見た目ばかり凄くなる一方、音質向上は微々たる物で、効率的な性能向上手段といえません。そこで

UIA5600 は、多重帰還と、適度な物量投入を組み合わせ諸特性を向上させることにしました。概要は fig17

の通りで、MOS-FET2 パラレルプッシュプル出力段を、電流帰還型ブースターでドライブし、ローカルフィードバック

をかけて歪を低減します。このブースタを PS-UNIT6 で駆動し、全体で大きなフィードバックをかけて、さらに歪を

低減します。もともとパワーアンプのゲインは 15.1dB と低いうえ、多重帰還により、出力段には、PS-UNIT5 と

ブースタの 2 つの膨大な帰還量がかかるため、適度な物量投入でも、驚異的な低歪を達成できます。

FIG17 FIG18

12

実際のブースタの簡略回路は、fig18 の通りで、全段上下対称コンプリメンタリ回路で、FET 入力+ウィルソンカ

レントミラー結合です。多重帰還では、ブースタ部分の伝播遅延時間を小さくしないと、PS-UNIT5 の位相補

償が増大して多重帰還の意味を喪失させます。そこで低入力容量の高速パワーMOSFET、初段 FET としてい

ます。fig18 一番下の 2 つのオペアンプは、ミラー積分型 DC サーボで、高精度、低雑音、低歪の FET オペアン

プ AD8512 を使用しています。

7. パワーアンプ低消費電力モード

多重還型パワーアンプは、出力素子の帰還量が大変大きいのでアイドル電流を極端に絞っても歪率の増大が

わずかです。そこで、アイドル電流を絞った、低消費電力モードを追加しました。このモードでは、一般的なリスニン

グレベルなら、何時間経過してもヒートシンクが冷たいままで、消費電力は D 級アンプ並です。fig19 は、ポ-タ

ブル機器などに使用される D 級アンプ 1、プリメインアンプに使用される出力段電源を安定化させたデッドタイム

の大きな D 級アンプ 2、UIA5600 低消費電力モード、UIA5600 標準モードの効率の比較です。D 級ア

ンプ 1 は効率が良い反面、歪が多くピュアオーディオに向きません。D 級アンプ 2 は歪率が減少しますが、無効電

流が増大してローパワー時の効率が悪化します。UIA5600 低消費電力モードは、1W 以下では D 級アンプ 2

と同等の効率ですが、それ以上の出力ではD級アンプ2との差異が広がり、低消費電力モードの効能が一見す

ると不十分です。ところが、音楽信号の平均出力は、ピークパワーの 1/10 程度であり、 大出力 56W を使っ

ても、平均出力は 5.6W 程度です。しかもピークパワー56W を使う事自体、極めてまれで、実際の平均出力は

1~2W 程度と小さいのです。fig20 は、使用されることが多い、平均 1.8W 出力以下の効率の比較で、

UIA5600 低消費電力モードは D 級アンプ 2 と互角の低消費電力と言えます。

FIG18 FIG19

13

8. 7系統の独立の安定化電源

集 積 度 の高 い UIA5600 の電 源 部 は、回 路 間 の干 渉 を防 ぐため、以 下 の 7 系 統 で独 立 した

安 定 化 電 源 となっています。特 に①~④は、FET差動入力・広帯域・ハイゲイン・レギュレータ(片 CH の回

路は fig21)により、低雑音で負荷変動への応答も大変高速です。高周波雑音の大きな⑥⑦は①~⑤とは巻

線から分離された独立電源で、レギュレータ前段に LC フィルタを追加して雑音を遮断します。更 にオペアンプ、

CMOS スイッチ、DAC 毎にローカル電源フィルタを配置して、部品 1 個単位でクロストークと雑音を抑えます。

① Lch-DAC・コントロール・パワードライブ段 ② Lch-DAC デジタル部 ③ Rch-DAC・コントロール・パワードライブ段 ④ Rch-DAC デジタル部、 ⑤ フォノ、ヘッドフォン、バランスレシーバー ⑥ デジタル 1 ⑦ デジタル 2

9. 大容量並列コンデンサによる出力段直結電源

パワーアンプ電 流 帰 還 ブースタ~出 力 段 は、電 流 が大 きく安 定 化 電 源 は適 さないため、大 容 量

巻 き線 、大 容 量 のコンデンサを使 用 した非 安 定 化 電 源 です。大容量の電解コンデンサは高域のインピ

ーダンスが大きいので、UIA5600 では必要容量を得るのに、中容量タイプ 6 個、小容量低 ESR タイプ 8 個、

高周波特性の優れたセラミックコンデンサを多数接続して、広い範囲で低インピーダンス化を図っています。またコ

ンデンサ、整流回路を出力段と同一基板上に近傍配置することで瞬間電流供給能力を高めていす。電 流 帰

還 ブースタ部分は、出力段とリップルの影響を軽減するため LR 独立の大容量・低インピーダンスリップルフィルタ

が導入されます。トランスは漏洩磁束の小さい R コアタイプです。瞬間電流供給能力が、EI コア、トロイダルコア

を凌駕するため、小型軽量化にも役立ちます。

10. アンプリンク

UIA5600 はマルチチャンネルサラウンド、AV ユースを視野に入れており、 大 5 台を連動させて 10 チャンネル

の一括コントロールが可能です。複数を連動させた場合、マスター設定された UIA5600 が残りの UIA5600 を

コントロールします。fig22 は 5 台の接続例で、認識用 ID を上から 0→1→2→3→4 としています。アンプリン

クケーブルは以下のようにディージーチェーン接続とします。

FIG21

14

FIG22

ID=0

マスタ (チャンネル 1/2)

ID=1

スレーブ(チャンネル 3/4)

ID=2

スレーブ(チャンネル 5/6)

ID=3

スレーブ(チャンネル 7/8)

ID=4

スレーブ(チャンネル 9/10)

15

11. MC/MM 独立型イコライザアンプ

UIA5600 は 新の USB192KHz に対応する一方、レガシーなフォノイコライザも搭載し、アナログディスクの再

生にも力を入れています。フォノイコライザは、D レンジに優れた NF 式 MC、MM 独立型で、1 ステージでラインレ

ベルにまで一気に増幅します。インピーダンスの低い MC カートリッジ用イコライザアンプには、電圧雑音の小さなバ

イポーラ入力オペアンプ LM4562(GB 積 55MHz/DC ゲイン 140dB)を、インピーダンスの高い MM カートリッ

ジ用イコライザアンプには電流雑音の小さな FET 入力オペアンプ AD8512(GB 積 8MHz/DC ゲイン 100dB)

を使用し、75.7dB/80.5dB(MC/MM)の高 S/N を達成しています。また DAC やラインレベルアンプ、パワー

アンプと独立した安定化電源から供給される電源は、他の箇所の 40 倍の大容量ローカルリップルフィルタを組み

合わせ、電源雑音の影響を軽減します。

12. 超高精度ヘッドホンアンプ

振幅の小さいヘッドホンアンプでは、小さな DC 電圧の漏洩でもダイアフ

ラムを偏移させてしまうため、DC 性能が重要です。UIA5600 は FET

入力・電圧帰還型・3 段ダーリントンの高精度ヘッドホン専用パワーアン

プを搭載し、出力のカップリングコンデンサなしで DC 漏れ電圧を

450uV 未満に抑えています。fig23 は等価回路です。ヘッドホン使用

時は、パワーアンプをレジュームさせ消費電流を抑えます。

13.抵抗の熱変調歪とエクセルノイズ

これまでコンデンサの音質への影響について色々議論がありました。一部のコンデンサは直線性が悪く、振動を拾

ってしまうので、コンデンサには幾つか注意すべき点がありますが、問題点への対処方法は、十分確立しています。

代表的なポイントは以下の 4 点です。

① DC アンプや DC サーボで信号経路のコンデンサを減らす。

② 信号経路のコンデンサを直線性の優れているフィルムコンデンサ、マイカコンデンサにする。

③ 信号経路のセラミックコンデンサは CH や B 特性とし、高周波のバイパスにのみ使う。

④ 信号経路に電解コンデンサが必要な場合(②のコンデンサはコストがかかる)直線性の良い音響用を使

う。性能的には②に劣るので、弊社のアンプでは使わない方針。 一方、抵抗は、音質を劣化させないと信じている方も多くおられますが、使い方を誤ると、大きな歪や雑音の原

因になります。一般に、厚膜抵抗やカーボン抵抗、酸化金属皮膜抵抗は、温度係数が±200ppm/℃程度

あります。これは 1℃の温度変化で抵抗値が 大 0.02%も変化することを意味しています。抵抗の印加電圧

が、音楽信号などで変化すると、消費電力が変動します。すると発熱量と温度が変化しますから、前述した温

度係数によって抵抗値が変化します。従って、温度係数の悪い抵抗を、利得を左右する場所に使うと、音楽信

号によって、刻々と抵抗値即ち、利得が変化することで歪が発生します。fig24、温度係数が+200ppm/℃、

FIG23

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熱抵抗400℃/Wの1KΩの抵抗を、温度35℃で使用し、±10Vの低速サイン波(fig24上段“電圧(V)”)

を印加した様子です。0~100mW の電力変動が生じ(fig24 上段“電力(mW)”)、抵抗温度は 35~

75℃の間を往復します。(fig24 上段“温度(℃)”)これを温度係数に掛けると、抵抗値が 1000~1008Ω

の間で変動します。( fig24 中段)グラフ下段は、1KΩ-0ppm/℃の抵抗と fig24 中段の 1KΩ

+200ppm/℃の抵抗で、分圧した場合の誤差(%)を表しています。横軸の周期が、入力電圧(fig24 上段

“電圧(V)”)の倍なので 0.4%の 2 次歪が発生していることが分かります。スペック上の温度係数が±

200ppm/℃の場合、これは 悪値にすぎず 0ppm/℃の場合もありますから、+200ppm/℃と 0ppm/℃

の組み合わせは現実に起こりえます。 悪のケースは、+200ppm/℃と-200ppm/℃の組み合わせの時で、

歪は倍の 0.8%になります。実際には温度係数が揃っていたり、基板による放熱等により、歪みは軽減されます

が、抵抗は使用数が多いので無視できません。何より抵抗が線形素子ではないことは明白です。

FIG24

fig25は、fig24と同じ条件で周波数を10倍にした様子です。熱時定数により温度変化が積分され、抵抗変

化は 1Ωに軽減、歪が減少します。弊社は、こうした歪を熱変調歪と呼んでいますが、熱変調歪は、熱時定数

に比べ、短い波長を扱うほど小さくなります。熱変調歪を軽減するには、以下の 3 通りが考えられます。 ① 放熱経路の時定数を大きくする。

② 消費電力を軽減する。(抵抗値を大きくする)

③ 抵抗温度係数を小さくする。 このうち①はアンプが大型化する上、インダクタンスが大きくなる傾向があり、高集積、高速広帯域アンプを目指

す UIA5600 に適しません。②は熱雑音が抵抗値に比例するため、S/N が悪化します。そこで UIA5600 では

③の方法で、これらの問題に対処しています。即ち、ゲインを左右する場所に、温度係数±25ppm/℃の薄膜

抵抗を使っています。±200ppm/℃の厚膜に比べると、熱変調歪が 1/8 程度に軽減します。

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FIG25

[エクセルノイズ]

抵抗が発する代表的な雑音としては、抵抗値に比例する熱雑音が有名ですが、これ以外にも大きな雑音源と

なる場合があります。これはエクセルノイズと呼ばれ、電流の通過経路の散乱で発生する雑音で、直流電圧が

大きく、周波数が低いほど増大する雑音です。この雑音はカーボン抵抗や厚膜抵抗だけに発生し、金属皮膜

抵抗、薄膜抵抗、金属箔抵抗では発生しません。UIA5600 に使用している薄膜抵抗なので、こうした雑音は

皆無です。

14. ダンピングファクターコントロール

現 代 のアンプは高 帰 還 半 導 体 アンプが大 半 を占 めています。高 帰 還 半 導 体 アンプの目 的 は、雑

音 歪 率 を低 減 し、ダイナミックレンジを拡 大 して、入 力 信 号 を精 密 に出 力 に伝 送 する点 にあります。

また出 力 抵 抗 を下 げ、スピーカーからの逆 起 電 力 の影 響 をを打 ち消 すことも重 要 な目 的 です。い

わゆる DF(ダンピングファクタ)の向 上 による立 下 り過 度 特 性 の改 善 です。その一 方 で、真 空 管 ア

ンプにも根 強 い人 気 があります。低 歪 ・高 S/N は良 いが、高 DF アンプは、トランジェントがキツイす

ぎて聴 きにくいということです。弊 社 の試 験 装 置 では、DF=10 以 上 では音 質 変 化 は軽 微 で、音

質 の差 異 が明 瞭 になるのは DF=3 以 下 であることがわかりました。真 空 管 アンプユーザにシングル

無 帰 還 嗜 好 が多 い理 由 も理 解 できます。UIA5600 の DF 切 り替 えは、ハイとローの 2 段 切 り

替 えで、ハイはアンプの実 力 そのもの、ローは明 確 に違 いのわかる 1.6 です。DF 切 替 はリモコンで

操 作 でき、DF ハイではハイスピードな原 音 再 生 (正 確 な時 間 応 答 と周 波 数 特 性 )、DF ローでは、

中 低 域 がマイルドで、わずかにエコーも加 わります。ただしスピーカーや曲 の影 響 も大 きく受 けるよう

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になります。低 音 を出 しにくいバックロードホーン向 きの強 力 なフルレンジや、小 型 密 閉 型 スピーカー

などは低 域 不 足 が解 消 する傾 向 が見 られます。DF1.6 を実 現 するのは、出 力 に抵 抗 を入 れる

簡 単 な方 法 ですので、音 量 が変 化 しますが、NFB を切 り替 える方 法 と違 い、雑 音 歪 率 を悪 化 さ

せないため高 音 質 です。尚 DF ローモードは音 楽 信 号 のみで使 用 してください。

15. シングルボード化

従来のプリメインアンプは、右 CH パワーアンプ基板、左 CH パワーアンプ基板、コントロールアンプ基板、入力端

子基板、電源基板、フロントパネル基板など、回路のコアとなる部分が、沢山の基板に分割され、重要な配線

がアチコチに飛び回っていました。これでは単にパワーアンプとコントロールアンプを無理やり一つの筐体に押し込ん

だにすぎず、プリメインアンプ特有のメリットを生かすことは出来ません。セパレ-トアンプでは、パワーアンプとコント

ロールアンプの二つの電源があるため、グラウンドに電位差が生じ、コモンモードノイズが発生します。また両者を接

続する長い外部ケーブルや端子も必要で、後述するトリポ効果の影響を受けやすくなります。プリメインアンプであ

れば、こうした問題を解消することができます。それは即ち、コントロールアンプとパワーアンプの一体化した設計で

す。UIA5600 は、1 枚のメイン基板(fig20)に、DAC、コントロールアンプ、パワーアンプ、入力端子、電源回

路の全てを集積しており、コモンモードノイズはとても少なく、信号系の配線の引き回しは皆無です。ディスプレイ、

ボリュームエンコーダー、フォーンジャック、スピーカー端子、トランスなど一部の配線は残りますが、内部配線は格

段に少なく、信頼性の向上とトリポ効果の低減を図ります。トリポ効果とは、配線が振動することで生じる静電気

が、電極間に蓄積され、放電するときに発生する雑音現象です。プリント基板上の配線は自由振動が殆どない

上、電極間容量も小さいので、この現象はまず起こりません。

FIG26

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16. SUPS・・・筐体と放熱システム

fig27、fig28は放熱器を上から見た断面で、fig27のチムニー型と、fig28の開放型があります。チムニー型は、

煙突効果により強い上昇気流を発生させ、効率的に排熱する考え方ですが、上部ほど高温になる問題があり

ます。開放型は、効率はチムニーに劣るものの、温度分布が少ない点では優れています。そこで UIA5600 は

fig29 のように、開放型ヒートシンクをコの字型の鉄板で覆い 2.5cm ほどの隙間を設けて、チムニー型と開放型

の中間的な特性を実現しました。さらに、この放熱ブロックで筐体上下を結合、筐体を放熱器の一部に、放熱

器を構造物の一部に使うことで、小型軽量化に役立てています。

これを SUPS(Sealing up prop structure)と呼んでおりますが、注目していただきたいのは fig30 で、ワン

ボード化、放熱器の小型化、配線の削減により、基板上部に大きな空間を確保、熱のこもる小さな隙間を追

放し、ボンネットの放熱孔を追放した点です。放熱孔の多いアンプは内部に埃がたまり、埃が湿気を帯びることで、

アンプの絶縁抵抗が低下、性能劣化や故障を引き起こしますが、UIA5600 は前面・天板・左右が密閉型で

あり埃に強い設計です。

FIG27

FIG28

FIG29

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FIG30

17. 充実した機能

現 在 の技 術 では、十 分 な機 能 を持 たせても、音 質 の劣 化 は問 題 になりません。従 って、利 便 性

を犠 牲 にしてまで機 能 を削 る必 要 はなく、UIA5600 は以 下 の通 り豊 富 な機 能 を有 します。いず

れも、機能の状態で、信号経路が変更されないよう、すなわち性能が劣化しないよう設計されています。

◇ ±7 段階トーン ◇ 4 段階ラウドネス

◇ 11 系統入力切替 ◇ 10 チャンネルバランス調整

◇ ミュート ◇ モノスイッチ

◇ 5 段階オートディマー ◇ パワーアンプディセーブル

◇ ピュアダイレクト ◇ パワーアンプ省エネモード

◇ ダンピングファクタ切り替え

◇ アンプリンク ◇ サンプリング周波数表示 [力を入れたラウドネス回路]

人の耳は小音量時、低域と高域の感度が鈍りますから、これらを補うラウドネスは重要な機能と考え充実させま

した。一般的なラウドネスは、周波数特性の補正量が、ボリュームの特定の位置から急激に変化しますが、

UIA5600 のラウドネスは音量が小さくなるほどラウドネスの補正量を増大させていく自然な方式です。しかもラウ

ドネスの効果は 4 段切替なので、きめ細かな聴感補正が可能です。

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18. ブロック図と性能

ブロック図(FIG31)、周波数特性(FIG32)、歪特性(THD1-6)を紹介します。

◇ FIG31 ブロックダイアグラム

◇ FIG32 周波数特性

光入力・ピュアダイレクト・8Ω

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◇ THD1 高調波歪率(f2+f3+f4+f5)

光入力・ピュアダイレクト・8Ω

◇ THD2 高調波歪率(f2+f3+f4+f5)

光入力・8Ω

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◇ THD3 高調波歪率(f2+f3+f4+f5)

光入力・ピュアダイレクト・低消費電力モード・8Ω

◇ THD4 高調波歪率(f2+f3+f4+f5)

光入力・低消費電力モード・8Ω

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◇ THD5 高調波歪率(f2+f3+f4+f5)

光入力・低消費電力モード・4Ω

◇ 位相特性

:20Hz +11.9°以内

◇ S/N 比(A ウェイト) :97.6dB (1W/標準モード/光デジタル入力-1dB) :98.4dB (1W/低消費電力モード/光デジタル入力-1dB) :98.1dB (1W/標準モード/ライン入力/Volume178)

:98.0dB (1W/低消費電力モード/ライン入力/Volume178) :108.8dB (53W/標準モード/光デジタル入力-1dB) :109.7dB (53W/低消費電力モード/光デジタル入力-1dB)

:112.9dB(57W/標準モード/ライン入力/Volume233) :111.5dB (57W/低消費電力モード/ライン入力/Volume233)

:76.0dB (MC 定格入力~スピーカー出力 50W) :81.0dB (MM 定格入力~スピーカー出力 50W)

◇ チャンンネルセパレーション(1KHz/1W) :113.8dB(デジタル入力-3dB~スピーカー出力/標準モード) :123.4dB(デジタル入力-3dB~スピーカー出力/低消費電力モード)

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◇ ダンピングファクタ(8Ω1KHz1W~50W) 77.1(ハイモード/標準モード)

75.6(ハイモード/低消費電力モード) 1.6(ローモード)

◇ 大出力電圧・出力インピーダンス(プリアウト、ヘッドホン) :8Vrms (プリアウト/出力インピーダンス 820Ω)

:8Vrms (ヘッドホンアウト/出力インピーダンス 10Ω) ◇ 定格入力

:2Vrms (ライン) :10mVrms (MM) :1mVrms (MC)

◇ 入力インピーダンス :47KΩ (ライン) :47KΩ+1000pF(MM) :68Ω+100pF (MC)

◇ 負荷インピーダンス :4~32Ω

◇ トーンコントロール及びラウドネスコントロール :バス 300Hz±4.5dB :トレブル 3KHz±4.5dB

:ラウドネス 6.3dB/5.8dB/4.15dB/0dB の 4 段切替 ◇ サンプリング周波数

:44.1KHz,48KHz,88.2KHz,96KHz,176.4KHz,196KHz (16~24Bit 2ch PCM、光入力のみ 176.4KHz,196KHz 保証外) :DSD64/DSD128/DSD256(但し USB のみ)

◇ ドライバ対応 OS :WindowsXP/WindowsVista/Windows7/Windows8.X :Windows10

◇ 消費電力 :83W (無入力時) :209W(電気用品安全法) :31W (無入力時/低消費電力モード) :157W(電気用品安全法/低消費電力モード)

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◇ 寸法・質量 W467×H178.5×D346.2mm(スピーカー端子、ノブ含まず) W467×H178.5×D394.5mm (端子・ノブ含む)

17.0Kg 19. 外観 正面

背面

リモコン

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20. 内部構造

UIA5600 の内部構造 1.アンプ基板直結の入出力端子 2.MC イコライザアンプ(バイポーラ超低雑音) 3.MM イコライザアンプ(JFET 低雑音) 4.バランス入力レシーバー(JFET 低雑音) 5.Lch パラレル DAC(AD1955) 6.Rch パラレル DAC(AD1955) 7.LchDAC バックエンド~VGAT 前段(PS-UNIT6) 8.RchDAC バックエンド~トーン付 VGAT 前段(PS-UNIT6) 9.LchVGAT アッテネータ 10.RchVGAT アッテネータ 11.LchVGAT 後段~パワーアンプ前段(PS-UNIT6) 12.RchVGAT 後段~パワーアンプ前段(PS-UNIT6) 13.LchMOSFET 出力段とブースター背面に DC サーボ 14.RchMOSFET 出力段とブースター背面に DC サーボ 15.USB2.0 コントローラ、ファームウェアを格納した ROM 16.SPDIF レシーバー、同軸デジタル入力レシーバー 17.システムコントロールブロック 18.周辺アナログ回路用±15V レギュレータ 19.LchDAC~パワー前段用±16V,+5V レギュレータ 20.RchDAC~パワー前段用±16V,+5V レギュレータ 21.制御系デジタル回路用、整流回路~レギュレータ 22.オーディオ回路、小電力系整流回路 23.オーディオ回路、大電力系整流回路 24.電源起動回路 25.ダンピングファクタ制御、ミュート、DC 保護 26.ヘッドホンアンプ(回路の大半が背面実装) 27.SUPS 放熱ブロック 28.R コアパワートランス 29.アンプリンク用アイソレーター 30.スピーカーターミナル基板 31.ヘッドホン、赤外線受光基板 32.ロータリーエンコーダ基板、その下にパワースイッチ 33.蛍光表示モジュール

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株式会社サヤ 〒272-0035 千葉県船橋市本中山 4-1-2

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