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UX 戦略白書: 「間違った」使えるものを増やさないために エリック・シェイファー博士との対話 創設者兼 CEO Human Factors International Human Factors International

UX Strategy Whitepaper / UX戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために

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Japanese translation of "UX Strategy: Let's Stop Building Usable Wrong Things" under license from Human Factors International.

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UX戦略白書:

「間違った」使えるものを増やさないために

エリック・シェイファー博士との対話

創設者兼 CEO

Human Factors International

Human Factors

I n t e r na t i ona l

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UX戦略白書: 「間違った」使えるものを増やさないために

最初の質問は、「説得工学(パスエージョン・エンジニアリング)を

用いた戦略を立てていますか?」

第二の質問は、「シームレスで、ポジティブなチャネル間の

ユーザエクスペリエンスを実現するために、クロスチャネルデザインを

取り入れていますか?」

「そして、人によって異なるシナリオで相互作用する必要が

あることを念頭に置いて、ユーザの生態系に合わせることができていますか?」

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UX 戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために

“UX戦略がなければ、デザインの途中で目的が失われてしまいます。”

UX戦略とは何ですか?

最初に、UX戦略の背景についてお話しましょう。なぜそれほど重要なのか?

ユーザビリティ分野の人達は、「間違ったものを使えるようにする」デザインをしてきました。「よし、これらの機

能を実装しよう。そして、簡単に使えるようにすべきです」と、あなたは言われてきたことでしょう。しかし…そ

れは間違っています。一体何をデザインしようとしているのかという課題、それを他の事とどうやって協調させ

るべきかが、上流において全くと言って良いほど議論されていません。もし、それが真実なのであればとても

悲しいことです。

企業に必要なのは、「金の糸」を持つことだと思います。金の糸は、企業経営の目的から詳細設計、コーディ

ング、そしてリリースにかけてすべて一本で繋がっています。

経営幹部は言います。「デジタルチャネルに顧客を導きたい」「売上をアップさせたい」または「新しい市場に

移行したい」それらの素晴らしいアイデアは、やがて ITチームに引き継がれます。そして彼らは言います。

「我々は、新しい市場に参入しようとしている。結果として、更なる売上が期待できるかもしれない。素晴らし

い、今すぐ Webサイトやモバイルアプリなどを構築すべきだろう」と。

そして彼らは、経営幹部の要件から本質的な答えを出すことなく、開発を始めます。ここで質問です:あなたな

ら、どうやって新しい市場に参入しますか?なぜなら、「新しい市場のため」の Webサイトの構築は、目的とし

て答えにはなっていないからです。ビジネスの現場において、実際に何が人々をやる気にさせるのでしょう

か?そしてあなたは、どうやってそれを管理するつもりでしょうか?e PaperUX Strategy: Let’s Stop Building Usable Wrong

UX戦略がなければ、デザインの途中で目的が失われてしまいます。できれば、事前に体系化して運用してい

くべきです。経営幹部は、あなたならきっと目的を成し遂げると期待することでしょう。UX戦略は、「包括的な

レベルでその目的を実現する方法」を導き出します。より発展した目標を達成するためにはまず、業務を刷新

する必要があります。その際は、様々な分野の構造デザインと詳細設計を進め、一貫した UX業務を行って

いく必要があります。そして、UXデザインの考え方はすべてを包括的に捉えることにあります。なぜなら、UX

デザインの実践は「ユーザに体験して欲しいこと」を可能にし、すべてのテクノロジーとオペレーションがその

周りに構築されるからです。

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“私たちは、カスタマーエクスペリエンスの全体的な目的に合わせて、すべてのチャネルがどの

ように適応しているのかを理解する必要があります。”

私が言いたい別の不可欠なことは、クロスチャネルの統合です。なぜなら今日、Webサイトだけでは生活をし

ていないからです。そして、Webサイトだけの生活はまず考えることができません-私は Webサイトを持って

います、モバイルアプリも持っています、もしかしたら実店舗を構えるかもしれません、コールセンターも用意

するかもしれません、そして私はそれらをコンテクストにあわせて適応しようとします。例えば、コールセンター

が Webサイト上でチャット形式のサポートをするかもしれない。このように、すべてが一体化されるために、全

体的なエクスペリエンスとして一貫性を作り出さなければならないのです。

ユーザインタフェースは部分的な要素であるため、それらを組み合わせて一貫性のあるものにしなければな

りません。つまり、私は Webサイトのあるページで”ENTER”を押して、遷移先で”OK”を押すわけではありま

せん。例えば、モバイルアプリで「OK」、「ENTER」、「Next Page」を押している場合があります。このように、一

貫したエクスペリエンスは重要です。

しかし、より抽象的な「どこで何をすればいいのか?」という疑問に答えなければならず、多くの場合、それは

信じられないほど困難です。実際によくあるケースとしてこんなことがあります。「分かりました、私は「銀行問

合せ」と「電話案内」と「音声通話」を使っています。それらの違いがなんとなく分かるのだけど、どれを使えば

いいの?」

私たちは、カスタマーエクスペリエンスの全体的な目的に合わせて、すべてのチャネルがどのように適応して

いるのかを理解する必要があります。それらのチャネルを統合するための UX戦略がなければ、iPhoneアプ

リを構築することはできますが、それで何をするのか、カスタマーエクスペリエンスにおける他のコンテクスト

にどのように適応するのか、という質問には答えることはできないでしょう。

例えば、企業がそれについてあなたに尋ねてきた際に、UX戦略としてどのようなアドバイスをし、最初に何を

しますか?企業経営の目的が何であるかを理解することはできますか?

私たちがクライアントと話を始める時、最初に戦略があるかどうかを確認するようにしています。そして、UX戦

略はありますか?どのように理解していますか?という問いを一緒に尋ねます。あなたならきっといくつもの

質問を用意していることでしょうし、最初に「企業経営の目的は何ですか?」と尋ねると思います。

しかしこの企業経営の目的は、ほとんどの場合は存在します。経営幹部は「私たちは新しい市場に参入した

いと考えており、ピラミッドの底辺または富裕層などに売り出す予定です」という方針を十分に説明することが

できます。経営幹部が「これが欲しい」と言った場合には、すばらしい!と答え、実際にそれが何なのかを調

査するところから始めましょう。

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“モチベーションは、大切なことです…構築すれば必ずしも顧客が来るというわけではありませ

ん。”

低いコストで、デジタルチャネルに顧客を移行させるということにしましょう-これは、とても共通してある考え

方です。銀行の話では、銀行の支店を持つことと同じようにオンラインに銀行を持つことのコストがほぼ等し

いことが分かっています。だから、彼らはオンラインに移行しようと考えます。

その時に、あなたはこのような厳しい質問を投げかけたとします。「顧客にどうやって動機を与えるつもりです

か?」顧客のモチベーションは大切なことです。そしてあなたは、「ええ、私たちはそのための Webサイトを構

築するつもりです」という答えを聞くことになるでしょう。しかし、それだけでは動機を与えることはできません。

構築すれば必ずしも顧客が来るというわけではありません。彼らは続いて「私たちは、お客様がより簡単に作

業が行えるように、シンプルに作る予定です」と言うかもしれません。しかし、それは良い答えとは言えません。

なぜなら、簡単にするだけでは不十分だからです。

モチベーション戦略があるべきです。時おり、「私たちはオンラインに移行させるためのお金を支払う予定です」

「価格を下げる予定です」といった選択をする企業を見ることがあるでしょう。外的報酬の戦略だけでは悲しく、

費用が掛かります。これでは有名な銀行家の「トースター」戦略と違いはありません。それらは、外的報酬に

過ぎません。「なぜ、オンライン銀行に移行するのですか?-より少ない請求金額が魅力になります」と彼ら

は言うかもしれません。しかし、それでは顧客は割引やトースターのために訪れているということになります。

彼らはいずれ、よりお得な割引やトースターを提供する企業を探すようになるでしょう。

だから、最初の質問は「説得工学(パスエージョン・エンジニアリング)を用いた戦略を立てていますか?」第

二の質問は、「シームレスで、ポジティブなチャネル間のユーザエクスペリエンスを実現するために、クロスチ

ャネルデザインを取り入れていますか?」そして、人によって異なるシナリオで相互作用する必要があること

を念頭に置いて、ユーザの生態系に合わせることができていますか?

あなたはきっと、「はい…私たちは、クロスチャネルデザインを実践しています。ユーザが Webサイトに行き、

アプリを起動し、支店に行ってそれについて話せるような流れを提供する予定です」という議論を聞くことがあ

るでしょう。複数のチャネルを横断するシナリオを想定しているかもしれませんが、クロスチャネルの適応は、

それよりも大きいものであるはずです。これは、データ間の共有とチャネル間で移動できるという事実だけで

なく、すべてのチャネルをコンテクストにあわせて論理的に適応することなのです。

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“私たちは、顧客と企業との間の全体的な関係性に注目しています…今日では少し厳しいです

が…。なぜなら、とても多くの異なるチャネルを持たなければならないからです。”

私たちは、顧客と企業との間の全体的な関係性に注目しています-それは企業と接するすべて方法のこと

です-そして、すべてを適応させて一貫したエクスペリエンスを提供する-今日では少し厳しいですが…。な

ぜなら、とても多くの異なるチャネルを持たなければならないからです。

モチベーション戦略はとても重要で、明確な方向性が確立されるように聞こえます。これは、各企業の状況に

よって異なるものなのでしょうか?

はい、企業ごとに異なる戦略は必要です。モチベーション戦略は、企業とその文化によって異なります。もし

あなたが、企業の DNA とは合致しない戦略を考えた場合、それは失敗に終わるかもしれません。企業は核と

なる DNAを変えることはできないからです。

別の側面で、ユーザのコンテクストに適応する何かを必要とする場合があります。ユーザは何をしたいの

か?何がユーザに動機付けさせるのだろうか?それは具体的な方が良いです。もし、私がヨハネスブルグに

行った場合、第一に安全を考えます。もし、私がムンバイに行った場合、第一に地位を考えます。だから、

我々はユーザを理解すべきなのです。

それには、まず調査をする必要があります。ユーザの生態系、ユーザの特異性、異なるシナリオや環境以外

にも、意思決定をする際の感情的なスキーマ(考え方)などを含める必要があります。駆り立てるものは何な

のか?拒否するものは何なのか?どんな信念や感情があるのか?といったことです。

大きなグローバル企業で働いている場合、すべての文化的な違いも考慮すべきでしょうか?

モチベーションについて考察していると、その文化的側面を見なければならなくなります。そして、そのアプロ

ーチは私が見る限り、まだ徹底されていません。例えば、私が知っているクライアントの銀行では、”アジアの

銀行”になることに焦点を置いています。現在、なぜアジアの顧客と取引きするのですか?という質問をした

ところ、答えは-「私たちはアジアの銀行だからです」、しかしこれは何を意味しているのでしょうか?アジア

の銀行になるために、何が顧客のモチベーションになるのでしょうか?そして、どのようにデザインに落とし込

もうとしているのでしょうか?それらについて、彼らは本当に考えていないのです。

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“「私たちは、アジアの銀行でアジアに合わせています」と例え言ったとしても、それでは十分で

はありません。”

これは大変興味深い問題です。アジアでのニーズは何なのでしょうか?他の国とどう違うのでしょうか?そし

て、私たちはその期待にどう答えるべきなのでしょうか?そしてどのように周辺の人々を動機付けさせるので

しょうか?「私たちは、アジアの銀行でアジアに合わせています」と例え言ったとしても、それだけでは十分で

はありません。

つまり、実際にクロスチャネルを考慮したソリューションを考えるときには、ユーザのモチベーションを含める

必要があるということですね?

そのためには、まずやる気を起こさせるソリューションを考えることです。私たちは、最初に徹底的に調査を行

うことから始めます。PET調査と言います-PETは、Persuasion(納得感)・Emotion(感情)・Trust(信頼性)の

略語です。PET調査は、ユーザの深層心理、思考、感情を理解することを目的にしています。私たちが PET

調査を通じて明確にしたいことは-どれに対処すべきか?人々にとって何が重要か?それは彼らの自尊心

から生まれるものなのか?恥ずかしいと思うことに抵抗はあるのか?それは当たり前のことなのか?それら

が何であれ、私たち心理学者は恐怖に感じることや食べ物、性別や子育てなどによって影響を受けるものだ

と考えています。

なぜそう思うのですか?

上記は遺伝的動機を基礎としています。

これらの影響因子は、私たちが共感を覚えるということであり、とても安心を感じます。だから、もし対象の顧

客を満足させたり、または「心地良い刺激」を提供したりすれば、売り出すことができるでしょう。そして我々は、

「それらをサポートするニーズはどのようなものか?」を明確にするための、PET調査のフレームワークを考

えています。だから、もし食べ物に関する動機があるならば、-例えばお腹が空いている-そのニーズは、

「美味しい食べ物を速く届けてほしい」であるべきです。このニーズに気付いた時、企業は「おいしい食べ物が

速く届けられる」ようにすべきなのです。

これは、フレンチレストランでは売ることはないでしょう。しかし、気にすることはありません。これは根底にあ

るメッセージです。判断基準は、「美味しい食べ物を速く届けられる」のかどうかです。私たちはおそらく、ドミノ

ピザが 25分であなたの家に届けられなければ、無料になるというミーム(アイデア)を考えていると思います。

PET調査から得られたニーズは企業の枠組みをサポートするメッセージあるいは発言です。私たちは顧客の

深層心理と会話をします。そこから、ニーズに応えていくための説得材料をいくつか揃えていくことになります。

それは、社会的証拠、社会的学習、相互作用の法則が関係してくるのかもしれません。

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“すべてのチャネルに、共通の関係と目的があるということは理解しておかなければならないの

です。”

私たちが参考にできる手法は多様にあります。もし、それが社会的学習なのであれば、おいしい食べ物を速く

届けることの重要性について、ストーリーを話してもらうことになるでしょう。お腹が空いていて何事もやる気

が起きなかった、などです。

まずどのようなソリューションが、人々の動機付けになり得るのかを考えていく必要があります。これについて

深く、的確に考えている人はわずかだと思います。経営幹部が、「私はこれをやってみたい」と言ったとき、テ

クノロジーやビジネスモデルがすべてではありません。それよりも、顧客の動機付けが何によって満たされる

のかが重要なのです。それが第一の仕事です。

それが真っ先に理解できれば、全体的なカスタマーエクスペリエンスを構築することが可能ですし、それがで

きたとすれば、テクノロジーやビジネスモデル、その後のオペレーションなどの議論の元になり、全体的なカス

タマーエクスペリエンスの設計に役立てます。

私たちが顧客主導デザインまたは顧客志向デザインについて話すとき、顧客が何をすべきかを尋ねているわ

けではありません。なぜなら、彼らは知らないからです。これはカスタマーエクスペリエンスに主眼を置いたと

ても明確なモデルで、その後のすべてのプロセスを駆動させます。

だからもし、私がモバイルアプリを構築するとしたら、どのコンテクストに適応させるべきだろうか?と考えます。

もし私が、「おいしい食べ物を速く届けられる」ことを実現したいのであれば、モバイルアプリのメッセージとし

て、家に近くなったときにそのボタンを押すと、好きなピザを表示して…OK!これで私は顧客のストーリーに

あった適切なソリューションを提供することができるでしょう。

全体的な UX戦略は、すべての異なるチャネルのデザインに影響を与えるということですか?

それは間違いではありません。多くの場合、複数のチャネルが進行しています。それぞれは正しいのですが、

連携しているかどうかはまた別の話です。結果として、最初からすべてのチャネルを始めれば良いということ

ではありません。しかし、すべてのチャネルに、共通の関係と目的があるということは理解しておかなければ

ならないのです。

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“今日の課題は、技術的に統合しているかについてではないのです。むしろ、カスタマーエクス

ペリエンスの完全性と一貫性についてなのです。”

このように考えてください。-将来をイメージして、城を建設するために、とても明確なビジョンとデザインを持

っているとします。そして、ニーズに合った城を本当に持つ予定であることに興奮しています。

今、私たちはキッチン関係のプロジェクトを担当しています。もし、私が城のデザインをしないのなら、キッチン

だけを作るでしょう。そして、それが城に適応するキッチンではないため、すぐに廃棄することでしょう。しかし、

城のデザインを知っているのであれば、城に正しく適応するキッチンを作ることでしょう。カスタマーエクスぺリ

エンスの観点から、共有されたモデルに向かってデザインは進んでいきます。

そして、すべてが統合されるのですか?

どのように統合するかです。技術的な統合のアイデアは重要で、モバイルからウェブに移行する顧客を知る

ことができます。現在は顧客データベースが整えられており、偶然を生み出すための多くの方法があります。

今日の課題は、技術的に統合しているかについてではないのです。むしろ、カスタマーエクスペリエンスの完

全性と一貫性についてなのです。例えば、”私はテレビを見ることができる、もうテレビを見ない、しかし私はコ

ンピュータを持っている、モバイルデバイスを持っている、高品質なテレビを持っている、タブレットを持ってい

る”など、各チャネルをどのようにつなげるのかが問題です。それらを、シンプルな解決策で結合にするには

どうしますか?

4つまたは 5つのチャネルでの挑戦は、今日では一般的です。また私たちは、各々でアイデアを考え出して、

それらを区別してデザインしていません。しかし、首尾一貫したデザインでインタフェースの標準が求められる

ことは確かです。そのときに初めて、あなたは成功のための解決策を導き出すことができるでしょう。

UX戦略に取り組んでいるとき、どこで企業はつまずいてしまうのでしょうか? 共通していることはあります

か?

それは、彼らがその本質に気付いていないことです。

全体的な UX戦略を立てていないということでしょうか?

それに、本質を見出すのは非常にめずらしいケースです。

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“多くの場合、組織はそれぞれの組織で孤立しており、チャネルを跨いで考えることが非常に難

しいです。”

それは例えば、4つの異なるチャネルに、それぞれチームが割り当てられるのが一般的ということでしょう

か?

今日では一般的です。UXの組織が備わっていたとしても、組織全体が洗練されていたとしても。-通常はハ

イレベルなビジョンや、どのようなユーザエクスペリエンスを提供するかが明確でない場合が多く、間違ったも

のを作り出していることが多いです。

なぜそう思うのですか?

なぜなら、多くの場合、組織はそれぞれの組織で孤立しており、チャネルを跨いで考えることが非常に難しい

です。各チャネルには既得権があり、多くの場合、それらの周りには激しい政治的な制限があります。

そしてきっと「このチャネルは、もう重要ではなくなったから取りやめよう」と言うかもしれません。その時、関係

者は叫んで走り回り、その誤りを証明しようとします。もう一度言いますが、チャネルを跨ぐと多くの政治的な

制限があり、UXチームがその制限を超えてハイレベルに結ばれて機能することは非常に厳しい状況にあり

ます。

経営幹部は、必要であれば戦略的な経営コンサルタントと手を結ぶことでしょう。ビジネス視点で戦略は語れ

ますが、モチベーションまではいたりません。また、クロスチャネルデザインの話までにもいたりません。彼ら

は、一般的な市場動向と成功事例を気にしているだけなのです。

とても広範囲で価値の高い仕事ですが、一般的にUX戦略には触れていません。結局のところ、関係者はUX

戦略を抜きにして、異なる種類の Webサイトを構築しますが、全員が結集することはないため乱雑になりま

す。

組織のハイレベルな状態から、インパクトのある UX戦略を生み出すにはどうすれば良いのでしょうか?話を

聞く限りでは、それよりも高い経営レベルが求められているように聞こえます。

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UX 戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために

“私たちの目的は、UX専門家が単一のチャネルの詳細設計、そして評価に多くの時間を費やすのではなく、クロスチャネルの UX戦略の仕事に責任を持って扱うようにすることです。”

その通り!これは、高いレベルで議論すべき内容なのです。経営幹部あるいはクロスチャネル統合のための

特に責任のある人と話をしなければいけません。

ではそれをどうやって?コンサルタントとして私たちが行うのは簡単なように思えます。なぜならコンサルタン

トとして関与し、それらの話題について話し始め、すぐに CEO と話すことができるかもしれないからです。しか

し、本当の目的は、UXチームが責任を持ってこのレベルから関与すべきなのです。

UX分野には長い歴史があり、ラジオボタンとチェックボックスの使い分けなどから始まり、HCI(Human

Computer Interaction)に注力する人々はいます。だから、HCIから UX戦略に考えを改めることは重要なこと

なのです。私たちは丁度、UXチームがこのレベルで対話できるようなトレーニングを開始しています。

私たちの目的は、UX専門家が単一のチャネルの詳細設計、そして評価に多くの時間を費やすのではなく、ク

ロスチャネルの UX戦略の仕事に責任を持って扱うようにすることです。

つまり、UXチームをコンセプトレベルからプロジェクトに関与させていくことが正しいのですか?

いいえ、その前です。

その前というのは?

コンセプトレベルでは、まだ「間違った使えるもの」を構築することを許してしまいます。

なるほど、理解できました。

正しいのは、コンセプトレベルよりも前にあるべきということです。組織横断で取り組むべきことは何か?どの

ようなプロジェクトが必要なのか?ということから議論に参加していく必要があります。

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UX 戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために

“良いUX戦略は、実際に私たちが何を構築するのか、何をコンセプトとするかを決定する手助けをしてくれます。”

結局のところ、なぜ構築するのか?を決めることが、UX戦略の本当の成果です。そのためには、「このような

機能が備わっているモバイルデバイスが必要です。なぜなら、その他のチャネルに適応させることができるか

らです」と言うべきなのです。それは例えば、私が家に近づくと、私の好きなピザをボタン 1つで注文できるモ

バイルデバイスです。UX戦略プロジェクトにおいて、一旦それが共通理解として捉えられると、実際に構築さ

れるモノのコンセプトが生まれます。

もちろん、これだけでは十分ではありません。実際にそのコンセプトや考えを具現化するためのデザインを用

意する必要があります。それはモバイルアプリの詳細設計よりも直観的で、何のためのモバイルアプリか不

明瞭なデザインよりも効果的です。良い UX戦略は、実際に私たちが何を構築するのか、何をコンセプトとす

るかを決定する手助けをしてくれます。

これは、完全なパラダイムシフトのように聞こえますが?

確かにそうです。つまりそれは、UX専門家がより成長する必要があるということです。ラジオボタンとチェック

ボックスの使い分けなどに時間を費やしていた UX専門家は、もっと学習して正しい教育を受け、更に前進し

て行く必要があります。

ですが、誰でもこれが出来るということではありません。しかし、UXチームの人達はそれらの役割を担う必要

があり、適切に配置されるべきなのです。おそらく、初めのうちは外部のコンサルタントとの連携が求められる

かもしれませんが、上手くいけば UXチームが中心となって、その他の内部スタッフを巻き込むことができるよ

うになります。

企業のために UX戦略を構築する場合、内部の組織開発にもコミットしていく必要がありますか?

私たちは、それを区別して考えています。今日の一般的なビジネスモデルには、2つの関与方法があります。

1つは、戦術的なニーズを満たすことです。もし、あなたがそれをしなければすべてが減速してしまい、取り返

しのつかないことになってしまいます。あなたは組織が求めている戦術を担うべきで、その進展と価値を示し

続けなければなりません。UX戦略は始まりに過ぎません。UX戦略ファーストを目指すべきですが、すぐには

無理だとしても、なるべく早く取り入れることを期待しています。

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“もし、洗練されたプロセス主導の強い意思があるチームがなければ、それは持続しないでしょう。”

次に、組織の方向性を示す方法もあります。それは、成熟度モデルやガバナンス体制など、UX戦略レベル

からの関与を促すための体制づくりに関わっていきます。これは、顧客中心思考に沿って取り組んでいくべき

もう 1つの別の戦略であり、UX戦略とは異なります。

この 2つの関与によって、組織はこれまで以上により健全に成功する組織として拡大していきます。UX戦略

は、すべてのカスタマーエクスペリエンスに沿ってデザインするということです。クロスチャネル戦略に関わる

仕事をして、すべてが連携することが上手くいくことを約束します。そして、組織内の戦略策定は、UX関連の

業務をより円滑に進めていくために求められているもう 1つの必要とする戦略です。

また、私たちがもう 1つ発見したのは、グローバルで成功を収めるということは組織の UXオペレーションがし

っかりしているということです。

UX戦略を行うために、部分的に外部ベンダーを利用することはおすすめしません。各ベンダーは手法や考え

方など、それぞれの秩序を持っており、それは結果として大きな混乱を生む可能性があります。外部ベンダー

を利用すること自体は構いませんが、自社の秩序や標準、カバナンスに基づいた強いコアチームが必要です。

そうすれば、ベンダーがそのコアチームの取り組みや考え方をサポートするように仕向けることができるでし

ょう。

それは理想的に聞こえます。なぜなら、彼らに方向性や目的を定め、そこまでの道筋を示すということなので

すから。

もちろんそれは簡単なことではありませんが、この相互の関係には相乗効果が期待できます。

例えば、UIの標準化を作ることになったとしましょう。標準を作ることで、数々のプロジェクトにその標準を適

用することができます。数々のプロジェクトで対象のUIを取り入れることができれば、そこからフィードバックを

得て、改良することができます。

また別の観点から、新しいスタッフが組織に加わったのであれば、育成の一環で対象のプロジェクトに入って

もらうことで、上記の取り組みや戦略についての理解が深まります(実際に私たちもそのようにしています)。

私たちが求めていたのは、こういうことなのです。外部のベンダーに部分的に巻き取ってもらうのではなく、新

しいスタッフに全部を任せられるようにすることで長期的な継続が期待できます。もし、あなたの組織にプロセ

ス主導の強い意思のあるチームがないのであれば、それは持続しないでしょう。

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著者紹介

エリック・シェイファー博士

創設者兼 CEO

Human Factors International

Human Factors International(HFI)社 創設者兼 CEO。著書に「Institutionalization of Usability: A Ste-by-Ste

Guide」。HCI、人間工学、心理学、コンピュータサイエンス、マーケティングの知識を活かしてユーザ中心設計

のための ISO認証プロセス、HCI フレームワークを構築。Fortune 500にノミネートされた 100以上のクライア

ントに UX コンサルティングと育成プログラムを提供。Human Factors and Ergonomics学会メンバーであり、

認定人間工学専門家。

訳者紹介

原文 UX Strategy: Let’s Stop Building Usable Wrong Things http://www.humanfactors.com/UXStrategy.asp

坂田 一倫(さかた・かずみち)

UX デザイナー兼ストラテジスト。HCD-Net 認定人間中心設計専門家。デバイスを問

わず、UXを基点とした戦略立案・設計・デザインを担当。インターネットメディア企業で

ユーザエクスペリエンス設計業務を担当する人が集うコミュニティ「ShibuyaUX 」主宰。

情報アーキテクチャのコミュニティに関わる人々を結集するイベント World IA Day

2013 Japan のローカル・コーディネーターでもある。

若狹 修(わかさ・しゅう)

デジタルエージェンシーの Webアナリスト。ビジネス戦略に沿った KPI設計、マーケ

ティング施策、サイト改善を実践している。UXとWeb Analyticsを融合または分解する

ことによって、快適なデジタル環境の構築を目指す研究室「UXAnalytics Lab」運営。

Google Analytics IQ、WACA公認 上級ウェブ解析士、芸術工学修士(九州大学)。

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Human Factors In ternat iona l

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