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糖尿病足病変は,国際的には「神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる感染,潰瘍,足組織の破壊性病変」と定義される a).足病変は先進国のみならず発展途上国でも増加している c).地域によって異なるが,糖尿病足潰瘍の有病率は 1.5〜10%,年間発生率は 2.2〜5.9%,生涯で足潰瘍になるリスクは 25%と報告され,欧米白人に高頻度である 1〜5).日本の平成 19 年の国民栄養調査の結果では,糖尿病患者の 0.7%に足潰瘍を有すると報告され,欧米人より低頻度である.
足潰瘍は再発が多く,難治性で 7〜20%が下肢切断となり,糖尿病患者の足切断の 80〜85%は足潰瘍が先行する b).糖尿病患者の下肢切断率は非糖尿病者の 8 倍にのぼり 6),アメリカでは下肢切断の 60%以上が糖尿病患者である b).
糖尿病患者の下肢切断術後の生存率は非糖尿病者より低く,術後 3 年間で約 50%,5 年で約 40%との報告もある b).末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)の合併による虚血性潰瘍では神経障害性潰瘍に比し切断率が高く,患者の生命予後も不良であり 7).死因としては心血管障害が多い 8).
足病変の成因は神経障害と PAD による血流障害が主であるが,最近では糖尿病患者に合併するうつ病やうつ状態も足潰瘍のリスクと報告されている 9, 10).神経障害からの足の変形と胼胝の形成,発汗減少による組織乾燥,動静脈シャントによる血流増加・浮腫による皮膚の脆弱性,これらの足に外傷,靴擦れ,低温熱傷などの誘因が加わると潰瘍が形成され,感覚低下により発見の遅れ,潰瘍が進展,さらに細菌感染を合併して難治・重症化する.足病変は神経障害性が 80〜90%,神経障害と血流障害の合併が 30〜50%,血流障害のみのものが 10〜20%であり,神経障害性の症例が多い.最近のヨーロッパでは足潰瘍の 49%に PAD,58%に感染が合併し,PAD 合併の難治症例や透析患者の足壊疽が増加している 11).足潰瘍のリスクには,足潰瘍の既往,腎障害,視力障害,血糖コントロール不良,足変形,関節可動域制限,高足底圧が 12〜19),足切断のリスクには,PAD,神経障害,足潰瘍の既往歴,視力障害,腎障害,血糖コントロール不良,高齢,男性がある b, 20〜24).
Charcot 関節は,神経障害例に起こる無菌性の発赤腫脹を伴う関節炎で,急速に関節破壊が進行し,死亡率も高く 25),早期診断と免荷を中心とする治療が重要である d).
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糖尿病足病変
糖尿病診療ガイドライン 2016 11
Q11-1 糖尿病足病変とはなにか?
【ステートメント】� 糖尿病足病変は国際的には“神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる
感染,潰瘍,足組織の破壊性病変”と定義される a).� 糖尿病足病変は神経障害による感覚鈍麻,足の変形,皮膚の乾燥・角化,末梢動脈疾患によ
る血流低下に外因が加わり発症する.足病変は感染を伴うと重症化し下肢切断につながり,さらに生命予後を損なう a, b).
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フットケアにおいて足の定期観察は最初に行う重要なプロセスである.オランダでは 1991〜2000 年にフットケアチームが増加し,糖尿病患者の足切断が約 37%減少したとの報告 27),イギリスでもフットケア導入後 11 年間の追跡調査で足切断が大幅に減少したとの報告 26)がある.糖尿病患者では神経障害による感覚鈍麻や網膜症による視力低下のために足病変を自覚できない例があり,足の定期観察により潰瘍・壊疽のリスクファクターを検出し,軽度の足変化を発見することは,足病変を減らすために効果的である.
定期観察では足の皮膚の状態と変形を観察し,神経障害と血流障害のアセスメントを行う.皮膚病変の把握には足趾間部を含めた観察が必要で,発赤,乾燥,肥厚,角化,胼胝,鶏眼,白癬症,爪病変,水疱,潰瘍などの有無をチェックする a, b, e, f).足の変形については,足趾変形
(claw toe,hammer toe),外反母趾,凹凸足変形などを確認し,発赤・腫脹・熱感のある場合には蜂窩織炎や骨髄炎を鑑別診断する.しかし,重篤な神経障害や PAD を合併すると細菌感染を生じても発赤や熱感を欠く場合もあるので注意が必要である.蜂窩織炎とまぎらわしい急性期 Charcot 関節を診断するには X 線診断が必要である.特に初期には磁気共鳴画像法
(magnetic resonance imaging:MRI)での確認が必要である d).神経障害の評価は自覚症状だけでは困難であり,振動覚検査,ピンプリック検査,アキレ
ス腱反射,Siemens-Weinstein 5.07(10 g)モノフィラメント検査を行う e).アメリカ糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)ワーキンググループでは 5.07(10 g)モノフィラメント検査が必須で e),触知不能患者では足潰瘍のリスクが高い.欧米では振動覚閾値(vibration
perception threshold:VPT)を定量して,リスク判定の参考にしている 28).感覚鈍麻のある場合には足底の皮膚温評価による定期チェックが予防に有用であるとの報告 29),道具を用いず検査者の指で触覚の有無を調べる Ipswitch タッチテストはモノフィラメントと同程度に有用で簡便な方法との報告 30)がある.
血流障害の評価のためには間欠性跛行などの虚血症状の問診を行い,足背動脈や後脛骨動脈の拍動をチェックする e, g, h, i).ADA や TASCⅡ は 50 歳以上の糖尿病患者や 50 歳以下でも動脈硬化のリスクファクターを多数有する場合には下腿-上腕血圧比(ankle-brachial index:ABI)測定を勧告している h〜j).足関節血圧 50 mmHg 未満,ABI 0.5 未満は重症下肢虚血であり血流再建を考慮する.
靴の状態も観察し,内部の摩耗,血痕や異物の有無をチェックする.感覚鈍麻のある患者は,自身で靴の適合を感じ取ることができないので,すべての糖尿病患者は少なくとも年 1回,ハイリスク患者はより頻繁に足の観察を受けるべきである k).
CQ11-2 足の定期観察は足病変の予防に有効か?
【ステートメント】� 足病変の予防に足の定期観察のみが有効であることを示すエビデンスは乏しいが,それを含
むフットケアシステムの臨床導入以後に下肢切断の減少が観察されており 26),また,病変の早期発見,フットケア実施のためには足の観察が必須であり,足病変予防に有効と考えられる a). 【推奨グレードA】(合意率 85%)
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11 糖尿病足病変
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糖尿病足病変の発症予防のためには,すべての糖尿病患者に対して,診断後早期より一般的なフットケアに関する基礎教育を行うことが推奨される.さらに患者の全身および足の診察により病態・局所所見を把握する.足病変のハイリスク患者に対しては,さらに緻密な個別指導を行う a, f, l, 4).具体的には,患者および必要なら家族に対するセルフ・フットケアの方法と重要性を教育する.医療者による定期的な足診察,足に適合した履物の指導や作製,非潰瘍性皮膚病変(胼胝,鶏眼,白癬症,爪病変など)の治療,血糖コントロールも必要であり,その継続的治療・療養の重要性を繰り返し教育・指導することが推奨される.末梢動脈疾患が併存している場合には,禁煙指導は極めて重要である a, b, f, g, m, 4).
フットケア教育の足病変予防効果を調べた報告は少ない.2008 年に報告されたランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)では,足潰瘍治癒後の糖尿病患者にフットケア教育を集中的に行った群と通常治療を継続した群に分け,1 年間にわたり足潰瘍再発率,生活の質(quality of life:QOL),フットケア実施率を比較した.足潰瘍再発率や QOL に有意差を認めず,足病変予防行動の向上のみが認められている 32).1980 年代に 2 編の RCT が報告されている.インスリン治療糖尿病患者のうち集中的教育を行った群と対照群の間には足病変スコアに差を認めなかったという報告 33)と,足潰瘍あるいは既往患者において非教育群の足潰瘍・下肢切断の発症率は強化教育群のおよそ 3 倍であり,有効性が認められたという報告 31)
がある.近年ではハイリスク患者に対する診察,治療,靴の調整など集学的チームによるフットケ
アの一部としてフットケア教育が行われることが多く,教育のみの評価は容易ではないと考えられる.このように,フットケア教育の足潰瘍発症,再発,下肢切断予防効果に関して十分なエビデンスは得られていない.現在,フットケア教育のプログラムや教育形態(教材の多様化,個別指導,強化指導,グループセッションなど)に関して,様々な試みがなされており,今後のエビデンスの蓄積が期待される a, n).
CQ11-3 フットケア教育は足病変の予防に有効か?
【ステートメント】� フットケア教育は,知識獲得やセルフケア行動の向上につながり,長期的には足病変の予防
に有効と考えられる 31, a). 【推奨グレードA】(合意率 90%)
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糖尿病患者の下肢切断のリスクは非糖尿病者に比して非常に高く,スウェーデンでは糖尿病患者の非外傷性下肢切断率は非糖尿病の約 8 倍 6),1 型糖尿病に限ると非糖尿病の 86 倍と極めて高率である 35).下肢切断のほとんどは足病変に起因することから,糖尿病すなわち慢性高血糖が足病変および下肢切断の強力なリスクファクターであることに疑いの余地はない.実際に糖尿病患者における下肢切断のリスクファクターには高血糖と HbA1c 高値とがあげられており 16, 20, 23, 24),高血糖自体による創傷治癒の遅延,術後の手術部位感染(surgical site infec-
tion:SSI)が有意に高頻度であること 36)も一因と考えられている.高血糖状態が表皮角化細胞の増殖抑制,好中球機能低下,免疫グロブリンや補体の糖化による活性低下を引き起こすことが知られている.糖尿病患者を 7 年間追跡調査した報告では,HbA1c 上昇と下肢切断のリスクは正相関し,血糖コントロール状態の悪化に伴い下肢切断は直線的な増加を示した 23).糖尿病患者を 3 年間追跡した報告では,足潰瘍の発生は血糖不良で 1.1 倍高率であった 16).日本糖尿病対策推進会議の報告でも,足の症状と外観異常の頻度は血糖不良の患者に高率である o).また,下肢切断と関係の深い血流障害である PAD リスクは糖尿病患者で 3〜4 倍となる j).
糖尿病患者の下肢切断率は,最近 20 年の間に約半分に減少しており 37),その要因には血糖や脂質コントロールの改善が考えられている.UKPDS によると,下肢切断や血管障害による死亡は HbA1c 値の上昇に相関して増加し,逆に HbA1c 値の 1%の低下がこれらの HR を43%低下させるとされ,足病変に対してもその血糖改善の有効性が示されている 34).
足病変の発症・下肢切断の予防には厳格な血糖コントロールに加えて,血清脂質や血圧を含めた包括的なコントロールが重要と思われる.HbA1c をどこまで改善させるのが最も有効であるのか,エビデンスは不十分である.
CQ11-4 血糖コントロールは足病変の発症や切断予防に有効か?
【ステートメント】� 足病変や下肢切断への血糖コントロール介入の影響をみた報告は少ない 34).しかし,足病変
のリスクファクターである神経障害および大血管症の予防のために血糖コントロールは推奨される. 【推奨グレードB】【コンセンサス】(合意率 100%)
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11 糖尿病足病変
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重症の神経障害(運動,感覚,自律神経障害)や PAD を有する患者,足潰瘍や切断の既往を有する患者が足病変のハイリスク患者とされる e).特に足潰瘍や切断の既往を有する患者のリスクは極めて高く,潰瘍再発率は 12 ヵ月で 34%39),18 ヵ月で 43.3%40),41.5%41)と報告されている,詳細な足観察と個別リスク評価,リスクに応じた自己管理教育とフットケアが必要となる.ハイリスク患者において,患者の視力や理解力の問題からフットケアを自己で行うことが困難な場合には,家族支援を含む環境整備も重要となる.
ハイリスク患者に対するフットケアには,セルフケア教育,足の診察と爪処置,胼胝などの非潰瘍皮膚病変の治療,白癬など感染症の治療,変形した足に対する適合した履物の指導や靴・足底板の作製,多層性ソックスの利用などが行われる 4).
足潰瘍患者を対象とし,多職種による足専門クリニックの効果をみたコホート研究では,同クリニックの診療開始後に大切断が減少し,治療靴作製により潰瘍再発率が 57%低下したと報告されている 38).また,ハイリスク患者の足潰瘍の発症・再発のリスクファクターを調べたコホート研究では,靴内および素足での足底圧上昇がリスクファクターとしてあげられている 41).この局所的な足底圧上昇に対して,完全個別カスタム化治療靴が約 30%の圧負荷軽減もたらすこと 42),多層性ソックス着用により靴内足底圧が 9%減少すること 43)が報告されている.足の形状に合わせて作製された靴や足底板は,局所にかかる圧を分散・低減することで足潰瘍発症予防効果が期待でき,特に著明な足変形例や足底胼胝などの高足底圧合併例,Charcot 関節を合併した症例では有用とされる 41, 42〜44).
ハイリスク患者においては非潰瘍性皮膚病変の処置も重要である a, 4).胼胝は足底圧など物理的な圧力が強い部位に形成され,いったん形成されるとさらに局所圧力が増すことで,胼胝内に出血を生じて潰瘍が発症する.足底胼胝はデブリードマンすることにより最大足底圧は約 30%減少する 4).
足白癬自体が足潰瘍を助長するというエビデンスは少ないが,爪甲白癬による爪変形と不適切な爪処置が足潰瘍の引き金ともなりうることから,足白癬,爪甲白癬は適時治療することが勧められる p).また,神経障害による足の感覚喪失から進行性の関節破壊をきたし Char-
cot 関節を形成する.進行例では対症療法以外の治療法が困難なため,早期の診断と関節保護が重要である q).
CQ11-5 ハイリスク患者に対するフットケアは足潰瘍の予防や救肢に有効か?
【ステートメント】� ハイリスク患者に対するフットケアによる足潰瘍や下肢切断の予防効果を直接的に証明した
報告は少ないが,多職種の連携によるフットケアにより大切断減少が示されている 38).【推奨グレードA】(合意率 100%)
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糖尿病足潰瘍の治癒を遅延させる全身性因子は高齢,男性,PAD,神経障害,末期腎不全,心不全などがあり 45),血糖値は食前 140 mg/dL 未満とする報告がある s).局所所見では,潰瘍の面積,発症からの期間,重症度(深さや膿瘍,骨髄炎,壊死,壊疽の合併)が治癒と関連する 46, 47).潰瘍の深達度に虚血・感染の有無を加えた分類(テキサス分類 t)やアメリカ感染症学会の足感染分類 r))は治療方針の決定に有用である u).
足潰瘍に感染が合併すると重症化するため迅速な診断と治療が必須である r).感染のリスクファクターには骨に達する潰瘍,難治性慢性潰瘍,再発潰瘍,外傷,末梢動脈疾患の合併がある 45, 48).一般に,足潰瘍では好気性グラム陽性球菌の感染が多いが,慢性の深い潰瘍ではグラム陰性桿菌や嫌気性菌などとの複数菌感染が生じ r, 49),抗菌薬治療に関するメタアナリシスでは,足切断からの救肢(limb-salvage),感染の軽快,潰瘍の治癒という点において特に推奨される抗菌薬はない a, 50, 51).起因菌を同定するうえで,表面を綿棒で拭う細菌検査はあまり意味がなく,適切なデブリードメント後の潰瘍底からの組織標本を検査すべきである r).下肢骨髄炎の診断は,2 cm2 以上の潰瘍面積,ゾンデ挿入診による骨に達する深い潰瘍,赤沈 71 mm/hr
以上,単純 X 線および MRI の異常所見などを参考にする a, 52).Probe-to-Bone test(PTB:先端が鈍なゾンデを潰瘍に挿入して骨が触れれば陽性)が骨髄炎の診断に有用である 53).骨髄炎の確定診断は無菌的に摘出された骨の組織検査と細菌検査による a).PAD を合併せず,壊死性軟部組織感染症を伴わない骨髄炎に対して,できるだけ組織を保存する conservative surgery
と抗生剤治療の成績を比較した最近のランダム化比較試験では,骨髄炎治癒率,治癒に要した期間,短期的合併症のいずれも抗生物質群と外科治療群間に有意な差を認めなかった 54).
下肢虚血を合併する足潰瘍は難治性であり,下肢血行再建術を考慮する g, h, 55〜57).血行再建術の進歩と適応拡大に伴い,下肢切断率や生存率が改善してきている 55〜58).末梢血管の狭窄や閉塞の部位,性状,長さと全身状態や生命予後により血管内治療かバイパス治療,あるいはその両方を選択する a, g, h).
切断の適応に確立された基準はない.術前に切断部位の血流状態を評価する.一般に,足趾血圧が 30 mmHg 未満,組織酸素分圧(TcO2)が 25 mmHg 未満,皮膚灌流圧(skin perfu-
sion pressure:SPP)が 40 mmHg 未満ならば,足趾や前足部で切断しても治癒は困難で,血行再建術による救肢の可能性を検討する a).足潰瘍による足部骨髄炎の部位と下腿での大切断の関連を調べた報告では,踵部の骨髄炎で大切断の危険性が高い 59).
足潰瘍部への荷重は治癒機転を阻害するため,免荷(off-loading)が重要であり,車椅子,松葉杖,total contact cast,免荷用サンダル,パッド,足底板などを用いる a, b).神経障害性足潰瘍の既往例で潰瘍再発のリスクファクターを調べた報告では,足底圧の上昇とともに再発
Q11-6 足潰瘍の治療はどのように行うか?
【ステートメント】� 糖尿病足病変の治療には,全身状態のコントロール,デブリードマンなどの局所処置,感染
治療,重症下肢虚血の血行再建,免荷用装具や靴などの作製(off-loading),歩行リハビリテーション,栄養指導や療養支援などが必要である.そのため,様々な専門医や多職種からなるチーム医療が重要である a).
� 深部組織にガスを伴う感染症,膿瘍,または壊死性筋膜炎は緊急の外科的処置が必要である.切断の適応に関しては確立された基準はない.切断術を施行する際には,術前に切断部位の血流状態を評価する g, r).
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糖尿病診療ガイドライン2016,南江堂,2016
リスクが上昇すること 41),完全個別カスタム化治療靴は足底への圧負荷を 30%軽減できること 42)が示されており,足変形を持つ患者では推奨される f).
難治性の糖尿病足潰瘍に対する先進創傷治療法(コラーゲン,生物学的被覆材・皮膚等価物,血小板および血小板由来増殖因子,銀製剤,陰圧閉鎖療法,高圧酸素療法,オゾン酸素療法,電磁療法など)が試みられているが,推奨できるのはシステマティックレビュー 60)で中等度以上のエビデンスレベルを示した陰圧閉鎖療法 61)と International Working Group on
the Diabetic Foot(IWGDF)ガイダンスに記載されている高圧酸素療法 62)のみで,多くの治療法は有効な患者群の臨床的特徴や費用対効果などいまだ不明な点が多い.
11 糖尿病足病変
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足潰瘍の発症要因には糖尿病による神経障害や血流障害がある.悪化要因には感染や創部への荷重などがある e, f).それぞれに対して多面的な治療を行うためには,糖尿病内科,皮膚科,整形外科,形成外科,循環器内科,血管外科,放射線科,理学療法科などの医師やコメディカルスタッフによる集学的チーム医療が必要となる.
医師,足治療士,看護師,シューフィッターによるチーム医療を実施したところ,神経障害性足潰瘍は 86%,虚血性足潰瘍は 72%が治癒し,それまでと比べて,大切断と再発率が低下したとの報告がある 38).さらに,集学的チーム医療(罹患肢救済のための血行再建術を含む統合的足潰瘍手術サービス)を開始する前後の 12 ヵ月間で足潰瘍に関連する手術成績を比較した報告によると,緊急手術が 78%から 49%に減少,大切断(膝下切断)は 46%の減少を示した 58).また,糖尿病足病変の集学的チーム医療システムで治療した足病変患者と通常治療を継続した対照患者を 2 年間にわたり追跡し,大切断数,潰瘍治癒率,死亡率を比較したところ,集学治療群の大切断率は対照群より有意に低く(4.7% vs. 21.7%),入院中の死亡率も集学治療群は対照群に比べて有意に低値であった(2.5% vs. 9.4%)64).これらの報告は集学的チーム医療が足潰瘍治癒に有効であることを示している.
糖尿病足潰瘍による大切断頻度の年次推移(1981〜1996 年)を調べた報告では,大切断は75%減少し,集学的チーム医療(血管外科医,糖尿病内科医,専門看護師,足治療士,整形靴装具士)確立の効果が示唆されると報告 63)され,下肢切断頻度の年次推移(1991〜2000 年)を調べた報告でも,糖尿病足病変による下肢切断は男性で 36%,女性で 38%減少,入院期間も減少し,フットケアチームの増加と相関している可能性が想定される 27).さらに,イギリスで集学的チーム医療の導入後 11 年間の下肢切断率の変化を調べた報告では,一般人口において大切断の頻度は 62%減少し,総切断率は 40%減少した.糖尿病患者では大切断は 82%,総切断は 70%減少した 26).
このように,集学的チーム医療の普及により,糖尿病の足潰瘍の下肢切断は減少しており,チーム医療の足潰瘍発症予防効果を示唆すると考えられる.
CQ11-7 チーム医療は足病変発症予防と足潰瘍治療に有効か?
【ステートメント】� 足潰瘍の集学的チーム医療が治療成績を向上させることが報告されている 58).一方,集学的
チーム医療が糖尿病足潰瘍を予防することを示す直接的なエビデンスはないが,集学的フットケアチームの確立と関連して足切断が経年的に減少していることから,予防に有効である 63).
【推奨グレードA】(合意率 100%)
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糖尿病診療ガイドライン2016,南江堂,2016
11 糖尿病足病変
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QOL は,身体的にも精神的にも人間らしく満足して生活しているかを評価する概念である.健康関連の QOL(health-related quality of life:HRQL)評価には SF-36®(MOS Short-Form
36-Item Health Survey)をはじめとする調査票が用いられる.足潰瘍は痛みや運動制限など身体的苦痛を生じるので必然的に QOL の低下をきたすと予想される.実際にフランスで足潰瘍合併糖尿病患者と潰瘍非合併患者で SF-36 のスコアを比較したところ,すべての領域において前者のほうが有意に低値であった 65).また,糖尿病足潰瘍患者の HRQL スコアは全領域で一般人口より有意に低く,特に身体的健康領域で大きな差異がみられた 67).ヨーロッパでの足潰瘍患者と介護者を対象とした 3 ヵ月間の前向き多施設観察研究では,観察終了時の潰瘍治癒群の HRQL(身体的健康領域全般)は非治癒群より有意に高値で,観察前後で比較すると潰瘍治癒群の HRQL スコアは改善したが非治癒群では悪化しており(p<0.05),非治癒群の介護者は終了時において精神的負担を感じていた 68).足潰瘍患者を 1 年間追跡調査した研究では,潰瘍残存 35%,治癒 37%,切断 15%,死亡 7%であり,潰瘍治癒者では SF-36 の 8 領域のうち 5 個の HRQL スコアが残存患者よりも有意に高く,潰瘍治癒とともに社会生活機能と心の健康の HRQL も改善した 66).
さらに,ヨーロッパ 10 ヵ国 14 施設の足潰瘍患者を最大 1 年間観察し,予後と HRQL の関連を多変量 Cox 回帰分析で調べた結果,交絡因子を調整した HRQL スコアで潰瘍治癒の予測はできなかったが,低い HRQL(特に身体領域)は大切断や死亡の有意な予測因子であったと報告されている 69).
CQ11-8 足潰瘍治療は患者の生活の質(QOL)の維持に有効か?
【ステートメント】� 足潰瘍治療は患者の生活の質(QOL)の維持に有効である 65, 66).
【推奨グレードA】(合意率 100%)
糖尿病GL2016組版ss.qxp_糖尿病GL2016 2016/04/28 17:08 ページ 247
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糖尿病診療ガイドライン2016,南江堂,2016
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糖尿病足病変患者で発症頻度が増加する疾患には,心・脳血管疾患,うつ病があり,死亡率も増加する.Brownrigg らは 81,116 人/年を対象としたメタアナリシスで,糖尿病足病変は総死亡,致死的心筋梗塞,脳梗塞を有意に上昇させ,それぞれの相対リスクは 1.89,2.22,1.41 であったと報告している 70).Iversen らは,足潰瘍の既往を有する糖尿病患者,有さない糖尿病患者,非糖尿病者を対象にした 10 年間の観察研究からは,足病変の既往を有する集団の死亡リスクは非糖尿病者に比べて 2.29 倍,足病変のない糖尿病集団に比べて 1.47 倍上昇すると報告している 71).一般人口と比べて糖尿病潰瘍例の死亡率は約 2 倍,切断例では 4 倍 39),切断例の死亡率は非切断潰瘍例と比べて約 2 倍 8),Charcot 関節例の死亡率は糖尿病患者の 1.5倍に昇る 25)とのコホート研究がある.糖尿病患者にうつ状態が合併すると,足潰瘍のリスクが高まる 9, 10)ことを前述したが,逆に足潰瘍を初発した症例ではうつ病の発症が多くなる
(18 ヵ月間に minor depression が 8.1%,major depression が 24.1%)との報告もある 40).したがって,足病変は死亡,心筋梗塞,脳梗塞,うつ病・うつ状態のリスクファクターと考えられる.
ヨーロッパ 10 ヵ国 14 病院の糖尿病足潰瘍患者を対象とした横断研究では,PAD 合併が49%,感染症合併が 58%とされ,その他視力障害,腎不全,心不全なども高率に合併していたことが示されている 11).また,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)との関連も報告されており,CKD ステージ G1,2 に比べて G3 では足病変のリスクが 1.85,G4 以上で 3.92と高率であったことが示されている 72).このように糖尿病足病変を有する症例では細小血管症や動脈硬化症が進行した結果と考えられる様々な重篤な全身合併症を有していることが多く,このことが生命予後の悪化やうつ病の発症の関与していることが考えられる.
Q11-9 足病変はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
【ステートメント】� 足病変を有する患者では,心・脳血管疾患,総死亡率,うつ病の発症が有意に高率であり,
糖尿病足病変は死亡およびこれらの疾患のリスクファクターと考えられる 8, 70).
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11 糖尿病足病変
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文 献
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コホート研究[レベル 2]
9)Gonzalez JS et al, 2010 コホート
[レベル 2]
神経障害を有する糖尿病患者(1,035人)(イギリス,糖尿病足潰瘍既往歴はなし).
糖尿病患者(8,905人)(アメリカ).
イギリス北西部在住の糖尿病患者(9,710人).
糖尿病足潰瘍の予防に関する論文165件(うち22件はRCT).
イギリスの集団ベース研究,糖尿病患者(15,692人)(ヨ ーロッパ人[EU]85.5%,南アジア人[SA]11.9%,アフリカ系カリブ人[AC]2.4%).
1997〜2006年に下肢切断を実施された133人の糖尿病患者と157人の非糖尿病患者と45歳以上の一般人口(スウェーデン).
糖尿病足潰瘍を新たに発症した患者(185人)(イギリス).
アメリカ先住民糖尿病患者(2,108人)(134人は下肢切断歴あり).
糖尿病多発神経障害を有するがPADを持たない糖尿病患者
(333人)(アメリカ).
1年後の足潰瘍発生率と神経障害の程度との関係を解析.
3年間における足潰瘍発生率,骨髄炎合併率,足切断率,生存率,足潰瘍医療費を調査.
2年間における足潰瘍発生率と潰瘍リスクファクターを解析.
糖尿病足潰瘍の予防の有効性に関する検討.
対象患者の足潰瘍,足変形,神経障害,末梢動脈疾患など合併症の有病率の人種差を調査.
10年間の下肢切断率を糖尿病の有無で比較.
平均追跡期間34ヵ月における切断率と死亡率を潰瘍の成因別に検討.
平均追跡期間8.7年における糖尿病足病変による下肢切断と死因の関係を解析.
18ヵ月間以上にわたり観察し,足潰瘍の予測因子をCox回帰分析で調べた.
7.2%に足潰瘍が発生.神経障害の程度(振動覚閾値,ミシガン神経障害スコア)と相関.
足潰瘍の累積発生率5.8%,骨髄 炎 合 併 率 15%,切 断 率15.6%,3年生存率72%(対照患者では87%,p<0.001),足潰瘍医療費$27,987/2年間.
足潰瘍の平均年間発生率2.2%.潰瘍既往,高い神経障害スコア,モノフィラメント触知不能,足部動脈拍動触知不能が主なリスクファクター.
問診,モノフィラメント検査,振動覚閾値検査,足底圧測定,ABI検査,身体所見で足潰瘍ハイリスク患者を同定.ハイリスク患者への教育,靴装具作製,フットケア,予防的手術は潰瘍発症予防に有効である可能性を示唆.
足潰瘍の年齢調整有病率はEU5.5%,SA 1.8%,AC 2.7%で,EUが有意に高かった.SA,ACの神経障害,足変形はEUより有意に少なかった.
初回切断率(/10,000人・年)は糖 尿 病 女 性 で 192,男 性 で197,非糖尿病女性で22,男性で24で糖尿病では8倍の下肢切断のリスクがあり,1/4は反対側または再切断であった.
足潰瘍の原因は神経性が45%,虚血性16%,混合性が24%.5年切断率は虚血性が29%,混合性が25%,神経性が11%.5年死亡率は神経性が45%,混合性が18%,虚血性が55%.死亡率は虚血性で高かったが,多変量解析では加齢のみが生命予後に関連.
下肢切断患者の76%が死亡(心血管障害死が26%).下肢切断歴(-)患者の31%が死亡(心血管障害死は10%).下肢切断患者の生命予後は不良(心血管障害の増加).
63例に新たな潰瘍が出現し,うつ症状が潰瘍初発の有意なリスクファクターであった(HR1.68,95%CI 1.20〜2.35).
論文コード 対 象 方 法 結 果
アブストラクトテーブル
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[レベル 4]
13)Crawford F et al, 2007メタアナリシス
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[レベル 4]
15)Pham H et al, 2000コホート研究[レベル 2]
16)Boyko EJ et al (Seattle Diabetic Foot Study), 2006
コホート研究[レベル 2]
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18)Frykberg RG et al, 1998横断研究
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[レベル 4]
20)Moss SE et al, 1999コホート研究[レベル 2]
36,031人を対象とし,抑うつ尺度と糖尿病,糖尿病足潰瘍の関連を調べたコミュニティーベースの縦断研究(ノルウェー).
ヨーロッパ10ヵ国14病院の糖尿病足潰瘍患者(1,229人)(オランダ).
糖尿病足潰瘍患者148人(イギリスマンチェスター92人,アメリカシアトル56人).
糖尿病足潰瘍患者(5ケースコントロール研究,11コホート研究)(イギリス).
糖尿病患者(225人)(アメリカの足潰瘍患者76人,コントロール149人).
糖尿病患者(248人)(アメリカ).
アメリカ退役軍人糖尿病患者(1,285人)(足潰瘍なし).
糖尿病患者(1,666人)(アメリカ).
糖尿病患者(251人)(99人が足潰瘍歴あり)(白人121人,アフリカ系36人,ヒスパニック系94人).
糖尿病とstage4,5の慢性腎臓病(CKD)を合併した患者(326人)(イギリス).
若年発症(30歳以前)糖尿病患者(906人)と成人発症(30歳以降)糖尿病患者(984人)(アメリカ).
11年間にわたり観察し,糖尿病と足潰瘍のリスクをロジスティック回帰分析を用いて調べた.
2003年9月〜2004年10月に新たに発生した足潰瘍患者の横断研究.
足潰瘍発症の誘因,成因を検討.
糖尿病足潰瘍の発生率と発症予測因子を検討.
糖尿病足潰瘍のリスクファクターを解析.
平均追跡期間30ヵ月における足潰瘍の発症とそのリスクファクターを検討.
平均観察期間3.38年の前向き調査で,足潰瘍の発症とその予測因子について検討.
追跡期間2年における足潰瘍の発症と足底圧の関係を解析.
神経障害,高足底圧と足潰瘍の関係を解析.
透析治療と足潰瘍の関係を解析.
14年間における下肢切断とそのリスクファクターを解析.
ベースラインのうつスコアの高い群では糖尿病のリスクが高く,糖尿病患者においてうつスコアは年齢,性,血糖で補正しても容量依存的にでの足潰瘍リスク増加と関連していた.
PAD合 併49%,感 染 症 合 併58%.重症足病変は足底部以外の潰瘍により多く,他の重篤な合併症(重症視力障害,末期腎不全,心不全,介助なしの立位保持や歩行が不可能)を有していた.
神経障害,外傷,足変形の関与が63%以上に認められた(浮腫37%,虚血35%,胼胝30%).
足潰瘍発生率は8〜17%.神経障害検査(振動覚閾値,モノフィラメント,アキレス腱反射),足底圧検査(最大足底圧,関節変形)が足潰瘍発症の予測に有用.
神経障害,足変形,高足底圧,切断歴は足潰瘍発症のリスクファクター.PAD,腎疾患は難治性と切断に関連.
足潰瘍が73人(29%)に発症.神経障害スコアとモノフィラメント検査が足潰瘍ハイリスク患者の同定に最も有用.振動覚閾値や足底圧の測定も有用.
足潰瘍216件発症し,発生率は5.0/100人・年.HbA1c高値,視力障害,足潰瘍歴,切断歴,モノフィラメント触知不能などが予測因子.
263人(15.8%)に足潰瘍発症.高足底圧は足潰瘍のリスクファクターであるが,それ単独では発症予測のよい指標とはならない.
高足底圧(>6kg/cm2),神経障害は足潰瘍発症と関連.関節可動域と足底圧には民族差が存在するため潰瘍予測因子としての意義は民族により異なる.
透析治療は足潰瘍の独立したリ ス ク フ ァ ク タ ー で あ る
(OR 4.2[95%CI 1.7〜10],p=0.002).
若年発症の7.2%,成人発症の9.9%が 下 肢 切 断 .男 性 ,HbA1c高値,潰瘍既往,高齢,重症網膜症がリスクファクター.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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255
21)Adler AI et al, 1999コホート研究[レベル 2]
22)Margolis DJ et al, 2008後ろ向きコホート研究
[レベル 3]
23)Lehto S et al, 1996コホート研究[レベル 2]
24)Adler AI et al, 2010メタアナリシス
[レベル 2]
25)Sohn MW et al, 2009後向きコホート
[レベル 3]
26)Krishinan S et al 2008コホート研究[レベル 2]
27)van Houtum WH et al, 2004
横断研究[レベル 4]
28)Young MJ et al, 1994コホート研究[レベル 2]
29)Lavery LA et al, 2007RCT
[レベル 1]
アメリカ退役軍人糖尿病患者(776人)(アメリカ).
糖尿病患者(90,617人)(アメリカ).
糖尿病(NIDDM)患者(1,044人)(フィンランド).
糖尿病足切断患者(1,227人)(論文14件から)(イギリス).
Charcot関節を有する糖尿病患者1,050人(対照として年齢・性別・糖尿病臨床像をマッチングした足潰瘍を有する集団,足病変を有さない集団を設定)(アメリカ).
大規模な地区総合病院に入院した足の問題を持つすべての糖尿病患者(イギリス).
オ ラ ン ダ に お け る 1991〜2000年に下肢切断を受けた糖尿病患者(二次データベースから).
1988〜1989年にbiothesio-metryでVPTを測定した糖尿病患者333人(アメリカ).
糖尿病足潰瘍の既往のある173人を標準治療群,連日自己観察群,足温測定群に分けた.(アメリカ).
平均追跡期間3.3年(0〜5.8年)における下肢切断とリスクファクターの解析.
平均観察期間2.4年における足潰瘍,下肢切断と腎障害の関係を解析.
追跡期間7年における下肢切断と予測因子を解析.
HbA1cと下肢切断の関係を解析.
2003年から5年間観察し,死亡率を検討.
学際的フットケアチーム導入後11年間の糖尿病下肢切断率の変化を評価.患者データや切断術を含めた記録は週2回の調査によって収集.
下肢切断と入院期間の年次推移を解析.
足潰瘍の累積発生率とVPTの関連性を検討.
15ヵ月間の多施設研究で各群の潰瘍発症率を比較.標準治療と連日自己観察群は足の異常発見時,足温測定群は2.2℃以上の左右差で看護師に相談.
下肢切断リスクファクターはPAD,モノフィラメント触知不能,潰瘍,切断既往,インスリン治療.
2,619人が足潰瘍,378人が下肢切断.腎障害の進行につれて足潰瘍と下肢切断のリスクが増加.
男性の5.6%,女性の5.3%が下肢切断.高血糖,PAD,神経障害が切断の予測因子.
HbA1c 1%上昇あたりの下肢切 断 の RR は 1.26( 95%CI1.16〜1.36)(2型糖尿病では1.44,1型糖尿病では1.18).
28%が死亡し,糖尿病のみの死亡 率( 18.8%)は ,潰 瘍 あ り
( 37%),Charcot 関 節 患 者(28.3%)より低値.Charcot関節の63%に足潰瘍の既往があり,Charcot関節はそれ自体が独立して死亡リスクを増加させる.
一般人口において大切断の頻度は 7.4/1,000 人 ・ 年 か ら2.8/1,000人・年に62%減少.小切断のわずかな増加により総切断率の低下は40%にとどまった.糖尿病患者では総切断は 70%( 53.2→16.0/1,000人・年),大切断は82%(36.4→6.4/1,000人・年)減少した.
オランダでの糖尿病足病変による下肢切断は男性で36%,女性で38%減少.入院期間も減少.フットケアチームの数の増加と相関している可能性を示唆.
足潰瘍の累積発生率はVPT<15の 患 者 で2.9%<,VPT>25Vの患者では19.8%で,ORは7.99(3.65〜17.5,95%CI,p<0.01).罹病期間で補正してVPT<15 患 者 の OR は 6.82
(2.75から16.92).
標準治療群,連日自己観察群,足温 測 定 群 の 潰 瘍 発 生 率 は ,29.3%,30.4%,8.4%で,前2者の潰瘍発生は足温測定群を4.37倍,4.71倍であった.
論文コード 対 象 方 法 結 果
11 糖尿病足病変
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256
30)Rayman G et al, 2011横断研究
[レベル 4]
31)Malone JM et al, 1989RCT
[レベル 1]
32)Lincoln NB et al, 2008RCT
[レベル 1]
33)Bloomgarden ZT et al, 1987
RCT[レベル 1]
34)Stratton IM et al (UKPDS35), 2000
観察研究[レベル 2]
35)Jonasson JM et al, 2008コホート
[レベル 2]
36)Wukich DK et al, 2011前向きコホート研究
[レベル 2]
37)Gregg EW et al, 2014横断
[レベル 4]
糖尿病患者(265人)(イギリス).
足病変あるいは足潰瘍の既往を有する2型糖尿病患者(203人)
(アメリカ).
初回足潰瘍病変治癒後の糖尿病患者(172人)(イギリス).
インスリン治療中糖尿病患者(345人)(アメリカ).
イギリスUKPDS研究に参加した糖尿病患者(4,585人).
31,354人の1型糖尿病患者(スウェーデン).
外科手術を受けた糖尿病患者221人,糖尿病患者1,244人(アメリカ).
アメリカのNational HealthInterview Survey,NationalHospital Discharge Sur-vey,U.S. Renal Data Sys-temおよびU.S. National VitalStatistics Systemのデータ.
第1,第3,第5趾先端を軽く触る簡単な感覚テスト(IpswichTouch Test:IpTT)と 10gモノフィラメント(MF)の足病変危険状態(振動感覚閾値25V以上)を判別する能力を比較.
203人をGroup1:強化教育群(103人,203肢),Group2:非教育群(100人,193肢)に振り分け,足病変の発症率を評価.
フットケア教育を集中的に行った87人と通常治療を継続した85人に振り分け,足潰瘍の再発率,QOL,フットケア実施率および足切断予防効果につき検討.
糖尿病教育を集中的に行った165人とコントロール180人において各代謝パラメータ,足病変関連エンドポイントを比較.
全死亡,糖尿病関連死,心筋梗塞,脳卒中,足切断(PADによる死亡を含む),細小血管症(特に網膜光凝固),非致死性心不全,白内障についてHbA1c 1%低下あたりのリスク低下率を調べた.
1975年から2004年までの非外傷性の下肢切断例の比較.
足部・踵部手術後のSSIの発症率を評価.
1990〜2010年の下肢切断,末期腎不全,心筋梗塞,脳卒中,低血糖死など糖尿病関連合併症の発生頻度の変化を調査.
IpTTで左右6箇所中2箇所以上感じない場合をhigh riskとすると,IpTT,MFの感度は77%,81%で特異度は90%,91%,陽性予測値はIpTT 89%,MF91%,陰 性 予 測 値 は IpTT77%,MF 81%と同等であった.
下肢切断においてはGroup1( 7/177 肢 )に 比 較 し て ,Group2(21/177肢)において3倍高率であり,足潰瘍に関してもGroup1(8/177肢)に比較して,Group2(26/177肢)において3倍高率であった.
12ヵ月間で足潰瘍再発率やQOLに有意な差を認めず.フットケア教育強化群において足病変に対する予防行動の向上は認められた.
HbA1c,空腹時血糖,脂質代謝において両群間に有意な差は認めず,足病変スコアも両群間で変化を認めなかった.
HbA1c 1%によるリスク減少率は糖尿病関連のすべての転帰で21%,糖尿病関連死で21%,心筋梗塞で14%,細小血管症で37%であった.足切断(PADによる死亡を含む)に対するリスクン減少率は43%であった.HbA1cの閾値は観察されなかった.
2000〜2004年の切断リスクはそれ以前の0.6に減少.最近でも1型糖尿病患者は同年代の一般人口の86倍のリスクがあり,65歳までに非外傷性下肢切断に至る累積確率は女性で11%,男性で20.7%である.
SSI発症率は非糖尿病2.4%に対し,糖尿病9.5%と有意に高頻度.末梢神経障害,Charcot関節,喫煙歴,手術創の大きさが有意にSSIと関連した.
心筋梗塞は67.8%,低血糖死は64.4%,脳卒中は52.7%,下肢切断は51.4%,末期腎不全は28.3%減少.全人口10,000人あたりの発生率では心筋梗塞が27人,低血糖死が0.1人減少したが,脳卒中,下肢切断,末期腎不全の発生率は減少しなかった.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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257
38)Edmonds ME et al, 1986症例集積
[レベル 4]
39)Apelqvist J et al, 1993コホート研究[レベル 2]
40)Ismail K et al, 2007コホート研究[レベル 2]
41)Waaijman R et al, 2014コホート
[レベル 2]
42)Bus SA et al, 2011横断研究
[レベル 4]
43)Garrow AP et al, 2005症例集積
[レベル 4]
44)Maciejewski ML et al, 2004
システマティックレビュー[レベル 2]
45)Prompers L et al (EURO-DIALE Study), 2008
コホート研究[レベル 2]
神経障害性足潰瘍(238人),虚血性足潰瘍(148人)(イギリス).
糖尿病足潰瘍患者558人(スウェーデン).
成人糖尿病患者において足潰瘍をはじめて発症した253人(イギリス).
神経障害および最近の足底の潰瘍性病変の既往を有する患者171人(オランダ).
23人の神経障害を有する患者(オランダ).
足潰瘍を合併しない糖尿病神経障害患者19人(イギリス).
糖尿病足潰瘍発症予防に関する治療靴についての論文9件.
ヨーロッパ10ヵ国14病院の糖尿病足潰瘍患者(1,088人).
糖尿病足専門クリニック(医師,足治療士,看護師,シューフィッター)の治療成績に及ぼす影響に関する検討.
平均追跡期間4年における足潰瘍再発率,累積切断率,死亡率を検討.
対象を18ヵ月観察し,死亡率,累積切断率,足潰瘍再発率,精神状態を評価,互いの関連を併せて検討.
カスタムメイドの治療靴を使用し,18ヵ月または足潰瘍の再発まで観察し,リスクファクターを評価.
靴内の動的圧分布を評価,完全個別カスタム化した治療用靴での足底への圧負荷の軽減が可能であるかを評価.
F-Scanを用いた靴内足底圧測定を用いて,多層性のPFCソックスと市販されているソックスを比較.
糖尿病足潰瘍発症予防における治療靴の有効性に関する検討.
1年間の観察期間における難治性潰瘍の実態と末梢動脈疾患
(PAD)との関係を解析.
神経障害性潰瘍の86%,虚血性潰瘍の72%が治癒.大切断は足クリニックの診療開始後に減少.再発率は治療靴作製群で26%(作製しなかった群では83%).
潰 瘍 再 発 率 は 34%/1 年 ,61%/3年,70%/5年.累積切断率は切断既往歴(-)群で3%/1年,10%/3年,12%/5年,切断既往歴(+)群で13%/1年,35%/3年,48%/5年(p<0.001).死亡率はスウェーデンの一般対照人に比し,切断(-)群で2倍,切断(+)群で4倍.
患者の8.1%にminor depres-sion が ,24.1%に major de-pressionが認められ,15.8%が死亡,15.5%が切断,43.3%に足病変の再発を認めた.また,Depressionを有する集団においては死亡率が約3倍と高値であった.
71人が足潰瘍を再発.発症リスクは小病変,歩数の変動,潰瘍の既往,再発リスクは上記に加えて靴内,素足での足底圧上昇.圧分散靴で潰瘍再発リスクを抑制できる可能性示唆.
完全個別カスタム化した治療用靴によって約30%の圧負荷軽減を確認.
多層性PFCソックス着用において,足底との最大接触面積において11cm2の増加が認められ,その結果5.4kPa(9%)の靴内足底圧の減少が確認された.多層性PFCソックスが足底圧負荷軽減する.
RCTで効果を認めなかった報告もあるが,治療靴で足潰瘍予防効果を示した研究が多い.特に著明な足変形や足趾・中足骨切断症例では有意な予防効果がある.
1年後,足潰瘍の23%が治癒せず.治癒遷延の予測因子は高齢,男性,心不全,介助なしでは歩行不可能,末期腎不全,より大きな潰瘍,神経障害,PAD.PADに感染が合併するとより難治性潰瘍になる.
論文コード 対 象 方 法 結 果
11 糖尿病足病変
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46)Margolis DJ et al, 2000メタアナリシス
[レベル 1]
47)Margolis DJ et al, 2002コホート研究[レベル 2]
48)Lavery LA et al, 2006前向きコホート研究
[レベル 2]
49)Ramakant P et al, 2011観察研究
[レベル 4]
50)Nelson EA et al, 2006メタアナリシス
[レベル 2]
51)Crouzet J et al, 2011システムレヴュー
[レベル 1]
52)Butalia S et al, 2008メタアナリシス
[レベル 2]
53)Morales Lozano R et al, 2010
横断研究[レベル 4]
54)Lázaro-Martínez JL et al, 2014
RCT[レベル 1]
神経障害性足潰瘍を有する糖尿病患者(白人 586人)(RCT 5件).
神経障害性足潰瘍を有する糖尿病患者(31,106人)(アメリカ).
糖尿病患者(1,666人)(アメリカ).
1991〜 2008年 に 入 院 し た447人の糖尿病足潰瘍患者から連続3回採取された計1632個の培養検体(インド).
糖尿病足潰瘍の抗菌薬治療に関する研究 23件(欧米人).
品質とエンドポイントの面で1999〜2009年の間の糖尿病足感染症の抗生物質治療のランダム化比較試験をレビュー.
糖尿病患者の下肢骨髄炎に関する論文279件から21件を選択.
2.5年間に臨床的に感染が疑われた外科治療された足潰瘍患者132人(スペイン).
糖尿病足病変を基礎に有する下肢骨髄炎患者52人(スペイン).
20週間の標準的な創傷ケア,デブリードマン,免荷治療を行い,治癒遷延因子について検討.
20週間の標準的な創傷ケアで治療を行い,治癒期間関連因子について検討.
糖尿病患者における足感染症のリスクファクターを解析.
1999年前後で起因菌,抗生剤の感受性を比較.
糖尿病足潰瘍の抗菌薬治療の効果について検討.
論文123件から研究 14件が採用された.
糖尿病患者における骨髄炎の診断について検討.
骨の組織所見で骨髄炎を診断して,Probe-to-Bone test(PTB:先端が鈍なゾンデを潰瘍に挿入して骨が触れれば陽性)の骨髄炎診断能を評価.
抗生剤治療群(AG:25人)と下肢温存手術施行群(SG:27人)間で治療効果を比較したランダム化比較試験.
よ り 小さ い 潰瘍(OR 0.67,95%CI 0.55〜0.81),発症してからの期間が短い潰瘍(OR0.73,95%CI 0.61〜0.87)では標準的な治療で治癒できる可能性が高い.年齢,HbA1c,性別は治癒機転に関連しない.
潰瘍の面積,存在期間,重症度(深達度,膿瘍,骨髄炎,壊死,壊疽)が治癒期間と関連する.
足感染症のリスクファクターは骨に達する深い創傷,30日以上治癒しない慢性創傷,再発創傷,外傷,PADの合併.
66%が polymicrobial, 23%がmonobialで,グラム(G)陰性が14%,G陽性は9%.1999年前後でピペラシリン,セフォペラゾン,セフトリアキソン,アモキシシリン,クリンダマイシンの感受性率は有意に低下.足感染はG陰性が主,多剤耐性G陰性細菌も一般的.
足切断からの救肢,感染の軽快,潰瘍の治癒という点で特に推奨される抗菌薬の種類や投与方法についてのエビデンスはない.
研究デザイン,組み入れ基準,統計手法,定義の違い,臨床的,生物学的なエンドポイントが各研究により異なることが,それぞれを比較すること,糖尿病足感染症に最適なレジメを決定することを困難にしている.
2cm2以上の潰瘍面積,ゾンデが骨に達する深い潰瘍,赤沈>70mm/hr,単純X線およびMRIの異常所見は骨髄炎の診断に有用.MRI所見が正常ならば骨髄炎は否定的.
79.5%の骨髄炎と診断された.X線所見や臨床症状のなかでPTBが最も有用で,感度98%,特異度78%,陽性適中率95%,陰性適中率91%であった.
AG群とSG群の骨髄炎の治癒率(75% vs. 86%),治癒に要した 期 間( 7 weeks vs. 6weeks),に有意差はなく,小切断率や悪化率でも有意な差を認めなかった.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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55)Pomposelli FB et al, 2003
後ろ向きコホート研究[レベル 3]
56)Adam DJ et al (BASIL), 2005
RCT[レベル 1]
57)Faglia E et al, 2006後ろ向きコホート研究
[レベル 3]
58)Armstrong DG et al, 2012
前後比較試験[レベル 3]
59)Faglia E et al, 2013後向き比較試験
[レベル 3]
60)Greer N et al, 2013システマティックレビュー
[レベル 1]
61)Armstrong DG et al, 2005
RCT[レベル 1]
62)Löndahl M et al, 2010RCT
[レベル 1]
63)Holstein P et al, 2000横断研究
[レベル 4]
1990〜2000年に足背動脈にバイパス術を施行されたPAD患者(865人)(うち糖尿病患者は92%)(アメリカ).
鼠径部より末梢病変の重症下肢虚血患者(452人)(うち糖尿病は42%)(イギリス).
重症下肢虚血を合併した糖尿病患 者(564人 )(血 管 内 治 療74.5%,バ イ パ ス 術20.7%)
(イタリア).
糖尿病足病変に対する外科手術をうけた374人(790件),502件は血流再建を伴わない手術,288件は血管再建術.(アメリカ).
糖尿病足病変による骨髄炎350人(イタリア).
MEDLINE,Cochran Libraryで検索.抽出した,成人の難治性皮膚潰瘍に対する先進的治療法の効果を調べた無作為化試験の英語論文.糖尿病足潰瘍を対象とした試験は35件(9種の治療法)の論文が該当.多くは欧米での検討.
足部分切断術を受けた糖尿病患者(162人)(18施設,アメリカ).
難治性糖尿病足潰瘍患者(94人 )(WagnerⅡ〜 Ⅳ,潰 瘍 が3ヵ月以上治癒していない症例,スウェーデン).
1981〜1995年に糖尿病足病変で大切断となった患者463人
(デンマーク).
糖尿病患者虚血肢の足背動脈へのバイパス術が救肢率,生存率に与える影響についての検討.
バイパス術群と血管内治療群に分けて各々の治療成績を比較検討.
重症下肢虚血患者の血行再建術,大切断術,生存率と関連リスクファクターを検討.
48ヵ月間に糖尿病足病変に対する外科手術あるいは血管再建術をうけた患者で,足外科と血管外科を統合した救肢チームのサービス開始前後24ヵ月のアウトカムを比較.
骨 髄 炎 発 症 部 位( 前 足 部85.7%,中足部7.7%,後足部6.75%)と下肢切断を要した割合について検討.
個々の治療法について,試験の統計学的不均一性を評価し,潰瘍治癒の主要アウトカムの絶対リスクを算出,エビデンスレベルを決定した.
陰圧閉鎖療法(VAC)群77人と標準的な創傷ケア施行群85人に分けて創部の治癒期間を検討.
高圧酸素療法(HBOT)群49人と対照群45人に分けてHBOTの効果を検討[RCT後12ヵ月まで観察].
大切断の年次推移と血行再建術の効果についての検討.
救肢率は78.2%/5年,57.7%/10年と良好な成績(生存率は48.6%/5年,23.8%/10年).
2群間で大切断または死亡に至るまでの期間に差はなかった.
血管内治療74.5%,バイパス術20.7%.大切断は55人で施行.大切断は血行再建しなかった例,下腿動脈閉塞例,創部感染例,透析例で多い.死亡例は高齢,心疾患,透析,血行再建術不適応と関連.
統合的な外科チーム医療の開始後,緊急手術は78%から49%に減少.Midfoot切断が8.2%から26.1%に増加し,上位切断の比率は.035から0.27に低下.膝下切断は45.7%減少.血管再建術は44%増加.
下肢切断を要した割合はそれぞれ ,前 足 部 0.33%,中 足 部18.5%,後足部52.2%であり,後足部の骨髄炎が突出して下肢離断を要する可能性が高かった.
中等度以上のエビデンスレベルで有効性が認められたのは,ある種の生物学的人口皮膚と陰圧創傷治療法であった.
VAC群で創部の治癒期間が短かった.糖尿病足病変の治癒機転を促進させる可能性.
HBOT 群 の 52%,対 照 群 の27%が治癒(p=0.03).
大切断は75%減少.下肢血行再建術(バイパス術)は7倍増加.チーム医療(血管外科医,糖尿病内科医,専門看護師,足治療士,整形靴装具士)の効果を示唆.
論文コード 対 象 方 法 結 果
11 糖尿病足病変
糖尿病GL2016組版ss.qxp_糖尿病GL2016 2016/04/28 17:08 ページ 259
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糖尿病診療ガイドライン2016,南江堂,2016
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64)Weck M et al, 2013非ランダム化比較試験
[レベル 3]
65)Valensi P et al, 2005横断研究
[レベル 4]
66)Ribu L et al, 2008コホート研究[レベル 2]
67)Ribu L et al, 2007横断研究
[レベル 4]
68)Nabuurs-Franssen MH et al, 2005
コホート研究[レベル 2]
69)Siersma V et al, 2014コホート研究[レベル 2]
2000年1月〜2007年12月に集学的チーム治療システムで治療した684人と通常治療の対照群508人の糖尿病足病変患者
(ドイツ).
239人の潰瘍合併糖尿病患者(1群)と116人の潰瘍非合併糖尿病患者(2群)で横断研究を実施.(フランス).
127人の外来足潰瘍患者(ノルウェー).
6病院から集められた127人の糖尿病潰瘍患者,221人の対照糖尿病患者,5,903人の一般人
(ノルウェー).
4週以上潰瘍のある294人の患者と153人の介護者.重症足虚血例は除外した.(オランダ,多施設研究).
新しい足潰瘍を持つ患者1,088人,ヨーロッパ10ヵ国の14施設.
2年間の観察期間で両群の大切断数,潰瘍治癒率,死亡率を比較.足潰瘍はテキサス分類で評価・解析された.
糖尿病潰瘍患者の社会人口学的,臨床的特徴をHRQL質問票
(SF-36)で調査.1群での潰瘍の重要度はWagner分類,疾患特 異 的 HRQL は DiabetesFoot Ulcer Scale(DFS)で評価.
1年の追跡期間で足潰瘍治癒群と 残 存 群 の 健 康 関 連 QOL
(HRQL)を比較.ベースライン,6月後(T(2)),12月後(T(3))に自己記入HRQL質問票(SF-36)を実施.
糖尿病足潰瘍と社会人口学的特徴(性,年齢,住居,教育,雇用)やライフスタイル(BMI,喫煙)および健康関連QOL(HRQL)の関連を質問票(SF-36)で調査.
観察開始時(T0),潰瘍治癒あるい は20週 後(T1),3ヵ 月 後
(T2)に健康関連QOL(HRQL)を質問票SF-36で調査.
最大1年間観察し,治癒,切断,死亡と健康関連QOL(HRQL;EQ-5とVASで評価)の関連を多変量Cox回帰分析で調査.
集学治療群の大切断例32人( 4.7%)は 対 照 群 の 110 人( 21.7%)よ り 有 意( p<0.0001)に低値で,集学治療で大切断例が75%減少した.入院中死亡率も集学治療群の2.5%,対照群で9.4%で有意差(p<0.001)を認めた.
2群と比べて1群のSF-36は全ドメインで有意に低値.DFSドメインのHRQL良好度とWag-ner重症度(OR 0.136[0.029〜0.467]),潰瘍数(OR 0.365
[0.191〜0.678]).有意な負の関連性を示す.足潰瘍は余暇活動の制限と関連.
T3 時 ,潰 瘍 残 存 35%,治 癒37%,切断6%,死亡7%,ベースライン時の全般的健康感,T2時の身体機能,全般的健康感,社会生活機能,T3時の5/8個のSF-36下位尺度で治癒群と残存群の間に有意差がみられ,潰瘍治癒とともに社会生活機能と心の健康のHRQLも改善し,潰瘍残存は社会生活機能の悪化と関連した.
潰瘍患者のHRQLは全スケールで一般人口より低下.潰瘍患者の身体的日常役割機能制限,身体機能,全般的健康観は潰瘍のない糖尿病群よる低下.潰瘍は男性,肥満者に多く,高齢,独居,低教育,無職が関連.
T1時,潰瘍治癒群の身体機能,社会生活機能のスコアは非治癒群より有意に高値.T2時,身体的日常役割機能,身体機能総合スコアにも有意差が出現.T0からT2の経過中に治癒群のスコアは改善,非治癒群では悪化.非治癒群の介護者はT2時に精神的負担を感じた.
交絡因子の調整後でもHRQLは潰瘍治癒を予測はできず.低HRQL,特に身体ドメインの「移動」,「自己管理」と「日常活動」は大切断と,「自己管理」,「日常活動と痛み/不快」は死亡の有意な予測因子であった.低HRQLは大切断と死亡の予測因子だが,高HRQLは潰瘍治癒とは関連しない.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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70)Brownrigg JR, 2012メタアナリシス
[レベル 2]
71)Iversen MM et al, 2009コホート研究[レベル 2]
72)Margolis DJ et al, 2008コホート研究[レベル 3]
糖尿病足病変と心血管イベントおよび全死亡率との関連を評価した欧米の8報告の(計81116人/年)メタアナリシス.
足潰瘍の既往を有する糖尿病患者155人,既往を有さない糖尿病患者1,339人,非糖尿病者63,632人(ノルウェー).
2002〜2006年に登録された35歳以上の糖尿病患者90,617人(アメリカ).
8報告で計81,116人/年をフォローアップし3,619人で心血管イベントを確認.糖尿病性病変と総死亡率,心血管イベント発症率,脳梗塞の発症率との関連を評価.
死亡率をエンドポイントとし,3集団を10年間経過観察.
集団をCKD分類によって分類し,経過観察.中間観察期間は2.4年.
糖尿病足病変合併者のRRは総死亡で1.89,致死的心筋梗塞で2.22,脳梗塞で1.41で有意に上昇.
10年の死亡率は足病変既往群49%,既往なし群35.2%,非糖尿病群で10.5%.Cox回帰分析にて,足病変既往群は非糖尿病者に比べて2.29倍,足病変なし群に比べて1.47倍の死亡リスクの上昇を確認.
2,619人が足潰瘍を有し,378人が下肢切断.CKD分類G3以上の症例は23,350(26%).足潰瘍発症リスクはG1.2を対照とした場合,G3でHR 1.85,G4以上でHR 3.92.下肢切断リスクはG3でHR 2.08,G4以上でHR 7.71.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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