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第19回東予看護研究会2017年9月21日(木)19:15~20:15
ユアーズ2階「高砂」
VA管理を透析処方と透析室で考えてみる
医療法人 心信会池田バスキュラーアクセス・透析・内科
池田 潔
*3点以上でDSA or PTAを検討
1) 異常なし
2) 狭窄音を聴取
3) 狭窄部位を触知
4) 静脈圧の上昇160mmHg以上
5) 止血時間の延長
6) 脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
7) 透析後半1時間での血流不全
8) シャント音の低下
9) ピロー部の圧の低下
10) 不整脈
0
1
2
(自家:1,グラフト:3)
2
5
1
(自家:2,グラフト:3)
2
1
Co-medical staff のために
表1:シャント トラブル スコアリング (S.T.S) 第Ⅰ版
臨床透析:「インターベンション治療ー適応範囲と新しい器材・技術の発展ー」2005;21
医)心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科
2010年9月1日 開院
2017年9月1日現在の状況
・腎臓内科
保存期外来;180人
外来維持透析導入;42人
・人工透析
通院維持透析;122人
在宅透析;10人
医師;2名看護師;21名工学技士;8名検査技師;3名メディカルクラーク;3名看護助手;6名事務;5名
透析室1F:34台、2F:15台
管理栄養士 臨床工学技士 看護師
医師
メディカルクラーク
手術室とCアーム
(件数)
図1:OPE・PTA件数
73
267
315 323
399376 380
27
91
96 98
117118 126
2
14
12 17
1218 33
0
100
200
300
400
500
600
2010/9/1-12/31 2011/1/1-12/31 2012/1/1-12/31 2013/1/1-12/31 2014/1/1-12/31 2015/1/1-12/31 2016/1/1-12/31
PTA(2,133件) OPE(673件) カテーテル(108件)
期間:2016年1月~12月
当院患者33人、平均1.9回
図2:PTA患者の紹介元医療機関
当院
63件17%
他院
317件83%
福岡市
246件78%
福岡市以外49件15%
他県
22件7%
本日の話題
① 在宅透析患者の特徴と処方について② BCMの有用性と使い方③ 加圧式VAマッサージを透析室で行う。④ 在宅カテーテル透析によってアクセス
穿刺負担の低減⑤ まとめ
0
100
200
300
400
500
600
19
75
19
76
19
77
19
78
.6
19
79
.6
19
80
19
81
19
82
19
83
19
84
19
85
19
86
19
87
19
88
19
89
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
20
12
20
13
20
14
20
15
わが国のHHD患者の推移
1998年4月保険収載
2010年4月保険改定
※図説わが国の慢性透析療法現況(2014) 日本透析医学会統計調査委員会より編集
海外のHHD患者数(比率)
1.8
4.3
9.3
18.4
4.2
0.10
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
分類 1
米国 カナダ オーストラリア ニュージーランド 英国 日本
2010年9月開院
2015年2月よりHHD開始
2017年3月現在10名のHHDを管理中
HHDでのバスキュラーアクセス
長期留置カテーテル 5名
自己穿刺 5名
日機装社製 DBB-100NX(D-FAS機能有)
在宅血液透析支援システム(タブレット)
Webカメラでの画面監視(スマカメ)
池田バスキュラー 検索当院の詳細は
患者 性別 年齢 透析歴 在宅透析歴 穿刺方法
M.M M 60 8年 9か月 1年 6か月 カテーテル
B.H M 55 5年 0か月 2年 1か月 カテーテル
W.S M 67 6年 9か月 1年10か月 カテーテル
A.C F 60 17年11か月 1年 6か月 カテーテル
O.A F 50 5年 2か月 1年 0か月 自己穿刺
U.A M 58 5年 1か月 8か月 自己穿刺
F.S M 52 6年11か月 7か月 自己穿刺
I.E F 62 14年 9か月 4か月 自己穿刺
U.S F 50 10年 3か月 1か月 自己穿刺
K.C F 39 7年 1か月 トレーニング中 カテーテル
当院の在宅血液透析患者一覧 (2017.9.1現在)
在宅透析開始前後の比較
80
100
120
140
160
180
200
220
開始前 開始後
透析前収縮期血圧
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
開始前 開始後
エポ
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
開始前 開始後
DW-NH
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
開始前 開始後
OH
在宅透析開始前後の比較
0
50
100
150
200
透析前収縮期血圧
開始前 開始後
p<0.01
0
2000
4000
6000
8000
10000
エポ
開始前 開始後
n.s.
-2.5
-2
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
DW-OH
開始前 開始後
n.s.
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
OH
開始前 開始後
n.s.
通院透析 月14回の保険上の制約HDP<3X3X6
在宅透析 毎日24時間いつでも可能(水下水道代と電気代が月に2-3万円アップ)自宅での配管の設置、部屋の確保、トレーニングに3ヵ月
HDP>7X7X3
通院透析と在宅透析の違い
透析量が異なる
降圧剤投与量の変化とHDP(透析回数の2乗X透析時間)
患者 性別 年齢 HDP 在宅透析歴 降圧剤
M.M M 60 144 1年 6か月 アムロジン(7.5)⇒中止
B.H M 55 122.5 2年 1か月 服用なし
W.S M 67 100 1年10か月 服用なし
A.C F 60 96 1年 6か月オルメテック(40)⇒中止アムロジン(10)⇒中止
O.A F 50 75 1年 0か月 服用なし
U.A M 58 100 8か月 アーチスト(20)⇒中止
F.S M 52 162 7か月 服用なし
I.E F 62 170.5 4か月 服用なし
U.S F 50 147 1か月オルメテック(20)(10)⇒中止アムロジピン(5)(2.5)⇒中止
透析方法の違いによるエポ投与量の比較
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000HHD開始前
カテーテル 自己穿刺
n.s.
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000HHD開始後
カテーテル 自己穿刺
n.s.
透析方法の違いによるエポ投与量の比較
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
カテーテル
HHD開始前 HHD開始後
n.s.
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
自己穿刺
HHD開始前 HHD開始後
n.s.
維持透析患者の管理① VAの管理② DWの設定③ 検査データの管理(透析効率等)④ 副甲状腺のチェック(MBD)⑤ 心機能のチェック⑥ 足病のチェック⑦ 悪性疾患早期発見のための検査(消化管の定期検査、全身CT等)
⑧ 骨そしょう症の管理⑨ 頸動脈のチェック⑩ 認知症の管理⑪ 通院状況の管理
心胸郭比(CTR)
血圧(BP)
透析後の下大静脈径の測定(IVC)
BCM検査(examination of BCM)
DWの指標
本日の話題
① 在宅透析患者の特徴と処方について② BCMの有用性と使い方③ 加圧式VAマッサージを透析室で行う。④ 在宅カテーテル透析によってアクセス
穿刺負担の低減⑤ まとめ
BCM®は電気抵抗の原理を使った体組成分析装置である。
体内に微弱な電流を流し、その電気抵抗を利用して水分量や体脂肪、筋肉量を間接的に求める最新の方法が採用されている。家庭用体脂肪計を想像するとわかりやすい。
電気は水分に沿って流れ、水分の量によって伝導性が違う。・脂肪の多い人(筋肉の少ない人)⇒電気抵抗値が大きい・脂肪の少ない人(筋肉の多い人)⇒電気抵抗値が小さい
この電気抵抗値の違いを元に分析し、数値で示される。
BCM®体組成分析装置について・・・
計測方法
* BCM:Body Composition Monitor
<基礎情報の入力>①身長②体重③年齢④性別
BCM(BodyCompostionMonitor:体組成計)
70 60 54
13.418
30
0%
20%
40%
60%
80%
100%
新生児(3.5kg) 成人(70kg) 高齢者(65kg)
年齢による体水分の変化
水分 たんぱく 脂肪 無機塩類
脂肪
細胞の中
細胞の外
脂肪以外
筋肉
細胞の中
細胞の外
皮膚・臓器・必須脂質骨・ミネラル
過剰水分
BCM
血圧
心胸比 脂肪
細胞の中
細胞の外
脂肪以外
筋肉
細胞の中
細胞の外
皮膚・臓器・必須脂質骨・ミネラル
過剰水分
ドライウエイト
すべての結果を考慮し、DWを評価していく。
狭窄と閉塞の原因
#1 過凝固状態#2 血圧低下による閉塞#3 有意狭窄部位の放置#4 強度の圧迫#5 穿刺ミスによる血腫形成#6 静脈圧上昇の放置
*3点以上でDSA or PTAを検討
1) 異常なし
2) 狭窄音を聴取
3) 狭窄部位を触知
4) 静脈圧の上昇160mmHg以上
5) 止血時間の延長
6) 脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
7) 透析後半1時間での血流不全
8) シャント音の低下
9) ピロー部の圧の低下
10) 不整脈
0
1
2
(自家:1,グラフト:3)
2
5
1
(自家:2,グラフト:3)
2
1
Co-medical staff のために
表2:シャント トラブル スコアリング (S.T.S) 第Ⅰ版
臨床透析:「インターベンション治療ー適応範囲と新しい器材・技術の発展ー」2005;21
(症例) H.Y 73才・Female
原疾患: 高血圧性腎硬化症
病 歴 : 2015年5月12日 HD導入
シャント作成 2015年3月6日
第1回PTA 2015年10月27日
C T R : 45.9%
PTAの経過
PTA施行日 来院理由
2015年 10月27日 血流不足・狭窄
2016年 2月 3日 狭窄
5月17日 後半 血流不足
6月23日 狭窄
9月22日 狭窄
11月 1日 閉塞
12月10日 閉塞
12月30日 狭窄
体組成分析
初診:2015年10月27日
DW-NH(乾燥体重-理想体重)
0.1kg
DW(乾燥体重)
46.8kg
NH-Weight(理想体重)
46.7kg
Weight(測定時体重)
47.0kg
Overhydration 0.3L
BMI(肥満係数)
22.0kg/㎡
PTAの経過とBCM値
PTA施行日 来院理由 BCM検査日 BCM値
2015年 10月27日 血流不足・狭窄 10月27日 0.1kg
2016年 2月 3日 狭窄 3月 8日 -1.6kg
5月17日 後半 血流不足 5月 7日 -0.5kg
6月23日 狭窄 6月21日 -0.5kg
9月22日 狭窄 9月22日 -0.4kg
11月 1日 閉塞 11月 1日 -0.1kg
11月17日 0.6kg
12月10日 閉塞 12月10日 -0.6kg
12月30日 狭窄 12月30日 -0.6kg
2017年 1月12日 -0.6kg
3月14日 -0.6kg
左透視下PTA(2016.11.1)
同じ体重の人でも筋肉量や脂肪量は違うため、DWも違う。BCM®体組成分析装置では体液過剰・不足量(OH)が測定できるので、透析患者のDWを設定す
る上で必要な値が得られ、判断材料とすることができる。
過剰水分がない状態が理想のDWであるため、当院では、 DW=理想体重+OH と設定している。
DWの設定
【症例】56歳男性、透析歴12年【経過】他院で透析中週末、ボランティアでかなり汗をかいたしかも下痢していた途中でシャントの痛みを感じていた
翌日の透析室で、シャント閉塞を指摘され紹介
心胸比 48%
150
100
透析記録
心胸比 48%
150
100
透析記録
(kg)
72.0
73.0
74.0
75.0
76.0
77.0
DW 73.0
78.0
(kg)
72.0
73.0
74.0
75.0
76.0
77.0
DW 73.0
78.0
BCM検査理想DW77.1
(kg)
72.0
73.0
74.0
75.0
76.0
77.0
DW 73.0
78.0
BCM検査理想DW77.1
4.1kgの過剰除水
気分不良
嘔吐
下痢
冷汗
血圧低下
VAIVT
点滴; 生食500+ウロキナーゼ6万単位
不知火5㎜
VAIVT
点滴; 生食500+ウロキナーゼ6万単位
不知火5㎜
VAIVT
流量530ml/min 不知火5㎜
【経過】リカバリー室で休憩
【経過】リカバリー室で休憩排便後にシャント音ほぼ消失
【経過】リカバリー室で休憩排便後にシャント音ほぼ消失
生食500cc点滴シャントマッサージ追加し血流再開
さらに生食500ccゆっくり追加しシャント勢いづく
心胸比 48% 心胸比 48%
VAIVT前 VAIVT・点滴後
心胸比 48% 心胸比 48%
VAIVT前 VAIVT・点滴後
今週もボランティア活動がある
心胸比 48% 心胸比 48%
VAIVT前 VAIVT・点滴後
今週もボランティア活動があるであれば、それなりにDWのアップが必要と思われる
【症例】44歳男性腹膜透析7年血液透析歴2年【現病歴】かかりつけの透析室に来院した際シャント閉塞を指摘され当院へ紹介
【症例】44歳男性腹膜透析7年血液透析歴2年【現病歴】かかりつけの透析室に来院した際シャント閉塞を指摘され当院へ紹介
右前腕AVF
心胸比 34%
150
100
透析記録
【経過】生食500cc・ウロキナーゼ6万単位点滴微弱ながら血流再開血流量170ml/min
VAIVT前
VAIVT前 不知火4mm
VAIVT前 不知火4mm
VAIVT前 不知火4mm
VAIVT前 VAIVT後
VAIVT前 VAIVT後
血流量400ml/min
【経過】5日後、また閉塞したと電話連絡あり
心胸比 34%
心胸比 34%
透析後半、血圧低下
大声発し意識消失早期回収する回収中、顔色不良回収後、追加補液200ml
意識戻る
透析記録
気分不良
嘔吐
下痢
冷汗
血圧低下
【経過】生食500cc・ウロキナーゼ6万単位血流微弱ながら再開
【経過】生食500cc・ウロキナーゼ6万単位血流微弱ながら再開
さらに生食500ccゆっくり点滴VAIVTなしで血流量400ml/minへ改善帰宅となるもう少しDWアップしていただく
n=216 n=139
0.0
0.2
-0.4
-0.6
-1.0
-0.2
-0.8
0.4
(Kg)
理想D
W
との差
+0.13kg
-0.96kg
当院通院中の透析患者 BCM結果
VAIVT歴ない群 VAIVT歴ある群
n=216 n=139
0.0
0.2
-0.4
-0.6
-1.0
-0.2
-0.8
0.4
(Kg)
理想D
W
との差
+0.13kg
-0.96kg
当院通院中の透析患者 BCM結果
VAIVT歴ない群 VAIVT歴ある群
n=216 n=139
0.0
0.2
-0.4
-0.6
-1.0
-0.2
-0.8
0.4
(Kg)
理想D
W
との差
+0.13kg
-0.96kg
当院通院中の透析患者 BCM結果
VAIVT歴ない群 VAIVT歴ある群
n=216 n=139
0.0
0.2
-0.4
-0.6
-1.0
-0.2
-0.8
0.4
(Kg)
理想D
W
との差
+0.13kg
-0.96kg
当院通院中の透析患者 BCM結果
VAIVT歴ない群 VAIVT歴ある群
(kg)
-1.0
-0.5
±0
+0.5
+1.0
BCM検査理想DW
+1.5
-1.5
DW設定
(kg)
-1.0
-0.5
±0
+0.5
+1.0
BCM検査理想DW
+1.5
-1.5
DW設定
頻回のVAIVT症例
(kg)
-1.0
-0.5
±0
+0.5
+1.0
BCM検査理想DW
+1.5
-1.5
DW設定
頻回のVAIVT症例
BCMによる理想的なDW設定
BCMによる理想的なDW設定
透析室からのVA管理
2015年;74.2%
2014年;39.6%
P=NS
【Result ②】
<patency period>
Patency ratio
表1 BCM値の比較
期間:2016.3.1-2017.2.28
<全患者>
n 平均 SD
外来PTA患者(狭窄) 329 0.07 1.49
外来PTA患者(閉塞) 81 -0.32 1.69
有意差 p<0.05
n 平均 SD
当院維持患者PTA(+) 32 0.35 1.23
外来PTA患者(狭窄) 329 0.07 1.49
有意差 n.s.
n 平均 SD
当院維持患者PTA(+) 32 0.35 1.23
外来PTA患者(閉塞) 81 -0.32 1.69
有意差 p<0.05
①
②
③
BCMのまとめ
#1 BCMによる体液量の管理を導入することで過剰除水からの閉塞の回避に有用である可能性が示唆された。
#2 -0.5kg<BCM<+1.0kg 内で検討中
この範囲で、心胸比が50%以下であれば、血圧調整に降圧剤の使用を優先させる。心胸比50%以上ならこの範囲内でDWを調整する。
本日の話題
① 在宅透析患者の特徴と処方について② BCMの有用性と使い方③ 加圧式VAマッサージを透析室で行う。④ 在宅カテーテル透析によってアクセス
穿刺負担の低減⑤ まとめ
【加圧式VAマッサージ(PVM)とは】
~ポイント~当院の加圧式VAマッサージは、両手で狭窄部位を挟むようにして行う。①片方の手は狭窄の中枢でシャントの流れを一時的に遮断。②もう片方の手で末梢から血管を加圧する。
※これにより狭窄部位の血管を伸展させる方法である。
週3回、穿刺前に狭窄部位へのPVMを30~60秒施行
上流から狭窄病変へ血液を送り込む
【加圧式VAマッサージ(PVM)とは】
動画
狭窄病変(加圧ポイント)
加圧式VAマッサージ
右前腕AVF
未滅菌手袋
加圧式VAマッサージ(上腕)
右前腕AVF
上腕の狭窄
加圧式VAマッサージ(前腕)
駆血なし
右前腕AVF
加圧式VAマッサージ(吻合部直上)
左前腕AVF
エコー用ゼリー
加圧式VAマッサージ(グラフト吻合部)
左前腕AVG
グラフト静脈吻合部
<PVM効果による血管イメージ>
【加圧式VAマッサージ(PVM)とは】
狭窄病変を加圧動画
内側から加圧することで、血管を伸展させる
【対象】
(1) PTA歴がある
(2) 自己血管内シャント(AVF)
(3) 吻合部以外の狭窄を認める
(4) 血栓形成のない内膜肥厚型の狭窄病変
上記の項目に該当する当院維持透析患者:14名
観察期間:2013年11月~2016年10月(36ヵ月間)
【方法】①PVM介入前後1ヶ月におけるVA超音波検査
(以下、エコー)データの平均を改善率として算出※急性効果も併せて報告
②PVM介入前後での3ヵ月開存率を算出し比較
(Kaplan-Meier)
③PVM介入前後での開存期間が3ヵ月未満症例数
の割合を比較
<当院でのVAIVT基準>3ヵ月ルールを50%以上がクリアできる基準として血管エコー検査『FV≦500、RI≧0.65、PI≧1.6、狭窄径≦1.6mm』を適用
【結果①】VAエコー検査データ比較(PVM介入前後1ヵ月)
血流量(mL/min)
0
200
400
600
800
1000
1200
PVM開始前 PVM開始後
P<0.05
693.33±266.13
介入前 介入後
577.78±201.42
改善率:+20.0%
抵抗係数(RI)
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
PVM開始前 PVM開始後
0.557±0.080
0.576±0.066
介入前 介入後
改善率:+3.3%
拍動係数(PI)
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
PVM開始前 PVM開始後
0.914±0.270
0.957±0.223
介入前 介入後
P=NS
改善率:+4.5%
※すべての項目でプラスの改善がみられた※
P=NS
1.46
0.63
1.16
1.89
0.570.94
0
1
2
3
4
5
6
7
加圧式VAマッサージ直前
加圧式VAマッサージ直後
1.57
0.42 0.57
2.04
0.33 0.410
1
2
3
4
5
6
加圧式VAマッサージ直前
加圧式VAマッサージ直後490
610
420
480
※(改善率%) ※(改善率%)
急性効果においても改善の傾向がみられた
症例① 症例②
【結果+α】VAエコー検査データ比較急性効果(PVM直前直後)
(+29.5%)
(+24.5%)
(+9.5%)(+19.5%)
(+29.9%)
(+14.3%)
(+21.4%) (+28.1%)
【結果②】 3ヵ月開存率比較
PVM介入前(n=38) vs PVM介入後(n=36)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0 100 200 300 400 500 600 700
開存率
開存期間(Day)
Kaplan-Meier 開存曲線
介入前:52.6%
介入後:83.5%
(P<0.01)
【結果③】開存期間3ヵ月未満の割合
45%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
50%
介入前 介入後
(17/38症例)
【結果③】開存期間3ヵ月未満の割合
45%
11%0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
50%
介入前 介入後
(17/38症例)
(4/36症例)
約5割→1割へ削減
【結果③】診療報酬未加算点数
診療報酬加算(PTA1回)=18,080点
PVM介入前未加算=18,080点×17症例
=307,360点
PVM介入後未加算=18,080点×4症例
=72,320点
235,040点の損失を回避※単純計算
【結果】#1 エコーデータすべての項目において
改善の傾向がみられた。
#2 一次開存率に有意な差がみられた。
#3 診療報酬未加算の症例をおよそ半数
から1割へ減少させることができた。
#4 患者側と病院側の双方にとって良好な
結果が得られた。
本日の話題
① 在宅透析患者の特徴と処方について② BCMの有用性と使い方③ 加圧式VAマッサージを透析室で行う。④ 在宅カテーテル透析によってアクセス
穿刺負担の低減⑤ まとめ
背景・目的
当院では、シャント作製術の他に長期留置カテーテル挿入術やカテーテル診察も行っている。
長期留置カテーテル挿入術と管理における現状を報告する。
H22.9/1~H27.12/31カテーテル挿入歴のある患者・カテーテル診察外来受診患者70名
期間・対象
結果・考察
図1
シャント閉塞
47%
シャント
機能不全16%
在宅11%
緊急導入11%
短期→
長期3%
心機能
不全2% その他
12%
挿入の理由
その他:過剰血流・静脈高血圧症・点滴目的
挿入の目的はシャント閉塞や機能不全などのアクセストラブルをはじめ、緊急導入やH26頃より心負荷の改善
を目的とした挿入などがある。最近では在宅透析を目的とした挿入も行っている。
図2
受診総件数は年々増加しているが、トラブルでの受診割合は減少している。
図3
その他:短期→長
期・カテーテル交換・キンク・脱落
カテーテルのトラブルとして脱血不良が半数以上を占め、次に感染、閉塞と続く。
図4
トラブル内容を年別にすると、閉塞がH26以降は0件となっている。静脈圧上昇や脱血不
良など見られた場合に早期に対処したことで、閉塞は防ぐことができた。また感染に対してはH26頃より管理マニュアルの確立・他院への情報提供を行っていることにより、H27には減少した。
図5
静脈圧上昇・脱血不良に対しては血栓除去術を施行している。H25頃まではトンネ
ル感染に対してもカテーテル交換を行っていたが、H26頃より経路変更術で対応するようになった。
図6
カテーテルトラブル
図7 カテーテルトラブルの対処法
脱血不良・静脈圧上昇
感染兆候あり
出口部 トンネル カテーテル内
抗生剤の全身投与(多剤併用)・カテーテル内投与
カテーテル抜去
経路変更抗生剤の全身投与
消毒抗生剤内服局所の抗生剤軟膏
カテーテル交換(血培陰性を確認後)抗生剤を3週間投与
発赤、腫脹、熱感、発熱、排膿、疼痛、CRP↑など
抵抗(+)
ウロキナーゼ充填
抵抗(-)
無効
カテーテルのポンピングにて血栓の有無を確認し、血栓を除去する。
ポンピング
血栓除去
抵抗(±)
ヘパリン充填
ウロキナーゼ6万単位を生食5mlにて溶解したものを使用
ヘパリン5千単位を原液で使用
(入院処置)
(血流感染)
①カテーテルに付着したテープ糊をクロルヘキシジングルコン酸塩液含浸綿で取り除く。
カテーテル処置手順
1a 1b
②ドレッシング材にて保護する前に、テープ糊が付着しないように滅菌ガーゼで完全に覆う。グルコン酸クロルヘキシジン含有の保護パッチを使用しない場合も、出口部が完全に覆われるようにガーゼを巻く。
カテーテル処置手順
2b2a
③ガーゼがはみ出さないように鑷子で押さえながらドレッシング材を貼る。グルコン酸クロルヘキシジン含有の保護パッチ使用時もカテーテルの見えている部分が完全に覆われるようにする。
カテーテル処置手順
3a 3b
まとめ
●カテーテル診察を定期的に行うことでトラブル予防やトラブルに対し早期に対応できている。
●管理方法を確立し情報提供したことで、トラブルが予防できている。
避けては通れない自己穿刺の悩み…
鋭角な針を使わないことで、穿刺ミスのリスクを減らすことができる。また、患者の精神的不安も、軽くすることができる。
ボタンホール穿刺
穿刺を行わない。穿刺の難しい患者さんも対象に。シャントも閉じることができる。(心負荷軽減)トレーニングの手技が完全に統一できるため、スタッフ側の負担も少ない。
長期留置カテーテル
当院では、両方の選択肢のメリット・デメリットを説明し、患者さんの意思を尊重し、一緒に選択していく
接続部をアルコールにて毎回清拭する.また,定期的に接続部キャップを交換することで清潔を保つ.
清潔操作,シリンジによるポンピング,血液回路との接続など,患者・スタッフともに統一した手技で訓練を進めることができる.
体外のカテーテル部にテープの糊が残ることも感染の一因となるため,丁寧に清拭する.
カテーテルのトレーニング手技
注意すべきは,清潔・丁寧・観察
出口部感染防止のため,グルコン酸クロルヘキシジン含有の保護パッチを使用し,その上からドレッシング材で覆う.
非透析時のガーゼ保護.防水テープで覆うことで,シャワー浴も可能.
挿入部の発赤などに対してはゲンタマイシン硫酸塩の塗布にて対応.
特別な器具や手技は,使用しない
カテーテルのトレーニング手技
カテーテルでの在宅血液透析は管理方法に注意すればトラブルなく継続できる
HHDに移行すると、皮膚の状態が改善され、綺麗になる。PDより管理しやすいと考える。
長期留置カテーテルはHHDでのVAの選択肢となりうる
HHDでの長期留置カテーテル
2016年9月頃のカテーテル出口部写真
A氏50代男性約20か月経過
B氏50代男性約15か月経過
D氏50代女性約7か月経過
C氏60代男性約12か月経過
本日の話題
① 在宅透析患者の特徴と処方について② BCMの有用性と使い方③ 加圧式VAマッサージを透析室で行う。④ 在宅カテーテル透析によってアクセス
穿刺負担の低減⑤ まとめ
まとめ
#1 BCMによる厳密なDW管理が、VA閉塞を予防できる。
#2 穿刺前のマッサージが有用であった。
#3 在宅透析の穿刺負担を開放するカテーテル透析は管理方法によって出口部感染を回避し今後のHHD患者の増加に寄与すると考えられる。