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Ver. 0.60 Collaboration Patterns Project 創造的コラボレーションのパターン・ランゲージ コラボレーション・パターン

Ver. 0 - collabpatterns€¦ · 33 Ver. 0.60 Collaboration Patterns Project Collaboration Patterns : コラボレーション・パターン ̶ 創造的コラボレーションのパターン・ランゲージ

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Ver. 0.60November, 2012

http://collabpatterns.sfc.keio.ac.jphttp://twitter.com/collabpatterns

[email protected]

Collaboration Patterns Project

創造的コラボレーション

未来への使命感

方法のイノベーション

伝説をつくる

成長のスパイラル

共感のチームづくり

レスポンス・ラリー

一体感をつくる

貢献の領域

成長のリターン

自発的なコミットメント

ゆるやかなつながり

弱さの共有

感謝のことば

創発的な勢い

まとまった時間

創造の場づくり

活動の足あと

意味のある混沌

アイデアをカタチに

インサイド・イノベーター

ゴールへの道のり

臨機応変な動き

飛躍のための仕込み

世界を変える力

クオリティ・ライン

こだわり合う

一度こわす

期待を超える

ファンをつくる

広がりの戦略

世界の文脈

つくり続ける強さ

感性を磨く

0

123

456789

10111213

14151617181920212223

24252627282930313233 Ver. 0.60

Collaboration Patterns Project

Collaboration Patterns : コ

ラボ

レー

ショ

ン・

パタ

ーン

造的

コラ

ボレ

ーシ

ョン

のパ

ター

ン・

ラン

ゲー

ジ (ver. 0.60)

創造的コラボレーションのパターン・ランゲージコラボレーション・パターン

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Collaboration Patternsコラボレーション・パターン

Ver. 0.60

Collaboration Patterns Project

創造的コラボレーションのパターン・ランゲージ

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 これまでにない全く新しいものを生み出すとき、あるいは未知なる領域の問題を解決

しようとするとき、複数の人でのコラボレーションが重要となります。

 コラボレーションがうまく行なわれているとき、そこには、様々なアイデアが行き交

い、共鳴・増幅するプロセスがあります。先行するコミュニケーションに誘発されて次々

とコミュニケーションがつながっていき、その連鎖がチームに固有の「勢い」を生み出

し、チーム全体を突き動かすのです。その結果、個々人では生み出すことができない成

果を生み出すことができます。そして、そのような経験をしたメンバーは、コラボレー

ションに参加する前に比べて大きな成長を遂げているものです。

 このように、創造的コラボレーションは、メンバーが互いに高め合いながら成長し、

個人には還元できないチームレベルの創発的な勢いに乗りながら、世界を変えるような

成果を生み出す共同作業のことです。そのような創造的コラボレーションは、一体どの

ように実現できるのでしょうか?

 本冊子『Collaboration Patterns』では、創造的コラボレーションの秘訣を「コラボレ

ーション・パターン」というかたちにまとめました。ここには、コラボレーションをよ

り創造的にさせる視点や方法が 34 個収録されています。

 本冊子のコラボレーション・パターンを、ぜひみなさんのコラボレーションの実践に

活かしてみてください。

コラボレーション・パターン プロジェクト

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コラボレーション・パターンとは

 コラボレーション・パターンは、「創造的コラボレーション」の秘訣を言語化したも

のです。創造的コラボレーションでは、メンバーが互いに高め合いながら成長し、個人

には還元できないチームレベルの創発的な勢いに乗りながら、世界を変えるような成果

を生み出します。そのようなコラボレーションのデザインにおける視点や方法をまとめ

たものが、コラボレーション・パターンです。

 

 本冊子には、コラボレーション・パターンが全部で 34 個収録されています。

 中心には「創造的コラボレーション」(No.0) があり、それに続いて、創造的コラボ

レーションの究極のかたちである「未来への使命感」(No.1)、「方法のイノベーション」

(No.2)、「伝説をつくる」(No.3)が続きます。

 その後のパターンは、大きく分けて 3 つのまとまりに分かれています。それぞれの

まとまりは、創造的コラボレーションの本質となる「成長のスパイラル」(No.4)、「創

発的な勢い」(No.14)、「世界を変える力」(No.24)から始まります。

 第一のまとまりは No.4 から No.13 までの「チーム」に関するパターン、第二のまと

まりは No.14 から No.23 までの「創造」に関するパターン、第三のまとまりは No.24

から No.33 までの「成果」に関するパターンです。

 

 これらのパターンが相互に関係し合うことで、創造的コラボレーションの実現を支え

ます。

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コラボレーション・パターンの全体像

12.弱さの共有

30.広がりの戦略

26.こだわり合う

27.一度こわす

33.感性を磨く

32.つくり続ける強さ

31.世界の文脈

28.期待を超える

29.ファンをつくる

23.飛躍のための仕込み

22.臨機応変な動き

21.ゴールへの道のり

20.インサイド・イノベーター

19.アイデアをカタチに

18.意味のある混沌

24.世界を変える力

25.クオリティ・ライン

1. 未来への使命感

2.方法のイノベーション

3.伝説をつくる

4.成長のスパイラル

5.共感のチームづくり

6.レスポンス・ラリー

13.感謝のことば

11.ゆるやかなつながり

14.創発的な勢い

17.活動の足あと

16.創造の場づくり

15.まとまった時間

0. 創造的コラボレーション

7.一体感をつくる

9.成長のリターン

8.貢献の領域

10.自発的なコミットメント

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コラボレーション・パターンの読み方

 個々のコラボレーション・パターンは、ある一定の形式で記述されています。ここでは、

パターンがどのような形式で記述されているのかについて説明しておくことにします。

 各パターンの左ページには、そのパターンの内容をつかむための概要が書かれていま

す。上から順にみていくと、「パターン番号」、「パターン名(日本語)」、「パターン名(英

語)」、「導入文」、「イラスト」、「引用文」となります。

 まずページの左上に書いてあるのが、各パターンにつけられた「パターン番号」

(Pattern Number)です。それに続くのが、日本語と英語の「パターン名」(Pattern

Name) です。パターン名は、パターンの内容を適切に表し、かつ魅力的で覚えやすい

ようにつけられています。

 その次に来る「導入文」(Introductory Sentence)、「イラスト」(Illustration)、および

「引用文」(Quotes) は、そのパターンの内容を生き生きとイメージできるようにするた

めのものです。

パターン名 [ 日本語 ]

パターン番号(Pattern Number)

パターン名 [ 英語 ]

導入文(Introductory Sentence)

イラスト(Illustration)

引用文(Quotes)

Response Rally

レスポンス・ラリー

小さな反応でも、次につながる力になる。

No.6

偉大なソロを集めたオーケストラが最高のオーケストラではない。 ― ピーター・ドラッカー

(Pattern Name)

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 各パターンの右ページには、そのパターンの詳細、つまり学びのコツの詳細が書かれ

ています。上から順にみていくと、「状況」、「問題」、「フォース」、「解決」、「アクション」、

「結果」となります。

 まず最初に、そのパターンをどのようなときに使うのかという「状況」(Context)が

書かれています。区切りを示す「▼ その状況において」の後、その状況において生じ

やすい「問題」(Problem)が、太字で書かれています。その下には、その問題の解決

を困難にしている原因が「フォース」(Forces)として示されています。フォースとは、

物事や人間についての変えることができない力や法則性のことです。これらをすべて解

決しなければならないため、問題の解決が困難になっています。

 そして、区切りを示す「▼ そこで」の後、その問題に対する「解決」(Solution)の

考え方が、太字で書かれています。「解決」は抽象的に書かれており、それを具体的な

レベルに落とすとどうなるかが、「アクション」(Actions)の部分に書かれています。

 再び区切りを示す「▼ その結果」が来た後、このパターンを適用したときに生じる「結

果」(Consequences) が書かれています。

問題 (Problem)フォース (Forces)

解決 (Solution)

アクション (Actions)

結果 (Consequences)

状況 (Context)プロジェクトが動きだし、いろいろな報告や連絡、相談などがなされている。

▼その状況において

それらの報告・連絡・相談に対して、放置したり、返答を書くのに長い時間を要したりすると、プロジェクトの進行が滞るだけでなく、それを発信したメンバーのモチベーションも下げてしまう。

・プロジェクトを進める上で、一人では決められないことが出てくる。

・ 重要な案件であるほど、しっかりした返答を書くのには時間がかかる。

・ やるべきことが次々と増えていくときには、後回しにしたものを忘れやすい。

▼ そこで

メンバーが投げかけたことに、どんなに小さくてもよいので反応を示す。

口頭の場合には、あいづちを打ったり意見を言ったりして、自分が理解している

ことや、賛成なのか反対なのかを相手がわかるように示す。メールの場合には、

簡単な返信でよいので、すぐに返す。全体に関わるような意思決定や相談の場合

には、他の人がリプライしたからといって自分のリプライを省略したりはせず、

同意見であっても自分からの反応として返す。

▼その結果

反応をもらった人は次のステップに進むことができ、全体としてプロジェクトの

進行がスムーズになる。さらに、コミュニケーションが頻繁に起こることによって、

プロジェクトに活気が出てくる。軽快なコミュニケーションの連鎖は「創発的な

勢い」(No.14)を生み出すことにもつながる。

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パターン・ランゲージの考え方コラボレーション・パターンの記述方法についての補足

 コラボレーション・パターンは、「パターン・ランゲージ」という考え方にもとづい

てつくられています。パターン・ランゲージは、建築家のクリストファー・アレグザン

ダーが提唱した知識記述形式です。アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し現れ

る法則性を「パターン」と呼び、それを「ランゲージ」(言語)として記述・共有する

ことを提案しました。彼が目指したのは、街や建物のデザインについての共通言語をつ

くり、誰もがデザインのプロセスに参加できるようにすることでした。

 パターン・ランゲージでは、デザインにおける多様な経験則をパターンという単位に

まとめます。パターンには、デザインにおける「状況」と「問題」、そしてその「解決」

の発想がセットになって記述され、それに「名前」が付けられます。パターン・ランゲー

ジの利用者には、自らの状況に応じてパターンを選び、そこに記述されている抽象的な

解決方法を、自分なりに具体化して実践することが求められます。

 パターン・ランゲージを記述・共有する意義は、大きく分けて二つあります。一つは、

熟練者がもつ経験則を明文化しているので、初心者であっても、洗練されたやり方で問

題解決ができるようになるという点です。もう一つは、デザインに関する共通の語彙(ボ

キャブラリー)を提供するので、これまで指し示すことができなかった複雑な関係性に

ついて簡単に言及できるようになるという点です。

 このようなパターン・ランゲージの考え方は、建築の分野以外でも、ソフトウェア開

発を始めとして、インタラクション・デザインや組織デザイン、教育のデザインなどに

応用され始めています。パターン・ランゲージの考え方は、実践知を共通言語化する方

法として、今後もいろいろな分野へ応用されると考えられます。

 本冊子で示した「コラボレーション・パターン」は、創造的なコラボレーションのた

めのパターン ・ ランゲージです。ぜひ、コラボレーション・パターンを自らのコラボレー

ションのデザインに活かすとともに、パターン・ランゲージという知識記述形式の可能

性についても考えてみてほしいと思います。

• 『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー , 鹿島出版会 , 1993)

• 『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー , 鹿島出

版会 , 1984)

• 「パターン・ランゲージ 3.0:新しい対象 × 新しい使い方 × 新しい作り方」(井庭 崇 ,

情報処理 , Vol.52 No.9, 2011)

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中心パターン(No.0)

創造的コラボレーション0

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No.

Creative Collaboration

創造的コラボレーション

自分たちが成長しながら、チーム全体で

世界を変える新しい価値を生み出す。

No.0

あるものが全体として成長していると言う時、私たちは、その全体性こそが成長の絶え間ない創造者であり、起源であり、母体であると考えています。新しい成長は、それまでの成長によってかたちづくられた独自の構造的性質から現れてくるものです。そして、それは自律的な全体になっています。その内的秩序が、成長の連続性をつくり出し、次に現れるものを決めていくのです。 ― クリストファー・アレグザンダー

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これから、新しいプロジェクトを始めようとしている。

▼ その状況において

単に「複数人で何かをつくる」というだけで本当によいものを生み出すことは難しい。

・ 複数人で分業すると、部分を足しあわせたような成果になってしまう。

・ 人によって価値観や信念が異なるため、それらがうまくかみ合うとは限らない。

・ つくることに集中しているときには、つくったものがどのように受け入れられ

るのかを忘れがちになる。

▼ そこで

メンバーが互いに高め合いながら成長し、個人には還元できないチームレベルの創発的な勢いに乗りながら、世界を変えるような成果を生み出す。

 目指す未来や志に共感できるメンバーと互いに高め合いながら、チーム全体で

成果を生み出す。そのために、創造的になれる時間と場所を確保して、一緒にア

イデアを育てていく。そして、自分たちのつくったものが世界でどのような変化

を引き起こすのかを意識しながら仕上げていく。

 究極的な「創造的コラボレーション」では、「こうあるべきだという未来」を実

現する「未来への使命感」(No.1)を持って、自分たちなりの「方法のイノベーシ

ョン」(No.2)を起こしながら、「伝説をつくる」(No.3)意識で取り組んでいく。

 そのような「創造的コラボレーション」の秘訣が、本冊子『Collaboration

Patterns』に収録されているので、それを参考にしながら自分たちのコラボレー

ションに取り入れて実践するとよい。

▼ その結果

人を動かし、世界を変えるような新しい価値を生み出すことができる。また、メ

ンバーがプロジェクトを通して成長し、そのプロジェクトならではの方法も蓄積

される。

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A Pattern Language forCreative Collaborations

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創造的コラボレーションの究極パターン(No.1~3)

未来への使命感方法のイノベーション伝説をつくる

123

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No.

Mission for the Future

未来への使命感

未来のあるべき姿への眼差しから。

No.1

「天命を感じる」というのは、人が受け身ではなく、もっと積極的に状況全体への価値の創造への寄与という方向で考え行動していったときに起こるものだと思う。だから、天命を感じている人というのは必ず、自分を取り巻いている全体状況、これをたいへん感受性豊かに受けとめている人だということになる。 ― 川喜田 二郎

それができるのは僕らしかいない。だからやるんだ。 ― スティーブ・ジョブズ

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プロジェクトを立ち上げようとしている。

▼ その状況において

こういうことをやりたいというアイデアだけでプロジェクトを進めても、本当に未来を変えることはできない。

・自分がよいと思うものが、他の人にとってもよいものだとは限らない。

・人の心を動かしたり行動を変えたりするようなものでなければ、世界に影響を

及ぼすことはできない。

▼ そこで

未来のあるべき姿をイメージし、それを実現しなければという使命感をもってプロジェクトに取り組む。

世界はどうあるべきか、あるいは、どういうものがあればよりよくなるか、とい

うことを考える。そのとき、単に今のニーズに応えるというよりも、自分たちな

りの未来のヴィジョンを描くことから始める。その上で、他でもない自分たちが

やるべきことはどれなのかを考え、プロジェクトの目標を定める。自分がやりた

いと思うことから考えるのではなく、未来のあるべき姿をイメージして、その未

来と自分とのつながりを見出していくという方向が重要である。

▼その結果

単に自分がやりたいという気持ちを超えて、自分がやらなければならないという

覚悟を持って取り組むことができる。さらに、未来を変えるためにいま何をすべ

きかが明らかになり、社会にインパクトを与えるような成果を生み出すことがで

きる。

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No.

Innvation of the Ways

方法のイノベーション

つくるものだけでなく、つくり方もつくる。

No.2

よりよい方法というものは、常に存在するものである。 ― トーマス・エディソン

ある課題を見つけたり、新しい問題に出会ったとき、過去の解き方は参考にはなるけど、新しい解き方を見つけるほうが、どんどん新しい分野を開拓できる。……みなさんは、これからどこに行くのかわからない。でも「作り方を作る」ということだけは忘れないでください。それによってできたものは、あなた自身のオリジナルなものになります ― 佐藤 雅彦

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プロジェクトの目的をどのように実現するのかを考えている。

▼その状況において

従来の方法を踏襲するだけでは、これまでと同じような成果しか生まれない。 

・ 最終的に評価されるのは「結果」であるため、それを生み出す「プロセス」に

は目が行きにくい。

・ 知らず知らずのうちに既存のものにとらわれてしまう。

▼ そこで

成果を生み出すプロセスに着目し、新しい方法を考え、それを実践する。

自分たちが生み出したい成果をつくるための方法を、従来の方法や前例に縛られ

ずに自由に発想してみる。例えば、いくつかの要素を組み合わせたり、異なる分

野の方法や仕組みを参考にしたりする。そして、プロジェクトを進める中で、そ

の方法を洗練させ、自分たちなりの方法論を確立する。

▼その結果

従来の方法からは発想できないような新しい成果を生み出すことができる。また

方法をつくるためのコツをつかめば、新しいプロジェクトのたびに新しい方法を

生み出すことで、持続的に新しいものを生み出すことができるようになる。

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Create a Legend

伝説をつくる

語り継がれるものを目指す。

No.3

世界史に残るような偉大で堂々たる業績は、すべて何らかの熱中がもたらした勝利である。 ― エマーソン

作品を意味づけるために芸術の世界でやることは、決まっています。世界共通のルールというものがあるのです。「世界で唯一の自分を発見し、その核心を歴史と相対化させつつ、発表すること」これだけです。 ― 村上 隆

心に響く音楽のように、時代の記憶に残るものを作りたいと常に思っている。 ― 三原 康裕

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プロジェクトに取り組んでいる。

▼ その状況において

プロジェクトの成果が人々の記憶に残らず、一時的な出来事で終わってしまう。

・ どのような分野や業界も、日々、次々と新しい成果が生み出されている。

・ よいと評価される程度のものは世に溢れているので埋もれてしまいがちである。

・ 誰かの記憶に残るためには、強いインパクトが必要となる。

▼ そこで

世界を変えるつもりで徹底したこだわりをもって取り組み、歴史に残るような成果を生み出す。

ただプロジェクトの成果の完成を目指すのではなく、細部までこだわり抜き徹底

的につくり込む。さらに人々の心を惹きつけて離さないような仕掛けを施し、後々

にも語り継がれるようなプロジェクトに仕上げる。

▼その結果

今まで誰も成し遂げられなかった成果が生み出され、これが人々の心に強いイン

パクトを与え、「伝説」として後の世にも語り継がれていく。こうして、次の世

代を担い得る人たちを触発するきっかけとなり、関わったメンバー自身も「伝説」

の人となることで、次世代の人々の間のひとつのモデルとなる可能性がある。

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A Pattern Language forCreative Collaborations

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「チーム」に関するパターン(No.4~13)

4

5 6 7

8 910

111213

成長のスパイラル

共感のチームづくり

レスポンス・ラリー

一体感をつくる

貢献の領域

成長のリターン

自発的なコミットメント

ゆるやかなつながり

弱さの共有

感謝のことば

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Spiral of Growth

成長のスパイラル

仲間とともに高め合う。

No.4

わたしはよく言うのですが、わたしが書く行為は冒険のようなものだって。その冒険がわたしをどこへ連れてゆき、終わりがどうなるのか、わたし自身さえ知らない冒険です。だから、どの本を書いた後もわたし自身がちがう人間になりました。 ― ミヒャエル・エンデ

創造的行為は、まずその対象となるもの、つまり「客体」を創造するが、同時に、その創造を行うことによって自らをも脱皮変容させる。つまり「主体」も創造されるのであて、一方的に対象を作る出すだけというのは、本当の創造的行為ではないのである。そして創造的であればあるほど、その主体である人間の脱皮変容には目を瞠るものがある。 ― 川喜田 二郎

自分の翼だけで飛ぶなら、鳥は高く舞い上がることはできない。 ― ウィリアム・ブレイク

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メンバーとともにプロジェクトに取り組んでいる。

▼その状況において

現段階でメンバーができることを基準にプロジェクトを進めてしまうと、チームで取り組むことの魅力が失われてしまう。

・人が今後どのような成長をするのかは、現段階では不確実である。

・不確実なものに依存するのはリスクとなる。

・ 未知なるものへの挑戦や自分自身の成長は、さらなるやる気を生じさせる。

▼そこで

他のメンバーのがんばりや成長から刺激を受けたり、自分から刺激を与えたりして、お互いに高め合いながらプロジェクトを進める。

創造的コラボレーションでは、成果が生み出されるだけでなく、それを生み出す

過程でメンバー自身も成長する。そのため、プロジェクトの過程で他のメンバー

がどのようにがんばり成長を遂げているのかを見て、自分ががんばる原動力にす

る。逆に、自分のがんばりや成長が他のメンバーに刺激を与えることがあると考え、

あえてそれらを隠さないようにする。

▼その結果

お互いのがんばりに触発されて、チーム内に成長の上昇気流が生まれる。また、

プロジェクトが進むにつれてメンバーにできることが増えていき、プロジェクト

の勢いが加速することになる。さらに、プロジェクトの他のメンバーを尊敬し合

うことにつながり、成長の面でも一体感を感じることができる。

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Sympathetic Union

共感のチームづくり

「目指す未来」や「志」に共感できる仲間と組む。

No.5

明確かつ焦点のはっきりした共通の使命だけが、組織を一体とし、成果をあげさせる。― ピーター・ドラッカー

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プロジェクトに参加するメンバーを集めている。

▼その状況において

専門性や知識・スキルの「多様性」ばかり重視してメンバーを集めると、チームがバラバラでうまくいかなくなるリスクが生じる。

・ 専門が異なれば、認識や考え方、価値観が根本的に異なる。

・ 自分の専門と異なる人と話すためには、自分の専門の特徴をよく理解した上で、

相手にわかるように話さなければならない。

・ 特定の専門性や知識・スキルが、そのプロジェクトに本当に役立つかどうかは、

実際に取り組んでみないとわからない。

▼ そこで

「目指す未来」や「志」に共感できる人とチームを組む。

プロジェクトの目的や意義、今後のヴィジョンを語り、それに共感してくれる人

とチームを組む。プロジェクトに必要となりそうな専門性や知識・スキルを持っ

ていることもよいが、あくまでも「目指す未来」や「志」に共感することを優先する。

現在の自分たちに足りない知識やスキルについては、プロジェクトを進めながら、

新しく身につけたり強化したりするとよい。

▼その結果

あらかじめ共有されている目標に向かって、各人がどのような「貢献の領域」(No.8)

で貢献するのか、チームとしてどのようなことをしなければならないのかを、全

員で考えることができるようになる。全員がプロジェクトの目指すところに共感

して参加しているので、「自発的なコミットメント」(No.10)も生じやすい。また、

必要に応じて、足りない知識やスキルを身につけることになるので、各人の「成

長のリターン」(No.9)にもつながる。

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Response Rally

レスポンス・ラリー

小さな反応でも、次につながる力になる。

No.6

偉大なソロを集めたオーケストラが最高のオーケストラではない。 ― ピーター・ドラッカー

Page 28: Ver. 0 - collabpatterns€¦ · 33 Ver. 0.60 Collaboration Patterns Project Collaboration Patterns : コラボレーション・パターン ̶ 創造的コラボレーションのパターン・ランゲージ

プロジェクトが動きだし、いろいろな報告や連絡、相談などがなされている。

▼その状況において

それらの報告・連絡・相談に対して、放置したり、返答を書くのに長い時間を要したりすると、プロジェクトの進行が滞るだけでなく、それを発信したメンバーのモチベーションも下げてしまう。

・プロジェクトを進める上で、一人では決められないことが出てくる。

・ 重要な案件であるほど、しっかりした返答を書くのには時間がかかる。

・ やるべきことが次々と増えていくときには、後回しにしたものを忘れやすい。

▼ そこで

メンバーが投げかけたことに、どんなに小さくてもよいので反応を示す。

口頭の場合には、あいづちを打ったり意見を言ったりして、自分が理解している

ことや、賛成なのか反対なのかを相手がわかるように示す。メールの場合には、

簡単な返信でよいので、すぐに返す。全体に関わるような意思決定や相談の場合

には、他の人がリプライしたからといって自分のリプライを省略したりはせず、

同意見であっても自分からの反応として返す。

▼その結果

反応をもらった人は次のステップに進むことができ、全体としてプロジェクトの

進行がスムーズになる。さらに、コミュニケーションが頻繁に起こることによって、

プロジェクトに活気が出てくる。軽快なコミュニケーションの連鎖は「創発的な

勢い」(No.14)を生み出すことにもつながる。

Page 29: Ver. 0 - collabpatterns€¦ · 33 Ver. 0.60 Collaboration Patterns Project Collaboration Patterns : コラボレーション・パターン ̶ 創造的コラボレーションのパターン・ランゲージ

Feeling of Togetherness

一体感をつくる

みんなで一つのものをつくっているという感覚を。

No.7

どんなに優秀な集団でも、みんなが勝手なほうを向いては持てる能力の半分も活かせない。明記すべきはチームワークである。 ― 松成 博茂

一緒にやろうという力がまとまってこないと物事は前へ進まない。成功の成否は人の和にあり。― 藤森 正路

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プロジェクトが動きだし、メンバーがそれぞれの作業に取り組んでいる。

▼その状況において

個々の作業をバラバラにやっているだけでは、徐々に意識のズレが生じて気持ちが離れていってしまう。

・ コラボレーションは、分業の組み合わせではなく、チーム全体の創造行為である。

・ 自分の作業に専念するほど、他の人の活動や結果に意識がいかなくなる。

・ グループごとのまとまりが強くなると、他のグループとの間に壁ができる。

▼ そこで

個々の作業のほかに、全員で同じ体験を共有できるような工夫をする。

例えば、全体で集まる時間をとったり、ご飯を一緒に食べたりする。みんなで作

業をしているときに、音楽をかけるだけでも雰囲気は変わってくる。あるいは、

そのチームらしさを象徴するようなアイテムをつくってみたり、チームのメンバ

ーだけがわかる内輪の話や決まり事をつくってみたりするという手もある。

▼その結果

メンバー同士の意識がそろいやすくなり、みんなで一つのものをつくっていると

いう気持ちが持てるようになる。一体感を持てるようになると個々の作業をして

いるときにも孤独を感じることはなくなり、安心して創造的な活動に取り組むこ

とができるようになる。また、「成長のスパイラル」(No.4) や「創発的な勢い」(No.14)

も起きやすくなる。

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Piece to Contribute

貢献の領域

自分をどこで活かせるのかを考える。

No.8

英雄とは自分のできることをした人だ。凡人は自分のできることをせず、できもしないことをしようとする人だ。 ― リチャード・ブランソン

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プロジェクトが始まり、これからやることがある程度具体的に見えてきた。

▼その状況において

プロジェクトにただ漠然と参加しているだけでは、しっかりと貢献する機会を得にくく、次第にモチベーションも低下してしまう。

・ 自分以外の人の得意なことは、聞いたり見たりするまで分からない。

・ 割り当てられた仕事が、自分の得意な領域や、やりたいことであるとは限らない。

・ やりたくないことや不得意なことに対しては、モチベーションを維持しにくい。

▼ そこで

自分の知識やスキルをプロジェクトにどう活かせるのかを、自ら考える。

自分の知識やスキルを活かせる領域を考え、チームのメンバーに伝える。そして、

その領域で積極的に行動し、貢献する。また、それほど経験がないことでも興味

がある領域に関わることで、スキルアップにつなげるのもよい。

▼その結果

自分の「貢献の領域」が他のメンバーにも明らかになる。また、自分が選んだこ

となので、モチベーションも高く持つことができる。さらに、お互いの貢献が組

合わさることで、チームを組んで取り組んでいることの意義も実感することにな

る。実際に自分がプロジェクトに貢献できているという実感を得れば、プロジェ

クトへのやる気はさらに高まる。

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Return of Growth

成長のリターン

プロジェクトを通じて、どう成長したいのだろう?

No.9

小説を書くのは、僕にとってすごく大事なことなんです。それは自分の作品を生み出すことであると同時に、自分自身を変えていく、自分自身をバージョンアップしていくことでもあるわけだから。 ― 村上 春樹

自発的に何かをしようとした経験以外は、あなたの記憶には残らない。― 石井 貴士

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プロジェクトが始まり、これからやることがある程度具体的に見えてきた。

▼ その状況において

プロジェクトに貢献するという意識だけでは、中長期的に見たときにモチベーションを維持できなくなる。

・ 貢献する気持ちを、いつも強く持ち続けることはできない。

・ 自分がやる意義を感じられないものに、一生懸命取り組むことは難しい。

▼ そこで

自分がプロジェクトに参加する意義や、プロジェクトの経験から得たい学びを明確にする。

例えば、プロジェクトを通して自分の可能性をいかに広げられるのかを、経験の

蓄積、スキルアップ、人との出会いなど、さまざまな視点から考えてみる。お互

いのリターンについて理解し合うために、メンバー同士で語り合う機会を設ける

とよい。

▼その結果

参加する意義を明確にし、意識することで、プロジェクトの活動における自分の

成長に気づきやすくなり、モチベーションを持ち続けることにもつながる。さらに、

実際にプロジェクトを通して成長することで、自分の「貢献の領域」(No.8)を広

げることができる。プロジェクトから自分へ、自分からプロジェクトへ、という

好循環が起きる。

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Spontaneous Commitments

自発的なコミットメント

プロジェクトはひとりひとりの行動でできている。

No.10

自発的に、積極的に仕事に関われ。 ― 稲盛 和夫

その人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる。― アルバート・アインシュタイン

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プロジェクトが進行している。

▼その状況において

与えられた仕事だけをするという受け身の状態に陥ってしまう。

・ 自分が関わらなくても物事が進んでいくときには、自分は何もしなくてよいと

思ってしまう。

・ 与えられたことをこなすのは、考えるべき範囲が少なくて済むので楽に感じる。

・ いま何が起きているのか、そして、何を目指していくのかを把握しないと、何

をすべきかわからない。

▼ そこで

「プロジェクトが自分(たち)のものである」という意識を持って、主体的に取り組む。

プロジェクトは、それを構成するメンバーが動かなければ進まない。もしいま進

んでいるとしたら、それは誰か他のメンバーが動いているということを意味して

いる。それに頼ることなく、プロジェクトでいま何をすべきかを考え、積極的に

行動することが大切だ。何をしてよいのかわからない場合には、「いま何をすれば

よいのか」をメンバーに聞くことも、一種のコミットメントだと捉えてよい。た

だし、「何かあれば、いつでも言ってください」というのは受け身の状態に過ぎな

いので、そのときどきのやるべきことを自らつかみにいく姿勢が重要である。自

分の「貢献の領域」(No.8)を決めて貢献するのもよいし、「臨機応変な動き」(No.22)

で貢献するのもよい。

▼その結果

自分の行動がプロジェクトを動かしているという意識が持て、より意欲的に取り

組むことができる。このような「自発的なコミットメント」を行うメンバーで構

成されるチームは、お互いに刺激し合い、活気がでてくる。そして、お互いに高

め合うことで「成長のスパイラル」(No.4)が実現する。

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Loose Connections

ゆるやかなつながり

それとなく仲間の状況を知ることで、

いつもどこかで通じ合う。

No.11

コミュニケーションにおいて最も大切なことは、語られていないことを聞くことである。 ― ピーター・ドラッカー

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プロジェクトの時間外では、メンバー同士であまり関わり合いがない。

▼その状況において

定期的な集まりだけではメンバー間の距離が縮まらず、毎回よそよそしい雰囲気でプロジェクトを始めることになる。

・ 限られた時間では、人との距離を縮めることは難しい。

・ 距離感があると、会話が生まれにくい。

▼ そこで

プロジェクトで集まる時間以外でもゆるやかなつながりを持ち、それとなく他のメンバーの状況を知ることができる工夫をする。

連続性のあるコミュニケーションをとるようにするため、プロジェクトで集まる

時間以外もメンバーとシンクロできるような工夫をする。例えば、SNS(ソーシ

ャル・ネットワーキング・サービス)を使って、お互いの状況をそれとなく知る

ことができるようにしたり、一緒に食事していろいろな話をする機会を設けたり

する。

▼その結果

お互いの状況をそれとなく知っている段階からプロジェクトに臨むことができる

ため、話し合いの出だしがスムーズになる。常にゆるやかにつながることで親近

感がわき、メンバー同士の距離を縮めるきっかけになる。また、プロジェクトの

集まりだけでは知ることができない横顔に触れることで、メンバーのことをさら

に深く知ることができる。

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Vulnerability Disclosure

弱さの共有

一人ひとりの弱さは、チームの強さに変わる。

No.12

「弱さ」は「強さ」の欠如ではない。「弱さ」というそれ自体の特徴をもった劇的でピアニッシモな現象なのである。それは、些細でこわれやすく、はかなくて脆弱で、あとずさりするような異質を秘め、大半の論理から逸脱するような未知の振動体でしかないようなのに、ときに深すぎるほど大胆で、とびきり過激な超越をあらわすものなのだ。 ― 松岡 正剛

弱さのない奴って、色気がねえんだよ。 ― 泉谷 しげる

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プロジェクトを進めていく上で、悩みや不安、問題を抱えている。

▼その状況において

悩みや不安、問題をひとりで抱え込んでしまい、作業が滞ってプロジェクト全体の進行に影響を及ぼしてしまう。

・ 悩みや不安、問題を抱えているときには、創造的な発想は生まれにくい。

・ ある人が抱えている悩みや不安、問題は、他の人からはわからない。

・ 作業が滞ってしまいプロジェクトに影響が出ると、ますますネガティブな気持

ちに陥ってしまう。

▼ そこで

プロジェクトに関することでも、それ以外のことでも、抱えている悩み・不安・問題をチームのメンバーと共有する。

小さなことでも話を聞いてもらったり、具体的なアドバイスをもらったりする。

現在進行形で困っていることでも、これから起こりそうなことの心配でも、自分

だけで抱え込まずにメンバーと共有する。プロジェクトの活動の場ではなかなか

言い出しづらいかもしれないので、行き帰りやご飯を食べる機会など、何気ない

ときに、話を切り出してみるとよいだろう。

▼その結果

悩みや不安、問題などの「弱み」を共有することで、自分では考えつかなかった

解決策が得られたり、悩みや不安が解消されることがある。また、他のメンバー

が自分の状況を知ることができ、「臨機応変な動き」(No.22)につながるかもしれ

ない。コラボレーションにおいては、ひとりで物事に取り組んでいるのではなく、

チームとして動いていることを忘れずにいるとよい。ひとりの「弱さ」はチーム

の「強さ」に変えることができるのである。

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Words of Thanks

感謝のことば

「ありがとう」の気持ちを伝える。

No.13

亡恩ほど普遍的に憎むべき悪はない。 ― ジョセフ・プリーストリー

恩恵を施したものは沈黙せよ。受け取った者は語れ。― セネカ

誠意や真心から出たことばや行動は、それ事態が尊く、相手の心を打つものです。― 松下 幸之助

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プロジェクトを進めている。

▼ その状況において

今ある状況を当たり前に感じてしまい、他の人の努力や気遣いに気づかない。

・ 自分が見ていないところでの他の人の努力や気遣いには気づきにくい。

・ 自分の作業に集中するほど、自分がやっていること以外は見えなくなる。

・ 当たり前になってしまったことを意識するのは難しい。

▼ そこで

周りの人との関係や今ある環境を見つめ直し、他の人のサポートに対して感謝の気持ちを表す。

今ある環境が誰のおかげで成り立っているかを考え、そのありがたさを再確認す

る。そして「ありがとう」という気持ちを「ことば」で伝える。ただし、決まり

文句のように表面的で形式的な「感謝のことば」では、本当の気持ちは伝わらない。

そうではなく、心から感謝を感じたときに、その度ごとの気持ちをことばにする

のがよい。心からの「感謝のことば」は、出し惜しみせずに伝えるようにしよう。

▼ その結果

よい雰囲気の中でプロジェクトを進めることができる。さらに、お互いの感謝が

感じられるようになり、それぞれのメンバーがプロジェクトに貢献できていると

実感でき、さらなる「自発的なコミットメント」(No.10) につながっていく。

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A Pattern Language forCreative Collaborations

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「創造」に関するパターン(No.14~23)

14

15 16 17

18 19

20

212223

創発的な勢い

まとまった時間

創造の場づくり

活動の足あと

意味のある混沌

アイデアをカタチに

インサイド・イノベーター

ゴールへの道のり

臨機応変な動き

飛躍のための仕込み

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Vigor of Emergence

創発的な勢い

一人ひとりに還元できない

チームだからこそ生まれる勢いに乗る。

No.14

「それで思い出した」という言葉は、イマジネーションと記憶を結びつけて一つの思考を他の思考へと導く能力 ―― 連想 ―― という創造力を端的に表している。 ― アレックス・オズボーン

同じ川の流れのなかに二度と入ることはできない。水は絶えず流れ続けているのだから。 ― ヘラクレイトス

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メンバーとともに新しいアイデアを考えている。

▼ その状況において

いいアイデアが生まれず、場の空気も停滞してしまう。

・ 自分の意見に自信が持てないと、発言するのに勇気がいる。

・ ひとつの内容をずっと考えていると、思考は凝り固まってしま う。

・ 真面目な雰囲気の中で、些細なアイデアを提案するのは気が引けてしまう。

▼ そこで

どんなことでも言いやすい雰囲気をつくり、創造的な発想の連鎖を引き起こす。

誰かがアイデアを言った ときには、他の要素を組み合わせ、新たなアイデアを

つくってみる。こうした発想の連鎖を繰り返していくと、個々のメンバーには還

元できないチームレベルの勢いが生まれ、それがチームの想像力や創造力を誘発

する。このような勢いを生じさせるためには、「まとまった時間」(No.15) や「創

造の場づくり」(No.16) が不可欠となる。また、普段から「ゆるやかなつながり」

(No.11) を持つことで、メンバーひとりひとりが自由に発言できる関係をつくるこ

とができる。

▼ その結果

発想の連鎖によって、ひとりでは思いつかないような斬新なアイデアや、それを

さらに魅力的にするような意見が次々と出され、チームとしての創造性が実現さ

れる。また、この勢いが、チームのダイナミックな「一体感をつくる」(No.7)こ

とにつながる。

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Loaf of Time

まとまった時間

プロジェクトにどっぷり浸かれる時間を確保する。

No.15

決して時計は見るな。これは若い人に覚えてもらいたいことだ。 ― トーマス・エジソン

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プロジェクトの活動の計画を立てている。

▼ その状況において

みんなで集まる時間を細切れに設定してしまうと、短い時間のなかでできるようなレベルの成果でよいという妥協が生じてしまう。

・ ある時間内にできることは限られている。

・ 何がどのくらいできるかという予想は、どれだけの時間をかけられるのかによ

って制限される。

・予定された時間のあとには、メンバーはそれぞれ予定が入る可能性がある。

▼ そこで

目指すクオリティに達するまで作業ができるように、まとまった時間をとる。

全員のスケジュールを共有し、各メンバーで日程を調整して、プロジェクトを最

優先にする時間をとる。また、作業が思いのほか長引いたり、話し合いが波に乗

った場合にそのまま続けられるように、その後の予定も空けておく。

▼ その結果

プロジェクトの作業に集中できる時間ができ、一続きの作業をみんなで行うこと

ができる。長時間の「まとまった時間」のなかで「創発的な勢い」(No.14) をつく

ることができれば、プロジェクトが飛躍的に前進する可能性が生まれる。さらに

長時間一緒に作業することにより、チームの「一体感をつくる」(No.7)ことにも

つながる。

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Collaborative Field

創造の場づくり

ワクワクする空間を自分たちでつくる。

No.16

イノベーションにはチームが必要だ。そして、チームには生育し成長する場所が必要である。 ― トム・ケリー

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プロジェクトの活動場所について考えている。

▼その状況において

自分たちにとって創造的な活動がしやすい場所はなかなか見つからない。

・ 創造的なアイデアは、開放的で自由な雰囲気の中で生まれやすい。

・フォーマルな空間では、インフォーマルな発言は出にくい。

・何が活動のしやすさにつながるのかは、プロジェクトや人によって異なる。

▼ そこで

楽しくのびのびと創造的な活動ができる空間を、自分たちでつくる。

まず、プロジェクトの活動の場には、メンバーで輪になって話しあえるテーブル

や、アイデアを書いたり情報を整理したりするためのホワイトボードがあるとよ

い。それに加えて、自由にのびのびと活動できる工夫や、活動が楽しくなる遊び

心を加えてみる。例えば、壁一面をすべてホワイトボードにすると、一般的なサ

イズのものに比べて、誰でも思いきり書くことができ、自由にどこまでも発想を

広げてよいという印象を生み出すことができる。また、ブレインストーミングな

どで付箋を使うときには、カラフルな色を混ぜて使ったり、面白いかたちのもの

を使ったりすると、見た目が華やかになり、楽しい雰囲気になる。

▼ その結果

魅力的な空間がメンバーのやる気と創造性を刺激し、「創発的な勢い」(No.14)が

生じやすくなる。また、場づくりにどのような工夫をするのかを一緒に考え、実

践することで「一体感をつくる」(No.7)ことにつながる。他のメンバーへのサプ

ライズとして「飛躍のための仕込み」(No.23)をして盛り上げるというのもよい。

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Activity Footprints

活動の足あと

自分たちの活動の軌跡を残す。

No.17

自分の作業空間を、行っている作業が明確にわかる状態にする。利害関係のあるオブザーバーはチームの作業空間に入り、15 秒間でプロジェクトの見通しを把握できる必要がある。オブザーバーは注意深く見れば、実際の問題や潜在的な問題についての情報をさらに入手できるようでなければいけない。 ― ケント・ベック

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プロジェクトにおける情報共有の仕組みを考えている。

▼ その状況において

作業の進捗情報を共有するだけでは、他のメンバーがやっていることをきちんと理解することはできない。

・ いま取り組んでいることの意味や意義は、それまでの経緯に依存している。

・自分の作業に集中するほど、自分がやっていること以外は見えなくなる。

・ 途中段階の成果や記録が担当した人の手元にしかないと、他の人は必要なとき

に参照できない。

▼ そこで

それぞれの作業の成果や記録をメンバー全員で共有し、誰でも必要なときに時系列でたどり直せる仕組みをつくる。

例えば、担当別のメーリングリストはつくらず、メンバー全員が入ったメーリン

グリスト上で、途中段階の成果や記録を共有し、やりとりも残るようにしておく。

そうすることで、そのときは必要でない情報であっても、各自がいつでも過去の

経緯を見直すことができるようになる。また、手描きのスケッチなどは、活動場

所の壁に貼っていくようにするとよい。新しいバージョンができたときには、貼

り替えずに重ねて貼っていくと、以前のバージョンを参照したり変化をみたりす

ることができるようになる。

▼ その結果

別々の作業をしていても、他のメンバーが何をしているのか/してきたのかを把

握できるようになる。特に、「臨機応変な動き」(No.22) によって他のメンバーを

手伝うときには、これまでの経緯を把握するための重要な仕組みとなる。また、

なんとなく横目でみていた他のチームの成果ややりとりが、後に自分の発想につ

ながることもあるし、プロジェクトの「全体」を感じることにもつながる。

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Chaotic Path to Breakthrough

意味のある混沌

何をどうすればよいのがわからない状況。

その状況こそ、まったく新しい道が開くチャンスである。

No.18

秩序立てて考えられないところで苦しんで、もがいて、必死の思いで何かを生み出そうとする。その先の、自分でつくってやろう、こうしてやろうといった作為のようなものが意識から削ぎ落とされたところに到達すると、人を感動させるような力を持った音楽が生まれてくるのだと思う。 ― 久石 譲

そのときに逃げちゃ駄目なんです。困るしかないんです。それで、うんと困ってると、もう少し奥の脳が考えてくれるんです…と思うしかないんですよ。自分の記憶にない過去の体験とか、いろんな物が総合されて、これなら納得できるっていう、それが自分の能力の限界だと思うんですけど、そういうものがポッと出てくるもんだと思うんです。― 宮崎 駿

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プロジェクトを進めているときに、行き詰まって停滞してしまっている。

▼ その状況において

計画性や効率性を重視するあまり、早くその状態から抜け出そうと妥協してしまう。

・ 不安定で不透明な状況は、居心地が悪い。

・ 刻々と時間は過ぎていき、目標のデッドラインが近づいてくる。

・ すぐに思いつくようなアイデアを採用するのは容易いが、それでは大きな飛躍

は起きない。

▼ そこで

行き詰まって混沌とした状態を、新しい道が開けるチャンスだと捉え、そこにとどまって考え抜く。

そのとき、すぐにアイデアや意見が出ずに、気まずい沈黙が続くことがある。し

かし、それは全員が深く考え込むために不可欠な沈黙なので、無駄な時間だと決

めつけて切り上げないようにする。本当に新しいことに取り組んでいる場合には、

自分たちが考えたことや、やっていることの意味自体も、新しくつくる必要がある。

そのために一緒に悩む時間をとることが重要なのである。

▼その結果

自分たちが取り組んできたことの新しい意味づけや、新しいアイデア、新しい方

法が生まれる。そうなると、いままで停滞していた状況から一段上のステージに

上がり、一気にプロジェクトが動き始めるだろう。そうした中で発想の連鎖が巻

き起こり、「創発的な勢い」(No.14)が生まれやすくなる。この段階で、再度「ゴ

ールへの道のり」(No.21) を考え直すとよい。

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Ideas Taking Shape

アイデアをカタチに

突飛なアイデアほど、説明されても実感できない。

No.19

プロトタイプなしで会議に臨んではならない。 ― デニス・ボイル

最高の芸術家は想像のみで制作するのではなく、深淵な道理を悟った「手」によって作品を生み出す。 ― ミケランジェロ

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メンバーに共有したいアイデアがある。

▼ その状況において

アイデアが革新的であればあるほど、一生懸命説明しても他のメンバーに理解してもらえない。

・ 頭の中に思い描いているイメージは、他の人からは見ることができない。

・ これまでに存在しないものをイメージすることは難しい。

・ ことばで表現できることには限りがある。

▼ そこで

アイデアを目に見えるカタチにし、それを見せながら説明する。

頭の中のアイデアを実際にカタチにしてみる。ラフなスケッチや大雑把なプロト

タイプで構わないので、他の人の目にも見えるようにする。「アイデアをカタチに」

する段階で、曖昧になっていた部分を具体化する。

▼ その結果

自分の中にあったアイデアを他のメンバーと共有することができ、チームのアイ

デアへと変えることができる。カタチにしたアイデアは「飛躍のための仕込み」

(No.23)になり、メンバーに新しい発想やアイデアを生み出すきっかけになるこ

とがある。また、「アイデアをカタチに」すると、「インサイド・イノベーター」(No.20)

として周りを巻き込みやすくなる。

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Inside-Innovator

インサイド・イノベーター

本当に新しいことは理解されない。

まずはメンバーを巻き込み、先導することから。

No.20

独創的なものははじめは少数派に決まっている。いずれ多数派になるが、多数というのは、もはや創造でも何でもない。できてしまったものです。― 湯川 秀樹

正しさだけでは人は動かない。共感には理屈よりも納得が必要なのである。 ― カルロ・ペトリーニ

発見とは、皆同じものを見ていても、違うことを考えているということだ。 ― セント=ジェルジ・アルベルト

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とてもよいと思うアイデアを思いつき、他のメンバーと共有したが、理解や共感をあまり得られなかった。

▼その状況において

そのアイデアがもつ可能性すら模索されずに消えてしまう。

・ 斬新なアイデアほど、理解されにくい。

・ そのアイデアが本当に成功するかは、事前には誰にもわからない。

・ 他の人から理解されないと、自信がなくなる。

▼ そこで

よいと思うアイデアを、まずは自分だけでもよいから育て、徐々に理解や共感をしてくれるメンバー増やし、巻き込みながら進めていく。

ひとりでできることから取り組んでいき、自らそのアイデアの可能性をより確か

なものに変えていく。その過程でわかったこと、例えば、それがどのようなアイ

デアであり、なぜ重要なのかということを、周りの人に語っていく。理解や共感

をしてくれる人がでてきたら、その人と一緒にアイデアを育て、さらなる理解者・

共感者を増やしていく。

▼ その結果

そのアイデアによって、成果やプロセスに大きな革新が起きる可能性がある。また、

そのアイデアそのものが残らなかったとしても、それが刺激となって、他のメン

バーの新しい視点や発想を生むきっかけになることがある。

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Roadmap to the Goal

ゴールへの道のり

目指すゴールへと確実に辿り着くために、

どうやって進むのかを確認する。

No.21

結果から逆算して、自分が今日何をすべかを論理的かつ合理的に思考できるかどうかが、成果をつかめるかどうかの分水嶺になるの です。― 長谷川和積

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プロジェクトが進み、目の前の作業に集中している。

▼ その状況において

ゴールにたどり着くことができないペースでプロジェクトを進めてしまう。

・ 目の前の作業に集中するほど、他のことが意識できなくなる。

・ 自分たちの近い将来の苦難を想像することは、心理的に避けてしまう。

・ 時間は有限である。

▼ そこで

メンバー全員で今後の流れを把握し、ゴールから逆算しながらマイルストーンを設定する。

全体の状況を踏まえて、ゴールから逆算し、いつまでに何ができていないといけ

ないのかを確認する。そして、今後何をすべきなのかを定期的に把握する。それ

を実現するためにどのようなスケジュールで取り組んでいくのかをみんなで決め

る。このとき、創造に不可欠な「意味のある混沌」(No.18)の時間や、クオリテ

ィ上げのために「一度こわす」(No.27)時間も考慮にいれることが重要となる。

▼ その結果

日々の作業ごとに達成すべき目標が明確になり、集中して作業に取り組むことに

つながる。また、プロジェクト全体と今後のことがわかるようになるので、「臨機

応変な動き」(No.22)がしやすくなる。

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Improvised Roles

臨機応変な動き

状況に応じて、役割の垣根を越える。

No.22

マウンドに立ってからでないと、どういう球を投げるかわからない。― 松坂 大輔

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プロジェクトが進行していくなかで、当初は予想しなかった問題やタスクが生じている。

▼その状況において

その問題やタスクに誰も取り組まず、放置されたままになってしまう。

・ 自分の役割に集中してしまうと、他のことに気づきにくくなる。

・ 無意識のうちに他人まかせになってしまう。

・ 役割以外のことをやらなくても、責任は問われない。

▼そこで

プロジェクト全体の進行と個々のメンバーの状況をみて、いま自分が何をすべきかを考え、臨機応変に動く。

一歩引いて、プロジェクト全体を俯瞰してみる。誰が何に取り組み、どこに取り

こぼしや追加の問題・タスクがあるのかを把握する。そして、重要度から判断して、

それらに取り組んでいく。このときは、以前に決めた「貢献の領域」(No.8)や役

割・担当にとらわれずに、できる人ができることをするという意識で積極的に動く。

今まで自分が関わってこなかった領域であれば、「活動の足あと」(No.17)をたど

り直して、これまでの経緯を理解しながら取り組む。

▼その結果

想定していなかった問題や状況にも迅速に対応し、プロジェクトを進めることが

できる。また、プロジェクトの進行とメンバーの状況にアンテナをはっておくこ

とで、起こりうるトラブルを未然に防ぐこともできるようになる。自分で選んだ「貢

献の領域」(No.8)の外で貢献することで、今後の自分の「貢献の領域」(No.8) を

広げることにもつながる。

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Spadework for Creativity

飛躍のための仕込み

プロジェクトを盛り上げる起爆剤を用意して、

一気に加速・飛躍させる。

No.23

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プロジェクトが進み、日々の作業をこなしている。

▼その状況において

チームの雰囲気が停滞し、新たな発想が生まれない。

・ 自分の作業に専念するほど、他のことが見えなくなる。

・ 時間に追われているときには、他のことをする余裕がなくなる。

▼ そこで

メンバーの気持ちが高まり、みんなが盛り上がるような仕掛けを準備し、実行する。

メンバーの新しい発想やアイデアを引き起こすようなものをプロジェクトに持ち

込んでみる。例えば、魅力的な本や映像を持ち込んで、メンバーの想像力を刺激

してみる。あるいは、いつもと違う雰囲気にするために、ちょっとした遊び心を

取り入れてみる。例えば、みんなが喜ぶようなお菓子の差し入れをしてみたり、

メンバーが盛り上がるような音楽をかけてみたりする。

▼その結果

プロジェクトの場が、より楽しく自由で創造的な雰囲気になる。そのことが、「創

発的な勢い」(No.14) を生み出すことにつながっていく。また、そのような共有体

験がチームの「一体感をつくる」(No.7)ことにもなる。みんなの反応を想像しな

がら仕込みをすることは、準備をしている側にとっても楽しいものだ。

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A Pattern Language forCreative Collaborations

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「成果」に関するパターン(No.24~33)

24

25 26 27

28 2930

313233

世界を変える力

クオリティ・ライン

こだわり合う

一度こわす

期待を超える

ファンをつくる

広がりの戦略

世界の文脈

つくり続ける強さ

感性を磨く

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Power to Change the World

世界を変える力

いまつくっている成果は、

本当に「世界を変える力」をもっているだろうか?

No.24

世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変える。 ― スティーブ・ジョブズ

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プロジェクトの成果がカタチになりつつあり、そのつくり込みを行なっている。

▼ その状況において

成果のつくり込みの詰めが甘いと、プロジェクトが目指す未来を実現することはできない。

・終わりが見え始めると、完成することが目的になってしまいがちである。

・外部からの目がないと、自分たちの現状に疑問を持てない。

・クオリティは数値で測れるものではない。

▼そこで

いまの成果が本当に「世界を変える力」を持っているのかを問い続ける。

ターゲットとなる人たちがその成果にどのように出会い、どのような印象をもち、

どのように使うのかを具体的に想像する。その上で、成果を本当に使ってくれる

のか、そして、使い続けてくれるとしたらそれはなぜなのかを考える。もし「世

界を変える力」を持っていないとしたら、どうしたらその力を持たせることがで

きるかを考える。すでに力を持っているならば、それを強化するためにはどうす

ればよいか考える。

▼ その結果

その成果が世界を変えるカギはどこなのかが明確になる。それによって、プロジ

ェクトに取り組む意義もより明確になるため、最後まで徹底したクオリティ上げ

をすることを後押しする。

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Quality Line

クオリティ・ライン

目指すクオリティの高さを

何度も何度も確認する。

No.25

一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。 ― 松下 幸之助

絶対勝つと思ったら、勝つ。高く昇ろうと思ったら、高い所を思え。勝つのは、たいがい、勝てると思っている人間だ。 ― アーノルド・パーマー

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高い成果を求めて、つくり込みをしている。

▼その状況において

各自が「よい」ものをつくりたいと思っていても、そこそこのクオリティになってしまう。

・ 人によって、「よい」と思うレベルは異なる。

・ 一度カタチになると、満足してしまう。

・ 明確でなく、目に見えないものをメンバー間で共有することは難しい。

▼ そこで

目指すクオリティを高いレベルに掲げ、それと現状との差異を全員で何度も確認する。

高いクオリティは、現状との差異で「まだ足りない」という感覚からのみ感じる

ことができる。プロジェクトのメンバーと、ことあるごとに自分たちが目指して

いる「クオリティ・ライン」が相当に高いということ、そして「現状では、圧倒

的に足りない・遠い」ということを確認しあうことが大切だ。そのような機会を

何度も設けよう。

▼その結果

プロジェクトのメンバー全員で、現状に満足することなく、さらにクオリティを

上げ続けることができる。そのような飽くなきクオリティ上げ以外に、近道はない。

このように高いクオリティのものをつくることによって、「世界を変える」(No.24)

ことや「伝説をつくる」(No.3)ことにつながる。

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Creative Clashes

こだわり合う

少しでもよくするために、本気でぶつかり合う。

No.26

遠慮したり、内にこもらせず、面白くぶつかり合うことが大事だね。ぶつかり合うことが面白いと思って互いをぶつけ合う。そうすれば、逆に生きてくる。― 岡本 太郎

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ある程度納得できるアイデアや意見が出てきた。

▼その状況において

多少違和感を感じたり代案があったりしても、それらの意見は出しにくくなる。

・ これまでの努力・苦労を台無しにすることは、心理的に難しい。

・ 意見を言うことが、相手への批判と捉えられてしまうことがある。

・ 何も言わない方が、プロジェクトが滞らずに進むように感じる。

▼そこで

よりよい成果を生み出すために、本気で意見をぶつけ、話し合う。

自分の意見を出すときには、よりよい成果を出すためだと思って、どうして自分

がそう考えるのかを、相手に誠意が伝わるように話す。代案が思い浮かばなくても、

違和感があることだけはまず伝え、他のメンバーも巻き込みながら一緒に考えて

いく。逆に、自分が納得できない意見が出ても否定せず、さらに掘り下げて聞い

てみる。メンバー同士のぶつかり合いではなく、アイデアや意見のぶつかり合い

であることを意識するとよい。

▼その結果

それぞれののアイデア・意見の良い点・悪い点が明確になる。それが、ときには、

そもそもの前提から「一度こわす」(No.27)につながったり、まったく新しいア

イデアが生まれる可能性もある。細部までこだわり抜くことによって、徐々に高

い「クオリティ・ライン」(No.25)に近づいていく。

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Generative Destruction

一度こわす

思い切ってこわして、つくり直す。

No.27

今あるものに継ぎ足すな。今あるものをゼロにしてどうするか考えよ。ー 松下 幸之助

良グッド

好 は 偉グレート

大 の最大の敵である。偉大だといえるまでになるものがめったにないのは、そのためでもある。 ― ジェームズ・C・コリンズ

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やってきたことが、とりあえずカタチになった。

▼その状況において

つくっているものが自分たちの目指すクオリティに達していないと気づいても、手直し程度で済ませてしまう。

・ これまでの努力・苦労を台無しにすることは、心理的に難しい。

・ どこをどうすればクオリティが上がるのかは、明確ではない。

・ 時間は有限である。

▼そこで

カタチになったものを思い切って壊して、つくり直す。

成果を見る人は、これまでの経緯や苦労を知らずに、成果そのものを見る。だか

らこそ、成果だけを見ていまいちであることがわかったら、つくり直す必要がある。

「つくり直す」といっても、まったくの白紙に戻るわけではなく、一度つくった経

験を活かすことができる。どのようなプロジェクトでも一回から数回のつくり直

しが発生するものだ。つくり直しの作業は、「活動の足あと」(No.17)を活用し、

どこまで戻ればよいかを考え、「ゴールへの道のり」(No.21)を再確認してから始

めよう。

▼その結果

そうやってつくり直したものは、高い「クオリティ・ライン」(No.25)にぐんと

近づき、「世界を変える」(No.24)ものになる可能性が高まる。一度カタチになっ

たものを見ているので、つくったものが受け手からどのように見られるのかを強

く意識できるようになるからである。

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Beyond Expectations

期待を超える

「いいね」の上をいく。

No.28

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やってきたことがひとまずカタチになった。

▼その状況において

つくった成果に対して、受け手から「いいね」という当たり障りのない評価しか得られない。

・人の興味範囲は様々であり、共感を得るのは難しい。

・時間と労力をかけてつくったものは、つくった本人には実際よりもよく見えて

しまう。

・事前に想定していたのと同じようなものには、驚きや感動は生まれにくい。

▼ そこで

受け手が想像していると思うものを想像し、それを超えるように成果を育てていく。

成果がどのような種類で、類似のものがどのようなものかによって、受け手が期

待するものを大方想像することができる。その期待を想像した上で、それを超え

るようなつくり込みを行う。ただし、受け手の期待を超えること自体が目的とな

ってはならない。あくまでも、自分たちがどのようなものを生み出したいかとい

うことからスタートし、それが期待をどう超えるのかを考える。

▼ その結果

受け手が驚き、興味をもつような成果に仕上げることができる。また、受け手の

期待を想定することで、「世界を変える力」(No.24)を持たせることや、「ファン

をつくる」(No.29)ためのつくり込みがしやすくなる。

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Project Followers

ファンをつくる

つくったものの世界観に魅了される人たちを想う。

No.29

まず自分が感動しなければいけない。そして、それをなんとしても伝えたいという気持ち。……人を感動させるのは、その何かをなんとかして共有したい、わかちあいたい、という心意気なのではないでしょうか。 ― 千住 博

人に喜んでもらう、人のためになる音楽をつくりたい、とは思うが、人の評価を意識してつくるということではない。 ― 久石 譲

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やってきたことが、とりあえずカタチになった。

▼その状況において

自信をもってつくったが、世の中にはなかなか広まっていかない。

・機能的に十分で、 クオリティが高いからといって、人気が出るとは限らない。

・つくったものの魅力を、つくった本人が語っても、説得力がない。

・ 人は自分が自分が魅了されたものでなければ、他の人に伝えようと思えない。

▼ そこで

ワクワクしてくれる「ファン」をつくるつもりで、つくったものの世界観を磨き上げる。

人に愛されるものをつくりたければ、まずは自分が愛情を注げるものにしなくて

はならない。そのために、「ファン」がワクワクしている姿を想像しながら、信念・

哲学をもって細部までこだわり抜く。

▼その結果

プロジェクトの成果や、それを生み出したプロジェクトへのサポーターや協力者

が現れ、成果やプロジェクトを周囲に魅力的に語ってくれるようになる。それが「伝

説をつくる」(No.3)ことにつながっていく。さらに、プロジェクトのメンバーに、

「ファン」の期待に応えつつ、その「期待を超える」(No.28)気持ちが芽生え、次

の創造的コラボレーションへのモチベーションにもつながる。

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Strategic Developments

広がりの戦略

ひとつでたくさん、チャンスにつなげる。

No.30

カルピスの原液を作らないといけない。それは最初から薄く、広くを狙うのではなく、濃いものを作れば、必ずそこから派生して広がっていく。 ― 秋元 康

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プロジェクトの成果の活かし方を考えている。

▼その状況において

当初目指していた成果や目標の実現しか見ていないと、展開のチャンスを逃してしまう。

・ 目標の達成に夢中になっていると、達成した後のことまで意識を回しにくい。

・その後の展開は未知数であるので、自然の成り行きや偶然に頼ってしまいがち

である。

・チャンスは、ただ漠然と待っていてもやって来ない。

▼そこで

目指していた成果だけでなく、さらなる展開を考え、多面的にアプローチしていく。

自分たちの成果が、目指していたのとは別の分野で活用ができないかを考え、そ

れを実行するチャンスを模索する。例えば、プロジェクトの魅せ方を変えてアピ

ールしたり、ターゲットの層を広げてみて狙い方を変えてみたりする。一つの成

果だけで終わらせるのではなく、「一石三鳥」を狙うくらいのつもりで、広がりを

持たせる。

▼ その結果

自分たちのプロジェクトが多方面に広まることで、次々と新たなチャンスに出会

える可能性が高くなる。しかも、それをあらかじめ狙っておくことで、スピーデ

ィーな展開が期待できる。また、プロジェクトの途中段階から考え始めた場合には、

最終段階のつくり込みでのモチベーションを高めることにつながる。

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Context of the World

世界の文脈

世界の流れを知らずして、新たな価値は生み出せない。

No.31

新しいことについて考えるときはそれについて本当に研究しなさい。見かけのアイデアだけでなく、それに関するすべてのことを調べなさい。 ― ウォルト・ディズニー

アートの世界もそうですが、「描きたいものを自由に描けばいい」と教えられ、その枠内で創作を続けている人がほとんどです。しかし、そういう人たちは結局、趣味の域を抜け出せずにその創作活動を終えるだけです。アート業界で生きていくなら、この世界のルールを一から十まで把握したうえで、しっかりとターゲットを絞り、“ ターゲットに向かって弾を撃つ ” というやり方をしなければ勝てません。 ― 村上 隆

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創造的コラボレーションに継続して取り組みたい。

▼ その状況において

自分たちのやりたいことや成果を主張しているだけでは、世界で本当に受け入れられるものを生み出すことはできない。

・ 素晴らしいものが全て、世の中で必要とされているとは限らない。

・ 生み出すものの意義は、これまでに成されてきたこととの関係性のなかで決ま

ってくる。

▼ そこで

世界の文脈を踏まえて、自分たちの取り組んでいる/取り組むことにどのような意義・価値があるのかを考える。

ここで世界の文脈(コンテクスト)といっているのは、世界全体の流れや、自分

たちが取り組んでいる分野の歴史と動向のことである。文献を調べたり、関係者

の話を聞いたりして、自分を取り巻く文脈を理解する。そして、それを踏まえて、

現在ないしは将来に、どのようなもの・ことが必要とされるのかを想像し、自分

たちの取り組んでいること・つくっているものに対する意味や価値を考え続ける。

▼その結果

自分たちの取り組みが、より広い視野に位置づけられ、世界に受け入れやすく効

果的なものになっていく。それでこそ、「未来への使命感」(No.1)をもったプロ

ジェクトが「世界を変える」(No.24)ことつながるのである。また、プロジェク

トや成果について語るときに、背景と位置づけを踏まえて、さらに魅力的に語る

ことができるようになる。

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Enduring Strength

つくり続ける強さ

心も身体もタフになる。

No.32

人生において重要なことは、大きな目標を持つとともに、それを達成できる能力と体力を持つことである。 ― 孫 正義

長い小説を書くのはサヴァイヴァルの訓練のようなものです。そこでは芸術的感受性と同じくらい、身体の強靭さが必要とされます。 ― 村上 春樹

仕事は ” 点 ” ではなく ” 線 ” だ。集中して物事を考え、創作する作業を、次へまた次へとコンスタントに続けられるかどうか。… 一流とは、ハイレベルの力を毎回発揮できることだ。 ― 久石 譲

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創造的コラボレーションに継続に取り組みたい。

▼その状況において

精神力や体力の限界から、途中で妥協したり、続けられなくなったりしてしまう。

・ 創造行為には、集中力・ねばり強さなどの精神力や、体力が求められる。

・コラボレーションは複数人で取り組むものなので、自分のリズムで休むことが

できない。

・ 追い込みの時期はたいてい、身体を休める時間を十分に取ることができない。

▼ そこで

コラボレーションの基礎体力を上げるために、日々、資本となる心と身体を鍛える。

例えば、日頃からランニングをして体を鍛え、長時間走り続けることへの耐性を

つける。登山のように、常に自分の体力・精神力をともにコントロールする必要

があるものも、効果的である。また、鍛錬だけでなく、健康を保つためのベース

となる食生活や睡眠にも、日頃から気を配る。

▼その結果

創造的コラボレーションに、集中力をもって、妥協せずに、しっかり取り組むこ

とができるようになる。また、土壇場に追い込まれたときでも、最大限のパフォ

ーマンスを発揮できる。これらの鍛錬も、少し続けてみるとそれ自体が楽しみに

なり、継続することができるようになる。

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Polishing Senses

感性を磨く

豊かで深みのあるクオリティを感じ、味わう。

No.33

いつも自分を磨いておけ。あなたは世界を見るための窓なのだ。 ― バーナード・ショー

この世で最高のもの、最も美しいものは見たり触れたりはできません。心で感じるものです。 ― ヘレン・ケラー

意識的に記憶している過去にとどまらず、すっかり忘却の底に沈んでいるであろう過去が、それぞれの人間のなかで、かたちを変えつつ未来に反映していく。 ― ミヒャエル・エンデ

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創造的コラボレーションに継続的に取り組みたい。

▼ その状況において

同じ分野においてすでに誰かが成し遂げていることを意識するばかりでは、独自性が生まれにくい。

・ 専門分野を深く掘り下げれば、新しいものを生み出せると思いがちである。

・ 同じ分野のことだけを注視していると、生まれてくる発想に限界がある。

・ すでにあるものを目標にすると、知らず知らずのうちに、それにとらわれてし

まう。

▼ そこで

良質なものを見たり感じたりすることで、感性を磨く。

優れた芸術や自然がもつ、豊かで深みのあるクオリティを心と身体で受け止める。

このような感覚を味わうこと、そのような時間を過ごすことは、何事にも代え難

い経験となる。自分に馴染みのない分野・ジャンルを知りたい場合には、チーム

のメンバーや身近な人に紹介してもらうというのもよい。目標に向かって突き進

んでいるときとは異なるモードで、じっくりと味わおう。

▼その結果

高いクオリティというものを、感覚的につかむことができるようになる。これが、

さらなる創造的コラボレーションの糧となる。

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コラボレーション・パターン一覧

No.0  創造的コラボレーション No.1   未来への使命感No.2   方法のイノベーションNo.3   伝説をつくる

No.4   成長のスパイラルNo.5   共感のチームづくり No.6   レスポンス・ラリーNo.7   一体感をつくるNo.8   貢献の領域No.9   成長のリターンNo.10 自発的なコミットメントNo.11  ゆるやかなつながりNo.12  弱さの共有No.13  感謝のことば

No.14  創発的な勢いNo.15  まとまった時間No.16  創造の場づくりNo.17  活動の足あとNo.18  意味のある混沌No.19  アイデアをカタチにNo.20  インサイド・イノベーターNo.21  ゴールへの道のりNo.22  臨機応変な動きNo.23  飛躍のための仕込み

No.24  世界を変える力No.25  クオリティ・ラインNo.26  こだわり合うNo.27  一度こわすNo.28  期待を超えるNo.29  ファンをつくるNo.30  広がりの戦略No.31  世界の文脈No.32  つくり続ける強さNo.33  感性を磨く

コラボレーション・パターン プロジェクト

「創造的コラボレーション」の秘訣をパターン・ランゲージとして記述することに挑戦するプロジェクトチーム。本冊子は、井庭 崇(慶應義塾大学 総合政策学部准教授)をリーダーとして、総合政策学部・環境情報学部に所属する学部 1 ~ 4 年生、原澤 香織、本田 卓也、濱田 正大、荒尾 林子、松本 彩、鎌田 安里紗、渋谷 岳史、伊作 太一、為房 彩乃、池田 優、酒見 玲奈、野口 奈摘、下向 依梨、中村 菫、森 有紗、川野 遥香によって制作された。

※本冊子についてのご意見・ご感想・お問い合わ

せは、[email protected] まで、メール

にてお願いいたします。

Collaboration PatternsA Pattern Language for Creative Collaborations(Ver.0.60)

〒 252-0882 神奈川県藤沢市遠藤 5322

慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部

井庭崇研究室

コラボレーション・パターン プロジェクト

Home Page: http://collabpatterns.sfc.keio.ac.jp/

E-Mail : [email protected]

twitter : http://twitter.com/collabpatterns/

2012 年(平成 24 年)11 月 22 日

コラボレーション・パターン プロジェ

クト

原澤 香織 , 荒尾 林子 , 為房 彩乃 ,

池田 優 , 井庭 崇

発 行 日

編 著

イラスト

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Ver. 0.60November, 2012

http://collabpatterns.sfc.keio.ac.jphttp://twitter.com/collabpatterns

[email protected]

Collaboration Patterns Project

創造的コラボレーション

未来への使命感

方法のイノベーション

伝説をつくる

成長のスパイラル

共感のチームづくり

レスポンス・ラリー

一体感をつくる

貢献の領域

成長のリターン

自発的なコミットメント

ゆるやかなつながり

弱さの共有

感謝のことば

創発的な勢い

まとまった時間

創造の場づくり

活動の足あと

意味のある混沌

アイデアをカタチに

インサイド・イノベーター

ゴールへの道のり

臨機応変な動き

飛躍のための仕込み

世界を変える力

クオリティ・ライン

こだわり合う

一度こわす

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ファンをつくる

広がりの戦略

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Collaboration Patterns Project

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