1
UraRah: 小豆島弁で私たち UraRah: 小豆島弁で私たち 2012 年(平成 24 年) 1 月 15 日発行 第7号 2012 年(平成 24 年) 1 月 15 日発行 第7号 …… 使姿姿…… …… …… …… 姿小豆島 竜伝説 !? Special Thanks:いしかわまなみ( 張り子) ハリコマチhttp://harikomachi.jugem.jp Text:やま / Illustration:柳生忠平 / Photo:りつこ&ユッコ 登場人物:テツさん 44/ エイジ君 44/ やま 39/ ホクト 38/ 忠平くん 35( 年齢順 ) ( ( 1 2 3

うららー新聞 vol.07

Embed Size (px)

DESCRIPTION

vol.07 オモテ面 小豆島の地元民による地域密着型どたばたフリーペーパーです

Citation preview

Page 1: うららー新聞 vol.07

UraRah: 小豆島弁で私たちUraRah: 小豆島弁で私たち2012 年(平成 24年)

1 月 15日発行第7号

2012年(平成 24年)

1 月 15日発行第7号

プロローグ

「やまちゃん。おはようございます」

もー誰なん

こんな朝早く。って、わっ、もう十二

時やん。うわー、頭いてー。またやってしもた。

「おはよぉ〜。忠平くん

?」

「やまちゃん。行きますよ。起きてください」

「行くってどこに

?」

「もちろん、あずき島です」

「はぁ

あずき島

?」

「もう、みんな八幡で待ってますから」

ガチャ。って、なんのこっちゃ。あっ、そーいや、

昨夜の飲み会で「あずき島まで寒中水泳やろうや

!」

とか、バカ騒ぎしとったような。とりあえず、ぐび

ぐびとコップ一杯水を飲み、車に乗り込む。

あずき島を目指す

「ジャジャーン

!」

忠平くんがうれしそうに頭を、いや、眼を輝かせて

白い布を広げている。

「なにこれ

?」笑いながらホクトが言う。

「見て分かんないんですか?褌ですよ」

「分かってるよ!だから、なんで褌なんだ

って言っ

てんの」テツさんが鋭くつっこむ。

「冬の海プラス男といえば褌でしょ」

「なるほど。その通り」エイジ君はいつでも柔軟に物

事を受け入れる。

かくして、純白のひらひらがみんなに配られた。

「えー、まじかよ。どーやってつけるんだよ」

テツさんがまだブツクサ言っている。エイジ君なん

てノリノリで即装着。両手を前に突き出し、足をス

リスリ、って、それは「まわし」ですから…

「よし。行くぞ

!」

褌をきゅっとしめ、僕たちは意気揚々と海へと歩き

だす。

「遠っ」

思わずつぶやいてしまった。浜に立つと、あずき島

は思いのほか遠い。が、ここまできたら行くしかない。

竜を見たことがあるかい

僕はあるよ

竜は僕らの心の中にいる

そして、僕らの経験を食べて少しずつ大きくなっていく

だから僕らは強くなれる

きみたちの心の中に住む竜を大切に育ててほしい

二〇十一年十一月十八日 東日本大震災被災地の福島県相馬市の子どもたちに

ブータン ワンチュク国王が贈った言葉

竜を見たことがあるかい

僕はあるよ

竜は僕らの心の中にいる

そして、僕らの経験を食べて少しずつ大きくなっていく

だから僕らは強くなれる

きみたちの心の中に住む竜を大切に育ててほしい

二〇十一年十一月十八日 東日本大震災被災地の福島県相馬市の子どもたちに

ブータン ワンチュク国王が贈った言葉

「ひょぇ〜」

が、褌が濡れ始めると、急速にやる気が萎え、胸ま

で水につかったところで、みんなが緊急用のゴムボー

トにしがみつき始めた。

「あかん。やばいって

!」

小さなゴムボートはほとんど海の中に沈んでいる。

「無理

!」「沈む

!」「帰ろっ

!」「ワッー

!」

みんな一斉にあずき島に背を向け、浜に戻り始める。

「あれっ、行かんのですか

?」 

一人元気に先頭を泳いでいた忠平くんが、海面から

ツルリと光る頭をのぞかせて振り返る。

浜辺に駆けあがり、震える手でタオルを取り出し、

冷たく濡れた体を拭く。

その時だった。ポンッという音とともに、突然なに

かが現れた。

「だらしない

!」

謎の物体が僕らに話しかける。

「なんなん、おまえ?カエル

?」

「失敬な!私は

竜。

あずき島にいらっしゃる竜神さま

の使い小竜だ」

「はぁ

?」

「君らの情けない姿に大笑い、オホン。いや、ひたむ

きな姿に感動されて、竜神さまが君らの願いを叶え

てやろうとおっしゃっている。ただ君らが、竜神さ

まにお会いする為には小豆島にすむ竜人たちが持つ

珠が必要だ」

「竜人ってなんだよ

?」

「竜は滝に…

。」

ポンッ。大事なところで、小竜は消えてしまった。

滝に行く

「みんなの願いを叶えてくれるって言ってましたよ」

「そんなわけねーだろ」

「俺、ギャルのパンティほしい」

「おっ。ホクトくんマニアだね」

「とりあえず滝に行こう

!」

「ところで、滝ってどこにあんの

?」

「たしか、島の北側にあったはずです」

くねくねした山道を車でひたすら登り、僕らはよう

やく「山の観音」という山寺にたどり着いた。『滝ま

で四五〇米』古ぼけた小さな看板が山門の脇に立っ

ていた。そこから山の奥に向かって細い道が延びて

いる。

「なんだか不気味な感じだな」

「そら、竜人がおるくらいやからな」

「おもしろそう!行ってみよう」

「でも、なんで僕ら褌のままなん

?」

褌一丁の怪しい男たちは滝を目指して歩きはじめる。

「はぁはぁ。かなりキツイな」

「そらそうですよ。ここは行場ですからね」

ザーッ。

「おっ、水の音が聞こえてきたんちゃうん」

光も差しこまない鬱蒼とした森の先に、突然、滝が

出現した。ごつごつと垂直にそびえたつ岩の上から

落ちる水しぶきだけが神々しく輝いている。

「おー

!」

自然と感動の声が漏れる。まずは手を合わせ、心を

静め、竜人さまに挨拶を…

「ヒャッホー

!」

静寂を破る突然の奇声に目を開けると、ホクトがす

でに滝つぼへ突入していた。おいおい…

。僕もあ

わてて滝へ向かう。

「ひー

!」

冷たい!いや、冷たすぎて、痛い!そして、頭上か

らも容赦なく水が降りかかる。とにかく必死の思い

で滝の下に並ぶ僕たち。

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ…

」気がつけば、みんな

で雄たけびを上げていた。

「あぁ〜。痛い痛い

やっぱ無理〜」

あまりの冷たさに悲鳴を上げて僕は滝つぼから飛び

出した。

ボンッ。

そんな僕の目の前に煙とともに、またしても不思議

な物体が現れた。

「ウホッ。騒がしいな。なにごとじゃ」

「出たー。竜人

!」

「ホッホー。わしゃ猿神じゃ」

「なんだよ。俺たちは竜に会いに来たんだぜ。竜はど

こだよ

?」

「残念ながらここに竜はおらん。東の岩場におったか

な」

「なんだよ〜、竜いないのかよ。滝行が全くの無駄じゃ

ん」

「ウッホッホー」ボンッ。猿神は消えてしまった。

「東の岩場

たしかあそこに竜が祀られていたよう

な」忠平くんがつぶやく。

洞雲山

「この上です」

忠平くんが指さす方向を見上げると、ごつごつとし

た岩肌にパックリと大きな亀裂が口を開けていた。

空はだんだんと鉛色の雲に覆われ始め、冷たい風の

中に小雪が舞っていた。僕らは急峻な岩場を登り始

める。なぜか未だに男たちは褌。

「着きました」

『八大竜王』お社の正面にそう記されていた。

「八大竜王と言えば雨をもたらす竜だ」

「おっ。とうとう竜登場や

!」

「竜出でよ〜

!」

「そんな簡単に出てくるわけないやろ」

ボンッ。暗い岩の裂け目から突然竜が出現した。

「はやっ

!」

「わしは八大竜王の竜一じゃ。小竜から話は聞いてお

る。ほれ、これを託そう」

鋭い爪の生えた竜の左手には透明の珠がにぎられて

いた。

「おっ、話が早いな」

「やりました !

これで竜神に僕らの願いを聞いても

らえますよ」

「なぁなぁ、どうやったら竜神が出てくるん

?」

「あわてるな、小豆島の竜はわしだけじゃないのだ。

他の竜人からも珠をもらってくるがよい」

「ドラ○ンボールかい !」

「竜は滝に住んでいる。滝といっても水が流れている

とは限らんからな」

ボンッ。謎の言葉を残して竜は消えた。

「なんだよ。まだ竜がいるのかよ」

「水の流れていない滝

?」

「竜よりも人魚に会いたいわ」

「竜の珠きれーだな」

どうやら僕たちの竜伝説はまだまだ始まったばかり

のようだ。

気がつけば雲の隙間から真っ赤な夕日が姿を現し、

みんなの褌がオレンジ色に染まっていた。アホやな、

みんな。なんで褌なん

まぁえいか。僕はなんだか

幸せな気分だった。

竜を見たことがあるかい

僕はあるよ。

この島に来れば、君にもきっと見える。

この物語は、ほとんどノンフィクションです。

小豆島 竜伝説 !?Special Thanks:いしかわまなみ ( 張り子) ハリコマチ http://harikomachi.jugem.jp

Text:やま / Illustration:柳生忠平 / Photo:りつこ&ユッコ

登場人物:テツさん 44/ エイジ君 44/ やま 39/ ホクト 38/ 忠平くん 35( 年齢順 )

③洞雲山(

どううんざん)

小豆島霊場第一番札所。小豆島

に点在する山岳霊場の一つ。か

つて、山伏たちの修行の場で

あった。ごつごつした岩場に開

く大きな洞窟のなかに本堂があ

る。夏至の頃、太陽の光がほん

の数分間だけ岩肌に浮き出させ

る観音様の像は非常に神秘的。

③洞雲山(

どううんざん)

小豆島霊場第一番札所。小豆島

に点在する山岳霊場の一つ。か

つて、山伏たちの修行の場で

あった。ごつごつした岩場に開

く大きな洞窟のなかに本堂があ

る。夏至の頃、太陽の光がほん

の数分間だけ岩肌に浮き出させ

る観音様の像は非常に神秘的。

①小豆島(あずきじま)

土庄町双子浦沖にある小

島。『古事記』の国産み伝

説によると、イザナギとイ

ザナミの二神が本州や四国

などの八つの大きな島を産

み出したのちに、さらに産

み出した六つの島の中にあ

ずき島が登場する。かつて

カワウ(海鳥)の糞害によっ

て島上部の木々が枯れてハ

ゲ島となってしまったが、

植林効果によって最近再び

緑が復活してきた。うら

らー部員未踏の地・・・。

①小豆島(あずきじま)

土庄町双子浦沖にある小

島。『古事記』の国産み伝

説によると、イザナギとイ

ザナミの二神が本州や四国

などの八つの大きな島を産

み出したのちに、さらに産

み出した六つの島の中にあ

ずき島が登場する。かつて

カワウ(海鳥)の糞害によっ

て島上部の木々が枯れてハ

ゲ島となってしまったが、

植林効果によって最近再び

緑が復活してきた。うら

らー部員未踏の地・・・。

②御来迎の滝 (ごらいこうのたき)

小豆島霊場第八十番札所「子

安観音寺」奥の院の「山の観音」

から歩いて二十分程度の山の中

にある滝。ごつごつした岩肌か

らほとばしる水。なかなか神秘

的な雰囲気に包まれている。ま

た、「山の観音」本堂への真っ

暗な参道もスリル満点!

②御来迎の滝 (ごらいこうのたき)

小豆島霊場第八十番札所「子

安観音寺」奥の院の「山の観音」

から歩いて二十分程度の山の中

にある滝。ごつごつした岩肌か

らほとばしる水。なかなか神秘

的な雰囲気に包まれている。ま

た、「山の観音」本堂への真っ

暗な参道もスリル満点!

1

2

3