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ミスト生成法及びミストの応用性に関する研究 Study of Mist Generation Method and Its Application ○学 古澤 伸治(熊本大) 櫻井 英地(熊本大) 岩下 知晃(熊本大) 川原 顕磨呂(熊本大) 佐田富 道雄(熊本大) Shinji FURUSAWA, Eichi SAKURAI, Tomoaki IWASHITA, Akimaro KAWAHARA, Michio SADATOMI Kumamoto UniversityKurokami2-39-1, Kumamoto-city, Kumamoto Key Words: Mist, Mist generator 1. 緒言 微細液滴(ミスト)は現代社会において必要不可欠な ものとなっており,家庭内では殺虫剤の噴霧などに使わ れている.また,産業界では燃料噴射や製鉄プロセスに おける噴霧,農薬散布などで幅広く利用されている.現 在市販中の二流体ノズル式ミスト発生器では,液体と気 体の両方を加圧するため,二つの動力源が必要となる. 一方,本研究で使用するミスト発生器 (1)(2) は圧縮空気流 を円管内に導くだけで水を自吸するので動力源は一つ で済む.さらに簡単な構造であるために低コストで生産 できるという特長をもつ.そのような発生器の応用性に ついて調べたので,その結果を報告する. 2. 実験 2.1 ミスト発生装置と発生原理 供試ミスト発生装置の概略を Fig. 1 に示す.円管へ高 圧の空気を供給すると縮流部では,連続の式により高速 空気流となる.そのため静圧はエネルギー保存式(ベル ヌーイの式)を満たすように小さくなる.ある程度まで 空気流量を大きくすると,その静圧は大気圧以下(負圧) となり,縮流部(オリフィス板)の直下流に設けた吸水 部(微小孔)から水を自吸できる.その後,自吸された 水は高速空気流によりせん断され微細な液滴(ミスト) となって空気と共に噴出される. 2.2 ミスト発生装置による実験 Fig. 2 に実験装置の概略を示す.コンプレッサーから の空気の流量 Q G はバルブで調節し,20 ~ 160 l/min 範囲で変化させ, Q G を標準大気圧, 20℃で換算した Q G0 を実験値とした時,水タンクの水面と装置吸水部との高 さを等しくして,高低差による水の流入を防いだ.吸水 流量 Q L はバルブで調節し容積式流量計で,吸水部の負 P neg は圧力変換器で測定した.さらにミスト発生装置 の発生器先端長さ l out 13.5 mm ~ 31.0 mm まで 3.5 mm ずつ変化させ,それぞれの長さでの性能を比較し,効率 よくミストを噴霧できる長さを選定した. 次に,選ばれた l out = 24.0 mm の先端を発生器(選定理 由は 3.1 節で示す.)を使用して,ミストの噴霧範囲を拡 大させるために行った実験について述べる.噴霧範囲拡 大のために自作の拡大口あるいはプロペラを装着した. Fig. 3 に拡大口の概略図と写真,Fig. 4 PET 製(0.376 g)と真鍮製(1.278 g)のプロペラの写真を示す.ここ で材質(質量)の異なるプロペラを使用したのは,回転 数の違いがミスト噴霧に与える影響を調べるためであ る.そして,それらの装着の有無についてミストの拡が り分布とミスト径を調べた.拡がり分布の測定条件は噴 霧時間 5 min,吸水流量 Q L = 0.2 l/min,空気流量 Q G = 300 l/min とした.拡がりの測定方法は,ミストの噴霧口か H = 50 cm の場所に,噴霧中心から十字状に約 1.3 cm 間隔で 22 本ずつの試験管を並べてミストの水を捕集す る方法であった.また,ミスト径の測定では測定時間は 瞬時であり,他の条件はミスト分布の測定条件と同じに した.また,ミスト径の測定方法には液浸法 (3) を用いた. 液浸法とはスライドガラスに塗るか受け止め皿に満た すかした受止液(シリコンオイル)の中に,噴霧粒を飛 びこませて顕微撮影して測定する方法である. Fig. 1 Mist generator Fig. 2 Experimental apparatus of mist generator Fig.3 Principle and picture of spreader A/D convertor Pressure gauge Air flow meter Liquid flow meter Flow control valve Mist generator P Gin QL Q G Air compressor Water tank Regulator Mist room PC Bath pump P neg P G Pressure gauge Flow control valve Orifice Pressurized air PlenumAnnular spaceSucked water P 1 ,v 1 P 2 ,v 2 Suction part Suction part A-A l out Orifice 501

Water tank Mist generator - jsme.or.jpFig. 7 Mist radial distribution of mist flow rate Fig. 8 Mist diameter distribution -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 0 100 200 300 P neg Pa G0 l/min

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  • ミスト生成法及びミストの応用性に関する研究 Study of Mist Generation Method and Its Application

    ○学 古澤 伸治(熊本大) 学 櫻井 英地(熊本大) 学 岩下 知晃(熊本大)

    正 川原 顕磨呂(熊本大) 正 佐田富 道雄(熊本大)

    Shinji FURUSAWA, Eichi SAKURAI, Tomoaki IWASHITA,

    Akimaro KAWAHARA, Michio SADATOMI

    Kumamoto University,Kurokami2-39-1, Kumamoto-city, Kumamoto

    Key Words: Mist, Mist generator

    1. 緒言

    微細液滴(ミスト)は現代社会において必要不可欠な

    ものとなっており,家庭内では殺虫剤の噴霧などに使わ

    れている.また,産業界では燃料噴射や製鉄プロセスに

    おける噴霧,農薬散布などで幅広く利用されている.現

    在市販中の二流体ノズル式ミスト発生器では,液体と気

    体の両方を加圧するため,二つの動力源が必要となる.

    一方,本研究で使用するミスト発生器 (1)(2)は圧縮空気流

    を円管内に導くだけで水を自吸するので動力源は一つ

    で済む.さらに簡単な構造であるために低コストで生産

    できるという特長をもつ.そのような発生器の応用性に

    ついて調べたので,その結果を報告する.

    2. 実験

    2.1 ミスト発生装置と発生原理

    供試ミスト発生装置の概略を Fig. 1 に示す.円管へ高

    圧の空気を供給すると縮流部では,連続の式により高速

    空気流となる.そのため静圧はエネルギー保存式(ベル

    ヌーイの式)を満たすように小さくなる.ある程度まで

    空気流量を大きくすると,その静圧は大気圧以下(負圧)

    となり,縮流部(オリフィス板)の直下流に設けた吸水

    部(微小孔)から水を自吸できる.その後,自吸された

    水は高速空気流によりせん断され微細な液滴(ミスト)

    となって空気と共に噴出される.

    2.2 ミスト発生装置による実験

    Fig. 2 に実験装置の概略を示す.コンプレッサーから

    の空気の流量 QG はバルブで調節し,20 ~ 160 l/min の

    範囲で変化させ,QGを標準大気圧,20℃で換算した QG0

    を実験値とした時,水タンクの水面と装置吸水部との高

    さを等しくして,高低差による水の流入を防いだ.吸水

    流量 QL はバルブで調節し容積式流量計で,吸水部の負

    圧 Pnegは圧力変換器で測定した.さらにミスト発生装置

    の発生器先端長さ lout を 13.5 mm ~ 31.0 mm まで 3.5 mm

    ずつ変化させ,それぞれの長さでの性能を比較し,効率

    よくミストを噴霧できる長さを選定した.

    次に,選ばれた lout = 24.0 mm の先端を発生器(選定理

    由は 3.1 節で示す.)を使用して,ミストの噴霧範囲を拡

    大させるために行った実験について述べる.噴霧範囲拡

    大のために自作の拡大口あるいはプロペラを装着した.

    Fig. 3 に拡大口の概略図と写真,Fig. 4 に PET 製(0.376

    g)と真鍮製(1.278 g)のプロペラの写真を示す.ここ

    で材質(質量)の異なるプロペラを使用したのは,回転

    数の違いがミスト噴霧に与える影響を調べるためであ

    る.そして,それらの装着の有無についてミストの拡が

    り分布とミスト径を調べた.拡がり分布の測定条件は噴

    霧時間 5 min,吸水流量 QL = 0.2 l/min,空気流量 QG = 300

    l/min とした.拡がりの測定方法は,ミストの噴霧口か

    ら H = 50 cm の場所に,噴霧中心から十字状に約 1.3 cm

    間隔で 22 本ずつの試験管を並べてミストの水を捕集す

    る方法であった.また,ミスト径の測定では測定時間は

    瞬時であり,他の条件はミスト分布の測定条件と同じに

    した.また,ミスト径の測定方法には液浸法(3)を用いた.

    液浸法とはスライドガラスに塗るか受け止め皿に満た

    すかした受止液(シリコンオイル)の中に,噴霧粒を飛

    びこませて顕微撮影して測定する方法である.

    Fig. 1 Mist generator

    Fig. 2 Experimental apparatus of mist generator

    Fig.3 Principle and picture of spreader

    A/D convertor

    Pressure gauge Air flow meter

    Liquid flow meter

    Flow control valve

    Mist generator

    PGin

    QL QG

    Air

    compressor

    Water tank

    Regulator

    Mist room

    PC

    Bath pump

    Pneg

    PG

    Pressure gauge

    Flow control valve

    Orifice

    Pressurized

    air

    Plenum(Annular space)

    Sucked water

    P1,v1P2,v2

    Suction partSuction part A-A

    lout

    Orifice

    501

  • (a) PET (b) brass

    Fig. 4 Picture of propeller

    3. 実験結果及び考察

    3.1 発生器先端長さ lout の選定

    発生器先端長さの影響を調べた実験結果を Fig. 5 と

    Fig. 6 に示す.これから QG0 ≥ 150 l/min の高流量領域に

    おいて lout = 24 mm の場合が他の先端長さと比べて負圧

    Pneg の絶対値及び吸水流量 QL が共に大きいことが分か

    る.これは,louが長すぎると圧力損失が大きくなって負

    圧が小さくなり,loutが短すぎると,吸水部近くまで大気

    圧となり負圧が小さくなるからである.このような理由

    によりに lout に最適値がある.ここで QG0 が高い領域に

    着目したのは,この空気流量より小さい時,水をせん断

    することが出来ずに,水はミストではなく垂れ流れた状

    態となり,ミスト発生器としては不適であったためであ

    る.以上から,発生器先端長さ loutを 24 mm に選定し,

    以後の実験で用いることにした.

    3.2 拡大口・プロペラ装着時のミスト分布・ミスト径の

    比較

    3.1 節で選定した発生器先端に拡大口あるいはプロペ

    ラを装着した.Fig. 7 にミストの噴霧中心からの距離 r

    におけるミスト流量分布を示す.これから,採取量のピ

    ーク値をとる中心からの距離 r は,PET 製のプロペラ装

    着時に最も大きく約 r = 15cm であることが分かる.す

    なわち,噴霧範囲の拡大という観点では,PET 製プロペ

    ラ装着時が最も優れているといえる.一方,真鍮製は質

    量が大きく回転数が尐ないのでミストの拡がりが小さ

    くなった.また,拡大口装着時は拡大口の縁に沿って大

    きな水滴が垂れ流れたりミストの噴霧に偏りが生じた

    ため,拡散法としては適していない.

    Fig. 8 にミスト径分布を示す.これから,未装着時に

    比べ拡大口あるいはプロペラ装着時の方が小さい径の

    ミストの割合が大きいことが分かる.すなわち,ミスト

    径を細かくするという観点では,拡大口あるいはプロペ

    ラ装着時が未装着時より優れている.これは,ミストが

    拡がることでミスト同士の衝突の頻度が減尐したから

    であると考察する.

    4. 結言

    発生器先端長さ loutは,lout = 24 mm の場合が最も優れ

    ていた.

    次に,半径方向のミスト流量分布については,PET 製

    プロペラ装着時が最も噴霧範囲が拡大された.ミスト径

    については拡大口とプロペラ装着時での違いはあまり

    見られず,未装着時よりもより小さい径のミストを発生

    できることが分かった.以上から PET 製プロペラ装着時

    が微細なミストの噴霧範囲拡大という観点から,最も優

    れているといえる.

    [参考文献] (1) 佐田富道雄,特許公開 2007-000829.

    (2) 佐田富道雄・川原顕磨呂,特許出願 2006-340833.

    (3) 柄沢隆夫,液浸法及び固化法による測定,第 4 回微

    粒化フォーラム,23-34 (1996)

    Fig. 5 Pneg vs. QG0

    Fig. 6 QLvs. QG0

    Fig. 7 Mist radial distribution of mist flow rate

    Fig. 8 Mist diameter distribution

    -2.0

    -1.5

    -1.0

    -0.5

    0.0

    0.5

    0 100 200 300

    Pneg

    Pa

    QG0 l/min

    lout = 13.5 mm

    lout = 31.0 mm

    lout = 27.5 mm

    lout = 24.0 mm

    lout = 20.5 mm

    lout = 17.0 mm

    0.0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0 100 200 300

    QL

    l/m

    in

    QG0 l/min

    lout = 13.5 mm

    lout = 31.0 mm

    lout = 27.5 mm

    lout = 24.0 mm

    lout = 20.5 mm

    lout = 17.0 mm

    0.0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0 5 10 15 20 25 30

    QL

    Ccm

    3/m

    in

    r cm

    Original

    Spreader

    Propeller (PET)

    Propeller (brass)

    0%

    10%

    20%

    30%

    40%

    50%

    60%

    70%

    80%

    90%

    100% 50~

    0~3

    3~5

    15~20

    20~30

    30~40

    40~50

    10~15

    5~10

    Mist dia.

    m

    Original Spreader Propeller

  • 格子配列管群からの渦放出と気柱共鳴現象に関する研究

    Acoustic Resonance and Vortex Shedding from In-line Tube Banks

    ○学 中村 達明(大分大) 正 濱川 洋充(大分大)

    Tatsuaki NAKAMURA, Oita University, Dannoharu 700, Oita Hiromitsu HAMAKAWA, Oita University

    Key Words : Vortex, Acoustic Resonance, Tube Arrangement, In-line Tube Banks, Boiler

    1. 緒 言

    管に直交してガスが流れる管式の熱交換器では,あるガ

    ス流速に達すると,気柱共鳴現象が励起されて,大騒音が

    発生することがある(1).最悪の場合にはプラントの負荷上

    昇が困難になるばかりか,振動により構造の破損を引き起

    こす恐れがある. 本現象は,管群から周期的に放出される渦に起因して発

    生すると考えられている(2).Blevins らは,格子配列管群において,管抗力方向の管ピッチ比(管抗力方向の管中心間

    の距離と管直径との比)が 1.4 未満では管揚力方向の 1 次モードの気柱共鳴現象が発生し難いことを明らかにした(3).

    この研究から,抗力方向の管ピッチ比が格子配列管群にお

    ける気柱共鳴現象の発生に深く関与しており,ピッチ比が

    小さいほど発生し難く,大きいほど発生しやすくなると予

    想されるが,その詳細は未だ明らかにされていない. 本研究では,実機ボイラの二次元相似模型(4)を用いて,

    管抗力方向の管ピッチ比が大きな格子配列管群における気

    柱共鳴現象と渦放出との関係を実験的に調査した.

    2. 実験装置および方法

    ボイラの相似模型の概要を図 1 に示す.抗力方向(X 方向)が 1275mm,揚力方向(Y 方向)が 900mm,管スパン方向(Z 方向)が 130mm の二次元模型である.相似則および装置の詳細は論文(4)を参照されたい.

    管群の主要寸法と配列を図 2 に示す.管群は,Y 方向のピッチ比 T/D が 2.0,X 方向の管ピッチ比 L/D が 4.0 の格子配列である.管直径 D は 9mm であり,管軸は Z 方向に平行である.管群は,揚力方向に 49 列,抗力方向に 5 列から成る.管群は実験装置内部の上下壁面に垂直に固定支持し

    ており,管群を構成する各供試円管の表面は滑らかである. 実験では,装置上流に設置した送風機を用いて,入口に

    おける一様流の速度(管群への主流速度)U∞を 2.5~13.9m/sの範囲で変化させた.ギャップ流速 Ug は管間の最小断面積における流路の平均流速であり,Ug=TU∞/(T-D)で定義した.このときギャップ流速 Ug は 5.0~27.8m/s となり,ギャップ流速を用いたレイノルズ数 Re は 2.8×103~1.7×104 である.

    発生音は,管群 3 列目の側面から外側へ 300mm の位置に精密騒音計を設置して測定した.気柱共鳴現象の音響モ

    ードは,図 1 中の●印で示す位置に,流路の内壁面に垂直に埋め込んだ小型騒音計を用いて,音圧変動の振幅と位相

    関係から求めた.渦放出特性は,図 3 に示すように円管の前縁よどみ点から 90°の位置に圧力測定孔を設け,表面圧力変動から求めた.渦放出特性を測定した管の位置は管群

    3 列目で,揚力方向の 2 次モードの気柱共鳴現象発生時の音圧分布の節の位置付近である.ここは共鳴による音圧変

    動が非常に小さく,渦放出に起因する管表面の圧力変動を

    測定することができる.さらに管群 3 列目の下流側の壁面

    において,共鳴による音圧変動を測定した.

    3. 実験結果および考察

    ギャップ流速を低速から徐々に増加させて行くと,ある

    流速で突然,共鳴音が発生する.ギャップ流速 Ug に対する共鳴音のピーク周波数 fp の変化の一例を図 4 に示す.記号の大きさは音圧レベルの大きさに対応している.ピーク周

    波数は,流速に比例し増加するのではなく,階段状に変化

    していることがわかる.気柱共鳴現象の開始流速を用いた

    ストローハル数は 0.15 となる. 図 5 は,ギャップ流速 Ug に対するピーク音圧レベルの変

    Fig. 1 Experimental apparatus

    D=9mm T/D=2.0

    L/D=4.0

    Flow

    Ug

    Fig. 2 Arrangement of tube banks

    Particle velocity

    MicrophonePressure tap

    BA C

    D

    Flow

    Wall

    Y

    X

    Fig. 3 Position of pressure taps

    0502

    (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

  • 化を表している.ギャップ流速が 12.3,19.4,28.5m/s のときに音圧レベルが極大となる.これらのピークにおいて,

    装置内部で音圧変動の振幅と位相差を測定し共鳴モードを

    求めた.図 6 はギャップ流速が 19.4m/s で発生した約 300Hzの気柱共鳴現象の音圧変動の振幅の分布である.これから,

    この気柱共鳴現象が揚力方向 2 次モードであることがわかる.同様に,12.3m/s の約 175Hz と 28.5m/s の約 430Hz の共鳴はそれぞれ揚力方向 1 次モード,3 次モードとなった.

    図 3 は渦放出特性を測定した管と測定孔の配置関係を表している.揚力方向 2 次モードの気柱共鳴現象発生時には,測定した管の位置では音圧変動は 0 またはわずかであり,粒子速度は最も大きくなる.一方,壁面では音圧変動が最

    大となるため,この音圧を用いて粒子速度の分布を導出す

    れば,気柱共鳴現象時の粒子速度と渦放出との関係を解明

    できる. 本研究では,ギャップ流速が 19.4m/s で発生した約 300Hz

    の揚力方向 2 次モードの気柱共鳴現象に着目し,ギャップ流速を 17.6~19.4m/s の間で細かく変化させて,気柱共鳴現象の発生前と発生後における渦放出と気柱共鳴現象の関係

    を調査した.図 7(a)と(b)は,それぞれ図 3 の A と Dとの圧力変動のコヒーレンスと位相差である.ギャップ流

    速 Ug が 17.6m/s から 19.4m/s に近づくにつれて,すなわち気柱共鳴現象の音圧レベルが増加するにつれて,コヒーレ

    ンスが増加し,位相差が 180°に漸近していることがわかる.測定点 D の壁面上で音圧変動が最大のとき,点 C 付近の粒子速度は最大,点 A 付近の粒子速度は最小となり,これに同期して渦が放出されていると考えられる.

    4. 結 論

    本研究では,実機ボイラの二次元相似模型を用いて,管抗力方向の管ピッチ比が大きな格子配列管群における気柱

    共鳴現象と渦放出との関係を実験的に調査した.その結果,

    以下の結論を得た.

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    0 10 20 30

    f p

    Ug m/s

    St=0.15

    Fig. 4 Variation of peak frequency of SPL against gap velocity

    20

    40

    60

    80

    100

    5 10 15 20 25 30

    SPL

    dB

    Ug m/s

    Fig. 5 Variation of SPL against gap velocity

    (1)抗力方向の管ピッチ比が 4.0,揚力方向が 2.0 の格子配列管群では,ギャップ流速を用いたストローハル数が約

    0.15 で渦が放出されており,このストローハル数で気柱共鳴現象が発生する. (2)本管群では,ギャップ流速が 12.3m/s のとき約 175Hzの,19.4m/s では約 300Hz,28.5m/s では約 430Hz の気柱共鳴現象が発生した.このときの共鳴モードはそれぞれ揚力

    方向 1 次,2 次,3 次モードとなった.これらの気柱共鳴現象発生時には音圧レベルが増加した. (3)揚力方向 2 次モードの気柱共鳴現象発生時には,粒子速度に同期して渦が放出されていることがわかった.

    文 献 (1) Païdoussis, M. P., A Review of Flow-induced Vibrations in

    Reactors and Reactor Components, J. Nuclear Eng. Design, 74, (1982), pp.31–60.

    (2) Owen, P. R., Buffeting Excitation of Boiler Tube Vibration, J. Mech. Eng. Sci., 7, (1965), pp.431–439.

    (3) Blevins, R. D., Bressler, M. M., Acoustic Resonance in Heat Exchanger Tube Bundles -Part I: Physical Nature of the Phenomenon, Trans. ASME, J. Press. Vessel Technol., Vol.190, (1987), pp.275–281.

    (4) Hamakawa, H., Matsue, H., Sasyou, R., Nishida, E., Fukano, T., Acoustic Resonance and Vortex Shedding from Tube Banks of Boiler Plant, Transactions of JSME, Vol. 74 B, No. 747, (2008), pp.2336–2343.

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0 200 400 600 800

    P aPa

    Y mm

    Fig. 6 Amplitude of sound pressure fluctuations (Ug=19.4m/s, f=301.76Hz)

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    17 18 19 20

    Cs

    Ug m/s (a) Coherence

    0306090

    120150180

    17 18 19 20

    θ s

    Ug m/s (b) Phase

    Fig. 7 Relationship between surface pressure fluctuation and sound pressure fluctuation

  • 503 排砂促進板を用いた水力輸送特性に関する実験

    Experiment on Hydraulic Conveying Characteristics using Discharging Plates for

    Sediment Removal

    ○学 緒方 健太郎(鹿児島大学)

    正 福原 稔(鹿児島大学) 正 片野田 洋(鹿児島大学)

    Kentaro OGATA, Kagoshima University, Korimoto1-21-40, Kagoshima-shi, Kagoshima

    Minoru FUKUHARA, Kagoshima University

    Hiroshi KATANODA, Kagoshima University

    Key Words : Liquid-solid two-phase flow, Scour, Hydraulic conveying

    1.緒論

    近年,河川,港湾,ダム及び湖沼において堆積した砂泥

    を浚渫し,管路による浚渫泥の埋立地への水力輸送が行わ

    れてきた.この輸送にはスラリー輸送が用いられるが,粘

    性の高い砂泥などを含む場合,砂泥は管底に堆積し,輸送

    効率の低下,管路閉塞などの問題を引き起こす可能性があ

    る(1).そこで,本研究では固体粒子の水力輸送における高

    効率化を目指し,水平管路内に排砂促進板なる板(以下,

    促進板という)を設置し,促進板下部に発生する洗掘現象

    により,堆積粒子を下流方向へ輸送することを提案した(2).

    洗掘現象とは,水理構造物近傍において,水流の作用によ

    って河床が削り取られる現象のことで,これまで洗掘の軽

    減や防止を目的とした研究が行われてきた.しかし,本研

    究において,この現象を積極的に活用し,堆積砂泥の輸送

    を行うことを目的とする.さらに,促進板を複数枚設置す

    ることにより,流動化した固体粒子は促進板下部を通過す

    るたびに微細化され,浮遊し,堆積しなくなることが期待

    される.

    前報(3)において,促進板の設置全長,設置間隔,設置高

    さにおける最適条件を求めてきた.その際,堆積粒子の平

    均粒子径は 46μm 一定としている.しかし,自然界におい

    ては,砂礫等も管内を流れ,また砂泥の粒度分布も一定で

    はない.実用化を目指すにあたり,粒子径の影響について

    明らかにする必要があると考えた.そこで本報では,促進

    板の設置条件を一定とし,粒子径を変化させて実験を行っ

    た.体積濃度,及び洗掘境界の挙動を評価することで,水

    力輸送特性に及ぼす粒子径の影響を明らかにした.

    2.実験装置及び方法

    Fig.1 に実験装置概略図を示す.貯水タンクの水をポンプ

    で吸い上げ,整流板の設置されたサージタンク内に流入さ

    せる.流入した水は,促進板の設置された供試管路内で堆

    積粒子を輸送した後,排水タンクに排出される.促進板に

    よる圧力損失を求めるために,圧力計で供試管路内の圧力

    を測定する.また,水力輸送の様子をデジタルビデオカメ

    ラにより撮影し,得られた画像を,画像ソフトを使って,

    洗掘の特徴を抽出し,解析を行った.

    洗掘による解析領域は Fig.2 に示す.座標系は 1 枚目の

    排砂促進板直下の粒子堆積層表面を基準点にして原点を取

    り,下流方向に x 軸,及び鉛直下向き方向に y 軸をとる.Fig.2 の促進板下部の堆積粒子が洗掘により移動した境界

    線を洗掘境界と呼ぶことにした.洗掘面積 S[m2]は洗掘境界と y=0 で囲まれた斜線部の領域内で求め,洗掘面積に供

    試管路の幅 0.15m を乗じ,洗掘された粒子の体積流量 Qpを求めた.実験条件として,水の体積流量 Qw=1.5×10-3 m3/s,促進板設置全長 L,促進板設置間隔 l,促進板高さ H を,それぞれ流路高さ Hc で無次元化し L/Hc =2.42,l/Hc=0.46,H/Hc=1.03 とした.なお,これらの値は前報(3)で得られた促進板の最適条件である.供試粒子に密度 ρp=2520kg/m

    3 の球

    形ガラスビーズを用い,平均粒子径を dp=46,181,256μmと 3 条件変化させた.計測時間 t=10,30,50 sec におけるデータをもとに解析を行った.

    3.実験結果及び考察

    3.1 体積濃度

    体積濃度の式は,

    wp

    p

    QQQ

    C

    ・・・・・・・・ (1)

    で与えられる.ここで,Qp は体積濃度,Qw は促進板下部を通過する水の体積流量である.体積濃度 C [%]と実験開始後経過時間 t [sec]との関係のグラフを Fig.3 に示す.Fig.3より,計測開始後 10sec において,粒子径 181 及び 256μm

    L W

    Hc’H

    x0S

    Scoured boundaryy

    V Hc

    l

    Fig.1 Experimental apparatus

    Water tank

    Pump

    On - off valve

    Surge tank

    Honeycomb plates

    Discharging plates

    Test channel

    Overflow tank

    Flow control valve

    Air exhaust valve

    Drain valve

    Partition plate

    Sensor interfacePersonal computer

    Pressure converter

    Fig.2 Analytical area

  • は従来の粒子径 46μm よりも,洗掘による体積濃度が高い

    ことがわかる.また,いずれの粒子径においても,時間の

    経過とともに体積濃度が減少していることがわかる.これ

    らの傾向を次節の各時間における洗掘境界の挙動より明ら

    かにする.

    3.2 洗掘境界

    Fig.4 に t=10,30,50sec における粒子径 46,181,256μm のそれぞれの洗掘境界を線分化したものを示す.Fig.4 よ

    り,t=10sec において,従来の粒子径の場合,洗掘境界は凹凸面になっている.これは,堆積粒子は促進板下部におい

    て鉛直下向きの力を受けているためである.粒子径が大き

    い場合,従来の粒子径に比べて,より深くまで洗掘されて

    いることがわかる.これは,粒子径が大きい場合,粒子粘

    性が小さい分,流動性が大きいため,流れの影響を受けや

    すく,短時間でより多くの粒子が洗掘されたためであると

    考えられる.また,粒子径が大きい場合,従来の粒子径に

    比べて,洗掘の開始位置が上流側に移動していることがわ

    かる.これは,流れの影響を受けやすいために,洗掘境界

    の形状を保持しづらく,流れによって洗掘開始位置が削ら

    れるためであると考えられ,これが洗掘による体積濃度の

    増加に寄与していると思われる.

    従来の粒子径の場合,時間の経過につれて,洗掘境界は

    鉛直下方向へ移動し,滑らかになっている.これは,洗掘

    が発達過程であるため,時間経過とともに促進板と堆積粒

    子との隙間が広がり,それにともなって鉛直下向きの力か

    ら流れ方向の力に変わったためであると考えられる.粒子

    径が大きい場合,従来の粒子径に比べ,時間が経過しても,

    洗掘境界の変化が少ないことがわかる.これは,短時間で

    洗掘が発達するため,促進板と堆積粒子の間が広く,鉛直

    下向きの力が弱いためであると考えられる.なお,粒子径

    が大きい場合, 促進板 6 枚目の下流側において粒子が堆積

    している様子が確認される.これは,粒子の自重が大きく,

    下流まで輸送されなかったためである.しかし,実際の砂

    泥等の堆積物では促進板下部を通過するたびに微細化され

    るため,下流側において堆積している粒子は微細化されて

    輸送されたものとみなし,今回,評価の対象としていない.

    4.結論

    水の体積流量,及び促進板設置全長,促進板設置間隔,

    促進板設置深さを一定とし,粒子径を変化させ,水力輸送

    特性に及ぼす粒子径の影響についての実験を行った結果,

    以下のような結論を得た.

    (1) 計測開始時の 10sec において,粒子径が大きくなると,従来の粒子径の場合よりも,洗掘による体積濃度は増

    加する.

    (2) その要因を促進板 1 枚目の洗掘境界の開始位置が異なることにより明らかにした.つまり,粒子径が大き

    くなると,流れ方向の影響を受けやすく,その位置は

    上流側へ移動している.

    参考文献

    (1) 西川,混気圧送浚渫泥輸送のシステムにおける液相スラグの流動現象,混相流 7 巻 4 号(1933),pp.335-343.

    (2) 野崎ら,排砂促進板による粒子輸送,混相流学会年会講演会2001 講演論文集,pp223-224.

    (3) 福原ら,水力輸送特性に及ぼす排砂促進板の設置間隔および全長の影響,可視化情報学会論文集 Vol.28, No.9(2008),

    pp62-68.

    (a) t=10sec

    (b) t=30sec

    (c) t=50sec

    Fig.4 Behavior of scoured boundary

    Fig.3 Volumetric concentration

    1 枚目 2 枚目 3 枚目 4 枚目 5 枚目 6 枚目

    46μm 181μm 256μm

    0 10 20 30 40 500

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    20

    dp μ m

    46 181 256

    H / Hc = 1.03

    l / Hc = 0.48

    L / Hc = 2.42

    Re = 1.00×104

    C

    [%]

    t [sec]

    x

    x

    x

    y

    y

    y

  • (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

    二重反転形軸流ポンプの前後段翼車異回転数運転

    Different Rotational Speeds Operation of Front and Rear Rotors for Contra-Rotating Axial Flow Pump

    ○ 学 末藤 朴人(九州大) [指導教官] 古川 明徳,渡邉 聡,大熊 九州男

    Naoto SUEFUJI

    Akinori FURUKAWA, Satoshi WATANABE, Kusuo OKUMA Kyushu University

    Key Words: Contra-rotating rotors , Axial flow pump , Different rotational speeds operation

    1.緒言

    近年,ターボ形ポンプにおいては省エネルギー化が求められ

    ており,それに伴い軸流ポンプでも小型化・高比速度化が要求

    されている.しかし軸流ポンプにおいて従来の後置静翼形では

    高比速度化を図ると効率・キャビテーション性能の低下が考えら

    れる.この問題を解決するために我々の研究グループでは,二

    つの直列に配置された動翼が互いに逆方向に回転する二重反

    転形翼車の採用を提案し研究開発を行ってきた.

    過去の研究において,前段翼車よりも先に後段翼車でキ

    ャビテーションが初生する問題の改善,後段翼車の低食違

    い角化による部分流量運転時の性能向上には,前段翼車負

    荷を増やした異回転数設計が有効であることが示唆された(1).本研究では,その考察結果に基づき,現有翼車に対し

    て異回転数運転したときの性能について調査した.

    2.実験装置および実験方法 Fig.1 に実験装置試験部の概略図を示す.前後段翼車はそ

    れぞれ独立したモータで駆動され,回転数はインバータに

    より可変である.内軸の動力は,電動機軸と同じ軸線上に

    あるポンプ軸へたわみ軸継手を介して伝達される.外軸の

    動力は,電動機軸からポンプ軸へタイミングプーリにより

    タイミングベルトを介して伝達される.対象とした試験翼

    車の設計点は流量 Qd =70 l/s,揚程 Hd =4.0 m であり,前後段 動 翼 の 揚 程 を Hf =Hr =2.0 m , 翼 車 比 速 度 をNs=1500[min-1,m3/min,m]と定めることにより,設計回転数を Nf =Nr =1225 min-1 として設計した.前後段とも,翼先端径Dt=198 mm,ハブ径 Dh=100 mm,翼先端とケーシングとの隙間は 1 mm である.試験翼車の翼枚数は前段が 4 枚,後段が 5 枚となっており,二重反転形ポンプの特性上,前段に比べ後段の方が高食違い角となっている. 過去の実験において,前後段翼車の等回転数運転(Nf =Nr =1225 min-1)では,後段翼車入口での圧力が前段翼車の圧力上昇により増加しているにもかかわらず,後段翼車でキ

    ャビテーションが初生することが観察され,これは前段翼 車から流出する流れの旋回成分により,後段翼車の相対流

    入速度が前段翼車のそれに比べて大幅に増加するためであ

    ることが判明した(2).本来は,前段翼車で先にキャビテー

    ションが発生し,前段翼車の性能低下を後段翼車で補うか

    たちが望ましい. そこで本実験では前段翼車を高回転とし,Nf > Nr となる

    異回転数運転での各翼車性能及びポンプ全体の性能の計測

    を行った.前後段翼車の回転数は現有の前段翼車が Q=63 l/s で最高効率点をとっており,設計流量 Q=70 l/s においてこの点と相似運転となるように前段翼車の回転数を定めNf =1358 min-1 とした.また,キャビテーションを考慮し,前段翼車入口と後段翼車入口の相対速度が等しくなるように

    rωr = rωf -Vθf の条件から後段翼車の回転数を Nr =1147 min-1

    とする.また異回転数運転における,前後段翼車回転数の

    変化による流れ場への影響を調べるために,5 孔コブラプローブを用いた流れ場の測定を設計流量のQ =70 l/sと低流量の Q =28 l/s の場合に対して行った.測定箇所は Fig.1 に示す前後段翼車間の Pos.3 および後段翼車出口下流の Pos.5であり,翼先端側の半径位置 r =97.5 mm から 5 mm 間隔でハブ側 r =52.5 mm まで測定した.

    3.実験結果および考察 3-1.異回転数運転におけるポンプ性能の変化 Fig.2 に異回転数運転時の性能試験結果を等回転数運転時の結果とともに示す.Q,H,η,はそれぞれ流量,揚程,効率であり、添え字 f,r は前段翼車,後段翼車の値、添え字なしはポンプ全体の値を意味する.

    揚程曲線においては,前段翼車は回転数に対する相似則

    が成立するため(3),異回転数運転時には設計回転数時に対

    して前段翼車の回転数を増加(相対的に低流量での運転となる)ことから,前段翼車出口の旋回成分が増加,すなわちオイラーヘッドが増加し,前段翼車の揚程が増加する.そ

    れに対して,後段翼車の揚程は設計回転数時と比べ,設計

    流量では変化は見られない.これは,後段翼車の回転数が

    低下しているものの,前段翼車の高回転数化に伴い後段翼

    車入口の旋回成分が増加したため,後段翼車のオイラーヘ

    ッドが設計回転数時に比べてあまり変化しないためである

    と考えられる.一方,低流量では,後段翼車の揚程は異回

    転数運転時の方が小さい.これは,前段翼車が設計回転数

    時に比べて相対的に低流量点で運転しているため流れの転

    向が不十分であり,設計流量で見られたような前段翼車出

    口での旋回成分の増加が見られず,後段翼車の低回転数化

    に伴いオイラーヘッドが低下し,揚程が低下したものと考

    えられる.全揚程については前段翼車の揚程の上昇により

    全揚程も上昇している.さらに設計回転数時にみられた低

    流量域における揚程の右上がり特性が緩やかになっており, 不安定性は改善されている.効率曲線をみると,前段翼車

    Pos.5

    Fig.1 Schematic view of test contra-rotating pump system

    Pos.3

    504

  • では設計回転数時と比べ相対的に低流量点での運転である

    ため,低流量では前段翼車効率は低下し,設計流量より高

    流量では効率が上昇している.この高流量での全効率の増

    加は全効率η = (Hf +Hr)/(Hf /ηf +Hr/ηr)の式から分かるように,主として前段翼車効率の増加に起因する. 3-2.異回転数運転時の流れ分布の変化 Fig.3 に流量が Q=70 l/s と Q=28 l/s のときの 5 孔コブラプローブによる流れ分布の計測結果を示す.縦軸 r/rc は半径 方向比を表し,横軸の Vz,Vθはそれぞれ絶対速度の軸方向 成分,旋回方向成分を表す,また Vθの符号としては前段翼

    車の回転方向を正としているため,後段翼車回転方向に旋

    回成分がつけられた流れは Vθの符号を負で表す. Fig.3(a)は前後段翼車間 Pos.3 における流れ分布の計測結

    果である.設計流量 Q=70 l/s では異回転数運転時と設計回転数運転時とでは Vz に大きな違いが見られず,チップ側での境界層を除いておおよそ半径方向に一様な流れとなった.

    Vθ は異回転数運転において設計回転数運転時と比べ前段翼車の回転数が増加したため,旋回成分は増加している.

    それに対して低流量 Q=28 l/s では異回転数運転,設計回転数運転時ともにハブ側で逆流が起きている.これは前段

    翼車出口での半径方向外向きの三次元流れに誘起される渦

    によるものである.ハブ側でこの逆流がおきると,流量の

    保存からチップ側で流量が大きくなる.この現象により異

    回転数運転時にはチップ側で Vz が大きくなっていることがグラフから読み取れる.設計回転数運転時には,これま

    での研究で LDV による流れ場の測定により,後段翼車チップ側での逆流がおきていることがわかっている(4).プロ

    ーブによる計測方法ではこの逆流を計測できなかったと思

    われる.Vθのグラフをみると,Q=28 l/s のとき設計回転数運転時には前段翼車によって付与されたチップ側の旋回成

    分が後段翼車チップ側での逆流によって減少していること

    がわかる.一方異回転数運転時には前段翼車で付与された

    チップ側の旋回成分がそのまま残っていることから,異回

    転数運転時には後段翼車チップ側での Pos.3 にまで及ぶ逆流がおきていないことが推察される. Fig.3(b)は後段翼車下流 Pos.5 における流れ分布の計測結果である.設計流量 Q=70 l/s において Vz は異回転数運転時と設計回転数運転時でほぼ変わらず半径方向に一様な流れ

    となっている.Vθ をみると,設計回転数運転時には Pos.5においてほぼ無旋回流れとなっているが,異回転数運転時

    には後段翼車の回転数が低下しているために速度三角形よ

    り前段翼車回転方向に旋回成分を残した形となっている.

    そのため適切な翼設計により無旋回流れを実現することで

    性能向上が期待できる. 4.結言 今回,二重反転ポンプの異回転数運転を行うことにより

    以下のことがわかった. (1) 異回転数運転での高流量における全効率の向上は前

    段翼車揚程と前段翼車効率の増加によるものである. (2) 異回転数運転を行うことにより,低流量域に見られた

    揚程の右上がり特性が改善された. (3) 設計回転数運転時に後段翼車チップ側で発生した逆

    流は異回転数運転時には発生していない可能性があ

    る. (4) 設計流量において異回転数運転時には Pos.5 で旋回成

    分が残されているので,出口角の適切な翼設計により

    効率の改善が望める. 参考文献 (1) 古川明徳・渡邉聡,二重反転形軸流ポンプ,ターボ機械 34-7,

    (2006),399-403. (2) 古川明徳・ほか 4 名,二重反転ポンプに関する実験的基礎研

    究,機論,67-657,B(2001),1184-1190. (3) 百崎・ほか 3 名,二重反転形軸流ポンプの回転数制御による

    効率改善,ターボ機械総会講演会前刷集,(2010),19-24. (4) 宇佐見・ほか 4 名,二重反転形軸流ポンプの部分流量域にお

    ける内部流れと限界流線観察,ターボ機械,38-7,(2010),436-443.

    -2 0 2 4 60.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    Vz m/s

    r/r c

    -2 0 2 4 6 80.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    Vθ m/s

    r/r c

    -2 0 2 4 60.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    Vz m/s

    r/r c

    -4 -2 0 20.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    Vθ m/s

    r/r c

    Q =70 l/s Q =28 l/sNf =Nr =1225 min

    -1 Nf =1358, Nr =1147 min

    -1

    (a)Pos.3

    (b)Pos.5

    20 40 60 80

    2

    4

    6

    8

    0 Q l/s

    Hf

    m

    20 40 60 80

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    0 Q l/s

    η f

    (a) Front Rotor

    20 40 60 80

    2

    4

    6

    8

    0Q l/s

    Hr m

    20 40 60 80

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    0Q l/s

    η r

    (b) Rear Rotor

    20 40 60 80

    2

    4

    6

    8

    0 Q l/s

    H m

    20 40 60 80

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    0 Q l/s

    η

    (c) Total

    Nf =Nr = 1225min-1

    Nf =1358, Nr = 1147min-1

    Fig.2 Pump characteristics

    Fig.3 Flow distributions

  • 505 高速噴流が平板に衝突する流れ場の研究

    Study on I‐ Iigh Speed lmpinging Jets

    ○学 飯干 嵩大 (琉球大 )正 照屋 功 (琉球大)

    正 屋我 実 (琉球大 )正 石川 正明 (琉球大 )

    Takahiro IIHOSHI,Minoru YAGA,lsao TERUYA,MasaakilSHIKAWAUniversity ofthe ryukyu,senbaru… 1,Nishihara,okinawa

    Keν ″brds:comprcssiblc Flo¬ Uゝndcrcxpandcd lmpinging Jct

    1.緒言

    圧縮性流体において,不足膨張噴流が平板に衝突する流れ場は,V/STOL機やロケットの排気噴流,平板面の冷却 ,溶射および塗装など工学的に多くの場合に現れる重要な流

    れ場である.円 形噴回の衝突噴流については数多くの報告がされているが,矩形不足膨張噴流を平板に衝突 させた流れ場については報告が少なく,明確にされているとはいい

    難い。そこで本研究では,矩形単噴口より噴出された不足膨張噴流が,噴流軸に対 して垂直に置かれた平板に衝突する際の流れ場を,シ ュリー レン法および油膜法を用いて可視化 し, さらに平板上圧力と比較することにより矩形不足

    膨張衝突噴流の流れ場を解明した .

    2.実験装置および実験方法

    Fig.1に実験装置概略図を示す 本実験は吹出し式風洞を

    採用 し,コ ンプレッサーにて圧縮 された高圧乾燥空気は貯

    気槽に蓄えられたあと,バルブを介 して集合胴でよどみ点

    状態に回復 し,先細ノズルを通 して大気へ放出する 集合胴内のよどみ点圧力は半導体小型圧カセンサにより測定し

    た ノズル部の概略図を Fig2に 示す。ノズル部はノズルおよびノズルス トッパから構成 されてお り, ノズル形状は ,

    アスペク ト比 1(幅 7.5mm,高 さ 75mm),ア スペク ト比 3(幅 5mm,高 さ 15mm)お よびアスペク ト比 5(幅 36mm,

    高さ 18mm)の 矩形ノズルを採用 した。また,ノ ズルの相当直径 Dは ノズル 出 口幅 を α,高 さを ι とす る とD=4αι/2(α ttb)の ように定義 し,本実験では,ア スペク ト比1お よび 3の場合は D=7.5mm,ア スペク ト比 5の場合D=60mmである。流れ場の可視化にはシュリーレン法を採用 した 平板上の 2次元的な壁面静圧測定には圧力測定用の平板を用い,平板後方に取 り付けたステ ッピングモータにより 2.88° ずつ平板を回転させ,静圧孔の圧力をスキャニバルブ (多点圧力沢1定器)で順次切り替えながら測定した.さ らに,1つ の測定条件について衝突平板を lmmずつ

    計 4mmず らすことで空間分解能を向上させた .

    衝突平板上の可視化は油膜法を採用 した.そ の方法をFig.3に 示す.衝突平板には後方からデジタルカメラで撮影

    するためアクリル板を用いた。座標系は,平板上においてノズル中心軸の延長線上を原点として水平方向をχ,垂直方

    向をノとした.今回の実験ではアスペク ト比 1,3,お よび 5,ノズルー平板間距離ιと噴口相当直径 Dと の比Zの が20,

    3.0,お よび 40の場合,ま た集合洞内のよどみ点圧力 ρ。と大気圧ρヵとの比2ルみを2.0~ 6.0に ついて実験を行つた .

    Fig.3011-■lm mcasurcmcnt

    3.実験結果および考察

    アスペク ト比 1,3お よび 5におけるノズル平板間距離Zの=3.0の場合の風洞圧力比ρヵゎ=6.0に 対応 した(a)シ ユリ

    ー レン法を用いた流れ場の可視化写真,(b)平板上の等圧力

    線図,(c)xわ=0上の圧力分布,(d)の=0上の圧力分布,および(c)油 膜法 を用いた平板上の可視化写真 をそれぞれ

    Figs 4~ 6に示す.シ ュリー レン写真中の黒く写る領域は密

    度勾配が大きいことを表 している。また油膜写真に写る白

    い部分はオイルで流れの方向を示 し,黒い部分はオイルがはがれた領域 となつている.

    と霊 1,瞥藉菫ちJ7伍,15二 11受Jメ:(8[It∫ 多組 甲麗 rな星囲に斜め衝撃波が現れている.こ の二つの衝撃波は圧力損失を起こし,そ の現象が Fig 4(c)お よび Fig 4(d)よ リ ルイD=

    ・Ъ 潔 妥 篤 去

    1税

    可 ,混aT:覗 Бiり・碁 轟 1電

    の高圧の領域が存在する図となつている_こ れより4つ の高圧の領域を避けるようにして平板に衝突 した噴流が流れ

    たた2」射 混 鴨 穐 鴇 箪 尋螺 競 解 騎 rこの領域では平板を流れる噴流によるせん断力が弱いと考えられる。このことからほばよどみ状態に近いと言える。

    Fig.5(a)よ り″D=1.8お よびノD=± 0_5に 下流側に湾曲

    した衝撃波が確認できる これは矩形噴口特有の衝撃波であ リバ レル衝撃波 と垂直衝撃波が一体 となつて形成 され

    ていると考えられる。また,Z`D=18~ 20お よびノD=± 0・ 5~0.7の範囲に斜め衝撃波も現れている.Fig(d)か らはノD=±1付近にρ〕ルゎ=4.2~ 44の ピークを持つ 2つの高圧の領域が存在 し,圧力損失が確認できる.し かし Fig.(c)の ノD=0

    の位置ではアスペク ト比 1の場合 と比べて圧力損失が減少

    している.ア スペク ト比 3の場合,平板上の高圧の領域は

    〇〇

    ⑩Fig l Expcrilncntal apparatus Fig2.Rcctangular nozzlc

  • 2つ となってお リアスペク ト比 1の場合の 4つ とは異なる形状 となっていた。さらにソリ=0上 の壁面静圧比のピーク

    値を見てみるとアスペク ト比 1の場合 Fig.4(d)よ り′"ゎ

    =26~28と なっているがアスペク ト比 3の場合は Fig 5(d)よりρlヵb=4.2~4.4と 高い値をとつている.これより噴流中に発生 した衝撃波が湾曲す ることにより圧力損失が少

    なくなった可能性があると考えられる.Fig.(c)で は ,■≫ 0

    および ルイレ ±0.5付近に 2つのオイルの塊,ま た χわ=± 1および ジ■卜 0~ 0.5の範囲でオイルがはがれている形状 と

    なっている.ア スペク ト比 3の場合では,噴流岐点近傍でせん断力が弱い領域 と強い領域が確認できた .

    Fig.6(a)よ り衝撃波がアスペク ト比 3の時と比べさらに湾曲した形状 となつている.Fig.6(d)で は ノつ=0.8付近でpl1//Pゎ =4.5~ 4.6の ピークを持つ 2つの高圧の領域があり,Fig 6(c)で はρノンゎ=3.5に ピークを持つ圧力分布図となつて

    いる。また Fig.6(c)よ リアスペク ト比 1,お よび 3で確認できた噴流岐点近傍のオイルの塊はアスペク ト比 5の場合確認できなかった

    4.結論

    (1)ア スペク ト比 1の場合,噴流岐点付近にオイルの塊が確認でき,ま た平板上の高圧の領域が 4箇所存在 し,それを避けるようなピークの間の壁面近傍の流れが確認でき

    (2)ア スペク ト比 3の場合,垂直衝撃波が湾曲した衝撃波と

    なった形状 とな り,ま たアスペク ト比 1の場合 と異なり平板上の高圧の領域が 2つ存在することが確認できた

    さらに,オイルの塊も 2つ確認できた .

    (3)ア スペク ト比 5の場合,ア スペク ト比 3の 時と同様に垂

    直衝撃波が湾曲した形 とな り,平板上の高圧の領域が 2つ存在することが確認できた。また,岐点付近にオイルの塊は確認することができなかった .

    7.参考文献(1)屋我実 。他 4名 :不 足膨張噴流が衝突する平板上の温度

    および圧力分布, 日本機械学会論文集,3,672001),p■ 33… 36

    ,

    1

    雫 o

    ‐1

    -'

    Z′D

    (a)SChliCrcn

    (c)O]Flow

    Fig.4 Pattcrn for ρノンみ=6.0,ι●卜 3.0

    (Aspcct ratio l)

    (の VC■ iCal

    Z7D

    (a)SChliCrcn

    ZD

    (a)SChliCrcn

    (e)Oil Flow

    Fig.5 Pattcm for ρ〆ンみ=6.0,五/夕3.0

    (Aspcct rratio3)

    (c)01 Flow

    Fig.6 Pattcrn for ρノンb=60,ι/D3.0

    (Aspcct ratio5)

    (C)hOrizOntal

    (b)PrCSSurc contotlr

    (C)hOrizOntal

  • 直動式動弁機構カム・フォロワの摩擦摩耗特性に関する研究

    (その1:フォロワ面仕上げによる摩擦低減の効果)

    Study on Friction and Wear Characteristics of Cam and Follower for Direct-type

    Valve Train - Part 1 : Effect of Surface Finish on Friction Reduction -

    ○学 石田 隆亮(九産大) 岩屋 瞬介 今村 友弥 杉山宗一郎

    牛島 宜亮(九産大院) [指導教員] 正 副島 光洋 (九産大)

    Takaaki Ishida, Shunsuke Iwaya, Tomoya Imamura and Soichiro Sugiyama, Kyushu Sangyo University

    Yoshiaki Ushijima, Graduate School of Kyushu Sangyo University and Mitsuhiro Soejima

    Key words: IC Engine, Tribology, Friction, Wear, Direct-type Valve Train, Valve-lifter,

    Offset Shim Rotation, Surface Finish and Treatment, Oil-film Thickness

    1. 緒 言

    内燃機関の性能向上による燃費改善は,地球温暖化の原因

    である CO2の排出量削減に効果的である.本研究の目的は,

    前報(1)と同じ動弁系カム・フォロワの摩擦を低減し燃費改

    善に効果的なトライボロジー技術を開発することである.既

    に,すべり接触や転がり接触の動弁系カム・フォロワについ

    てカム軸回転速度が摩擦に及ぼす影響を調べた結果から,図

    1の回転速度が高いほどすべり接触で摩擦係数は減少するが,

    転がり接触では逆に増大する特性が明らかになっている.

    本研究では前報(2)に続き,DOHC 直動式動弁系を対象

    に,図 2 のような回り止め付きバルブ・リフタ②上で円盤

    状のシム③がカム①の軸方向にオフセットしカム接触摩擦

    のトラクション力でローテーションする機構を模したカ

    ム・フォロワ摩擦測定試験機,同じカム試験片と低粘度

    SAE5W-30 の DH-2 級 Low-SAPS エンジン油を用い(3),

    シムのカム当接面が通常研削仕上げした比較的に粗い面,

    ELID(Electrolytic In-process Dressing)研削仕上げした

    鏡面および上述の通常研削仕上げ後に DLC コーティング

    した処理面を対象に,摩擦波形と平均摩擦係数を測定し,

    シム表面の加工処理すなわち表面仕上げ粗さや DLC コー

    ティングの摩擦低減効果,面馴じみに伴う摩擦の経時的変

    化,シムのローテーションの作用,摩耗への影響などを調

    べたので,その概要を報告する.

    2. 実 験 方 法 2.1. カム・シム摩擦の測定や評価の方法

    カムとシムの接触に伴う摩擦力の測定には,その概要を

    既報(1)に示したカム・フォロワ摩擦測定試験機を用いた.

    それは,図 2 のカム軸/オフセット・シム/バルブ・リフ

    タ構成のカム・フォロワ機構を模し,カム試験片①とシム

    試験片③を接触させ,弁スプリング仕組みで荷重をかけ,

    カム軸の回転に伴う両試験片間の摩擦力をシム付きバル

    ブ・リフタ②に相当するシム試験片ホルダーの支持部に取

    り付けた圧電式力センサで計測するものである.

    カム・シム摩擦の測定と評価は,下記のような実験の条

    件や要領で行った.まず前報(2)と同様,図 3 や図 4 の測

    定例が示すように実験の条件や繰返し巡回数で変わる接触

    荷重,摩擦力などの摩擦係数について,そのカム角度変化

    のカム・シム接触期間当りの平均値すなわち平均摩擦係数

    を求め,摩擦特性とその経時的な変化を調べた.

    実験の条件と実施は,前報(2)と同じ最大接触荷重

    (Lmax)が 400N,600N と 800N,カム軸回転速度(Nc)

    が 400rpm,800rpm,1200rpm と 1600rpm および油温(to)

    が 70℃と 110℃で,先に油温 70℃で各接触荷重について

    全ての回転速度条件で,その後に油温 110℃で同じ荷重・

    速度条件で測定する一連の実験を一つの巡回とする要領の

    繰り返し実験である.実験は,各条件で 5 回測定(約 20

    分)し,一巡で約 7 時間を要した.各条件で測定した平均

    506

    (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

    Fig.1 Comparison for flat and roller tappets

    Fig.2 Contact of cam and lifter with offset shim Fig.3 Changes of friction diagram with frequency of test

  • 摩擦係数の値は,実験の巡回毎に図 4 の例示のように変化

    した.そこで,実験の巡回数すなわち時間の経過と共に変

    わる摩擦波形を図 3,全実験条件の平均摩擦係数の総平均

    値の経時的な変化を図 5 のように調べ,シム面の研削仕上

    げ粗さや表面処理,カム・シム接触の面馴じみや形態など

    で変わる摩擦特性を評価した.また,シム面の実験前と実

    験後の表面を粗さ計で測定し,断面形状の変化から摩耗量

    を求め,摩擦と摩耗の関係を調べた.

    2.2. 供試カムと供試シム

    供試カムは,前報(2)と同じ大きさ(基礎円半径 17.4mm,

    幅 13.5mm,揚程 6mm),材質(ビッカース硬さ 5.8~7.6GPa,

    Cr 系鉄基焼結材)の通常研削仕上げした表面粗さが算術平

    均粗さ Ra(または二乗平均平方根粗さ Rrms)の値で約

    0.13μm(約 0.16μm)のものであり,また供試シムは,直

    径 φ36mm,厚さ 3mm の薄肉円板の材質がビッカース硬

    さ 7.1~8.3GPa の浸炭鋼 SCM415 で,通常研削仕上げした

    表面粗さ Ra:0.11μm,Rrms:0.17μm のもの(Grind と

    記す),鏡面研削仕上げした Ra:0.011μm,Rrms:0.015μm

    のもの(ELID と記す),通常研削仕上げ後に複層型 DLC

    (CrN + a-C:H)を厚さ約 3μm プラズマ-アシスト化学蒸

    着した Ra:0.032μm,Rrms:0.048μm のもの(DLC と

    記す)の 3 種類である.さらに,カムとシムのオフセット

    量 O を約 2mm に設定した.

    2.3.供試潤滑油

    供試油は,前報(3)と同じ無灰系清浄分散剤配合 DH-2

    級 Low-SAPS 対策エンジン油で,粘度等級 SAE5W-30 の

    低粘度マルチグレード油であり,硫黄分の少ない高度精製

    GroupⅢ基油を用い,CD 級に比べ Ca などの灰分や硫黄分

    を半減させた,後述(4)のシム面 DLC コーティングとの

    組合せで,添加剤 ZP 配合油の場合より摩擦が低くなり,

    DLC コーティングと相性のよい Low-SAPS 油である.

    3.実 験 結 果 と 考 察

    3.1.摩擦とその経時的な変化

    前出の図 3 は,Grind 仕上げ,ELID 仕上げ,DLC コー

    ティングの各シムで測定した摩擦波形の一例である.また

    図 4 に,Grind シム,ELID シムならびに DLC シムの油温

    110℃の場合の平均摩擦係数の実験巡回数に伴う変化の一

    例も示した.これらから,カムとシムの接触は,摩擦係数

    が回転速度の増大,接触荷重の減少または油温の低下すな

    わち粘度の増大に伴い小さくなる混合潤滑の領域にあり,

    実験の巡回数すなわち時間経過と共に接触面の馴じみや摩

    耗が進行し摩擦は小さくなる傾向にあることが分かった.

    さらに図 5 は,シム別に回転速度,接触荷重や油温の全

    実験条件で得られる平均摩擦係数を総平均した値の実験巡

    回数に伴う変化を調べたものである.また本研究の続報(4)

    の図 2 や図 3 に,実験前と実験後の各シム試験片のカム当

    接面の外観と粗さ計で測定した断面形状を示す.

    図 5 から,まず実験の巡回数の小さい初期から前半の段

    階で,通常研削した表面粗さの大きな Grind シムに比べ,

    DLC シムの方が摩擦は大幅に低いこと,また ELID シムも

    摩擦は格段に低く,表面粗さを小さくし摩擦を低減させる

    方が効果は著しく大きいこと,すなわち DLC コーティン

    グの摩擦低減効果は余り大きくないことなどが分かる.

    次に実験の巡回数の大きな後半の段階を含め評価すると,

    Grind シムや ELID シムでは,実験の巡回と共に経時的に

    摩擦が減少しており,接触面の初期摩耗の進行やトライボ

    化学反応膜の形成などで経時的に混合潤滑下の固体接触の

    度合と境界膜の接触せん断抵抗が小さくなり摩擦が減少す

    ること,しかし DLC シムでは,摩擦は経時的にほとんど

    変わらず,Grind シムが実験巡回数で約 7 回(おおよそ 50

    時間)経過したときに達する摩擦と同じ大きさであること

    などが分かる.

    4.結 論

    上記の実験結果から,以下のことが明らかになった.

    (1)表面を通常研削仕上げした粗いシムに比べ,DLC コ

    ーティングしたシムの方が初期の摩擦は大幅に低い.

    (2)しかし ELID 鏡面研削仕上げしたシムの方が摩擦は

    格段に低く,表面粗さを小さくし摩擦を低減させる方が効

    果は著しく大きい.それに比べて,DLC コーティングの摩

    擦低減効果は余り大きくない.

    (3)通常研削仕上げしたシムや鏡面研削仕上げしたシム

    では,実験の巡回と共に経時的に摩擦が減少する.

    文 献 等

    ここに引用した文献その他を本誌の本研究の後報編に記す.

    Fig.4 Changes of mean friction coefficient with frequency

    of test for the oil temperature of 110deg

    Fig.5 Changes of average value of mean friction coefficients

    for the all of test conditions with frequency of test

  • 直動式動弁機構カム・フォロワの摩擦摩耗特性に関する研究

    (その2:フォロワ面の摩耗)

    Study on Friction and Wear Characteristics of Cam and Follower for Direct-type

    Valve Train - Part 2 : Wear of Follower Surface -

    ○学 川上 寛史(九産大) 太田 貴史 古藤 真弘 坂本 恭平

    牛島 宜亮(九産大院) [指導教員] 正 副島 光洋 (九産大)

    Hiroshi Kawakami, Takafumi Ota, Masahiro Koto and Kyohei Sakamoto, Kyushu Sangyo University

    Yoshiaki Ushijima, Graduate School of Kyushu Sangyo University and Mitsuhiro Soejima

    Key words: IC Engine, Tribology, Friction, Wear, Direct-type Valve Train, Valve-lifter,

    Offset Shim Rotation, Surface Finish and Treatment, Oil-film Thickness

    1. は じ め に

    本研究は,前報(4)に続き,動弁系カム・フォロワ摩擦摩

    耗低減のためのトライボロジー技術を検討するものである.

    既報(3)で,DOHC 直動式動弁機構オフセット・シム付き

    回り止め式バルブ・リフタの開発に関して,円盤状シムがロ

    ーテーションする機構を模したカム・フォロワ試験機(1)を

    用い,シムのカム当接面に DLC コーティングを施す場合に

    ついて,低粘度 SAE5W-30 の Low-SAPS 対策の無灰系清浄分

    散剤配合 DH-2 級や ZnDTP 代替添加剤 ZP(Zinc Phosphate)

    配合のエンジン油で潤滑し,カム軸回転速度,最大接触荷重

    や油温で変化する摩擦波形と平均摩擦係数を測定した結果

    から,図 1 の総平均摩擦係数の比較のように,摩擦は DLC

    コーティングの有無と Low-SAPS エンジン油の種類で変化

    し,DLC コーティングは摩擦を低減させ,その効果は DH-2

    級油と組合せる場合に最も大きいことなども明らかにした.

    前報に続き,カムと当接するシム面を Grind 仕上げ,

    ELID 仕上げおよび DLC コーティング処理する場合につ

    いて同じ実験方法で測定した摩擦波形,平均摩擦係数なら

    びに表面形状の変化から,シム表面の加工処理すなわち表

    面仕上げ粗さや DLC コーティングの摩擦低減効果,シム

    のローテーションの作用とりわけ摩耗への影響などを調べ

    たので,その概要を報告する.

    2.実 験 結 果 と 考 察 2.1.摩擦とその経時的な変化

    既報ならびに前報(4)の図 3 や図 4 および図 5 から,カ

    ム・シム接触は混合潤滑の領域にあること,通常研削仕上

    げしたシムに DLC コーティングすると,初期に摩擦は大

    幅に低くなること,ELID 鏡面仕上げした場合,DLC コー

    ティングしないでも摩擦は格段に低くなり,表面粗さを小

    さくし摩擦を低減させる方が効果は著しく大きいこと,カ

    ムと DLC コーティングしないシムの接触面では,実験の

    巡回と共に初期摩耗の進行とトライボ化学反応膜の形成な

    どにより経時的に摩擦が減少することなどが分かった.

    さらに図 2 と図 3 のような実験後の摩擦面の観察や粗さ

    測定から,Grind シムで表面粗さ Ra:0.024μm,Rrms:

    0.030μm の馴じみ状態へ進行し,ELID シムでは Ra:

    0.021μm,Rrms:0.035μm と実験初期より粗くなること,

    シム面の平均摩耗深さは Grind シムで約 0.91μm,ELID

    シムでは約 0.25μm となり,初期の表面粗さの小さい方が

    摩耗量は少ないこと,摩擦と摩耗の相関性が認められるこ

    となどが分かった.

    とくに DLC シムでは,表面粗さが Ra:0.050μm,Rrms:

    0.073μm と実験初期より少し粗くなること,コーティング

    層(約 3μm の厚さ)が摩耗して無くなり,その下地にカ

    ム面が直接接触する状態に至っていたことなどが分かった.

    このことから,DLC 膜層の小さな接触せん断抵抗に依拠し

    た混合潤滑下の低い摩擦になったことが分かり,低い摩擦

    507

    Fig.1 Change with test oil and surface

    (a) Grind shim

    (b) ELID shim

    (c) DLC shim

    Fig.2 Photos of test shim

    (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

    Before Test After Test

    Before Test

    Before Test After Test

    After Test

  • を長時間持続させるには DLC 膜の耐摩耗性の向上すなわ

    ち寿命の改善が必要であると言える.

    2.2.カム・シム間の摩擦と接触形態

    図 4 に,実験巡回数の大きいときの測定すなわちカム・

    シム接触面の馴じみ・摩耗が進行した状態の接触荷重,摩

    擦力および摩擦係数のカム角度変化の一例を示す.これら

    と既報(1)のカムとフォロワがすべり接触するカム/スリ

    ッパー・フォロワの場合の測定例の摩擦波形を比較すると,

    図 4 や既報(1)の同様な例のカム・シム摩擦の方は,カム

    のノーズ部が接触するタイミング(カム角度で約-30deg

    ~30deg の範囲)で減少する特性を示しており,その傾向

    は低いカム軸回転速度の場合に顕著になる.これは,円盤

    状のシムがオフセットした位置でカムに接触するためにカ

    ムの摩擦力でローテーションし,転がり接触に近い接触形

    態となり摩擦が低くなるためであると考える.

    さらに図 5 は,シム・ローテーションが摩擦波形に及ぼ

    す影響を端的に示す測定例で,実験巡回数が 6 回を過ぎ 7

    回目に進んだときの不規則な変動すなわちローテーション

    速度の変動で生じた摩擦の不安定現象であると推察する.

    摩擦の変化する割合は,平均摩擦係数の大きさで約 60~

    70%にも及ぶ.したがって,ローテーションの作用で摩擦

    低減効果を倍増させることも可能であると言える.

    ところで,すべり接触から転がり接触への接触形態の変

    化で摩擦が低減することを活用したカム・フォロワ動弁機

    構として,OHV の平タペットあるいは DOHC 直動式のシ

    ム付きやシム無しのバケット形のバルブ・リフタの場合ま

    たは OHCロッカアーム式やDOHCスイングアーム式のロ

    ーラ・フォロワの場合などがある.これらでは,いずれも

    更なる摩擦摩耗の低減すなわち性能・信頼性の向上のため

    に,前述のように各要素加工・仕上げの方法や条件の選定,

    DLC などのコーティングの活用,Low-SAPS エンジン油

    性状への対応などの課題を解決しなければならない.

    3.結 論

    前報に続き,下記のような点も明らかになった.

    (1)通常研削仕上げしたシムや鏡面研削仕上げしたシム

    では,接触面の初期摩耗の進行とトライボ化学反応膜の形

    成などにより経時的に馴じみ,摩擦が減少する.

    (2)通常研削仕上げしたシムに比べ,表面粗さが小さく

    摩擦の低い ELID 鏡面研削仕上げしたシムの方が摩耗量は

    少なくなり,摩擦と摩耗が相関する.

    (3)DLC コーティングしたシムの摩擦は,経時的にほと

    んど変化しない.コーティング層が,おおよそ 50 時間(実

    験巡回数で約 7 回)経過後に摩滅し,摩擦は通常研削仕上

    げした面の粗いシムが達する大きさと同じである.

    (4)オフセット・シムがカムとの接触でローテーション

    すると,すべり主体のすべり・転がり接触が転がり主体の

    転がり・すべり接触へ移り,摩擦が低減される.

    文 献 (1)上田ほか, 九州学生会 41回卒研発表論文集(2010), pp.347-348

    (2)立石ほか, 九州学生会 41回卒研発表論文集(2010), pp.351-352

    (3)山崎ほか, 九州学生会 41回卒研発表論文集(2010), pp.349-350

    (4)石田ほか, 九州学生会 42 回卒研発表論文集(2011)

    After Test

    Before Test

    (a) ELID shim

    After Test

    Before Test

    (b) DLC shim

    Fig.3 Changes of surface profile

    Fig. 4 Changes of friction diagram with test

    shim and conditions

    Fig. 5 Change of friction diagram with shim rotation

    between 6th and 7th tests for ELID shim

  • マイクロプローブ L2Fによるディーゼル噴霧分裂過程の研究

    Study of breakup process in diesel fuel spray by using micro-probe L2F.

    ○学 川原田 光典(長崎大) 正 坂口 大作(長崎大) 正 植木 弘信(長崎大)

    Noritsune KAWAHARADA, Nagasaki University, 1-14 Bunkyo-Machi, Nagasaki, Nagasaki

    Daisaku SAKAGUCHI, Nagasaki University

    Hironobu UEKI, Nagasaki University

    Key Words : diesel engine, laser measurement, velocity, size

    1. まえがき

    ディーゼル機関における燃焼および排気特性は燃料噴霧

    特性に依存する.噴霧は液体燃料が噴孔から高圧で噴射され

    微細な液滴へ分裂することにより形成され,噴孔近傍におけ

    る噴霧液滴の挙動が噴霧全体の特性を決定する.従って,噴

    霧液滴の分裂過程における挙動を把握することが重要であ

    る.しかし,燃料噴霧内には異なった速度・サイズの液滴が

    高数密度で存在しているため,測定が容易ではない.著者ら

    は2つの焦点の間を液滴が飛行する時間を計測して速度を求

    めるマイクロプローブレーザー2 焦点流速計(L2F;Laser

    2-Focus velocimeter)に散乱時間計測機能を付加することによ

    って噴霧液滴の速度とサイズの同時計測を行い.噴霧分裂を

    調査した.本報ではコモンレールインジェクタから大気中に

    間欠噴射される燃料噴霧を対象とし,液滴の速度・サイズの

    時間変化ならびに空間分布から液滴の分裂および合体を調

    査した.

    2. 実験装置および測定方法

    噴霧液滴の速度 uおよびサイズ dp の計測には 2焦点間隔

    が 17μm,焦点直径が約 3μm,焦点長さは約 20μm の L2F

    を用いた.飛行時間 t1 および散乱時間 t2 は周波数 160MHz

    のクロックで計数される.速度 u は 2 焦点間距離 S を飛行

    時間 t1 で割ることにより求められる.すなわち,

    1tSu  

    また,液滴サイズ dp は,2 焦点間距離 S と液滴サイズ dp+焦点サイズ F の比が飛行時間 t1 と散乱時間 t2 の比に対応

    することから,次式で求められる.

     Ftud p 2 最高データサンプリング周波数は 15MHz である.

    図 1 は L2F による噴霧計測システムである.レール圧が

    40MPa に設定されたコモンレールシステムにより供給さ

    れる軽油を噴孔径 0.113mm の 5 噴孔ノズルから大気中に間

    欠噴射した.噴射間隔は 330ms であり,噴射期間を 1.0 ms

    に設定した.

    測定位置の表示のために,噴霧軸方向に z 軸,L2F のレ

    ーザー光軸方向に y 軸,yz 平面に対して垂直に x 軸をとっ

    た.測定位置は z=9, 10, 11 および 13mm の各断面におい

    て,x=-1.0 から x=1.0 まで 0.2mm 間隔で 11 点とした.L2F

    の上流焦点を通過する液滴数を各測定点でそれぞれ 5,000

    とし,噴射開始信号印加から液滴が測定点を通過するまで

    の時間 T を 6MHz のクロックで計数した.

    Fig.1 Fuel spray measurement system

    Fig.2 Time variation of number of data; x=0mm

    3. 結果および考察

    図 2 は z=9, 10, 11 および 13mm の x=0mm において取得

    された噴射当たりのデータ数の時間変化を示す.T=0.95ms

    から 1.65ms の範囲でデータが得られている。

    図 3(a),(b)および(c)は,z=9, 11 および 13mm における速

    度の空間分布を示す.どの図においても速度の最大値とな

    る点に対してほぼ左右対称のグラフとなっている.z=9mm

    ではいずれの時刻においても最高速の点は x=0mm に現わ

    れており,z=11mm では最高速の点は x=-0.2mm に現われて

    いる.また,z=13mm では最高速の点が再び x=0mm に現わ

    れていることから,噴孔から特定の距離において最高速を

    とる点が噴霧軸から半径方向にずれることがわかる.

    図 4 は,T=1.15ms におけるサイズの空間分布を示す.最

    大サイズをとる点が z=9mm では x=0mm で現われ,z=11mm

    では x=0.2mm で現われている.また z=13mm では x=0mm

    Rail

    Press.

    Laser Driver

    Amplifier

    Digitizer

    L2F Signal Analyzer

    &

    Data holderPersonal

    computer

    USB

    Injector Driver

    Function

    Generator

    Motor

    Z

    Y

    Rail

    Fuel

    Tank

    Controller

    HP Pump

    Nozzle

    L2F

    Upstream

    Sig.

    Downstream

    Sig.

    X

    Rail

    Press.

    Laser Driver

    Amplifier

    Digitizer

    L2F Signal Analyzer

    &

    Data holderPersonal

    computer

    USB

    Injector Driver

    Function

    Generator

    Injector Driver

    Function

    Generator

    Motor

    Z

    Y

    Rail

    Fuel

    Tank

    Controller

    HP Pump

    Nozzle

    L2F

    Upstream

    Sig.

    Downstream

    Sig.

    X

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

    Nu

    mb

    er

    of

    data

    / in

    jectio

    n

    T(ms)

    z=9mm

    z=10mm

    z=11mm

    z=13mm

    0508

    (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

  • で現われており,この状況は,図 3 における最高速をとる

    点の半径方向へのずれと同様である.このことから液滴の

    速度とサイズに相関があるものと考えられる.

    図 5 は,x=0mm において取得された噴射当たりの速度の

    データ数を 10m/s ごとに示す.z=9mm に比べて z=10mm で

    はほぼ全速度域でデータ数が少なくなっていることがわか

    る.z=9mm では,z=10mm においてデータ数が最大となる

    180m/s よりも低速域のデータ数が高速域のデータ数に比

    べて多い.このことが,z=10mm に比べて z=9mm の高速の

    データが多いにもかかわらず平均速度が小さく評価される

    要因と考えられる.

    図 6 は x=0mm において取得された噴射当たりのサイズ

    のデータ数を 2μm ごとに示す.z=9mm に比べて z=10mm

    では 25μm 以上のサイズの液滴のデータ数が減少している

    ことから,液滴の分裂が生じているものと考えられる.

    (a)z=9mm; T=0.95,1.15,1.35,1.55ms

    (b)z=11mm; T=0.95,1.15,1.35,1.55ms

    (c)z=13mm;T=0.95,1.15,1.35,1.55ms

    Fig.3 Spatial distribution of droplet velocity

    z=9mm では,z=10mm における算術平均サイズである 10μm

    より小さいサイズのデータ数が大きいサイズのデータ数よ

    り多い.このため z=9mm の平均サイズが,z=10mm と比べ

    て小さく評価されている.この z=9mm における分裂後の小

    サイズ液滴は z=10mm においては噴霧外縁へ向って移動す

    るものと考えられる.

    4.まとめ

    ディーゼル噴霧の液滴の速度とサイズを噴孔から 9mm

    ~13mm の距離で L2F を用いて計測した.z=9mm において

    液滴の分裂がおきており,分裂後の液滴は噴霧外縁へ移動

    するものと判断された.また,液滴の速度は噴霧軸近傍で

    最大となり,噴孔から特定の距離では,その位置が 0.2mm

    のオーダーで半径方向に変化する.またこの速度の変化と

    サイズの変化には相関があることを明らかにした.

    Fig.4 Spatial distribution of droplet size

    z=9,10,11,13mm; T=1.15ms

    Fig.5 Number of velocity data; x=0mm

    Fig.6 Number of size data; x=0mm

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

    Velo

    city

    (m/s

    )

    X(mm)

    0.95ms

    1.15ms

    1.35ms

    1.55ms

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

    Velo

    city

    (m/s

    )

    X(mm)

    0.95ms

    1.15ms

    1.35ms

    1.55ms

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

    Velo

    city

    (m/s

    )

    X(mm)

    0.95ms

    1.15ms

    1.35ms

    1.55ms

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

    Size(μm)

    X(mm)

    z=9mm

    z=10mm

    z=11mm

    z=13mm

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    0 100 200 300 400 500

    Nu

    mb

    er

    of

    data

    / in

    jectio

    n

    Velocity(m/s)

    z=9mm

    z=10mm

    z=11mm

    z=13mm

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    0 10 20 30 40 50

    Nu

    mb

    er

    of

    data

    / in

    jectio

    n

    Size(μm)

    z=9mm

    z=10mm

    z=11mm

    z=13mm

  • 低温度差スターリングエンジンの動作流体の

    温度差に関する検討 Investigation for temperature difference of working fruid of

    low temperature difference Stirling engine

    ○学 遠藤 亮祐(大分大学) 正 加藤 義隆(大分大学)

    ENDO Ryousuke, Oita University, 700, Dan-noharu, Oita-shi, Oita KATO Yoshitaka, Oita University,

    Key Words : Indicated diagram, Low Temperature Difference Stirling Engine, Waste Heat Recovery, Renewable Energy

    1.緒言 低温度差スターリングエンジン(LTDSE: Low temperature

    difference Stirling engine)を実現化するために手作り模型スターリングエンジンを使用して動作流体の温度差に関する

    検討を行った.一連の活動の目標は 100W 規模の出力を卓上

    サイズの LTDSE を安価に実現することである. 100W 規模の LTDSE の用途は,例えば日本においては風呂の残り湯で夜間の照明の一部を賄うようなことも可能で

    あり,また途上国の無電化地域における照明用電力の供給

    と共に技術移転による自立的な工業化の切欠を与えること

    も期待できる. 加藤は大分県地方での活動を念頭に,三つの制約「材料

    や工具は広く大分県内で購入可能なものに限る」「加工に工

    作機械や電動工具を使用しない」「駆動のための熱源に火炎

    を使用しない」の下でスターリングエンジン(SE)を製作し,それを「手作り模型 SE」と呼称して活動してきた(1).その経緯や概要の一部は文献 2 で言及している. 本報では,実験により LTDSE の指圧線図を計測して,その結果を元に動作流体の温度を推定した.

    2.低温度差スターリングエンジンの課題 LTDSE は出力が低い.出力向上の方法としては,熱源の温度差を大きくする,装置を大きくする,動作流体を加圧

    する,機関回転数を向上させる,摩擦損失動力を低減する

    などが挙げられる. 2・1 トルクの改善 動作流体の高温部と低温部の温度差はトルクに比例する.熱源の温度差を変える事は

    LTDSE の性質を失わせるものであり,変更すべきではない.手作り模型 SE を利用した要素試験の結果では,加熱する熱源と冷却剤の温度差に対して,動作流体の高温部と低温

    部の温度差が 10 分の 1 しかなかった(3).これは SCM-20(4)

    を用いた計算結果からも伝熱モデルによっては妥当な結果

    であり,原村らの提案する伝熱形態(5)で計算すると動作流

    体の高温部と低温部の温度差は大幅に改善した(6).また再

    生器の効率を上げることでも大幅に改善するという結果を

    得ている.

    3.実験装置 使用した手作り模型スターリングエンジンを図1に示す.

    このスターリングエンジンの仕様を表 1 に示す.ピストン

    に対してディスプレーサを 90 度前進させるのが一般的な仕様だが,手作り模型スターリングエンジンの標準的な仕

    様はベローズに対してディスプレーサが 30~40 度前進している.ピストンではなくベローズを使っている.

    測定に使用した器具を取り付けた状態が図 2 である.圧

    力センサを手作り模型 SE のエアバルブに取り付けパソコ

    ンに電圧として表示されるようにしてある.クランクに 17

    個の線を入れたスリットを取り付けてあり,手作り模型 SE

    が運動してクランクが回転している間エンコーダーがスリ

    ットの線で光が遮断されてあるところとされてないところ

    を感知してパソコンに電圧として表示されるようにしてあ

    る.圧力センサにはキーエンスの AP-44 を使用している.

    エンコーダーの読み取りに使用した器具はキーエンスのデ

    ジタルファイバセンサ FS-N10 である.

    シリンダ底を暖めた.シリンダの上側に水を溜めて冷却

    した.冷却側にベローズがある.熱電対を低温部に 1 箇所,

    高温部にプレートを挟むように 2 箇所設けている.

    Fig.1 Handcrafted model Stirling engine

    Table 1 Specification of Handcrafted model Stirling engine for isothermal model

    total volume of displacer chamber [cm3] 579 volume of displacer [cm3] 120 stroke volume of displacer [cm3] 250 stroke volume of power piston [cm3] 4.5 height of displacer chamber [cm] 4.5 Bore of displacer chamber [cm] 12.8 height of displacer [cm] 1 Diameter of displacer [cm] 12.5 stroke of displacer [cm] 2 Compression ratio 1.0098

    509

    (社)日本機械学会 九州学生会 第 42 回卒業研究発表講演会(No.118-2)論文集 2011/3/11

  • Fig.2 Experimental apparatus

    4.実験結果

    Fig.3 Raw data

    無負荷の状態で図 3 の圧力とエンコーダの信号を得た.冷

    却する大気の温度は温度計で測定して 12℃であった.ピコ

    テックの TC-08 で温度を測定した結果,この時の動作流体

    の高温部と低温部の温度は,61℃,80℃,27℃であった. 0.01 周期でノイズがあったため図 3 の生のデータから

    0.01 秒の圧力の平均を取った.クランクと一緒に動くスリ

    ットからエンコーダーでピコテックのピコスコープ 4424

    により電圧をパソコンに取り込み,電圧の変位点からクラ

    ンクの角度を求める.求めた角度から容積を求める.また

    エンコーダーで測定した電圧の変位点から圧力センサが圧

    力を電圧として表示しているので読み取る.圧力が電圧と

    して表示されているので計算によって圧力を求める.計算

    結果より図 4 の指圧線図になった.

    ベローズは機構の位相による伸縮方向の容積変化とは別

    に,内外の圧力差によって径の変化に伴う容積変化がある

    ため,計算上の容積と実際の容積は異なる. 灰色で描かれた図はシュミットサイクルで数値計算した

    もので,黒色の線で描かれた図は実験によって得られたデ

    ータにより描かれた指圧線図である.手作り模型 SE の伝熱面は高温側が 61℃で低温側が 27℃である.高温側を加熱

    している水蒸気の温度が 80℃であった.

    Fig.4 Indicated diagram

    5.動作流体の温度の推定 動作流体の温度は直接わからないので,数値計算によっ

    て得られる等温モデルの指圧線図の比較を行なった.数値

    計算はディスプレーサとピストンの動きを正弦波で仮定す

    るシュミットサイクルで行う. 図 4 に示すように,実験と同じようになるような数値を探した.その結果は高温側の温度が 49℃,低温側の温度が

    40℃である.動作流体の温度差は 9℃であるということが

    わかる.熱源の温度に対して動作流体の温度差が小さいこ

    とがわかる.

    6.結論 実験により低温度差スターリングエンジンの指圧線図を

    計測し,その結果から熱源の温度に対して動作流体の温度

    差が小さいことが確認できた.

    文 献

    (1) 例えば,加藤義隆 石橋和基,工作機械を用いない

    模型 SE 作成のための検討,第 9 回スターリングサイクルシンポジウム講演論文集,(2005), pp.111-112

    (2) 遠藤亮祐 加藤義隆,手作り模型スターリングエンジンのための折り紙を参考にしたベローズ,第 9