Click here to load reader

download.microsoft.comdownload.microsoft.com/.../WS2012R2_StorageSpace_ConfigG… · Web viewまた、このガイドはWindows Server 2012、Windows Server 2012 R2 を対象としています。Windows

  • Upload
    others

  • View
    7

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Windows Server®2012 R2記憶域スペースのアーキテクチャーと設計・管理のベストプラクティス

Windows Server 2012 R2記憶域スペースのアーキテクチャーと設計・管理のベストプラクティス

第 1.1 版

日本マイクロソフト株式会社

Published: 2013 年 11 月 22 日

概要このガイドについて

このガイドでは、Windows Server 2012 で新たに導入された記憶域スペースのアーキテクチャーならびにWindows Server 2012 R2における強化ポイント、記憶域スペースの設計と管理のベストプラクティスについて説明します。

対象ユーザー

このガイドは、IT 基盤の設計、導入、運用を担当する IT 部門の管理者、担当者、および IT プロフェッショナルを対象としています。

このガイドで説明されていないもの

このガイドでは、フェールオーバークラスターの構築方法や管理方法については説明していません。フェールオーバークラスターについては、「Windows Server 2012 フェールオーバー クラスタリング 構築・運用・管理ガイド」を参照してください。

また、このガイドはWindows Server 2012、Windows Server 2012 R2 を対象としています。Windows 8 や Windows 8.1でもこのガイドで解説する記憶域スペースの機能の大部分を利用することができますが、Windows 8 や Windows 8.1 における構築方法や管理方法については説明していません。

著作権情報

このドキュメントは、 "現状のまま" 提供されます。このドキュメントに記載されている情報 (URL などのインターネット Web サイトに関する情報を含む) は、将来予告なしに変更することがあります。

このドキュメントは、Microsoft 製品の知的財産権に関する権利をお客様に許諾するものではありません。お客様は、内部的な参照目的に限り、ドキュメントを複製して使用することができます。

© 2013 Microsoft Corporation. All rights reserved.

Microsoft、Active Directory、Hyper-V、MS-DOS、Windows、Windows NT、Windows Server、および Windows Vista は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。

その他すべての商標は各社が所有しています。

目次概要2はじめに8記憶域スペースとは9記憶域プールと記憶域スペース9主な機能、特徴11クラスタリング構成による可用性の向上14ReFSファイルシステムと記憶域スペース15記憶域スペースとデータ重複除去16記憶域スペースの要件17技術要件17基盤技術20記憶域スペースの制約21回復性の種類による要件22Windows Server 2012 R2 における新機能と変更点23Windows Server 2012 と R2 の記憶域スペースの主な相異点24記憶域スペースのアーキテクチャーの理解25記憶域プール25記憶域スペース25プロビジョニング26回復性の種類29記憶域階層33ライトバックキャッシュ34クォーラム34列の数(NumberOfColumns)35インターリーブ(Interleave)38記憶域スペースの設計40ホットスペア40ディスクの割り当て40ディスクセクターサイズ41クラスターディスク要件41エンクロージャー全体の障害に対する保護41エンクロージャーを使用する際のホットスペアディスク42記憶域スペースの管理方法43複数のサーバーの管理44スタンドアローンサーバーへの記憶域スペースの展開46スタンドアローンサーバーへの記憶域スペースの展開手順47ステップ1:記憶域プールを作成する48ステップ2:仮想ディスクを作成する50ステップ3:ボリュームを作成する57クラスター記憶域スペースの展開63記憶域スペースとクラスターの共有記憶域(CSV)の統合63ハードウェア構成の推奨要件65クラスター記憶域スペースの構成例65クラスター記憶域スペースの展開手順67ステップ1:各サーバーでMPIOを有効にする67ステップ2:全てのサーバーが共有ディスクにアクセスできることを確認する68ステップ3:(オプション)ファイルと記憶域サービスから記憶域スペースを作成する68ステップ4:フェールオーバークラスターを作成する69ステップ5:(オプション)フェールオーバークラスターマネージャーでクラスター記憶域スペースを作成する71ステップ6:(オプション)クラスターディスクをCSVに追加する79記憶域スペースのパフォーマンスに関するベストプラクティス81物理ディスクの選択81ブロックサイズとインターリーブ82列とI/O性能83パリティスペースにおけるジャーナルディスク84その他に考慮すべき事項84まとめ:ベストプラクティス85PowerShell コマンドレットによる高度な記憶域の管理86記憶域プール作成前の準備86記憶域プールを作成する89仮想ディスクを作成する90ボリュームを作成する92記憶域スペースの管理92クラスター記憶域の作成102記憶域スペースに関するFAQ105記憶域スペースの状態の監視方法105ドライブライト(LED)による物理ディスクの特定108記憶域スペースで利用するHDDを他のサーバーに接続した場合109仮想ディスクのサイズを拡張する112物理ディスクを交換する113記憶域プールのバージョンをアップグレードする113記憶域スペースを作成したあとに変更できない主な属性114記憶域スペースのバックアップ115記憶域プールから削除した物理ディスクが他のコンピューターで認識できない115記憶域スペースの詳細な属性を確認する116記憶域階層で特定のファイルを高速(標準)階層に保存する119記憶域階層の階層間のファイルの移動119記憶域階層の容量を拡張する119物理ディスク障害時の記憶域スペースのふるまい122ホットスペアディスクがオンラインになる契機123記憶域プールの自動再構築が行われない124ログオプション124Appendix125Appendix A:用語125Appendix B:Windows OSによる記憶域の管理127Appendix C : 記憶域スペースを管理する主なコマンドレットの構文とパラメーター131Appendix D: 主なイベントログと解決方法148まとめ151評価リソース151

はじめに

企業や組織のネットワークにおいて保存されるドキュメントやデータは日々増大する一方であり、デジタルデータの重要性は高まる一方です。ファイル サーバーが停止したり、ファイルが失われたりすると、ユーザーやアプリケーションはドキュメントやデータにアクセスできなくなり、業務の遂行に多大な影響を与えます。

Windows Server 2012 の記憶域は、ファイル システム、ネットワーク、サービスのあらゆるレイヤーにおいて、信頼性、可用性、パフォーマンス、およびセキュリティを向上するように設計されています。IT 担当者はこれらの機能を組み合わせて、先進のテクノロジーに対応したハードウェア コンポーネントの能力を最大限に活用してファイル サーバーのパフォーマンスを最大化することもできますし、市販の安価なハードウェア コンポーネントを用いて、コストをかけることなく、ファイル サーバーに信頼性と可用性、パフォーマンス機能を追加することもできます。

Windows Server 2012 の記憶域スペースは単独のサーバーでも動作しますが、Windows Server 2012の機能であるフェールオーバー クラスタリングならびにクラスターの共有記憶域の機能を用いて、複数のWindows Server 2012サーバーノードから構成されるより高い信頼性、可用性、パフォーマンスを持ったファイルサーバーを実現することができます。また、クラスターの共有記憶域とSMBを組み合わせることで、単一名前空間を維持しながらサーバーノードや記憶域の追加が可能となり、市販の安価なハードウェアコンポーネントを用いつつ、大規模エンタープライズクラスでの利用にも耐えうる柔軟なスケールアウトファイルサーバー(SOFS)を構築することもできます。

Windows Server 2012 では、2つのエディションである Standard と Datacenter の違いはライセンスの範囲内で実行可能な仮想化インスタンス数の違いであり、スケーラビリティ (論理プロセッサ数や最大メモリ) と利用可能な機能に差はありません。Windows Server 2008 R2 まで Enterprise および Datacenter に対してのみ提供されていた DFS レプリケーションやフェールオーバー クラスタリング機能といった高可用性機能は、Windows Server 2012 Standard エディションでも利用可能になりました。エディション間の機能の差異がなくなったことからも、より少ない予算でファイル サービスに可用性を追加できるようになっています。

また、可用性および信頼性が非常に高い記憶域の入手および管理にかかるコストは、IT の予算のかなりの部分を占めています。Microsoftはこの記憶域スペースと呼ばれる高度な仮想記憶域機能をWindows Server 2012 の記憶域プラットフォームの一部として新たに提供することで、高度な記憶域機能を低コストで必要としている企業に新たな選択肢を提供します。

このガイドでは、記憶域スペースにおけるアーキテクチャーを解説し、スタンドアローン構成、クラスタリング構成の記憶域スペースを管理運用する手法について説明します。

記憶域スペース に関する最新情報については、以下の製品サイトでご確認ください。

http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/hh831739.aspx

記憶域スペースとは

記憶域スペースは、Windows Server 2012 で導入された新しい記憶域仮想化機能です。この機能によって、オンプレミス環境やクラウド環境で使用可能な高い可用性を備えた記憶域の構築、維持、運用に関するコストが大幅に削減されます。記憶域プールは、手頃な価格の市販のハードウェアと安価なストレージを束ね、大容量かつ管理の容易なストレージを展開のニーズに応じて柔軟に作成することができます。記憶域スペースは、Windows オペレーションシステム上では仮想ディスクとして表示され、物理ディスクと同じように扱うことができます。また、物理ディスク同様、Windows で利用可能なその他の機能とうまく統合できるため、さまざまなシナリオにおいて、ビジネスクリティカルな記憶域に対してコスト効率に優れたプラットフォームを提供することができます。

記憶域スペースはRAIDコントローラーなど外部の記憶域サブシステムは必要とせず、また市販の安価かつ大容量なストレージをサポートするため、可用性、信頼性、スケーラビリティに優れた記憶域の取得コストおよび管理コストが大幅に削減されます。また、プールやスペースを需要に応じて拡張することができるので、最終的に必要な記憶域容量を事前に予想して環境を設計する必要がなくなり管理者の負荷が軽減されます。

記憶域スペースは、さまざまなシナリオに対応するよう設計された機能セットを備えています。それらの機能には、ジャスト イン タイムのプロビジョニング、ミラーリングとパリティによる障害からの復元性、インテリジェントなエラー訂正によるより高いデータ整合性、ホストされた展開に対するマルチテナント機能のサポート、フェールオーバー クラスタリング機能で提供されるクラスターの共有ボリューム (CSV) との統合による可用性とスケールアウトなどがあります。

記憶域プールと記憶域スペース

記憶域スペースでは、新たなタイプの高度な記憶域仮想化拡張機能が記憶域スタックに導入されています。物理ディスクを束ねる「記憶域プール」と、記憶域プール上に作成される仮想ディスクである「記憶域スペース」が、高度な仮想化を支えるコアのテクノロジーです。

· 記憶域プール ・・・ 記憶域プールは物理ディスクの集合体である仮想化された管理単位です。記憶域プール モデルはRAIDを始めとする従来からあるストレージエコシステムでは一般的となっているため、多くの記憶域管理者は既にこの概念を熟知しています。記憶域スペースではこの記憶域プールモデルを利用しているため、管理者が記憶域スペースの展開を計画する際には、新しいモデルを学習する必要はありません。記憶域プールは、記憶域の集約、柔軟な容量拡張、管理の委任を可能とします。市販のUSB、SATA(Serial ATA)、またはSAS(Serial Attached SCSI)といった安価な接続方式をサポートしており、また記憶域プールに接続される物理ディスクはサイズが異なっていても構いません。これらの、接続方式もサイズも異なる物理ディスクを束ねて、1つの記憶域として管理することが可能です。さらに、記憶域プールにはハード ディスクだけでなくソリッドステート ドライブ (SSD) を加えることもできます。Windows Server 2012 R2では、SSDを含む記憶域プールを構成した場合、ファイルのうち頻繁にアクセスされる部分を SSD に配置する「記憶域階層」や、少量のランダム書き込みをSSD ストレージにバッファする「ライトバック キャッシュ」といった新たな機能を利用することで記憶域全体のパフォーマンスを高めることもできます。記憶域プールはドライブを追加するだけでいつでも動的に拡張でき、絶え間のないデータの増加にシームレスに対応できます。

図: 記憶域プールのイメージ

記憶域スペース ・・・ 記憶域プール上に作成される、仮想ディスクです。記憶域スペースは、回復性の種類、記憶域階層、仮想プロビジョニングまたは固定プロビジョニング、詳細な管理機能などの特性を備えています。記憶域スペースはWindowsオペレーティングシステム上で、物理ディスクとまったく同じように扱うことができます。仮想プロビジョニングにより、記憶域プールに接続されている物理ディスクの実際の記憶域サイズを上回るサイズの仮想ディスクを作成することが可能になり、またドライブレターやUNCなどのパスを変えることなく必要に応じて仮想ディスクのサイズを拡張することができるなど、設計の自由度、メンテナンス性が大幅に高まります。記憶域スペースに保存されたファイルは、記憶域プールに接続されている物理ディスクの中に保存されます。IT管理者は、汎用的で安価なストレージを用いて、以前は高価な記憶域ハードウェアでのみ提供されていたような大容量かつ柔軟性の高い仮想ストレージを構築することが可能となります。

図: 記憶域スペースのイメージ

主な機能、特徴

記憶域スペースは、次のような機能や特徴を備えています。

· 回復性を備えた記憶域 ・・・記憶域スペースは、3つのレイアウトをサポートします(回復性の種類と呼ぶ場合もあります)。

· ミラー…1つのデータを2つあるいは3つに複製し、それぞれ異なる物理ディスクに保存することで物理ディスク障害に対する信頼性を高めることができます。

· パリティ…データを複数のストライプに分割し、各ストライプとパリティと呼ばれる冗長コードをそれぞれ異なる物理ディスクに書き込むことで、物理ディスク障害に対する信頼性を高めることができます。物理ディスク障害時にはパリティと残されたストライプから、失われた情報を復元することができます。

· シンプル(回復性なし)…データを複数の物理ディスクに分割して書き込むことでディスクI/Oスループットが高まり、利用できる容量も最大化できます。データの複製やパリティを通じた冗長化は行わないため、物理ディスク障害が発生した場合はすべてのデータが失われます。

ミラー、パリティレイアウトの記憶域スペースでは、物理ディスクに障害が発生した場合、障害が発生したディスクの交換用に予約されるディスク(ホット スペア)がある場合には自動的に修復/再構成を行います。Windows Server 2012 R2では、ホットスペアがなくても記憶域プール内の他の物理ディスクの空き容量を利用してさらに迅速に修復/再構成することが可能となりました。記憶域スペースはまた、バックグラウンド スクラブ、およびインテリジェント エラー訂正により、記憶域コンポーネントに障害が発生した場合でもサービスの可用性を維持できます。電力障害またはクラスター フェールオーバーが発生した場合も、迅速に回復してデータの損失を生じないように、データの整合性が保持されます。

· 継続的可用性 ・・・記憶域スペースは、フェールオーバー クラスタリングと完全に統合され、単一のクラスター内の複数のノード(サーバー)にわたって1つまたは複数の記憶域プールをクラスター化することができます。これによりクラスターを構成するノードに障害が発生した場合にも、継続的なサービス展開が可能となります。記憶域スペースを個々のノードでインスタンス化することにより、記憶域は必要なときに (エラー条件になったとき、または負荷分散により) 異なるノードにシームレスにフェールオーバーします。また、クラスターの共有記憶域(CSV)との統合により、物理ディスクの追加やノードの追加が発生した場合でも単一名前空間を維持することが可能となり、データへのスケールアウト アクセスが可能になります。

· 容易な管理 ・・・Windows Storage Management API、WMI、および Windows PowerShell により、管理の完全なリモート操作とスクリプト化が可能になりました。記憶域スペースは、サーバー マネージャーのファイル サービスおよび記憶域サービスの役割を使用して簡単に管理できます。記憶域プールの利用可能な容量が構成可能な閾値に到達した場合に、記憶域スペースからの通知を表示することもできます。

· マルチテナント ・・・記憶域プールの管理はアクセス制御リスト (ACL) を使用して制御でき、プール単位で管理者に委任されるため、異なる管理者をそれぞれのプールおよびそれぞれのスペースに割り当てるなど、テナントの分離が必要なホスティング シナリオにも対応します。記憶域スペースは、従来の Active Directory および Windows セキュリティ モデルと完全に統合されるため、管理を委任された管理者は使い慣れた管理ツールやモデルを利用することができます。

· ハードウェアの互換性 ・・・今日、ハードウェア メーカーが幅広い記憶域デバイスを製造しており、管理者が展開する記憶域デバイスも必然的に幅広いものとなっています。記憶域スペースは、このような幅広いデバイスと連携することができるため、標準の市販ハードウェアでの展開が可能となっています。記憶域スペースは USB、SATAまたはSASインターフェイスで接続され、Windowsで動作するあらゆる物理ディスクを利用することができ、異なるストレージ容量のドライブの混在もサポートします。また、もし物理ディスクが何らかのカスタムエンクロージャーを経由して接続されていて、当該のエンクロージャーがSCSI Enclosure Serviceプロトコル(SES)をサポートしている場合、記憶域スペースはSESを利用してエンクロージャーのどの物理スロットにドライブが接続されているかを把握することができます。エンクロージャーがSES v3をサポートしかつエンクロージャーの物理スロットにディスクのステータスを示すLEDが搭載されている場合、記憶域スペースはSESを利用して障害が発生した物理ディスクが接続されているスロットのエラーLED(エラーLEDが存在する場合)を点灯させることができます。これにより、エンクロージャー内に多数接続された物理ディスクの中から、障害が発生している物理ディスクを特定することが容易になります。記憶域スペースがエンクロージャーの機能を利用するには、エンクロージャーが Windows認定ロゴ要件を満たしている必要があります。

· アプリケーションの適合性 …管理者が、記憶域スペース内に保存されているデータのバックアップ、復元、および複製を行わなければならない場合、記憶域スペースは、既存のバックアップ、復元、および複製用の各種ツール、さらにはスナップショット インフラストラクチャとも適合するよう設計されています。管理者は重要なデータを、記憶域スペースのもつ冗長性(ミラー、パリティ)に加えてさらに他のバックアップ手段によって保護することもできます。

次の図は、Windows Server 2012 における記憶域スペースアーキテクチャーの一例です。これは記憶域スペースがサポートするシナリオの一部であり、記憶域スペースの機能とWindows Server 2012 の他の機能との統合がもたらす、柔軟な展開オプションの一部を示しています。

図: 記憶域スペースの概念上の展開モデル

クラスタリング構成による可用性の向上

経費節減を目的として、多くのワークロードを少数のサーバーに統合する企業が増えており、サーバー エラー時のフェールオーバー クラスタリングの価値が認識されるようになっています。クラスター化しない場合、1 台のサーバーでエラーが発生すると、複数のワークロードおよびそれらのデータセットの可用性が阻害される可能性があります。記憶域スペースは、フェールオーバー クラスタリングによるフェールオーバーのサポートを通じて、この種のエラーによってデータの可用性が失われないよう保護します。高価な機器を用いずとも、安価な市販の記憶域ハードウェアを用いて作成した記憶域スペースを更にクラスタリング構成とすることで、個々のサーバーに障害が発生してもデータセットの可用性が維持されると同時に、複数のワークロードを1つのフェールオーバー クラスターに統合することもできるようになります。

· スケーラブルなフェールオーバー クラスタリング ・・・記憶域スペースは、2 ノード クラスターでのフェールオーバーだけでなく、3 ノード以上のクラスターで構成されるマルチ サーバー シナリオともうまく連携するよう設計されています (フェールオーバー クラスターでサポートされるノードの最大数は、64 台です)。

· 迅速なフェールオーバー処理 ・・・フェールオーバー クラスタリングと記憶域スペースを組み合わせて使用することで、管理者は、2 ノード フェールオーバー クラスター内の 1 台のサーバーでエラーが発生した場合でも、残り 1 台のクラスター ノードを使用して記憶域スペース内のすべてのデータにアクセスできます。また、3 台以上のノードから構成されるクラスターの場合、そのフェールオーバーの単位はより柔軟になります。

· クラスター リソースの容易な構成 … 記憶域プールの主な利点の1つは、管理者による管理を必要とする記憶域オブジェクトの数を削減できることです。記憶域スペースとフェールオーバー クラスタリングと組み合わせることで、プールをクラスターリソースとして作成できるようになり、含まれるすべての記憶域スペースの追加や削除を一度に行えることから、管理者の利便性がより高まります。

ReFSファイルシステムと記憶域スペース

Windows Server 2012 では新たなファイルシステムとして、Resilient File System(ReFS)が導入されました。記憶域スペースの仮想ディスクをReFSでフォーマットすることで、データの信頼性をより高めることが可能となります。記憶域スペースはデータのコピーを複数の物理ディスクで保持する、あるいはパリティ情報を生成して保存しておくことで、物理ディスク障害からデータを保護する技術ですが、ReFSと記憶域スペースを併せて用いることで、物理ディスク障害を伴わないレベルのデータの破損も検知し自動的に修復することでデータの信頼性を高めることができます。

ReFSはファイルを保存する際に、メタデータに対してチェックサムを付与し、ファイルの読み出し時にチェックサムを確認することでファイルの破損を検出します。ファイルの読み出し時以外にも、スクラブ機能と呼ばれる定期的なディスクのスキャンを通じて破損を検出します。ミラースペースがReFSでフォーマットされている場合、ReFSはファイルの破損を検出した後、ミラースペースが保存しているデータのコピーからファイルを自動的に修復します。また、この修復に際してディスク全体をオフラインにする必要がなく可用性を維持できるのもReFSのメリットです。

Windows Server 2012 R2 では、ミラースペースだけでなく、パリティスペースでもReFSを用いることができるようになり、ファイルの自動修復が可能となりました。また、Windows Server 2012 ではReFSでフォーマットされた記憶域スペースをCSVに追加することはできませんが、Windows Server 2012 R2 ではReFSでフォーマットされた記憶域スペースもCSVに追加することができるようになり、クラスター環境においてもReFSと記憶域スペースの優れた特性を組み合わせることができるようになりました。

· Resilient File Systemの概要  http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/hh831724.aspx

記憶域スペースとデータ重複除去

記憶域スペース同様Windows Server 2012で新たに導入されたデータ重複除去は、データの重複を検出し、データの正確性や整合性を損なうことなく、重複を削除することで、ディスクのスペースを有効活用することができます。

図: データ重複除去による削減効果

データ重複除去は記憶域スペースで作成した仮想ディスク(NTFSフォーマットに限ります)でも利用することができます。Windows Server 2012 R2 のデータ重複除去では、従来サポートしていなかった仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)を新たにサポートしました。記憶域スペースの記憶域階層とデータ重複除去を組み合わせることで、ディスクスペースを押さえながら高いパフォーマンスを実現する仮想デスクトップインフラストラクチャを実現することができます。また、Windows Server 2012 R2 のデータ重複除去では新たにクラスターの共有記憶域(CSV)におけるデータ重複除去もサポートされたことから、クラスター記憶域スペースで構築したスケールアウトファイルサーバー(SOFS)でもデータ重複除去を利用することができます。

· データ重複除去の概要  http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/hh831602.aspx

記憶域スペースの要件技術要件

記憶域スペースには、次に示す要件があります。

· Windows Server 2012以降 または Windows 8 以降のオペレーティングシステム

· USB、ATA (Serial ATA) または SAS (Serial Attached SCSI) 接続のディスク。オプションで JBOD エンクロージャー(共有SASアレイ)を経由して接続されたディスクもサポートします。RAID アダプターを用いる場合、すべての RAID 機能を無効化し、接続されている JBOD が提供するエンクロージャー サービスを含め、接続されているデバイスが隠れないようにする必要があります。

USBドライブの利用

記憶域スペースと共に USB ドライブを使用できますが、高いレベルのパフォーマンスを確保するためにUSB 3.0 ドライブの利用を推奨します。USB 2.0 ドライブでは高いレベルのパフォーマンスを得られないことがあります。単一の USB 2.0 ハード ドライブによって、共有 USB バスで使用可能な帯域幅が飽和状態になり、同じ USB 2.0 コントローラーに複数のドライブが接続されていると、パフォーマンスが制限される可能性があります。USB 2.0 ドライブを使用する場合は、USB ハブを使用せず、コンピューター上の別々の USB コントローラーに直接これらを接続してください。また、USB 2.0 ドライブは、高いレベルのパフォーマンスを必要としない記憶域スペース用にのみ使用されている、独立した記憶域プールに追加してください。

· ホストバスアダプター(HBA)を使用する場合HBAを使用する場合、RAID機能をサポートしないシンプルなHBAの使用を推奨します。RAID機能を搭載しているHBAカードを使用する場合は、全てのRAID機能を無効にする必要があるため、記憶域スペースでは全てのRAID機能を無効にすることができるHBAのみ利用できます。HBAによって、物理ディスクが抽象化されたり、データがキャッシュされたり、または接続されている全てのデバイスがWindowsオペレーティングシステムから認識できなくなることがないようにする必要があります。

· JBOD エンクロージャーを使用する場合JBOD(Just-a-bunch-of-disks)の使用はオプションです。JBODエンクロージャーを使用する場合、記憶域スペースの全ての機能を使用するためには、記憶域スペースをサポートするJBODエンクロージャーであるか記憶域ベンダーに確認してください。JBODエンクロージャーが、エンクロージャーとスロット識別をサポートしているか確認するには、次のPowerShellコマンドレットを実行してください。

Get-PhysicalDisk | ?{$_.BusType –eq “SAS”} | fc

表示されたディスクのうち、エンクロージャー経由で接続されている物理ディスクの属性の[エンクロージャー番号(EnclosureNumber)]と[スロット番号(SlotNumber)]フィールドに値が表示されていれば、エンクロージャーがこれらの機能をサポートしていることを示しています。

加えて、記憶域スペースがスロット単位でディスクを認識し当該スロットのLEDを制御するには、エンクロージャーが SCSI Enclosure Services (SES) Version 3 をサポートしている必要があります。

· フェールオーバー クラスター上のクラスターの共有記憶域として利用する場合:

· Windows Server 2012 R2 または Windows Server 2012 を実行している複数のサーバー

· フェールオーバー クラスタリング および クラスターの共有ボリューム(CSV)に指定されている要件

· Windows 認定要件に準拠するSAS接続のJBOD(共有SASアレイ)認定されているJBODエンクロージャーを確認するには、Windows Server ハードウェアカタログを参照してください。http://www.windowsservercatalog.com/results.aspx?&chtext=&cstext=&csttext=&chbtext=&bCatID=1642&cpID=0&avc=10&ava=0&avq=0&OR=1&PGS=25&ready=0

記憶域スペースで共有SASアレイを用いる利点

SAS(Serial-Attached SCSI)は、ストレージディスクをサーバーに接続するインターフェイスであり、ディスクドライブの種類でもあります。共有SASアレイは、1台の記憶域アレイを複数のサーバーに接続し、SASアレイ(及びその中に接続されているSASディスク)に複数のサーバーから同時にアクセスを可能とする方法です。iSCSIやFC(Fiber Channel)から構成されるSANと比較して、共有SASアレイやSASディスクは安価に共有記憶域を実現することができます。

一方で、SASケーブルの最大ケーブル長は10mの制約があるため、サーバーとエンクロージャーが10m以内の場所に設定できる環境でしか利用できないという制約もあります。

基盤技術

記憶域スペースは次の基盤技術に依存しています。

· Windows オペレーティング システムの記憶域スタック:記憶域スペースを使用するには、記憶域が適切に存在し、その記憶域ポート ドライバーによって検出される必要があります。記憶域ポート ドライバーには、ネイティブのインボックス ドライバー (組み込みドライバー) と、サード パーティ ベンダーが提供するドライバーの両方が含まれます (USB ドライブおよび SATA ドライブは、サード パーティ製のドライバーに依存しません)。

· [ファイルサービスおよび記憶域サービス]: Windows Server 2012 および Windows Server 2012 R2 では[ファイルサービスおよび記憶域サービス]が既定でインストールされています。

· 記憶域 PowerShell コマンドレット:Windows Management Interfaceクラスに基づいて構築されたPowerShellコマンドのセットです。管理者はこれらのコマンドレットによって、記憶域スペースを制御できます。

· Storage Management API(SMAPI):外部の記憶域サブシステムで DAS (Direct Attached Storage) を管理するための記憶域管理の基本要素を提供する API (アプリケーション プログラミング インターフェイス) です。この API は、WMI オブジェクト モデルのほかに、WMI および PowerShell による管理で利用できる対応するメソッドとプロパティのセットで構成されています。記憶域ベンダーは、このモデルに次のいずれかの方法で接続できます。

· SMI-S (Storage Management Initiative Specification) と呼ばれる記憶域管理に関するSNIA (Storage Networking Industry Association) の業界標準の実装

· 記憶域管理プロバイダー (SMP) と呼ばれる新しいプロバイダー モデルの実装

SMAPI は、自社のソリューションにおける追加機能を強調したい記憶域ベンダーに対して、SMI-S プロバイダーと SMP プロバイダーの両方で機能する "パススルー" メカニズムを提供します。

· 記憶域管理プロバイダー(SMP):業界標準のプロバイダーの使用によって記憶域管理を可能にする組み込み機能です。

次の図は、記憶域管理アーキテクチャーの概要を示しています。

図: 記憶域管理アーキテクチャーの概要

記憶域スペースの制約

記憶域スペースには以下の制約があります。

· 記憶域スペースをブートドライブ、システムドライブに用いることはできません。

· クラスター構成の記憶域スペースを作成したのちにCSVボリュームに追加する場合、Windows Server 2012 ではReFSでフォーマットされた記憶域スペースをCSVボリュームに追加することはできません。Windows Server 2012 R2 では、ReFSでフォーマットされた記憶域スペースをCSVボリュームに追加することが可能です。

· Fiber Channel(FC)、iSCSIを記憶域スペースに追加することはサポートされていません。これらのストレージを利用する場合は、記憶域スペースではなく各ベンダーの提供する高度なソリューションを使用することが推奨されます。

· 記憶域プールに接続する物理ディスクは最低4GB以上のサイズが必要です。

· 記憶域プールに物理ディスクを追加する際、それ以前にディスク内に保存されていたファイルは失われます。

· 未フォーマットかつパーティショニングされていないドライブだけが記憶域プールに追加できます。

· 記憶域プールに属する全てのドライブは同一のセクターサイズである必要があります。

· 記憶域プールあたりの物理ディスクは最大160台までが推奨ですが、160台までの物理ディスクからなる記憶域プールを複数構成することも可能です。

· 1つの記憶域プールの最大容量は480TBです。

· 1つの記憶域プールに作成できる記憶域スペースは128です。

· クラスター構成の場合、1クラスター内の記憶域プールの最大数は4です。

· クラスター構成の場合、仮想プロビジョニングの記憶域スペースは利用できません。

· クラスター構成では、記憶域プールに接続される物理ディスクはSASインターフェイス接続である必要があります。

回復性の種類による要件

回復性の種類に応じて、利用できるOSや最低限必要となる物理ディスクの数などが異なります。以下の表に、回復性の種類毎の要件を示します。

表: 回復性の種類毎の要件

 

回復性の種類

シンプル

ミラー

パリティ

双方向

3方向

シングル

デュアル

対応OS

Windows Server 2012

Windows Server 2012 R2

最低ディスク台数

1

2

5

3

7

仮想ディスクに保持する

同一データのコピーの数

1

2

3

1

1

ディスク障害許容台数

0

1

2

1

2

プロビジョニング

方式

固定

仮想

×

凡例: 「○」=利用可能、「×」=利用不可能、「-」=非対応 

· 対応OS:OSのバージョン毎に利用できる回復性の種類を示します。

· 最低ディスク台数:仮想ディスクを作成するにあたり最低限必要となる物理ディスクの台数を示します。

· 仮想ディスクに保持する同一データのコピーの数:仮想ディスクに保存されたデータが複製される数を示します。

· ディスク障害許容台数:物理ディスクに障害が発生しても、仮想ディスクにアクセスが可能でデータが失われない台数を示します。

· プロビジョニング方式:利用可能なプロビジョニング方式を示します。

Windows Server 2012 R2 における新機能と変更点

次の表に、Windows Server 2012 R2 における記憶域スペースの主な変更点を示します。

表: 回復性の種類毎の要件

特徴/機能

新規または変更

概要

記憶域階層

新規

頻繁にアクセスされるデータを高速な(SSD)ストレージに自動的に移動します。

ライトバック キャッシュ

新規

少量のランダム書き込みをSSDにバッファし、書き込み遅延を抑制します。

クラスターの共有ボリューム(CSV)におけるReFSのサポート

新規

クラスターの共有ボリュームに、ReFSファイルシステムでフォーマットした記憶域スペースを追加できるようになります。

クラスターの共有ボリューム(CSV)におけるデータ重複除去のサポート

新規

クラスターの共有ボリュームで、データ重複除去を利用できるようになります。

パリティスペースのフェールオーバークラスターサポート

新規

フェールオーバークラスター上にパリティスペースを作成できるようになります

デュアルパリティ

新規

1つのストライプ情報に対して2つのパリティ情報を保持することで、2つの物理ディスクの同時障害からデータを保護します。

記憶域スペースの再構築の高速化

変更

ホットスペアとして指定された物理ディスクの代わりに、記憶域プール内の空き領域を利用することで、ディスク障害から記憶域スペースの再構築に要する時間を短縮します。

Non-Volatile Memory Express(NVMe)のサポート「予定」

新規

より高速なPCI Express接続のSSDをサポートするNVMeドライバーに対応します。低遅延かつ高帯域な接続に最適化されたNVMeドライバーによって、PCI Express接続のSSDドライブを接続した記憶域スペースのパフォーマンスが飛躍的に向上します。

Windows Server 2012 と R2 の記憶域スペースの主な相異点

Windows Server 2012 R2 で追加された新機能や機能強化に伴い、Windows Server 2012 と Windows Server 2012 R2 の記憶域スペースには主に以下のような相違があります。

表: Windows Server 2012 と Windows Server 2012 R2の記憶域スペースの主な相異点

 

Windows Server 2012

Windows Server 2012 R2

仮想プロビジョニング

回復性の種類

シンプル

ミラー

双方向

3方向

パリティ

シングル

デュアル

New!

高速な再構築

New!

記憶域階層

New!

ライトバックキャッシュ

New!

CSVへの追加

回復性の種類

シンプル

ミラー

双方向

3方向

パリティ

シングル

×

デュアル

New!

ファイル

システム

NTFS

ReFS

×

凡例: 「○」=利用可能、「×」=利用不可能、「-」=非対応、「New!」= 新機能

記憶域スペースのアーキテクチャーの理解

記憶域スペースを設計、展開するにあたっては、管理者は記憶域スペースを支えるアーキテクチャーを理解しておくことが求められます。以下では、記憶域スペースで重要となるアーキテクチャーを解説します。

記憶域プール

記憶域プールは物理ディスクの集合体である仮想化された管理単位です。複数の物理ディスクからすべての使用可能な物理ディスクを使用して1つの記憶域プールを作成することも、物理ディスクを必要に応じて分割して複数のプールを作成することもできます。必要に応じていつでも物理ディスクを追加、削除でき、物理ディスクのサイズが異なっていても構わないといった柔軟性が、従来のRAIDシステムと大きく異なる特徴です。

図: 複数の記憶域プールの作成

記憶域プールでは、各物理ディスクの領域を256MBずつのスラブに分割し、各物理ディスクのスラブをプロビジョニング スラブに整理します。記憶域プールは物理ディスクのスラブを、仮想的なプロビジョニングスラブに抽象化することで、各物理ディスクの領域を1つの集合として管理します。

図:プロビジョニングスラブ

記憶域スペース

記憶域プール上に作成される、仮想ディスクです。記憶域スペースを仮想ディスクと呼ぶ場合もあります。1つの記憶域プール上に、複数の記憶域スペースを作成することもできます。

たとえば、HDDから構成される記憶域プールとSSDから構成される記憶域プールをわけて作成することで、高速なディスクI/Oを必要とするファイルを保存する記憶域スペースをSSDから構成される記憶域プール上に作成する記憶域スペースにファイルを保存する、ディスクI/Oよりもストレージサイズを優先する場合にはHDDから構成される記憶域プール上に作成する記憶域スペースにファイルを保存するといった構成も可能です。Windows Server 2012 R2 からは、記憶域階層を作成することで、SSDとHDDの両方の特徴を備えた記憶域プールを作成することも可能になったことから、高いディスクI/O性能とストレージサイズの両方を備えた仮想ディスクを作成することもできます。

図: 記憶域スペースの作成

また、記憶域スペースを作成する際に、プールの中のどのディスクを使用するか指定することも可能です(この場合、ディスクを追加する場合にも明示的に指定が必要となります)。このような柔軟な設計が可能であることは、記憶域スペースの大きな特徴です。

プロビジョニング

記憶域スペースでは、管理者はホストするデータの特性に応じて、次の 2 種類のスキーマを使用して記憶域をプロビジョニングできます。

仮想プロビジョニング(シンプロビジョニング)

記憶域スペースは、記憶域プールの使用可能サイズ(記憶域プールに属する物理ディスクの未使用領域の合計)を上回るサイズで作成することが可能です。将来データの増大が見込まれるが現在は予算の都合等から用意できるディスク数に限りがあるといった場合などでも、予め大きなサイズの記憶域スペースを作成しておくといったように、物理ディスク領域に左右されず自由なストレージ設計ができます。将来物理ディスクの空き容量が少なくなった場合には、物理ディスクを記憶域スペースに増設することで、記憶域の拡張が可能となります。また記憶域スペースのサイズは、必要な際にいつでも拡張することができます(縮小することはできませんが、仮想プロビジョニングの場合、使用していない記憶域スペースの領域は物理ディスクの領域を消費しませんので、縮小する必要もありません)。

仮想プロビジョニングでは記憶域プール内のスラブは、データセットが増加してその記憶域を実際に必要とする時点まで記憶域スペースには割り当てられません。記憶域容量の大きなプールが割り当てられても使用されない可能性のある従来の固定記憶域割り当て方法とは対照的に、仮想プロビジョニングでは使用可能な記憶域の利用状況が最適化されます。また、未使用ドライブの稼働を維持するための電力や設置場所にかかる運用コストも節約できます。記憶域スペースの使用量が記憶域プールの容量を上回る場合、必要に応じて記憶域プールに物理ディスクを追加します。

図: 仮想プロビジョニング

固定プロビジョニング

固定プロビジョニングはサイズを固定して仮想ディスクを作成しますので、容量をあとから変更することはできません。固定プロビジョニングでは、仮想プロビジョニングと異なり、記憶域スペースの作成時にスラブが記憶域スペースに事前に割り当てられます。従って、固定プロビジョニングで仮想ディスクを作成する場合には、記憶域プールの使用可能サイズ(記憶域プールに属する物理ディスクの未使用領域の合計)を上回るサイズの仮想ディスクは作成できません。

図: 固定プロビジョニング

記憶域スペースでは、仮想プロビジョニング スペースと固定プロビジョニング スペースの両方を同じプール内に作成することができます。同じ記憶域プール内に両方のプロビジョニングの種類を作成すると、特にそれらが同じワークロードに関連する場合にとても便利です。たとえば管理者は、仮想プロビジョニング スペースでデータベースをホストし、固定プロビジョニング スペースでそのログをホストするといったことが可能になります。データベースのデータは将来的に増えていく可能性が高くまたパフォーマンスも求められる一方で、ログファイルは保存容量の上限が決まっている場合が多く、性能もそれほど求められないためです。

デュアルパリティにおけるプロビジョニングの留意点

デュアルパリティでは、仮想プロビジョニングはサポートされていません。デュアルパリティを使用する場合は、固定プロビジョニングでのみ利用できます。

サーバーマネージャーの記憶域プールで表示される[割り当て済みの割合]はスラブの割り当て状況を示しています。

管理者は、記憶域プールの[割り当て済みの割合]と、ボリューム(仮想ディスク)の空き領域をみながら、物理ディスクの追加を検討します。

記憶域スペースは、物理ディスクの使用量が一定の閾値に達した場合、管理者に対してアラートを表示します。管理者はアラートが表示された場合には、物理ディスクの追加を検討する必要があります。

回復性の種類

回復性は、記憶域スペースの大きな特徴です。回復性には「ミラー」「パリティ」「シンプル」の3種類があります。「ミラー」には、データを複製する数に応じて、「双方向ミラー」と「3方向ミラー」の2つの種類があります。「パリティ」には、パリティストライプの数に応じて、「シングルパリティ」と「デュアルパリティ」の2つの種類があります。それぞれの特徴を以下に示します。

ミラー

双方向ミラー …双方向ミラーは、記憶域スペース内に保存したデータを2つに複製し、それぞれ異なる物理ディスクに保存することで信頼性を高めます。1つのデータを2つ保存しますので、1つの物理ディスクに障害が発生した場合にもデータは保護されますが、記憶域プール内の物理ディスクの使用効率は1/2となります。双方向ミラーの記憶域スペースを作成する場合、記憶域プールには最低2台の物理ディスクが必要となります。1つのデータをそれぞれ複数の物理ディスクに分割して書き込むことで、ディスクI/Oのパフォーマンスを高めることもできます。

図: 双方向ミラースペースのイメージ

3方向ミラー …3方向ミラーは、記憶域スペース内に保存したデータを3つに複製し、それぞれ異なる物理ディスクに保存することで信頼性を高めます。1つのデータを3つ保存しますので、2つの物理ディスクに障害が発生した場合にもデータは保護されますが、記憶域プール内の物理ディスクの使用効率は1/3となります。3方向ミラーの記憶域スペースを作成する場合、記憶域プールには最低5台の物理ディスクが必要となります。1つのデータをそれぞれ複数の物理ディスクに分割して書き込むことで、ディスクI/Oのパフォーマンスを高めることもできます。

図: 3方向ミラースペースのイメージ

ミラースペース(双方向ミラー、3方向ミラーでは)すべてのデータ コピーを常に最新に保つために、書き込みごとに複製が行われます。ミラー スペースの利点は、複数の物理ドライブにまたがってデータを書き込むストライプ化を通じてデータ スループットが向上し、アクセス待ち時間が短縮されることです。また、保存データが破損するリスクがない一方で、デメリットとして使用できる容量は小さくなります。ミラー スペースは、汎用的なファイル共有、VHDライブラリーなどの幅広い目的での利用に適しています。

パリティ

シングルパリティ …シングルパリティは、データを複数のストライプ単位に分割し、ストライプ情報とストライプ単位から演算したパリティ情報をそれぞれ別の物理ディスクに書き込むことで信頼性を高めます。1つの物理ディスクに障害が発生した場合にも、パリティ情報と残りのストライプ情報から失われたストライプ情報を復元することでデータを保護します。1つのデータを分割して複数の物理ディスクに書き込むことから読み込み性能の向上も期待できますが、書き込み性能に関しては新しいデータを書き込む前に、既に存在しているストライプユニットとパリティ情報を読み込み演算してから新たに書き込みをするため、シンプルやミラーと比較して遅くなる点に注意する必要があります。シングルパリティの記憶域スペースを作成する場合、記憶域プールには最低3台の物理ディスクが必要となります。

図: シングルパリティスペースのイメージ

デュアルパリティ(Windows Server 2012 R2 からの新機能) …デュアルパリティはシングルパリティ同様、データを複数のストライプ単位に分割し、「ストライプ情報」とストライプ単位から異なる演算方法で算出した2種類の「パリティ情報」をそれぞれ別の物理ディスクに書き込むことで信頼性を高めます。2種類のパリティ情報を保存することで、2つの物理ディスクに障害が発生した場合にも、パリティ情報と残りのストライプ情報から失われたストライプ情報を復元することでデータを保護します。パリティ情報の演算はパフォーマンスの向上を目的として、ストライプ情報を2つのグループに分けて演算するため、1ストライプ列あたり、グループ毎に演算したパリティ情報(2つ)と全体で演算したパリティ情報(1つ)の2種類、合計3つのパリティ情報が書き込まれます。1つのデータを分割して複数の物理ディスクに書き込むことから読み込み性能の向上も期待できますが、書き込み性能に関しては新しいデータを書き込む前に、既に存在しているストライプユニットとパリティ情報を読み込み演算してから新たに書き込みするため、シンプルやミラーと比較して遅くなる点に注意する必要があります。デュアルパリティの記憶域スペースを作成する場合、記憶域プールには最低7台の物理ディスクが必要となります。

図: デュアルパリティスペースのイメージ

パリティ スペース(シングルパリティ、デュアルパリティ)は、ジャーナルによって復元性を高めています。これには、停電などの予定外のシャットダウン イベントが発生した場合に保存データが破損するのを防ぐための上書きのステージングが含まれます。書き込み性能を向上させるには、ジャーナルディスクをSSDなどの高速なディスクに指定することが効果的です。パリティはシーケンシャル性の高いアーカイブやバックアップなどのワークロードに適しています。

シンプル

シンプル(回復性なし) …シンプルは、データを複数に分割し、それぞれ別の物理ディスクに書き込みストライプ化します。データのストライプ化では、論理的に連続したデータをすべてのディスクにまたがってセグメント化することで、これらの連続したセグメントへのアクセスを異なる複数の物理記憶域ドライブに対して実行できるようにします。そのため、ストライプ化によって、データの複数のセグメントへの同時アクセスが可能になり、データ スループットが向上します。一方でシンプルスペースではどれか1つの物理ディスクに障害が発生すると、すべてのデータにアクセスできなくなります。管理者は、消失してはならないユーザー データをシンプル スペースでホストしないでください。シンプル スペースは、一時データや簡単に再作成できるデータ、あるいはアプリケーションによって回復性が担保されているデータを低コストでホストするのに適した選択肢です。

図: シンプルスペースのイメージ

管理者はあらかじめ用意されたこれらの回復性のなかから1つを選んで記憶域スペースを作成することができますが、記憶域スペースを作成した後は回復性を変更することはできません。

回復性の種類毎のディスク使用効率

双方向ミラーの場合、同じデータを2つ書き込むことになるため、ストレージ容量の1/2しか利用できません。3方向ミラーの場合は同じデータを3つ書き込むことになるため、ストレージ容量の1/3しか利用できません。

シングルパリティは、1ストライプ行毎に1列をパリティ情報で使用しますので、使用効率は(列の数-1)/列の数となります。デュアルパリティの場合、1ストライプ行毎に3列をパリティ情報で使用するため、(列の数-3)/列の数が使用効率となります。

シンプルの場合、ストレージ容量の全てを利用することができます。

記憶域階層

Window Server 2012 R2 の記憶域スペースでは 記憶域プールにSSDとHDDの両方が存在している場合、2つの記憶域の階層(SSD階層は頻繁にアクセスされるデータ用、HDD階層はアクセスする頻度が少ないデータ用)から構成される仮想ディスクの作成が可能となります。

図: 記憶域階層のイメージ

記憶域スペースはデータのアクセス頻度に基づき、データを1MB単位のサブファイル(ブロック)レベルで2つの階層の間で移動させます。記憶域階層は頻繁に利用される”ホット”データを SSD に移動させることで、記憶域スペースのパフォーマンスを劇的に改善し、SSD と HDD の長所を兼ね備えた、すなわちすぐれたパフォーマンスと記憶域の容量を両立した仮想ディスクを作成することができます。

図: 記憶域階層におけるホットデータとコールドデータの移動

管理者は、特定のファイルを利用の頻度によらずSSD階層に保存するように指定することもできます。たとえば、VDI環境で用いるVHDXファイルはSSD階層に固定して保存しておくことで仮想マシンへのログオン時間を短縮するといった使い方ができます。記憶域階層を有効にするには、記憶域プール内にメディアの種類(MediaType)がSSDとして認識されている物理ディスクが、回復性の種類に応じて以下の台数以上必要となります。

· シンプルには1台以上のSSDが必要です。

· 双方向ミラーの場合、2台以上のSSDが必要です。

· 3方向ミラーの場合は、3台以上のSSDが必要です。

なお、記憶域階層では、パリティスペースはサポートされていません。また、記憶域階層を使用する場合には仮想プロビジョニングは利用できません。

ライトバックキャッシュ

Window Server 2012 R2 の記憶域スペースでは記憶域プールにSSDが存在している場合、SSDの一部の領域をランダム書き込みのバッファとして用いるライトバック キャッシュの作成をサポートします。一般的なエンタープライズワークロードの大半を占めるランダム書き込みは SSD にまず送られ、その後HDDに書き込まれます。SSDの高いランダム書き込み性能により、IOPSを飛躍的に高めることができます。記憶域階層とライトバックキャッシュは合わせて構成することも、どちらかのみを用いるよう構成することもできます。回復性のタイプに応じて必要な台数のSSDが記憶域プールに存在している必要があります。

· シンプルには1台以上のSSDが必要です。

· 双方向ミラーとシングルパリティの場合、2台以上のSSDが必要です。

· 3方向ミラーとデュアルパリティの場合は、3台以上のSSDが必要です。

仮想ディスクを新規に作成した場合、Media TypeがSSDとして認識されているかあるいはUsageがJournalとして設定されている物理ディスクが上記の必要台数以上存在している場合、デフォルトで1GBのライトバックキャッシュを利用するよう自動的に構成されます。SSDまたはJournalディスクが必要台数存在しない場合、(パリティスペースを除き)ライトバックキャッシュのサイズは0となります(パリティスペースは32MBのJournal用領域が作成されます)。ライトバックキャッシュのサイズを指定して仮想ディスクを作成するには、PowerShellのコマンドレットから仮想ディスクを作成します。ライトバックキャッシュのサイズは16GB(クラスター記憶域の場合は10GB)以下を推奨します。ライトバックキャッシュのサイズは、記憶域スペースを作成したあとは変更できません。

クォーラム

クォーラムは、高可用性クラスタリングテクノロジーにおいて標準的に利用される概念です。ネットワーク上で複数のサーバーを束ねて単に1つの仮想サーバーとして表示するのと同じように、記憶域スペースは複数の物理ディスクを束ねて1つの仮想ディスクとして表示することから、記憶域スペースもいわゆるクラスターの一種です。記憶域スペースに属する物理ディスク間の情報の一貫性を担保する目的で、クォーラムの概念が導入されています。記憶域スペースに属するディスクの過半数が正常な状態にない場合、記憶域スペースは自動的にオフラインとなることで、物理ディスク間におけるデータの不整合やデータ破損を予防します。

このため、記憶域スペースの回復性の種類(およびそれによって決定されるディスク障害の許容数=PhysicalDiskRedundancy)に応じて決定される、ディスク障害の許容数分のディスクに同時にディスク障害が発生した場合においても記憶域がオンラインであるためには、故障したディスクがプールの過半数を下回るために必要な最低限の物理ディスク数が必要となります。

回復性の種類

ディスク障害の許容数(PhysicalDiskRedundancy)

…(A)

クォーラムを充足するため必要な正常ディスク数

(B)

記憶域スペースを構成するために必要な最低ディスク数

【(A)+(B)+パリティストライプ数】

シンプル

0

1

0+1=1

双方向ミラー

1

1

1+1=2

3方向ミラー

2

3

2+3=5

シングルパリティ

1

1

1+1+1=3

デュアルパリティ

2

3

2+3+2※=7

※デュアルパリティではストライプを3つ利用するが、(B)にはパリティ1台分が包含済

表: 回復性の種類毎の最低ディスク台数とその計算方法

列の数(NumberOfColumns)

記憶域スペースでは、データを記憶域プールに属する複数の物理ディスクにストライプ化して書き込むことで、データ スループットを向上させることができます。列の数(NumberOfColumns)は、記憶域スペースに保存される1つのデータが記憶域プールに属する物理ディスクのうち実際に何台の物理ディスクに分散して書き込まれるかを決定する属性です。

たとえば、1MBのデータを1つのディスクに書き込む場合と、256KBずつの4つの塊にわけて4台のディスクに書き込む場合を比較します。1つのディスクに書き込むのは1車線の道路で4台の車両を順番に移動させるのに似ています。これに対して4台のディスクに書き込むのは4車線の道路でそれぞれの車両を同時に移動させるのに似ています。車線の数が多い方が車両の移動が早くなります。この車線数に相当するのが列の数になります。その他のボトルネック要素を考慮しなければ、一般的にはこの値が大きくなればなるほど比例して連続的なデータアクセスにおけるスループットも向上します。一方でランダムアクセスの場合はこの値の違いによる性能の向上はそれほど大きくありません。

図: ストライピングによるデータスループットの向上

列の数の具体的な値は、記憶域スペースを作成する際に自動的に設定されますが、管理者はPowerShellのコマンドレットを用いて任意の値を指定することもできます。

物理ディスク8台からなる記憶域プール上に、回復性の種類が双方向ミラーの記憶域スペースがあると仮定します。このとき、1つのファイルを保存すると記憶域スペースは以下のような振る舞いをします。

· 記憶域スペースに保存されるファイルは、回復性の種類に応じた保持するデータのコピーの数(NumberOfDataCopies)に従い、ファイルのコピーを作成します。双方向ミラーの場合、データのコピーの数は2ですので、2つのコピーを作成します。

· 記憶域プール内のディスクに書き込む際、ストライプを列の数に分割します。ここでは8台の物理ディスクにファイルのコピーを2つ保存することからファイル1つあたり4台の物理ディスクが利用可能です。この4台の物理ディスクに分割して保存できるよう、記憶域スペースを作成する際に列の数は自動的に4に指定されます。このためファイル1つあたり4つの物理ディスクに分割してファイルを書き込みます。

このように、1つのファイルを保存した際に、データは データのコピーの数(NumberOfDataCopies) × 列の数(NumberOfColumns)台の物理ディスクに書き込まれることとなります。

図: 双方向ミラーの場合の物理ディスクへの書き込みイメージ

サーバーマネージャー、またはコントロールパネルの記憶域アプレットから記憶域スペースを作成した場合、NumberOfColumnsの値は物理ディスクの台数に応じて最大の値が自動選択されますが、自動で設定される最大の値は8(デュアルパリティスペースを除く)です。管理者はPowerShellのコマンドレットを通じて記憶域スペースを作成する際に、NumberOfColumnsの値を指定することで、8以上の値を設定することができますが、回復性の種類がシンプルパリティの場合は、8以上の値を指定することはできません。また、NumberOfColumnsの値は記憶域スペースを作成したあとは変更できません。

物理ディスクを追加する場合の留意点

記憶域プールの物理ディスクの空き容量が少なくなってきた場合、物理ディスクを追加する必要が生じます。物理ディスクを追加する場合、列の数(NumberOfColumns) × データのコピーの数(NumberOfDataCopies)の台数分のディスクをセットとして増設しない限り、記憶域スペースの使用可能サイズは通常増えないことに注意が必要です。

物理ディスクのサイズが異なる場合の留意点

たとえば、200GBのHDD2台と100GBのHDD2台を合わせて合計4台の物理ディスクに、NumberOfColumns = 4 でシンプルタイプの記憶域スペース(NumberOfDataCopies=1)を作成した場合を考えます。

この場合、4つのディスクに分割してデータを書込んでいくと、先に容量の小さい100GBのHDDの空き容量が不足することとなります。この場合は、100GBのHDDをあと2台追加するとディスク全体を効率的に利用できます。

あるいは、記憶域スペースを作成する際に、NumberOfColumns を3と指定しておくことでも物理ディスク全体を効率的に利用することが可能です。このように、ディスク全体の効率的な利用を考える際にも、NumberOfColumnsやNumberOfDataCopiesの値は重要となります。

記憶域階層における列の数

記憶域階層では、1つのデータが書き込まれるストライプ列毎に高速階層と標準階層を必要とします。そのため、列の数(NumberOfColumns)と同じ数あるいは、その倍数にデータのコピーの数(NumberOfDataCopies)を掛け合わせた台数のSSDならびにHDDを最低限用意する必要があります。

双方向ミラースペース(NumberOfDataCopies = 2)の場合を例に取ると、列の数(NumberOfColumns)を3にしたい場合、最低 2×3=6台のSSDとHDDがそれぞれ必要となります。同様に、3方向ミラースペース(NumberOfDataCopies=3)の場合で、列の数(NumberOfColumns)を3にしたい場合は最低 3×3=9台のSSDとHDDがそれぞれ必要となります。

インターリーブ(Interleave)

インターリーブ(Interleave)はデータが1つの物理ディスクに分割して書き込まれる際の、1つのデータの固まり(ストライプユニットまたはチャンクと呼ぶ場合があります)のデータサイズ(ストライプサイズ)を指します。インターリーブの値も記憶域スペースの属性として指定されます。

デフォルトではインターリーブの値は256KBですが、管理者は記憶域スペースを作成する際にこのサイズを変更することもできます。たとえば、10MBのファイルを記憶域スペースに保存する場合、256KBずつのストライプユニット(チャンク)に分割されます。列の数が4の場合、256KBのストライプユニットが4つのディスクに分割されて書き込まれますので、1つのディスクは 10MB/256KB/4ディスク=10 個のストライプユニットが書き込まれます。

同時に書き込まれる(NumberOfColumns個分の)ストライプユニットの集まりをストライプ行といい、1つのデータが分割される物理ディスクの数をストライプ列といいます。列の数はこのストライプ列の値に等しくなります。1ストライプ行のストライプ幅はインターリーブ(Interleave)×列の数(NumberOfColumns)で計算することができます。

図: Interleaveとストライプ幅

Interleaveの値は、記憶域スペースを作成したあとは変更できません。

記憶域スペースの設計

記憶域スペースの展開から最大限の利益が得られるように、管理者は記憶域スペースの設計時に「記憶域スペースのアーキテクチャーの理解」に記載されている内容に加えて、以下の事項を考慮してください。

ホットスペア

記憶域プールには、プール内の物理ディスクに障害が発生した場合に備え、1つまたは複数の物理ディスクをホットスペアとして指定することができます。ホットスペアとして指定されたディスクは、物理ディスクに障害が発生しアクセスできなくなった場合、自動的に障害が発生したディスクの代替としてプールに追加されます。アクセス可能な物理ディスクに保存されていた冗長性データを用いて、障害が発生した物理ディスクの保存されていたデータを新たなディスク上に復元することで、プールの修復が行われます。

Windows Server 2012 R2では、ホットスペアの代わりに記憶域プール内の空きディスク、空き領域を利用することで、複数の物理ディスクの領域に並行してデータの復元を進めることで、ディスク障害時における記憶域プールの再構築に要する時間を短縮することができます。ホットスペアとして物理ディスクを待機させる必要がないため、よりディスクの使用効率を高めることができます。Windows Server 2012 R2でもホットスペア ディスクを用いることはできますが、ホットスペアを用いるよりも記憶域スペースのアクティブなディスクに十分な空き領域を確保しておくことで、再構築に要する時間を大幅に短縮することができることから、Windows Server 2012 R2ではホットスペアディスクを使用する必要はありません。

ディスクの割り当て

記憶域スペースは、プールに追加されたあらゆるドライブに、"割り当て"の種類を設定します。設定された割り当ての種類に応じて、記憶域スペースがディスクを消費する方法が指定されます。

自動(AutoSelect)…記憶域スペースは、記憶域スペースの作成とジャスト イン タイムで行われるスラブの追加割り当ての両方で、このドライブを自動的に使用します。

手動(ManualSelect)…管理者は、プールに追加されたドライブの使用法の種類として、手動を指定することもできます。手動ドライブは、記憶域スペースの作成時などに明示的に選択しない限り、記憶域スペースの一部として自動的に使用されることはありません。管理者は、特定の記憶域スペースだけが使用する特定のドライブの種類を指定できるようになります。

ホットスペア(HotSpare)…"ホットスペア" としてプールに追加したドライブは予約ドライブとなり、記憶域スペースの作成では使用されません。記憶域スペースの列をホストしているドライブでエラーが発生した場合、予約ドライブが呼び出され、エラーのあるドライブと置き換えられます。

ジャーナル(Journal)・・・“ジャーナル”としてプールに追加した物理ディスクはパリティスペースのジャーナル専用ディスクとして使用されます。Journalとして指定する物理ディスクはSSDなど高速なディスクに限定する必要があります。

使用中止(Retired)・・・それまで使用していた物理ディスクに新たなスラブの割り当てを行わない場合に、指定します。使用中止前に割り当てられたスラブは、仮想ディスクの修復を行うまで、対象の物理ディスクに割り当てられたままの状態となります。

ディスクセクターサイズ

記憶域プールのセクター サイズは、作成時に設定されます。使用されるドライブのリストに512または512eドライブしか含まれていない場合、プールは既定で 512e に設定されます。ただし、リストに4KBのドライブが1つ以上含まれている場合は、プールのセクター サイズが既定で4KBに設定されます。

オプションとして、管理者は、プール内に含まれるすべてのスペースが継承するセクター サイズを明示的に定義することもできます。管理者がこの値を定義すると、Windows は対応するセクター サイズを持つドライブの追加のみを許可します (つまり、512e の記憶域プールには 512 または 512e、4 KB のプールには 512、512e、または 4 KB)。

クラスターディスク要件

フェールオーバー クラスタリングは、マシン エラーの発生時にワークロードやデータの処理が中断されるのを防ぎます。記憶域プールでフェールオーバーをサポートするには、デュアルポートSAS (Serial attached SCSI) ディスクを用いる必要があります。

エンクロージャー全体の障害に対する保護

記憶域スペースではSAS接続のJBODエンクロージャーを用いることができます。複数接続されているJBODエンクロージャーのうち1台のエンクロージャー全体がアクセスできなくなるような障害が発生した際に、他のアクティブなエンクロージャー内のデータで記憶域へのアクセスができるよう、それぞれのデータのコピーを特定のエンクロージャーと関連づけるように構成することができます。これはエンクロージャー認識(EnclosureAwareness)と呼ばれます。エンクロージャー認識を有効にすることで、複数のエンクロージャーのうち1台またはそれ以上のエンクロージャー全体に障害が発生した場合でも、記憶域にアクセスできます。

双方向ミラーの場合を例に取ると、以下のように1つのサーバーに3台のエンクロージャーが接続されている場合、双方向ミラーが保存するデータの2つの複製は、エンクロージャー1とエンクロージャー2に接続された物理ディスクに書き込まれます。この状態でエンクロージャー2全体にアクセスできなくなったとしても、エンクロージャー1の中の物理ディスクにデータは全て書き込まれており、正常なエンクロージャーが全体の過半数を占めている(クォーラム)いるため、元のデータにアクセスすることができます。

図: エンクロージャー認識

エンクロージャー認識を有効にするには、以下の要件を満たす必要があります。

· JBODエンクロージャーがSCSI Enclosure Services(SES)をサポートしていること。

· 記憶域スペースの回復性の種類がミラーまたはデュアルパリティとなっていること。

· 双方向ミラーで、1台のエンクロージャー全体の障害を許容するには、3台以上のエンクロージャーが必要となります。

· 3方向ミラーで、2台のエンクロージャー全体の障害を許容するには、5台以上のエンクロージャーが必要となります。

· デュアルパリティで、1台のエンクロージャー全体の障害を許容するには、4台以上のエンクロージャーが必要となります。

エンクロージャーを使用する際のホットスペアディスク

ホットスペアを利用する場合、ホットスペアディスクはエンクロージャー毎に用意する必要があります。各エンクロージャー内の物理ディスクに障害が発生した場合、同一エンクロージャー内にホットスペアディスクが存在する場合は、自動的にホットスペアディスクを使用して記憶域の修復が行われます。エンクロージャーに接続されていない物理ディスクに障害が発生した場合、接続されている場所を問わず利用可能なホットスペアディスクがオンラインとなります。

記憶域スペースの管理方法

記憶域スペースの管理方法には以下の3種類があります。

· サーバーマネージャー…サーバーOSでのみ利用することができます。管理者は使い慣れたサーバー マネージャー インターフェイスを通じて、ローカルサーバーの管理だけでなく組織内の複数のメンバー サーバー/フェールオーバー クラスター上の記憶域スペースを管理するための "単一ウィンドウ" としても使用できます。

· コントロール パネルの記憶域アプレット…クライアントOSと一部のサーバーOS(Essentialsエディション)のみで利用することができます。コントロールパネルの記憶域アプレットは、高度な知識をもたない利用者も簡易なユーザーインターフェイスを通じて容易に記憶域スペースの構築、管理を行うことができます。(このドキュメントではコントロールパネルの記憶域アプレットを通じた管理方法は説明しません)

· PowerShell コマンドレット…サーバーOSおよびクライアントOSの両方で利用することができます。PowerShellコマンドレットを利用すると、サーバーマネージャーやコントロールパネルの記憶域アプレットでは設定できない記憶域スペースの属性値を詳細に指定することができ、管理者は記憶域スペースのもつ本来の能力を最大限に発揮させることができます。

複数のサーバーの管理

サーバーマネージャーの[ファイルサービスおよび記憶域サービス]インターフェイスでは、ローカルおよび組織内のその他のサーバーの記憶域スペースを操作、管理することができます。

PowerShellも同様に、ローカルまたはリモートサーバーの管理が行えます。PowerShellでリモートサーバーを管理するには、サーバーマネージャーで目的のサーバーを選択し、右クリックしてWindows PowerShellを実行してください。

ローカルサーバーのPowerShell ウィンドウから、リモートサーバー上でコマンドを実行することができます。

スタンドアローンサーバーへの記憶域スペースの展開

1台のサーバーと直接された複数のストレージ(内蔵ストレージまたは外付ストレージ)から記憶域スペースを構成します。このような構成の場合、記憶域スペースによってディスク障害への耐障害性を高めることはできますが、サーバーが1台であることからサーバーメンテナンスなどによってサーバーがシャットダウンされる場合やサーバー自体に障害が発生した場合、記憶域にはアクセスできなくなります。これらのダウンタイムを許容できない場合は、クラスター構成の記憶域スペースを検討する必要があります。

スタンドアローンサーバーへの記憶域スペースの展開手順

スタンドアローンのWindows Server 2012 サーバーに、記憶域スペースを作成する手順を解説します。記憶域スペースを作成するには、まず最低1つの記憶域プールを作成する必要があります。

1つの記憶域プールから、1つ以上の仮想ディスクを作成することができます。これらの仮想ディスクは記憶域スペースとも呼ばれます。記憶域スペースは