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- 1 - 研究成果報告書 1. 研究目的 平成 13 6 の土地改良の改正に伴い、土地改良事業は観や自然環境に調和 し、地元住民の意向踏まえた事業計画の策定が重要な視点となとともに、地域住 民と連携した施設管理が求め、整備対象とな地域住民と連携して計画の策定、 施設後の維持管理行うことが必要となってきた。 こまでも、事業計画の策定においては、住民合意において、計画案の見せ方、理 解促進の工が重ねてきたが、今後は、こまで以上に、農業農整備事業、土 地改良事業等において整備さ施設の周辺観との調和具体的に理解しやすく すため、事業後の観予す技術が利用さこととな。 しかし、この技術は国内の全域においてや技術仕様に各様の個性的な 違いがあため、今後数くの整備計画に統一的で副次的に利用可能な新技術が求め 。また、その技術開発には今の及に通信整備の良 さ利用し、型GIS技術などの導入も視野に入、事業担当者どうしが積極 的に共の利用や作成面での行え環境の提案も必要 とな。に、事業説明受けた住民が上でいつでも説明に受けた 資料閲覧確認でき住民との交促進図検討す必要があ。 こうした背元に、独立行政人農工学研究所が行ってきたこまでの観整 備おび住民参加地域づくにかか研究成果と技術用し、全国の土地 改良の事業現場と地域住民が観づくの視覚化し、共でき統合的 で操作の容な研究開発し、及策検討すことが研究開発事業の 目的であ。 2. 研究内容 研究開発では、次の内容実施す。 1) 観画像作成簡単な操作で実現させ技術の研究開発 2) 共画像技術の研究開発 3) GIS 技術導入に観画像と電子地図との連携技術の研究開発 4) 観づくに関す地域住民への情報公開支援の研究開発 5) 視聴表現技術に関係者間の合意形成支援技術の研究開発 おび、上記内容実現したで、実証試として次行う。 6) 画像新のための検討組織専用開発運用試 7) 管理者用支援と検索機能の開発運用試 8) Web 公開支援機能の開発 研究課題名 WebGIS 対応型農観技術の開発 研究開発組合代表者名 株式会社 代表取締役 進藤圭二

WebGIS...WebGIS対応型農曪晙観クプポヤヴシヴ(以下、曓クケゾヘという)は、次の4つ の機能により構成され、晙観画像の作成ン共暼ン閲覧を実現し、地域住民と事業者の

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- 1 -

研究成果報告書

1. 研究目的

平成 13 年 6 月の土地改良法の改正に伴い、土地改良事業は景観や自然環境に調和

し、地元住民の意向を踏まえた事業計画の策定が重要な視点となるとともに、地域住

民と連携した施設管理が求められ、整備対象となる地域住民と連携して計画の策定、

施設後の維持管理を行うことが必要となってきた。

これまでも、事業計画の策定においては、住民合意において、計画案の見せ方、理

解促進の工夫が重ねられてきたが、今後は、これまで以上に、農業農村整備事業、土

地改良事業等において整備される施設の周辺景観との調和を具体的に理解しやすく

するため、事業後の景観予測をシミュレーションする技術が利用されることとなる。

しかし、これらの技術は国内の全域においてシステムや技術仕様に各様の個性的な

違いがあるため、今後数多くの整備計画に統一的で副次的に利用可能な新技術が求め

られる。また、それらの技術開発には昨今のインターネット普及による通信整備の良

さを利用し、Web型GIS技術などの導入も視野に入れ、事業担当者どうしが積極

的に共有データの利用や作成面でのコミュニケーションを行える環境の提案も必要

となる。更に、事業説明を受けた住民がインターネット上でいつでも説明時に受けた

資料を閲覧確認できる住民との交流促進を図るシステムを検討する必要がある。

こうした背景を元に、独立行政法人農村工学研究所が行ってきたこれまでの景観整

備および住民参加地域づくりにかかる研究成果と技術ノウハウを活用し、全国の土地

改良の事業現場と地域住民が景観づくりのアイディアを視覚化し、共有できる統合的

で操作の容易なシステムを研究・開発し、普及策を検討することが本研究開発事業の

目的である。

2. 研究内容

本研究開発では、次の内容を実施する。

1) 景観画像作成を簡単な操作で実現させる技術の研究開発

2) ネットワーク共有画像データベース技術の研究開発

3) GIS技術導入による景観画像と電子地図との連携技術の研究開発

4) 景観づくりに関する地域住民への情報公開支援の研究開発

5) 視聴表現技術による関係者間の合意形成支援技術の研究開発

および、上記内容を実現したシステムで、実証試験として次を行う。

6) 画像データ更新のための検討組織専用ツール開発運用試験

7) サーバ管理者用支援ツールとイメージ検索機能の開発運用試験

8) Web公開支援機能の開発

研究課題名 WebGIS対応型農村景観シミュレーター技術の開発

研究開発組合代表者名 株式会社 イマジックデザイン 代表取締役 進藤圭二

- 2 -

3. 目標とする成果

WebGIS 対応型農村景観シミュレーター(以下、本システムという)は、次の4つ

の機能により構成され、景観画像の作成・共有・閲覧を実現し、地域住民と事業者の

合意形成・相互理解を支援するものとなるよう研究・開発を進める。

A) 画像編集機能 対応する研究内容 1

B) 画像データベース 対応する研究内容 2,3

C) 地図連動・画像共有機能 対応する研究内容 2,3,4,5,8

D) 管理・監視機能 対応する研究内容 6,7

これらの機能群は、次を目標とする。

1) 景観画像作成を簡単な操作で実現させる

画像の抽出・合成という高度な画像処理については、これまでにも各種のアプリ

ケーションが市販されているが、多機能搭載であるため操作が煩雑である上、描

画に機能が集中しているため、使いにくい。そこで、①農村景観専用の新しいア

プローチを考案、②容易な操作で初心者でも習得が速い画像処理機能、③操作を

進めるなかで自然と景観学習が出来る手法、以上3点を実現するインターフェー

スを併せ持つアプリケーションを開発する。

2) ネットワークデータベースで画像を共有する

新規景観画像の合成を支える部品画像群をデータベースから検索、デジタルカメ

ラで撮影した景観画像を追加して共有することや、合成した景観画像を事業所内

で共有することのできるデータベース機能を開発する。

3) GIS 技術導入により景観画像と電子地図を連携させる

特定の市販 GISエンジンを利用せず、農村景観データベースに特化し、安価で配

布できるものを研究・開発する。

4) 視聴表現技術による関係者間の合意形成を支援する

画像合成により作り出された新しい景観イメージを説明するための簡単な資料作

成を支援する機能を開発する。

5) 景観づくりに関する地域住民への情報公開を支援する

上記4)で作成された資料を限定公開されたWebサーバ上に転送し、コメント等

の書き込みができる機能を開発する。

上記は平成16年度までの研究開発の目標として実施された。

6) 画像データ更新のための検討組織専用ツール開発運用試験

画像データの共有・更新においては、適切性の審査、取捨選択等を行う学識経験

者を含めた景観画像データベース更新のための検討組織が必要となる。そこで本

研究において、システム運用実験を行うとともに、画像データ更新のための問題

点の整理をするデータベース管理の専用ツールを開発する。また、全国の事業所

(エンドユーザ)等にデータを試験的に公開し、共有システムの問題点と解決策

を提案する。

また、この検討組織が使用するデータベース管理の専用ツールを、実証試験を

- 3 -

通じて開発することにより、検討作業をネットワーク上で実施でき、複数の検討

者が個別・非同期に行った結果も共有するようなシステムとして構築する。検討

者は、一定の期間内に検討作業を行い、最終的に配布の対象となる画像が選別さ

れるようにツールで支援できるようにする。

7) サーバ管理者用支援ツールとイメージ検索機能の開発運用試験

日常的なサーバ管理者の業務としての画像と不正行為のセキュリティチェックに

ついては、支援ツールをかなり低労力かつ簡単にしておかないと、誰でもが扱う

ことはできない。管理者の頻繁な交代があった場合でも、すぐに操作修得ができ

るようにする必要がある。よって、技術普及の側面から、実証試験を通して、操

作が簡単なサーバ管理者用のツールを開発し、運用を支援する。またサーバ管理

者が使用するイメージ入力型の検索機能を開発し、検討組織の運営に寄与するも

のとする。

8) Web公開支援機能の開発

現段階のシステムでは、ウィザード方式のHTML文書作成機能を用意しているが、

使われるシステム、使いたくなるシステムとするべく、GIS景観画像データベ

ースと連動し、事業計画や生物資源、文化資源データ・写真、その他文書を混在

して、景観シミュレーション情報を公開するWebページ作成を支援する機能を

開発し、実務面をサポートする。

上記、6)~8)が平成17~18年度の研究開発として実施した。

- 4 -

4. 研究成果

本研究開発の成果について、機能群、機能開発に伴う研究項目別毎に説明する。

A) 画像編集機能 対応する研究内容 1

B) 画像データベース 対応する研究内容 2,3

C) 地図連動・画像共有機能 対応する研究内容 2,3,4,5,8

D) 管理・監視機能 対応する研究内容 6,7

A)画像編集機能

本システムは、画像合成の作成という高度な画像処理技法をいかに易しく、少ない

操作で実現するかが主眼に置かれる。そのため、一般に市販されている画像処理アプ

リケーション製品の優れている点、難しい点などを分析し、必要な機能と不必要な機

能を分類し、農業農村整備事業上必要でない機能についてはあえて搭載せず、ツール

ボタンやメニューの数を減らし、自然物を扱う農村景観シミュレーションに特化して

操作性の向上を追求している。また、画像処理において、概念理解が困難だが必要と

なる機能であるレイヤによる部品画像管理機構は、他のソフトよりも理解しやすいイ

ンターフェース設計の工夫をして採用している上、部品画像を自由に変形する機能は

高価な画像処理ソフトに比肩する機能を持っている。

更に、部品画像管理機構の親切設計の実現により、初心者が失敗を恐れてしまうこ

とが原因で起きる“創造性のスポイル”を防ぐことにつなげている。また、本システ

ムでは、美の里づくりガイドライン、農山漁村の美しさに関する検討会報告における

空間的な調和の推進において示唆されている景観の“地と図”の構造を、十分理解し

ながら、景観イメージを構成していくことになり、単に貼り絵を作るという観点から、

景観の構造を学習しながら、よりよい景観イメージを策定・検討できることも大きな

特徴である。

インターフェースの工夫としては、一般的にソフトウェアを学ぶ上で重要な点は、

ツールボタンなどの「アイコン」と実際に作用する「機能」の間にあると考えている。

本システムでは、アイコンには文字でも機能名を付け、さらにヘルプウィンドウとい

うスペースを取って、文章で機能を説明し、キーボードを併用するような複雑な操作

に対する説明が出るようにしており、マウスがボタン上に触れると「何をするボタン

なのか」すぐ解るようにしている。また、ツールボタン類は視線が集まりやすい画面

下部に置き、大きめのボタンにすることで視認性や覚えやすさを向上している。

- 5 -

図図図図 1 景観景観景観景観シミュレーターシミュレーターシミュレーターシミュレーター

機能面での特徴は、「クリップウィンドウ」と呼んでいる“部品画像の一時置き場”

である。画像データベースで合成する部品にしようと選んだ画像や切り抜いた画像が

サムネイル(縮小画像)で一覧表示される。これら部品になる画像を背景画像に向け

てドラッグアンドドロップするだけの簡単な操作で合成することが出来る。非常に簡

単で直感的な操作で実行できる。

図図図図 2 クリップウィンドウクリップウィンドウクリップウィンドウクリップウィンドウ

その他、草木の紋様などを別の箇所に塗る「コピーブラシ」やスタンプ感覚で繰り

返す「コピースタンプ」、明るさだけをコントロールする「影ブラシ」、合成したエ

ッジをなじませる「ぼかしブラシ」など画像合成の質を高めるツールがあり、当該業

務に適した単純な操作で画像合成が出来る設計を行った。

- 6 -

図図図図 3 ツールパレットツールパレットツールパレットツールパレット

○シミュレーション画像作成例

上記は、茶畑の中に道路を通し、コミュニティ施設をその脇に建てるというシミ

ュレーションを行ったものであるが、わずか10ステップ程の操作で作成すること

が可能である。

図図図図 4 シミュレーションシミュレーションシミュレーションシミュレーション例例例例

○普及の状況

本事業により、この研究開発の成果は「Landscape Imager」という名称で製品化され

た。全国の土地改良事業所や地方農政局、民間コンサルなどにも販売され、これまで

に60本ほどの実績となった。また、(独)農村工学研究所、(社)農業農村整備情

報総合センターによる景観シミュレーション実習に使われている。

B)画像データベース

景観画像毎に、空間工種、空間目的、空間視点、季節、日周、天候、および事業所

という属性を持つことが出来る構造とし、予め設定したキーワードリストから選択す

る方法で、データベースに登録する方式とした。

ユーザーが上記属性のキーワードを組み合わせて検索すると、該当する景観画像だ

けをサムネイル(縮小画像)で表示し、目的の画像をユーザーは視認してから選択的

に画像編集機能(A)に送ることで、閲覧・編集を行うことが出来る。

また、画像データベースは事業所(リンク項目は自由に形成できる)毎の地図連動

機能(C)と統合的に開発され、ユーザーは地図もしくはキーワードで「検索」する

ことについて格段に意識することなく、目的の画像を探し出すことが出来るようにな

っている。また、「検索・閲覧・編集」を明確に機能分割したことにより、意識的に

元画像 シミュレーション画像

- 7 -

操作の流れを誘導することで、データベースの作成についても、初心者が容易に利用

する機能が向上している。

図図図図 5 画像画像画像画像データベースデータベースデータベースデータベース

C)地図連動・画像共有機能

地図連動機能は、画像データベース(B)と連動して、登録した画像のサムネイル

を地図上にプロットして表示するだけでなく、画像データベースの検索結果一覧から

画像を選択したらその画像の地図上の位置を自動的にスクロールして場所を示す機能

である。また、地図となる画像を登録する機能も備え、事業所単位で地図の切り替え

が出来るようになっている。

画像共有化機能の開発は、農村工学研究所からの技術指導により、実用設計を検討

中である。画像の共有は、データ量が大きく、インターネット回線のトラフィック帯

域やサーバの処理能力などの面から、クライアント/サーバモデルでのオンデマンド

方式よりもキャッシュ(蓄積)して差分だけを転送する方式にし、細い回線や処理能

力の低いサーバでも運用できるよう対処している。新たに画像を公開するように追加

しても、各マシンがその画像を見られるようになるまで多少の時間のずれが生じるが、

非常に膨大な数の画像を扱うことやその頻度を考慮すると、この方式の方が向いてい

ると判断した。運用の初期段階では、ベースとなる部品画像を大量にキャッシュさせ

ることになり、それがトラフィックやサーバに負荷を掛けてしまう恐れがあるため、

それはアプリケーションと共に CD-ROM メディアで一緒にインストールしてしまう

ことで回避できると考えている。

また、景観シミュレーションの結果をレポートにしてWebで発表する目的のため

に、シミュレーション前後の画像と地図画像をテンプレート(ひな型)に適用して、

- 8 -

HTML文書を容易に作成出来るレポート作成支援機能を開発した。これにより従来

なら地図画像に撮影箇所をプロットした図を用意するにしても、地図ソフトウェアで

切り出して画像編集ソフトで解像度を変え、プロットしたいマークを書き込む、とい

った手間暇のかかる作業がわずか4ステップで準備できる。生成されるHTML文書

と画像データをWebサーバにアップロードすることで、4)視聴表現技術による関

係者間の合意形成の支援や、5)景観づくりに関する地域住民への情報公開を支援の項

目を実現することができた。

図図図図 6 景観景観景観景観シミュレーションレポートシミュレーションレポートシミュレーションレポートシミュレーションレポート作成支援機能作成支援機能作成支援機能作成支援機能

- 9 -

D)管理・監視機能

①画像データ更新のための検討組織専用ツール開発運用試験(研究内容6)

景観画像データベース更新のための検討組織の考え方について4点に整理し、一つ

一つ検証を行った。

Ⅰ)画像データベースの更新に当たっては、学識経験者を含む更新のための組織を委

員会形式で設ける必要性がある。更新データ量に応じて委員数は決定するが、一人が

3ヶ月で100枚程度を標準枚数とすることが可能である。

更新委員の選定基準は、当面は次の条件を満たすものとする。①景観についてある

程度の知識を持っている者であること、②末端ユーザーが1人以上更新委員として位

置づけられていること、③データベース管理者が1名更新委員として位置づけられて

いることの3点である。画像を更新して多くのユーザーに有効なデータとなるかどう

かを判定するためには、シミュレーションに利用可能な景観の構図となっているかど

うかを選定しなければならない。そこで、ある程度景観に精通していることが必要で

ある。構図については、以下の画像を選定条件とする。

●基本条件

①俯瞰、仰観は行わないこと。つまり、カメラは地面に対して水平に持つこと。

②Horizontal-Lineは画像縦中心線におくこと

●撮影対象物別条件

① 構造物が撮影対象物であり1つないし2つの場合は、縦中央1/3、横中央1/

2に入るようにし、正面からと側面から、及び見えがかりの良い方向から 45°程

度の角度で撮影。構造物が多数ある場合、または連続している場合は、構造物が

縦中央1/3以下に入ることを基準とし、可能な限り近景を撮影すること。

② 街並みを撮影する場合は道路左右端から進行方向に向かって 45°の角度で撮影

し、横中央線上の対象物断片が縦中央1/3以内に入り、道路の先端が縦中央の

下から縦1/3程度におさまり左右端に撮影すること。

③ 道路が撮影対象物である場合は、道路中央から進行方向に向かってと左右端どち

らかから進行方向に向かって撮影する。交差点撮影の場合は、交差点の道路幅が

横中央1/3となるように撮影。道路湾曲部は、湾曲部の道路幅が横中央1/3

となるように撮影すること。

④ 水路河川が撮影対象物である場合は、橋の上、または左右岸どちらか一方から水

路先端に向かって撮影。但し、撮影方向は上流から下流、下流から上流であり、

基本的には両方向撮影が望ましい。水路湾曲部は湾曲部の水路幅が横中央1/3

となるように撮影。水路が撮影対象物であるが水路沿いに広がる空間も撮影した

場合は、水路端より水路方向にむかって 45°の角度で対岸をねらう。

- 10 -

画像の判定としては、例えば建物の場合は、上写真のように、規定通り、縦中央1

/3、横中央1/2に対象部品があるかどうかを判定する。

末端ユーザーを常に1人以上更新委員として選定しておくことは、現場普及の観点

からも重要である。現場でどのような景観配慮の事例を求めているのかについて、最

も多くの情報を有しているのはユーザー自身であるから、少なくとも1人は必要とな

る。今後、普及が進み、更新データ数が増加してきた場合についても、ユーザーを委

員として選出することが望ましい。また、データベースのサーバ管理者は、データ公

開の最高責任者であり、最終的な判断を下すのは管理者であるから、画像データ選定

者にも入り、常にチェックしておく必要がある。

1人100枚の根拠は特にないが、後の3)の項で実施した試験によると、「判定」

と「データのチェック項目への入力」でほぼ4時間かかったことで、各委員半日の業

務として位置づけることができ、妥当な量と判断した。

Ⅱ)画像データベースは当面は3ヶ月毎の更新を想定するが、学識経験者を含む更新

検討委員会を一同に会して行うことは経済的・時間的に不可能であることから、We

b上で管理者と相互通信によってデータ評価が可能な仕組みを形成しなければならな

い。

本システムの開発は、もともとこの条件をクリアするためのものである。画像デー

タベースは、当初は景観シミュレーションの部品画像としての意味しか持たないが、

後々は、農業農村整備事業に係る様々な施設の画像データのライブラリーとなること

から、事業における景観配慮の傾向や工種の傾向等を知ることが可能となる。

そのためにも、データ更新に時間のかかるシステムであってはならない。円滑にデ

ータ更新が行われるようにするためには、学識経験者を含む更新検討委員が時間的な

制約に捕らわれないようにWeb上で更新画像の判定ができるシステムを設計しなけ

ればならない。

図図図図 7 撮影時撮影時撮影時撮影時のののの構図構図構図構図ののののガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン

- 11 -

画像データ更新検討組織用システム景観画像データベースシステム

各事務所 各事務所 各事務所

未評価画像の委員への割り振り

画像評価Webサーバ

画像の安全性工種分類の適正性汎用ライブラリ化

備考(新規分類の必要時)

評価投票評価投票

事業所:東北農政局××事務所工種:農地系、畑視点:中景季節:夏時間日周:昼天候:晴

自由項目:

評価検討委員

画像を評価各画像の評価

↓公開の許可

評価の集計

アップロードされた画像

公開・配布される画像

画像のアップロード

画像データ更新検討組織用システム景観画像データベースシステム

各事務所 各事務所 各事務所

未評価画像の委員への割り振り

画像評価Webサーバ

画像の安全性工種分類の適正性汎用ライブラリ化

備考(新規分類の必要時)

評価投票評価投票

事業所:東北農政局××事務所工種:農地系、畑視点:中景季節:夏時間日周:昼天候:晴

自由項目:

画像の安全性工種分類の適正性汎用ライブラリ化

備考(新規分類の必要時)

評価投票評価投票

事業所:東北農政局××事務所工種:農地系、畑視点:中景季節:夏時間日周:昼天候:晴

自由項目:

評価検討委員

画像を評価各画像の評価

↓公開の許可

評価の集計

アップロードされた画像

公開・配布される画像

画像のアップロード

図図図図 8 画像画像画像画像データデータデータデータ更新検討組織専用更新検討組織専用更新検討組織専用更新検討組織専用ツールツールツールツールのののの概要概要概要概要

図 9・図 10 は、事業現場から送られてきた更新データが検討委員会でチェックさ

れる過程を模式的に示したものである。いくつもの事業所から管理システム(ARI

C)へ送信された画像は(図 9)、画像データベース管理者の委員会支援システムへ

送られ(図 10)、データが整理された上で、各委員に送信される。委員会システムは、

管理システムの内部に位置づける場合もあるが、今回のシステム設計においては、一

般的な管理システムを想定して、管理システムの外部に支援システムを置くこととし

た。

1 2 3

4 5 6

7 8 9

32

8 9

56

A事業所

B事業所

BA

A B

1 2 3

4 5 6

7 8 9

送信

送信

管理システム 現DB

DB

DB

図図図図 9 事業所事業所事業所事業所からからからから管理管理管理管理システムシステムシステムシステムまでのまでのまでのまでの流流流流れれれれ

- 12 -

1 2 3

4 5 6

7 8 9

管理システム

32

56

8 9

安全 項目 統合

委員会支援-データ整理システム

安全 著作

現DB

管理者用支援ツール1

図図図図 10 管理管理管理管理システムシステムシステムシステムからからからから委員会支援委員会支援委員会支援委員会支援システムシステムシステムシステムまでのまでのまでのまでの流流流流れれれれ

Ⅲ)委員の評価内容は、画像データのカテゴリーチェック、現場データから全国共通

データへの格上げ判定、景観画像としての妥当性のチェック(景観部品として使える

かどうか、写真撮影基準に基づいた写真かどうか)、添付地図の著作権である。

また、更新画像一枚につき、委員評価は最低2人とし、評点の平均値を持って更新

判断基準とする。

データ更新を検討する者が、現在のカテゴリーの分類に沿ってどの程度共通的にカ

テゴリー分類できるのかを検証するため、疑似的な委員会を結成して試験運用をして

みた。

- 13 -

視点 季節 日周期 天候種別 種別

集落道・耕作道001.JPG D b 2 c 2 3 2 3 竹林 Db Db Db002.JPG D b 1 c 2 3 3 1 牧場 Db Db Db003.JPG D b 1 c 2 3 2 2 水路 Db Ea Db004.JPG D b 2 c 2 1 2 1 家 電柱 Db Db Db006.JPG D b 2 c 2 4 2 1 家 Db Db Db007.JPG D b 2 c 2 1 2 2 家 Db Db Db008.JPG D b 1 c 2 3 2 2 電柱 水田 山 Db Db Db011.JPG D b 1 c 2 2 2 2 水田 水路 Ea Db Db012.JPG D b 1 c 2 2 2 2 水田 Db Db Aa013.JPG D b 1 c 2 2 2 2 水田 電柱 Db Db Aa015.JPG D b 2 c 2 2 2 2 電柱 水田 住宅 ガードレール Db Db Db016.JPG D b 2 c 2 2 2 2 ミラー 家 Db Db Db017.JPG D b 2 c 2 3 2 1 踏切 水田 Db Db Db022.JPG D b 1 c 2 1 2 1 水田 ガードレール Aa Db Db023.JPG D b 2 c 2 3 2 3 塀 Db Db Db024.JPG D b 2 c 2 1 2 1 川 電柱 Db Db Db028.JPG D b 1 c 2 3 3 1 水田 畑 石垣 Lc Db Db034.JPG D b 1 c 2 1 2 2 牧場 Db Db Db

橋梁002.JPG D d 2 c 2 2 2 2 河川 Gb Dd Dd  005.JPG D d 2 c 2 2 2 3 水田 電柱 Dd Dd Dd  007.JPG D d 2 c 3 2 2 2 Dd Dd Dd008.JPG D d 2 c 2 3 2 2 河川 Dd Ee Dd009.JPG D d 2 c 2 2 2 2 Dd Dd Dd010.JPG D d 2 c 2 3 3 2 河川 Ee Ee Dd011.JPG D d 2 c 2 3 2 2 街路灯 山 歩道 車道 Dd Dc Dd014.JPG D d 2 c 2 3 2 2 車道 山 Dd Dd Dd023.JPG D d 2 c 1 3 2 2 山 船 建物 河川 Dd Ee Dd  026.JPG D d 2 c 1 3 2 1 河川 山 Dd Dd Ee031.JPG D d 2 c 1 2 2 1 湖 Dd Dd Ee108.JPG D d 2 c 2 2 2 2 河川 Dd Dd Ee

ポケットパーク001.JPG D e 2 c 2 2 3 2 車道 歩道 Da Dc De002.JPG D e 2 c 2 1 3 1 車道 花 Gf De De005.JPG D e 2 c 2 3 3 2 車道 旅館 歩道 Da Dc De

写真番号 キ ー ワ ー ド 検討者の評価工種 目的入 力 I D 番 号

表表表表 1 疑似疑似疑似疑似データデータデータデータ更新検討者更新検討者更新検討者更新検討者によるによるによるによる分類分類分類分類のののの試行試行試行試行とととと初期導入画像初期導入画像初期導入画像初期導入画像のののの選定選定選定選定のののの例例例例

カテゴリーについては、これまでの開発において、農地系、農業施設系、居住系、

水辺施設系、道路交通施設系、レクリ施設系、公園系、緑地系、コミュニティ施設系、

サイン系、文化・歴史系、素材系の12に分類されており、また、データの属性は、

工種系以外に、目的系、視点系、季節系、日周期系、天候系のカテゴリーでも整理さ

れているので、これを基本とし、この属性の妥当性について、農村工学研究所が公開

可能な計約3000枚の画像データ(640×480)を3人の疑似検討者がそれぞ

れ確認、整理し、3人の検討者が共通のカテゴリーに分類した初期稼働に必要な枚数

1500枚を選定した。

選定に当たっては、表1のように、工種について一つ一つの画像に対して共通的な

カテゴリーに分解できるかどうかを検討した。いくつかについては、3人の疑似委員

が異なるカテゴリーとして判断しているものもあったが、そのほとんどは共通的なカ

テゴリーを選択していた。なお、この表において、左側の入力ID番号は、管理者が

想定したカテゴリーであり、この形で現在1500枚がデータベースとして登録され

る予定である。

Ⅳ)委員会の運営が円滑にできるように、データベース管理用の支援ツールを開発す

る必要がある。支援ツールは、Web上でバーチャル委員会が可能となるよう、評価

- 14 -

委員会支援システムは、配信システムと評価システムと評価統合システムから構成さ

れる。

32

56

8 9

○ ○ ○

○ ○ ×

○ ○ ×

× ○ ×

○ ○ ×

○ ○ ×

○ × ×

○ ○ ○

○ ○ ○

○ ○

安全 項目 統合

委員会支援-評価システム

安全 著作

委員会支援-配信システム

あ委員

い委員

う委員

え委員

お委員

か委員

委員用支援ツール1管理者用支援ツール2

○○○

○ ○○

A B C

○○○

○ ○○

D E F

○ ○ ○

○ ○○

G H I

事業所

評価委員

図図図図 11 配信配信配信配信システムシステムシステムシステムからからからから評価評価評価評価システムシステムシステムシステムののののイメージイメージイメージイメージ

32

56

8 9

60 70 30

80 80 20

80 70 60

40 60 30

80 80 70

60 40 80

40 30 30

80 90 90

90 80 70

80 80

安全 項目 統合 安全 著作

委員会支援-評価統合システム

あ委員

い委員

う委員

え委員

お委員

か委員

評価サブシステム

評価表印刷

審査基準設定

個別公開 DB公開

○ ×

○ ×

○ ×

× ×

○ ×

○ ○

× ×

○ ○

○ ×

管理者用支援ツール3

図図図図 12 評価統合評価統合評価統合評価統合システムシステムシステムシステムののののイメージイメージイメージイメージ

- 15 -

Ⅴ)以上のように委員会支援システムの評価・審査の手順と内容を設計し、それを受

けてシステムの実装を行った。

委員会支援システムは、Windows Server 2003上で Webサーバ(IIS)と ASP.NET 2.0

とデータベース(MS-Access)が稼働する環境で動作する。

システムの実体は、(a.)画像取り込みツール、(b.)評価画像割り当てツール、(c.)メー

ル通知支援ツール、(d.)評価委員用Webアプリケーション、(e.)評価決定ツール とな

っている。

委員会支援システムは、前述したとおり景観画像データベースとは切り離された別

システムとなっており、評価対象となる画像とデータをリムーバブル・ハードディス

クや DVD-R 等を介して丸ごとコピーする。各手順が終了し、結果を同様にコピーし

て景観画像データベース(管理システム)に返す。

次に各ツールの概要について述べる。

(a.) 画像取り込みツール

管理システムからハードディスクや DVD-R 等で持ってきたファイルは、予め規

定されたフォルダ構成になっており、ファイルを委員会支援システムの既定のフォ

ルダに自動的にコピーすると共に、(d.)の評価委員用 Web アプリケーションで使用

するサムネイルイメージを作成する。

委員会支援システムでは、データベースにMicrosoft Access 2003を使用する。管

理システムのデータベースの内容は XML ファイルとして出力されているため、

Access用に取り込みモジュールを開発し、これを使用してデータベースの取り込み

を行う。

(b.) 評価画像割り当てツール

次に各評価委員が担当する地域を割り当てる。実際には、農政局ごとに分かれて

おり、各事業所ごとの割り当ても可能となっている。アップロードされた画像は地

域の偏り(ある地域の事業所が突出して大量にアップロードし得る)があるが、委

員が得意あるいは詳しい地域を割り当てることにする。また、評価方式が投票によ

る得点であるため、1つの地域に3人以上を割り当てることで、審査・評価の実効

性が向上するものと思われる。

図図図図 13 画像取画像取画像取画像取りりりり込込込込みみみみツールツールツールツール

- 16 -

図図図図 14 評価画像割評価画像割評価画像割評価画像割りりりり当当当当ててててツールツールツールツール 図図図図 15 事業所単位事業所単位事業所単位事業所単位でのでのでのでの割割割割りりりり当当当当てててて

図図図図 16 割割割割りりりり当当当当てられたてられたてられたてられた画像画像画像画像のののの確認確認確認確認

マトリックス上をダブルクリックすると、赤(割り当て)・白(非割当)が交互

に切り替わる。右クリックすると事業所単位での割り当てが行える。

委員の名前をダブルクリックすることで、委員ごとに割り当てられた画像を確認

することが出来る。

(c.) メール通知支援ツール

委員と評価する画像の対応が終わったら、各委員に評価を行ってもらうため、メ

ールで通知する。メールには、サーバのアドレスと予め登録してもらった IDとパス

ワードを記載し、受け取った委員はすぐに評価作業を行うことが出来る。

図図図図 17 メールメールメールメール通知支援通知支援通知支援通知支援ツールツールツールツール

メールの内容は、テキストファイルに文面を記述し、氏名の箇所は「%Name%」

- 17 -

というキーワードを埋め込んでおくと各委員の名前に置き換えられる。

同様に「%LoginURL%」は

http://124.34.59.179:8088/Landscape/Login.aspx?user_id=001-000003

という文字に置き換えられ、メールを受け取った委員はこのリンクをクリックすれ

ば、Webブラウザが起動してログイン画面が表示される。

(d.) 評価委員用Webアプリケーション

この項目のみ管理者用ではなく評価委員が触れるものとなる。

前項のメールにて、リンクをクリックすると次の画面が表示される。

図図図図 18 ログインログインログインログイン画面画面画面画面

ログインして正しく認証されると、画像評価画面に切り替わる。

図図図図 19 評価委員用評価委員用評価委員用評価委員用Webアプリケーションアプリケーションアプリケーションアプリケーション

- 18 -

画面の左側には、自分(委員)の担当する評価対象画像が一覧となって表示される。

画面の下側には、各事業所で画像をアップロードした際に付けられた画像の属性が

表示されている。この属性の内容が不適切だと判断した場合は、右の「評価」のと

ころで、項目を NGにチェックすることになる。

表示されている画像中に不適切なものが写り込んでいたり、他人の著作物ではな

いか判断し、安全を OK か NG にチェックする。また、画像が公開に値すると判断

されたら統合に OK をチェックする。3つのチェック項目にチェックを入れたら、

「投票する」ボタンをクリックして、次の画像を同様に評価していく。

評価作業は、中断することができ、全ての画像を一度に評価しなくても構わない。

ただし、一度投票してしまった画像に対して、投票のやり直しはできなくしている。

(e.) 評価決定ツール

全委員が投票し終わったところで、投票の結果を集計し、審査を確定する作業を

管理者が行う。

図図図図 20 評価決定評価決定評価決定評価決定ツールツールツールツール

各画像に対して投票された結果が右上に表示されている。その得票数は得点に換

算され、4つある審査結果「非公開」「削除対象」「公開」「汎用ライブラリー」

の項目の左側に「→」が表示される。これは、得点を基にシステム側が判定した所

に「→」を表示し、管理者がそれを承認するためにチェックボックスにチェックを

入力する。運用方針上、システムの判定を管理者が覆すことは、評価委員の評価を

ないがしろにすることになるので望ましくないが、承認した責任を明確にするため

にこのようになっている。

全ての画像の審査を確定し終わると、「すべての評価を決定する」ボタンが有効

- 19 -

になり、これをクリックするとデータベース上のフラグを更新する最終処理を行う。

その後、取り込みの時に行った取り込みモジュールを使った取り込み操作とは逆の

出力操作を行うと、管理システムに返すための XML ファイルとしてデータベース

の内容を出力する。

以上が、開発した各ツールの内容と実際の操作手順である。

②サーバ管理者用支援ツールとイメージ検索機能の開発運用試験

例えば、現在の農村工学研究所が所有する画像データベースの景観画像は、収集さ

れたカテゴリーに偏りがあり、農地、道路、水路施設景観は多いものの、樹木の種類

や、頭首工、ダム等の大型水利施設の景観は少ない。よって、データベース管理者は、

今後システムを運用、普及していく上で、どのようなカテゴリーの画像が少ないのか、

最近はどのような景観画像が全国から求められているのか、新しい工法による景観画

像などをタイムリーに収集していき、利用頻度を高めていかねばならない。そこで、

これまでのカテゴリー別の検索システムだけでなく、最近の更新傾向やカテゴリー間

の連動性(同一景観画像が2つのカテゴリーに登録されるもの)を分析し、場合によ

っては、イベント的に全国からの画像収集をしていく必要がある。

また、現在の画像データベースでは、すでに枚数が多く、必要な画像の検索に時間

がかかっている。もっと、効率的に希望する画像を探せるようにしなければ、国営事

業所だけのネットワークなら問題ないが、現在の景観施策に歩調をあわせ、一般住民

も巻き込んだ景観保全・形成の理解促進のための景観画像データベースの運用を考え

ていく上では、画像量が増えてきた場合に検索効率が極端に落ちる可能性がある。

そこで、イメージを検索する手法を、次に示す5つを検討した。

1)カテゴリーを繋いで AND/ORで検索する。

2)ユーザー別に検索する。

3)地域別、撮影月日別に検索する。

4)一枚の写真からそれに似た画像を検索する。

5)RGB検索

この内、1)4)5)について実際にツールとして開発した。

Ⅰ)キーワードイメージ検索ツール

検討項目の「1)カテゴリーを繋いで AND/ORで検索する」の内容である。データ

ベースを使用することで AND/OR検索自体は容易に行えるが、ユーザーが使いやすく

直感的なインターフェースを開発することがこの場合の主題である。特に AND/ORの

関係は、順序を間違えると意図した結果にならない。

そこで、「AND」や「OR」といった論理的なことを意識しないで感覚的に該当する

画像を検索できるような手法を検討した。

通常、同一カテゴリー内(たとえば「事業所」や「空間工種」といった各範疇の中)

で複数の要素を「AND」で絞り込むことは考えにくい(「北海道開発局」で且つ「九

- 20 -

州農政局」のものという絞込みはありえない)。

同一カテゴリー内で複数の要素を選択する場合、利用者の意識としては「OR」とし

て並べたいと考えられる。

一方、異なるカテゴリーにおいては、「AND」で絞り込みたいケースが圧倒的に多

いと考えられる(「東北農政局」のもので且つ「緑地系」といったケースで発想する

のが順当)。

以上のふたつの要素を画像のキーワード検索における暗黙のルールとして付加する

ことで、利用者の検索上の論理的な意識を排除し感覚的な取り扱いを可能とした。

図図図図 21 キーワードイメージキーワードイメージキーワードイメージキーワードイメージ検索検索検索検索ツールツールツールツール

図 21 において、左側のタブページの中のツリーから「キーワード」を中央のエリ

アにドロップすると、即時に検索が行われ、該当する画像が右エリアにリストアップ

される。

利用するキーワードは、ツリー上のトップ項目でもサブ項目でも可能。ただし、上

位項目は下位の項目を含んでいるとみなされるので、上位で選択されている項目に下

位のサブ項目を追加することは意味を成さない(公園系がすでに選択されている状態

で、農村公園をドロップすることなど)。

ドロップしたキーワードを除外する場合は、そのキーワードをエリア外にドラッグ

して移動するとそのキーワードを含まない検索が行われる。

「整列」ボタンを利用することで、漠然と抽出された「キーワード」を論理的に配

置しなおし視覚的に整理する。この場合、上下の関係が「AND」、左右の関係が「OR」

となる。

図 21 において「事業所カテゴリー」が「東北農政局」、「空間工種カテゴリー」

に「農地系」「レクリ施設系」「公園系」のキーワードが並んでいる。これをデータ

ベース検索言語である SQL言語に変換すると、

- 21 -

SELECT * FROM JGA_PICTINFO WHERE (KYOKU_CD='東北農政局' AND (KOSYU_CD='

農地系' OR KOSYU_CD='レクリ施設系' OR KOSYU_CD='公園系'))

となる。

このような SQL 言語のクエリー文字列になって初めてデータベースは検索ができ

るが、本ツールはビジュアルなインターフェースで文字列をドラッグ&ドロップする

と、逐次 SQL言語に翻訳するツールといえる。

また、使い勝手の面でも工夫し、作業エリア上部のタブページを利用することで複

数の検索作業画面を利用することも可能。この場合右側にリストアップされる内容は、

全ページの結果をまとめたもの(「OR」として複数検索の結果をまとめて表示するこ

とに該当する)、あるいは選択ページの結果のものとなる。この切り替えは「対象ペ

ージ」スイッチを「全」あるいは「(ページ番号)」と設定変更することで行う。

Ⅱ)画像イメージ検索ツール

検討項目の「4)一枚の写真からそれに似た画像を検索する、5)RGB検索」の

2つの内容を1つのツールで実現した。

このツールは、外部のキーワードに頼らずに画像に含まれる内容を分析して検索す

る。検索方法には3つあり、①比較元の画像を指定する、②構図イメージを指定する、

③色を指定する、というもの。なお、これらは利用者の便宜を図る意味での区分であ

り、後ほど説明する重み付けパラメータが異なるだけでどれも同一の処理を行ってい

る。

インターフェースは、左側に比較元の画像が表示され、下側に重み付けパラメータ、

右側に検索結果のサムネイルが順位の高いものから並べられる。

①比較元の画像を指定する

比較元の画像を選択すると、それと類似する要素のあるものを検索する。大量の画

像が集まってきたときに、重複する画像がないか調べることにも有効ではないかと思

われる。

②構図イメージを指定する

あらかじめ用意した画像(抽象的な図形イメージを想定)を読み込み、それと類似

するものを検索する(基本的な使用方法想定から、ここは構図に関しての類似性を重

- 22 -

視するということで選択後は自動的に構図重視の設定となる)。

図図図図 22 構図構図構図構図イメージイメージイメージイメージ指定指定指定指定1111

図図図図 23 構図構図構図構図イメージイメージイメージイメージ指定指定指定指定2222

③色を指定する

指定した色に近い印象の画像を検索する(上記同様、色に関する検索を想定してい

るので、色設定後は自動的に色味重視の設定となる)。

図図図図 24 色指定色指定色指定色指定

検索を行う際にパラメータの設定を変えることで、結果の傾向を変えることができる。

○「色味⇔構図」

色味を重視するか構図を重視するかのバランスを設定

○色味「部分⇔全体」

色について部分的な合致を優先するか全体的(平均的)な一致を優先するかのバ

ランス設定

○構図「強弱⇔配置」

「強弱」は正確には濃淡の細やかさとその強弱といった意味合いが強い。内容的

には画像の周波数成分となる。

一方、「配置」については濃淡の配置の類似性を優先した検索となる

- 23 -

○「範囲外を除去」

あらかじめその項目においてあまりにも類似性が低いと思われるものは検索対象

から外す。

通常、類似性が全体的に低いレベルにあると判断される場合、たとえば「色味」

において相当に類似性が低いものでも「構図」において類似性が高いと判断され

ると上位にリストアップされる可能性があるが、これは見た目の印象として非常

に違和感がある。そのため通常は一定ポイントに達しない画像はあらかじめ対象

から外したほうが好結果が得られる。

一方、比較元の画像が抽象的な画像や色などである場合、この除去を行うとすべ

てが排除されてしまう可能性が高い。その場合にはこの設定を無効にして抽出す

るのが望ましいと思われる。

画像比較においては、4通りの比較処理([色味-部分]、[色味-全体]、[構図-強弱]、[構

図-配置])をすべて行い、その各々の結果をポイントとみなし(1.0を最高得点とする

形に正規化している)、それに対してユーザーによって設定された重み付けを比率と

して乗じ、それらの合計ポイントの比較において近似画像としての順位を決定する。

また、比較元画像については、一般画像、色のみ、あるいは抽象的構図などにかかわ

らず、すべて同じ手法によって比較を行っている。

□[色味-部分]の比較処理

比較元、比較先の両画像に対し全体を[16×16]ブロックに分割。

各ブロックでの RGB それぞれの色構成要素の平均から 16×16×3 の輝度成分を算

出。

元画像とのブロックごとの比較において差分の二乗和を算出(すなわち RGB の 3

パラメータ単位)。

ただし、差分の小さいものを優先し、大きいものは無視する。現在は全体の 80%を

比較の対象としている([16×16]ブロックの 80%、近似していると思われる差分値

の小さい 204ブロックのみの二乗和を求める)。

この差分の二乗和の小さいものから近似画像とみなすために、結果の値を最高 1.0

ポイントとなるように正規化し、得点の高いものから選択する。

特に「範囲外除去」を設定している場合には一定閾値以下は除外する(現在の設定

では 0.5ポイントに満たないものを除外)。

□[色味-全体]の比較処理

比較元、比較先の両画像に対し全体を[4×4]ブロックに分割。

各ブロックでの RGBそれぞれの色構成要素の平均から 4×4×3の輝度成分を算出

元画像とのブロックごとの比較において差分の二乗和を算出(すなわち RGB の 3

パラメータ単位)。

この差分の二乗和の小さいものから近似画像とみなすために、結果の値を最高 1.0

ポイントとなるように正規化し、得点の高いものから選択する。

- 24 -

特に「範囲外除去」を設定している場合には一定閾値以下は除外する(現在の設定

では 0.5ポイントに満たないものを除外)。

□[構図-強弱]の比較処理

比較元、比較先の両画像に対しそれぞれ YUV1変換を行い、輝度 Y 成分のみを抽出

したグレースケールとし、全体を[8×8]ブロックに分割。

[8×8]の二次元 DCT変換2を行う。

[8×8]の DCT変換結果に対し、Jpeg等と同様のジグザグスキャンを行い周波数成分

として重要度の高いものから並ぶ 64のパラメータ列を得る。

各パラメータの差分を二乗和として算出する。

ただし、パラメータ上位より一定の減少係数を乗じることで重み付けを行っている

(現在は減少係数として 0.5 の値を用いている。つまり各パラメータの差分の二乗

値は、前のパラメータの結果の 50%の重み付けをされることになる)。

この差分の二乗和の小さいものから近似画像とみなすために、結果の値を最高 1.0

ポイントとなるように正規化し、得点の高いものから選択する。

特に「範囲外除去」を設定している場合には一定閾値以下は除外する(現在の設定

では 0.5ポイントに満たないものを除外)。

□[構図-配置]の比較処理

比較元、比較先の両画像に対しそれぞれ YUV 変換を行い、輝度 Y 成分のみを抽出

したグレースケールとし、全体を[8×8]ブロックに分割。

元画像とのブロックごとの輝度成分を比較し差分の二乗和を算出。

この差分の二乗和の小さいものから近似画像とみなすために、結果の値を最高 1.0

ポイントとなるように正規化し、得点の高いものから選択する。

特に「範囲外除去」を設定している場合には一定閾値以下は除外する(現在の設定

では 0.5ポイントに満たないものを除外)。

「色味」部分については RGBだけではなく YUVとし特に「輝度」と「色差」の比

較に各々重み付けを行って抽出することも試みたが、見た目の印象として RGBによる

比較がもっとも納得できる感覚に近いと思われたので、現在は RGB値を均等に比較す

る手法としている。

構図における DCT 変換による比較は期待した効果が上がっておらず改善の余地が

多いと考えられる。これは画像全体に対して DCT変換を行った場合、景観という特質

上均一化されやすく、想定していたほどに周波数成分に差異がでないために、期待さ

れたほどの特徴抽出が行えないためと考えられる。

改善案としては、全体をいくつかのブロックに分け、その各々について周波数成分

を求めることで部分的な変化の強さの類似性を抽出できるような手法が有効ではない

1 YUVとは、色を表現する形式のひとつで、輝度信号(Y)並びに輝度情報と青色成分との差(U)、輝度信号と赤色成分と

の差(V)、という 3つの情報で色を表す形式のこと。 2 DCT変換(離散コサイン変換)は、離散信号を周波数領域へ変換する方法の一つであり、信号圧縮に広く用いられている。

- 25 -

かと考える(たとえば画像右側は濃淡変化が激しく左側は比較的平坦なものであると

いったケースを抽出するような手法)。

任意の図形や色との類似性を考える場合、人の目は無意識のうちに切り捨てたり無

視する領域が存在している(たとえば緑の三角形領域を考える場合、そこにだけ注目

しそれ以外の白地の部分は自然に切り捨てが行われている)と考えられるが、現プロ

グラム処理ではこの切捨てが行われず、注目領域以外も同じ重み付けで類似性を抽出

しようと試みてしまう。このためこの注目度の違いから期待とは異なる結果を抽出す

るケースが多々見受けられる。この、注目度を反映させる手法を取り入れることがで

きれば、さらに抽出精度は上がるのではないかと考えられる。

5. 今後の課題

のべ4カ年に渡る官民連携の新技術開発事業であったが、ただ単なる理想の追求で

はない現場サイドの声にも耳を傾ける機会があり、研究開発はより現実味の帯びたも

のとなったと感じている。当研究開発組合は、イメージ処理の分野を得意とする企業

グループであるが、農村工学研究所での研究や提言が我々の技術と織り交ぜられ、景

観施策や農山漁村の維持発展といった目的に対して、我々の開発したツールがその一

助となれば幸いである。本事業における技術開発という当初の目的は達成され、ここ

で生まれたツールやノウハウが、広く普及・浸透されることを望み、ひいては日本の

農林水産業の保護育成につながることを願う。

- 26 -

成1

7~

18

年度

 景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修開

催一

年度

No.

開催

日内

容場

所講

師参

加人

120

05/

7/2

5景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

内部

((独

)農業

・食品

産業

技術

総合

研究

機構

)山

本徳

司32

220

05/

10/

29

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介日

本農

村生

活学

会研

究大

会山

本徳

司21

320

06/

1/1

8~

19

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介北

陸農

政局

山本

徳司

30名

420

06/

1/2

9~

31

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介京

都府

土地

改良

技術

事務

所山

本徳

司30

520

06/

2/2

0~

21

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介宮

城県

仙台

市山

本徳

司22

620

06/

3/1

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介関

東農

政局

土地

改良

技術

事務

所山

本徳

司32

120

06/

6/2

8景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

(社)土

地測

量設

計技

術協

会山

本徳

司30

220

06/

7/1

1景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

生活

技術

研修

館山

本徳

司20

320

06/

7/2

8景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

内部

((独

)農業

・食品

産業

技術

総合

研究

機構

)山

本徳

司栗

田英

治32

420

06/

9/6

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介生

活技

術研

修館

唐崎

卓也

20名

520

06/

10/

2景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

(社)農

業土

木事

業協

会山

本徳

司40

620

06/

11/

14

景観

シミ

ュレ

ーシ

ョン

研修

及び

農地

基盤

GIS

技術

の紹

介(社

)農業

農村

整備

情報

整合

セン

ター

(AR

IC)

山本

徳司

30名

720

06/

12/

4景

観シ

ミュ

レー

ショ

ン研

修及

び農

地基

盤G

IS技

術の

紹介

(社)農

業農

村整

備情

報整

合セ

ンタ

ー(A

RIC

)栗

田英

治20

平成

17

平成

18