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2016 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文 Wechat Payment の続きに LINE Pay も成功できるのか ―普及の条件についての考察― A1241045 嘉棟 2016 1 15

WechatPayment の続きに LINEPay も成功できるのかpweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2015/zhang.pdfなぜWechatとWechatPaymentが短期間内で普及できるのか Wechatの誕生が中国においてちょうどガラケーからスマホに乗り換える時期であった。ま

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2016年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

Wechat Paymentの続きに LINE Pay

も成功できるのか

―普及の条件についての考察―

A1241045

張 嘉棟

2016年 1月 15日

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目次

Ⅰ.はじめに ................................................................................................................. 2

Ⅱ.現状と背景 ............................................................................................................. 3

Ⅲ.仮説 ........................................................................................................................ 7

Ⅳ.検証と結論 ............................................................................................................ 8

Ⅴ.付録 ....................................................................................................................... 11

Ⅵ.まとめ ................................................................................................................... 11

Ⅶ.おわりに ............................................................................................................... 12

Ⅷ.参考文献 ............................................................................................................... 12

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Ⅰ.はじめに

スマートフォンの普及と共に、チャットアプリが従来携帯電話のメールと SMS を取り替え、

コミュニケーションをとるための主なツールになっている。2011 年には中国の Wechat と日本

の Line がほぼ同じ時期でインスタントメッセージのサービスを提供し始めたが、現在の

Wechat は「チャットアプリ」という定義に束縛されず、Wechat Payment を始め、様々な業界

まで浸透させ、多様なビジネスを展開しながら O2O ビジネスをリードしている。その背景には、

中国においての膨大なマーケットや「国策」として「互聯網+(インターネットプラス)」を

推進し、短い期間で Wechat Payment を普及させたことのかげで成功を収めた。一方、Line は

まだ「チャットアプリ」という概念に止まり、Line Pay へのビジネスを展開しようとしても

日本国内のマーケットにおいての不安定要素や Wechat Payment との差別化をつけるため、本

格的にサービスを提供するのはまだ時間掛かると私が考えている。

現在、日本ではキャッシュレス決済といえば、クレジットカードがまだ主流であり、消費者

にとって素早く決済でる便利性と後払い、さらに決済だけではなく、キャッシングもできると

ころが好まれる主な理由だと思っている。しかし、消費者がクレジットカードを使う際、お店

側がクレジットカードの加盟店手数料を負担しなければならないため、薄利で経営している店

はあまり積極的に POS 端末を導入していない現状となっている。

本稿は、「まだ認識の低い Line Pay が本当に普及できるのか」という趣旨をめぐり、Wechat

Payment と比較しながら仮説を検証していきたいと考えている。また、今後 Line 株式会社が

力を入れて解決したい課題の中には、本稿で言及した疑問点と一致するのか、さらに Line Pay

の普及による金融サービスに迫る破壊的イノベーションを起こるのかに対して期待感を抱い

ている。

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Ⅱ.現状と背景

Wechat Payment の起源

Wechat Payment 誕生の背景には、アリババ傘下にある国内最大手の電子マネーサービス

「Alipay」を参照し、さらに自社のインスタントメッセンジャー「QQ」をモチーフとして、こ

の両者の特徴をうまく融合するのを実現した。

なぜ Wechat と Wechat Payment が短期間内で普及できるのか

Wechat の誕生が中国においてちょうどガラケーからスマホに乗り換える時期であった。ま

た、インスタントチャットに関して同社の「QQ」は中国全土で認識され、利用者数もすでに確

保されていた状態であった。さらに日本の携帯メールと違い、SMS を用いているチャット文化

も浸透していた。

Wechat Payment の原型は Alipay であると言っても過言ではないと私が思っている。Alipay

は主に第三者保証決済サービスとして認識され、アリババ社の Taobao や Tmall などのオンラ

インショッピングサイトを中心に多く利用されている。一方、チャットサービスがなく、また

アリババ社以外のサイトの決済に関して限界性があるため、Wechat Payment のほうがより便

利だと考えられている。

Wechat Payment が多く使われている理由、また Wechat Payment における決済は Wechat との

つながり

キャッシュレス決済といえば、クレジットカード、デビットカード、電子マネーが主流とな

っている。多くの国では後払いやスムーズに決済できるというメリットがあるため、クレジッ

トカードがキャッシュレス決済において最も使われていると考えている。

一方、中国ではクレジットカードの申請が国の金融政策や個人信用などの諸事情と関わるた

め、経済力の弱い人や若い世代にとってクレジットカードの申請が非常に難しく、また取引で

の不法行為などの金銭トラブルが頻発するため、Alipay みたいな第三者保証決済サービスが

世の中に出てくる前、先払いと後払いはあまり好まれていなかった。しかしながら、クレジッ

トカード決済の代わりに「銀聯」カード、いわゆるデビットカード決済が中国においてキャッ

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シュレス決済の主流となっていた。この理由も今後 Wechat Payment と Alipay の成功の原因と

つながっている。

Wechat Payment で決済することを促進する前、まず利用者の消費意欲を促進しなければな

らないため、Wechat において「広告」が必要となっていた。本稿の先頭でも言及したが、Wechat

は単なる「チャットアプリ」ではなく、「口コミ掲示板」や「フリーマーケット」などだと考

えても良いではないでしょうか。Wechat には「朋友圏」(日本語:モーメンツ)という機能

があり、Line の「タイムライン」と同じく、一般ユーザーや企業の公式アカウントが近況を

シェアする機能である。Wechat ユーザーはこの機能を利用して、さらに Wechat Payment を通

じて個人間の取引、いわゆる C to C ビジネスを行っている。また、企業の公式アカウントも

積極的に商品を宣伝し、商品が取り扱われるオンラインショッピングサイトの外部リンクを記

事に取り入れた結果、B to C ビジネスも Wechat と Wechat Payment を通じて実現することが

できた。

Wechat の現状

出典:Statista 「Number of monthly active Wechat users from 2nd quarter 2010 to 3rd

quarter 2015」

2015 年 3 半期間まで、Wechat の MAUs(Monthly Active Users の略語,月間アクティブユー

ザー数)が全世界で約 6.5 億人を突破した。その中には、海外ユーザー数は約 1億人(全体の

15.38%)、また「Tencent announces 2015 third quarter results」のデータにより、現在約

2億人のユーザーが自分のバンクカード(英語で bank card は主にクレジットカードを意味す

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るが、中国の場合クレジットカードと銀聯カードの両方を意味すると自分が推測している)を

Wechat Payment に登録し、決済する際に使っている。実際、Wechat を通じてライフスタイル

への支出額がおよそ 17.6 億ドル(約 2100 億円)。

出典:Tencent Tech(2013 年 7 月~2014 年 6 月)

Line の現状

出典:Statista 「Number of monthly active LINE users worldwide as of 3rd quarter 2015」

2015 年 3 半期まで、Line の MAUs は世界で約 2億 1200 万人、その中には日本、台湾、タイ、

インドネシアでの MAUs は約 1 億 3700 万人、全体の約 64.62%を占めている。つまり、Wechat

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と比較したら、全体の MAUs が確かに Wechat より少ないが、海外ユーザーの獲得は Wechat よ

り進んでると考えられている。一方、Line 事業単体の 2015 年 7-9 月期の売上額は 299 億円と

なる。また、現時点では Line Pay がまだ普及してないため、Line Pay を通じてもたらした経

済利益の計算ができなく、Line の売上はほぼ自社の商品やサービスで上げている。

Wechat Payment と Line Pay の使用環境の比較

Wechat Payment Line Pay

チャージ オンライン オンライン/オフライン

決済方式 オンライン/オフライン オンライン/オフライン

決済システム オンラインソフト オンラインソフト

海外決済 可 不可

手数料

入金 無料 無料

出金 ~2万元(約 37 万円)/月:無料

2万元~/月:超過部分 0.1%

一律 216 円(一回つき 100

万円まで)

送金 ~2万元(約 37 万円)/月:無料

2万元~/月:超過部分の 0.1%

無料

物販 0.6%~2% 3.45%

デジタルコン

テンツ

2% 5.5%

Tencent と Line のデータより作成

比較した結果からみると、Wechat Payment はオンラインストアを多く誘致するため割と低

い手数料でサービスを提供していると考えられている。出金と送金の手数料無料のラインが低

い原因はアカウントに貯めているお金を流通させようという消費を促進する戦略ではないで

しょうか。一方、Line Pay はまだ初期の段階であるため、消費者にとって使いやすさや便利

さなどが重視されている。また、出金手数料を定額で定めるのは頻繁に出金を防ぐことや少額

の残金からチャージさせるように導くことだと考えている。しかし、これから Line Pay と連

携する企業側にとって 3.45%と 5.5%の手数料が高いではないでしょうか。

オンラインショッピングの現状

Line Pay を普及させるためには、単なる Line Pay の性能の良さなどを伝えるたけではなく、

そもそもオンラインでの取引があるからこそ Line Pay を使うことに導くと考えている。

しかしマイボイスコム株式会社の調査データにより、オンラインショッピング利用者の中で、

約 7割の人の使った金額は 5000 円以下であることがわかった。また楽天リサーチのデータに

より、スマホを利用してネットショッピングをする人の中で、7割が女性である。さらに現在

スマホの売上シェアが全体の 5割に到達した。それらのデータを見ると、今後スマホの普及や

決済アプリの開発によって、スマホの売上シェアがもっと拡大する傾向が見られる。

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Ⅲ.仮説

Line Payment に関するビジネスへの開拓が遅れている理由や Line Payment 普及させるために

は、Line 社側と利用者側から考える足りないところに関して検証する

①女性より男性をターゲットとして絞ったほうがいいではないか。

②「Group Buying」の文化が浸透してないため、オン/オフラインビジネスが足りたい。

③シティサービスへの開拓が進んでいない

④企業公式アカウントの「Push」と「Pull」と利用者が自らの発信、プロモーションをしてい

く行動が少ない。

この 4つの仮説に関して詳しく説明していく。

①現在 Line の MAUs の男女比を見ると、男性よりやや女性のほうが多い、またスマホを通じて

ネットショッピングの利用者が大半若い女性であるという現状がわかる。しかし、「女性のユ

ーザーが男性より購買力が高い、男性よりもっとキャッシュレスを押している」という結果に

導かない。

②欧米諸国や中国では、「Group Buying」のビジネスが存在している。いわゆる顧客数の増加

とお店側が割引クーポンを提供すること、この両者が支え合いの関係である。その一方が増加

すれば、もう一方のほうも増加する。ただし、前提条件として事前にクーポンを買うために先

払いが必要とされる。日本では、クーポンが提供されてもクーポンを使える対象は消費者全体

ではなく、ある程度の消費金額に満たされてない、もしくは大人数ではないと使えない場合も

多数ある。それによってお店の集客力が「Group Buying」を実施する店より低いではないでし

ょうか。

③シティサービスに関してちゃんと固定的な定義がなく、私個人的には「一つ都市に存在して

いる公的なサービス」と解釈している。主に「光熱水道料金」「病院」「ローン」「交通機関

の利用」「ガソリンスタント」「税金」「交通違反の罰金」など一般な企業への支払いではな

く、日常生活に欠かせない出費に関する支払いのことである。また、今までこれらのサービス

に対して現金払いが普通である。現在 Line Pay で提供しているシティサービスの中では強い

て言えば配車サービスの「Line Taxi」のみである。

④Facebook や Twitter などの SNS サイトで商品の広告を出し、またプラスの口コミをもらえ

ば商品の売上と直接につながるという効果がある。同様に、Line のタイムライン機能をうま

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く活用できれば口コミによる商品に対しての宣伝にもなる。しかし、現在タイムラインでの投

稿は自撮り写真やデイリーライフに関する内容が多く、特定な「もの」をシェアすることが少

ないと感じている。つまり、企業にとって話題を呼ぶ「もの」を積極的に「Push」と「Pull」

しないと顧客の消費意欲も喚起できないだろう。

Ⅳ.検証と結論

①女性より男性をターゲットとして絞ったほうがいいではないか。

出典:株式会社ジェーシービーブランドマーケティング部

上図に「クレジットカードに関する総合調査」のデータから、男女別でクレジットカードの

平均利用金額を比較してみると、実際に男性のほうがクレジットカードを多く利用しているこ

とがわかった。一方、クレジットカードを多く使っても本当に Line Pay の普及に影響を与え

るのかという疑問が浮かんでくる。

確かに、消費者にとってパソコンを使ってオンラインショッピングや店頭での支払いに関し

てわざわざ従来のクレジットカードから Line Pay に乗り換えるメリットを感じられないかも

しれないが、スマホの普及とともに私たちがスマホに対する依存度がだんだん高まっていく。

それに伴って、スマホの機能も進化していく。つまり、今までパソコンでしかできないことが

これからスマホでもできるようになる、逆に今後スマホでできることがパソコンではできなく

なるかもしれない。またパソコンで決済することに限らず、外出する際に現在のスマホユーザ

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ーにとって「財布を家に忘れる確率」と「スマホを家に忘れる確率」を比較すると、恐らく「財

布を家に忘れる確率」のほうが圧倒的に高いと考えている。つまり、今後 Line Pay はクレジ

ットカードの「バックアップ」として考えたほうが良いではないでしょう。また、バルクマー

ケティングリサーチサービスの「電子マネーに関する調査」によって、「利用しているプリペ

イド式電子マネー」について WAON カード以外のほとんどが男性利用者のほうが多いという結

果である。

以上クレジットカードと電子マネーの比較から見ると、女性より男性のほうがキャッシュレ

ス決済に対する意識が高い、また利用率も高いため、今後 Line Pay を普及させるために女性

より男性をターゲットとしてビジネス戦略を考えたほうがいいと考えている。

②「Group Buying」の文化が浸透してないため、オン/オフラインビジネスが足りたい。

日本ではポンパレを始め、複数のクーポンサイトが割引クーポンをインターネットで販売し

ている。「クーポンサイト jp 調べ」のデータによると、2015 年 8 月に大手 5社の売上高の合

計は約 31 億円。一方、「The Economist」社が中国のクーポンサイトに対する調査のデータに

関して、2015 年上半期だけで約 120 億ドル(平均毎月約 20 億ドル)の売上を突破した。桁外

れの売上高と深く関わるのは消費者たちがクーポンに対する必要性を感じるかどうかの問題

ではなく、その裏で企業側が積極的にスマホアプリへのビジネス開拓や Wechat Payment との

連携の結果である。

そして、Group Buying のビジネスがオンラインに止まらなく、オフラインでもデジタルサ

イネージを使ってクーポンの QR コードを掲載し、スマホを使ってコードを読み取って、そこ

からお店に入って消費すれば、従来の広告と比べて単なる顧客に商品のイメージを押し付ける

ことより、消費者がこれから消費行動をとるというワンストップで企業の売上と結び付く。

つまり、今後 Line Pay の普及は企業側のプロモーション戦略と深く関わり、消費者に商品

のクオリティーを伝えるよりも割引額の数字のほうがインパクト感を伝わると考え、今後どう

やって短い時間で消費者のお金が自社の売上げになるのか課題になると思っている。

③シティサービスへの開拓が進んでいない

Line Pay を通じてビジネスにおいての取引が便利になったが、ビジネス以外の支払いに関

して、公共料金の支払いや公共交通などのシティサービスを利用する際、現金また口座振替で

支払うことはまだ多数である。もし今後シティサービスへの展開を積極的に行われば、これら

の料金の支払いが統一化されることによってお金の管理ももっと便利になり、利用者も増える

と考えている。

近年公共料金等の定期的な資金決済手段に関して、下図表示のように現金と口座振替の割合

が減り、その代わりにクレジットカード決済の割合が高くなった。その一つ大きな原因はクレ

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ジットカードのポイント制度で、少しでも特典を得ようとする動きが見受けられる。また、今

後 Line Pay もポイント機能を導入する予定があるため、クレジットカードを Line Pay に登録

すればダブルポイントをもらえるという格別な特典もついてくる。

④企業公式アカウントの「Push」と「Pull」と利用者が自らの発信、プロモーションをしてい

く行動が少ない。

企業公式アカウントは「Push」と「PULL」戦略を用いて Line ユーザーに対してメッセジ

ーを配信している。特に「PUSH」において、ユーザーが送られてきたメッセジーリンクを押せ

ば商品の画面に移し、商品の宣伝効果をあげようとしてる。この戦略は今後 Line Pay 決済が

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普及できればユーザーのアクションにもつなげる効果である。一方、「PULL」に関してまだ多

くの企業が自ら写真などを投稿し、ユーザーとのコミュニケーションを狙っているが、常に企

業側の立場で商品を売りたいという出発点からタイムラインで投稿し続けると、ユーザー側が

このような「押し込み営業」に飽きるかもしれない。ここで Wechat のモーメンツを見ると企

業側が公式アカウントから投稿せず、有名人を使って自社商品が写された不本意に見える写真

にを上げ、ユーザーが自らこの写真の内容を追求し、より大きな話題性を呼ぶことができた。

その後、人気になった商品が改めて Wechat のストアに出し、Wechat Payment で C to C 決済

することと繋がった。若干「ヤラセ」の戦略でもあるが、企業側、消費者側、Wechat 三者に

メリットをもたらしたため、今後 Line にある公式アカウントとユーザーがタイムラインをも

っと活用したほうがいいではないでしょうか。ただし、その裏には Line 社の「起爆剤」が必

要とされている。

Ⅴ.付録

ライバルモバイル決済企業「Square」の登場

「Square」とは電子端末の製品で、決済する際にスマホのイヤホンジャックに挿してカードを

スワイプすれば決済できるという POS レジである。「Square」を使いたいならその端末を買わ

なければならないが、代金還元のキャンペーンが実施されているため、お店側にとって余計な

支出がなくなる。また「Square」を使うメリットとして、クレジットカード決済の場合でも最

短翌日入金であるため、お店側のキャッシュフローに大変助かる。ただし、そのデメリットと

はガードしか使えない。今後電子マネーの普及とともに、スピーディーかつ多様な支払いに対

応できる決済方式が求められる。現存の PayPal やこれから出てくる Apple Pay などの決済方

法との間のバトルに期待している。

Ⅵ.まとめ

今後 Line Pay の普及に関してまだ開いてない道や金融機関の裏事情が多数存在しているた

め、私たち生活の一部になって金融サービスに迫る破壊的イノベーションを起こすのはまだ時

間掛かると考えている。到底 Wechat Payment の成功は特別な背景、「特別」なユーザー、特

別なサポートを得たから結果である。Line Pay を普及させるためにはまず「チャットアプリ」

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の固定概念から脱出し、また企業間との連携問題もスピーディーに解決し、いつか多くの店で

は「Line Pay も使えます」という看板が出てきたら Line Pay も Wechat Payment のように成

功だと言えるだろう。

Ⅶ.おわりに

今後キャッシュレス時代の到来に期待感を持っていることをきっかけに、今回 Line Pay に

関する論文を書いた。しかし、Line Pay 自体がまだ完全にできてなく、データや参考資料も

不足の状況で勝手に Wechat Payment と比較するのは信憑性を欠けていると自分が書いている

途中に気付いた。また、ちゃんと自分でデータ収集や統計を行なうこともわずかしかできてな

く、書き終わってからもう一回目を通すと自分ですら「面白み」を感じてない結果になってし

まった。今後社会人なってから必ず面白いかつ説得力のある書類を書かされると思うが、その

前にまず面白い人になるように頑張っていきたい。

最後に、約 2年間網倉先生に大変お世話になりました。またいろんな面で助けてくださって

本当にありがとうございました。

Ⅷ.参考文献

・ TENCENT ANNOUNCES 2015 THIRD QUARTER RESULTS

・ LI Mingjie,YAN Qiang"Research on Online Group Buying Business Model Based on

Industry Chain"School of Economics and Management Beijing University of Posts and

Telecommunications,2014

・【クレジットカードに関する総合調査】2014 年度版 調査結果レポート,株式会社ジェーシ

ービー ブランドマーケティング部

・ LINE 2015 年 10 月-2016 年 3 月媒体資料,LINE 株式会社 コーポレートビジネスグループ

・謝暁萍 等『微信力量』(Wechat Power),機械工業出版社,2015

・謝暁萍 等『微信思維』,羊城晩報出版社,2015