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アジア高等教育における「透過性」のある教育システムの重要性:
東アジア13カ国の単位制度、成績評価基準等の調査結果に基づく
一般的傾向と今後の方策について
堀田泰司広島大学
本発表に於ける見解、今後の方策等は、発表者本人が取りまとめた考えであり、日本国政府の政策を代表するものではない。
東アジア高等教育質保証国際シンポジウム, 2011年9月29-30日
ワークキング・グループ A: 単位と成績評価の互換を伴った学生交流事業
“ACTS(ASEAN Credit Transfer System)と各国の単位互換に関する調査研究”
(平成21年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業による研究) [実施期間:2010年2月 1日~3月 31日]
1. 経緯: 平成21年10月の日中韓サミットに於ける鳩山前首相
のアジア地域の学生交流促進に関する提案
2. 目的: ASEAN+3 の13カ国の単位並びに成績評価(互換)
制度の実態調査
3. 研究協力者: 13カ国の研究協力者並びに情報提供者、約30名
4. 調査結果: 別紙資料, “Comparative Table of 13 Asian Countries”を参照のこと(日本語版は、以下のアドレス)http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/ZZT00001/ACTS_4_197_results.pdf
研究プロジェクトの背景
1 単位 = 13-17 授業時間数授業時間数の方が学習時間数(student workload)より、 より一般的に単位計算に使用されている。
1
4年間の学士課程が多いマレーシアやラオス等例外もある。また、医学部、工学部の多くは、5-6年
2
卒業単位数は、120 から150 単位 が多い
(4年間の学士課程の場合)3
(推定)学習時間数は 1単位=40-50 時間(インターンシップ、実験、野外実習の時間数等から算出)
中国 ( 40-45 ), 日本 (45), カンボジア (45), インドネシア (46), マレーシア (40), フィリピン(51), シンガポール国立大学(39), タイ (45)
4
アジア高等教育における一般的傾向(Part 1)
多くは2学期制、1学期13-17週間しかし、多くは、1学期14~16週間に集中している
5
相対的評価より絶対的評価がより使われているしかし、成績評価については、大学や学部間でも異なる
6
学年暦の2つのタイプしかし、国、大学によって、その詳細な日程は大きく異なる (次の国別の比較表を参照のこと)
① ブルネイ, 中国, 日本, 韓国, インドネシア, ラオス, シンガポール,
ベトナム
② カンボジア, マレーシア, ミヤンマー, フィリピン, タイ
7
アジア高等教育における一般的傾向(Part 2)
アジア高等教育の学年暦の比較表(国別の一般傾向)
5
欧州のボローニャ・プロセスでは、“Convergence”(収斂性)が基本概念であったが、実際には、政府による大掛かりな構造改革が急速に実施された
1
アセアン教育大臣機構並びにアセアン大学ネットワークによってアジア高等教育の調和とACTS(アセアン単位互換システム)の発展が謳われた
2
21世紀は、国際競争が激化しているが、同時に多様な教育経験を認証する “Lifelong Learning” (生涯学習)の世界的な発展の世紀でもある
3
アジアにおける“Permeability” (透過性)のある教育認証システムの発展の重要性: 不当な評価、扱いのない共通の教育認証フレームワークの構築を!
4
アジア高等教育における「透過性のある制度」構築の重要性
単位互換: ACSAM (アジア交流のための単位制度)の開発
1
教育の質: 便覧、シラバス、成績証明書等における学習成果(learning outcomes)の表記
2
成績評価の互換: 絶対的・相対的評価を柔軟に活用し、優秀な学生を選別する成績評価制度の開発と活用
3
学年暦: 13-17週ではなく、7-8週間ごとの授業科目の開講による学年暦4区分制の導入
4
課題と今後の方策の可能性について
13カ国における一般的な単位制度の基本的考え方;
1単位=40-50 時間の学習時間数, (授業時間数、課題やレポート作成等時間数を含む)
もし授業時間数だけによる規程が必要な場合は、次のような考え方が可能できる;
1単位=14-16時間の授業時間数
1
欧州の経験によると、このシステムの名称としては、「transfer」と言う表現を避けたほうがよい。よって以下のような命名を試みた;
Academic Credit System for Asian Mobility(ACSAM) 「アジア交流のための単位制度」[尚、1 ACSAM=1.6 ECTS/UCTS/ACTS]
2
1 ACSAM(アジア交流のための単位制度)の構築
ACSAMと学習成果を表記した便覧、シラバスそして、ディプロマ・サプルメントのような詳細な情報を提供する成績証明書の開発推進
1
欧州のTUNING プロジェクトの概念を活用し、科目や教育プログラムごとの基礎能力と分野別に習得が必要な能力を学習成果に明記
** 基礎能力: 対人関係維持スキル, 分析能力、自立性等
** 分野別能力: それぞれの分野で必要とされる能力
2
2. 学習成果(Learning Outcomes)の表記
基本概念:
学習時間数(Workload)とは、学習成果( Learning Outcomes )を達成するのに必要な全ての学習経験を量的に測定した時間数である。
学習時間数を量的に表記したもの= 単位
学習の到達度を質的効果として表したもの=学習成果
学習成果とは、学習期間の終わりに学習者がどのような知識を習得し、概念を理解し、それに基づき実践することができるかを明記したものである。
単位と学習成果に関する情報は、便覧、シラバス、学習計画書、そしてディプロマ・サプリメントのような学習経験について詳細な情報が記載された成績証明書において明記される
ボローニャ・プロセス専門家のDr. Gehmlichによる基本概念
基本的考え方: 各高等教育機関が相互にそれぞれの教育内容の質を十分に理解しない環境でもそれぞれの機関の優秀な学生を客観的に選択するのに適している相対的評価型の成績評価システムの方が、絶対的評価より、アジア域内の学生の流動性にとって利便性が高い
1
成績評価全ての段階に具体的な学生数の割合を配分するのではなく、大まかな割合を決め、交流のために成績優秀な学生を選別する
** 例えば, 「秀」は、学業成績が上位5~10%の学生に与え、「優」は次の20~25%の学生に与える。それ以下の「良」から「不可」については、特に細かい限定を設けない。この方法によって、少なくとも各大学の上位25%から35%の学生を客観的に選択することができる。
2
3. 優秀な学生を選別する成績評価システムの構築
既存の科目を2分化するか、もしくは、縮小し、7-8週間で修了する科目として開講し、1学期を2区分化する (次の比較表を参照のこと)
1
学年暦の4区分化は、アジア諸国の異なる高等教育機関に留学する機会をより柔軟に学生に提供することを可能にする
2
4. 学年暦の4区分化
4区分化された学年暦の比較表
13
アジア高等教育の国際化における「透過性」(permeability)のあるフレームワークの構築
1
ACSAM、学習成果、トップ・グループを選ぶ成績評価システム、学年暦の4区分化の発展の可能性に関する検討
2
複数の協定大学が単位互換を必要としないジョイント・スタディ型カリキュラムを協働で開発
3
上記項目の促進は、アジア高等教育機関における教育の質保証に貢献すると共に相互理解を促進するであろう
4
結語
用語一覧
• ACTS- ASEAN Credit Transfer System• SEAMEO- Southeast Asian Ministers of
Education Organization• AUN- ASEAN University Network• ACSAM-Academic Credit System for Asian
Mobility• ECTS- European Credit Transfer System• UCTS- UMAP Credit Transfer Scheme• UMAP- University Mobility in Asia and Pacific• TUNING project- Tuning Educational Structures
in Europe