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XiO Inside -内部動作の詳細理解のために-

XiO Inside - elekta.co.jpŒ出力するTMR表について 30 XiOが出力するSSD について 34 XiOが出力する深さについて 36 XiOが出力する等価正方形について

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XiO Inside

-内部動作の詳細理解のために-

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 1 -

目目 次次

はじめに 2

・ この文書について

・ 参考文献

・ 変更履歴

XiOは CT画像になにか処理を加えてから計算に使うのですか? 4

CT値から電子密度への変換で注意するべきことは? 9

XiOの Weight Point とは? 14

Convolution / Superpositionアルゴリズムとは? 17

XiOにおけるグリッドとは? 27

XiOが出力する TMR表について 30

XiOが出力する SSDについて 34

XiOが出力する深さについて 36

XiOが出力する等価正方形について 40

通常照射において MLC で形成したひし形照射野について(特に Elekta 治療機の場合) 45

各アルゴリズムにおけるビーム硬化(特にウェッジ)の取り扱いについて 49

Clarkson と Convolution/Superposition アルゴリズムにおけるウェッジファクターの違いはどこから生じるか? 51

XiOでハーフビームをつなぎ合わせたときの分布について 56

ある点(weight point)ではなくある領域に入る線量を指定するには? 61

不均質補正を細かく制御するには? 63

Dose-To-Water と Dose-To-Mediumについて 66

XiOが出力した DVHを他の PC上で解析するには? 69

XiOが出力したプロファイル(含 PDD)を他の PC上で解析するには? 74

付録:Teletherapyの Source Dataに表示される各項目について 76

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 2 -

ここのの文文書書ににつついいてて

この文書では、主に XiO内部における物理的な動作や、知っていると便利な機能が、簡単に紹介

されています。

もちろん XiO にはそういう項目が他にもたくさんありますが、ここでは特に、マニュアルや XiO

On-line Help では見つけづらく、弊社ヘルプデスクによくお問い合わせをいただく項目を列記しま

した。内容は順次、改定・追加してまいります。もし、この文書に掲載すべきと思われることがらや、

内容に対するご意見やご感想がありましたら、弊社ヘルプデスクまでお知らせいただけましたら幸

いです。 ※連絡先については裏表紙をご覧ください。

参参考考文文献献

XiO On-line Help (英文)

XiOの各画面において(たとえばメニューバーの右端に)、[Help]-[XiO Help]が用意されています

のでお使いください。 [Utilities]の下の[Reference Library]にはたくさんの有用なドキュメントが

あります。特に XiO Physic Frequently Asked Question は本文書の元となっています。

以下の資料は、Elekta(本社)のウェブサイトからダウンロードまたは閲覧できます(保守契約

を結ばれているお客様に限ります)

XiO ユーザーガイド、トレーニングガイド、IMRT トレーニングガイド

XiOの公式のマニュアルです(すべてのバージョンに日本語版があるわけではありません)

XiO Beam Modeling Guide (英文)

ハイパーテキスト形式のモデリングガイドです。XiOをお持ちの方には、該当バージョンのモデリン

グガイドの CDでもお渡ししております。

以下の資料はエレクタ株式会社(日本)のウェブサイトからダウンロードできます。

XiO TIPS (エレクタ アプリケーションサポート発行)

電子線ペンシルビームモデリング ABC

クラークソンなんて恐くない

XiO トレーニング付属資料

XiO Basic コースの副教材です。この資料の内容は上記の XiO TIPSにほぼ含まれています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 3 -

XiO QAツール操作

XiO 計算結果の確認~入門編コースの副教材です。

以下は本文書を書くにあたって参考とした出版物です。本文書をお読みになる皆様にとってもお

役に立つものと思います。

日本医学物理学会編、外部放射線治療における吸収線量の標準測定法(標準測定法 01)

日本医学物理学会 タスクグループ 01、X線治療計画システムに関する QAガイドライン

日本医学物理学会 タスクグループ 02、X 線線量計算の不均質補正法に関する医学物理ガ

イドライン

日本放射線治療専門技師認定機構、放射線治療技術の標準

日本放射線技術学会、放射線治療における誤照射事故防止指針

Faiz M. Khan、The Physics of Radiation Therapy, Fourth Edition (英文)

変変更更履履歴歴

2008年 11月 27日 第 1版 (PH_INSIDE_001)

2009年 3月 2日 第 2版 (PH_INSIDE_002)

2011年 1月 24日 第 3版 (PH_INSIDE_003)

2011年 2月 18日 第 4版 (PH_INSIDE_004)

2012年 8月 10日 第 5版 (PH_INSIDE_005)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 4 -

XXiiOO はは CCTT 画画像像ににななににかか処処理理をを加加ええててかからら計計算算にに使使ううののでですすかか??

XiOは CT画像をそのまま計算に利用しているわけではありません。

(1) ボクセル化

(2) CT-電子密度変換

の二つの処理を行い、電子密度グリッド1に変換して、計算に用います。

XiO での電子密度分布の最も重要な用途は、線量計算における不均質補正です。意図的に

不均質補正を OFF にしないかぎり、電子密度分布を見て不均質補正を取り入れた計算を行

います。

もう一つは DRR の生成です。XiOでは DRR の生成時に CT値ではなく、電子密度を使って

います。

◆ ボクセル化

ボクセル(Voxel/Volume Elementまたは Volume Pixelの略)とは、一般的に3次元画像に

おける画素のことを表し、ほかのタイプの画像を3次元画像に変換することをボクセル化

(voxelization)と呼びます。しかしその言葉が表す内容は場合によってさまざまです。

まず体軸と垂直な方向に関して考えます。CT画像のピクセルサイズはおおむね 1mm以下で

す。頭頚部などの場合は 0.5mm 以下になることもあります。しかしこの空間解像度は、線量

計の大きさ、患者の動きや固定精度を考えると、線量分布の計算に使用するには尐し細かす

ぎます。そこで CTのピクセルを 2x2、3x3などの単位で、一辺が 1mm以上、2mm未満であ

るような一つの正方形にまとめます。

1 XiOで言う「グリッド」とは、計算の対象や結果を内部表現するためのマス目状の3次元配列を表しています。グ

リッドの種類によっては個々の要素(マス目)が立方体または直方体ではなく、かしいでいたり、ゆがんでいたりす

ることもあります。

【図 1】 (左)もともとの CT画像 (右)解像度を下げた CT画像

図中黄色の折れ線は、PFMで引いた体輪郭を示しています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 5 -

次に体軸方向に関して考えます。CT 画像のスライス間で補間(線形補間ではありません。図

2 のキャプションを参照してください)が行われ、通常は(CT 画像のピクセルサイズが 2mm 以

下であれば) 2mm 間隔のデータに変換されます。ただしスライス間隔が 2mm より狭い場合

には、スライス位置をそのまま使用します。

このようにして CT画像は、縦横が 1~2mm、高さが 2mm 程度の直方体を単位とした3次元

画像に変換されます。この1単位をボクセルと呼びます。

この場合、そのボクセルに含まれる CT ピクセル内で CT 値の平均値をとり、それをボクセル

の CT値とします。

足 頭

CTのスライス間隔……5mm

患者グリッドのスライス間隔……2mm

C D B A

C2 C3 C1 D1 D2 B2 B1 A3 A2

【図 3】 患者のCT画像を、線量計算に用いる電子密度分布に変換するとき、体軸方向

については、CT画像のスライスを補間して、(多くの場合)2mm間隔にしています。電子

密度の値は線形補間ではなく、そのボクセルにもっとも近い CT スライスの値を参照して

得ます。たとえば CTスライス Cから換算して得られた電子密度が、C1、C2、C3のすべ

ての電子密度に適用されます。

【図 4】 CT画像の解像度を下げると、最初に引いた体輪

郭曲線(図中黄線)の外側にも、CT 値が存在することにな

ります。これを「仮の患者体部(“virtual” patient)」と呼

びます。

(体輪郭曲線は点列で表される多角形なので、ピクセル

境界とはもともと一致していません)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 6 -

◆ CT-電子密度変換

リニアックが出力するMV領域のX線が人体のような物質中で起こす反応は、ほとんどがコン

プトン散乱です。したがってその減弱(やエネルギー付与)は原子番号には依存せず、ほとん

どはその電子密度だけに依存しています。

一方、CT装置などの X線管が出力する kV領域の X線では、コンプトン散乱よりも光電効果

をより多く引き起こしますので、電子密度のほかに物質の平均原子番号の影響を受けます。

すなわち、線量計算に使われる電子密度画像と比べると、CT 画像は、原子番号の低い領域

(皮下脂肪など)は感度が低めに、原子番号の高い領域(皮質骨)などは感度が高めに出て

いることになります。

XiO でこれを補正するためには、CT-電子密度校正用ファントムを用いて、校正用データを測

定し、それを XiOに登録する必要があります。

◆ CT-電子密度変換の測定について

この測定にはCT-EDファントムと呼ばれる特殊なファントムを用います。これは水等価素材で

できたファントムに、体内の組織を代表するいくつかのサンプル(「プラグ」とも呼ばれます)を

差し込んであるものです。ファントムには各サンプルの電子密度の表が添付されており、この

ファントムをCT装置で撮影した後、ROIをとって各サンプルのCT値を求めます。添付されて

いる電子密度表と、測定した CT値から、CT-電子密度変換曲線を作ることができます。

空気 肺

脂肪

筋肉

0 500 1000 -500

電子密度

1.0

0

CT値

【図 5】 XiO のメインウィンドウのプルダウンメニューから[Settings]-[CT to Rel Elec

Dens Files]を選択すると、上記右の画面になり、CT-ED変換データを入力できます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 7 -

CT-電子密度曲線に関する注意点をいくつかあげます。

この曲線は X 線管の特質によるものですから、CT 装置によって微妙に異なります。治

療計画用 CT の取得に 2 台、3 台の CT 装置を使っている場合は、それぞれについて

CT-電子密度曲線を用意しなければなりません。

1台の CT でも、複数の変換曲線が必要な場合があります。管電圧には大きく依存しま

すし、FoVサイズやそれによる硬化補正が異なると、微妙にCT-電子密度曲線にも影響

します。

管球や重要な部品の交換を行なったら、X線の線質が変化していないかどうか検討して

みる必要があります。変化している可能性があれば、この CT-電子密度曲線も測定し直

してください。

ファントムの素材均一性やCTの分解能などによってCT値はある偏差を持っています。

なるべく複数のスライスポジションの CT 値を取得して、その平均値を登録するようにし

てください。

XiOの CT-ED変換データ入力にも気をつけなければいけない点があります。CT値-1000に

該当するところには電子密度 0.00 を入れたいところですが、不均質補正アルゴリズムとの関

係上、電子密度0.00のボクセルをつくることはできません。測定の結果を見ながら、問題ない

と思える方法(例えば「空気での CT の読み値に対して電子密度 0.01 を設定する」など)で対

処してください。

【図 6】このように、低解像度化された CT画像から電子密度のマトリクスを作ります。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 8 -

【図 7】 CT-EDファントムの一例

(左上) CIRS社製Model 062 ファントム

(右上) GAMMEX社製 RMI467ファント

(右下) 3D Design International社製フ

ァントム(国内で通称「CMSファントム」と

呼ばれていたものですが、材質の劣化に

伴い、現在は破棄されています)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 9 -

CCTT 値値かからら電電子子密密度度へへのの変変換換でで注注意意すするるべべききここととはは??

CT-ED変換データ(CT to Relative Electron Density File)を XiOに登録しますと、相対電子

密度を用いた不均質補正が可能になります。では実際に CT 画像を相対電子密度のデータ

へ変換するときはどのような処理がなされているのでしょう? この処理の流れを細かく追っ

ていくと注意すべき点が見えてきます。

XiOの内部で行われている処理は大きく5つのステップに分かれます。

(1) CT画像内のピクセルを、いくつかずつまとめて、その中で CT値を平均します。

これは電子密度ボクセルを作る処理の前半部分で、スライス内での処理に相当します。

つまり 2×2や 3×3のピクセルのかたまりを 1つのグループにするのです。

(2) シリーズにわたって、全てのピクセルグループにおける CT 値の最小と最大を検索しま

す。

(3) CT-ED変換データを用いて、CT値から相対電子密度を算出します(【図 7)。CT-ED変

換データのポイントとポイントの間は線形補間にて計算しています。

(4) CT値がCT-ED変換データの範囲外にあった場合は、登録した変換データの最小値もし

くは最大値を割り振り、一定の値として処理します。例えば、画像内の CT 値が-1500~

1500の範囲を持っていたとしますと【図 8のようになります。

(5) 算出された相対電子密度は 255階調の離散化データに変換されます。255階調のうち、

空気(密度 0.00)は階調 1、画像内の最大 CT値は階調 255に割り当てられます。線量

計算時には離散化された相対電子密度を用います。

変換処理(4)における「登録範囲外の CT 値」には注意が必要です。例えば一番小さな

CT-ED 変換のデータ点が(CT 値 = -800 HU, 相対電子密度 = 0.20)であった場合、-800

HUを下回るボクセルはすべて電子密度 0.2 とされてしまいます(【図 8の下のグラフを見て

ください)。空気に相当するデータ点を欠いているために、空気付近での変換が正しく行えなく

登録したCT-EDデータ

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

-1500 -1000 -500 0 500 1000 1500

CT値

相対電子密度

【図 8】XiOに登録さ

れているCT値-電子密

度変換のデータです。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 10 -

なっているのです。

【図 10】変換処理(5)での、

相対電子密度の離散化処理を

図示しています。

離散化処理前後の相対電子密度

0.95

0.975

1

1.025

1.05

-100 -50 0 50 100

CT値

相対

電子

密度

離散化前

離散化後

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

-1500 -1000 -500 0 500 1000 1500

CT値

相対電子密度

【図 9】変換処理(4)

において、どういう CT

値がどういう相対電子

密度に変換されている

か、を示したグラフで

す。登録されている範

囲の外は、一定値とし

ています。

CT-EDデータが足りない場合

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

-1500 -1000 -500 0 500 1000 1500

CT値

相対電子密度

CT-ED変換後の相対電子密度

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

-1500 -1000 -500 0 500 1000 1500

CT値

相対電子密度

登録範囲内

登録範囲外

登録範囲内

登録範囲外

登録データ中の最小電子密度

が 0.2 なので、空気の電子密

度も 0.2で計算してしまいます

悪い例

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 11 -

◆ 高密度物質を含む CT画像を扱う方法

このCT-ED変換の処理では、ユーザーはCT-ED変換テーブル以外に調整を行うことはでき

ません。XiO には輪郭に電子密度を強制的にもたせる機能(Force CT Dens)もあるのです

が、これも実は CT-ED変換データを登録した範囲内でしか設定できません。

ですから、金属などの高密度な物体が含まれている CT 画像を扱う場合、ふつうの CT-電子

密度変換テーブルでは、XiOは高密度部分に適切な電子密度を割り振ることができません。

では、高密度な物体を含んだ CT 画像を正しく取り扱うにはどうしたらよいのでしょうか。変換

処理(4)が行われないよう、高密度に相当するデータ点を含んだ CT-ED変換データを用意す

るしかありません。しかし、高密度対応の CT-ED 変換データを使う際には、注意すべきこと

があります。この注意点について述べます。

【図 10 のように高密度を含む CT-ED 変換データを用意したとします。この変換データを用

いて画像を変換すると、離散化された相対電子密度は【図 11 になります。画像内の CT 値

は‐1500~14500 の範囲にあったとします。変換データの範囲内ですので変換処理(4)は行

われません。しかし、離散化処理された相対電子密度を拡大して見ますと、かなり粗くなって

いることがわかります。これではたとえ高密度物体をそれなりに正しく取り扱えたとしても、患

者さんの体組織で計算が微妙にずれてしまうかもしれません。

高密度物質に対応したCT-EDデータ

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

-1000 1000 3000 5000 7000 9000 11000 13000 15000 17000

CT値

相対電子密度

【図 11】高密度物質

に対応できる CT値-電

子密度の変換曲線で

す。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 12 -

このような事態は、高密度物質対応の CT-ED 変換テーブルを用い、なおかつ CT 画像の中

に非常に CT値の高いボクセルがある場合には必ず起こります。ですから高密度な物体を体

内に含んでいる患者さんの治療計画をするときは、

1) どうしても金属部分を避けて治療できないので、体組織の線量計算の精度低下は

許容することにして、高密度対応用の CT-ED変換テーブルを使う。

2) 体組織の線量計算の精度低下は許容できないので、なんとか金属部分をはずして

治療することにして、通常使っている登録範囲の CT-ED変換テーブルを使う。

の2つの選択肢から1つを選ばなければなりません。

もし 1) の場合に相当するケースがあると思われた場合には、高密度対応の CT-ED 変換デ

ータも用意しておいて、治療計画時の状況に応じて通常範囲用と高密度用を使い分けるとよ

いのではないでしょうか?

また、ファントムを撮影することで測定される CT 値は偏差を持ちますので、その偏差と離散

化幅の荒さを見比べることで、線量計算における妥当性を検討することができます。CT-ED

変換データの使い分けが必要かどうかの目安としてください。

【図 12】高密度対応のテーブ

ルで離散化すると、水付近の

相対電子密度が粗くなってしま

います。

高密度物質がある場合

0.95

0.975

1

1.025

1.05

-100 -50 0 50 100

CT値

相対電子密度

離散化前

離散化後

の相対電子密度

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

-1000 1500 4000 6500 9000 11500 14000

CT値

相対電子密度

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 13 -

もうひとつ注意点があります。離散化処理した相対電子密度が粗くなったことにより、最小密

度が 0.00 と計算される場合があります(図 12)。これは登録する CT-ED 変換データの電子

密度最小値を 0.01 としているときです。登録最小値を 0.02 にすれば回避できます。密度

2.00以下の場合は最小値が 0.01でも特に問題ありません。つまり、通常範囲用は 0.01、高

密度用は 0.02 とするのがひとつの妥協策だと考えられます。

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

-1100 -1050 -1000 -950 -900

CT値

相対電子密度

離散化処理前

離散化処理後

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

-1100 -1050 -1000 -950 -900

CT値相対電子密度

離散化処理前離散化処理後

【図 13】高密度物質を考慮した CT-ED 変換テーブルを登録した時の、スケール後の最小電

子密度 (CT 値-1000 付近を拡大した図)。この例では電子密度の分解能が 0.026 なので、

電子密度 0.01 は四捨五入されて 0 の扱いになってしまい、線量計算がおかしくなってしまいま

す。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 14 -

XXiiOO のの WWeeiigghhtt PPooiinntt ととはは??

XiOにおけるWeight Point とは、そのビームの投与線量を指定するための点です。XiOでは

線量計算のほとんどのプロセスで線量分布を相対値で取り扱っています。線量計算の最後の

プロセスで初めて、Weight Point の線量が指定した値になるように線量分布全体を正規化し

て、線量分布を絶対値に変換し、MU値を決定します。

Weight Pointは可能な限り腫瘍の中心部に置くべきです。また、線量計算の精度を保つ上で、

Weight Point を置くべきではない領域も存在しますので、注意しなければなりません。 ※詳

しくは後述します。

◆ 相対線量指定と絶対線量指定

初期のバージョンの XiO(FOCUS3.0 以前)では相対線量指定(Relative Dose Weighting)

によって線量を指定していましたが、尐し分かりづらかったため、その後のバージョンでよりシ

ンプルで分かりやすい絶対線量指定(Absolute Dose Weighting)が導入され、こちらが基本

の線量指定モードとなりました。回転照射や IMRTを行う場合には絶対線量指定モードである

必要があります。特に理由がない限り、絶対線量指定モードでの治療計画を行うことをお薦

めします。

【図 14】 この例では、AP方向と PA方向とからの対向 2門の照射をしています。

2門とも同じ位置をWeight Point(赤い丸と十字で示されています)とし、それぞれが

1000 cGyを投与するように指定しています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 15 -

相対線量指定モードの場合は、ビームごとの weight は相対値で指定(例えば、ビーム 1 が

1000、ビーム2が500というように)し、その後にある場所を指定してそこに入る総線量と分割

数をプルダウンメニューから[Dose]-[Time/MU]で、cGy単位で指定する方式です。

絶対線量指定モードの場合は、ビームごとの weightそのものを cGyで指定(例えば、ビーム

1が 1000cGy、ビーム 2が 500cGy というように)します。この場合に、ビーム全体の MU 値

を同じ割合で増加・減尐させてある場所に入る線量を変更するためには、プルダウンメニュー

から[Dose]-[Weight]-[Rescale (Prescribe) Beam Weights]を選択します。

相対線量指定と絶対線量指定との切り替えは 2 ヶ所で行えます。初期設定はトップウィンドウ

から[Setting]-[Plan Defaults]-[Calculation Defaults]-[Teletherapy]で変えられます。各

治療計画においては、治療計画の作成時に[File]-[New Teletherapy Plan]で行います。一

度作った治療計画の線量指定モードを変更することはできません。

【図 15】Weighting Modeを設定する二つのウィンドウ

(左)トップメニューからデフォルト設定を変更するためのウィンドウです。

(右)新しい治療計画の作成を始める際に現れるウィンドウで、個々の治療計画ごとに

変更したいときはこちらを使用します。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 16 -

◆ Weight Pointを置いてもよい場所

Weight Pointは

線量が高い 線量勾配がゆるい

不均質の境界や体表面から遠い

といった条件を満たす点に置かなくてはいけません。このような領域以外、つまり

線量が低い 線量勾配がきつい

不均質の境界や体表面から近い

などの領域では線量分布計算に大きな誤差を引き起こす可能性があり、線量の正規化にお

いてその誤差が反映され、不正確なMU値を算出する要因になります。

Weight Pointは標的の中央付近に置くのが原則ですが、例えば X線の場合では、体表面の

非常に浅い位置にある腫瘍や、乳房の術後照射などでは、不均質が標的のごく近くにあるこ

とから、すべての条件を満たせる点が存在しないかもしれません。とは言え、そのような場合

でも不均質補正をONにしてConvolution / Superposition法で計算している限り、XiOのMU

計算の方が手計算よりも信用できると考えられます。

【図 16】Weight Pointを置くべきではない領域の例

ビルドアップ領域は絶対に避けなければいけません。照射野の端にも置くべきでは

ありません。照射野端から 2cm 以上離して置くことが望ましいのですが、例外として

小さいビームを利用している際には2cm離すことができない場合がありますから、こ

れはあくまでも目安です。不均質、たとえば胸壁の近くや、接線照射における体表面

などの近くも、不均質補正が大きく効いている領域なので、Weight Pointを置くべき

ではありません。

ビルドアップ領域 不均質の近く

照射野の端

(2cm がメド)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 17 -

CCoonnvvoolluuttiioonn // SSuuppeerrppoossiittiioonn アアルルゴゴリリズズムムととはは??

XiO では、Clarkson アルゴリズムのほかに Convolution アルゴリズムやその発展形である

Superposition アルゴリズムを使うことができます。これらのアルゴリズムについて完全に理

解することは容易ではありませんが、それぞれのアルゴリズムがどのような特徴を持ち、どの

ような場合に使用すべきか(あるいはすべきではないか)ということは、治療計画を立てる上で

大切な要素です。

ここではまず Convolution と Superpositionの共通の性質について「Convolutionアルゴリズ

ムとは?」として記述し、続いて、それらの違いについて述べます。

◆ Convolutionアルゴリズムとは?

Convolutionアルゴリズムでは、基本となる二つの線源データを計算の出発点としています。

一つは、エネルギースペクトルです。リニアックから出力される X 線は単色ではありません。

電子線を X線に転換する制動輻射の原理により、さまざまなエネルギーの光子が混ぜ合わさ

った状態で出力されています。

XiO は、PDD の測定からその X 線のエネルギースペクトルを遡って類推し、それをビームデ

ータとして保持しています。線量計算する場合にはこの保存されているエネルギースペクトル

から始めます。ふつう XiO の X 線ビームは、中心軸上のスペクトルと、それから tan=0.125

となる角度上のスペクトルとの2種類を持っていて、その間の角度では線形補間を行っていま

すが、モデリング上必要があった場合には 3 種類以上の角度でスペクトルを持つこともありま

す。

もう一つの出発点は、lateral 方向の分布です。これは最大照射野における対角方向の線量

プロファイル Off-Center Diagonal Ratio(OCD)を基にしています。Jaw コリメータを最大まで

開けて対角線上を測定しているため、この OCDは Jaw コリメータにおける散乱・透過の影響

を受けておらず、Primary Collimatorを通過した後のビームプロファイルをよく反映しているか

らです。XiO の Convolution アルゴリズムでは、ピーク深付近での対角プロファイルを縮小し

て、線源位置の下流側(コリメータの上流側)に射影し、それを計算上の線源として以降の計

算を行います。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 18 -

0 1 4 5 6 3 2 エネルギー

(MeV)

光子の個数

(フルエンス)

【図 17】Source File Maintenanceにおいてエネルギースペクトルを設定する画面で

す。これは 6MVの場合で、黒が中心軸上、茶が tanθ=0.125でのスペクトルを表してい

ます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 19 -

◆ ビームグリッドと TERMA

XiO ではどのアルゴリズムでも、ビームグリッドというマトリクスの上で計算を行います。これ

は線源から放射状に伸びるファンライン(fanline)と、中心軸と垂直に引かれたデプスライン

(depthline)からなる3次元の四角錐状のマトリクスです。電子密度グリッドはこのビームグリ

ッド上に写しこまれて、この上で不均質補正を行うこととなります。

【図 18】XiO における Convolution /

Superposition のエネルギースペクトルの

空間分布の模式図です。データとしては中

心軸上(黒)と、tanθ=0.125(茶)の両方を

持っています。tanθ=0.125 ということは

25cm×25cm の照射野のコリメータ端のス

ペクトルを表していることになります。この

間の角度のスペクトルは、中心軸上のスペ

クトルと、tanθ=0.125 のスペクトルとを、線

形に補間して作ります。

tan=0.125

100cm

12.5cm

スペクトル成分

【図 19】ビームグリッドの模式図

線源を通るファンラインと、ビーム軸に

垂直なデプスラインとで、ピラミッド状

の四角錐の格子を形成しています。

fanline

depthline

線線源源

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 20 -

このファンラインに沿って、XiOは X 線の各エネルギー成分についてその減弱を計算します。

ここで計算されるのは TERMA(Total Energy Released in unit MAss)という値で、すなわち

その単位質量で光子が失ったエネルギーを示しています2。具体的には質量減弱係数にエネ

ルギーフルエンスを乗じたもの )(),(),(

hrhrhT

となります。

TERMAの計算では患者体内の不均質を考慮しています。ファンラインに沿ってTERMAを計

算していくときに、電子密度をたどっていってそれに比例した量の TERMA を発生させていき

ます。またファンラインが患者の体輪郭を横切らない場合は、そのファンラインについては計

算では考慮されません。

この TERMAの計算は、Convolution と Superposition では共通の計算方法を採用していま

す。前述の通り TERMAは X線の各エネルギー成分について計算されます。例えばエネルギ

ースペクトルが 0.25MeV 単位で記述されている場合の 6MV のX 線というのは、24個の単

色 X 線の重ね合わせで表現されることになります。そのそれぞれに対して初期フルエンス分

布(OCD から作られます)のとおりに角度分布を仮定し、それぞれのファンラインがコリメータ

や MLC を通り抜けるかどうかを判定した後、そこからファンラインに沿って減弱の様子を計算

していくことになります。

2 名前としては TERMAと KERMA(Kinetic Energy Released in unit MAss)は良く似ています。KERMAは物質

中の荷電粒子(つまり電子)にのみ付与されたエネルギーを表します。TERMAはそれに加えて、コンプトン散乱で

生じた二次光子のエネルギーも含んでいます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 21 -

◆ カーネル(kernel)

TERMA の値が示しているのは、光子線がある1点(「反応点」)で失ったエネルギーです。し

かしそのエネルギーはさまざまな物理的過程を経て、反応点とは異なる場所に吸収されま

す。

カーネルとは、ある単一エネルギーの光子が、特定の方向からある反応点で反応を起こし、

ある単位量のTERMAを放出した際に、実際にはそれが反応点の周囲でどういう吸収線量の

分布を作るかを示した3次元的な配列で、あらかじめ Monte Carlo 法で計算したものを、XiO

内に用意してあります。

TERMA とカーネルを重畳積分(convolute)することによって全体の線量分布を再現する、と

いうのが convolution(や superposition)アルゴリズムの基本的な原理です。

エネルギー

フルエンス

初期フルエンス分布

(OCDを基にしています)

【図 20】TERMAの計算の模式図

TERMA はまるごとの X 線に対してではなく、そ

の中のエネルギー成分ごとに個別に計算されま

す。

(上)エネルギー成分のうち、ここでは赤、オレン

ジ、緑、空色の 4色に着目します。

(右上)初期フルエンス分布の形にしたがって、フ

ァンラインの強度を決めます。

(右下)患者体内でそれぞれのエネルギー成分ご

とに TERMAを計算していきます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 22 -

TERMA の計算がエネルギー成分ごとに行われるのに対応して、カーネルのデータもそれぞ

れのエネルギー成分ごとに何種類も用意されています。すべてのエネルギーに対して

TERMA の計算が終わると、TERMA に比例した強度の単色エネルギーカーネル

(monoenergetic kernel)が加算されて、連続エネルギーのカーネル(polyenergetic kernel)

となり、その後に重畳積分が行われます。

ユーザーに意識されることはあまりありませんが、ある一つのエネルギー成分に対しても、内

部的には 2 種類のカーネルデータが保持されています。例えばある領域でコンプトン散乱を

起こした場合、反跳した電子と散乱した光子はどちらも反応点からある程度の距離を飛び、そ

の過程である広がりに対してエネルギーを附与します。このとき反跳した電子が作るエネルギ

ー附与が primary dose deposition kernel、散乱した光子が二次、三次の反応を経て電子に

エネルギーを与えることによるエネルギー附与が scatter dose deposition kernel です。この

二つを別に積算していくことによって、Convolution アルゴリズムによる計算結果からファント

ム散乱係数 Spを求めることができます。これは XiOで Block Equivalent Square と呼ばれる

不定形照射野の実効正方形サイズの算出に使われます。

【図 21】図示化されたカーネル

無限に細い X 線が上から入射し、ある1点

(「反応点」)で反応した、と仮定すると、そこ

から発生した電子や二次光子がどのような

線量分布を作るかを、3次元的に数表化し

たのがカーネルです。カーネルは一般にこ

のような軸対称の涙滴型をしています。

XiO Inside

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◆ Convolution と Superpositionの不均質補正

Convolution アルゴリズムでは、ある程度の不均質補正が考慮されていますが、完全ではあ

りません。一方 Superposition アルゴリズムでは、よりつきつめた形で不均質補正を行ってい

ます。以下でその詳細をご紹介します。

ファンラインにそって TERMA を計算する段階までは、どちらも不均質を取り入れています。

TERMA はエネルギーフルエンスに質量減弱係数を乗じたものなので、あとから密度を掛け

算すれば、反応点に附与されたエネルギーを求めることができます。

その附与されたエネルギーに比例した分だけカーネルを重畳積分していくのですが、ここに二

つのアルゴリズムの違いがあります。Convolution アルゴリズムにおけるカーネルは、体内の

どこに反応点があろうともまったく同一な形のものを使います。一方、Superposition アルゴリ

ズムにおけるカーネルは、反応点の周囲の不均質に応じて変形します。

例えば肺のすぐ近くに反応点があった場合、Convolution のカーネルはまったく変形せず、保

持されたカーネルデータを FFT の手法で附与されたエネルギーと重畳積分していくだけです

が、Superposition の場合は、反応点からカーネル内の各座標までの実効厚さを元にして密

度スケーリングを行います。したがって、例えば【【図 21】のように、カーネルが低密度領域に

踏み込んでいるときは、密度が薄い分だけ、カーネルは遠くまで引き延ばされます。

しかし実際に計算された線量分布はもう尐し複雑な様相を呈しています。【図 22はその一例

です。低密度領域ではカーネルが引き伸ばされるために lateral 方向における等線量曲線の

間隔が広くなりますが、ここではその影響で照射野外へと線量が染み出しています。その分

照射野内の低密度領域での線量は Convolution より小さくなります。また低密度領域で線量

が減った結果として、通常密度領域へ戻る場所では、再ビルドアップが正しく目立つようにな

ります。

言い換えると、不均質補正の影響を Convolutionはファンラインに沿った方向だけで処理して

しまうのに対し、Superpositionはすべての方向を含めて処理しているのです。

それほど重要ではありませんが、XiOの内部動作に関して 2点付記しておきます。

光子が進行する向きはファンラインに平行ですから、本来であればカーネルを重畳積分

していく際には、前もってカーネルをファンラインの向きに傾けておかないといけません。

しかしこのカーネルを傾ける処理は計算においては大きな負荷となるために、XiO では

採用されませんでした。XiO が行っている方法はカーネルを傾けないまま重畳積分を行

った後、全体の線量分布を近似的に補正する方法です。これは中心軸付近では非常に

よく作用しますが、ペナンブラ領域ではほんのわずか誤差が残ってしまいます。3

3 Reference Libraryの Implementation of the FFT Convolution and Superposition Dose Calculation

Algorithmの P9を参照してください。

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Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 24 -

Convolution 用のカーネルは直交座標で、Superposition 用のカーネルは極座標で表

現されます。カーネルを直交座標で記述しておくと、重畳積分には FFT が利用できるの

で計算速度では有利ですが、カーネルに対して回転や変形などの処理はしづらくなりま

す。したがってカーネルの回転や変形が生じない Convolutionでは直交座標、密度スケ

ーリングによる変形が生じる Superpositionでは極座標が採用されているのです。

【図 22】Convolution と Superpositionの各アルゴリズムにおけ

るカーネルの振る舞いの模式図です。Convolutionでは反応点が肺

近傍にあってもカーネルは変形しませんが、Superposition では反

応点が肺近傍にあると、肺に踏み込んでいる部分が変形していま

す。

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◆ Superpositionアルゴリズムの2種類の実装について

XiO に実装されている Superposition 法には二通りあります。通常の Superposition と、

Fastsuperpos と呼ばれている高速版です。この二つは手順としてはまったく同一ですが、使

っているカーネルデータの解像度が異なります。前述の通りSuperpositionアルゴリズム用の

カーネルデータは、球面座標(, , r)によって記述されています。ここではが天頂角、が方

位角、rが動径となります。通常の Superpositionが使うカーネルは、天頂角 16個・方位角 8

個の計 128 方向へのデータを持っています。イメージ的には、一つの反応点から全方向に放

射状に発生する散乱線の分布を、128本に離散化して保持している、ということになります(散

乱線自体は軸対称ですから、カーネルデータのうち 8 個の方位角に関しては同じ値が入って

いることになります)。

一方、Fastsuperpos が使うカーネルは天頂角を 6 方向しか持っていません。Fastsuperpos

のカーネルが発生させる散乱線の本数は Superpositionの半分以下ということになります。

【図 23】水等価ファントムの中に相対電子密度 0.2の低密度領域(左右の正方形)を作って、

照射野 5cm×5cm の 6MV X線を Convolution(左)と、Superposition(右)で計算した図で

す。

Convolution では深さ方向にのみ不均質を考慮したような線量分布になっています。一方、

Superposition では、カーネルが引き伸ばされたことによって 10%、20%の等線量曲線が膨ら

んでいますが、そこで沈着したエネルギーを補うために、低密度領域での線量はおおむね尐な

くなります。また 60%の等線量曲線を見ると、再ビルドアップがおきているのが分かります。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 26 -

天頂角

ビーム

入射方向

相互

作用点

方位角

対称軸

1

2

3

4

5

6

8

7

【図 24】Superposition カー

ネルは左のような球座標系を

使って数表化されています。こ

の図は天頂角 8 方向の例を示

し て い ま す が 、 実 際 の

Superpositionは天頂角 16方

向、Fastsuperpos は天頂角 6

方向にデータを持っています。

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XXiiOO ににおおけけるるググリリッッドドととはは??

XiOでは3次元空間に対応する配列をグリッド(grid、格子)と呼ぶことがあります。

ここでは代表的な 3種類のグリッドをご紹介します。

◆ 電子密度グリッド(electron density grid)4

これは、CT画像を低解像度化し CT-電子密度変換を行って得られたものです。電子密度グリ

ッドの1つの格子の大きさは、CTピクセルの整数倍で、1~2mmになるように調整されていま

す。

◆ ビームグリッド(beam grid)

4 「XiOは CT画像になにか処理を加えてから計算に使うのですか?」の節で詳しく述べています。

【図 26】XiOで使われているさまざまなグリッドの模式図

(左上)電子密度グリッドは CT 画像から作られた3次元配

列で不均質を表しています。

(右上)ビームグリッドは線量計算に使われるピラミッド型の

3次元配列です。

(右)計算グリッドは線量分布を格納する3次元配列で、こ

の解像度はユーザーが指定することができます。

電子密度グリッド

計算グリッド

depthline

線線源源

fanline

ビームグリッド

【図 25】

XiOで使われているさまざまなグリッドの模式図

(左上)電子密度グリッドはCT画像から作られた3次元

配列で不均質を表しています。

(右上)ビームグリッドは線量計算に使われるピラミッド

型の 3次元配列です。

(右)計算グリッドは線量分布を格納する 3 次元配列

で、この解像度はユーザーが指定することができます。

電子密度グリッド

計算グリッド

depthline

線線源源

fanline

ビームグリッド

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 28 -

ビームグリッドはそれぞれのビームの中心軸に沿って定義されるグリッドです。線量計算の前

半のステップはこのビームグリッド上で行われます。電子密度グリッドがまずビームグリッド上

に写しこまれ、その情報を元に不均質補正をしながら、線量分布を計算していきます。

ビームグリッドの特徴は、直方体状の格子ではないところです。線源から放射状に伸びるファ

ンライン(fanline)と、中心軸と垂直に走るデプスライン(depthline~実際には線ではなくて面)

とで構成されているビームグリッドは、格子がピラミッド状に組まれています。

◆ 計算グリッド(calculation grid)

ユーザーがもっともよく目に

するのは、計算グリッドで

す。

これは計算された線量分布

を表示・解析・保存するため

のもので、ビームグリッド上

で計算された線量分布が今

度はこの計算グリッドに移し

こまれます。多くの場合、こ

のグリッドを細かくすれば、

計算時間は長くなりますが、

高解像度な線量分布が得ら

れます。

計算グリッドの解像度は、

Teletherapy のプルダウンメニューから[Dose]-[Calculation]-[Setting]を選択し、上図のウ

ィンドウを開いて設定します。

◆ ビームグリッドの間隔の決定方法

ビームグリッドのファンラインとデプスラインの間隔は不等で、かつ可変です。Clarksonアルゴ

リズムでは、もともとある間隔で引かれたファンラインとデプスラインが決められていて、これ

に若干のファンラインとデプスラインが追加されます。Convolution と Superposition アルゴリ

ズムでは、ファンラインとデプスラインの間隔は計算グリッドの間隔とおおよそ近くなるように

自動的に設定されます。以下にその詳細を示します。

Clarkson アルゴリズムはビームデータとして、実測した PDD を近似・補間して作成した

計算 PDD (computational PDD )と、プロファイルを近似・補間した計算 OCD

(computational OCR)を保持しており、これを計算に利用しています。これらのサンプリ

ング間隔がそのままファンラインとデプスラインの間隔になります。計算 PDD の間隔は

【図 27】

計算グリッドの設定

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 29 -

通常 0.2cm、計算OCRのサンプリング間隔は照射野内では 0.2cm~0.25cm程度で、

照射野外ではより大きな間隔を持っています。

実際に Clarksonアルゴリズムで計算を行う際には、これにまず線源とWeight Pointを

結ぶファンラインが1本追加されます(これを Weight fan と呼びます)。その後にデプス

ラインが三つの深さ=Weight fanの入射点・Weight fan上の基準深・Weight Point自

身を通るように、計 3 本追加されます。さらに補償フィルタを使っている場合にはその深

さにもデプスラインが追加されます。

上記から分かるように、Clarksonアルゴリズムでは線量分布計算の精度は XiOが保持

している Computational PDD/OCR のサンプリング間隔で決められてしまいます。です

から計算グリッドの間隔を 2mm 以下にしたとしても、実効的には線量分布の空間分解

能は高くなりませんし、計算グリッド間隔を非常に大きく(例えば 1cmに)したとしても、そ

れで時間が短縮される処理はごく一部だけ、ということになります。

一方、Convolution アルゴリズムと Superposition アルゴリズムでは、ビームグリッドの

間隔の目安となるのは、ユーザーが指定した計算グリッドの間隔です。したがって、計算

グリッドを細かくすればするほど、多くのファンラインとデプスラインが引かれることになり

ます。

ファンラインは、Weight Point が存在する深さで、計算グリッドのサイズとほぼ同じ間隔

を持つように引かれます。コリメータ端を通過するファンラインは必要で、その間を等間

隔にファンラインで割っていくために、ファンライン間隔と計算グリッドサイズは厳密には

同じになりません。また、コリメータ外にもファンラインは引かれます。Minimum TERMA

Extent あるいは計算領域外縁までの距離のどちらか短い方まで、照射野内と同じ間隔

で引かれますが、尐なくとも片側 4本は必ず引かれます。

デプスラインも計算グリッドとおおよそ同じ間隔になるように配置されます。Weight

Pointを中心として、Weight fanが計算領域に入射する面と、計算領域から出て行く面と

で挟むように、その間をデプスラインで均等に割っていきます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 30 -

XXiiOO がが出出力力すするる TTMMRR 表表ににつついいてて

ご施設の要望に応じて、ビームデータの納入時に TMR表を添付させていただいていることが

あります(最近では原則として添付しています)。

XiOが実際に持っているのは、最大深で正規化した TMR ではなく、基準深(10cm)で正規化

した TPRです。TPR(や TMR)は PDD とファントム散乱係数 Sp(PSCF)から算出することが

できます。以下でその導出をご紹介します。

【図 27 では、3 通りの測定を示しています。ここでは f=SSD=線源‐アイソセンタ距離

【図 29】

PDD と TPRの換算の模式図

f = SSD = 線源-表面間距離

f+d = SCD = 線源-検出器間距離

do = 基準深 (=10 cm 又は dmax)

r = 照射野のサイズ

D1、D2、D3 = それぞれのセットアップで測定した線量

ro

rd rd

f=SSD

d

f+d

do

do

f

r r

Config. 1 Config. 3 Config. 2

SSD Setup SSD Setup SCD Setup

= 測定点

【図 28】XiO の SFM モジュール内の

TPR表示画面。

SFMから[Teletherapy]をクリックし、

MachineIDを選択したあと、

[Display/Output]-[TPR]と順にクリックし

て、[Computational TPR(d)]のタブを開

きます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 31 -

=100cm と考えると分かり易いです。また d0は基準深です。PDD は SSD 一定で測定した深

部線量分布ですから、Config.3 を基準深測定として“Config.1÷Config.3”を見ていることに

なります。本来 PDD はピークが 100 となるように正規化されるものですが、本項に限って

PDDは基準深で 100 となるように正規化されていますので、ご注意ください。

3

1

D

D

100

f)r,PDD(d,

一方、TPR は SCD 一定で測定した深部線量分布ですから、Config.2 を基準深測定として

“Config.1÷Config. 2”を見ていることになります。ここで注意しなければならないのは、

SSD=線源‐アイソセンタ距離とした場合、この TPRは SAD Setupではなく、より遠い点で測

ったものになる、ということです。

2

1d

D

D)rTPR(d,

つまり、Config.2で測定した線量 D2と Config.3で測定した線量 D3との間の換算式を作るこ

とで、PDD と TMR とは相互に換算可能となります。この D2と D3の換算式は以下のようなも

ので、逆自乗則と深さ d0で測定したファントム散乱係数 Sp(PSCF)が含まれます。

2

0dp

0p

2

3

df

df

)(rS

)(rS

D

D

この三つの式をまとめると、

2

0dp

0p

2

3d

df

df

)(rS

)(rS

100

f)r,PDD(d,

D

D

100

f)r,PDD(d,)rTPR(d,

となります。これが PDD と Spから TPR を求めるときの換算式です。

この式は基準深d0をどのようにとっても有効な式です。d0=dref=10cmとすれば、10cmを基準

深とした TPR、d0=dmax(ピーク深)とすれば、TPRの特別な例である TMRが求められます。

ここで注意が必要なのは、左辺の TPR の照射野である rdと、右辺の PDD の照射野である r

とは異なるものだということです。rdと r の関係は深さ d に依存しています。つまり例をあげれ

ば、3×3の PDDから 3×3の TPRが得られるわけではない、ということです。

ちょっと分かりづらい計算なので、実例をもとに計算をしてみましょう。デモデータの Siem06x

という X線のビームデータに対して、TPR(d=14cm, rd=8x8)を求めるとします。3通りのセット

アップは次のようになります。

ここで Config.1÷Config.3 は PDD(ただし 10cm 深を 1 として正規化したもの)であり、

Config.1÷Config.2は TPRになっていることを確認してください。

わたしたちが知りたいのは TPR(d=14cm, rd=8x8)であるのですが、そのときこの3つのセット

アップにおけるジョーコリメータの開度は、実は 8x8ではなく 7.02×7.02 となっています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 32 -

ジョーコリメータの開度はアイソセンタ面で定義されます。PDDは SSD Setupで測りますから、

PDD で言う照射野サイズはジョー開度と同じです。しかし TPR で言う照射野サイズ、また Sp

で言う照射野サイズというのは、測定点のある面で定義されるものです。この図で言うと

f=100cmにおける照射野サイズ rは7.02×7.02、d0=10cmにおける照射野 r0は7.72×7.72

となります。

[cm]...7192.7)114/110(][cm8

[cm]...0175.7)114/100(][cm8

0

r

r

さて実際に値を代入すると、

....8513.0

110

114

973.0

969.059.79

01100

14100

(8.0)S

(7.72)S

001

100cm)fcm,02.7r14cm,PDD(d

8cm)r14cm,TPR(d

2

2

p

p

d

XiOが内部で換算した TPR(d=14cm, rd=8x8)は 0.851ですから、合っています。上でお分か

りのように、この計算を行うには端数の照射野サイズでの PDDと Spが必要になりますから、

Excelなどで変換プログラムを作るのはすこし面倒かもしれません。

※XiOのビームデータは、アップロードした測定 PDDデータそのもの(Raw PDD)と、これを補

間して、切りのよい深さで揃うように処理したデータ(Computational Data)の2種類がありま

す。

上のようにして求めた TPRから TMRを求めるには、単純に規格化をするだけでよいです。

)r,TPR(d / )rTPR(d,)rTMR(d, dmaxdd

【図 30】PDD と TPRの換算の例。求めたいのは

TPR(d=14cm, rd=8x8) です。

= 測定点

ro=7.72cm rd rd=8cm

100cm

14cm

114cm

do=10cm

do=10cm

100cm

r=7.02cm

Config. 1 Config. 3 Config. 2

SSD Setup SSD Setup SCD Setup

r=7.02cm

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 33 -

XiO では、基準深を 10cm とすることを推奨していますが(標準測定法でいう「基準点」とは異

なる概念であることにご注意ください)、これには理由があります。リニアックから照射される X

線の中には、フラットニングフィルターやコリメータを起源とする電子が混入しており、これらの

電子はおおよそピーク深付近まで到達します。線量分布計算においては、ファンラインに沿い、

逆自乗則に従う X 線のみをはじめに考慮して、混入電子を補正として扱う方が正確な計算が

できるため、混入電子がほぼ存在しないと思われる深さとして 10cm を選んでいます。

XiOが保持している TPRについて注意すべきことが一つあります。この TPRは深さ方向と照

射野サイズ方向の両方で補間されています。例えば 3cm×3cm 以上のサイズで PDD 測定

が行われている場合、1cm×1cm の TPR は 3cm×3cm と 4cm×4cm の TPR から推測し

て求めています。したがって 3cm×3cm や 4cm×4cm などの小照射野の PDDの測定が正

確でなかったり、ノイズが乗っていたりすると、1cm×1cmなどの TPRにはその誤差が増幅さ

れて乗ってしまい、通常非常にノイズの大きいガタガタな曲線になります。ですから、もし非常

に小さな照射野のTPRをXiOが出力した表の上で読むことがあった場合には、それは決して

正確な値ではなく、大きなノイズを含んでいるかもしれないということを、知っておかなければ

いけません。

逆に言えば、もし 1cm×1cm などの TPR にとても大きなノイズが乗っていたら、3cm×3cm

や4cm×4cmなどのPDDを、よりよい精度で測定する必要があるかもしれない、ということで

す。

【図 31】XiO が保持している TPR 表をグラフ化したものです。0cm×0cm から

40cm×40cmまで 41本のグラフが表示されています。小さな照射野のTPRの

上に、測定ノイズが増幅されて乗っています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 34 -

XXiiOO がが出出力力すするる SSSSDD ににつついいてて

XiOで Teletherapyを使って治療計画を立てた際、Source Index(Teletherapyのプルダウン

メニューから[Reports]-[Source Data]を選択します)で、使用しているビームの主なパラメー

タを見ることができます。SSD も(どういったセットアップであろうと)見ることができますが、

Source Index中には 2種類の SSDが表示されています。

それぞれ「SSD」と「Wt fan SSD」という名称になっています。この二つはどちらもいわゆる

SSDですが、実際に意味している距離は微妙に異なります。これらの幾何学的な説明が【【図

31】でされています。

「SSD」は通常使われる意味の、中心軸に沿って線源から体の表面まで測った距離です。一

方「Wt fan SSD」というのは、中心軸ではなく線源とWeight Pointとを結ぶファンラインに沿っ

て線源から体の表面まで測った距離を、中心軸に射影した長さです。

問題は、「SSD」と「Wt fan SSD」とで、「体の表面」の意味が違う、ということです。「SSD」は

幾何学的に厳密であることが望ましいですから、人間が操作して描いた多角形の体輪郭が体

の表面となります。一方で「Wt fan SSD」の方は XiO の線量計算に使われるものですから、

データ構造と無矛盾でなければいけません。つまり約 2mm の直方体の集合で作られた

Virtual Patient5の表面が体輪郭になります。

Weight Pointとアイソセンターが同じ点であれば、SSDとWt fan SSDは同じ直線の上で測ら

れるものですが、この体輪郭の定義の違いからWt fan SSDが 1mm程度短くなることがある

のです。

5 「XiOは CT画像になにか処理を加えてから計算に使うのですか?」を参照してください。

【図 32】Index ウィンドウに

おける SSD の表示の例で

す。

斜線の左側が「SSD」、右側

が「Wt fan SSD」となってい

ますが、Beam Number 3

のビームではこの両者が食

い違っています。

SSD/Wt fan SSD

82.8/82.7

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 35 -

【図 33】(左) CAX SSDはビームの

中心軸に沿って測った距離ですが、

Wt fan SSDはWeight fanに沿って

ひいた線分を、中心軸に射影した長

さです。

(下) CAX SSD は体輪郭まで、Wt

fan SSDは virtual patientの表面

までを測るので、同じ直線上にあった

としても距離が異なります。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 36 -

Source

Fan line

Central Axis

(CAX)

Surface

Wt fan SSD

Weight Point

(Wt fan SSD)fanline

A

【図 35】各 Depthの模式図

Physical Depth

XXiiOO がが出出力力すするる深深ささににつついいてて

XiOでTeletherapyを使って治療計画を立てた際、Source Data(Teletherapyのプルダウンメ

ニューから[Reports]-[Source Data]を選択します)で、使用しているビームの主なパラメータ

を見ることができます。Source Data(Indexウィンドウ中)のWeight Pointについて 2通りの

深さ(「Depth; skin」と「Effective; skin」)が示されています。

これらはWeight fanに沿って体の表面からWeight Pointまでの距離を測り、その距離をビー

ム中心軸に投影したものです。「Depth; skin」は物理深(Physical Depth)であり、体の表面か

らWeight Pointまでの幾何学的な距離を測ったものです。一方、「Effective; skin」は、体の表

面から Weight Point までの水等価深さ(Effective Depth)を示しています。以降、「Depth;

skin」を Physical Depth、「Effective; skin」と Effective Depth と呼びます。

◆ Physical Depth と Effective Depthの定義

XiO における Physical Depth と Effective

Depth の定義をご説明するため、線源から体

の表面までの Weight fan に沿った距離を

(Wt fan SSD)fanlineと呼ぶことにします(【【図

32】の Source から点 A までの距離)。(Wt

fan SSD)fanline をビーム中心軸に投影したも

のがWt fan SSD となります。

Physical DepthとEffective Depthは【【】のよ

うに(Wt fan SSD)fanlineから計算されます。

【図 34】Index ウィンドウにおける深さ

(Depth)の表示例。

weight pointの深さを示していますが、

「Depth; skin」と「Effective; skin」の 2

通りがあります。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 37 -

Physical Depthの場合は、線源からWeight Pointまでの距離を求めて(Wt fan SSD)fanline

を差し引きます。この距離をビーム中心軸に投影したものが Physical Depth となります。

Effective Depthの場合も同様に求めていますが、線源からWeight Pointまでの距離を算出

する際に、Patient File Maintenanceで設定した体輪郭(Wire contour)内では電子密度を考

慮して計算している点が異なります。

◆ 不均質補正を OFFにしたときの Physical Depth と Effective Depthの違い

水等価深さは、不均質補正が ONであれば電子密度グリッドを見てWeight fan上の電子密

度を積算して計算するのですが、不均質補正が OFF であれば患者の体の中はどこでも密度

=1 なので、物理的な距離と同じ値になるはずです。しかしながら、不均質補正を OFF にして

もこの二つの「深さ」の数値が違うことがあります。これは、線源からWeight Pointまでの距離

の算出方法が Physical Depth と Effective Depthで異なっているために生じます。Physical

Depthの場合、線源からWeight Pointまでの距離は、線源(点)とWeight Point(点)の間の

距離を座標から求めます。一方、Effective Depth の場合、前述の定義のように体輪郭内の

電子密度を考慮するために、電子密度グリッド上で計算しています。ボクセルは点と異なり大

きさをもっており、電子密度グリッド上での計算は最大1ボクセル分の誤差を生じる可能性が

あります。この、「点で算出する」と「グリッド上(ボクセル)で算出する」という算出方法の違い

が、不均質補正 OFFにおいて Physical Depth と Effective Depthに相違が生まれる原因と

なっています。

Source

Weight Point

Source

Weight Point

CAX CAX

A A

Physical Depth:

から を引いてCAXへ投影した距離 Effective Depth:

から を引いてCAXへ投影した距離

は体内での距離(水等価)を示している

【図 36】Physical DepthとEffective Depthの算出方法

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 38 -

◆ Clarkson と Convolution/Superpositionによる違い

前述の定義で考えると、Effective Depthや Physical Depthは計算アルゴリズムに依存しな

いはずなのですが、実際にSource Dataに表示される数値は計算アルゴリズムによって若干

異なることがあります。これは開発上の経緯の問題で、(Wt fan SSD)fanline の算出方法が

Clarkson と Convolution/Superposition で異なっていることが原因です。算出方法の一番大

きな違いは、以下に示すような端数処理の違いが挙げられます。

XiO Training Data に入っているデモプラン(Patient ID:Breast1、Plan ID:Tangents の

Beam16)を例に、Wt fan SSDなどがどのように変化するか見てみましょう(【図 35)。

【図 35 のビームを Clarkson と Convolution の二つの計算アルゴリズムで計算したとき

Source Dataに表示される各ビームのWt fan SSD、Physical Depth、Effective Depthを【表

1にまとめます。

【表 1】Source Dataにおける各ビームのWt fan SSD、Physical Depth、Effective Depth

※不均質補正あり(Pixel by Pixel)としています。

計算アルゴリズム Wt fan SSD[cm] Physical Depth[cm] Effective Depth[cm]

Convolution 91.8 8.2 8.7

Clarkson 92.2 7.8 8.5

6 XiOのバージョンによって上記のデモプランが入っていない場合があります。

【図 37】XiO(ver.4.50.00)のデモプラン(乳がんの接線照射)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 39 -

【表 1 より各ビームの Wt fan SSD、Physical Depth、Effective Depth は Clarkson と

Convolution で異なっていることが分かります。これは、前述の算出方法の違いにより(Wt

fan SSD)fanlineの値が異なっているためです。

(Wt fan SSD)fanlineは、電子密度グリッド上で計算されており、線源から空気以外のボクセル

にぶつかるまでの距離を積算して求めています。こうして求められた距離を中心軸に投影し

たものがWt fan SSD となります。電子密度グリッドは三次元配列のマトリクスであるため、座

標(x,y,z)が小数点となるような電子密度グリッドは存在しません。小数点を含むような x、y、z

の場合には、【【表 2】に示すように四捨五入、もしくは切り捨てによって処理しています。

【表 2】計算アルゴリズムによる電子密度グリッドの参照方法

計算アルゴリズム x y z

Clarkson 切り捨て 四捨五入 切り捨て

Convolution/Superposition 切り捨て 切り捨て 切り捨て

【表 2を見ると、ClarksonとConvolution/Superpositionで、y軸方向の処理が異なっている

ことが分かります。したがって、y=97.6のとき、Clarksonでは y=98の位置にあるグリッドが、

Convolutionでは y=97の位置にあるグリッドが参照されることになります(エラー! 参照元が

見つかりません。)。

上記のような XiO内での処理の違いが Clarkson と Convolution/Superpositionの二つのア

ルゴリズムで算出される Physical Depth と Effective Depthが異なる原因となっています。

z

y

Weight Point

96 97 98 99

y=97.6

y=97 y=98 y=99

x

y

z

Conv/Superのときは

y=97が参照される

Clarksonのときは

y=98が参照される

【図 38】電子密度グリッドの模式図

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 40 -

XXiiOO がが出出力力すするる等等価価正正方方形形ににつついいてて

XiOで Teletherapyを使って治療計画を立てた際、Source Index(Teletherapyのプルダウン

メニューから[Reports]-[Source Data]を選択します)で、使用しているビームの主なパラメー

タを見ることができます。Source Index中には等価正方形(equivalent square)について 2通

りの数値が示されています。

それぞれ「コリメータ等価正方形(Collimator Equivalent Square)」と「ブロック等価正方形

(Block Equivalent Square)」と名づけられています。

コリメータ等価正方形というのは、上下 2 対の Jaw コリメータが作っている直方形を、正方形

に換算したものです。これはよく知られている AP法によって算出されます。

等価正方形の辺長 = (面積) ÷ (周長) × 4

一方、ブロック等価正方形というのは、Jaw コリメータ以降の、MLCやブロックなどで整形され

た不定形な照射野に対応したものです。この等価正方形は幾何学的な概念ではありません。

つまり、開口部形状を読み取って計算するわけではなく、ある種の仮想的な計算を行って決

定します。したがって Clarkson と Convolutionでは計算方法が違い、結果も異なります。

【図 39】 Index ウィンドウ

における等価正方形の表

示の例

縦横のコリメータ開度に併

せて、コリメータ等価正方

形「Coll. Eq. Square」と、

ブロック等価正方形「Blk.

Eq. Square」の 2通りが表

示されています。

ブロック等価正方形はブロ

ックやMLCを考慮したもの

なので、コリメータ等価正方

形より小さな値になります。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 41 -

Clarksonアルゴリズムの場合

Clarksonアルゴリズムではまず、Weight fanが患者の体に入射する点に、入射面が平

らで均一な密度(電子密度 1.0)のファントムを仮想的に設定します。

このWeight fanが表面から20cmの深さに達した点を計算点とし、この位置に開口部の

形を射影します。この点で散乱成分(微分 SAR)の積分を行い、積算された SAR から

SAR 表を逆引きすることで 20cm 深での実効正方形を求められますので、それをビー

ムの照射野が規定されている深さ(100cm)に縮小(または拡大)して、最終的な等価正

方形を求めます。

ここで重要なのは、この SAR 積算は患者さんの体で行うわけではなく、そこに仮想的に

置いた水ファントムで行うということです。したがって、患者さんの体の輪郭や不均質な

どが変わっても、ブロック等価正方形の計算には影響がありません。

Convolution/Superpositionアルゴリズムの場合

Convolution アルゴリズムの場合は、仮想的に水ファントムを設置することはせず、そも

そもの患者さんの体の輪郭や不均質をそのまま使います。Weight fan上 10cm深(ある

いは基準深がもっと深ければその点)を計算点とし、この点における TERMAを求め、カ

ーネルを掛け算して、散乱成分を求めます7(このとき Convolutionであれば TERMAの

計算のみ不均質を考慮し、Superposition であればカーネルの変形に対しても不均質を

考慮します)。

7 「Convolution / Superpositionアルゴリズムとは?」に記述した通り、XiOはひとつのエネルギーの X線に対し

て primary dose deposition kernel と scatter dose deposition kernelの 2通りのカーネルを持っています。散乱

線が与える線量は scatter dose deposition kernelで表されており、全体に対する散乱線の割合から、定義に基

づいて Spを求めることができます。

【図 40】 Clarksonアルゴリズムにおけるブロック等価正方形の算出の模式図

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 42 -

一方、Source File Maintenance でビームモデリングをするとき、最後にそのビームを

validate するという作業がありますが、そのときに、そのビームの等価正方形と散乱成

分との関係を表す表が、ファントム散乱係数 Sp を参考にして作成されています。この表

と見比べることで、散乱成分の大小から等価正方形を求めることができます。これは 10

cm 深の値なので、それをビームの照射野が規定されている深さ(100 cm)に縮小(ま

たは拡大)して、最終的な等価正方形を求めます。

この場合はClarksonアルゴリズムのそれと違って、患者の体の輪郭や、(XiOで不均質

補正を ON にしていれば)体内の不均質によって、算出されるブロック等価正方形が変

わってきます。

ブロック等価正方形はどのように使われるのか?

Clarksonアルゴリズムの本質がこのブロック等価正方形です。XiOは上で述べたような

方法でブロック等価正方形を求め、そこから Sp を求めて MU を計算します。したがって

Source Data に表示されているブロック等価正方形の値は直接に MU 計算に影響しま

す。照射野サイズの関数であるその他のさまざまなパラメータ、つまりウェッジファクター

や、混入電子量の決定にも、ブロック等価正方形が使われています。

XiOの Convolution/Superpositionアルゴリズムの計算ではブロック等価正方形はMU

計算には用いられていません。Convolution/Superpositionアルゴリズムでは、

Convolution/Superposition アルゴリズムでのブロック等価正方形は、照射野サイズの

関数であるその他のさまざまなパラメータ、つまりウェッジファクターや混入電子量の決

定にのみ使われています。Source Dataには、そのビームでの PSCFの値を含んだ項

目が2つありますが、これは(TAR ベースの)手計算に対応して変換したもので、式の上

では分母分子で相殺されてしまうものです。

【図 41】Convolution アルゴリズムにおけるブロック等価正方形の算出の模式

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 43 -

Convolution/Superpositionアルゴリズムにおける等価正方形の不正確さ

Convolution アルゴリズムにおける等価正方形の計算は、水ファントムではなく、実際の

患者データの上で行われます。したがって、たとえブロックなり MLC なりの形状をまった

く同じとしたとしても、異なる患者データを使っていれば、異なる等価正方形を算出しま

す。これにより Convolution アルゴリズムが算出した等価正方形は、時として不適切な

数値となることがあります。

鍵となるのは、計算点、すなわちWeight Fan上 10cmの付近における不均質の度合い

です。たとえば計算点の近くに骨や金属があった場合、これらの高密度物質からの散乱

線がたくさん計算点に入ってくるために、Spが過大に見積もられることになり、等価正方

形も過大評価されます。逆に計算点の近くに肺野や体腔があった場合、計算点に入っ

てくる散乱線は尐なくなりますから、等価正方形は過小評価されます。X 線のエネルギ

ーが高ければ、散乱線も多くなるので、等価正方形の過大・過小の度合いも大きくなり

ます。

このような不適切な等価正方形の例をひとつあげます。

これは頭頚部の照射の例ですが、Jawで決定されるコリメータ等価正方形が6.38 cmで

あったのに対し、MLCで決定されるブロック等価正方形はたった 0.21 cm しかありませ

んでした。

CT 画像を見ても分かるとおり、Weight Fan が患者さんの体を横切る長さがそもそも

10cm以下しかありません。ですから計算点は患者さんの体を通過した後の体輪郭外に

置かれてしまい、直射線や散乱線の見積もりがまったく不適切になってしまうのです。

XiO の Convolution アルゴリズムの計算ではこの不確実性は大きく影響しません。ブロ

ック等価正方形は、たかだかウェッジファクターの決定と、混入電子量の決定に使われ

るに過ぎないからです。しかし上で示されているような不適切なブロック透過照射野をそ

のまま手計算による検算で使えば、当然おかしな結果になってしまいます。

手計算で使う等価正方形を求めるときには、かならず患者さんのデータそのものを使っ

たプランではなく、ビームを仮想の水ファントムに写しこんだ QA プランの上で行わなけ

ればいけません。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 44 -

9.13cm

【図 42】Convolution アルゴリズムにおいて、等価正方形の計算点が不適切

(Weight Fan 上、10cm 深の点は体外にあります)であるために、ブロック等価正方

形が誤って算出されています。しかし Convolution アルゴリズムではブロック等価正

方形は、ウェッジ係数補正のために使われているだけで、照射野係数としては使われ

ないので、MUにはほとんど影響がないのです。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 45 -

通通常常照照射射ににおおいいてて MMLLCC でで形形成成ししたたひひしし形形照照射射野野ににつついいてて((特特にに EElleekkttaa

治治療療機機のの場場合合))

放射線治療計画装置のコミッショニングを行う際に、いろいろな照射方法で MU 計算がどれく

らい実測と合致するかどうかを確かめる、ということは必須の項目です。この時にはシンプル

なケース、あるいは放射線治療計画装置のためのビームデータ測定と同じケースからはじめ

て、徐々に臨床的な照射方法に進めていくのが好都合です。

X 線を用いた放射線治療では現在、MLC が非常に大きな役割を占めています。しかしながら、

放射線治療計画装置のビームデータ測定として例えば照射野係数を測定しているとき、MLC

は必ずしも主体的な役割を担っているわけではありません。現在使われているリニアックと

MLCの組み合わせには以下のようなものがあります。

上下絞りの他にMLCを持つもの(Varian機)

照射野係数を測定するときは、上下絞りのみで照射野が作られ、MLC は関与

しません。

上下絞りの下ジョーがMLC を兼ねているもの(Siemens機)

照射野係数を測定するとき、MLC はモノブロックのジョーとして、上ジョーとい

っしょに照射野をつくります。

上下絞りの上ジョーがMLC を兼ねているもの(Elekta MLCi機)

照射野係数を測定するとき、MLC はモノブロックのジョーとして、下ジョーとい

っしょに照射野をつくります。

上下絞りがなく、MLCだけで照射野を作るもの(Elekta Beam Modulator機)

照射野係数を測定するとき、MLCのみで正方形を作ります。

このようにたくさんの様式のリニアックに対して、照射野係数をどのように測り、また計算に使

えばよいか、というのは、決して簡単なことではありません。

このセクションでは、対象を通常照射(非 IMRT)に限って、XiO の照射野係数の計算の仕組

みをご紹介いたします。

◆Scp = Sc×Sp

照射野係数を Sc,pと表記して、コリメータに由来する成分 Scと、ファントムに由来する成分 Sp

との積として、考えることがあります。(XiOではScp、Sc、SpをそれぞれTSCF、CSCF、PCSF

と表記することがあります)

通常照射の場合、XiO ではコリメータ散乱係数 Scはコリメータ等価照射野(ジョーコリメータの

開度)によって、ファントム散乱係数Spはブロック等価照射野(MLCやブロックの開度)によって

決定されます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 46 -

本来の定義に立ち戻りますと、実際には散乱線の主な発生源は平坦化フィルタですから、Sc

を決定する変数は、ファントム中の線量測定点から上を見上げた時に、平坦化フィルタを最も

大きくさえぎっているコリメータ(≒もっとも上流に位置するコリメータ)の開度、であるべきで

す。

同様にファントム散乱係数 Sp は、ファントム中でどのような体積が照射を受けているか、によ

って決定されますから、Sp を決定する変数は、アイソセンタ面への投影においてもっとも狭い

開口部を持っているコリメータの開度、であるべきです。

「Jaws-Jaws-MLC」という構成の Varian機においては

・下から見上げた時に平坦化フィルタを最もさえぎっているのはジョーです。

・もっとも狭い開口部を持っているのはMLCです。

ですから Varian機では照射野係数として

Sc (ジョー開度) × Sp (MLC開度)

を使用するべきです。そして XiOはこれに基づいた実装になっています。

【図 43】ファント

ム散乱の定義を表

す模式図

【図 44】Varian治療機におけるコリメータの模式図。水中での照射野(緑・実線)を決

めているのは MLC(紫)ですが、下から見上げて平坦化フィルタを最も大きくさえぎって

いる(青・点線)のは上コリメータ(赤)です。

治療機とファントム (横から見た図) 平坦化フィルタとコリメータ(下から見た図)

平坦化 フィルタ

Jaws MLC 水ファントム

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 47 -

一方、「MLC-Jaws-Jaws」という構成の Elekta機においては、

・下から見上げた時に平坦化フィルタを最もさえぎっているのは MLCです。

・もっとも狭い開口部を持っているのも MLCです。

ですから Elekta機では照射野係数として

Sc (MLC開度) × Sp (MLC開度)

を使わないといけません。しかしXiOの実装はVarian機の構成の通りですから、このような計

算にはなりません。

このルールに従えば、例えば上下2対のジョーの開度を 20x20、MLC の開度を 14x14 とした

とき、Varian機の MU計算で使う散乱係数は Sc (20)×Sp (14)で、一方 Elekta機の MU計

算で使う散乱係数は Sc (14)×Sc (14)です。しかし XiOはいずれの場合も Sc (20)×Sp (14)

で計算してしまいます。

例えば、Elektaの 6MXのビームにおいて Sc (14)=1.011、Sc (20)=1.026だったと仮定すると、

これによりおよそ 1.5%の出力に対する過大評価(= MUに対する過小評価)が生じます。

Elekta 機におけるこの誤差の大きさを左右する要因のひとつは、ジョーコリメータの開度

(Backup Jaw + Length Jaw の作る矩形)に比べて、MLCの作る照射野の開度がどれだけ

小さいか、です。通常照射ではこの比率が 50%を下回ることは多くないと考えられますので、

ひし形照射野における誤差はもっとも誤差が大きくなった場合の想定とお考えいただくことが

できます。(このセクションでお話しした仕組みはあくまで通常照射のときの話であって、IMRT

における計算方法はまったく別、ということを思い出してください)

【図 45】Elekta 治療機におけるコリメータの模式図。水中での照射野(緑・実線)を

決めているのは MLC(紫)ですが、下から見上げて平坦化フィルタを最もさえぎってい

る(青・点線)のも、MLCです。

治療機とファントム (横から見た図) 平坦化フィルタとコリメータ(下から見た図)

MLC 水ファントム Backup Jaw

Length Jaw

平坦化 フィルタ

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 48 -

もうひとつの要因は、おおよその照射野サイズです。Scは照射野が小さくなるほど勾配がきつ

くなりますから、小さな照射野ではこの影響は大きくなるものと考えられます。

XiO の実際のヘッド散乱の設計は、実はこれほど単純なものではありません。採用されてい

るのは、もっと複雑なモデルです。ですから、ここでお話したのはあくまで「定性的にはこのよう

に理解できる現象が起きる」ということであって、定量的な目安をお示ししているわけではあり

ません。例えば上の例(20x20 の照射野に対するひし形照射野)では 1.5%の過大評価と見

積もりましたが、実際には 2%を大きく超える誤差となることもありえます。

【図 46】典型的な Elekta機のコリメータ散乱係数

Sc(20)=1.026 Sc(14)=1.011

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 49 -

各各アアルルゴゴリリズズムムににおおけけるるビビーームム硬硬化化((特特ににウウェェッッジジ))のの取取りり扱扱いいににつついいてて

さまざまなエネルギーの光子が混合している X線が物質中を透過する際、低エネルギー成分

が早く減弱し、高エネルギー成分は深くまで到達します。したがってより深いところではエネル

ギー分布が高い側にずれ、実効的にエネルギーの高い(「硬い」)ビームとなります。このこと

をビーム硬化(beam hardening)と言います。例えば、第一半価層よりも第二半価層の方が

厚くなり、指数関数的減弱と比べて「より足が延びている」減弱をするのはこれが理由です。こ

の現象は、単純撮影でも、CTでも、治療ビームでも、同様に発生します。

では、XiOの各アルゴリズムではビーム硬化はどのように考慮されているでしょうか?

Clarksonアルゴリズムは、XiOに登録した PDDデータから TPR表を作成して、これをスター

トとして線量計算を行います。この PDD は実際の測定から得られたものですから、単色の X

線が作る指数関数のような減弱ではなく、白色 X線が作る「より足が延びている」PDD になっ

ています。したがって、Clarkson アルゴリズムではビーム硬化は、吸収体を含まない水中を

仮定して TPR表に折り込まれた形で考慮されていることになります。

逆に言うと、Clarkson アルゴリズムでは計算領域でない部分、例えば物理ウェッジや補償フィ

ルタによるビーム硬化は考慮されないことになります。したがって、ウェッジなどを使った照射

に対して Clarkson アルゴリズムを使用する際は、ビーム硬化による PDD のずれに留意して

おかなければなりません。このずれが著しい場合には、現在の Machine データを別の

Machine へコピーし、新たに吸収体を含めた PDD を採用した TPR を作成して、計画時にそ

の吸収体を使用する場合には、コピーされた Machineデータを使うようにします。

Open

Wedged

フルエンス

エネルギー

【図 47】エネルギースペクトルの比較。

ウェッジを通過すると、低エネルギー成分

はより多く、高エネルギー成分はより尐なく

減弱し、結果としてスペクトルは高エネルギ

ー側にシフトします。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 50 -

Convolution(や Superposition)アルゴリズムでは、線量計算のスタートとなるのは、エネル

ギースペクトルです。ウェッジや補償フィルタ、患者体内での減弱は、X 線に含まれる(離散化

された)エネルギー成分ごとに別々に計算されます。したがってウェッジや補償フィルタが入っ

ていた場合でも PDDは正しく計算できることになります。

例外として Jaw コリメータ、MLC、ブロックでは、どのアルゴリズムでもビーム硬化は考慮され

ていません。これらはもともと透過率が 1~3%程度なので、ビーム硬化を計算に取り入れても、

全体の線量計算としてはさほど精度の向上につながらないからです。

Clarkson Open Clarkson Wedged

Convolution Open Convolution Wedged

【図 48】Clarkson アルゴリズムと Convolution アルゴリズムにおける、Open 照射

野と Wedged 照射野との PDD 比較です。Clarkson の Open 照射野では実測(黒線)

と計算(赤線)とはよく一致していますが、ウェッジを入れると PDDがずれてしまいます。

Convolution の場合は Open 照射野でもウェッジを入れても、PDD の実測と計算はず

れません。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 51 -

CCllaarrkkssoonn とと CCoonnvvoolluuttiioonn//SSuuppeerrppoossiittiioonn アアルルゴゴリリズズムムににおおけけるるウウェェッッ

ジジフファァククタターーのの違違いいははどどここかからら生生じじるるかか??

あるウェッジビーム(wedged beam)について、Clarkson と Convolution/Superposition の

両方で計算しますと、線量計算結果 Source Index に表示されているウェッジファクタ

(wedge factor = WF)が若干異なり、手計算のときに戸惑われることがあるかと思います。

そこで XiO でのウェッジファクタの取扱いをご紹介し、この計算結果の相違がどこから生じる

かを明らかにしたいと思います。

◆ ウェッジファクタといっても定義はいろいろ。

XiOの Source Indexに表示されているWedge Factorは、測定によって得られる結果という

よりは、むしろ「計算の途中で生じるパラメータの一つ」です。定義としては

WFINDEX(x = (d, r), A, SSD) = Dwedged(x = (d, r), A, SSD)÷Dopen(x = (d, r), A, SSD)

となります。ここで x = (d, r)は参照点、すなわちWeight Pointの位置で、3次元座標で表さ

れます。A は照射野の大きさ、SSD は線源から表面までの距離を示します。つまり参照点は

体内のどこでもよく、SSD も任意に選べるわけです。ですからいつも通りの線量計算にウェッ

ジファクタを掛け算するだけで MUが計算できます。

一方、IEC8(や JIS

9)でくさび係数と言われているものは「実測によって得られるデータ」です。

測定条件が「中心軸上、深さ 10cm、SAD=100cm」と決まっていて、より限定的な定義となっ

ています。

WFIEC(d, A) = Dwedged(d, A)÷Dopen(d, A)

XiO には、実はもう一つ異なるウェッジファクタの定義があります。ビームモデリングで必要と

なるウェッジファクタの測定値は、 IEC のくさび係数と似ていますが、セットアップは

SAD=100cm ではなく SSD=100cm で、また深さは reference depth に決まります。これを

WFMEAS (A)と呼びましょう。

さて、ウェッジビームの線量計算をするということの中には、WFMEAS(A)から WFINDEX(x, A,

SSD)を導出するということが含まれています。この導出方法が Clarkson アルゴリズムの場

合と Convolution/Superposition アルゴリズムの場合とで尐し違っているために、実際に

Source Indexで出力されるWFINDEX(x, A, SSD)も尐し異なってしまうのです。

8 International Electrotechnical Comission(国際電気標準会議)

9 Japan Industrial Standards (日本工業規格)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 52 -

◆ ウェッジのデータについて

X 線の線量計算にあたっては、PDD やプロファイル等のスキャンデータ以外に、点測定によ

って求めたノンスキャンデータや、図面やマニュアルから得たジオメトリデータが使用されま

す。これらのうち、ウェッジビームの計算に関わるものとしては、

ウェッジ断面の形状データ

各照射野のウェッジファクタWFMEAS(A)

WFMEAS(5x5)から換算した線源弱係数μ

ウェッジ材質(密度と組成)

があります。ウェッジの形状データは、ウェッジビームによるプロファイルを計算する際に使わ

れるデータですが、図面通りのデータを使用するわけではなく、モデリング作業において計算

と実測が合うように、アルゴリズムごとに10変更が施されています。

また、線源弱係数μ は Clarkson アルゴリズムでのみ使用され、X線の減衰効果を表現しま

す。一方で、Convolution/Superpositionアルゴリズムでの X線の減衰効果は、ウェッジ材質

から導出されます。

以下で、これら両アルゴリズムでのウェッジの取扱いを説明し、違いをまとめていきます。

◆ Clarkson アルゴリズムでのWFの取扱い

Clarksonアルゴリズムでのウェッジファクタの計算は以下の手順によって行われます。

まず測定で得られた WFMEAS(A)を線形補間して、その照射野の等価正方形のサイズでのウ

ェッジファクタを求めます。ここの等価正方形の算出方法は場合によって異なり、ブロックやマ

ルチリーフなどの customized port がない場合はコリメータ等価正方形、customized port

がある場合はブロック等価正方形で決定します。

次にウェッジファクタとウェッジ形状のデータを掛け合わせて、軸外でのウェッジによる減弱を

求めます。XiO の Clarkson アルゴリズムではこの減弱を以下のような因子 WEGFAC で表

します。ウェッジ通過前のビームフルエンスに WEGFAC を掛け合わせれば、ウェッジ通過後

のビームフルエンスを求めることができます。

MEAS

)(MEAS WFee

WFeWEGFAC Tt

T

t

ここで、μ は線減弱係数、tは線源とWeight Pointを結ぶ線(Weight Fan)がウェッジを横切

る厚さで、Tはビーム軸上のウェッジの厚さを表しています。

これらのパラメータをウェッジ座標上で図示すると、【図 47 のようになります。Weight Fan

がビーム軸と等しい時は、tと Tは一致するので、WEGFACはWFMEASと同じ値になります。

10

アルゴリズムによって別の座標データを使用するのは、後述するように、ウェッジ中の X 線の減弱プロ

セスの計算方法が違うためです。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 53 -

Weight Fan が例えばビーム軸より左側であれば、ウェッジを通過する厚さが増えますから、

より多くの減弱を起こすことになります。このように減弱は指数関数に比例するファクタとして

モデル化されています。

◆ Convolution/Superposition アルゴリズムでのWFの取扱い

Convolution/Superposition アルゴリズムでは、全体の X線のスペクトルをおおよそ 10~30

程度のエネルギー成分に分解し、それぞれで線量分布計算を行い、最後に積算します。これ

は患者さんの体内の計算だけではなく、ウェッジの透過の計算でも同じです。

ウェッジの材質はすでに与えられていて、その材質にはエネルギーの関数としての線減弱係

数が与えられています。ですからそれぞれのファンラインに沿ったウェッジの通過長を求めれ

ば Clarkson アルゴリズムで WEGFAC を求めたのと同じように、ウェッジにおける軸外の減

弱が得られることになります。この減弱は、エネルギー成分ごとに別々に求められるものです

から、これらを積算してウェッジありの時の線量 Dwedged (x, A, SSD)とウェッジなしの時の線

量 Dopen(x, A, SSD)とで割り算を行えば、WFCALC (x, A, SSD)が得られます。

しかしこのWFCALC(x, A, SSD)はあくまで、ウェッジ材質から概算できる線減弱係数に基づい

て簡単な指数計算で求めたウェッジファクタですから、実測 WFMEAS (A)とはたいてい尐しず

れてしまいます。したがって、計算と実測の帳尻合わせが必要となります。

この点は、Clarkson アルゴリズムと Convolution/Superposition アルゴリズムとの仕組み上

の大きな違いとなります。Clarksonアルゴリズムでは測定値WFMEAS(5×5)から線減弱係数

を求め、これに指数関数を乗じていますから、中心軸では当然合います。一方、

Convolution/Superposition アルゴリズムではウェッジ材質から概算できる線減弱係数で計

算するので、中心軸で実測とずれてしまい、そのために補正を必要とします。

WFCALC(d, A)の補正は、ウェッジファクタ補正ファクタWedge Factor Correction Factor(通

【図 49】ウェッジ座標

T : ビーム軸上の

ウェッジ厚

t : Weight Fan 上

のウェッジ厚

ビーム軸

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 54 -

称 WFCF)を用いて行います。まずビームモデリングの過程で、測定条件「中心軸上、深さ

10cm、SAD=100cm、d=dref」を仮定して、

WFCF(A) = WFMEAS(A) ÷ WFCALC(A)

としてWFCFを求めます。それほど大幅な補正ではありませんから、WFCFは 1に近い値と

なります。このWFCFを使って、Teletherapyでの計算時には、

WFINDEX(x, A, SSD) = WFCALC(x, A, SSD) × WFCF(A)

という風に補正を行います。

ところで、WFCALC(x, A, SSD)の計算の仕方を見てみると、照射野サイズ Aは使われていま

せん。ということは WFCALC(x, A, SSD)はあらわには照射野サイズ A の関数ではなく、A は

WFCF(A)を介してのみWFINDEX(x, A, SSD)に影響を与えることになります。

WFINDEX(x, A, SSD) = WFCALC(x, SSD) × WFCF(A)

この A を決定する際には、Clarkson アルゴリズムと同様に、コリメータで形成された矩形照

射野に対してはコリメータ等価照射野、MLC やブロックで作った不整形照射野に対しては、

XiOはブロック等価照射野を計算して、WFCF(A)を求めます。

WFINDEX(x, A, SSD)がアルゴリズムによって異なる原因の1つはこの等価照射野の計算で

す。このブロック等価照射野の計算は Clarkson アルゴリズムと Convolution/Superposition

【図 50】

WFCFの例。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 55 -

アルゴリズムとで異なるのです(本文書の「XiO が出力する等価正方形について」を参照して

ください)。このために、同じ形の不整形照射野でもアルゴリズムによって等価正方形の値が

異なり、結果としてウェッジファクタも異なってしまうのです。

◆ ウェッジファクタの深さ依存性と SSD依存性について

これまでの記述では省略してきましたが、WFINDEX(x, A, SSD)は実際には深さ依存性とSSD

依存性があります。WFMEAS(A)を元にしてWFINDEX(x, A, SSD)を求める際にはこれらの依存

性を考慮しなければなりません。

一つはウェッジ透過によって生じるビーム硬化がもたらす深さ依存性です。オープン照射野

におけるPDDと比べて、ウェッジ照射野のPDDはより大きくなります(深くまで届くようになる)

から、両者の比 Dwedged/Dopenをとると、深くなればなるほど大きくなります。

このようなビーム硬化の性質は、Convolution/Superposition アルゴリズムでは再現できて

いるのですが、Clarkson アルゴリズムでは再現できません。Clarkson アルゴリズムでは

Dwedged/Dopenはどの深さでも一定になってしまいます。

ビーム硬化と同様に、ウェッジ起源の電子線についても、Clarksonアルゴリズムではまったく

考慮されていませんが、Convolution/Superposition アルゴリズムでは簡単な考慮がされて

います。

このビーム硬化と混入電子の取扱いのあるなしが、アルゴリズムによって WFINDEX(x, A,

SSD)が異なってしまう 2番目の理由です。

深さ依存性と SSD 依存性とには、ファントム内での散乱に由来する高次の項があります。深

さとSSDが変わる場合、線量の換算には逆二乗則とファントム散乱係数(Sp)が関わってきま

す(たとえば本文書「XiOが出力する TPR表について」には PDD と TPR との換算式が乗っ

ています)。Spはオープン照射野で定義されていますから、ウェッジ照射野で同じ測定をすれ

ば、わずかにずれてしまいます。つまり、オープン照射野とウェッジ照射野とでは、深さ・SSD

の換算においてわずかに異なる係数が乗ってしまうのです。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 56 -

XXiiOO ででハハーーフフビビーームムををつつななぎぎ合合わわせせたたととききのの分分布布ににつついいてて

ビーム中心軸において照射野の半分をコリメータで遮蔽して形成したビーム(以下、ハーフビ

ーム)を下図のようにビーム軸に対称に2つ作成し、それぞれのビームをつなぎ合わせたとき、

その線量分布はコリメータで遮蔽せずに作成した同じ大きさの照射野の線量分布とは異なり

ます。これは、つなぎ合わせる部分はハーフビームのペナンブラにあたり、急激に線量が変化

するので、照射野のわずかなずれや照射野の内側と外側での分布の傾きの違い等により、

ハーフビームを足し合わせた結果が一定にならないためです。これは治療計画装置の計算

結果であっても検出器を使用した実際の測定結果であっても、おこりうる現象です。ただし、こ

の現象の生じる原因は測定と計算でそれぞれ異なり、測定結果と計算結果が同じような分布

になるとは限りません。それでは、測定と計算のそれぞれでハーフビームの線量分布がどの

ように変化するか見てみましょう。

◆測定によるハーフビームのつなぎ目の分布

まず、実際の測定結果では、つなぎ目の分布がどのようになるか見てみましょう。【図 49 の

ような2つのハーフビームを実際に電離箱で測定した例を【図 50 に示します。グラフ中の

Half(left) 、 Half(right)はビーム中心に対称な2つのハーフビームの線量分布、

Half(left)+Half(right)は2つのハーフビームの線量分布を合算したものを表しています。ハー

フビームをつなぎ合わせた部分はなめらかに繋がらず、若干段差ができていることが分かり

ます。

ここで、治療機の機械的なずれが生じたとしたら、分布がどのように変化するか考えてみまし

ょう。例として、一方のハーフビームを形成する照射野が全体的に若干ずれた場合を仮定し

ます。【図 50(左)は、Half(right)を全体的に 0.5 mmマイナス側へずらしたときの線量分布、

同(右)は Half(right)を全体的に 0.5 mm プラス側にずらしたときの線量分布を示しています。

ハーフビームをもう一方に近づけるようにずらすと、つなぎ合わせた部分の線量が急激に高く

+ ≠

【図 51】ハーフビームを足し合わせても、つなぎ合わせた

照射野と同じ大きさの照射野のビームとは同じ線量分布に

なるとは限りません。

XiO Inside

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なります。一方、遠ざけるようにずらすと、つなぎ合わせた部分の線量が落ち込みます。この

ように、ハーフビームをつなぎ合わせた部分では線量が急激に変化しているため、照射野の

わずかなずれがハーフビームのつなぎ目での線量分布に大きな影響を及ぼすことが分かりま

す。

◆計算によるハーフビームのつなぎ目の分布

次に、XiO の計算結果を見てみましょう。【図 51 は、計算グリッドを 0.2 cm×0.2 cm×0.2

cm にして、ハーフビームをつなぎ合わせたときの線量分布です。

この3つの図を比べると、アルゴリズムによって線量分布が変化していることが分かります。ま

ず、Clarkson法の線量分布では、すそ部分(コリメータの遮蔽部)のある範囲から線量が突然

0 になっていることが分かります。これは、Clarkson 法のビームグリッド11が Computational

OCR(XiO に測定データを転送した際に自動的に作成される OCR)のデータ間隔によって決

まるためです。Computational OCRとして登録したデータを超える範囲は計算することができ

ませんので、線量が 0 になります。したがって、ハーフビームをつなぎ合わせると線量が 0 に

なる部分で急に線量が下がるため、左図のような段状の分布が生じます。

11 ビームグリッドと計算グリッドについては、「XiOにおけるグリッドとは?」の節で詳しく述べています。

【図 52】一方のハーフビームを数値的にずらした時の線量分布。(左)

Half(right)を 0.5 mmマイナス側にずらした時、(右) Half(right)を 0.5

mmプラス側にずらした時。Half(left)のX=-50における値で正規化し

てあります。プロファイルは実際の測定結果とは異なります。

v

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◆ 計算グリッドを変化させたとき

XiOにおいて、各アルゴリズムの計算グリッドを 2 mmから 5 mmへ変更したときの X=0付近

における線量分布を【図 52 に示します。Clarkson 法では、前述のようにビームグリッドが

Computational OCR のデータ間隔によって決まっているため、計算グリッドが変わってもビー

ムグリッドは変化しません。つまり、表示される計算結果が 5 mm間隔になるだけで、元のビー

ムグリッド上での計算自体は変わりません。

しかし、Convolution/Superposition では、計算グリッドによってビームグリッドのサイズが決定

されるため、計算グリッドが変化すると TERMA やカーネルの計算結果が変化します。中央図

と右図では、ハーフビームの照射野外の線量分布の変化が照射野内に比べて大きくなってい

ます。これは、照射野外のような線量が低い部分ではグリッドのサイズのわずかな違いが散乱

線の違いとしてすそ部分の線量分布に顕著に表れるためと考えられます。対称な2つのハー

フビームをつなぐと理想的には平坦になるため、突然つなぎ目を境に線量が大きく変化すると

目立って見えるのです。

【図 53】XiO の計算によりハーフビームを重ね合わせた様子。 (左 )

Clarkson、(中央) Convolution、(右) Superposition の結果。計算グリッド

=0.2x0.2x0.2、TERMA extent=4 cm、X=0cmにおいて規格化。

Clarkson

Convolution

Superposition

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◆ TERMA extent を変化させたとき

Convolution/Superpositionにおいて、TERMA extents を 4 cmから 8 cm へ変更したときの

X=0 付近における線量分布を【図 53 に示します。TERMA の計算までは Convolution と

Superpositionは同じ結果ですが、カーネルの重畳積分を行う過程が異なるため、最終的な計

算結果は同じにはなりません。

以上のように、ハーフビームをつなぎ合わせた場合には、計算条件によってつなぎ目の分布

が大きく変化する可能性があります。計算結果は、それぞれのビームや計算条件によって異

なるため、一概にどの位変化するか言及することはできません。実際にハーフビームを用いた

治療を実施される際には、事前に治療機の線量分布を実測して確認することをお勧めいたし

ます。

【図 54】計算グリッド 2mm と 5 mm の計算結果比較。それぞれ

(左)Clarkson、(中央)Convolution、(右)Superpositionによる計算。

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【図 55】TERMA extents 4 cm と 8 cm の計算結果比較。

(左)Convolution、(右)Superpositionによる計算。

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ああるる点点((wweeiigghhtt ppooiinntt))ででははななくくああるる領領域域にに入入るる線線量量をを指指定定すするるににはは??

通常 XiOでの投与線量は、ビームごとに定めたある点、すなわちWeight Pointに対して、例

えば「点 Aに 60Gy投与したい」というように設定します。

しかし治療プロトコルで決まっている場合や、患者間比較を行う場合には、点に対する処方で

はなく、D95や D90などの線量指標で処方を設定しなければならないことがあります。このよ

うな際には、まず仮の投与線量で計算を行ったあと、線量分布全体にある係数を掛け算して、

D95 や D90 が指定している値になるように修正を行います。もちろん MU 値にもその同じ係

数が掛け算されます。

例えば D95 として 72Gyを投与したい場合を例に具体的な手順を書くと、以下のようになりま

す。

(1) まず仮の投与線量を設定して、通常どおり線量計算を行います。

(2) 次に DVH を開いて、PTV 体積の 95%をカバーしている線量を読み取ります(6560cGy

とします)。

(3) 次に Beam Weight ウィンドウを開いて、Rescale (prescribe) Beam Weightsボタン

をクリックし、Rescale Weightsウィンドウを開きます。

(4) 「Prescribe to」の指定を、pointから Isodose Lineに変更してから、変更前の 95%線

量(6560cGy)を「Isocurve Value」に、変更したい 95%線量(7200cGy)を「Prescribed

Dose」に入力し、OKボタンをクリックします。

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(1) まずDVHを見て今の95%

線量を求めて…

(3) 今の95%線量を希望の線

量に設定しなおします

(2) Weight画面からRescale

Beam Weightを選んで…

仮のD95

設定したいD95

【図 56】ある領域に入る線量を指定したいときの操作方法

この例では、仮に計算した D95が 6560[cGy]だった場合、それを 7200[cGy]に変換

する例を示しています。実際に行われているのは、線量分布全体(と MU 値)を

(7200÷6560)≒1.098倍する、という単純な処理です。

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不不均均質質補補正正をを細細かかくく制制御御すするるににはは??

不均質補正をあえて行わない理由は決して多くありませんが、なんらかの研究や比較におい

ては、不均質補正を OFFにしたいことがあるでしょう。

また、造影剤を使ったことにより、CT 取得時の患者さんの状態と、照射時の患者さんの状態

が違っているような場合には、その部分だけCT画像のCT値を使用せず、指定した電子密度

値で変更すべき場合もあります。体内の金属によってアーティファクトが出てしまっている場合

にも、そのアーティファクトを取り除いてしまわないと正しい線量計算ができないようなケース

もあります。

XiO では、いくつかのレベルで不均質補正のあるなしと電子密度の設定の制御を行うことが

できます。具体的に記述すると以下の 4通りになります。

(1) 体輪郭内の全領域を電子密度=1 とする。

(2) 体輪郭内の全領域を電子密度=1 とし、例外として体内のある輪郭に対して別の電子密

度を設定する。

(3) 体輪郭内の全領域を CT値から換算した電子密度とする。

(4) 体輪郭内の全領域を CT 値から換算した電子密度とし、例外として体内のある輪郭に対

して別の電子密度を設定する。

通常の臨床利用で「不均質補正を使用する」場合は(3)の方法を使います。造影剤や金属ア

ーティファクトの補正をしたいときには(4)の方法を使います。

次にこの(1)~(4)の設定方法をご紹介いたします。

(1) 体輪郭内の全領域を電子密度=1とする

この方法を使うには Teletherapy で、プルダウンメニューの [Dose]-[Calculation]

-[Setting] を 選 ん で 、 Dose Calculation Settings ウ ィ ン ド ウ を 表示 さ せ 、

「Heterogeneity Correction」を Noにします。これは不均質補正を行うか行わないかを

制御するものですので、これを No と設定すると、体輪郭の内側はすべて水とみなすこと

になります。

(2) 体輪郭内の全領域を電子密度=1 とし、例外として体内のある輪郭に対して別の電子密

度を設定する

この方法も同じ く Dose Calculation Settings ウィンドウの「Heterogeneity

Correction」を Yesに、「Pixel by Pixel Calculation」を Noにします。「Pixel by Pixel

Calculation」は、不均質補正を行う場合に、CT 画像から得た電子密度を使う(Yes)か、

輪郭ごとに設定した電子密度を使用する(No)か、を設定するものです。

方法(2)を選んだ場合の、体内の輪郭ごとの電子密度の設定については方法(4)を見て

ください。

XiO Inside

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(3) 体輪郭内の全領域を CT値から換算した電子密度とする。

Dose Calculation Settings ウィンドウにおいて、 「Heterogeneity Correction」を

Yesに、「Pixel by Pixel Calculation」を Yesにします。

通常はこの状態になっているはずです。

(4) 体輪郭内の全領域を CT 値から換算した電子密度とし、例外として体内のある輪郭に対

して別の電子密度を設定する。

方法(4)だけではなく、方法(2)でも同じ手順となりますが、体内のある輪郭にある電子密

度を設定するには、Teletherapy でプルダウンメニューの[Edit]-[Assigned Electron

Density]を選びます。「Force CT」の項目が Noですと、CT画像から得られた電子密度

を使って不均質補正をします。これを Yes にすると、指定した電子密度でその輪郭の内

部を塗りつぶします。

この機能を使うと、造影剤や金属アーティファクトが写っている部分の輪郭をとれば、部

分の電子密度を強制的に 1(あるいはその他の値)にすることができます。

【図 57】Dose Calculation Settingウィンドウの

例。

2行目の「Heterogeneity Correction」が、不均質

補正を(どのような形でも)行う(Yes)か、あるいは

まったく行わない(No)かの制御です。

3行目の「Pixel by Pixel Calculation」は、(たとえ

一部の領域でも)CT画像から読み取った電子密度

を使用する(Yes)か、すべての領域で手入力した

電子密度値を使用する(No)かの制御です。

XiO Inside

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方法4

方法3

方法2

方法1

【図 58】XiOの不均質補正の制御方法のまとめ

一様な灰色の領域は電子密度 1の領域で、青い領域は「Force CT」で手入力で

電子密度を指定した値です。

XiO Inside

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DDoossee--TToo--WWaatteerr とと DDoossee--TToo--MMeeddiiuumm ににつついいてて

Monte-Carlo アルゴリズムの登場に伴って近年、Dose-To-Water 水に対する吸収線量と

Dose-To-Medium 媒質に対する吸収線量との区別をすることが大事になってきました。XiO

でも電子線モンテカルロ(eMC)の導入により、どちらで計算するかを選択することができるよ

うになりました。この文書ではごく簡単にこれらのことについて触れたいと思います。

日常わたしたちが「線量」と呼んでいる量は正確には「吸収線量」です。単位は[Gy](あるいは

[J/Kg])、簡単にいえば単位質量あたりに与えられた熱量のことです。

しかし放射線の照射によっておきる温度上昇はごくわずかですから、吸収線量を知るために

温度上昇を測るのは容易でなく、まったく実用的とは言えません。したがってわたしたちは普

段、放射線の照射によって起きる電離量から、吸収線量を求めています。

空気の電離箱線量計でも半導体線量計でも原理的には同じことですが、線量計の指示値(こ

れは電離して、再結合せずに電位計まで届いた電荷量です)にいくつかの換算係数を掛け算

し、「空気における電離量」を「水における吸収線量」に換算することによって得られます。しか

しこの換算にはいくつかの仮定が含まれています。

線量計の指示値 M(様々な補正はすでにされているとします)を吸収線量[Gy]にするには、

D [Gy] = ND,W,Q0 × kQ,Q0 × M [nC]

という計算を行います。ND,W,Q0 は「水吸収線量換算係数」、kQ,Q0 は「線質変換係数」です。こ

こで主たる役割を担っているのは ND,W,Q0 で、ここでは媒質を水だと仮定しています。つまりこ

の掛け算は「もし線量計(の電離領域)が空気ではなく、水だとしたら、そこでの吸収線量はい

くつになりますか」という換算をしているわけです。ですから吸収線量を知りたい場所の物質

が水でなかったら、それは正しい換算ではなくなってしまいます。

一般的な場合ではたいていの臓器は水とみなしてよいとされていますが、Monte-Carloのよう

な高精度な計算方法が登場したあとでは、これはあまり真実とは言えません。ここには2つの

誤差要因があります。一つは元素組成に起因するものです。組成が違えば当然1個の電離を

起こすために必要なエネルギーは違ってきます(いろいろな表現の仕方がありますが、例えば

平均電離エネルギー、俗に W 値と呼ばれる値があります。60Co のγ 線を照射された水の場

合では 33.97 eVです)。もう一つは吸収線量が、単位が Gy = J/kgであることからわかるよう

に、質量あたりの値であるはずなのに、重量密度ではなく電子密度が基準になっていることで

す。

以上のことから、低密度な部位、脂肪質な部位や、骨などリンやカルシウムが多く含まれてい

てかつ高密度な部位は、ある程度の誤差が乗ってくると考えられます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 67 -

ここで、ある線量評価点に対して、そこを水だとみなした場合の線量を Dose-To-Water Dw、

実際の物質通りだとした場合の線量を Dose-To-Medium Dmと呼ぶことにします。

Dwは、電離箱で測って ND,W,Q0で換算した線量です。電離箱線量計で測定したビームのデー

タを元にして計算を行う Clarksonや Pencil Beamや Convolutionなどのアルゴリズムでも、

やはり取り扱っているのは Dw です。だから、わたしたちがこれまで考えてきた「吸収線量」は

ほとんどすべて Dwであって、より正確な吸収線量である Dmとはずれているのです。

ところがMonte-Carloアルゴリズムでは事情が異なります。Monte-Carloアルゴリズムでは物

理的な反応過程までさかのぼって計算をしているため、原理的に最初に求まるのはDmです。

もし Dwを知りたければ、求まった Dmvを、阻止能比の表を用いて換算する必要があります。

Dmと Dwの違いは、生物効果を考えるときには意識しておかなければなりません。Dwで数え

て 60 Gyを投与した場合、それは Dmで数えると 60 Gyではなくて、58 Gyだったり、61 Gy

だったりするかもしれません。しかしより生物効果を忠実に再現しているのはDm、Dwのはたし

てどちらでしょうか? 常に有意な差があるわけではありませんが、尐なくとも現象に忠実な取

扱いをしている分、Dmの方が信頼できると考えるべきです。

治療計画上で Dm を使うのは、生物効果のばらつきが尐なくなることが見込めるというメリット

はあります。しかしどの場合にも有意義な効果があるとは言えません。実際にDmとDwとのず

れを見積もると、軟組織ではおそらく 1 %程度です。しかし骨の近くでは 10 %は見ておいた方

がいいでしょう。つまり腫瘍の部位によって程度は違ってきます。

Dmを使う方法のデメリットとしては、いままで蓄積してきた処方を尐し変更しないといけない可

能性があることと、QA planの計算を行うときにはDwに戻さないといけないこと、2通りの値を

併用することで混同する危険が生じること、などがあげられます。

逆に治療計画上で Dwを使う場合は、わたしたちが慣れ親しんだやり方の通りです。測定との

比較が楽であることと、これまでの経験で培った処方をそのまま使えることが、メリットとなりま

す。一方で、生物効果の予測性をもう尐し正確にできる可能性があるのに、あえてそうしない

というわけですから、これはデメリットと言えるでしょう。

次のページの図は XiO 4.64の electron Monte Carloで 21MeVの電子線を計算した場合の

Dmと Dwの線量分布を比べたものです。この場合では骨の部分で Dmと Dwが 3%近く異なっ

ており、DVH上でも明らかな影響が出ています。これは XiO eMCに限った話であって、ほか

の Monte-Carlo 計算でも同様の傾向になるかどうかは自明ではない、ということに注意してく

ださい。ユーザーはこのような計算を何通りか行って、線量分布への影響を考慮した上で、

Dmと Dwどちらを使うか、決めなければなりません。

参考文献を下記にお示しいたしました。どうぞ参考にしてください。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 68 -

XiO On-line Help – Electron Monte Carlo Algorithm, p.24 (Utilities から Reference Library

をたどってください)

Chetty et al., Report of the AAPM Task Group No. 105, 2007, Medical Physics 34, 4818

J V Siebers et al., Converting absorbed dose to medium to absorbed dose to water for

Monte Carlo based photon beam dose calculations, 2000 Phys. Med. Biol. 45 983

【図 59】XiO の不均質補正の制御方法のまとめ。Dose-to-Water 表示(左上)と、

Dose-to-Medium表示(右上)、差分(左下)です。浅いところではDWの方がDMより 3%ほど

低めに、、逆に骨の部分では逆に DW の方が 3%ほど高めにずれているのがわかります。

DVH(右下)でも、PTV はさほど変化がないのに比べて、下顎骨は大きく変化しています(実

線が Dw、破線が Dmです)

XiO Inside

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XXiiOO がが出出力力ししたた DDVVHH をを他他のの PPCC 上上でで解解析析すするるににはは??

XiOには DVH を出力する機能がありますが、それを数値データとして取り出す方法について、

DVH を画面に出力→ファイルに出力→Excel に取り込んでグラフを作る手順までをご紹介し

ます。

XiO上に出力されたファイルを PC に転送する方法については割愛いたします。FTP ソフトウ

ェアを用いる方法や、USB メモリ上にファイルをコピーする方法などがありますので、ご自身

でご検討ください。

XiOで DVH を出力させる方法には、ツールバーのアイコンを使う方法と、プルダウンメニュー

から行う方法の2種類あります。前者の方が簡単で、後者はやや細かい設定ができるように

なっていますが、出力される DVH は基本的に同一のものです。DVH のファイルへの出力の

際は後者のプルダウンメニューの方法を使う必要があります。

◆ ツールバーのアイコンを使う方法

Teletherapy において Dose モードを選択していると、ツールバーの右側に Histogram アイ

コンが出てきます。これをクリックすると、Histogram ウィンドウが表示され、さらに分割され

た画面のひとつがDVH用に割り当てられます。表示したい輪郭を選べばそのDVHが表示さ

れます。他に縦軸・横軸の意味など簡単な設定項目があります。

【図 60】

(左)TeletherapyでDoseモードを選択していると、Histogramアイコンが表示されています。

(右)Histogramアイコンをクリックすると、Histogramウィンドウが現れます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 70 -

◆ プルダウンメニューを使う方法

同じく Teletherapyにおける Doseモードで、プルダウンメニューの[Dose]-[Histogram]-

[New/Edit]を選択します。

この後の手順は二つのウィンドウで進めます。一つめは Full Histogramウィンドウで、DVH

の縦棒の幅などの設定ができます。Full HistogramウィンドウでOKをクリックすると二つめ

の Histogram Reportウィンドウが表示され、ここで輪郭を選択し、Accept をクリックするこ

とで、DVHの表示ができます(蛇足ですが、このHistogram Reportを使えば、「輪郭A+輪郭

BのDVH」や「輪郭Aと輪郭Bの重なった部分のDVH」といった輪郭間の演算ができます)。

このHistogram Reportウィンドウで、どれかひとつでもHistogramを表示させると、下の方

にSave DVH for RTOGというボタンが現れます。これをクリックすると、下記の場所にDVH

の数値データがセーブされます。

/FOCUS/rtp1/<clinic ID>/patient/<patient ID>/rtog_dvh.dat

これはテキストファイルですので読むことができます。中身は【図 60のようになっています。

【図 61】プルダウンメニューからHistogramを選ぶとまず Full Histogramウィン

ドウが現れます。OKをクリックすると、Histogram Reportウィンドウが現れます。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 71 -

出力されるファイルは一つだけですが、このファイルの中では、表示した分だけ DVH 曲線が

連結されて出力されています。この例では最初の輪郭は“PTV2”で、次の輪郭は“Bladder”

となっています。

“1.00 mm resolution”というのは Full Histogram ウィンドウで指定した空間分解能で、

“728 bins”というのは、ヒストグラムの縦棒が 728 本あるという意味です。1本の幅も Full

Histogramウィンドウで指定しますが、この場合は1本の幅が 10 cGyで、最大線量が 7280

cGyだったので、728本の縦棒があることになります。

このファイルを取り込む場合には、Excelで[ファイル]-[開く]または[データ]-[外部データの取り

込み]を行い、テキストファイルを「カンマやタブなどの区切り文字によってフィールドごとに区

切られたデータ」として読み込めば OKです。

このデータファイルで注目していただきたいのは、

ヒストグラムの横軸が%表示ではなく cGy表示

ヒストグラムの縦軸が%表示ではなく cc表示

データが、積算型ではなく、微分型で書かれている。

という点です。

これをこのまま Excelに読み込みますと、【図 61のようなグラフになります。

7230, 7.3220 7240, 5.5240 7250, 2.7620 7260, 1.3990 7270, 0.2810 XiO Dose Volume Histogram FusionProstate 4fieldProstate Bladder 1.00 mm resolution 728 bins Thu May 15 20:51:58 2008 Min. Bin Dose (cGy), Bin Volume (cc) 0, 0.0000 10, 0.0000 20, 0.0000 …

XiO Dose Volume Histogram FusionProstate 4fieldProstate PTV2 1.00 mm resolution 728 bins Thu May 15 20:51:58 2008 Min. Bin Dose (cGy), Bin Volume (cc) 0, 0.0000 10, 0.0000 20, 0.0000 30, 0.0000 … 7190, 7.0680 7200, 8.2340 7210, 9.9970 7220, 8.8250

【図 62】rtog_dvh.datの中身(抜粋)

表示されただけの本数が連結されて記述されています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 72 -

もしこれを見慣れた積算型の DVH にしたい、かつ縦軸を%表示にしたい、という場合は、

Excel上で尐し操作をしなければいけません。下に簡単な図を用意しましたので、これを参考

にしていろいろお試しください(100%線量がいくつであるか~図中の青い楕円部分~は手で

補わなければいけません)。

オリジナルの数表

体積の総和 処方線量 100を入力

この部分をグ

ラフにすると!

1つ上のセル

-体積÷体積の総和

×100

線量÷処方線量×100

【図 64】微分表示・縦軸[cc]となっている rtog_dvh.dat(図中緑枠内)を読み込ん

で、積算表示・縦軸[%]の DVHのグラフを書くための Excelワークシートです。これ

も 2本の DVHがある場合の例です。

DVH from XiO Output

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 2000 4000 6000 8000

Absolute Dose [cGy]

Vo

lum

e [cc]

PTV

Bladder 【図 63】XiO が出力した

DVH データをそのまま Excel

に取り込んでグラフ化した例で

す。微分表示になっていること

と、縦軸が%表示ではなく、cc

表示であることに注意してくだ

さい。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 73 -

最終的にできあがったグラフは下の【図 63のような感じです。XiOで出力されるものと同じも

のが表示されているはずです。

【図 65】上の Excel シートによっ

て積算表示・縦軸[cc]に変換された

DVHのヒストグラムです。

DVH from XiO Output

0.000

20.000

40.000

60.000

80.000

100.000

120.000

0 50 100

Relative Dose

Vo

lum

e [p

erc

en

tag

e]

PTV

Bladder

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 74 -

XXiiOO がが出出力力ししたたププロロフファァイイルル((含含 PPDDDD))をを他他のの PPCC 上上でで解解析析すするるににはは??

XiO ではプロファイルを画面に出力することができます。XiO では profile と呼んでいますが、

ビーム軸に直行する線上だけではなく、さまざまな位置、角度の線上で線量分布を表示する

ことができます。例えば深部線量分布を off-axisで見ることも可能です。

しかしこうやって表示したプロファイルも、Dose Profile ウィンドウを開けている間だけしか表

示されませんし、XiO上では数値データとして解析することはできません。

そこで XiOでプロファイルを出力し、データファイルに書き出す方法と、それを Excelで読み込

む方法についてご紹介します。

XiO でプロファイルを出力する際には、Teletherapy の Dose モードで、サブツールバーの

Dose Profileアイコンをクリックするか、プルダウンメニューから[Dose]-[Dose Profile]を選

択して、Dose Profileウィンドウを開きます。

普段 XiO の画面は四つあるいは六つ程度に区切ってお使いになっていると思いますが、

Dose Profileウィンドウの「SPV Subwindow Number」は、Profileを見ていくスキャンライ

ンをどのSingle Plane View(つまりCoronal、Sagittal、Axialなどの画像)で引くか、を指定す

るものです。次の「DP Subwindow Number」は Profileをどの画面に表示するか、を指定す

るものです。「DP Normalization」は縦軸の指定で通常は Absolute もしくは Selected

Pointで指定します。

実際に書くProfileのスキャンラインの定義は、例えばAxial画面上で定義する場合は、X(cm)、

Z(cm)、Angle となっているはずです。この指定した座標が Profile の原点となり、Angle で

Profile をとっていくスキャンラインの走る方向を指定します。Range の指定でグラフの縦横の

最大・最小値を決めることができます。最大 10本の Profileを描くことができます。

さてこれでProfileを画面上に出力することができました。このProfileをテキストファイルとして

出力するには、中ほどにある ASCII Data Output をクリックします。そうすると Profileごとに

別々のファイルとして、

/FOCUS/tmp/network/dose_profile/DP_<number>

が生成されます。DP_<number>というのは DP_1、DP_2、DP_3……という風に連番をつけ

てファイルが作られる、という意味です。もしこのディレクトリにすでに DP_15 というファイルが

あったら、次に作るファイルは DP_16から始まるので注意してください。

このファイルは Excel でタブ区切りテキストとして簡単に読むことができるので、グラフにする

のも容易です。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 75 -

一つだけ注意しておかなければいけないことがあります。この Dose Profileは線量分布計算

の結果から作られますから、profile を出力する前に計算グリッドのサイズを十分細かくしてお

く必要があります。もし計算グリッドが荒いまま profile を出力してしまうと、全体に折れ線グラ

フのような曲線になってしまい、測定と比べるような用途には使えなくなってしまいます。

【図 66】Dose Profileを表示した例と、これ

を Excel に取り込んだ例です。この場合は

Y-Z 平面、すなわち Sagittal 画像上でスキャ

ンラインを定義しています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 76 -

付付録録::TTeelleetthheerraappyyのの SSoouurrccee DDaattaa にに表表示示さされれるる各各項項目目ににつついいてて

XiO の Teletherapy において作成したプランの計算が終了すると、プルダウンメニューから

[Reports]-[Source Data]で Source Data を表示させることができます(画面の上では

Teletherapy Source と表示されています)。この出力によって私たちはビームのジオメトリや

各ファクターなどを知ることができます。

まず、どのような項目が表示されているのかを見てみましょう。下図は Source Dataの例です。

Source Dataには、Clinic NameやPatient ID、Plan IDといった、プランや患者に関する基本

情報が記載されています。図中の青枠で囲われた部分に項目名が示されています。これらの

データは Beam Weightが ONになっているビームのみ表示されます。

【図 67】

Source Indexの一般的な例

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 77 -

これらの表示の形式はいろいろな理由で変わります。XiO のバージョンや初期設定により表

示の順番が異なったり、そもそも表示されないこともあります。またビームの性質によって現れ

たり現れなかったりする項目もあります。ですからそのすべてを網羅するのは困難です。もし

ここに示す以外の項目があったときには XiO の On-Line Help から“What is the Source

Data Report?”のページを参照してください。

それでは青い枠で囲われた項目が何を示しているのか、上から順に見てみましょう。

Beam Number

Beam Numberの下の行が、それぞれのBeamに対応しています。原体照射のときのみ、Arc

Numberが表示されます。

Description

治療計画においてビーム設定時にコメントを付けていた場合に表示されます。コメントを登録

していない場合は空欄になります。

Machine ID

治療計画に使用したビームデータの名称です。

Collimator

コリメータの設定(Sym もしくは Asym)

“Sym”・・・左右・頭足方向のコリメータが対称に動作。

“Asym”・・・左右・頭足方向のコリメータが非対称に動作。

Setup/Dist(cm)

治療計画のセットアップ(“SAD”、“SSD”、“ROT”、“CNF”)と基準となる距離が表示されま

す。ROTはRotational、CNFはDynamic Conformalを示します。Distは一般的には100 cm

となります。

SSD

ビーム中心軸に沿った線源‐体表面距離。線源から体表面までの距離をさします。

Setupが“ROT”で、Arcが 0でない場合、“---”と表示されます。

ビーム中心軸が Patientを通過しない場合、“N/A”と表示されます。

Wt fan SSD

“Wt fan SSD”・・・線源とweight pointを結んだ線に沿った線源‐体表面距離をCAXに投影し

たもの。線源から最初に電子密度の存在するボクセルまでの距離をさします。

※前述の SSD とは距離の定義が若干異なるため、weight pointがビーム中心軸上にある場

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 78 -

合でも異なる数値が表示されることがあります。12

Field Size at Isocenter

アイソセンターにおける照射野の大きさが表示されます。

Field Size(cm)

ジョーコリメータの左右方向と頭足方向の開度です。Sym のときは開いている幅が表示され、

Asym のときはどの方向にどの位開いているのかが表示されます。

例)10×10の正方形照射野を形成すると、

Sym のとき、「Width 10、Length 10」と表示されます。

Asym のとき、「LW/RW 5/5、UL/LL 5/5」と表示されます。

Coll. Eq. Square(cm)

4×(A/P)で算出されるコリメータ等価照射野です。

Blk. Eq. Square(cm)

ブロック等価照射野が表示されます。これはMLCやブロックなどが作る不整形照射野の透過

正方形をある方法によって求めたものです。

※この等価正方形は幾何学的な方法で求まるものではなく、線量計算の過程で計算される中

間パラメータです。算出方法はアルゴリズムによって異なります。13

Gantry/Coll angle(deg)

ガントリーとコリメータの角度です。

Couch(deg)

カウチの角度です。

Isocenter/Beam entry

“Iso”と“Entry”のいずれかが表示されます。“Iso”の場合、次の項目(「X, Y, Z」)で表示され

るのはアイソセンターの座標です。“Entry”の場合(これはSSDセットアップのときに限ります)、

次の項目で表示されるのはビーム入射点(beam entry point)の座標です。

X, Y, Z

Isocenter/Beam entryの項目で指示された点の座標です。

Tx aids:

Treatment Aidsの略で、このカテゴリーにMLCやブロック、ウェッジの表示が記載されます。

12詳細については、「XiOが出力する SSDについて」を参照してください。 13詳細については、「XiOが出力する等価正方形について」を参照してください。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 79 -

Port

使用しているポートの種類により以下の項目が表示されます。複数の種類を使用している場

合は、“/”で区切ってすべてのポート種類が表示されます。

“---”…ジョーコリメータしか使用していないとき。

Aperture・・・アパーチャーが使用されているとき。

Blk・・・ブロックが使用されているとき。

CmpBlk・・・補償フィルタが使用されているとき。

MLC・・・MLCが使用されているとき。

SegMLC(x)・・・IMRTにおいてMLCセグメントがあるとき。xにはMLCセグメントの番

号が入ります。

DYN CONF・・・MLCによる原体照射のとき。

Port/MLC normalization

相対線量指定14モードで利用しているときに、ブロックやMLCを使用した場合、投与線量の設

定方法の選択を表示する項目です。

“blocked”・・・ブロックやMLCを透過してweight pointに到達する線量で、投与線量を

設定した場合の表示です。

“opened”・・・ブロックやMLCを挿入しない状態でweight pointに到達する線量で、投

与線量を指定した場合の表示です。この設定方法を用いた場合、最終的な線量計算

で weight pointに届く線量は、Source Dataに表示される投与線量よりも小さくなりま

す。

※ 絶対線量指定の場合は必ず“blocked”となります。

Calc algorithm

そのビームの線量計算に使用したアルゴリズムを示します。Clarkson、Convolution、

Superposition、Fastsuperpos (Fast-superposition)などがあります。

Weight (cGy)/No. fractions

weight pointへの投与線量と照射回数が表示されます。

X, Y, Z

weight pointの位置を座標で表示します。

Defined at

weight point の位置がどのように定義されているかを示します。Collimator の設定

(“Asymmery”または“Symmetry”)によって異なります。

“Asymmetry”の場合

“Iso.Depth Fld.Ctr.”・・・照射野中心、アイソセンター面に weight pointを置いた場合。

“Ref Depth Fld. Ctr.”・・・照射野中心、reference depth深(dref)に weight pointを置

14

詳細については「XiO の Weight Point とは?」を参照してください。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 80 -

いた場合。

“Def.Depth Fld.Ctr.”・・・照射野中心、指定した深さに weight pointを置いた場合

“Arb.point”・・・座標値、特別な点(「輪郭○○の重心」)、interest point や marker で指

定する場合、他のビームの weight pointで指定知る場合、などです。

※座標値で指定する場合は、ビーム軸に乗った座標を使うか、患者に乗った座標を使う

かの選択が Edit Beam ダイアログ内にあります。

“Symmetry”の場合

“Isocenter”・・・アイソセンターに weight pointを置いた場合。

“Ref.depth”・・・ビーム中心軸上、reference depth深(dref)に weight pointを置いた場

合。

“Def.depth”・・・ビーム中心軸上、指定した深さに weight pointを置いた場合

“Arb.point”・・・座標値、特別な点(「輪郭○○の重心」)、interest point や marker で指

定する場合です。(Sym の場合と同じです)

Depth; skin(cm)

体表面から weight pointまでの深さ(実際の深さ)が表示されます。

Effective; skin(cm)

体表面から weight pointまでの実効深(水等価深)が表示されます15。これは患者データの密

度の変化を考慮し、水中で同等の減弱を示す距離で示したものです。これを深さとして使うこと

で、部分的に不均質補正を取り入れることができます。

TAR/TPR/PDD

TPRxPSCF/PSCF(0)(blk と表示されている場合、TPR (deff, blk)×[ PSCF(blk) / PSCF(0) ]

を示します。deffは前述の Effective; skin、PSCFはファントム散乱係数、blkはブロック等価照

射野(Blk.Eq.Square)を示します。

XiOでは TPR、TSCF、PSCFが同じ基準条件 dref, Aref(例:10 cm深の 10x10 cm-2)で規格

化されています。TPR (deff, blk)×[ PSCF(blk) / PSCF(0) ] というのは分かりづらい表現です

が、これは TAR (deff, blk)のことです。そのことを以下に示します。

𝑇𝑃𝑅 𝑑eff, 𝑏𝑙𝑘 ×𝑃𝑆𝐶𝐹 𝑏𝑙𝑘

𝑃𝑆𝐶𝐹 0

=𝐷(𝑑eff, 𝐴blk)

𝐷(𝑑ref,𝐴blk)×

𝐷(𝑑ref,𝐴blk)𝐷air(𝐴blk)

𝐷(𝑑ref, 𝐴ref)𝐷air(𝐴ref)

×

𝐷(𝑑ref, 𝐴ref)𝐷air(𝐴ref)𝐷(𝑑ref, 0)𝐷air(0)

灰色の部分は互いに打ち消しあうので、

15詳細については「XiOが出力する深さについて」を参照。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 81 -

=

𝐷(𝑑eff, 𝐴blk)𝐷air(𝐴blk)𝐷(𝑑ref, 0)𝐷air(0)

𝐷(𝑑ref, 0)

𝐷air(0)= 𝑇𝐴𝑅 𝑑ref, 0

TARの 0照射野は一次線のみを考慮することを示しているので、

𝑇𝐴𝑅(𝑑ref, 0) = 𝑒𝑥𝑝 −𝜇 𝑑ref − 𝑑ref = 1

したがって、

𝑇𝑃𝑅 𝑑eff, 𝑏𝑙𝑘 ×𝑃𝑆𝐶𝐹 𝑏𝑙𝑘

𝑃𝑆𝐶𝐹 0 =

𝐷(𝑑𝑒𝑓𝑓 ,𝐴blk)

𝐷air(𝐴blk)

= 𝑇𝐴𝑅(deff , 𝐴blk)

本項目に表示されている数値は、表示されている Blk.Eq.Squareの値から TPRの数値を求

めて算出したものではないことに注意してください。Blk.Eq.Squareはたまにおかしな値を出

すことがありますが16、それは TPRの値には影響しません。

At Depth

Depth; skin(cm)の深さにおける TAR/TPR/PDDの数値を示します。

At Effective

Effective; skin(cm)の深さにおける TAR/TPR/PDD の数値を示します。プログラム内部で実

際に求まった weight pointにおける線量と、その点での基準線量(=空中線量)の比として内

部で計算される数値です。そのため、Depth; skin と Effective; skinに同じ深さが表示されて

いても、それぞれの TAR/TPR/PDDの数値が異なる場合があります。

PSCF(0)/PSCF(ec)

0×0における PSCF とコリメータ等価照射野(Coll.Eq.Square)における PSCF。XiOに登録

されている PSCFデータから引用される。PSCF(ec)については、線形に補間して求めます。

Dose Output

Coll.Eq.Square の照射野サイズにおける Dose Output。ここで表示される Dose Output は

[drefでの Calibration dose rate (cGy/MU) ]x TSCF(Coll.Eq.Square)に等しい。

SCD/SWD

16

「XiO が出力する等価正方形について」を参照してください。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 82 -

SCD と SWD

“SCD”・・・線源‐校正点距離(source-to-calibration point distance)。これは線源から、

Calibration Dose Rate(cGy/MU)や TSCFを測定した位置までの距離で、ビームデー

タに登録された固定値です。

“SWD”・・・線源‐weight point間距離(source-to-weight point distance)。

Ref. Depth or Dmax(cm)

これは基準深、つまり、Calibration Dose Rate(cGy/MU)や TSCFを測定したときの深さで、ビ

ームデータに登録された固定値です。多くの場合は 10cm 深で測定しているので、「10.0」と表

示されるはずです。

Tray Factor(composite)

トレイ係数です。ブロックを使用した時のみ表示されます。

Min or MU(open/wdg)

XiOにより算出された MUが表示されます。

Integer MU(open/wdg)

Min or MUを小数第 1位四捨五入で整数化したMUが表示されています。

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 83 -

Source Data に表示される項目は、使用しているビームデータの種類や作成したプランの内

容によって若干異なります。以下では、XiOにあらかじめ登録されているデモデータを使って、

以下のようなパターンを挙げながら Source Data に表示される各項目についてご説明しま

す。

パターン 1:シンプルな矩形照射野

パターン 2:ウェッジの入った照射野

パターン 3:ボーラスを使用した照射野

パターン 4:ブロックを使用した照射野

パターン 5:シンプルな電子線矩形照射野

パターン 6:ボーラスを使用した電子線照射野

パターン 7:ブロックを使用した電子線照射野

以降の例では、下図のような 30x30x30-cm の仮想ファントムを Patient Data として使用しま

す。座標は、ファントムの中心を(0,0,0)とします。各軸の方向は図の通りです。相対電子密度

は一様に 1.00であるとします。

Y

Z

X 30 cm

30 cm

30 cm

【図 68】仮想ファントムの図

Patient ID:cmsPHANTOM

Patient name:Phantom, CMS

Studyset ID:Phantom30

Description:Phantom 30 X 30

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 84 -

◆ Elekta MLCi タイプの治療機の場合 ➢後述の Beam Number1を参照。

一般的な Elekta治療機は、Length方向のジョーとWidth

方向のバックアップジョー、Width方向の MLCによる3段

式の構成です。XiO において照射野を形成すると自動的

に MLC が付随するため、ジョーコリメータのみのプランを

作成することはできません。

(Beam Modulator タイプの場合、JAW が W=21cm、

L=16 cm に固定されているため、Coll.Eq.Squareは常

に 18.16 cm になります)

◆ Varian治療機の場合 ➢後述の Beam Number2を参照。

一般的なVarian治療機はLength方向とWidth方向のジ

ョー、Width 方向の MLC による 3 段式の構成です。した

がって、ジョーのみの照射野を作成することが可能です。

◆ Siemens治療機の場合 ➢後述の Beam Number3を参照。

一般的な Siemens 治療機は Length 方向のジョーと

Width方向のMLCによる 2段式の構成であるため、本

来はジョーのみの照射野を作成できません。しかしなが

ら、XiO の取り扱いでは、矩形照射野の場合 MLC をモ

ノブロックの Width ジョーとみなしているので、ジョーの

みの照射野を計画することが可能です。

セットアップ:SAD 100 cm

ウェイトポイント:10 cm 深

照射野:ジョー10 cm×10 cm

(Elektaは MLC有)

パパタターーンン11::シシンンププルルなな XX線線矩矩形形照照射射野野

MLC

Backup Jaw

Length Jaw

MLC

Width Jaw

Length Jaw

MLC

Length Jaw

【図 69】仮想ファントムの図

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 85 -

これら3つのビームの Source Dataは以下のようになります。

各項目の意味は、前述の通りです。ここでは、緑色の破線で囲われた項目と水色の点線で囲

われた項目に注目してみてみましょう。

【図 70】各治療機メーカーの通常 X線の Source Indexの例

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 86 -

point 座標の表示

☞セットアップは「SAD」、距離は 100 cm、SSDは 90 cm(深さが 10 cm のため)

☞アイソセンターの座標(X,Y,Z)は(0.00,0.00,5.00)

☞投与線量は 1000 cGy、ウェイトポイントの座標(X,Y,Z)は(0.00,0.00,5.00)

☞アイソセンター深の照射野中心にウェイトポイントを定義

☞ウェイトポイントにおける深さは 10 cm

アイソセンターの座標(X,Y,Z)が(0.00,0.00,5.00)

となっているのは、患者座標の原点を仮想ファン

トムの中心としたためです。30 cm の仮想ファント

ムの中心が原点となっているので、表面から 10

cm の深さは中心から+方向 5 cmの位置になり

ます。

point ブロック等価照射野

☞ブロック等価照射野はMLC もしくはブロックが挿入されているビームにだけ表示される

☞Beam Number1には MLCが挿入されている

☞Beam Number1のみ TPRxPSCF/PSCF(0) (blk と表示されており、Blk. Eq. Squareにおける

TPRxPSCF/PSCF(0)であることを示している

ブロック等価照射野は、MLC もしくはブロックが挿入されているときにだけ表示されます。

TAR/TPR/PDD に TPRxPSCF/PSCF(0)のときは、コリメータ等価照射野における数値が表

示されていることを示しています。

10 cm

5 cm

30 cm

【図 71】数値水ファントムの模式図

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 87 -

上図のウェッジは簡易的に示したもので、実際の状態とは異なります。

まず、物理ウェッジが挿入されたプランを考えてみましょう。

◆ Elekta治療機(外付けウェッジ) ➢詳細は後述の Beam Number4を参照。

※他治療機の物理ウェッジと考え方は基本的に同じです。

point ウェッジの表示

Wedge ID/Orient

ウェッジが挿入されている場合、ウェッジの ID と挿入方向が表示される。挿入方向には、ウェ

ッジ方向を定義している向き(“Heel”か“Toe”)も表記される。

WF/norm

ウェッジファクター(ブロック等価照射野において照射野中心における値)とウェッジ規格化

(“opened”か“wedged”)が表示される。

患者データ:30×30×30 cm3 の仮想フ

ァントム

セットアップ:SAD 100 cm

ウェイトポイント:10 cm 深

照射野:ジョー10 cm×10 cm

(Elekta、Siemensは MLC有)

ウェッジ角度:60度

100 cm

30 cm

90 cm

10 cm

10 cm深

【図 72】ウェッジを入れた照射

パパタターーンン 22::ウウェェッッジジのの入入っったた XX線線照照射射野野

【図 73】ウェッジを入れた照射

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 88 -

“opened”・・・ウェッジを挿入した治療計画をたてる際に、ウェッジを挿入する前の状態

で weight pointに到達する線量を投与線量として設定した場合の表示。

“wedged”・・・ウェッジを挿入した状態(ウェッジを透過した後)で weight pointに到達す

る線量を投与線量として設定した場合の表示。

次に、Elekta治療機の Motorized Wedgeの場合を見てみましょう。

◆ Motorized Wedge ➢詳細は後述の Beam Number5を参照。

【図 74】ウェッジを入れた照射

の Source Indexの例

(Elekta機+外装ウェッジの場合)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 89 -

【図 75】ウェッジを入れた照射

の Source Indexの例

(Elekta機+内装ウェッジの場合)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 90 -

point Motorized Wedgeのファクター

☞ウェッジファクターは、ウェッジの種類によって大きく変わります。詳細は後述を参照。

☞Motorizedのみ、Open照射野とWedge照射野に投与される線量(cGy)が表示される。

☞Motorizedのみ、Frac MU/time(OpenビームとWedgeビームのMU比)が表示される。

Motorized Wedgeは 60度の物理ウェッジが入った照射野と OPEN照射野の組み合わせに

より任意の傾きの線量分布を形成するため、ウェッジファクターは 60度の物理ウェッジのファ

クターしか登録されません。つまり、Source Dataにはどの角度でも、常に 60度のウェッジフ

ァクターが表示されることになります。

15度 30度 45度

※Motorized Wedgeのウェッジファクターは、角度が変わっても変化しません。

※OPEN照射野の線量とウェッジ照射野の線量を足し合わせると投与線量に等しくなります。

※Frac MU / time(open/wdg)の open と wdg を足し合わせると 1.000になります。

※60度のときは、OPENの照射野はない(Wedge照射野のみ)ということになります。

【図 76】Motorized Wedge の角度を変化させたときの Source

Index

(Elekta機+内装ウェッジの場合)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 91 -

さらに、Enhanced Dynamic Wedge と Virtual Wedgeを見てみましょう。

◆ Varian 治療機(Enhanced Dynamic Wedge) ➢詳細は後述の Beam Number6 を参

照。

◆ Siemens治療機(Virtual Wedge) ➢詳細は後述の Beam Number7を参照。

【図 78】Siemens Virtual Wedgeを使った照射野の図

(Elekta機+内装ウェッジの場合)

【図 77】Varian EDWを使った照射野の図

(Elekta機+内装ウェッジの場合)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 92 -

Enhanced Dynamic Wedge と Virtual Wedgeは照射中にジョーが移動することにより傾きを

形成します。ウェッジ角度は、ジョーが移動中の MU と、ジョーが開ききった OPEN 照射野で

のMUとの比で決まります。Virtual Wedgeはビーム軸中心において投与線量となるように定

義されているため、ウェッジファクターはどのウェッジのどの照射野でもほぼ1となります17。

17

詳細については、、「ClarksonとConvolution / Superpositionアルゴリズムにおけるウェッジフ

ァクターの違いはどこから生じるか?」を参照してください。

【図 79】ウェッジを入れた照射の Source

Indexの例

(Varian機 EDW と Siemens機 VWの場合)

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 93 -

10 cm深

10 cm

100 cm

30 cm

90 cm

←1 cm厚

患者データ:30×30×30 cm3の仮想ファントム

セットアップ:SAD 100 cm

ウェイトポイント:10 cm 深

照射野:ジョー10 cm×10 cm

MLC不整形照射野

ボーラスの厚さ:1 cm

ボーラスの相対電子密度:1.00

【図 80】ボーラスを入れた照射

ボーラスの厚さや相対電子密度は、[Report]-[Bolus]から以下の図のように確認することがで

きます。

【図 82】ボーラスのレポート

【図 81】プラン作成例

パパタターーンン 33::ボボーーララススをを使使用用ししたた XX 線線照照射射野野

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 94 -

point Bolus使用時のフラクション

ボーラスを挿入すると Tx aids:に“Bolus”の項目が増えています。今回の例ではフラクション

を2回とし、それぞれボーラスあり(bol)・ボーラスなし(unbol)としています。そのため、各項

目に“bol”と“unbol”の値がそれぞれ記載されています。電子線の場合、unbol は設定できま

せんのでご注意ください。

【図 83】ボーラスを入れた

照射の Source Indexの例

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 95 -

◆ ブロックを使用した場合

◆ Composite Tray Factorのみを使用した場合

Patient:30×30×30 cm3の仮想ファントム

セットアップ:SAD 100 cm

ウェイトポイント:10 cm 深

照射野:ジョー 10 cm×10 cm(MLC有)

Composite Tray Factor:0.800

【図 85】トレイのみ

10 cm深

10 cm

100 cm

30 cm

90 cm

Patient:30×30×30 cm3の仮想ファントム

セットアップ:SAD 100 cm

ウェイトポイント:10 cm 深

照射野:ジョー10 cm×10 cm(MLC有)

ブロック:(0,2)の位置を中心に X方向 2 cm、Y

方向 3 cm

※エレクタ治療機では、アパーチャーは使用できま

せん。

【図 84】ブロックとトレイ

パパタターーンン 44::ブブロロッックク・・ブブロロッッククトトレレイイをを使使用用ししたた照照射射野野

10 cm深

10 cm

100 cm

30 cm

90 cm

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 96 -

[Beam]-[Edit Beam]で表示される Photon Beam ダイアログにおいて、Composite Tray

Factor を設定することが出来ます。

ブロックが入っていない状態でComposite Tray Factorを変更すると、ビームの出力にその数

値が乗じられます。つまり【図 84の場合、0.800が乗じられるので、計算値は全体的に元の

ビームの 80%の数値となります(20%減弱することになります)。この方法は、ビームが寝台を

透過する場合など、ビームを全体的に減弱させたいときにも使用することができます。

【図 86】 トレイファクターの設定

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 97 -

Block Equivalent Field は、ブロックや MLC によって形成された照射野を対象に計算されま

す。

point Composite Tray Factor使用時の MU値

Beam Number 10 の MU 値 1591.57MU は、元のビーム(Beam Number1)の MU 値

1273.25MUの 80%になっていることが分かります。

※表示桁数と四捨五入の影響で、厳密に 80%ぴったりにはならない場合もあります。

【図 87】ブロックとトレイとが入

った場合の Source Indexの例

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 98 -

最後に、電子線の Source Dataを見てみましょう。

X線と同様に、30×30×30 -cm の仮想ファントムを Patient Data として使用します。相対電子

密度は一様に 1.00であるとします。

パターン 5~7のビームの設定は以下の項目が共通です。

【図 88】 シンプルな電子線矩形照射野

パパタターーンン 55::シシンンププルルなな電電子子線線矩矩形形照照射射野野

OOPPEENN))

セットアップ:SSD 100 cm

ウェイトポイント:ビーム軸上 2 cm深

Cone ID:10.4 x10.4

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 99 -

厚さが 1.5 cm で相対電子密度が 1.0のボーラスをファントム表面全体に設定します。

ファントム表面において幅 3 cmのブロックを照射野の片側を覆うように設定します。

パパタターーンン 77::ブブロロッッククをを使使用用ししたた電電子子線線照照射射野野

パパタターーンン 66::ボボーーララススをを使使用用ししたた電電子子線線照照射射野野

幅 3 cm

【図 89 】

ボーラスを

使用した電

子線照射野

【図 90 】

ブロックを使

用した電子

線照射野

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 100 -

上記の電子線プランのSource Indexは以下のように表示されます。おおまかな内容はX線と

ほぼ同じです。

以下に、上記の3つの電子線プランについて表示されている項目をまとめます(既述の項目を

除きます)。

Cone ID

治療計画に使用したコーンの名称です。

Field Size(cm)

アイソセンター面におけるコーン開口部の大きさを、左右×頭足の形式で示しています。

【図 91】 電子線ビー

ムの Source Index

XiO Inside

Elekta K.K.. PH_INSIDE_005 - 101 -

Calc algorithm

線量計算に使用したアルゴリズムが表示されます。電子線の場合、Pencil Beamか、Monte

Carloのいずれかになります。(Monte Carloを使用するにはライセンスの購入が必要です)

SSD/bol(output) (cm)

XiOには複数の SSDで測定したOutput Factorが登録されています。これらの SSDのうち、

現在のビームのものに最も近いSSDがここに表示されています。このSSDのOutput Factor

が線量計算に使用されます18。ボーラスが使用されているビームの場合は SBD(線源-ボーラ

ス間距離)に最も近いものが表示されます。

Frac MU / time(unbol/bol)

ボーラス有・無のMU比。ただし、電子線の場合、unbolは設定できないため、ボーラスのある

ビームでは常に“0.000 / 1.000”と表示される。

Num Frac (unbol/bol)

ボーラス有・無のフラクション数。ただし、電子線の場合、unbol は設定できないため、ボーラ

スのあるビームでは常に“0 / 1”と表示される。

18電子線の MU 計算の詳細については、別資料『電子線ペンシルビーム・モデリングの A・

B・C』の付録“XiO 電子線ペンシルビームのモニターユニット計算”を参照してください。

XiO Inside

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XIO_TUT_INSIDE_JPN, rev. A.