第 14 講 親族法
大阪大学大学院国際公共政策研究科教 授
大久保 邦彦
法学部 1 年生配当科目 民法入門
1
親族法総則
2
民法典の構造第 1 編 総 則第 2 編 物 権第 3 編 債 権第 4 編 親 族第 5 編 相 続
財産法
家族法
民法典はパンデクテン体系を採っている
3
親族編の構造第 1 章 総 則第 2 章 婚 姻第 3 章 親 子第 4 章 親 権第 5 章 後 見第 6 章 保佐及び補助第 7 章 扶 養
4
親族の効果
親 族
扶 養 相 続5
親族法の基本原理
6
旧民法公布
新民法公布
法典論争
明治維新
1890
1896-1898
1868
フランス法
ドイツ法穂積陳重・富井政章・梅謙次郎
ボワソナード
民法出でて、忠孝亡ぶ
(穂積八束)改正
7
明治民法「家」制度を採用 戸主権を「家」の中心とする。 「家」の基礎に戸籍がおかれる。 戸主の地位は長男により単独相続される。 婚姻関係は親子関係の従属する。 婚姻・離婚には、父母の同意が必要。 妻は夫の「家」の氏を名乗らなければなら
ない。 妻は婚姻により行為無能力となる。
8
日本国憲法13 条(個人の尊厳) すべて国民は、個人として尊重される。生
命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
24 条 1 項(両性の本質的平等) 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫
婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
9
解釈の基準(民 2 )
この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、
解釈しなければならない。 10
新民法
「家」制度の廃止平等相続婚姻は男女の合意による。
夫婦の平等 11
戸 籍
12
戸 籍 戸籍法に基づいて作成される国民
各個人の身分関係を公証する公文書。
原則として、その市町村の区域内に本籍を定める夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編製される。
出典: 『法律用語辞典〔第 3版〕』(有斐閣) 13
戸籍編成上の基本的な考え方
① 1 夫婦 1 戸籍(戸 6 ・ 16 )② 親子同一戸籍(戸 18 )③ 3代同一戸籍の禁止(戸 16 ・
17 )④ 同氏同籍(戸 6 ・ 16 ・ 17 ・
18 )⑤ 成年者分籍自由(戸 21 )⑥ 復氏復籍(戸 19 )
14
戸籍法 18 条① 父母の氏を称する子は、
父母の戸籍に入る。 ②前項の場合を除く外、
父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
③ 養子は、養親の戸籍に入る。 15
戸籍の届出創設的届出-婚姻・協議離婚・養子縁組・ 協議離縁・任意認知・氏の変更報告的届出-出生・死亡・裁判離婚・裁判離縁・ 強制認知・遺言による認知
16
親 族
17
家系図
X Y
A BC
D
P Q
V W
R S
ZJ
K
18
親族の範囲(民725 )
① 6 親等内の血族② 配偶者③ 3 親等内の姻族
19
親等の計算(民726 )
① 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
② 傍系親族の親等を定めるには、その 1 人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の 1 人に下るまでの世代数による。
20
血族と姻族血族
自然血族=血縁のある者法定血族(民 727 )
姻族配偶者の血族血族の配偶者
21
血族・配偶者・姻族
X Y
A BC
D
P Q
V W
R S
ZJ
K
22
血族・配偶者・姻族
X Y
A BC
D
P Q
V W
R S
ZJ
K
23
姻族関係の終了(民728 )
①姻族関係は、離婚によって終了する。
②夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
24
直系・傍系
X Y
A BC
D
P Q
V W
R S
ZJ
K
25
尊属・卑属
X Y
A BC
D
P Q
V W
R S
ZJ
K
(直系)血族についてのみ問題となる
26
夫 婦
27
婚 姻
28
婚 姻両性の全人格的・性的結合夫婦という共同体を形成することによって、法律で婚姻に与えられた効果を得ることを目的とする男女間の契約 29出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・
2007) 418頁
契約の種類契 約
身分契約
物権契約
債権・債務
物権変動
身分の変動
債権契約
30
婚姻予約(婚約)将来の婚姻を約束する男女間の諾成、不要式の契約。
その不履行は損害賠償責任を生ずるが、当事者の意に反してその履行を強制することはできない。
31出典: 『法律用語辞典〔第 3版〕』(有斐閣)
債権者の救済方法
② 損害賠償
債務不履行の事実
債務不履行の事実+
帰責事由
① 強制履行
③ 契約解除 32
婚姻の要件
33
婚姻の要件
①婚姻意思の合致②婚姻障害の不存在③婚姻の届出(民739 ) ・受理(民740 )
34
婚姻の無効(民742 )
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1. 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
2. 当事者が婚姻の届出をしないとき。 ただし、その届出が第 739 条第 2 項
に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
35
婚姻意思 実質的意思説(多数説)
社会通念上、夫婦という婚姻生活共同体を形成しようとする意思を要求する。
最判 S44 ・ 10 ・ 31 :婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があったとしても、それが単に子の嫡出化を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、婚姻は効力を生じない。
形式的意思説(離婚意思については、判例) 届出意思説 法的効果取得意思説
36出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007) 419頁、 428頁
婚姻意思の存在時期婚姻届の作成時 and 婚姻届の受理
時【最判 S44 ・ 4 ・ 3】 事実上の夫婦共同生活関係にある者が婚
姻意思を有し、その意思に基づいて婚姻の届書を作成したときは、届書の受理された当時意識を失っていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届書の受理により婚姻は有効に成立する。
37
不受理申出制度(戸 27 の 2Ⅲ )
何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第 1 項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。
38
戸籍事務担当者の権限
◎形式的審査権限⇔×実質的審査権限
【戸籍法 27 の 2Ⅰ】 市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
39
出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007) 413頁
婚姻障害 婚姻適齢(民 731 ) 重婚の禁止(民 732 )再婚禁止期間(民 733 )近親婚の禁止(民 734-736 )未成年者の婚姻(民 737 ) 成年被後見人の婚姻(民738 )
40
婚姻の無効・取消し
41
婚姻の無効(民742 )
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1. 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
2. 当事者が婚姻の届出をしないとき。 ただし、その届出が第 739 条第 2 項
に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
42
心裡留保による婚姻 X と Y は、婚姻するつもりがない
にも かかわらず、婚姻の届出をした。〔解決〕 当事者の真意に基づくことを絶対に 必要とする行為(身分行為)には、 民 93 は適用されない。 この婚姻は、民 742 により、常に
無効。
43
「総則」の意義 「総則」=共通ルール 「第 1 編 総則」は、形式的には、 「第 2 編 物権」 ~ 「第 5 編 相続」の共通ルール
実際には、「第 2 編 物権」「第 3 編 債権」
のみの共通ルールが多い。結局、「第 1 編 総則」は、 財産法の共通ルールと言える。
44
婚姻の取消し(民743 )
婚姻は、次条から第 747 条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
45
不適法な婚姻の取消し
(民 744 )① 第 731 条から第 736 条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。 ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
② 第 732 条又は第 733 条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。 46
婚姻適齢(民 731 )
男は、 18歳に、 女は、 16歳にならなければ、
婚姻をすることができない。
47
再婚禁止期間(民733 )
①女は、前婚の解消又は取消しの日から 6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
②女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
48
詐欺又は強迫による婚姻の取消し(民 747 )
①詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
②前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後 3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
49
婚姻の取消しの効力 身分上の効力
遡及効なし(民 748Ⅰ ) 姻族関係の終了(民 749→728Ⅰ ) 子の監護に関する事項(民
749→766 )復氏(民 749→767 )祭祀財産の承継(民 749→769 )
財産関係上の効力(民 748ⅡⅢ ) 50出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007) 422頁
婚姻の効果
51
当事者間での効果夫婦同氏(民 750 )配偶者相続権(民 890 )同居・協力・扶助の義務(民752 )
貞操義務(民 770Ⅰ① )夫婦間の契約取消権(民754 )
52出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)422-424頁
同居、協力及び扶助の義務
(民 752 )
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 53
当事者以外の者に対する効果
成年擬制(民 753 ) 姻族関係の発生⇒扶養義務の発生(民 877Ⅱ ) 婚姻準正(民 789Ⅰ ) 婚姻関係の侵害に対する不法行為責任
他方配偶者に対する不法行為責任⇒成立
未成年子に対する不法行為責任⇒不成立
54出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)424-425頁
夫婦財産制夫婦財産契約(民 755-759 )法定財産制
婚姻費用の分担(民 760 )日常家事債務の連帯責任(民761 )
夫婦別産制(民 762 )55
出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)425-426頁
内 縁
56
内 縁実質上は夫婦でありながら、婚姻の届出
を行っていないため法律上の婚姻とは認められない男女の関係。
社会的に正当な夫婦と評価される点で妾(めかけ)関係と区別され、氏の変更、子の嫡出性、配偶者相続権は認められないが、その他の点では婚姻同様の保護を与える傾向にある。
57出典: 『法律用語辞典〔第 3版〕』(有斐閣)
最判 S33 ・ 4 ・ 11 いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえ
に、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。
内縁が法律上の婚姻に準ずる関係と認むべきであること前記説明の如くである以上、民法 760 条〔婚姻費用の分担〕の規定は、内縁に準用されるものと解すべきであ〔る。〕
58
婚姻の効果の類推
類推される 婚姻費用の分担義務 扶助・協力義務貞操義務 日常家事債務の連帯責任
財産分与
類推されない 夫婦同氏 子の嫡出性 配偶者相続権 成年擬制 姻族関係 準正 59
出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)436-437頁
離 婚
60
離婚方法協議離婚調停離婚審判離婚裁判離婚
61
協議離婚の要件(民 763-769 )
離婚意思(=形式的意思説)親権者の指定(民819Ⅰ,765 )
届 出(民 764→739 )
62出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)427-429頁
裁判離婚の要件(民770 )
① 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1. 配偶者に不貞な行為があったとき。 2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 3. 配偶者の生死が 3 年以上明らかでないとき。 4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
② 裁判所は、前項第 1号から第 4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
63
有責配偶者の離婚請求(最判 S27 ・ 2 ・
19 ) 論旨では本件は新民法 770 条 1 項 5号にいう婚姻関
係を継続し難い重大な事由ある場合に該当するというけれども、原審の認定した事実によれば、婚姻関係を継続し難いのは上告人が妻たる被上告人を差し置いて他に情婦を有するからである。
上告人さえ情婦との関係を解消し、よき夫として被上告人のもとに帰り来るならば、何時でも夫婦関係は円満に継続し得べき筈である。
即ち上告人の意思如何にかかることであつて、かくの如きは未だ以て前記法条にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものということは出来ない。
64
有責配偶者の離婚請求(最判 S27 ・ 2 ・
19 ) 上告人は上告人の感情は既に上告人の意思を以てし
ても、如何ともすることが出来ないものであるというかも知れないけれども、それも所詮は上告人の我侭である。
結局上告人が勝手に情婦を持ち、その為め最早被上告人とは同棲出来ないから、これを追い出すということに帰着するのであって、もしかかる請求が是認されるならば、被上告人は全く俗にいう踏んだり蹴たりである。
法はかくの如き不徳義勝手気侭を許すものではない。
道徳を守り、不徳義を許さないことが法の最重要な職分である。
総て法はこの趣旨において解釈されなければならない。
65
有責配偶者の離婚請求(最判 S62 ・ 9 ・ 2 )
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない 66
離婚の効果 身分上の効果
婚姻関係の終了 再婚ができる(但し、民 733Ⅰ ) 姻族関係の終了(民 728Ⅰ ) 復氏と婚氏続称(民 767 ) 子の監護に関する事項(民 766 )
財産上の効果 財産分与の請求(民 768 )
67出典: 高橋朋子・床谷文雄・棚村政行『民法 7 親族・相続〔第 2版〕』(有斐閣アルマ・2007 ) 81-82頁
財産分与(民768←771 )
夫婦財産関係の清算離婚後の扶養慰謝料
68
親 子
69
実親子関係
70
嫡出親子関係
XW
A
婚 姻
分娩
母子関係
母の夫が父になる。
X が A の遺伝学上の父でないときは、X は嫡出を否認できる。(民 774 ) 71
非嫡出親子関係
XW
A
分娩
母子関係
認知
父子関係
X が A の遺伝学上の父であっても、認知をしない限り、法律上の父子関係は発生しない。
72
嫡出子
73
推定される嫡出子(民 772 )
①妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
②婚姻の成立の日から200 日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300 日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
74
嫡出推定
前 婚 後 婚
200日 300 日
再婚禁止期間( 6箇月)
嫡出推定
200日
嫡出推定
75
二重の嫡出推定
前 婚 後 婚
200日 300 日
再婚禁止期間( 6箇月)
嫡出推定
200日
嫡出推定
76
父を定める訴え(民 773 )
第 733 条第 1 項〔再婚禁止期間〕の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
77
嫡出否認形成訴訟否認権者:夫のみ(民 774 )否認の方法:訴えの提起のみ(民
775 )否認権の喪失
嫡出の承認(民 776 ) 子の死亡(人訴 27Ⅱ ) 出訴期間の経過(民 777 )
78
出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007) 440-441頁、松本博之『人事訴訟法』(弘文堂・ 2006) 328頁
推定されない嫡出子
婚 姻
200 日 300 日
推定される嫡出子推定されない嫡出子
79
推定の及ばない子 形式的には民 772 の要件を充たすために 嫡出推定を受けるが、 現実には夫による懐胎が実質的に不可能な場合⇒嫡出推定の規定が排除される。 外観説(判例):夫婦の別居など、婚姻の実態が 存しないことが外形的・客観的に明らかで、 夫による懐胎が外観的に不可能な場合のみ 血縁説:生殖不能・血液型相違でも可
80出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・ 2007)441-442頁
親子関係不存在確認の訴え
(人訴 2 条 2号) 確認訴訟 財産関係上の紛争の先決問題にすぎない場合は、その理由として、親子関係の存否を主張できる。
親・子のほか、確認の利益があれば、第三者も訴えを提起できる。
親又は子の死亡後も、訴えを提起できる(被告については、人訴 12ⅡⅢ )。
81出典: 松本博之『人事訴訟法』(弘文堂・ 2006) 359-368頁、山木戸克己『人事訴訟手続法』(有斐閣・ 1958) 81‐91頁(特に 83頁)
非嫡出子
82
非嫡出子 婚姻関係にない男女から生まれた子 父の認知により、父子関係を生ず
る。 氏:母の氏(民 790Ⅱ )⇒父(民
791Ⅰ ) 親権者:母⇒父(民 819ⅣⅤ ) 相続:非嫡出子の相続分は、嫡出子
の 相続分の 2 分の 1 (民
900④但前)
83出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007) 442頁
認 知(任意認知) 非嫡出子:父の認知により、父子関係を生ずる
(民 779 )。 血縁上の父子関係 +認知⇒法律上の父子関係 認知能力(民 780 ) 認知の方式(民 781 ) 成年の子の認知(民 782 ) 胎児・死亡した子の認知(民 783 ) 認知無効の主張(民 786 )
84
無効行為の転換
XW K
A Y
X=W間の嫡出子として、出生届を提出
認知届としての効力を認める
婚 姻
85出典: 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』279頁
認知の訴え(民787 )
(強制認知)子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができ
る。ただし、父又は母の死亡の日から3 年を経過したときは、この限りでない。
86
認知の効果法律上の父子関係の発生(遡及効(民
784 )) 扶養義務(民 877 ) 相続権(民 900④ ) 父の氏への変更可能性(民 791Ⅰ ) 親権者の変更可能性(民 819ⅣⅤ )
共同親権にはならない。 子の監護に関する事項(民 788→766 )87
出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007) 445頁
準 正(民 789 )
非嫡出子⇒嫡出子 婚姻準正(民 789Ⅰ ) :認知⇒婚姻認知準正(民 789Ⅱ ) :婚姻⇒認知【効果発生時点】-文言上:認知時、解釈上:婚姻時
氏の変更(民 791Ⅱ )88出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・
2007) 416頁
養親子関係
89
養子の種類養 子: 自然的親子関係のない者の間に、法律上
の 親子関係を作り出すことを目的とした制
度普通養子 実方の血族との親族関係が終了しない。特別養子 実方の血族との親族関係が終了する。
90
養子制度の変遷「家のため」の養
子
「親のため」の養子
「子のため」の養子
91
養親子関係
X
A
養子縁組A は X の嫡出子たる
身分を取得する。(民 809 )
92
縁組の要件と効果 要 件
縁組意思:実質的意思説(判例) 届 出
効 果 嫡出親子関係の発生(民 809 ) 普通養子⇒実親子関係は消滅しない。 親族関係の発生(民 727 ) 養子の氏(民 810 ) 近親婚禁止(民 736, 734Ⅰ但)
93
縁組の当事者単独縁組(⇔共同縁組)の原則配偶者の同意は必要(民796 )
未成年養子⇒共同縁組(民795 )
94
養親・養子となる資格
養 親:成年者(民 792 ) 養 子
尊属養子・年長者養子の禁止(民793 )
後見人が被後見人を養子とする縁組(民 794 )
未成年養子:家庭裁判所の許可(民798 )- 15歳未満:+代諾養子(民 797 )
95
× 無効行為の転換
XW S
A Y
X=W間の嫡出子として、出生届を提出
養子縁組としての効力はない
婚 姻
分娩
96出典: 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』279頁
離 縁協議離縁(民 811Ⅰ-Ⅴ 、 811 の2 )
調停離縁審判離縁裁判離縁(民 814-815 )死後離縁(民 811Ⅵ ) 97
離縁の効果 親族関係の消滅(民 729 )
養親=養子間の法定嫡出親子関係の消滅 養子=養親の血族間の法定血族関係が終了 法定嫡出親子関係の成立後、 それを基礎として成立した親族関係の終了
復氏(民 816 ) 原則:当然復氏(民 816Ⅰ 本)、例外(民 816Ⅰ但)
氏の続称(民 816Ⅱ )98
特別養子 意義・効果:実方の血族との親族関係が終了する養子縁組(民 817 の 2Ⅰ 、 817 の9 本)
目的・必要性(民 817 の 7 ) 成立:家裁の審判(民 817 の 2Ⅰ ) 養親となる者の資格(民 817 の 3-4 ) 養子となる者の資格(民 817 の 5 ) 養子となる者の父母の同意(民 817 の
6 ) 離縁:原則不可(民 817 の 10-11 )
99
扶 養
100
扶養義務者(民877 )
① 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
② 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3 親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
③ 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
101
扶養義務(民 877-881 )
ある人の生活を維持するためこれに経済的給付を行う義務。
主に一定親族間に認められる生活保障の義務をいう。
広義では、夫婦間の扶養義務(民 752 )及び未成年者に対する親権者の扶養義務(民820 )(生活保持義務)と、それ以外の親族間の扶養義務(生活扶助義務)とのすべてを含む。
102出典: 『法律用語辞典〔第 3版〕』(有斐閣)、大村敦志『家族法〔第 2版〕』(有斐閣・ 2002 ) 99-100頁
同居、協力及び扶助の義務
(民 752 )
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 103
監護及び教育の権利義務(民 820 )
親権を行う者は、
子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
104
扶養の方法面倒見的(身上的)扶養
同居扶養(引取扶養) 身上監護扶養
経済的扶養金銭扶養 それ以外の給付扶養
105出典: 松尾知子『新版注釈民法 (25) 〔改訂版〕』(有斐閣・2004 ) 791-792頁
親族間の扶け合い(民 730 )
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならな
い。
実定法的な意味はない
106出典: 大村敦志『家族法〔第 2版〕』(有斐閣・2002 ) 244頁
扶養請求権の処分の禁止
(民 881 )
扶養を受ける権利は、処分することができない。
帰属上の一身専属権
譲渡・質入れ・相殺・相続の対象とならない
107