Transcript
Page 1:          スリット・コリメータ / カメラボディ  /  ハウジング

            スリット・コリメータ / カメラボディ / ハウジング スリットとコリメータはカメラ内部に納められコンパクトな形となっている。コリメータは 2.3mm 間隔で並んだ厚さ 0.1mm の燐青銅でできており、軟 X 線反射防止のため燐青銅表面はケミカルエッチング処理され、さらに可視光反射防止のため黒クロムメッキが施されている。スリットはタングステン ( 幅 2.7mm) である。 CCD は可視光に感度をもつが CCD 表面に蒸着したアルミで遮光するため optical blocking filter はなく、カメラに機械的な駆動部分はない。そのためカメラの構造が XIS に比べ非常に簡単化されている。 CCD の進展がこれを可能にしており SSC で成し遂げた重要なポイントである。

         カメラボディ内部(左)とカメラから外したスリット・コリメータシステム(右: CCD 側から見た図)

                    SSC の構成

   SSC の構成要素を上に示す。 SSCU(SSC-Unit) は CCD を16個とプリアンプ等の回路を含む2つのカメラである。 SSCE(SSC-Electronics) は SSCU への CCD 駆動信号を出すと同時に SSCU からの CCD 信号をデジタル化する。 DP(Data Processor) は CCD 画像から X 線イベントを取り出しテレメトリデータの編集を行うと同時に地上からのコマンドを選別し SSCE へのコマンドも出す。 XIS の DE 機能を SSC では DP が担当し、 AE/TCEの機能を SSCE が担当する。 SSCE 、 SSCU の製作は(株)明星電気が、 DP は NTSpace (株)が行う。上図で冷却系は省略している。

    全天 X線監視装置用X線 CCDカメラの開発

MAXIのホームページ:  http://www-maxi.tksc.jaxa.jp/E-mail: [email protected]

冨田洋、松岡 勝、上野 史郎、片山 晴善 、川崎一義 (JAXA) 、常深 博、宮田 恵美、上村正樹 ( 大阪大 )

全天 X 線監視装置(通称 MAXI )は国際宇宙ステーションに搭載する X 線オールスカイモニターで X 線天体を史上最高の感度で監視する。比例計数管と CCD を用いた2種類のカメラがあり、本ポスターでは CCD カメラ(通称 Solid-state Slit camera = SSC )について紹介する。 SSC は Suzaku/XIS から NeXT/SXI への重要なステップでもあり、それらと比較しながらカメラの紹介を行う。

                   冷却、熱設計  CCD の冷却にはペルチェ素子を使用する。素子からの熱はカメラボディを通じてパッシブラジエター +ヒートパイプで宇宙に逃がす。 Suzaku/XIS からの進展は CCD への熱流入を徹底的に小さくしたことにある。 CCD 素子はペルチェ素子自身のみで機械的に支えられ、 CCD 表面はアルミ蒸着、裏面は金蒸着で輻射による熱流入を防ぐ。強度と簡素化のためペルチェは一段で、 CCD メーカー(浜松ホトニクス)で準備された。ペルチェ素子の機械的強度は H2A(HTV) にも対応し、 Hayabusa(M5) での実績もある。但しカメラ取り付けの際のネジトルク、熱サイクルには要注意である (SXI での注意点その1 ) 。ペルチェ素子は 電気的には DC/DC の変換効率のため8個が直列に並んでおり、一つが故障すると他の 7 個が使えなくなるデメリットがある (SXI での注意点その2 ) 。ペルチェの制御は電流一定、 CCD温度をアクティブに一定の2モードを既に確立している。  CCD (及びカメラ全体 ) からラジエターへの熱の輸送は Loop Heat Pipe で行う。 MAXIはポインティング衛星でないためラジエターは常に深宇宙をみているわけでなく、軌道にあわせて常に温度が変化する。そのため CCD カメラ温度もダイナミックに変動するが、 LHP ではそれでも正常に動作することが解析的に示されている。 CCD の動作温度が XIS と SSC で大きく違うがこれは使用するウェハの違いに起因する。SSC では Epi を使用しているためダークカレントが圧倒的に小さい。これに加え暗電流低減モードもサポートし、これにより動作温度を 10℃程度稼ぐことができている。  SSC では露光中は CCD の駆動を行わないので読み出しに必要な電流を OFF することも可能である。 SSC ではそのような設計を行ったが、電流安定に時間がかかり読み出しに影響することから常に電流を流すことにした。これによる熱流入はふえたものの、 CCD温度への影響は小さいことが実測で示されている。 CCD 内蔵温度計は測定時のみ ONである。

                 アナログ回路系  MAXI の回路部 (SSC-Electronics : SSCE) には、電源部、 DP との IF 部分、ペルチェ制御、駆動・読み出し部の4つに分かれる。駆動・読み出し部は2カメラで独立している。各カメラでは 16 個の CCD を同時でなく順番に読み出し、1つの CCD を読み出している間が他の CCD の露出時間になる。駆動はマルチプレクサで切り替える。駆動電圧は全 CCD で共通である(但し電荷注入は CCD毎に可変)。読み出しは積分方式を採用しており(XIS と同じ ) 、駆動速度は125 kHz (8usec/pixel) である。積分回路の性能とデジタル処理速度が駆動速度を制限している。 CCD 駆動は標準で binning を行う。 XIS でいうところの timing mode である。 binning=0 は診断モードでのみ利用される。

            SSCE の駆動・読み出し部(左)と SSCU のプリアンプ部(ともに EM )   MAXI の開発で最後まで問題が多かったものの一つがこの回路系である。今後の参考のため、以下に例を挙げる。 NeXT/SXI とは構成が違うが今後の参考として頂きたい。 駆動パワー ( 電流 ) がたりない  SSC はひとつの回路系で 16CCD を駆動する。少ない個数で性能が出ていても CCD を増やすと性能が出ず問題になった。とくに注意すべきなのはたて転送クロックである。  CCD の個性が強い 各 CCD の最適駆動電圧が異なり、出力信号のゼロレベルも大きく異なる。そのため各 CCD の最高性能が出せなかったり、ダイナミックレンジに制限が出たりした。 温度依存性がある マルチプレクサの ON抵抗などに温度依存性があり、ゲインに温度依存性 が出てしまう。試験が行いにくく回路ごとの個性もあり、 EM だけで安心するは禁物である。  CCD とりつけでトラブル カメラに CCD をとりつける際、 CCD が故障する例が多い。詳細な原因は不明だが、半田付けなどは要注意である。 ノイズ  CCD に限らない一般論。グランドのとり方は注意 ( これも一般論だが ) 。 リセット信号 この信号波形は大きく速度も速い。 AD変換用の積分時間を十分長く取るには重要となる。 SXI 用では改良を施したようであるが、十分して頂きたい。

                   SSC の性能  SSC の性能( SSC 素子と冷却)を以下に示す。 EM の結果であるがどちらも要求を上回っている。この結果を元に FM (カメラ( SSCU )はスペアを入れて3台、 SSCE は1台)を製作中で、スペアカメラは完成し、 SSCE の EM を使いて EM カメラと同じ性能を確認した。CCD は各カメラで共通の駆動条件になっているため各 CCD の最大の能力を発揮できているわけではないことに注意してほしい。

左: EM カメラに各種特性 X 線を当てた場合のスペクトル 5.9keV で 150eV(FWHM) の分解能と読み出しノイズで 5 eletron が得られている。右:ペルチェ素子の冷却性能。横軸はペルチェ電流、縦軸は CCD温度。カメラ (hot) 側を -20℃にした場合。一段ペルチェであるが温度差 40K が得られている。

                     SSC とは  MAXI/SSC は大阪大学、 JAXA (つくば)で開発を進める X 線 CCD カメラで 0.5-10keV をカバーする。 X 線望遠鏡はなく、スリット、コリメータと CCD の位置検出能力を用いて X 線到来方向を決定する (下図 ) 。各 X 線 photon についての角度分解能は 1度程度である。 GSC では見えない 2keV以下をカバーすると同時に高いエネルギー分解能でスペクトル情報も豊富になる。また MAXI は CCD で行う初の全天サーベイミッションで大きく広がったプラズマのスペクトル診断も行える。

                         CCDSuzaku/XIS から MAXI/SSC への最大の発展のひとつはカメラの心臓部である CCD (及びその周辺アナログ回路)を国内で開発したことである。これは NeXT/SXI への重要なステップである。 CCD大阪大学、浜松ホトニクスらが 10年近く開発を続けてきた素子を用い、すでに Hayabusa でその成果は実証されている。以下の表に3カメラの特徴を示す。SSC は素子単体では読み出しノイズ 3electron 、エネルギー分解能 135eV を達成している。近年浜松ホトニクス社の CCD でエネルギー分解能は 140eV を切る例が多いがこれは MAXI の開発が大きく寄与している。

                                           各カメラの CCD の比較。ピクセル数は撮像領域のみ。    MAXI 用 CCD

                 デジタル処理系  SSC のデジタル信号処理は DP(Data Processor) で行う。 SSC ではコマンドのデコード、 CCD 画像から X 線イベントの検出、テレメトリの編集等が主な仕事である。 SSC 動作のモードとしては通常観測 (normal mode) に加えて、 darkinit,darkframe,frame の各モードをサポートしている。これらは XIS を参考にしたものである。通常観測 (normal mode)は XIS でいう timing mode で観測するので grade=0-3 を判定する。テレメトリ編集は graded mode と PHA mode(grade判定せず 5ピクセルの PH を出す ) をサポートする。ダークレベルは全ピクセル分記憶し随時アップデートする。  DP は SSC専用でなくシステムや GSC の処理も行う。 DP は DSP でなく CPU を用いており、 DP 全体で 4枚の CPU ボードが VME 上に構築されている。そのうち2枚が CCD のイベント処理に用いられ、それぞれが SSC の各カメラ用に働く。片方の CPU ボードが故障した場合は残った CPU で両カメラの処理を行う。但し処理能力が落ちるため CCDの駆動速度を 1/2 にする。イベント処理プログラムは C言語で記述されている。各 CPUボードでは 8MB のメモリを使用できる。

SSCEDP SSCU

CCDs

SSCUプリアンプ、

マルチプレクサ

コマンド

CCD 画像・ HK

デジタル アナログ

ドライブ信号・ペルチェ電流

CCD 出力信号 ・ HK

X 線地上

コマンド

テレメトリ

Suzaku/XIS MAXI/SSC NeXT/XIS(Goal案 )CCD 数 4 (1x4) 32(16x2) 2( 1 x2)ピクセルサイズ( μm )

24x24 24x24 24x24

ピクセル数 1024x1024 1024x1024 2048x2048空乏層厚( μm ) 70 70 200読み出し口/ CCD 4 1 8メーカー MIT リンカーン

ラボ浜松ホトニクス 浜松ホトニクス

背面 / 表面照射 1つだけ背面照射

表面照射 背面照射

コメント ペルチェ内蔵 N型ウェハ

Suzaku/XIS MAXI/SSC NeXT/XISCCD温度 (目標 ) -90℃ -60℃ -85℃

カメラ温度 -40 -20 -40

ペルチェ段数 3 1 2熱流入 (mW/CCD) 250 22 177TEC 電力 (W/CCD) 4.0 1.0 7.0

      SSC の X 線到来方向決定の原理 SSC は MAXI に固定され MAXI は宇宙ステーションの軌道に合わせて自転する。 SSC は円弧状の視野をもちMAXI の自転に伴い視野が全天を掃く。視野の長さは 90° のため極方向は自転ではカバーできないが (all-sky monitorとしては欠点 ) 、軌道軸( = 自転軸)のプリセッションにより全天がカバーされる ( 全天サーベイとしては問題ない ) 。

Slats of collimator(phosphorus bronze)

Tungsten slit

Recommended