専攻科実験レポート
材料力学関連実験
提出日 平成 23 年 6月 15日
1 年 ME 9 番 菅埜 諒介
1
1.引張試験
別冊材料試験テキスト1.引張試験に従って進める。
1-1.実験目的
機械材料(炭素鋼)の引張試験を行い、引張強さ、降伏点(上、下)、伸び、絞りなどの機械的性
質を実験によって正しく理解するとともに、引張試験機の構造、機能及び操作方法を習得する。
1-2.概要
引張試験は、試験片の両端に引張荷重を徐々に加えて、破断するまで行うもので、機械的試験の
うちでは最も重要な試験の一つである。他の機械的試験と比べて特に優れている点は、試験片の横
断面における力の分布が最も均一であること、試験法として比較的簡単であることなどである。従
ってこの引張試験結果は、材料の最も基本的な機械的性質を示しているもので、設計にも基本的な
値としてよく使われている。
JIS Z-2241(試験法)、JIS B-7721(試験機)ならびにJIS Z-2201(試験片)が定められており、
これに従って試験するのが原則である。引張試験により材料の降伏点または耐力、引張強さ、伸び、
絞りなどが得られる。他に、弾性係数なども測定される。
1-3.使用機器、材料
(1)万能試験機(SHIMADZU AUTOGRAPH AG-G 型 250KN)
(2)標点分割器
(3)読み取り顕微鏡
(4)マイクロメータ
(5)ノギス
(6)試験片( JIS Z-2201 4号試験片)
1-4. 試験機について
引張試験機は駆動方式により次の二つに大別できる。
(1)油圧式:アムスラー型、リレー型、オルゼン型など
(2)ねじ式:オルゼン型、リレー型、インストロン型など
しかし、一般に引張試験機は引張試験の他に圧縮や曲げなどができる万能試験機として製作され
ていることが多い。また必要に応じて、定荷重装置(クリープ試験装置)、高温試験装置、一定荷重
繰り返し装置などが取り付けられた試験機もある。
また、一般に荷重-伸び線図を得ることができるようになっている。
1-5.試験方法
試験片の準備
(1)試験片はJIS Z-2201に規定されているので、与えられた試験片について調べる。
(2)試験片の平行部にマジックインキをぬり、標点分割器を用いて標点距離内を5mm
ごとに等分割する。
(3)マイクロメーターを用いて、各標点の直行する二方向の直径を測定する。
1-6.試験機の準備
(1)計測制御装置の電源を入れる。
①POWERスイッチON(RUNランプ点滅)
②アラームランプが消えてから、SETスイッチON(SETランプ点灯)
2
(2)オペレーションユニットで電気式荷重校正「E-CAL」を行う。
①試験条件設定の[SYSTEM]キーを押し、[1]Load Calibrationを押す。
②[E-CAL]を押すと、「Perform load E-CAL?」と聞いてくるので、[YES]を押すと
「Now performing E-CAL」と表示される。終了して「Load Calibration」画面に
なるまで30秒程度待つ。
③「Load Calibration」画面になったら[END]を押して荷重校正を終了する。
(3)試験条件の設定
試験条件設定キーの[FILE]を押して、試験条件ファイルを呼び出す。[RECALL]を
押してFILE No. [1]を押すと、「RECALL COMPLETE」ファイル読み込みが実行されたことが
示される。[END]を押して元に戻る。
(4)試験片のチャッキング
①試験片を上部つかみ具(チャック)に固定する。クロスヘッドを[UP/DOWN]キー
で操作して、試験片の固定に最適な位置に移動し、つかみ具のハンドルで試験片つかみ部をし
っかり固定する。
②試験片をセットした上部つかみ具を[DOWN]キーで下げ、下部つかみ具の近くまで
移動したら[STOP]する。[MANUAL]キーを押しダイヤルをまわして試験片を下部
つかみ具の中に入れる。
[MANUAL]キーは押すたびに H(高速)→L(低速)→OFFと切り替わる。
③試験片を下部つかみ具が確実に固定できる位置に移動したら、[MANUAL]キーを
押してOFFにしておく。
(5)荷重アンプのゼロバランスをとる。
荷重表示部制御キーの[ZERO]キーを2秒程度押す。
バランス実行中は荷重表示部に -00- が表示されるのでキー入力はしないこと。
通常の荷重表示状態に戻れば、バランス終了である。
(6)下部つかみ具のハンドルで試験片を固定する。
(7)初荷重の除去
試験片を固定すると若干の初荷重がかかるので、[MANUAL]キーを押し、L(低速)
でダイヤルを回し荷重表示をゼロにする。[MANUAL]キーを押してOFFにする。
(8)ポジション表示部制御キーの[POSITION RESET]キーを2秒程度押して、ポジシ
ョンをゼロにする。
1-7.試験
試験はパソコンにより操作する。パソコンに試験条件・試験片条件を入力した後に試験を開始す
る。
(1)パソコンの電源を入れる。
(2)「SHIMADZU」ウインドウの「SHiKiBU」をダブルクリックし「金属材料引張試
験」と表示されたら「OK」をクリックすると「SHiKiBU」のメインウインドウが
開く。
(3)[試験モード]をクリックし「4M-EXP4」のファイルを選び「ok」をクリックする。
(4)「一般情報」が表示されるので、「日付」、「実験者名」、「天候」、「温度」、「湿度」、
「気圧」を入力する。
(5)「試験片条件ダイアログボックス」の「丸棒」試験片で、「直径」を選び[6P]をクリ
ックし、最も細い場所の直角2方向の直径測定値を入力し「了解」次に「ok」をク
リックする。
(6)「コントロールウインドウ」で「START」ボタンをクリックすると試験が始まる。
3
(7)試験片が破断したら、試験片を外し、「標点間の全伸び」を読み取り顕微鏡でまた
「最小直径」をノギスで測定し、パソコンに入力する。
1-6.切断試験片の測定
(1)試験片の切断面を観測し、破面をスケッチする。
(2)切断位置を調べる。(表示はA、B、Cで行う。)
A:標点間の中心から標点距離の1/4以内で切断したとき
B:標点距離の1/4をこえ標点内で切断したとき
C:標点外で切断したとき(再試験)
(3)切断試験片の中心線が一直線上にあるように注意して突き合わせ、標点内の等分
割線間の各伸び及び標点間の全伸びを読み取り顕微鏡で測定する。
(4)切断試験片の最小断面の直径を、互いに直行する二方向についてノギスを用いて
測定する。
1-8. 実験結果
切断前と切断後の直径の値を表1に示す。また、伸びた値を表2に示し、図1に示す。断面のス
ケッチを図2に示す。パソコンの結果を図3に示す
表1 切断前と切断後の直径の比較
切断前 切断後
水平方向 垂直方向 水平方向 垂直方向
① 14.035 14.035 12.95 12.95
② 14.200 14.150 12.80 12.95
③ 14.015 14.015 12.65 12.70
④ 14.090 14.015 12.30 12.45
⑤ 14.005 14.015 11.00 11.10
⑥ 14.010 14.005 10.25 10.00
⑦ 14.030 14.015 12.00 12.10
⑧ 14.025 14.025 12.20 12.20
⑨ 14.075 14.075 12.75 12.70
⑩ 14.070 14.075 13.00 13.35
⑪ 14.250 14.215 13.30 13.30
4
表2 切断後の線間距離および伸びた距離
区間 線間距離 伸びた距離
①-② 5.937 0.937
②-③ 6.095 1.095
③-④ 6.357 1.357
④-⑤ 7.188 2.188
⑤-⑥ 9.942 4.942
⑥-⑦ 7.675 2.675
⑦-⑧ 6.358 1.358
⑧-⑨ 5.936 0.936
⑨-⑩ 6.242 1.242
⑩-⑪ 5.722 0.722
図1 伸びと直径の変化
0
1
2
3
4
5
6
0
3
6
9
12
15
0 10 20 30 40 50
伸び
た距
離[m
m]
切断
後の
直径
[mm
]
①からの距離[mm]
切断後の直径
伸びた距離
5
図2 断面のスケッチ
6
7
1-8.測定値とパソコンの比較
今回の引張試験の試験片の「降伏点強さ」「引張強さ」「伸び(率)」「しぼり」を測定した値を用
いて計算し、パソコンに示された結果と比較する。計算結果とパソコンの結果の比較の表を表3と
して示す。
① 降伏点強さ 上降伏点強さ: 下降伏点強さ: A
② 引張強さ
③ 伸び(率)
④ 絞り(率)
:上降伏点荷重 :下降伏点荷重 :最大荷重 :原断面積 A:最小断面積
:標点距離 L:破断後の標点距離
測定結果
= 59.86 [kN] = 53.44 [kN] = 82.19[kN] = 154.05 [ ] A = 65.04 [ ]
= 50 [mm] L = 67.19 [mm]
表3結果の比較
上降伏点強さ[MPa] 下降伏点強さ[MPa] 引張強さ[MPa] 伸び[%] 絞り[%]
計算結果 388.58 346.90 533.52 34.88 58.78
パソコン結果 388.271 349.120 531.084 34.8860 57.7801
1-9.考察
図1より切断後の試験片の断面が細くなっていることが分かる。また、切断面の直径は9.10mm
であった。長さは 50mmから 60.443mmになり細く、長くなった。断面の最小値と伸びの最大値
のピーク位置が異なる結果となった。
図2スケッチはカップアンドコーン型破壊を示しており、塑性変形が大きい延性破壊であること
が見て取れる。
表3の比較より、読み取った値と近い値を計算から得ることができた。
1-10.データ調査
材料の引張強さと比重量から比強度を求める。
比強度とは、密度あたりの引っ張り強さである。比強度の値は「引っ張り強さ ÷ 密度」で求めら
れる。比強度が大きいほど、軽いわりに強い材料であるということである。
表3 各物質の比強度
物質 引っ張り強度[MPa] 密度[g/cm3] 比強度[kN·m/kg]
マグネシウム 275 1.74 158
アルミニウム合金 600 2.70 222
チタン合金 1300 4.51 288
真鍮 580 8.55 67.8
8
1-11まとめ・感想
今回の実験から金属材料の強度についての理解が深まった。金属ものびるということを知った。
9
2.はりの曲げ試験
2-1.目的
長方形断面の両端支持ばりに集中荷重の作用する例をとり、「はりの曲げ理論」の基本事項をより
深く理解することを目的とする。本実験では特に
(1)材料力学の講義で学んだ曲げモーメント(曲げ応力)、支点反力などの物理的な意味を理解す
る。
(2)はりの設計に必要な基本知識を体得する。
(3)ひずみ測定の原理を理解し、ひずみ測定に習熟する。
2-2.使用器具
(1)はり構造力学実験装置
(2)ダイヤルゲージ
(3)はり(横幅b=32mm縦幅h=5mm 長さ l=800mm材質SS400)
2-3.実験方法
2-3-1.弾性係数の測定
1. 供賦材(はり)の寸法測定
2. 回転端と移動端にはりをセットする
3. ダイヤルゲージをはり中心にセットする
4. 吊り金具をはり中心にセットする
5. 吊り金具に分銅受けをセットし所定の重量を載せる
6. ダイヤルゲージにて中心のたわみを測定する
7. (5)式より縦弾性係数を求める
( )
2-3-2.はりのたわみの測定
1. 前項の装置、設定を用いる。負荷位置も同一、負荷おもりは1500gのみでよい
2. おもりを負荷したした状態で、はり各所(10等分した各所)のたわみを測定する
10
2-4.実験結果
2-4-1.弾性係数の測定
測定結果と計算結果を表4に示す。
表4 縦弾性係数の測定(荷重作用点Q=l/2)
1回目 2回目
荷重[kgf] 0.698 1.196 1.696 0.698 1.196 1.696
たわみ[mm] 1.11 1.97 2.73 1.10 1.96 2.71
E[GPa] 215.03 215.04
2-4-2.ひずみの測定
ひずみの測定結果を表5に示す。また図4に理論値との比較も示す。理論式は以下の式。
表5 ひずみの測定結果と理論値
ひずみ[mm] ε1 ε2 ε3 ε4 ε5 ε6 ε7 ε8 ε9
荷重1.698kgf 0.85 1.56 2.18 2.62 2.75 2.62 2.16 1.58 0.82
理論値 0.802 1.539 2.146 2.558 2.71 2.558 2.146 1.539 0.802
0<x<l/2のとき
l/2<x<lのとき
図4 はりのたわみ
-3
-2.5
-2
-1.5
-1
-0.5
0
0 200 400 600 800
たわ
み[m
m]
距離[mm]
測定値
理論値
11
2-5.考察
(1) 縦弾性係数について
今回の実験から求められたヤング率はE=215.03[GPa]であった。はりに用いている材料は一般構
造用圧延鋼材(SS400)である。この材料のヤング率はE=206[GPa]であることから適切な結果が得
られたと考えられる。
表5、図4よりたわみの理論値と測定値を比較するとほぼ等しいことが分かる。
2-6.まとめ
たわみからヤング率を求める方法および、ヤング率からたわみを求めることができた。ほぼ理論
通りのたわみ量になることが実験から確かめられた。