第6章 舗装の構造
舗装構造の変遷
・ピラミッド築造時の舗石道路・近代舗装の先駆的な事例 ・・・ クレタ島の道路→ 基層,中間層:セメントや石膏とロームを混合したモルタル使用,表層に玄武岩の板石,砕石を並べ,両端部に排水溝を設置
・バビロンの王の道:バインダーとしてアスファルトを使用(BC600年)・ローマ帝国の拡大:アッピア街道(8500km)の道路整備・フランス→トレサゲ工法の開発(雨水による路床の強度低下を軽減)・イギリス→テルフォード工法の開発(トレサゲ工法の改良)・マカダム工法:トレサゲ工法の改良,交通車両による締固め(1820年)・ASSHO:1910年アメリカ政府の公共道路部ページ氏がアメリカン・
ハイウェイ協会会長として就任ASSHO道路試験(世界の舗装技術の先駆的大実験)
2.舗装構造の考え方1.ASSHO道路試験道路舗装構造の考え方:舗装上に載荷する車両の荷重を分散して路床に伝達し,路床の支持力と舗装によって分散された荷重がバランスを保つように設計する.→ 路床の支持力と車両荷重が分かれば舗装の厚さが決定.
■適切な舗装の種類や厚さを決定する試験の実施→ 1954年から6年の歳月をかけて実施(100億円)
アメリカイリノイ州北西部の州道80号線試験内容①舗装構成因子の組み合わせ試験②路肩舗装試験③上層路盤試験④舗装の季節的な強度変化試験⑤表面処理の試験
載荷軸重:0.9~21.9tまでを管理速度下で走行25ヶ月間,556880台(1113760回の軸荷重)
成果:①舗装の供用性評価にサービス指数の導入②舗装の構造設計に舗装厚指数の導入③交通車両荷重(軸重)と舗装の供用性の関係の導入
舗装にとって最も重要な機能:交通に対するサービスという観点からの評価・道路建設技術者,道路維持技術者,材料関係者,トラック輸送関係者,自動車製造者などによる評価班による評価・評価後に現地試験班による舗装のわだち掘れ,平坦性,ひび割れおよびパッチングを客観地として測定して,上記の評価地との重回帰分析の結果から推定.・構造設計に対する舗装厚指数をサービス指数,舗装因子,交通荷重から求める.
2.わが国の舗装構造設計
昭和25年:アメリカのアスファルト協会のアスファルトハンドブック(1950) を参考にアスファルト舗装要綱の作成
→ 路床・路盤の支持力の指標にCBRおよびK値を採用.輪荷重を集中荷重とし,舗装を通して荷重が45度で分散するという考え方.
アスファルト舗装
1. アスファルト舗装の概説
瀝青材料を用いたアスファルト系の舗装は, 構築した路盤の上に加熱アスファルト混合物による表層・基層をつくる舗装(アスファルト舗装)と, 在来砂利層などを利用した路盤の上に混合式工法や浸透式工法などによる表
層を設ける舗装(簡易舗装)および在来砂利層の上に浸透式工法などによって厚さの薄い表層をつくる瀝青路面処理がある。
アスファルト舗装 :大型車の交通量推計が的確にでき, 供用を予定する設計期間を比較的長期(一般には10年)にとる舗装に主として適用する。
簡易舗装(基層を有しないで, 表層の厚さが3~4cm) : 未改良道路などで,設計で想定する供用期間が比較的短い舗装(一般には5~7年程度)で大型車の通行が少なく, その重量も小さい道路の舗装に適用する。
瀝青路面処理 :大型車の交通量が全くないか, あってもその数が非常に少ない道路の舗装に主として適用する。
1. アスファルト
1.1 アスファルトの種類
アスファルトは, 大別して天然アスファルト(natural asphalt)と石油アスファルト(petroleum asphalt)に分けられる。
天然アスファルトは, 原油が地表に現れ, その軽資分がなくなり重質油分だけとなったアスファルト, およびこの重質油分と無機質などとが混合したアスファルトなどがある。
石油アスファルトには, 原油を蒸留精製し, ガソリン, ケロシン, 軽油などを適度に取り除いた残留物で, 道路舗装に使われるようになったのは20世紀紀初めにバイヤレー(F.F.Byerley)が原油を蒸冊して残ったものが天然アスファルトにきわめてよく似ていることを発見し
てからである。
石油アスファルトは, 原油から直接蒸留, 精製して得られるストレートアスファルトと, これに高温で空気を吹き込んでブローイング(blowing)操作を行い, 酸化, 重合などの処理をしたブローンアスファルト(blown asphalt), ゴム入りアスファルト, 熱可塑性樹脂入りアスファルトなどがある。
ストレートアスファルトにガソリン, 灯油などの溶剤を添加し, 常温で液体となったものをカットバックアスファルト(cut-back asphalt)といい, またストレートアスファルトの微粒子を乳化剤(emulsifier), 安定剤(stabilizer)を含む水溶液中に分散させて常温で液体としたものをアスファルト乳剤(asphalt emulsion)という。
石油アスファルトは, 原油から直接蒸留, 精製して得られるストレートアスファルトと, これに高温で空気を吹き込んでブローイング(blowing)操作を行い, 酸化, 重合などの処理をしたブローンアスファルト(blown asphalt), ゴム入りアスファルト, 熱可塑性樹脂入りアスファルトなどがある。
ストレートアスファルトにガソリン, 灯油などの溶剤を添加し, 常温で液体となったものをカットバックアスファルト(cut-back asphalt)といい, またストレートアスファルトの微粒子を乳化剤(emulsifier), 安定剤(stabilizer)を含む水溶液中に分散させて常温で液体としたものをアスファルト乳剤(asphalt emulsion)という。
1.2 ストレートアスファルト
アスファルトは温度によってコンシステンシー(consistency)が異なる温度依存性(あるいは感温性, temperature susceptibility)を示すことから, それに対応したJISK2207に定める針入度, 軟化点, 動粘度などの試験が重要とされている。
(1) 針入度
針入度試験には図-1に示すような針入度試験装置を用い, 規定寸法の針入度針に100gの荷重を載せ, 25℃に保たれた試料中へ5秒間貫入させたときの針の間入量を1/10mm単位で表して針入度(penetration)としている。
☆針入度40~60とは針の貫入量が4~6mm, 針入度60~80とは針貫入量が6~8mmであることを示しており, 針入度が大きいほど軟らかいアスファルトであることを意味している。
図-2 軟化点試験装置
(2) 軟化点
軟化点試験は, 内径19mm, 高さ6.4mmのリング(ring)に試料を充填し, その上に直径9.53mm, 質量3.5gの鋼球(ball)を載せて図-2に示すような軟化点試験装置の所定の位置に置く。このビーカーの中の水を毎分5℃の速さで上昇させ, アスファルトが軟化して規定距離(25.4mm)の底板まで垂れ下
図-1 針入度試験装置
がったときの
温度を軟化点
(ring and ball softening point)という。
(3) 針入度指数
アスファルトの感温性を評価する指数として, 標準温度25℃における針入度Pと軟化点TR&Bから求める針入度指数(penetration index : PI)という表現がある。針入度指数PIはアスファルトの軟化点における針入度を800と仮定して, 式(1)から定数αを求め, さらに式(2)の関係からPIが定義されている。
(1)
(2)
針入度指数PIによってアスファルトを3種類のタイプに分類できる。
PI<-2 ピッチ型(タール)
-2<PI<2ゾル型(ストレートアスファルト)
PI>2 ゲル型(ブローンアスファルト)
PIが大きいほど各種の材料性状の感温性(温度依存性)が小さいアスファルトで
あると判断される。
501
1020
25log800log
&
×+−
=
−−
=
PIPIa
TPa
BR
図-3アスファルトの粘度-温度曲線の一例
(4) 粘度
混合時の骨材表面の均一な濡らし(wetting)と転圧時の締固め(compaction)を最適にするために, アスファルトの粘度(あるいは粘性係数, viscosity)が測定される。粘度には, 動粘度(cSt, mm2/s), 絶対粘度P(Pa・s, poise, dyne・s/cm2), セイボルトフロール度などがある。
図-3は, アスファルトの粘度を広範囲の温度領域にわたって測定し, 縦軸をloglogスケール, 横軸をlogスケールで示したアスファルトの粘度-温度曲線の一列である。
(5) その他の性状
伸度(ductility)引火点(flash point)薄膜加熱試験(thin film oven test)蒸発後の針入度比
密度(density)
1.3 アスファルト乳剤
アスファルト乳剤は, 軟質なアスファルトを乳化機で0.5~10μm程度の微粒子にし, 乳化剤と安定剤によって水中に分散・安定させた褐色の液体アスファルトであり, 常温施工が可能である。
1.4 カットバックアスファルト
カットバックアスファルト(cut-back asphalt)はストレートアスファルトに溶剤としてガソリン, ケロシンなどを添加混合して粘度を下げて常温施工を可能にした液体アスファルトである。施工後はこの溶剤の揮発によって粘度が
増加して機能を果すのであるが, それぞれの揮発性の大きさ(硬化速度)によってRC(rapid curing), MC(medium curing)と呼ばれる。カットバックアスファルト舗装は, 一般的には歩道用や維持・補修用材料として使われるが, わが国におけるその使用量は少ない。
2. 骨材
アスファルト舗装に用いられる骨材(aggregate)は, 通常, 粗骨材・細骨材(砂)およびフィラー(石粉)に分けて扱われる。粗骨材(coarse aggregate)は粒径が2.5mm以上の骨材で砕石(crushed stone), 砂利(gravel), スラグ(slag)などがある。細骨材(fine aggregate)は粒径が2.5mm以下0.075mm以上の骨材をいい, 一般に砂(sand)が用いられている。フィラー(filler)は大部分の粒径が0.075mm以下の材料を用いる。
3. アスファルト混合物
3.1 アスファルト混合物の配合設計
アスファルト混合物の配合設計(design of mix proportion)は次の手順による。
①道路の規格に応じたアスファルト混合物の材料の選択
②混合物の種類に対する骨材の粒度配合の選定
③選定された配合比率の骨材に対するアスファルト量の決定
3.2 骨材の粒度配合の選定
加熱アスファルト混合物は, できるだけ均質な混合物を作るために, 骨材の組合せに応じた種々の骨材粒度(aggregate gradation)が示方され, 通常, アスファルトコンクリート(asphalt concrete)と乎ばれることが多いが, アスコンと略称されることもある。
表-1 加熱アスファルト混合物の標準配合(アスファルト舗装要綱)
6~86~86~85~74.5~6 3.5~5.55.5~7.57.5~9.54.5~6.5アスファル
ト量(%)**
35~5018~3010~216~164~8
52~7240~6025~4516~338~216~11
10095~l0023~4515~308~204~154~102~7
10095~10045~6530~4525~4020~4010~258~12
10095~10075~9065~8040~6520~4515~308~15
10095~100
60.8045.6540.60
20~4510-258~13
10095~100
10095~10035~5530~4520~4015~305~154~10
10095~10065~8050~6525~4012~278~204~10
10095~10055~70
通
過
質
量
百
分
率
(%)
10095~10075~95
l0095~10075~9045~65
l0095~10070~9035~5520~351~235~164~122~7
25mm20135
2.50.60.30.150.074
1313131313201313132020最大粒径(mm)
3 ~ 43 ~ 53 ~ 43 ~ 53 ~ 54-~ 63 ~ 53 ~ 53~54~64 ~ 6仕上り厚(cm)
(13F)(20F)(13)(20)
混合物の
種類*
⑨
開粒度
アスコ
ン
(13)
⑧
密粒度
ギャッ
プアス
コン
(13F)
⑦
細粒度
アスコ
ン
(13F)
⑥
細粒度
ギャッ
プアス
コン
(13F)
⑤
密粒度
アスコン
④
密粒度
ギャッ
プアス
コン
(13)
③
粗粒度
アスコ
ン
(13)
②
密粒度
アスコン
①
粗粒度
アスコ
ン
(20)
*種類名のアスコンはアスファルトコンクートの略称である。
**アスファルト量(%)は混合物全量の中での質量パーセント。
表-1は, 我が国で用いられている加熱アスファルト混合物の種類と配合を示し, そのうち, 粗粒度アスファルトコンクリート, 密粒度アスファルトコンクリート, 細粒度アスファルトコンクリートの骨材粒度を図-4に示す。開粒度(open grade)が最も粗骨材が多く, 以下, 粗粒度(coarse grade), 密粒度(dense grade), 細粒度(fine grade)の配合になるにしたがって細骨材の割合が多くなる。また, ギャップ(gap)粒度は0.6~5mm粒径の骨材を少なくして不連続粒度にした配合である。
図-4 アスファルト混合物用骨材の標準的粒度
3.3 設計アスファルト量の決定
使用骨材の配合が決まった後, その骨材粒度に適した設計アスファルト量(design asphalt content)を求める。過去の施工列を参考にする方法, 空隙理論, 力学的方法などが使われているが, 次のマーシャル安定度試験(Marshall stability test)によって設計アスファルト量を決める方法が一般的である。
①アスファルト混合物の種類に応じたアスファルト量の範囲で, アスファルト量を0.5%刻みで変えて配合した骨材と規定の混合温度(アスファルトの動粘度が180±20センチストークス(cSt)に相当する温度)で混合する。
②混合物を内径101.6mmのモールドに詰め, 規定の締固め温度(アスファルトの動粘度が300±30cStに相当する温度)で上・下面をランマーで各50回(重交通道路では75回)締め固める(図-6参照)。高さ63.5±1.3mmの円柱供試体を1配合(1アスファルト量)につき少なくても3個以上ずつ作る。
図-7 マーシャル試験装置の説明図
③突き固めた供試体をモールドから脱型し, 12時問以上放置してから密度を測定した後, 試験前に60±1℃に保たれた恒温水槽に30~40分つける。
④ 50±5mm/minの速度で図-7に示すように載荷し, 荷重計の最大値(マーシャル安定度, Marshall stability)と, その最大値を示したときの変計量を1/100cm単位で示したフロー値(flow value)を記録する。
図-6 マーシャル供試体用モールドとランマー
⑤ マーシャル安定度, 密度, フロー値, さらに密度から式(6)で計算される空隙率(air void), 式(7)で計算される飽和度(degree of saturation)を縦軸に, アスファルト量を横軸にとって図-8のように5種の曲線を猫く。
⑥ これらの曲線上で, 表-2に示す基準値を満足するアスファルト量の範囲を求めて図-8の右下のように図示し, 通常, その中央値を設計アスファルト量とするが, 重交通道路では中央値よりも若干少ないアスファルト量を採用することもある。
理論最大密度, 実測密度, 空隙率, 飽和度は次のように計算する。
理論最大密度 D(g/cm3)は
(3)
ここに, A : アスファルト質量混合率(%), ρa : アスファルトの密度(g/cm3),
ρag : 混合される骨材の平均密度(g/cm3)。
agd
AAD
ρρ−
+= 100
100
表-2 マーシャル試験に対する基準値(日本道路協会)
* 積雪寒冷地域, C交通であっても流動によるわだち掘れのおそれが少ないところでは50回とする。
** ( )内はC交通以上で突固め回数を75回とする場合の基準値。
*** 水の影響を受けやすいと思われる混合物またはそのような箇所に舗設される混合物の場合には,次式で求めた残留安定度が75%以上であることが望ましい。残留安定度=[60℃, 48時間水浸後の安定度/安定度]×100
20~4020~8029~40フロー値
(1/100cm)
350以上
500以上
350以上
500以上(750以上)**
500以上500以上
(kgf)
3.43以上
4.09以上
3.43以上
4.09以上(7.35以上)**
4.09以上4.09以上
(kN)安
定
度
―75~8575~9075~8565~8570~8565~85飽和度
(%)
―3~52~53~53~73~63~7空隙率
(%)
B交通以下
C交通以上*
5050
7550
75突き
固め
回数
(13F)(20F)(13)(20)
混合物の
種類
⑨
開粒度
アスコ
ン
(13)
⑧
密粒度
ギャッ
プアス
コン
(13F)
⑦
細粒度
アスコ
ン
(13F)
⑥
細粒度
ギャッ
プアス
コン
(13F)
⑤
密粒度
アスコン
④
密粒度
ギャッ
プアス
コン
(13)
③
粗粒度
アスコ
ン
(13)
②
密粒度
アスコン
①
粗粒度
アスコ
ン
(20)
骨材の平均密度ρagは次のように計算される
(4)
ここに, G : 粗骨材の全骨材中の質量百分率(%), S : 細骨材の全骨材中の質量百分率(%), F : フィラーの全骨材中の質量百分率(%), ρg : 粗骨材粒子の密度(g/cm3), ρs : 細骨材粒子の密度(g/cm3), ρf : フィラー粒子の密度(g/cm3)。
実測密度d(g/cm3)は次のように計算される。
(5)
ここに, W : 供試体の空中重量(N), W' : 供試体の水中重量(N), ρwa : 水
の密度(g/cm3)。
fsg
ag FSGρρρ
ρ++
=100
w
WWWd
ρ′−
=
以上の理論最大密度Dと実測密度dを用い, 空隙率v(%)は次のように計算できる。
(6)
また, 飽和度Vfa(voids filled with asphalt)(%)は
(7)
により計算できる。
1001 ×⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ −=
Ddv
vdAdAV
a
afa +⋅
⋅=
ρρ
使用骨材の配合比を決める方法のうち, 図解法による決め方を示すと次のようである。
①予定粒度を決める。一般には, 表-1に示した粒度範囲の中央点の粒度を選ぶ。
②使用予定の粗骨材, 細骨材, フィラーの粒度を求める。
③図-5のように, 普通目盛の方眼紙上に外画線と対角線を引き, 縦軸に通過質量百分率を目盛り, 横軸には予定粒度が対角線となるように粒径
図-5 骨材配合比の決定例
(ふるい目)の目盛の位置を決める。たとえば, 表-1の密粒度配合ならば予定粒度の2.5mm通過量は(中央点の粒度で)42.5%であるから, 対角線の通過質量百分率42.5%の横軸が粒径2.5mmとなる。
④以上の目盛に基づく使用予定骨材の粒度曲線を図中に入れる。
⑤ S-20砕石の下部とS-5砕石の上部の例のように, 隣り合う骨材が重なった場合, 上下の横枠との距離aが等しくなる位置に垂線を入れる。
⑥ S-5砕石の下端と粗砂の上端の例のように, ちょうど同じふるい目となっているとき, そのふるい目を通る垂線を入れる。
⑦粗砂の下端と石粉の上端の例のように, 互いに重ならない場合は離れている2つの粒度曲線の水平距離bが等しくなるように垂線を入れる。
⑧このようにして引いた垂線と対角線の交点で示される範囲の百分率に
より, 図の右側のように骨材の配合比率が求まる。
⑨この配合比で合成した骨材の粒度を求め, 比重の大きな違いなど必要に応じてこれを修正して予定粒度に近づける。
表-1 設計交通量の区分
2. アスファルト舗装の構造設計
2.1設計交通量
構造設計に用いる設計交通量は, 設計期間における平均の1日1方向あたりの大型車交通量とし, 表-1に示すように区分する。
設計交通量を決定するには
①大型車交通量による方法 ②走行車両の輪荷重による方法
の2つの方法がある。
100未満100以上 250未満250以上1,000未満
1,000以上3,000未満3,000以上
L交通A交通B交通C交通D交通
大型車交通量(台/日・方向)の範囲設計交通量の区分
(アスファルト舗装要網)
(1) 大型車交通量による方法
設計期間における平均の大型車交通量(台/日・方向)による方法。
一般的にはこの方法を用いることが多い。
設計に用いる大型車交通量は, 原則として(1)式により推定する。
大型車交通量 : (1)
Ti : i年における大型車交通量(台/日・方向)ai : 当初の交通量(Ti)に対するi年後の交通量の伸び率i=1~nn : 設計期間(原則としてn=10)
なお, 一方向3車線以上の多車線道路においては, 道路の交通状況に応じて, 設計交通量として, (1)式で求めた大型車交通量の70%までの範囲で低減した値を用いてよい。
( )∑∑==
×==n
iii
n
ii aTTT
111010
(2) 走行車両の輪荷重による方法
輪荷重の範囲ごとの走行車両台数より設計期間における累積5トン換算輪数(輪/方向)を算出する方法。
この算出方法は幹線道路等において特に大型車の通行量が多く,破損の進行が著しいと予想される場合に用いる。
走行車両の輪荷重を測定し, 輪荷重の範囲ごとの走行車両台数から設計交通量を算出する場合は, 以下の手順で設計期間n年における累積5トン換算輪数Nを求める。
① 測定結果を表-2に示す輪荷重の範囲に従って分類し, 各代表値に属する輪数NLjを算出する。
② (2)式により, 1日あたりの5トン換算輪数N5を求める。
日5トン換算輪数 : (2)∑= ⎥
⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡×⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛=
13
1
4
5 5iLj
j NP
N
③ (3)式により, 設計期間n年における累積5トン換算輪数Nを算出する。
累積5トン換算輪数 : (3)ai : N5に対するi年後の交通量の伸び率
なお, 原則としてnは10とする。
④一方向3車線以上の多車線道路においては, 道路の交通状況に応じて, 設計交通量として(3)式で求めた累積5トン換算輪数Nの70%までの範囲で低減した値を用いてよい。
( )∑=
××=n
iiaNN
15 365
表-2 輪荷重の範囲と代表値
(アスファルト舗装要網)
NL13P13=15.014.0t~(137.3kN~)
NL12P12=13.012.0~14.0t(117.7~137.3kN)
NL11P11=11.010.0~12.0t(98.1~117.7kN)
NL10P10=9.59.0~10.0t(88.3~98.1kN)
NL9P9=8.58.0~9.0t(78.5~88.3kN)
NL8P8=7.57.0~8.0t(68.6~78.5kN)
NL7P7=6.56.0~7.0t(58.8~68.6kN)
NL6P6=5.55.0~6.0t(49.0~58.8kN)
NL5P5=4.54.0~5.0t(39.2~49.0kN)
NL4P4=3.53.0~4.0t(29.4~39.2kN)
NL3P3=2.52.0~3.0t(19.6~29.4kN)
NL2P2=1.51.0~2.0t(9.8~19.6kN)
NL1P1=0.5~1.0t(~9.8kN)
輪数NLj代表値Pj輪荷重の範囲
2.2 路床の評価
表層にアスファルト舗装をする場合, その区間の路床のCBRおよび設計CBRは次のようにして定める。
(1) 路床が深さ方向に異なる幾つかの層をなしている場合には, その地点のCBRは路床面以下1mまでの各層のCBRを用いて, 次式によって求まる値(CBRm)とする。
(4)
ここにCBRm : m地点のCBR
CBRl, CBR2, ・・・CBRn : m地点の各層のCBR
h1, h2, ・・・hn : m地点の各層の厚さ(cm)
h1+h2 ・・・hn =100
3313122
3111
100 ⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡ ++= nn
mCBRhCBRhCBRhCBR L
表-3 区間のCBRと設計CBRの関係
(2) 均一な舗装厚で施工する区間を決定し, この区間の中にあるCBRmのうち, 極端な値を除いて, 次式により区間のCBRを求める。
区間のCBR=各地点のCBRの平均値-各地点のCBRの標準偏差(σn-1) (5)
(3) 設計CBRは, 区間のCBRから表-3により求める。
(2)34681220
(2以上3未満)3以上4未満4以上6未満6以上8未満8以上12未満12以上20未満
20以上
設計CBR区間のCBR
(アスファルト舗装要網)
問題1
ある地点の路床面下60cmのCBRが17, lmのCBRが0.6である時,その地点のCBRはいくらか。
問題2
ある区間で6地点のCBRmを求めたら, 4.8, 3.9, 4.6, 5.9, 4.8, 7.0であった。この区間の設計CBRはいくらか。
問題3
ある区間の6地点で得られたCBRmは, それぞれ4.4, 4.8, 5.2, 12.2, 6.2, 5.5であった。この区間の設計CBRはいくらか。
問題4
問題3とは逆に最小値が極端に小さい場合の検定はいかにすべきか。CBRm=2.4, 5.2, 4.7, 4.8, 4.3
表-6 表層と基層の最小厚さ
2.3 舗装厚さの設計
通常の舗装厚さの設計はTA法によるが, 路床を設計CBRで評価することができない場合, あるいはサンドイッチ舗装工法やコンポジット舗装工法などを採用する場合は別の方法による。これについてはアスファルト舗装要
綱を参照されたい。
舗装厚さの設計は, 路床の設計CBRと設計交通量に応じて, 表-7から定まるTAを下回らないように舗装の各層の厚さを決定する。
(アスファルト舗装要網)
〔注〕上層路盤に瀝青安定処理工法を用いる場合は( )内の厚さまで低減してもよい。
表-5 路盤各層の最小厚さ
(アスファルト舗装要網)
最大粒径の3倍かつ10cmその他の路盤材
最大粒径の2倍かつ5cm瀝青安定処理
1層の最小厚さ工法・材料
20(15)D交通15(10)C交通10(5)B交通
5L,A交通
表層と基層を加えた厚さ(cm)設計交通量の区分
表-7 目標とするTA(cm)
(アスファルト舗装要網)
(51)454137343026
(39)353228262320
(29)262421191717
(21)191816141313
(17)151412111111
(2)34681220
D交通C交通B交通A交通L交通設計CBR
(1) 目標とするTA
設計交通量の決定方法は, 大型交通量による方法と走行車両の輪荷量による方法とがある。後者の方法で決定した場合, アスファルト舗装の構造設計に必要な厚さを, 累積5トン換算輪数(N)に基づき, (6)式を用いて求める。
(6)
ここで, TA : 舗装各層を表層および基層用加熱アスファルト混合物で設計したときの必要厚さ(cm)
N : 設計期間(n年)における累積5トン換算輪数(輪/1方向)表-7ではL, A, B, CおよびD交通での設計期間10年に対応するNの値を3万, 15万, 100万, 700万および3,500万としてTAを定めている。
CBR : 路床の設計CBR
3.0
16.084.3CBR
NTA =
(2) 舗装の構成
舗装の構成を決定するには, 設定した断面の等値換算厚TA'が表-7のTA
目標値を下回らないように構成を定める。
TA'の計算には次式を用いる。
TA'=a1T1+a2T2+・・・+aiTi+・・・anTn (7.7)
ここに, a1, a2, ・・・, ai, …, an : 表-8に示す等価換算係数
T1, T2, ・・・, Ti, …, Tn : 各層の厚さ(cm)
(3) 凍上抑制層
寒冷地域の舗装では, 凍結深さから求めた必要な置換え深さと舗装の厚さとを比較し, もし置換え深さが大きい場合は, 路盤の下にその厚さの差だけ, 凍上の生じにくい材料の層を設ける。この部分を凍上抑制層と呼び, 路床の一部と考えるとともにTAの計算には含めない。ただし, 凍上抑制層を設けるために20cm以上の置換えを行った場合, 設計CBRの再計算を行う。
表-8 等値換算係数
0.45一軸圧縮強さ[10日]
10kgf/cm2
(0.98MPa)石灰安定処理
0.55一軸圧縮強さ[7日]
30kgf/cm2
(2.9MPa)セメント安定処理
0.65
一軸圧縮強さ15~30kgf/cm2
(1.5~2.9MPa)一次変位量5~30(1/l00cm)残留強度65%以上
セメント・渥青安定処理
上
層
路
盤
0.55常温混合:安定度250kgf以上(2.45kN)
0.80加熱混合:安定度350kgf以上(3.43kN)
瀝青安定処理
1.00表層・基層用加熱
アスファルト混合物表層基層
等値換算係数
a品質規格工法・材料使用する位置
(アスファルト舗装要網)
(1) 表中に示す等値換算係数は,その工法・材料を表に示す位置で使用したときの評価値である。
クラッシャラン,鉄鋼スラグ,砂など
下
層
路
盤
0.25一軸圧縮強さ[10日]
7kgf/cm2
(0.7MPa)石灰安定処理
0.25一軸圧縮強さ[7日]
10kgf/cm2
(0.98MPa)セメント安定処理
0.20修正CBR20以上30未満
上層路盤
0.25修正CBR30以上
0.55
修正CBR80以上一軸圧縮強さ[14日]
2kgf/cm2以上
(1.2MPa)
水硬性粒度調整鉄鋼
スラグ
0.35修正CBR80以上粒度調整砕石,
粒度調整鉄鋼スラグ
等値換算係数
a品質規格工法・材料使用する位置
2.4 舗装構造の設計例
(1) 設計交通量の決定
本路線の10年間における平均の大型車交通量を(1)式により推定を行ったところ, 1日1方向あたりの大型車交通量は900台であった。従って, 設計交通量の区分は表-1よりB交通である。
(2) 路床支持力の評価
この路線の路床土のCBR試験を行ったところ, それぞれ, A地点0.7%, B地点0.8%, C点0.6%, D地点0.9%であった。
この区間のCBR
=各地点のCBRの平均値-各地点のCBRの標準偏差
%62.013.04
9.06.08.07.0=−
+++=
(3) 路床の改良
すなわち, この路線の路床土は非常に軟弱路床のため, 路床を改良(一般にはCBRが3未満の場合)する必要がある。
いま, 路床の置換材料のCBR値が17%として目標CBRを4.0~8.0%について検討を行う。
(4) TAの目標値の決定, その1
目標設計のCBR4.0%, 置換厚さ70cmとする。
この場合の目標とするTAは表-7よりB交通では24cmである。
設計CBRは表-3より4である。
〔注〕 上式において, 路床を改良する場合, その施工厚から20cm減じたものを有効な路床改良の層(70-20)として扱う。
%0.402.5100
62.050175033131
→=⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ ×+×=CBR
図-1(a)に示すように, 既設舗装面より120cm掘削して, 厚さ70cmで置き換え, 下層路盤にクラッシャラン20cm, 上層路盤に粒度調整10cm, 瀝青安定処理10cm, 基層5cm, 表層5cmで仕上げる。
この時のTA 'の値は, 表-8の等値換算係数を用いて, (7)式から計算する。
TA ' =(5×1)+(5×1)+(10×0.8)+(10×0.35)+(20×0.25)=26.5>24
(5) TAの目標値の決定, その2
目標設計のCBR6.0%, 置換厚さ80cmとする。この場合の目標TA
は表-7よりB交通では21cmである。
%0.669.6100
62.040176033131
→=⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ ×+×=CBR
図-1(b)に示すように, 既設舗装面より119cm掘削して, 厚さ80cmで置き換え, 下層路盤15cm, 上層路盤7cm, 瀝青安定処理7cm, 基層5cm, 表層5cmで仕上げる。
この時のTA'は次のようになる。
TA' =(5×1)+(5×1)+(7×0.8)+(7×0.35)+(15×0.25)=21.8>21
(6) TAの目標値の決定, その3
目標設計のCBR8.0%, 置換厚さ90cmとする。この場合の目標TAは
19cmである。
図-1(c)に示すように, 既設舗装面より125cm掘削して, 厚さ90cmで置き換え, 下層路盤10cm, 上層路盤10cm,瀝青安定処理10cm, 表層5cmで仕上げる。
%0.869.8100
62.030177033131
→=⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ ×+×=CBR