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⼀緒に研究しながらワクワク・ドキドキ
科学研究の進め⽅研修会
山 内 伸 二
新潟市立白新中学校 教諭 新潟県中学校教育研究会 事務局長 ソニー科学教育研究会 新潟支部 元事務局長
日時:2016/07/06 15:00‐16:30
主催:新潟市小教研理科部
会場:新潟市立白新中学校
・ 希望者を募った愛好クラブ。
・ 白新中に部活動の科学部はない。
・ 研究活動は早朝・放課後・長期休業中など,その生徒とスケジュールを
合わせた時間に実施。
・ 10名程度が希望し,実際に研究し,出品するのは6名。
※ 新潟市科学研究発表会の出品枠が6名
Q1 どのような科学研究の指導をしていますか?
⽿の研究の実験の様⼦ ⽇本学⽣科学賞中央最終審査のポスターセッション
〜科学の⽅法は反証型仮説演繹法で〜
2
Q2 ガリレオクラブの研究成果? 年度 科学賞の名前・受賞した賞の名前 受賞の対象平成19年度 いきいきわくわく科学賞 1分野の部 教育⻑賞 「卵の回転研究」平成20年度 いきいきわくわく科学賞 1分野の部 教育⻑賞 「輪ゴム劣化の研究」平成21年度 いきいきわくわく科学賞 2分野の部 県知事賞 「葉脈の研究」
〃 1分野の部 教育⻑賞 「氷の研究 2」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 県優秀賞 「氷の研究 2」
平成22年度 いきいきわくわく科学賞 1分野の部 県知事賞 「サイフォンの研究」 〃 1分野の部 教育⻑賞 「⽔の⻘さの研究」 〃 1分野の部 教育⻑賞 「ブランコの研究」⽇本学⽣科学賞 優秀指導者賞 ⼭内伸⼆
平成23年度 いきいきわくわく科学賞 1分野の部 県知事賞 「ブランコの研究 2」 〃 1分野の部 教育⻑賞 「逃げ⽔の研究」 〃 2分野の部 県知事賞 「スイカの種の位置の研究」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 県最優秀賞 「スイカの種の位置の研究」〃 〃 県優秀賞 「ブランコの研究2」〃 〃 県優秀賞 「逃げ⽔の研究」〃 〃 県優秀賞 「ドライアイスの研究」
平成24年度 いきいきわくわく科学賞 物理化学の部 県知事賞 「なぜ,洗剤をつけたつまようじが進むのか?」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 内閣総理⼤⾂賞 「電球から⾒える光の線の研究」〃 〃 全国⼤会⼊選2等 「ダイコンの研究」
平成25年度 いきいきわくわく科学賞 物理化学の部 教育⻑賞 「筒から聞こえる⾳の研究」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 科学技術振興機構賞 「筒から聞こえる⾳の研究」〃 〃 全国⼤会⼊選2等 「氷の研究 3」〃 〃 県優秀賞 「グラスハープの研究 2」〃 〃 県優秀賞 「⽿の研究」
平成26年度 いきいきわくわく科学賞 物理化学の部 県知事賞 「伸びる影の研究」 〃 〃 〃 教育⻑賞 「⾦環⽇⾷の形が地⾯に映ったのはなぜか?」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 科学技術政策担当⼤⾂賞 「⽿の研究 2」
平成27年度 科学技術分野の⽂部科学⼤⾂表彰 創意⼯夫育成功労者⼤⾂賞 新潟市⽴⽩新中学校いきいきわくわく科学賞 物理化学の部 県知事賞 「⽔槽にできる3つの層の不思議」⽇本学⽣科学賞 中学校の部 科学技術振興機構賞 「⽔槽にできる4つの層の不思議」⽇本学⽣科学賞 指導教諭賞 ⼭内伸⼆
科学賞の名称 主催者 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度1分野の部 1分野の部 1分野の部 1分野の部
県知事賞県教育⻑賞 県教育⻑賞 県教育⻑賞 県教育⻑賞
2分野の部 県教育⻑賞県知事賞
科学賞の名称 主催者 中学の部 中学の部 中学の部 中学の部県優秀賞(県2位)
(県)優秀指導者賞
いきいきわくわく科学賞(新潟県内の⼤会)
新潟⽇報社
読売新聞社⽇本学⽣科学賞(全国⼤会)
科学賞の名称 主催者 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度物理化学の部 物理化学の部 物理化学の部 物理化学の部 物理化学の部
県知事賞 県知事賞 県知事賞 県知事賞県教育⻑賞 県教育⻑賞 県教育⻑賞⽣物地学の部
県知事賞科学賞の名称 主催者 中学の部 中学の部 中学の部 中学の部 中学の部
県最優秀賞1位県優秀賞2位県優秀賞2位県優秀賞2位
内閣総理⼤⾂賞(全国1位)
⼊選2等
科学技術振興機構賞(全国7位)⼊選2等
科学技術政策担当⼤⾂賞(全国3位)
科学技術振興機構賞(全国7位)
(全国)指導教諭賞
いきいきわくわく科学賞(新潟県内の⼤会)
新潟⽇報社
⽇本学⽣科学賞(全国⼤会)
読売新聞社
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Q2 ⼊選した科学研究はどのような内容ですか?
日本学生科学賞2013 内閣総理大臣賞
電球から見える光の線の研究
~光の線の正体をさぐる~
問い 電球から出る光の線の原因は何だと思
いますか?
ア 電球のつくりに原因があると思う。
イ 目のつくりに原因があると思う。
日本学生科学省2014 科学技術振興機構賞
筒から聞こえる音の研究
~なぜ,筒に耳を近づけると音が聞こえるのか ~
問い 筒から「ホー」という音が聞こえる原因の
仮説を5つ立てました。どのような仮説を
立てたでしょうか?
4
Q3 どうして⼊選することができるのですか?
疑問 ・・のはずなのに光の線が⾒えるのはなぜか?
疑問1 疑問2 疑問3線⾹花⽕型 レーザー光線型 ⾒え⽅
仮説 仮説 仮説 ↓ ↓ ↓
仮説 仮説 仮説 ↓ ↓
仮説 仮説
疑問 ・・のはずなのに筒から⾳が聞こえるのはなぜか?
仮説ア 仮説イ 仮説ウ 仮説エ 仮説オ
× ↓ ↓ ↓ ↓
× ↓ ↓ ↓
× ↓ ↓
× ↓
⽣き残る
内閣総理大臣賞
電球から見える光の線の研究
~光の線の正体をさぐる~
科学技術振興機構賞
筒から聞こえる音の研究
~なぜ,筒に耳を近づけると音
が聞こえるのか ~
17世紀19世紀
20世紀
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1 機会を見つけて希望者を募る
年度始めの部活動説明会のときに時間をもらって
紹介する。また,理科の授業の時間に科学研究が好き
そうな生徒を見つけ,声をかける。
夏休みに「理科作品づくり」の課題を全校生徒に出
す。その作品は文化祭に展示する。理科作品は「科学
研究」「標本」「模型工作」「発明工夫」の4つから1
つを選ぶ。
2 機会を見つけて広報する
9月末に行なわれる新潟市科学研究発表会に参加
が決まった生徒の保護者を招いて,校内の発表会を行
う。この発表会には管理職の他に学年主任や学級担任
にも参加を呼びかる。また,終業式には全校生徒を対
象に上位入選の作品の発表を行う。作品は玄関脇と理
科室脇に掲示する。
3 一緒にテーマを選ぶ
希望した生徒や研究発表が終わっ
た生徒にテーマを考えてくるように
言う。テーマの条件として右の5つ
を説明する。
生徒の体験からでると良いが,無
理そうな場合は,テレビの科学番組
や料理や生活の工夫などを紹介する生活情報番組,おもしろい実験を紹介する本等も利用する。
研究テーマの答えを指導教師は1/4ぐらいわかり,3/4ぐらい分からないのが良いと考えている。
生徒といっしょに研究し,いっしょに疑問を解明できて,いっしょにワクワク・ドキドキできるから。
4 一緒に研究しながらワクワク・ドキドキする
① 学校にはいないと
きが多いので,まず,
お互いのスケジュ
ールを調整する。
② ホワイトボードを
理科室に並べ,論文
の基本的な構成を一
緒に作っていく。
Q4 指導や運営のポイントやコツは何ですか?
① 「・・・のはずなのに・・・・なのはなぜか」 ※ 単なる題材名は×, 「どうすれば・・できるか)は△
② ⾝近な道具で実験できる。 ③ 客観的な記録が残る。 ④ とりあえずサイクルを5回は繰り返せる。 ⑤ サイクルが短い,季節を選ばない。
部活動説明会の最後に,ガリレオクラブを紹介
校内の発表会で保護者に発表
理科室脇がガリレオクラブの展示,玄関脇が標本工作等の展示
理科室にホワイトボードを並べる
〜 良いテーマの5つの条件 〜
6
主 題 〜 副 題 〜
⽒名 1 はじめに 2 研究の内容
実験 1(1サイクル) 実験 2
・ ・
実験 20 3 まとめ 4 感想
③ ホワイトボードは写真に取り,そ
のまま論文になるように書く。
構成は下ののとおり。
④ スマートアプリのCamScanerで撮
ると,台形や明暗を補正し,pdf
ファイルに変換してくれるので使
っている。
⑤ 実験の写真はとにかく,こまめに,
大量に撮る。
⑥ 実験(サイクル)は,IMRAD
(イムラッド)でまとめ,それを 20
回程度繰り返すと全国出品レベル
になる。
ホワイトボードに論文の形でまとめる
論文の構成 CamScanerで撮り pdfファイルに変換したもの
1 ⽬的(Introduce) 「仮説○○○が正しいかを確かめる」が○よい。
「・・・を調べる」は ×だめ。なるべくさける。 2 ⽅法(Method)
実験の⽅法。写真や図を⼊れる。 3 結果(Result and…)
実験の結果。グラフなど事実のみ。できるかぎり視覚的に表現する。 4 考察(Discussion)
「仮説の正誤がどうだったか」を書き,それが結果からどうしていえるかを論証するのが考察の基本。
「気付いたこと」や「わかったこと」を書くのは ×だめ 。なるべくさける。
1サイクル(1実験)ごとにまとめ⽅(IMRADイムラッド)
筒から聞こえる音の研究
~なぜ,筒に耳を近づけると音が聞こえるのか ~
新潟市立白新中学校 2 年 石原 朋佳
平成 25 年 11 月
筒から聞こえる音をウェーブスペクトラで分析
530Hz 1060(2 倍) 1590(3 倍)
太さや長さ,材質が異なる筒
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筒から聞こえる音の研究
~なぜ,筒に耳を近づけると音が聞こえるのか ~
新潟市立白新中学校 2 年 石原 朋佳
1 はじめに
保育園のころ,海に遊びに行ったとき,貝を
拾い耳に当ててみたことがあった。すると,貝
の中から「ホー」という音が聞こえた。中学校
になり,理科室にあるメスシリンダーに耳を当
ててみたら,貝のときに聞こえた「ホー」とい
う音が聞こえた。理科の音の授業で音の正体は
「物体が振動すること」と学習した。しかし,
貝やメスシリンダーは振動を起こす動作はして
いない。それなのに「ホー」という音が聞こえ
るのはとても不思議だ。そこで,「なぜ,筒に耳
を近づけると音が聞こえるのか」をテーマに研
究することにした。
2 研究の内容
実験 1 筒からどんな音が聞こえるか
(1) 目的 筒からどんな音が聞こえるかを調べる。
(2) 方法
① 図 1-1 のサランラップの芯を筒に利用する。
② 図 1-2 のように筒に耳を近づけ,音を聞く。
③ 筒の持ち方等も変えて,気付いたことを記録する。
(3) 結果
・筒に耳を近づけると「ホー」っという音が聞こえ
た。
・図 1-2 のAの口をふさいでも音が聞こえる。開い
たときよりこもった音に変わった。
(4) 考察
筒から聞こえた音が「ホー」という音だったこと,
片方の口をふさぐと音が変わること,筒を手で持っ
て実験したことなどから4つの仮説を思いついた。
それを整理してみる。
図 1-1 サランラップの芯
図 1-2 筒の音を聞く
A
2
仮説 2 4つの仮説を立てる
(1) 目的 「なぜ,筒から音が聞こえるか」を説明す
る仮説を立てる。
(2) 4つの仮説
① 仮説 1 血流の音が源 説
音叉自体が鳴る音は小さいが,図 2-1 のように共
鳴箱に音叉をつけると,音は増幅される。
手や耳には血液が流れている。この血流が流れる
音を音叉の音,筒を共鳴箱と考えると,筒から聞こ
える「ホー」という音は,図 2-2 のように血流が手
や耳に流れる音が筒で増幅された音だ。
② 仮説 2 周囲の雑音が源,側面衝突 説
図 2-3 の糸電話は,声の音の振動が糸を振動させ,
糸の振動は紙コップを振動させ,声が聞こえる。
筒のまわりには,多くの雑音があり,その雑音は,
糸電話の糸と同じ働きをして,筒の側面を図 2-4 の
ように振動させるかもしれない。筒から聞こえる「ホ
ー」という音は,周囲の雑音が,側面から伝わった
音だ。
③ 仮説 3 周囲の雑音が源,筒の口混合説
筒の周りには,多くの雑音があり,その雑音は図
2-5 のように筒の口に入り,それが混じり,増幅さ
れたのが,「ホー」という音だ。
④ 仮説 4 周囲の雑音が源,筒の口一部通過説
筒の口から周りの雑音が入るところまでは仮説3
と同じ。その雑音の中のある音だけが,図 2-6 のよ
うに筒を通過し,増幅されたのが,「ホー」という音
だ。
4つの仮説は,右の図 2-7 のような関係になっ
ている。まず,「ホー」という音の源は,血流か周
囲の雑音かで2つに別れ,雑音の場合,筒の側面
から入ったか,口から入ったかで2つに別れ,さ
らに,混じった音なのか雑音の一部たけの音なの
かで2つに別れる。
仮説1の血流音源説から検証していく。
図 2-2 血流の音が筒で増幅
図 2-1 音叉を共鳴箱に付ける
音 叉 を 共 鳴箱 に 付 け る. . . . .
と箱が鳴る.....
図 2-3 糸電話
声の振動 糸の振動
図 2-4 筒の側面から雑音
図 2-5 筒の口から入り混ざる
混ざる
図 2-6 筒の口から一部が通過
一部が通過
図 2-7 仮説4つの関係
3
実験 3 筒の音の源は血流か
(1) 目的「仮説 1 血流の音が源 説」を検証する。
(2) 方法
実験1で利用したサランラップの芯を図 3 のよう
にスタンドで押さえ,音を聞く。
(3) 結果
実験1のときに聞こえた「ホー」という音が,ス
タンドで押さえても同じように聞こえた。
(4) 考察
手で押さえなくても「ホー」という音が聞こえた
ということは,手で持つことと関係ない。仮説 1 の
手の血流が音源の考えは否定された。
実験 4 筒の音の源は周囲の雑音か
(1) 目的「雑音が源 説」を検証する。
(2) 方法
図 4-2 のように CC ルームという防音の部屋で筒の
音を聞き,その音を理科室のときと比べる。
(3) 結果
「ホー」という音はほとんど聞こえなくなった。
(4) 考察
防音の部屋で筒の音を聞くと,「ホー」という音は
聞こえなくなった。したがって,筒の周囲の雑音の
音が源であることがはっきりし,仮説1の耳の血流
の音源という考えも否定された。
実験 5 筒の側面からの雑音が源か
(1) 目的「仮説 2 周囲の雑音が側面衝突 説」を検証
する。
(2) 方法
図 5 のように筒をタオルで巻いて音を聞く。
(3) 結果
タオルを付ける・付けないを変えても「ホー」と
いう音に違いはなかった。
(4) 考察
仮説 2 周囲の雑音が側面に衝突するという考えは否定された。筒の口から雑音が入り,
筒の音が聞こえることがわかった。筒の口から入った雑音が「ホー」という音の源であ
図 3 筒をスタンドで押さえる
図 4-1 理科室で筒の音を聞く
図 4-2 CCルームで筒の音を聞く
図 5 筒にタオルを巻く
4
ることははっきりした。実験 3,4,5 から仮説 3 と 4 の 2 つが残った。筒から聞こえる「ホ
ー」という音は,特定の音が増幅されたように感じる。しかし,筒の特徴と音の関係を
まだ明らかにしていない。筒には,長さと太さ,材質の3つの性質をもつので,それら
を変えると筒から聞こえる「ホー」という音がどのように変化するかを調べる。
実験 6 筒の音と筒の長さの関係を調べる
(1) 目的 筒の太さ,材質を同じにし,長さを変えて筒
ら聞こえる音に違いがあるかを調べる。
(2) 方法 図 6 のようにアルミ箔の芯 1 本と 2 本をつな
いだものを準備し,筒から聞こえる音を比
べる。
(3) 結果 筒が長いほうが低くなった。
(4) 考察 筒が長いほど,低い音になるらしい。
実験 7 筒の音と筒の太さの関係を調べる
(1) 目的 筒の太さ,材質を同じにし,長さを変えて筒
ら聞こえる音に違いがあるかを調べる。
(2) 方法 図 7 のようにサランラップの芯は 4cm,アル
ミ箔の芯は 3cm だった。これを準備し,筒か
ら聞こえる音を比べる。
(3) 結果 筒から聞こえる音に違いはなかった。
(4) 考察 筒の太さは,筒の音と関係ないようだ。
実験 8 筒の音と筒の材質の関係を調べる
(1) 目的 筒の長さと太さを同じにし,材質を変えて筒
ら聞こえる音に違いがあるかを調べる。
(2) 方法 図 8 のように紙の芯と 1 個と 2 個をつないだ
ものを準備し,筒から聞こえる音を比べる。
(3) 結果 筒から聞こえる音に違いはなかった。
(4) 考察 筒の材質は,筒の音と関係ないようだ。
実験 6,7,8 から,筒から聞こえる音は筒の長さが長
くなるにしたがって,低くなることがわかった。
ヒトの耳で確かめるのは曖昧だ。また,筒の長さと
高 低 の 関 係 を を 調 べ た い 。 そ こ で ,「 WaveSpectra
Ver.1.51」というフリーソフトを利用して,音の高低
や音がどのように混じっているかを調べることにした。
図 6 アルミ箔の芯(長さを変える)
直径 3cm,長さ 25cm と 50cm
WaveSpectra Ver.1.51
http://www.ne.jp/asah
i/fa/efu/soft/ws/ws.h
tml
直径 4cm と 3cm, 長さ 25cm
図 7 芯の太さを変える
図 8 鉄の芯と紙の芯 直径 3cm,長さ 25cm
鉄
5
実験 9 「WaveSpectra」を試す
(1) 目的 「WaveSpectra」で音を記録し,音の高低や
音がどのように混じっているかが調べられ
るかを確かめる。
(2) 方法
① 図 9-1 の よ う に 特 定 の 音 の 音 叉 を 鳴 ら し ,
「WaveSpectra」で記録する。音叉が出す音の振動
数と一致しているかを確かめる。
② リコーダーの音を記録し,どのように記録されて
いるかを確かめる。
(3) 結果
① 「ラ」の音叉の音を記録
「WaveSpectra」で「ラ」の音叉の音を
記録すると図 9-3 の様になった。
図 9-4 はAの部分は「ラ」の音の波形
で拡大したもので,綺麗な波の形になっ
ていた。
図 9-5 のBの部分を拡大したもので,
440Hz のところが山になっていて,「ラ」
の音(440Hz)と一致していた。
② リコーダーの音を記録
リコーダーの「レ」の音を記録すると図 9-6
の様になった。図 9-8 はDの部分を拡大した
もので,リコーダーの音は音叉と違いいくつ
かの振動数の音が混ざってできている。また,
「レ」の振動数は 587Hz なので,混ざった音
のうち,一番小さい振動数がその音の高さを
決めている。図 9-7 のように,凹凸がある複
雑な形の波になっていた。リコーダーは複数
の振動数の音が混ざりの独特の音に聞こえる
のだろう。
図 9-2 リコーダー
図 9-1 小型の音叉を共鳴箱に付けて鳴らす
図 9-4 Aを拡大,音叉の綺麗な波形が表示されている
A
図 9-3 「WaveSpectra」で音を記録
B
図 9-5 B440Hz で山に
440Hz
図 9-7 C凸凹した複雑な波形
図 9-6 ソプラノリコーダーの「レ」を記録
D
C
図 9-8 D振動数の大きい音も混じる
振 動 数 の 大 き い
音も混ざる
587Hz
6
(4) 考察
「WaveSpectra」には次の2つのことを調べること
ができることがわかった。
① 発生している音がどのような振動数の音が混じ
ってできているか。
音叉は1つの振動数の波からできているが,通常
の音はいくつかの振動数の波が混ざって独特の音
(音色)になっているらしい。
② 発生している音の高さは,何 Hz か。
いくつかの振動数の波が混ざった通常の音は,1
番小さな振動数の波が,その音の高さを決めるらし
い。
実験 10 筒から聞こえる音は「混合」か「一部通過」か
(1) 目的
筒の口から入った雑音が「ホー」という音
の源であることははっきりした。図 10-1 の
ように,仮説 1,2 は否定され,仮説 3,4 の 2
つが残った。仮説 3 と仮説 4 を検証する。
(2) 方法
① 図 10-2 のように,防音の CC ルームでラジ
オを置き,放送がないところに調整して,
人工的に雑音を作る。
② 長さ 30cm,直径 3.4cm の筒の中にコンピュ
ータにつないだマイクを入れる。
③ 次の 4 つを「WaveSpectra」で記録する。
A 無音(マイクは筒の外)
B 無音(マイクは筒の中)
C ラジオの雑音(マイクは筒の外)
D ラジオの雑音(マイクは筒の内)
図 9-9 D振動数の大きい音も混じる
①いくつかの振動
数の音が混ざる。
②音の高さを決める基本の振動数
図 10-1 仮説4つの正誤
図 10-2 ラジオと筒,PC
7
(3) 結果
下の図 10-3~10-6 のようになった。
図 10-3Aと図 10~4Bから,無音になると筒から聞こえる「ホー」という音も聞こえ
ない実験 4 の結果が PC による測定として確かめることができた。「ホー」という音は雑
音が源で間違いない。
ラジオの雑音は図 10-5Cのように多くの振動数の集まりで,全ての振動数でわずかに
音を出している。
しかし,筒にマイクを入れると,図 10-6Dのように特定の振動数の音が多くなった。
530Hz で特に大きな音を出し,その2倍,3倍,4倍の振動数で 530Hz ほどではないが
音が大きくなっている。
(3) 考察
仮説3は間違いで,仮説4の「周囲の雑音が
源,筒の口一部通過説」が正しいらしい。
筒の長さに応じた振動数とその倍数の振動数
の音だけが,増幅され,音を出すことがわかっ
た。
最後に,実験 6,7,8 で調べた筒の太さや材質
によらず,長さに音の高さが決まることをコン
ピュータの測定でも確認してみることにする。
振動数も測定できるので,グラフにもしてみた
い。
図 10-3 A無音(マイクは筒の外) 図 10-4 B無音(マイクは筒の中)
図 10-5 Cラジオの雑音(マイクは筒の外) 図 10-6 Dラジオの雑音(マイクは筒の中)
530Hz 1060(2 倍) 1590(3 倍)
図 10-1 仮説4つの正誤
8
実験 11 筒の長さと振動数の関係をグラフにする。
(1) 目的
筒から聞こえる「ホー」という音の振動数は,筒の太さや材質を変えても変わらず,
長さだけに関係することをグラフにすることで検証する。
(2) 方法
実験の方法は実験 10 と同じ,使った筒は図 11-1 の 5 種類を使った。
材質,直径(太さ),長さは表 11-2 のとおり。
(3) 結果
① 長さを変える(太さ,材質は同じ)
AとDの振動数を比較すると図 11-3 のよ
うになった。
長さを 2 倍にすると,振動数は約半分にな
る。規則性がありそうだ。
② 太さと材質を変える(長さは同じ)
太さ(直径)と材質(鉄と紙)を変えても,
長さが同じなら,図 11-4 のように振動数に違
いはなかった。
耳で調べたことを,振動数でも確認するこ
とができた。
図 11-1 太さや長さ,材質が異なる筒
A
B
C
D
E
表 11-2 条件と振動数の結果
材質 直径 長さ 振動数紙 2.9 26 620鉄 2.4 30 540紙 3.4 30 529紙 2.9 51 318紙 5.5 92 176
(単位) cm cm Hz
AB
CD
E
620
318
0
100
200
300
400
500
600
700
20 30 40 50 60
長さ
振動数
A D
2倍
1/2倍
図 11-3 長さを2倍にする
540 529
0
100
200
300
400
500
600
2 2.5 3 3.5 4
直径
振動数
B
図 11-4 太さと材質を変える
C
9
(4) 考察
A~D5つの筒の長さを横軸に,振動数
を縦軸にしてグラフに表すと,図 11-5
のようになった。
筒の長さと振動数は反比例の関係に
なっている。
また,この実験では,直径(太さ)や
材質が異なる筒もつかったので,直径
(太さ)や材質によらないことも確かめ
ることもできた。
実験 12 筒の片方をふさぐ。
(1) 目的
貝やメスシリンダーで「ホー」の音に気付いた。そ
れらは,これまでの筒のように両端の口が開いていな
いで,片方は閉じている。そこで,筒の片方の端を閉
じたときの振動数も調べてみることにした。
(2) 方法
筒の片方を図 12-1 のようにガムテープでふさぎ,
実験 11 の方法で振動数を調べた。
(3) 結果
図 12-2 は,ラジオの雑音を表示した時である。
両端をひらいた筒は,「ホー」の音は大きく,マイク
を入れると,図 12-3 のように,特定の振動数の音が
大きく増幅されていることがわかる。しかし,筒の片
方をふさぐと,その音はとても小さく,図 12-4 のよ
うに,波形では確認できなかった。耳ではこもった音
がかすかに聞こえた。
(4) 考察
筒の両端の口を開けたときは,音が入る口とマイクを入れる口が別々で,ラジオから
十分離れた位置にマイクを置くことができた。それに対して,片方の口をふさぐと,ラ
ジオに近づけるとラジオの雑音自体がじゃまをし,遠ざけると図 12-4 のように「ホー」
ということは小さすぎて,振動数を確かめられなかった。
0
100
200
300
400
500
600
700
0 20 40 60 80 100
長さ(cm)
振
動
数(
H
z
)
図 11-3 筒の長さと振動数の関係
図 12-1 筒の片方をふさぐ
図 12-2 ラジオの雑音 図 12-3 両端ひらいたとき 図 12-4 片方ふさいだとき
10
3 まとめ
「なぜ,筒から音が聞こえるか」の疑問の解決を目標に研究を行なった。成果と課題は
次のとおりである。
○ 成果
① 筒から聞こえる「ホー」という音は,周囲の雑音が筒の口に入り,一部の振動数の音
が増幅されることで聞こえることが明らかになった。
② 筒から聞こえる「ホー」という音の振動数は筒の長さのみに関係し,太さや筒の材質
には関係ないこと,振動数と筒の長さは反比例の関係にあることがわかった。
③ 血流の流れる音が元になっているという仮説,周囲の雑音が筒の側面にぶつかるとい
う仮説,周囲の雑音が筒の口に入り混じるという仮説は,実験で否定した。
● 課題
① 「なぜ,筒には一部の振動数の音を増幅させる性質があるのか」が新たな疑問になる。
②「筒の片方の端を閉じると,振動数はどうなるか。」は疑問として残った。
3 研究を終えて
コンピュータを使う前は,耳で音の高さや大きさを聞き分けていたが,それはとてもむ
ずかしかった。たくさんの仮説を立てて,1つ1つ検証していくのはとても楽しかった。
筒から聞こえる「ホー」という音の正体は,「周囲の雑音の一部をひろい増幅させる」と
いうことがわかり,私の最初の疑問は解決できた。今後も,身近な自然現象に疑問を見つ
け,研究をしていきたい。
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Where there is a wi l l , there is a way.