Oct 24, 2010 基研研究会「大振幅集団運動の微視的理論」
日野原
伸生 (理研仁科センター)
佐藤
弘一
(理研仁科センター)
中務
孝
(理研仁科センター)
松尾
正之
(新潟大学)
松柳
研一
(理研仁科センター/京大基研)
断熱的自己無撞着集団座標法 による集団経路の抜き出し
断熱的自己無撞着集団座標法 による集団経路の抜き出し
集団的自由度
集団運動:
少数の集団的自由度によって記述できる
IntroductionIntroduction
大振幅集団運動
プロレート変形
オブレート変形
β球形
γ
小振幅集団運動
変形共存現象、自発的核分裂、低エネルギー核反応・・・
集団回転・β振動・γ振動・対振動、・・・(Q)RPAによって振動状態の集団変数が求められる
集団的自由度の性質?自由度の数?
ContentsContents
ゲージ不変なASCC法の定式化
変形共存ダイナミクスの集団経路
理論的問題点と多次元への拡張
まとめ
ゲージ不変なASCC法の定式化ゲージ不変なゲージ不変なASCCASCC法の定式化法の定式化
N.Hinohara, T.Nakatsukasa, M.Matsuo and K.Matsuyanagi, Prog.Theor.Phys.117 (2007), 451
ASCC法の基本方程式とゲージ変換の自由度
ゲージ固定条件の選び方
まとめ
自己無撞着集団座標法自己無撞着集団座標法
Time-dependent Hartree-Fock-Bogoliubov (TDHFB)位相空間から集団部分空間(集団経路)を抜き出す大振幅集団運動理論 正準変数として集団変数(q,p) を決定する 非集団的自由度と集団的自由度は最大限分離していると仮定
(maximal decoupling condition) 対相関によって破れた粒子数保存を回復する対回転モード(φ,N)を
あらわに取り扱うことで、これらと分離して集団変数を決定
(1986)
Marumori et al., Prog.Theor.Phys.64
(1980), 1294.Matsuo, Prog.Theor.Phys.
76 (1986), 372.
自己無撞着集団座標法(Self-consistent Collective Coordinate Method, SCC法)
(η*, η) 展開法
(1980) ・・・1つの変形平衡点を仮定
断熱展開法
(2000) ・・・1つの変形平衡点を仮定しない
Solution of SCC method
Adiabatic
SCC (ASCC) MethodMatsuo et al., Prog. Theor. Phys. 103(2000) 959.
非調和振動・変形相転移などへ応用
変形共存現象への応用が可能
時間依存変分原理
SCCSCC法の基本方程式法の基本方程式
(q,p) :集団座標・集団運動量(一般に多次元)(φ,n): ゲージ空間での回転角・粒子数ゆらぎ
粒子数演算子の揺らぎ部分
SCC法基礎方程式 I : 集団部分空間の方程式
集団部分空間(経路)
SCC法基礎方程式 II : 正準変数条件
SCC法基礎方程式 III : 集団 Hamiltonian S: arbitrary function of q,p,φ,n
Matsuo, Prog.Theor.Phys. 76 (1986) 372.TDHFB状態
SCCの基礎方程式の解法の一つ SCCの基礎方程式を集団運動量pの2次まで展開、各次数での成立を要請 集団座標qに関する展開がなく、変形共存のような大振幅集団運動の記述が可能
Adiabatic SCC (ASCC) Adiabatic SCC (ASCC) 法法Matsuo et al. Prog. Theor. Phys. 103(2000) 959.
断熱近似
(a,a+): localに定義された準粒子演算子a|φ(q)> = 0集団
Hamiltonian
集団ポテンシャル
(集団質量)-1
化学ポテンシャル
p=n=0p=n=0の状態の状態
Moving-frame HFB 方程式
Moving-frame QRPA (quasiparticle RPA)方程式
Moving-frame Hamiltonian
1次、2次項から
断熱展開のゼロ次項より
集団経路の方程式 集団運動量pの2次まで展開
ASCC ASCC 法法の基本方程式の基本方程式
正準変数条件 集団運動量pの1次まで展開
ASCCASCC法の法の((粒子数空間での粒子数空間での))ゲージ変換不変性ゲージ変換不変性Moving-frame HFB 方程式
Moving-frame QRPA 方程式
ゲージ変換
を満たす演算子Q(q)が決定できればすべての集団経路上の点において方程式をゲージ不変な形に出来る。
準粒子表示ではa+a項をQ(q)に加えることによってこの条件を満たすことが可能となる。
NH et al, Prog.Theor.Phys.117 (2007) 451.
QRPA ゲージ ETOP ゲージ
ASCCASCC法を解くアルゴリズム法を解くアルゴリズム
3rd Step: 集団Hamiltonianを量子化して量子状態を求める.
2nd Step: 集団Hamiltonianを求める.
1st Step: ASCC法の基礎方程式を解いて集団経路を求める
集団ポテンシャル 集団質量
Inputs:
Microscopic Hamiltonian (有効相互作用).
Moving-frame HFB 方程式 Moving-frame QRPA 方程式
Double iteration for each q
movingmoving--frame QRPAframe QRPA解:最も振動数二乗の小さいものを選ぶ解:最も振動数二乗の小さいものを選ぶ
MultiMulti--O(4) modelO(4) model
Multi-O(4) model
monopole pairing interaction
quadrupole pairing interaction
quadrupole interaction
系の変形はDの1自由度のみ
28
2828
一粒子エネルギー
粒子数
N = 28
シェルモデル基底数
(SU(2)×SU(2)) : 1896
χ
= 0.04, G0
= 0.14, 0.16 or 0.20 G2
= 0
変形のレンジ: -42 < D < 42 (模型空間による制限)
ゲージ不変なASCC法を実際に解くことは出来るのか?ゲージ固定条件はどのように決めればよいのか?
変形共存がシミュレートできるMulti-O(4)モデルでの数値計算
集団ポテンシャル集団ポテンシャル
V(qV(q)) 集団座標集団座標
ゲージに依存しない量の比較ゲージに依存しない量の比較
QRPA ゲージETOP ゲージignore QB
ゲージに依存する量の比較ゲージに依存する量の比較
ddλλ/dq/dq
(q)(q)
QRPAゲージETOPゲージ
combinationETOPゲージで集団経路を計算した後に、ゲージ依存量のみゲージ変換することによってQRPAゲージへと移行したもの
適切なゲージ固定条件は?適切なゲージ固定条件は?
化学ポテンシャル化学ポテンシャル
λλ
QRPAゲージETOPゲージcombination
QRPA ゲージ:変曲点付近でゲージ依存量が発散し、計算の続行が不可能となる
ETOP ゲージ: 発散は起こらない
ゲージそのものの変換
変換は変曲点においてsingularとなる
変換はnormal phaseにおいてsingularとなる。
変形共存を記述するためにはETOPゲージを用いるのがよい
B(q) C(q) =
ETOPゲージで集団経路を計算した後に、ゲージ依存量のみゲージ変換することによってQRPAゲージへと移行したもの
まとめまとめ
ASCC法のゲージ不変な定式化を行った。これにより、大振幅集団運動の自由度と対回転
の自由度の完全な分離が可能となった。
非平衡点を含む集団経路上においてゲージ不変性を保つためには集団座標演算子
Q(q)は条件 [Q(q), N] = 0を満たす必要がある。この条件はa+a項をQ(q)演算子に加え ることによって実現できる。
ASCC方程式を解くにはゲージ固定の操作が必要である QRPA ゲージ ETOP ゲージ
これまでのこれまでのASCCASCC法での近似解は法での近似解は
ETOP gaugeETOP gaugeを採用したことと同等であるが、を採用したことと同等であるが、Q(q)演算
子のa+a項 は無視した取り扱いとなっていた。
Gauge-invariant ASCC法を multi-O(4) model Hamiltonianに適用した。
QRPAゲージを用いるとポテンシャルの変曲点付近でゲージ依存量が発散し、集団経路を求めることが出来ないが、
ETOPゲージを用いることで変形共存の集団経路の導出に成功した。
変形共存ダイナミクスの集団経路変形共存変形共存ダイナミクスの集団経路ダイナミクスの集団経路
Kobayasi et al., Prog. Theor. Phys. 113 (2005) , 129.N.Hinohara, T.Nakatsukasa, M.Matsuo and K.Matsuyanagi, Prog.Theor.Phys.119 (2008), 59
68Se, 72Krでの変形共存
ASCC法の集団経路
集団Hamiltonianの量子化
まとめ
NN~~ZZ~~40 40 領域での変形共存現象領域での変形共存現象
50
28
20
343438
42
36
40
中性子一粒子エネルギー
オブレート-プロレート変形共存
Z,N = 34,36 (オブレート変形魔法数)
Z,N
= 38 (プロレート変形魔法数)
Bouchez et al., Phys.Rev.Lett.90(2003), 082502.Fischer et al., Phys.Rev.C67
(2003), 064318.
Skyrme-HFB: Yamagami et al., Nucl.Phys.A693
(2001), 579.
68Se 72Kr
回転運動の取り扱い回転運動の取り扱い
主軸回りの集団的回転に対する主軸回りの集団的回転に対するMovingMoving--frame QRPA frame QRPA 方程式方程式
集団集団
HamiltonianHamiltonian
回転エネルギー項
非軸対称変形の三次元回転をあらわに取り扱う
慣性モーメントは集団経路を求めた後に評価
moving-frameでのThouless-Valatin慣性モーメント(平均場time-odd項からの寄与含む)
“Thouless-Valatin equations”
Pairing + Quadrupole ModelPairing + Quadrupole Model
50
28
20
343438
42
36
40
monopole pairing quadrupole pairing quadrupole p-hsp energy
Hamiltonian
一粒子エネルギー
模型空間:
two major-shell
(40Ca core)
一粒子エネルギー:modified oscillator G0
, χ: Skyrme-HFBの変形度、pairing gapを再現するように原子核ごとに調整
Skyrme HFB: Yamagami et al., NPA693
(2001)
G2
:二つの計算を比較 G2
= 0 G2
= G2self
(self-consistent value) Sakamoto et al PLB245
(1990) 321.
monopole pairingによって破れたガリレイ不変性をRPAオーダで回復
Symmetries in P+Q modelSymmetries in P+Q model
Classification of the operators in P+Q model
r: signature K: z-component of angular momentum in the intrinsic frame
r=+1, K=0, 2: large-amplitude vibration (used in ASCC cal.)r=+1, K=1: rotation about the x-axisr= -1, K=1: rotation about the y-axis (symmetry axis at γ=60°)r= -1, K=0,2 rotation about the z-axis (symmetry axis at γ=0°,quantization axis of sp state)(* No contribution to MoI from quadrupole operators D21(-), D21(+), D22(-)
6868SeSeの集団経路・集団の集団経路・集団HamiltonianHamiltonian集団ポテンシャル 集団質量
Moving-frame QRPA モードエネルギー
G2 =0: Kobayasi et al., PTP113(2005), 129.
γ
β
慣性モーメント
非軸対称の領域を通る大振幅集団運動集団質量・慣性モーメントはquadrupole pairingによって増大
集団経路
平均場のtime-odd成分からの寄与 Prog.Theor.Phys.115(2006)567.
集団ポテンシャル 集団質量
Moving-frame QRPA モードエネルギー
G2 =0: Kobayasi et al., PTP113(2005), 129.
oblate prolate
γ
β
β
β
β
γ
γγ
7272KrKrの集団経路・集団の集団経路・集団HamiltonianHamiltonian
慣性モーメント
ダイナミクスによって集団経路の軸対称性が破れる非軸対称変形領域が重要集団質量・慣性モーメントはquadrupole pairing
によって増大
q=0
集団波動関数の境界条件
68Se:γ=0°と60°でγ方向に対して四重極変形の満たす境界条件Kumar and Baranger Nucl. Phys. A92 (1967) 608.
72Kr:集団経路の両端で波動関数がゼロ
集団波動関数
集団集団HamiltonianHamiltonianの量子化の量子化
3rd Step: 集団Hamiltonianの再量子化
E2 transitions, spectroscopic quadrupole moments …
4th Step: E2遷移の計算
K: 角運動量の3軸成分3軸: γ=0oでの対称軸
large-amplitude vibrational wavefunctions
6868SeSeのエネルギースペクトルのエネルギースペクトル
二つの回転バンド 02+ state quadrupole pairingによって励起エネルギーが下がる
( ) …B(E2) e2 fm4effective charge: epol = 0.904
EXP:Fischer et al., Phys.Rev.C67 (2003) 064318.
6868SeSeの集団波動関数の集団波動関数
I = 0: オブレート・プロレート変形が非軸対称領域を通じて強く混ざり合う基底状態バンド:異なるKが混ざり合う
励起状態バンド:K=0 がdominant
オブレート・プロレートの混合は0+ 状態で強く、角運動量が増えるとともに減少する.
G2 = 0G2 = G2self
波動関数の局在化
7272KrKrのエネルギースペクトルのエネルギースペクトル
( ) …B(E2) e2 fm4effective charge is adjusted to this value
EXP:Fischer et al., Phys.Rev.C67 (2003) 064318, Bouchez, et al., Phys.Rev.Lett.90 (2003) 082502.Gade, et al., Phys.Rev.Lett.95 (2005) 022502, 96 (2006) 189901
2つの回転バンドバンド間のB(E2)は小さい: 変形混合は弱い
7272KrKrの集団波動関数の集団波動関数G2 = 0G2 = G2self
oblate prolate
01+ 状態: オブレート付近に局在 02+ 状態: オブレート・プロレートが混合 others: オブレートあるいはプロレートに局在
oblate prolate
まとめまとめ
68Se,72Krのオブレートープロレート変形共存ダイナミクスを記述する集団
HamiltonianをASCC法に基づいて微視的に導出することに成功した。
集団経路での非軸対称変形の重要性 Quadrupole pairingによって慣性質量・慣性モーメントが増大
エネルギースペクトル、E2遷移確率をASCC法に基づいて得られた集団
Hamiltonianを量子化することによって求めた。
ASCC法の低励起状態への初めての計算 定性的にオブレートープロレート変形共存の基本的な性質を表
現することに成功した。 励起エネルギーはquadrupole pairingによって下がる 波動関数における変形の混合は角運動量が増大とともに減少
理論的問題点と多次元への拡張理論的問題点と多次元への拡張理論的問題点と多次元への拡張
pairing collapse problempairing collapse problem
一次元集団経路はpairing gapがゼロになる付近までしか求まらない。
oblateoblate prolateprolate
weak pairing (相転移付近)ではpairing gapの大きさを変えるpairing vibrationが最も低エネルギーでの集団モード相転移点での集団経路が滑らかにならない
ETOPゲージ:pairing gapがゼロの点でsingularになる。
22次元への拡張の必要性次元への拡張の必要性
球形核
moving-frame QRPAモードが縮退:大事な集団座標が複数存在
変形共存
1次元では二つの平衡点がつなげない場合
7474KrKr
ββ、、γγ両方のモードが重要になる両方のモードが重要になる
prolateprolate
四重極の四重極の55つの自由度の取り扱いが必要つの自由度の取り扱いが必要
多次元集団部分空間に対する多次元集団部分空間に対するASCCASCC方程式方程式
集団集団HamiltonianHamiltonian
moving-frame HFB 方程式
moving-frame QRPA 方程式
Matsuo et al. Prog. Theor. Phys. 103(2000) 959.集団変数集団変数
ゲージ変換不変性ゲージ変換不変性
まとめと今後の展望まとめと今後の展望
ASCC法のゲージ不変な定式化を行った。大振幅集団運動 の自由度を対回転の自由度と完全に分離して求めることに
成功した。
ASCC法を用いてオブレートープロレート変形共存核68Se・72Krの低励起状態を初めて計算した。変形共存の定性的な
性質を記述することが出来た。
多次元への拡張
→
次の佐藤さんの講演
Skyrme密度汎関数を用いた定式化
→
吉田さんの講演
断熱的自己無撞着集団座標法�による集団経路の抜き出し IntroductionContentsスライド番号 4自己無撞着集団座標法SCC法の基本方程式Adiabatic SCC (ASCC) 法スライド番号 8スライド番号 9ASCC法を解くアルゴリズムMulti-O(4) modelスライド番号 12スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16N~Z~40 領域での変形共存現象回転運動の取り扱いスライド番号 19Symmetries in P+Q model 68Seの集団経路・集団Hamiltonianスライド番号 22スライド番号 23スライド番号 24スライド番号 25スライド番号 26スライド番号 27まとめスライド番号 29スライド番号 30スライド番号 31多次元集団部分空間に対するASCC方程式まとめと今後の展望