8 ビジネスコミュニケーション 2019 Vol.56 No.3
知 今連載
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Global Mobility Service 株式会社(略称:GMS)は日本に本社を構えASEAN各国に IoT技術を活用したFinTechサービス展開するMobility
× IoT × FinTech領域のスタートアップである。NTTデータ主催「第 8回豊洲の港から®presentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」で最優秀賞を獲得した。
GMS社は従来ローン審査に通過できない低所得の人々が、ローンを組んで車両を購入できる FinTech
サービスを、日本、フィリピン、カンボジア、インドネシアのタクシー事業者などに向けて提供している。世界にはタクシーや物流等の仕事に就業すべく、金融機関等のローンやリースを活用して車を入手したくても与信審査を通過できないために車を購入できない人が 20億人いると言われている。もしそれらの人たちがローンを使えるようになれば、1人当たり 100万円を借りるとしても、2000兆円という大規模なマーケットになる。
GMS社は独自開発した GPS搭載の IoTデバイス「MCCS(Mobility-
Cloud Connection System)」を車に
装着し、月額料金が支払えなければ遠隔制御によってエンジンをかからなくする仕組み(走行中にエンジンが停止するということはない)を実現した。この仕組みを使うことで、GMS
社の FinTechサービスはさまざまなステークホルダーに価値を創出している。①金融機関へは、これまで貸すことができなかった顧客層の開拓による新たな貸高の創出②自動車メーカーや車両販売店へは、これまで売ることができなかった顧客への販売機会の創出③ローン・リース契約者には、車の購入機会のみならず、車を活用したタクシー等への就業機会をも創出
上述のとおり、「三方良し」の新市場創出を実現するビジネルモデルを確立している(図 1)。
GMS社はこれまで経済合理性で解決できなかった社会課題を、テクノロジーと巻き込み力をもって、多くの金融機関との提携を果たし、イノベーションを可能にしてきた会社である。2030年までの国際目標である SDGsの達成に向け、もっとも実績を積み上げてきている企業の一つである同社はモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)によりデバイスから収集する多様な情報を価値化し、二次活用することで、モビリティの新たなあり方を創造しようとしている。具体的には、
社会課題解決へのAI適用
前回のレポートでは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)に向けて社会課題の抽出や対策評価にAIを適用しようとしている事例を紹介した。今回は「AI がソフトウェア産業に与えるインパクト」の連載最終回にあたり、社会課題解決にAI を適用しようとしている事例を紹介する。
株式会社NTTデータ技術革新統括本部 技術開発本部
Technology Strategist 遠藤 宏
遠藤レポート : AI がソフトウェア産業に与えるインパクト (6)
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図 1 GMSが提供する価値(Source: GMS社)
データを活用し、低所得者の資金調達促進
9ビジネスコミュニケーション 2019 Vol.56 No.3
知 今連載
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・Open APIを実装し金融機関を始め各企業とのシームレスな連携を可能にすることで、与信補強を行うローン・リースパッケージのスムーズな立ち上げ・AIの活用による収集情報の分析・解析(図 2)
・多様なサービスベンダーのアプリケーションのプラットフォームとの連携などにより、革新的なモビリティサービスを追求している。
昨年 10月号から本テーマを執筆してきたが、AI市場の動きは速く、寄稿後しばらくすると新たな動きが次々と現れた。例えば AI技術者獲得戦は米国大手 IT企業だけでなく、コンサルティング会社や各産業のリーディング企業も名乗りを上げて、全米主要都市で大量求人の動きがある。旺盛な AI技術者ニーズがあるので、自身の AIスキルを高めて良い条件の求人を探す動きが世界各地で広がっている。
AIがソフトウェア産業に与えるインパクト(update)
ラットフォームとなるような、イノベーティブなビッグビジネスの提案を募集している。第 9回のコンテストは、2018年12月から世界 20都市で各地選考会が行われている。既に選考会が終わった各都市の最優秀賞と SDGs賞受賞企業の顔ぶれを見ると、提案ソリューションの中に AIを組み込んでいる企業が相当数ある(表1)。社会課題解決を目論むスタートアップにとって、ソリューションの強みを増すために、AIが強力な武器になってきているということなのであろう。2030年に向けて、ソフトウェア産業に属する弊社が①食品・農業、②都市、③エネルギー・材料、④健康・福祉などの分野において市場機会を得るためには、オープンイノベーションの仕組みを継続・発展させていき、併せて AIの適用・実装能力も伸ばしていくことが重要になるだろう。
“さあ、ともに世界を変えていこう!”
<お問い合わせ先>[email protected]
また、AIインテグレーションのアウトソーシングを請け負う企業も立ち上がってきているので、サービス・ソリューションに AIを適用する場合の技術者リソースの選択肢が広がってきた。
NTTデータの「豊洲の港からグローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト」は、NTTデータグループが提供するサービス・ソリューションとスタートアップ企業のサービス・ソリューションが掛け合わさることで、SDGs(世界 17の課題)を解決し新しい世界のプ
社会課題解決に向けて~ AIとオープンイノベーションの役割
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選考会
東京
上海
テルアビブ
プネ
ホーチミン
パリ
バルセロナ
マドリード
各地選考会・優勝企業
★Anchorz
★云拿科技(cloudpickle)
★Innoviz
★FlytBase Inc.
★Lucep
★OpenDataSoft
TravelPerk
Enigmedia
提案ソリューションバックグラウンド随時本人認証とファイル分散
レジなし店舗
自動運転用LiDERを高性能・低価格に実現
あらゆるドローンが接続できるプラットフォーム
SNSマーケティング支援ソリューションオープンデータおよびスマートシティデータのシェアリングプラットフォームオールインワンビジネス旅行予約プラットフォーム社会インフラにおけるIoTのデータオーナーシップ管理やセキュリティシステムを提供
各地選考会・SDGs賞企業
MUSKA
Littleone
★MDGo
★Circle of Life Healthcare
Thuocsi
★Zify
★Natural Machines
Somax Systems
提案ソリューションイエバエを活用し飼料と肥料を効率生産、世界の食糧危機を救う生まれたての赤ん坊のお世話を手助けするIoTグッズ自動車事故と同時に被害を分析し、救急医療と連携症例データをAI分析することで投薬すべき抗生物質の診断を劇的に早める小さな薬屋でも貴重な薬が安価にすぐに入手できる仕組み
通勤コストとCO2削減を実現する乗り合い通勤支援アプリ
食料廃棄削減にもつながる、おしゃれな食品3Dプリンタースマートフォン等連動により持ち運び可能な超音波検査デバイスで救急医療を高度化
★ : AIを適用・実装済の企業(マドリード選考会分までを掲載)
図 2 GMSがプラットフォームに収集するデータ(Source: GMS社)
表 1 第 9回グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト各地選考会の優勝・SDGs 賞企業