平成30年6月22日財務省国際局
資料3関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 配布資料
経常収支の構造変化
経常収支の構造変化:「貿易立国」から「投資立国」へのシフトが鮮明に
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2017年
第一次所得収支 貿易収支 サービス収支 第二次所得収支
貿易外収支 経常収支 ドル円
リーマンショック
(08年9月15日)【104.66円】
アジア通貨危機
(97年7月)【118.55円】
ニクソンショック
(71年8月15日)
プラザ合意
(85年9月22日)【231.90円】 日銀量的・質的
金融緩和(13年4月4日)
大震災
(11年3月)
(兆円)
黒字の主役が貿易収支から第1次所得収支へ
エネルギー価格高騰から鉱物性燃料輸入額増
急激に円高が進む中で貿易拡大
旅行、知財等使用料拡大でサービス収支改善
(ドル円)
(注)1984年以前の計数は、当時ドル建てで公表されていた計数をIFSの月中平均レートにより円換算したもの。1995年以前は旧統計に準拠。第二次所得収支は、海外送金(海外支店社員への給与支払や労働者送金)及び援助など無償で相手方に提供する取引に係る資金移動。ドル円レート:月末レート年平均
(出所)財務省
○ 貿易収支は、燃料を中心に輸入数量が減少しにくい一方、生産拠点の海外移転が進み輸出数量は伸びにくく、黒字拡大が抑制される傾向。
○ 第一次所得収支は、黒字構造がより安定化し、貿易収支の変動を吸収できる規模が定着。
○ サービス収支は赤字幅の縮小を継続し、黒字転換も視野。
輸入の変動は価格要因が主導(輸入数量は安定的)
4
○ 輸入金額は、数量変化よりも価格要因による変化が大きい(図1)。
○ 輸入金額の変動は、燃料価格と為替でおおむね説明できる(図2)。また、震災(原発停止)の影響は限定的で、一定量の燃料輸入が必要な経済構造は変化していない(図3) 。
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原粗油 液化天然ガス 石炭 鉱物性燃料数量指数(右軸)
(図3)主な鉱物性燃料の輸入額・輸入数量の推移
(前年差* )
(出所)財務省
(2010=100)(兆円)
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2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
(出所)財務省貿易統計、日本銀行より作成。*2010年の値を100とした時の前年からの変化量を表す。
(2010=100)
(図2)鉱物性燃料輸入金額の要因分解(2010=100)
(注)要因分解は、まず、「貿易統計」の 輸入数量指数、「企業物価指数」の輸入物価指数(契約通貨ベース)を用いて数量要因と価格要因を算出し、輸入額の前年差から数量要因分と価格要因分を引いたものを為替要因とした。
(注)出所、作成方法は図1と同様。輸入物価指数(契約通貨ベース)は、分類「鉱物性燃料」がないため、分類「石油・石炭・天然ガス」を用いた。
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(図1)輸入金額の要因分解
Δ輸入数量 Δ輸入価格 Δ為替
Δ輸入数量 Δ輸入価格 Δ為替
輸出数量は増加しにくい
5
○ 輸出金額は数量変化よりも価格要因による変化が大きい(図4)。
○ 国内生産から海外生産への移行や海外拠点による現地調達の拡大が、輸出数量の増加を抑制(図5・6)。
○ リーマンショック前は、海外生産化に伴う「輸出代替」(日本で生産し輸出→現地生産)と「輸出誘発」(現地生
産向けに部品等を輸出)がほぼ均衡していたが、近年、部品等を含めた「地産地消」が進み、輸出誘発が起きにくくなっている(図6)。
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24製造業海外現地生産比率
(図5)海外現地生産比率の推移
(図6)海外現地法人売上高(製造業)と輸出金額
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海外現地法人売上高(製造業) 名目輸出(兆円)
(注)各値は四半期ベース(出所)経済産業省「海外現地法人四半期調査」、「財務省貿易統計」
(%)
(前年差* )(図4)輸出金額の要因分解
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(2010=100)
(注)要因分解は、まず、「貿易統計」の 輸出数量指数、「企業物価指数」の輸出物価指数(契約通貨ベース)を用いて数量要因と価格要因を算出し、輸出額の前年差から数量要因分と価格要因分を引いたものを為替要因とした。
(出所)財務省貿易統計、日本銀行より作成。*2010年の値を100とした時の前年からの変化量を表す。
Δ輸出数量 Δ輸出価格 Δ為替
近年、為替と輸出数量の相関が崩れており、為替変動は輸出量にほとんど影響を与えない
6
○ 円安でも輸出数量が伸びなくなっている背景には、①本邦企業の生産拠点の海外移転が進む中、現地調達率が上昇していること、②現地価格を簡単に変更できる市場環境にないこと、等が挙げられる(図7・8)。
○ この他、一部製品(薄型TV、デジカメ、携帯電話など)について国際競争力低下から生産自体が大きく減少していることも影響しているとみられる(図8・9)。
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(図9)各品目の国内生産
自動車 半導体製造装置
薄型テレビ ノート型パソコン
携帯電話 デジカメ
(2010=100)
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輸出数量指数
(2010=100)
円安
円安輸出数量横ばい
円高
実質実効為替レート
(2010=100)
輸出数量指数(対世界)
(出所)経済産業省、財務省
(図7)輸出数量と実質実効為替レート (図8) 本邦製造業による生産体制のシフト
内容 セクター 輸出量(右欄:為替への感応度)
フェーズ1 終製品を国内生産→輸出 自動車、半導体製造装置 ○ 高い
フェーズ2 部品を輸出して製品を現地生産 自動車 △
フェーズ3 地産地消 自動車、ノート型パソコン × 低い
その他 競争力を失い、生産終了 薄型TV、デジカメ、携帯電話 × ゼロ
(出所)内閣府、日本銀行
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米国 中国
アジア(除中国) 欧州
その他
第一次所得収支は、黒字構造がより安定化し、貿易収支の変動を吸収できる規模が定着
7
○ 第一次所得収支(直近で約20兆円)は、過去 大の貿易赤字(約10兆円、2014年)の2倍程度。
○ 従来は、第一次所得収支の大半を証券投資収益が占めていたが、直接投資収益の割合が高くなってきている(1998年1割→2017年5割)(図10)。-製造業については、海外展開の進展に伴い、これまで収益を支えていた「貿易による稼ぎ」から「投資による稼ぎ」に振り替わっている(図11)。
-直接投資残高の増加を背景に、収益もアジア(特に中国)・米国を中心に増加傾向(図12)。
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第一次所得収支(直接投資収益・製造業)
(出所)財務省
(図10)直接投資・証券投資収益の推移(ネット)(兆円)
(図11)製造業の収益構造の変化(兆円)
(図12)直接投資残高・収益の推移(地域別)
直接投資収益
証券投資収益
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直接投資残高(資産・地域別)の推移
米国 中国アジア(除中国) オランダ欧州(除オランダ) その他
(出所)財務省「国際収支統計」、「法人企業統計」(注)貿易による収益は、輸出金額に製造業利益率(経常利益/売上高)を乗じて算出。
直接投資収益は2014~2016年は製造業部門実数。それ以前は、前年末の直接投資残高に占める製造業の割合を乗じて製造業内訳を算出。2017年は1~3Q期間累計を年率換算。
(兆円)
■貿易による収益
(兆円) 直接投資収益(ネット・地域別)
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配当金等 再投資収益 利子所得
配当金(証券投資収益) 債券利子(証券投資収益)
サービス収支は赤字幅の縮小を継続し、黒字転換も視野に
8
○ 旅行収支は、訪日外客者数の急増に伴い、黒字幅を拡大(図13)。
○ 産業財産権等使用料(受取)は、製造業生産拠点の海外移転等を背景に、増加(図14)。
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輸送 旅行
知的財産権等使用料 その他
サービス収支 訪日外客者数(右軸)
(出所)財務省 国際収支統計
(兆円) (兆円)(万人)
(図13)サービス収支(ネット) (図14)産業財産権使用料と著作権使用料(ネット)
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2017
産業財産権使用料 著作権等使用料 合計
(出所)財務省 国際収支統計
103 125 133 85 133 179 175 173 186 181 215 250 226
268 256 266 299 326 363 339 336 328 303
347 337 304 342 380 366 386 434
507 559
611 520 556 561 583
659
798
942 950 986 1,012
199 222 204 219 208 201 191 213 249 326 344 361
294 288 306 317 360
472
579 611 650 684
0
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1,000
1,200
1996年末
(8年末)
1997年末
(9年末)
1998年末
(10年末)
1999年末
(11年末)
2000年末
(12年末)
2001年末
(13年末)
2002年末
(14年末)
2003年末
(15年末)
2004年末
(16年末)
2005年末
(17年末)
2006年末
(18年末)
2007年末
(19年末)
2008年末
(20年末)
2009年末
(21年末)
2010年末
(22年末)
2011年末
(23年末)
2012年末
(24年末)
2013年末
(25年末)
2014年末
(26年末)
2015年末
(27年末)
2016年末
(28年末)
2017年末
(29年末)
対外純資産
対外資産:本邦居住者が海外に対して保有する金融資産
対外負債:非居住者が日本に対して保有する金融資産
対外資産負債残高の動向(平成29年末)単位:兆円
平成29年末の対外の貸借(対外資産負債残高)の状況
9
○ 29年末の対外純資産は328兆円、前年末比7.9兆円減少(金融収支:+17.7兆円、証券価格変動等の要因:▲25.6兆円)。
(主な特徴)
対外資産:対外直接投資や外国株式・投資ファンド持分への投資の増加等により26兆円増加。
対外負債:本邦債券への投資の増加や本邦株式の価格上昇等により34兆円増加。
※1 対外純資産は既往4位の規模
※2 27年連続で世界 大の純債権国(注)2位はドイツの261兆円、3位は中国の205兆円、米国は▲886兆円(世界 大の純債務国)
対外負債: 684.0兆円(前年末比+34.0兆円、+5.2%)
対外資産: 1,012.4兆円(前年末比+26.1兆円、+2.7%)
対外純資産: 328.5兆円(前年末比▲7.9兆円、▲2.3%)
(注)2014年末より国際収支マニュアル第6版に準拠。2013年末以前の計数は可能な範囲において第6版の基準により組み替えているが、一部の項目では計上基準が異なる。
(参考)対外純資産・負債残高の国際比較
10‐10,000
‐8,000
‐6,000
‐4,000
‐2,000
0
2,000
4,000
6,000
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
香港 中国 ドイツ 日本 米国 ノルウェー
○ 主要国の対外純資産負債残高を比較すると、日本は、世界 大の純資産国である(27年連続)。○ 2017年の対外純資産のトップ5は、日本、ドイツ、中国、香港、ノルウェー(中国は2006年~2016年ま
で2位)。○ 米国は、1990年代前半以降継続して債務国であり、対外純負債残高を拡大している。
単位:10億ドル
米国と日本・中国との間における資金の流出入
11
○ 直近10年間において、対日本では、米国は資金の流入超過。日本の対米投資額は、米国の対日貿易赤字額を超える。
○ 同期間の対中国では、米国は資金の流出超過。
‐3500 ‐3000 ‐2500 ‐2000 ‐1500 ‐1000 ‐500 0 500 1000
China
Japan
US Trade and Investment Flow with Japan and China (2008~2017)
(a) Trade in goods and services (b) Direct Investment (c) Portfolio Investment ● (a)+(b)+(c)
‐400‐350‐300‐250‐200‐150‐100‐500
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2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016‐90‐80‐70‐60‐50‐40‐30‐20‐100
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
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‐80
‐60
‐40
‐20
0
20
40
60
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016‐100‐80‐60‐40‐200
20406080
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
Japan Germany
Mexico China
(Billion dollar)
US Bilateral Trade Deficit and Direct Investment Flow with Japan, Germany, Mexico and China
(Source) US Bureau of Economic Analysis
(a) Trade in goods and services (b) Direct Investment Flow (Net) (a) – (b)
(参考)米国と日本・ドイツ・メキシコ・中国との間における資金の流出入
○ 安倍政権の間(2013年以降)、日本の対米直接投資は増加している。日本の対米貿易黒字額は、対米直接投資額と相殺した場合、小規模になる。
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Japan(Billion Dollar)
(Source) US Bureau of Economic Analysis
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‐400
‐300
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0
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2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
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0
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200
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
China
‐500
‐400
‐300
‐200
‐100
0
100
200
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
Germany
‐500
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‐200
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0
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200
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
Mexico
US Direct Investment PositionDirect Investment Position to abroad Direct Investment Position to US
○ 日本の対米直接投資残高は、米国の対日直接投資残高の4倍程度の水準。
対米貿易黒字が大きい4か国(中国・メキシコ・ドイツ・日本)の対米直接投資残高(グロス)を比較すると、日本の額が 大。
米国から日本への直接投資は、日本から米国への直接投資に比すと、非常に小さい。
(参考)米国と日本・ドイツ・メキシコ・中国との間における資金の流出入
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Foreign Portfolio Holdings of U.S. Securities
(Source) “Foreign Portfolio Holdings of U.S. Securities” Department of the Treasury
Long‐term Treasury Bonds Others
Japan(Billion dollar) Germany
MexicoChina
○ 日本の対米証券投資残高は高水準で安定的に推移。
中国の対米貿易黒字は日本の5倍程度の水準であるが、中国の対米証券投資残高は日本の額より小さい。
ドイツやメキシコの対米貿易黒字は日本と同程度の水準であるが、両国の対米証券投資残高は日本の額の1/5にも満たない。
(参考)米国と日本・ドイツ・メキシコ・中国との間における資金の流出入
14