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ターゲットを確実に測定するために~HPLC検出器の基礎~
2020/07/29
島津製作所 小寺澤
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クロマトグラフィーの基本構成要素
22020/07/29
分離 検出 データ解析
◼目的成分同士、または目的成分と夾雑成分を分離し、できる限り目的成分の分子だけを集める
◼目的成分分子を検出し、検出信号を連続的に取り込む
◼取り込んだ信号(データ)を解析し、定性と定量を行う
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データの種類と目的
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◼ どのようなデータが欲しいのか• 定性• 定量
→量が知りたい?→比率が知りたい?
• 分子量分布解析
◼ どのように見るのか• 検出器の種類• 検出条件
◼ どのデータを見るか• クロマトグラム• スペクトル
Time (min)
信号
強度
λ (nm)
信号
強度
m/z
信号
強度
クロマトグラム(LC検出器 or MS) UVスペクトル MSスペクトル
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LCの基本構成
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3. 送液ポンプ
4. インジェクタ
5. カラム7. 検出器
1. 移動相8. ソフトウェア
6. カラムオーブン
2. 脱気ユニット
1. 移動相
2. 脱気ユニット
3. 送液ポンプ
4. インジェクタ
5. カラム
6. カラムオーブン
7. 検出器
8. ソフトウェア
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主な検出器とその原理
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主な検出器
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・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
◼LCの検出器は複数種類ある。◼分析の目的に合わせて検出器を選択する。
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主な検出器
72020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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吸光度検出器の原理
82020/07/29
◼目的成分の光吸収を利用して検出◼濃度に比例して吸光度が変わるため定量が可能
A(吸光度)
C(濃度)
l :光路長
C :濃度
E0 E
検出セル
A = e C l = log ( E0 / E )
Lambert-Beerの法則
A:吸光度 ε:モル吸光係数
(入射光) (透過光)
⚫ 吸光度の測定
ε:モル吸光係数物質毎の吸光現象の差を表す
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吸光度検出器のポイント
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・HPLCで最も⼀般的に使⽤される検出器
・多くの有機化合物が紫外・可視域(190〜800 nm)の光を吸収するため適⽤範囲が広い(※糖を除く)
・検出感度は目的成分のモル吸光係数で決まるベンゼン環や共役⼆重結合に注目
・安定性が⾼く,扱いやすい検出器
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PDA検出器で得られるデータ
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◼測定波長を範囲指定◼クロマトグラムとUVスペクトルを両方取得
波長時間
吸光度
波長時間
吸光度
クロマトグラム UVスペクトル
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PDA検出器で得られるデータ
112020/07/29
◼標準品と比較することで純度比較が可能
サンプルのクロマトグラム
1つのピークに複数の成分が重なっていないか確認することができる
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分析例 医薬品の不純物分析
122020/07/29
◼化合物の定量が可能◼同時に含まれる不純物のUVスペクトル
Ketoprofenの不純物分析 不純物(IMP-3)のUVスペクトル
主成分(Ketoprofen)
の定量分析
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主な検出器
132020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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蛍光検出器の原理
142020/07/29
◼化合物に光を当て、目的成分が発する光を測定する。
エネルギー量
*
+ hc /λ1
蛍光波長
hc /λ2+
励起波長
蛍光
励起状態
励起状態(最低振動準位)
基底状態
hc /λ1
hc /λ2
*
(光吸収)
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蛍光検出器のポイント
152020/07/29
・目的成分固有の励起・蛍光波長で検出するため,検出選択性が⾼く、⾼感度に検出できる。
・反⾯,検出できる目的成分が限られる
・誘導体化検出法との組み合わせで有⽤
対象成分例・色素、PAH(多環芳香族)・アミノ酸(OPA誘導体化)
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分析例 アフラトキシンの誘導体化蛍光検出
162020/07/29
◼アフラトキシンを誘導体化して蛍光検出◼ng~pgオーダーの濃度まで検出が可能
誘導体化されたアフラトキシン分析4成分のクロマトグラム(負荷量 2.0 or 0.5 μg/L)
誘導体化されたアフラトキシン分析4成分のクロマトグラム(負荷量 2.0 or 0.5 ng/L)
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主な検出器
172020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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示差屈折率検出器の原理
182020/07/29
◼リファレンス側、サンプル側の屈折率差で検出◼サンプル通過時に屈折率が変化
空気
水
入射角
屈折角
リファレンス側(移動相)
サンプル側(目的成分+移動相)
受光部
Wランプ
セル
受光点
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示差屈折率検出器のポイント
192020/07/29
・移動相と目的成分との屈折率に差がある目的成分なら原理的にすべて検出できる
・物質による感度差が少なく,量比について⼤雑把な情報が得られる
・反⾯,検出選択性が乏しい
・感度は他の汎⽤検出器に比べて劣る
・グラジエント溶離が適⽤できない
適用化合物例・糖類(光吸収が小さく吸光度検出器が使いにくい)
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202020/07/29
分析例 糖、糖アルコール分析(示差屈折率検出)
◼UV吸収が小さい糖の分析が可能◼ほぼすべての化合物を検出可能なため分離が必要
糖、糖アルコール6成分の分析 栄養ドリンク中の糖アルコール分析
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主な検出器
212020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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電気伝導度検出器の原理
222020/07/29
◼サンプル通過時の電気伝導度の変化で検出
⚫目的成分と移動相の電気伝導度の差を測定
純水 電球つかない
NaCl水溶液
Cl
-
Cl
-
NaNa
イオンが入っている為電球つく
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電気伝導度検出器のポイント
232020/07/29
・イオン性目的成分を選択的に検出
・イオン類に選択的で,イオン性でない物質は検出されない
・水溶液中のイオン類を⾼感度に検出できる
・イオンクロマトグラフに不可⽋な検出器
対象成分例・陽イオン(カルシウムイオンなど)・陰イオン、有機酸(乳酸、酢酸、ギ酸など)
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242020/07/29
分析例 陽イオン/陰イオン分析(電気伝導度検出)
◼イオン性成分を検出◼非イオン性成分は検出しないため、選択性が向上
工場排水中の陽イオン分析例
培養液中の有機酸6成分の分析左:電気伝導度検出器右:紫外可視吸光度検出器
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主な検出器
252020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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蒸発光散乱検出器の原理
262020/07/29
◼サンプルを放出して微粒子化◼目的成分の微粒子による光の散乱を測定
散乱光
散乱光
微粒子
光源
bkmI =
I : 散乱光強度m : 微粒子の量k, b : 定数
微粒子による散乱光を測定
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
対数軸(濃度)
0.0
2.5
5.0
7.5
10.0
12.5
対数軸
(⾯積
)
対数グラフによる
グルコースの検量線
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蒸発光散乱検出器のポイント
272020/07/29
・揮発性物質を除く目的成分を検出
・反⾯,検出選択性に乏しい
・物質による感度差が少ない
・グラジエント溶離法が適⽤できる
・不揮発性緩衝液(りん酸緩衝液など)や⾼沸点溶媒(DMSO,DMFなど)
が使⽤できない
対象成分例・糖類(UV吸収が小さく吸光度検出器が使いにくい)・界⾯活性剤
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282020/07/29
分析例 界面活性剤分析(蒸発光散乱検出)
◼UV吸収がない成分も検出可能◼グラジエント溶離できるため、分離能を向上できる。
炭素鎖の長さが異なるアルキルベンゼンスルホン酸4種の分析
Column :C4カラムMobile Phase :A:10mM ギ酸アンモニウム
B:アセトニトリルLinear gradient :B 35%→70%, 20min
Flow Rate :1.0mL/min.
Temperature :40°C
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主な検出器の比較
292020/07/29
◼目的成分の特性や濃度、夾雑成分などで検出器を選択
検出器 対象物質 感度 汎用性 選択性
吸光度検出器 吸光性 ng ○ ○
蛍光検出器 発蛍光性 pg △ ◎
示差屈折率検出器 ほぼすべて µg ◎ ×
電気伝導度検出器 イオン性 ng △ ○
蒸発光散乱検出器 すべて(不揮発性) µg ◎ ×
注)この表はイメージをつかみやすいようにまとめたもので,あくまでも目安です
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主な検出器
302020/07/29
・紫外可視吸光度検出器(吸光度検出器)
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器・蛍光検出器・⽰差屈折率検出器・電気伝導度検出器・蒸発光散乱検出器・質量分析計
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質量分析計
312020/07/29
◼定性・構造解析が目的の検出器◼目的化合物をイオン化して、質量電荷比で分離
塩基性化合物:酸性物質(AH)添加
酸性化合物:塩基性物質(B)添加
中性化合物(気相イオン化)
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質量分析計の利点
322020/07/29
◼同時に溶出した成分も分離ができる。◼質量電荷比で分離でき、選択性が高い。
m/z=150
m/z=100
A:100
D:150
B:100
C:150
TIC
A
B
C D
m/z : 質量電荷比
TIC:全イオンクロマトグラム
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質量分析計の利点
332020/07/29
◼保持時間に加えて、質量情報から化合物の同定が可能
m/z m/z
m/z
A:100
D:150
B:130
100 130
150
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まとめ
⚫ LCの検出器は複数種類あり、特徴が異なる。⚫ サンプルや分離条件、分析の目的に合わせて選択する。
342020/07/29
検出器 対象物質 感度 汎用性 選択性
吸光度検出器 吸光性 ng ○ ○
蛍光検出器 発蛍光性 pg △ ◎
示差屈折率検出器 ほぼすべて µg ◎ ×
電気伝導度検出器 イオン性 ng △ ○
蒸発光散乱検出器 すべて(不揮発性) µg ◎ ×
注)この表はイメージをつかみやすいようにまとめたもので,あくまでも目安です